(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20240220BHJP
B65H 1/14 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65H7/14
B65H1/14 322A
(21)【出願番号】P 2020089624
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011150(JP,A)
【文献】特開2017-105563(JP,A)
【文献】特開2020-015607(JP,A)
【文献】特開2008-127154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、
前記検出部の受光量に基づき、前記積載台の高さ位置を制御して前記シート束の上面を所定の上限位置に位置決めする上限位置決め制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記上限位置決め制御を行う際に、前記シート束の上面が前記検出部の検出領域の上限より高い位置にある状態での前記検出部の受光量である全遮蔽受光量、および、前記シート束の上面が前記検出領域の下限より低い位置にある状態での前記検出部の受光量である全開放受光量を取得し、取得した前記全遮蔽受光量および前記全開放受光量に基づき、前記シート束の上面を前記上限位置に位置決めするための前記検出部の受光量の閾値を決定することを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シート束の上面が前記検出領域の下限よりも低い位置にある状態から前記積載台の上昇を開始させ、前記検出部の受光量の変化率に基づき、前記シート束の上面が前記検出領域内の所定位置に到達したか否かを判断し、前記シート束の上面が前記所定位置に到達してから前記積載台が所定量だけ上昇した時点で、前記シート束の上面が前記検出領域の上限より高い位置にあると判断して前記検出部の受光量を前記全遮蔽受光量として取得することを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記積載台の上昇を開始させた時点における前記シート束の上面の高さ位置が、前記検出領域の下限より低い所定の全開放検出位置以上の高さ位置にあった場合には、前記全遮蔽受光量を取得した後、前記シート束の上面が前記全開放検出位置に一致するよう前記積載台を下降させて前記全開放受光量を取得し、
前記積載台の上昇を開始させた時点における前記シート束の上面の高さ位置が、前記全開放検出位置より低い位置にあった場合には、前記積載台の上昇中に前記シート束の上面が前記全開放検出位置に到達した時点で取得していた前記検出部の受光量を前記全開放受光量として採用することを特徴とする請求項2に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを供給するシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙に空気を吹き付けて用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して印刷装置に給紙する給紙装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような給紙装置において、反射型フォトセンサからなる上限センサを用いて、給紙による給紙台上の用紙の減少に応じて給紙台を上昇させる制御が行われている。
【0004】
また、このような給紙装置では、給紙動作を開始する前に、上記の上限センサのセンサ値に基づき、給紙台上の用紙束の上面を所定の上限位置に位置決めするよう給紙台の高さ位置を制御する上限位置決め制御が行われている。
【0005】
この上限位置決め制御では、給紙台上の用紙束の側面からの反射光を受光した上限センサのセンサ値(受光量)が所定の閾値以上であるか否かに基づき、用紙束の上面が上限位置にあるか否かが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、外光や、給紙台上の用紙束の側面の反射率の影響により、上限位置決め制御の精度が低くなることがある。
【0008】
例えば、上限センサが外光を受光することで、用紙束の上面が上限位置に到達していないのにセンサ値が閾値以上となり、用紙束の上面が上限位置に達したと誤判定されることがある。
【0009】
また、例えば、給紙台上の用紙束の側面の反射率が標準的な反射率よりも低いことで、用紙束の上面が上限位置に到達してもセンサ値が閾値に到達せず、用紙束の上面が上限位置より高い位置に到達してから、上限位置に到達したと誤判定されることがある。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、上限位置決め制御の精度を向上できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のシート供給装置は、シート束が積載された昇降可能な積載台と、前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、前記検出部の受光量に基づき、前記積載台の高さ位置を制御して前記シート束の上面を所定の上限位置に位置決めする上限位置決め制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記上限位置決め制御を行う際に、前記シート束の上面が前記検出部の検出領域の上限より高い位置にある状態での前記検出部の受光量である全遮蔽受光量、および、前記シート束の上面が前記検出領域の下限より低い位置にある状態での前記検出部の受光量である全開放受光量を取得し、取得した前記全遮蔽受光量および前記全開放受光量に基づき、前記シート束の上面を前記上限位置に位置決めするための前記検出部の受光量の閾値を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート供給装置によれば、上限位置決め制御の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
