(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/48 20060101AFI20240220BHJP
B65H 3/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65H3/48 310Z
B65H3/12 310B
(21)【出願番号】P 2020089630
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055661(JP,A)
【文献】特開2018-002423(JP,A)
【文献】特開2018-070355(JP,A)
【文献】特開2012-131614(JP,A)
【文献】特開2013-193850(JP,A)
【文献】特開2010-247970(JP,A)
【文献】特開2009-274837(JP,A)
【文献】特開2019-094212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束に空気を吹き付けて前記シート束の複数のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
シートの供給先装置からの供給開始信号に応じて、最上位のシートを搬送するよう前記搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記浮上部により前記シート束に空気を吹き付けて複数のシートを浮上させた状態で前記供給開始信号を待ち、前記供給開始信号が入力されると、前記浮上部による前記シート束への空気の吹き付けを停止して前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの上から2枚目以下のシートの落下を開始させることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送部から前記供給先装置までのシートの搬送時間に、前記供給開始信号を受信してから前記搬送部によるシートの搬送を開始させるまでに要する時間を加算した時間を、前記供給先装置が前記供給開始信号を送信してから当該供給開始信号に応じて搬送されたシートを受け取るまでに要する時間として前記供給先装置に通知することを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、シート供給を開始するための準備を、前記浮上部により前記シート束に空気を吹き付けて複数のシートを浮上させた状態で終了することを特徴とする請求項1または2に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを供給するシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙に空気を吹き付けて用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して印刷装置に給紙する給紙装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような給紙装置において、最上位の用紙を吸着搬送手段に吸着させ、上から2枚目以下の用紙を落下させた状態で、印刷装置からの給紙開始信号を待ち、給紙開始信号が入力されると吸着搬送手段が最上位の用紙を搬送する制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の制御では、給紙開始信号を待っている間に、最上位の用紙において吸着搬送手段に吸着されていない部分が垂れ下がることがある。この状態で給紙開始信号が入力されて用紙の搬送が行われると、用紙の垂れ下がった部分が周辺の部材に接触することでジャムが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、ジャムを低減できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のシート供給装置は、シート束に空気を吹き付けて前記シート束の複数のシートを浮上させる浮上部と、前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、シートの供給先装置からの供給開始信号に応じて、最上位のシートを搬送するよう前記搬送部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記浮上部により前記シート束に空気を吹き付けて複数のシートを浮上させた状態で前記供給開始信号を待ち、前記供給開始信号が入力されると、前記浮上部による前記シート束への空気の吹き付けを停止して前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの上から2枚目以下のシートの落下を開始させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート供給装置によれば、ジャムを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
【
図3】給紙装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】給紙装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】浮上領域内の複数の用紙が浮上した状態を示す図である。
【
図6】浮上した用紙のうちの上から2枚目以下の用紙が落下する様子を示す図である。
【
図7】給紙開始信号に遅延が生じた場合の給紙装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】給紙開始信号に遅延が生じた場合の給紙装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】搬送ベルトに吸着された最上位の用紙の垂れ下がりの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0011】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。以下の説明において、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0013】
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台2と、エンドフェンス3と、昇降モータ4と、浮上部5と、分離部6と、搬送部7と、上限センサ8と、制御部9とを備える。
【0014】
給紙装置1は、印刷装置(供給先装置に相当)100に対して用紙(シートに相当)Pを給紙(供給)する装置である。
図1において左から右に向かう方向が、給紙動作時の