【
図4】給紙台の上昇中におけるセンサ値の推移を示す図である。
【
図5】上限センサが用紙束により全遮蔽された状態を示す図である。
【
図6】上限センサで受光される外光の説明図である。
【
図7】外光の影響による用紙束の上限位置の誤判定の説明図である。
【
図8】用紙束の反射率の影響による用紙束の上限位置の誤判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。以下の説明において、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0017】
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台(積載台に相当)2と、エンドフェンス3と、昇降モータ4と、エンコーダ5と、浮上部6と、分離部7と、搬送部8と、上限センサ(検出部に相当)9と、操作パネル10と、制御部11とを備える。
【0018】
給紙装置1は、印刷装置(図示せず)に対して用紙(シートに相当)Pを給紙する装置である。
図1において左から右に向かう方向が、給紙動作時の搬送部8による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部8による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0019】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0020】
エンドフェンス3は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。
【0021】
昇降モータ4は、給紙台2を昇降させる。
【0022】
エンコーダ5は、昇降モータ4の回転軸の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0023】
浮上部6は、給紙台2上に重ねて積載された複数の用紙Pからなる用紙束(シート束に相当)PTに対して下流側の側方から空気を吹きつけ、用紙束PTの上端部の複数の用紙Pを浮上させる。浮上部6は、浮上ファン21と、シャッタ22とを備える。
【0024】
浮上ファン21は、給紙台2上の用紙束PTの用紙Pを浮上させるための浮上気流を発生させる。
【0025】
シャッタ22は、用紙束PTへの浮上気流の吹き出しのオンオフを切り替える。
【0026】
なお、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの浮上部6がさらに設けられていてもよい。
【0027】
分離部7は、浮上部6により浮上させられて搬送部8に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させる。分離部7は、分離ファン26を備える。
【0028】
分離ファン26は、搬送部8に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に空気を流し込んで最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるための分離気流を発生させる。
【0029】
なお、用紙Pの幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの分離部7がさらに設けられていてもよい。
【0030】
搬送部8は、浮上部6により浮上させられた複数の用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。搬送部8は、搬送ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、搬送モータ34と、吸引機構部35とを備える。
【0031】
搬送ベルト31は、駆動ローラ32と従動ローラ33とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト31には、複数のベルト穴(図示せず)が全周に渡って形成されている。搬送ベルト31は、吸引機構部35の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ32の駆動により搬送ベルト31が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0032】
駆動ローラ32は、搬送ベルト31を回転(無端移動)させる。
【0033】
従動ローラ33は、駆動ローラ32とともに搬送ベルト31を支持する。従動ローラ33は、回転する搬送ベルト31に従動回転する。
【0034】
搬送モータ34は、駆動ローラ32を回転させる。
【0035】
吸引機構部35は、搬送ベルト31のベルト穴を介して空気を吸引することで、用紙Pを搬送ベルト31に吸着させる。吸引機構部35は、ベルト穴を介して空気を吸引するファン(図示せず)を備える。
【0036】
上限センサ9は、給紙台2上に積載された用紙Pの下流側(右側)の端面を監視するものである。上限センサ9は、給紙台2より下流側において、浮上部6により浮上させられた用紙Pを検出可能な高さ位置に配置されている。上限センサ9は、検出領域K内の用紙Pを検出する。上限センサ9は、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向においては、用紙Pの中央に配置されている。用紙Pの幅方向においては、検出領域Kは、用紙Pの幅より狭い。上限センサ9は、反射型フォトセンサであり、発光部41と、受光部42とを備える。
【0037】
発光部41は、給紙台2上の用紙束PTの右側の側方から左側(用紙束PT側)へ光を出射する。発光部41は、例えば、発光ダイオードからなる。
【0038】
受光部42は、左側(用紙束PT側)からの光を受光する。
【0039】
操作パネル10は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル10は、液晶表示パネル等を有する表示部(図示せず)と、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部(図示せず)とを備える。なお、操作パネル10は、給紙先の印刷装置に設けられたものであってもよい。
【0040】
制御部11は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部11は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0041】
制御部11は、給紙動作を開始する際に、上限センサ9のセンサ値(受光量)に基づき、給紙台2の高さ位置を制御して、給紙台2上の用紙束PTの上面(最上位の用紙Pの上面)を所定の上限位置に位置決めする上限位置決め制御を行う。ここで、上限位置は、高さ方向(上下方向)における検出領域K内の位置である。上限位置は、例えば、高さ方向における検出領域Kの中央位置に設定される。
【0042】
また、制御部11は、上限位置決め制御を行う際に、閾値決定処理を実行する。閾値決定処理は、上限位置決め制御において用紙束PTの上面を上限位置に位置決めするためのセンサ値の閾値である上限検出閾値Vthを決定する処理である。閾値決定処理において、制御部11は、全開放センサ値Va(全開放受光量に相当)および全遮蔽センサ値Vb(全遮蔽受光量に相当)を取得し、取得した全開放センサ値Vaおよび全遮蔽センサ値Vbに基づき、上限検出閾値Vthを決定する。
【0043】
ここで、全開放センサ値Vaは、検出領域K内に用紙Pがない状態である、上限センサ9が全開放された状態でのセンサ値である。すなわち、全開放センサ値Vaは、用紙束PTの上面が検出領域Kの下限より低い位置にある状態でのセンサ値である。全遮蔽センサ値Vbは、上限センサ9が用紙束PTにより全遮蔽された状態でのセンサ値である。すなわち、全遮蔽センサ値Vbは、用紙束PTの上面が上限センサ9の検出領域Kの上限より高い位置にある状態でのセンサ値である。
【0044】
次に、給紙装置1の動作について説明する。
【0045】
給紙装置1では、給紙を行う際、まず、上述の閾値決定処理を行う。閾値決定処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
給紙開始が指示されると、
図3のステップS1において、制御部11は、昇降モータ4を制御して、用紙束PTが積載された給紙台2の上昇を開始させるとともに、上限センサ9のセンサ値のサンプリングを開始する。
【0047】
給紙台2の上昇が開始されると、エンコーダ5がパルス信号を出力し始める。制御部11は、エンコーダ5の出力パルス数に基づき、用紙束PTの上面(給紙台2)の移動量(上昇量、下降量)を判断できる。
【0048】
給紙台2の上昇中において、制御部11は、所定時間間隔でセンサ値をサンプリングし、それにより取得した各センサ値を、それぞれの取得時点における、給紙台2の上昇開始からのエンコーダ5の出力パルス数のカウント値と対応させて記憶する。
【0049】
ここで、給紙台2の上昇開始前は、
図1のように、用紙束PTの上面が検出領域Kの下限よりも低い位置にある状態である。例えば、給紙台2が給紙装置1における最も低い位置にある状態から、給紙台2の上昇が開始される。給紙台2の上昇開始時点では、用紙束PTの上面が、検出領域Kの下限より低い所定の全開放検出位置Ha以上の高さ位置にある場合と、全開放検出位置Haより低い位置にある場合とがある。
【0050】
全開放検出位置Haは、全開放センサ値Vaを取得する際の用紙束PTの上面の高さ位置として予め設定された高さ位置である。全開放検出位置Haは、検出領域Kの下限の下側近傍に設定されている。
【0051】
ここで、用紙束PTの上面で反射した西日等の外光(
図6参照)の上限センサ9による受光量は、用紙束PTの上面の高さ位置によって変化する。上限センサ9より低い範囲における上限センサ9に比較的近い高さ位置の範囲内では、用紙束PTの上面が高い位置にあるほど、用紙束PTの上面で反射した外光の上限センサ9への入射量は減少する。このことから、上限センサ9が受光する外光を低減するために、上述のように全開放検出位置Haは、検出領域Kの下限の下側近傍に設定されている。全開放検出位置Haは、実験等に基づき予め決定されている。全開放検出位置Haは、用紙種類ごとに設定してもよい。
【0052】
給紙台2の上昇開始後、
図3のステップS2において、制御部11は、用紙束PTの上面が、所定の全遮蔽近傍位置Hb´(所定位置に相当、
図4参照)に到達したか否かを判断する。ここで、全遮蔽近傍位置Hb´は、検出領域Kの上限の下側近傍の高さ位置として予め設定されたものである。
【0053】
現時点の用紙束PTの上面の高さ位置をHxとし、検出領域Kの高さ幅より大きい規定高さ幅をWs(
図4参照)とすると、用紙束PTの上面の高さ位置がHx-WsからHxまでの区間に、センサ値の上昇率Rが所定の上昇率閾値R1以上の区間があり、かつ、現時点における直近のセンサ値の上昇率Rが、上昇率閾値R1より小さい上昇率閾値R2以下である場合、制御部11は、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達したと判断する。
【0054】
用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達していないと判断した場合(ステップS2:NO)、制御部11は、ステップS2を繰り返す。
【0055】
ここで、給紙台2の上昇により、上限センサ9のセンサ値は、用紙束PTの上面の高さ位置に応じて
図4のように変化する。
【0056】
図4に示すように、用紙束PTの上面が検出領域Kの下限に到達すると、発光部41の光が用紙束PTの下流側(右側)の側面で反射した反射光が受光部42で受光され始めることで、センサ値が上昇し始める。この後、用紙束PTの上面が検出領域Kの上限に到達するまで、センサ値は上昇する。
【0057】
上昇する用紙束PTの上面が検出領域Kの下限に到達するまでの間のセンサ値(全開放センサ値Va)は、用紙束PTの上面や上限センサ9の周辺の部材からの反射光と環境光とで決まるものであり、通常は、ほぼゼロである。
【0058】
センサ値の上昇率Rは、一旦上昇した後、用紙束PTの上面が検出領域Kの上限に近づくにつれて低下する。すなわち、センサ値の上昇率Rは、高さ方向における検出領域Kの中央部で上昇率閾値R1以上となり、全遮蔽近傍位置Hb´の直下で上昇率閾値R2以下となる。上昇率閾値R1,R2は、実験等に基づき予め決定されている。上昇率閾値R1,R2は、用紙種類ごとに設定してもよい。
【0059】
図3に戻り、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達したと判断した場合(ステップS2:YES)、ステップS3において、制御部11は、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達してから規定上昇量Wc(所定量に相当)だけ上昇したか否かを判断する。用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達してから規定上昇量Wcだけ上昇していないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部11は、ステップS3を繰り返す。
【0060】
ここで、規定上昇量Wcは、
図4に示すように、全開放検出位置Haより上述の規定高さ幅Wsだけ高い位置である全遮蔽検出位置Hbと、全遮蔽近傍位置Hb´との間の高さ距離である。
【0061】
全遮蔽検出位置Hbは、検出領域Kの上限より高く、搬送部8の搬送面(下面)より低い位置にある。また、全遮蔽検出位置Hbは、用紙束PTの用紙Pが比較的少ない(用紙束PTの高さが比較的低い)場合でも、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにあるときに、検出領域Kに給紙台2が入らないように、検出領域Kの上限の上側近傍にある。全遮蔽検出位置Hbがこのような高さ位置となるように、規定高さ幅Wsが設定されている。
【0062】
図3に戻り、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達してから規定上昇量Wcだけ上昇したと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部11は、給紙台2の上昇を停止させる。これにより、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにある状態で給紙台2が停止する。この結果、
図5に示すように、上限センサ9が用紙束PTにより全遮蔽された状態となる。
【0063】
図3に戻り、ステップS5において、制御部11は、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにある状態における上限センサ9のセンサ値を、前述の全遮蔽センサ値Vbとして取得する。
【0064】
次いで、ステップS6において、制御部11は、給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Ha以上の高さ位置にあったか否かを判断する。ここで、制御部11は、ステップS4での給紙台2の上昇停止時点における、ステップS1での給紙台2の上昇開始時点からのエンコーダ5の出力パルス数のカウント値が、規定高さ幅Wsに応じたパルス数以下である場合、給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Ha以上の高さ位置にあったと判断する。
【0065】
給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Ha以上の高さ位置にあったと判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS7において、制御部11は、用紙束PTの上面が全開放検出位置Haに一致するまで給紙台2を下降させる。すなわち、制御部11は、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにある状態から規定高さ幅Wsだけ給紙台2を下降させる。
【0066】
次いで、ステップS8において、制御部11は、用紙束PTの上面が全開放検出位置Haにある状態における上限センサ9のセンサ値を、前述の全開放センサ値Vaとして取得する。この後、制御部11は、ステップS10へ進む。
【0067】
ステップS6において、給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Haより低い位置にあったと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS9において、制御部11は、給紙台2の上昇中に用紙束PTの上面が全開放検出位置Haに到達した時点で取得していたセンサ値を全開放センサ値Vaとして採用する。
【0068】
具体的には、制御部11は、ステップS4での給紙台2の上昇停止時点における、ステップS1での給紙台2の上昇開始時点からのエンコーダ5の出力パルス数のカウント値から、規定高さ幅Wsに応じたパルス数を差し引いたカウント値に対応するセンサ値を、全開放センサ値Vaとして採用する。この後、制御部11は、ステップS10へ進む。
【0069】
ステップS10では、制御部11は、下記の式(1)で表される差分値Vdiffが、所定の差分閾値Vc以上であるか否かを判断する。
【0070】
Vdiff=Vb-Va …(1)
ここで、差分閾値Vcは、外光や用紙束PTの側面の反射率の影響により、正確な用紙束PTの上限位置決めが困難な状況であるか否かを判断するための差分値Vdiffの閾値である。例えば、用紙束PTの側面の反射率が低いために全遮蔽センサ値Vbが非常に小さく、かつ、外光が強いために全開放センサ値Vaが非常に大きいために、正確な用紙束PTの上限位置決めが困難な状況である場合には、差分値Vdiffが差分閾値Vc未満となる。差分閾値Vcは、実験等に基づき予め決定されている。
【0071】
Vdiff≧Vcであると判断した場合(ステップS10:YES)、ステップS11において、制御部11は、全開放センサ値Vaと全遮蔽センサ値Vbとに基づき、上限検出閾値Vthを決定する。例えば、制御部11は、下記の式(2)により上限検出閾値Vthを算出する。これにより、閾値決定処理が終了となる。
【0072】
Vth=(Va+Vb)/2 …(2)
Vdiff<Vcであると判断した場合(ステップS10:NO)、ステップS12において、制御部11は、操作パネル10にエラーを表示させる。これにより、閾値決定処理がエラー終了となる。
【0073】
次に、上限位置決め制御について説明する。
【0074】
上述の閾値決定処理により上限検出閾値Vthを決定すると、制御部11は、上限位置決め制御を行う。
【0075】
具体的には、制御部11は、閾値決定処理においてサンプリングして記憶した各センサ値から、上限検出閾値Vth以上で上限検出閾値Vthに最も近いセンサ値を選択する。
【0076】
次いで、制御部11は、用紙束PTの上面の位置が、上記の選択したセンサ値を取得した時点における用紙束PTの上面の位置に合うように、給紙台2を昇降させる。これにより、用紙束PTの上面が上限位置に位置決めされる。上記の選択したセンサ値を取得した時点における用紙束PTの上面の位置は、当該センサ値に対応して記憶されたエンコーダ5の出力パルス数のカウント値から判断できる。
【0077】
ここで、閾値決定処理の終了時点において、用紙束PTの上面が全開放検出位置Haにある場合と、全遮蔽検出位置Hbにある場合とがある。閾値決定処理の終了時点において用紙束PTの上面が全開放検出位置Haにある場合には、制御部11は、上限位置決め制御において、給紙台2を閾値決定処理の終了時点の位置から下降させて用紙束PTの上面を上限位置に位置決めする。閾値決定処理の終了時点において用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにある場合には、制御部11は、上限位置決め制御において、給紙台2を閾値決定処理の終了時点の位置から下降させて用紙束PTの上面を上限位置に位置決めする。
【0078】
なお、次のように上限位置決め制御を行ってもよい。閾値決定処理の終了時点において用紙束PTの上面が全開放検出位置Haにある場合、給紙台2の上昇を開始させ、センサ値が上限検出閾値Vth以上になった時点で給紙台2の上昇を停止させる。閾値決定処理の終了時点において用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにある場合、給紙台2の下降を開始させ、センサ値が上限検出閾値Vth以下になった時点で給紙台2の上昇を停止させる。
【0079】
上述の上限位置決め制御が終了すると、制御部11は、用紙束PTの上面の高さ位置を、給紙に適切な高さ位置である目標位置に合わせるよう給紙台2を昇降させる。
【0080】
この後、制御部11は、給紙動作を開始させる。具体的には、制御部11は、浮上ファン21、分離ファン26、および吸引機構部35の駆動を開始させる。また、制御部11は、シャッタ22を開放する。
【0081】
これにより、浮上部6からの浮上気流により用紙束PTの最上部の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト31に吸着される。
【0082】
次いで、制御部11は、シャッタ22を閉鎖する。これにより、分離部7からの分離気流により、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離され、2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0083】
次いで、制御部11は、搬送モータ34を駆動させることで搬送部8に用紙Pを搬送させる。
【0084】
次いで、制御部11は、次の用紙Pの給紙のために、シャッタ22を開放して用紙Pを浮上させる。
【0085】
上記の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から印刷装置へ順次給紙される。
【0086】
この給紙動作中において、制御部11は、給紙による給紙台2上の用紙Pの減少に応じて給紙台2を上昇させる制御を行う。具体的には、制御部11は、1枚の給紙ごとに、用紙Pの浮上中のタイミングで上限センサ9のセンサ値を取得する。そして、制御部11は、取得したセンサ値が所定の追従閾値未満の場合、センサ値と追従閾値との差に応じた高さ分だけ、給紙台2を上昇させる。
【0087】
給紙動作で給紙する枚数分の給紙が終了すると、制御部11は、給紙動作を終了させる。
【0088】
以上説明したように、給紙装置1では、制御部11は、上限位置決め制御を行う際に、閾値決定処理において、全開放センサ値Vaおよび全遮蔽センサ値Vbを取得し、取得した全開放センサ値Vaおよび全遮蔽センサ値Vbに基づき、上限検出閾値Vthを決定する。
【0089】
ここで、本実施の形態とは異なり、用紙束PTの上面の上限位置決めのために、予め設定された固定の上限検出閾値Vkを用いた場合、
図6に示すような外光の影響により、
図7に示すように、上限位置が誤判定されることがある。
【0090】
すなわち、給紙装置1では、
図6のように、用紙束PTの上面で反射した外光が上限センサ9の受光部42で受光されることがある。そして、このような外光の影響により、
図7のように、外光の影響がない場合に比べてセンサ値が大きくなることがある。このため、外光の影響により、用紙束PTの上面が本来の上限位置に達していないにもかかわらず、センサ値が上限検出閾値Vkに達し、用紙束PTの上面が上限位置に達したと誤判定されることがある。外光が強いほど、このような誤判定は発生しやすい。
【0091】
また、固定の上限検出閾値Vkを用いた場合、用紙束PTの側面の反射率の影響により、
図8に示すように、上限位置が誤判定されることがある。
【0092】
すなわち、例えば、用紙束PTの側面の反射率が標準的な反射率よりも低い場合、
図8のように、用紙束PTの側面の反射率が標準的な反射率の場合よりもセンサ値が小さくなることがある。このため、用紙束PTの上面が本来の上限位置に到達してもセンサ値が閾値に到達せず、用紙束PTの上面が本来の上限位置より高い位置に到達してから、センサ値が閾値に到達し、上限位置に到達したと誤判定されることがある。
【0093】
用紙束PTの側面の反射率が標準的な反射率よりも高い場合にも、用紙束PTの側面の反射率が標準的な反射率の場合よりもセンサ値が大きくなることで、上限位置が誤判定されることがある。
【0094】
これに対し、給紙装置1では、上限位置決め制御を行う際に取得した全開放センサ値Vaおよび全遮蔽センサ値Vbに基づき上限検出閾値Vthを決定するので、上限検出閾値Vthは、そのときの外光や用紙束PTの側面の反射率の影響が反映されたものとなる。このため、外光や用紙束PTの側面の反射率の影響による上限位置の誤判定が低減し、上限位置決め制御の精度を向上できる。
【0095】
また、制御部11は、センサ値の上昇率Rが上昇率閾値R1以上となった後に上昇率閾値R2以下になると、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達したと判断する。そして、制御部11は、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達してから規定上昇量Wcだけ上昇した時点で、用紙束PTの上面が検出領域Kの上限より高い全遮蔽検出位置Hbにあると判断して全遮蔽センサ値Vbを取得する。これにより、用紙束PTの上面が検出領域Kの上限より高い位置にある状態にして全遮蔽センサ値Vbを取得することを実現できる。
【0096】
また、制御部11は、給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Ha以上の高さ位置にあった場合には、全遮蔽センサ値Vbを取得した後、用紙束PTの上面が全開放検出位置Haに一致するまで給紙台2を下降させて全開放センサ値Vaを取得する。給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面が全開放検出位置Haより低い位置にあった場合には、制御部11は、給紙台2の上昇中に用紙束PTの上面が全開放検出位置Haに到達した時点で取得していたセンサ値を全開放センサ値Vaとして採用する。これにより、給紙台2の上昇開始時点における用紙束PTの上面の高さ位置と全開放検出位置Haとの位置関係に関わらず、用紙束PTの上面が全開放検出位置Haにある状態におけるセンサ値を全開放センサ値Vaとして取得することが可能である。
【0097】
なお、上述した実施の形態では、用紙束PTの上面が予め設定された全開放検出位置Haにある状態におけるセンサ値を全開放センサ値Vaとして取得した。また、用紙束PTの上面が予め設定された全遮蔽検出位置Hbにある状態におけるセンサ値を全遮蔽センサ値Vbとして取得した。しかし、用紙束PTの上面が検出領域Kの下限より低い任意の位置にある状態におけるセンサ値を全開放センサ値Vaとして取得してもよい。また、用紙束PTの上面が上限センサ9の検出領域Kの上限より高い任意の位置にある状態におけるセンサ値を全遮蔽センサ値Vbとして取得してもよい。
【0098】
また、上述した実施の形態では、センサ値の上昇率Rが上昇率閾値R1以上となった後に上昇率閾値R2以下になると、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達したと判断した。そして、用紙束PTの上面が全遮蔽近傍位置Hb´に到達してから規定上昇量Wcだけ上昇した時点で、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにあると判断した。しかし、これに限らず、センサ値の変化率に基づき、用紙束PTの上面が検出領域K内の所定位置に到達したか否かを判断し、用紙束PTの上面が所定位置に到達してから給紙台2が所定量だけ上昇した時点で、用紙束PTの上面が全遮蔽検出位置Hbにあると判断するものであればよい。
【0099】
また、上述した実施の形態では、上限検出閾値Vthを全開放センサ値Vaと全遮蔽センサ値Vbとの平均値とした(式(2))。これは、
図4のような特性の上限センサ9において、上下方向における検出領域Kの中央でのセンサ値のレベルが、上限センサ9が全開放された状態でのセンサ値のレベルと全遮蔽された状態でのセンサ値のレベルとの中央付近であろうと推定したためである。しかし、上限センサ9として採用するセンサの特性によっては、このような推定は妥当でないことがある。このため、例えば、下記の式(3)における係数k(0<k<1)を実験で決定し、式(3)により上限検出閾値Vthを算出するようにしてもよい。上限検出閾値Vthは、全開放センサ値Vaと全遮蔽センサ値Vbとに基づき算出するものであればよい。
【0100】
Vth=k×Va+(1-k)×Vb …(3)
また、上述した実施の形態では、用紙を給紙する給紙装置について説明したが、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0101】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0102】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0103】
(付記1)
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、
前記検出部の受光量に基づき、前記積載台の高さ位置を制御して前記シート束の上面を所定の上限位置に位置決めする上限位置決め制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記上限位置決め制御を行う際に、前記シート束の上面が前記検出部の検出領域の上限より高い位置にある状態での前記検出部の受光量である全遮蔽受光量、および、前記シート束の上面が前記検出領域の下限より低い位置にある状態での前記検出部の受光量である全開放受光量を取得し、取得した前記全遮蔽受光量および前記全開放受光量に基づき、前記シート束の上面を前記上限位置に位置決めするための前記検出部の受光量の閾値を決定することを特徴とするシート供給装置。
【0104】
(付記2)
前記制御部は、前記シート束の上面が前記検出領域の下限よりも低い位置にある状態から前記積載台の上昇を開始させ、前記検出部の受光量の変化率に基づき、前記シート束の上面が前記検出領域内の所定位置に到達したか否かを判断し、前記シート束の上面が前記所定位置に到達してから前記積載台が所定量だけ上昇した時点で、前記シート束の上面が前記検出領域の上限より高い位置にあると判断して前記検出部の受光量を前記全遮蔽受光量として取得することを特徴とする付記1に記載のシート供給装置。
【0105】
(付記3)
前記制御部は、
前記積載台の上昇を開始させた時点における前記シート束の上面の高さ位置が、前記検出領域の下限より低い所定の全開放検出位置以上の高さ位置にあった場合には、前記全遮蔽受光量を取得した後、前記シート束の上面が前記全開放検出位置に一致するよう前記積載台を下降させて前記全開放受光量を取得し、
前記積載台の上昇を開始させた時点における前記シート束の上面の高さ位置が、前記全開放検出位置より低い位置にあった場合には、前記積載台の上昇中に前記シート束の上面が前記全開放検出位置に到達した時点で取得していた前記検出部の受光量を前記全開放受光量として採用することを特徴とする付記2に記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0106】
1 給紙装置
2 給紙台
3 エンドフェンス
4 昇降モータ
5 エンコーダ
6 浮上部
7 分離部
8 搬送部
9 上限センサ
10 操作パネル
11 制御部
21 浮上ファン
22 シャッタ
26 分離ファン
31 搬送ベルト
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
34 搬送モータ
35 吸引機構部
41 発光部
42 受光部
K 検出領域
P 用紙
PT 用紙束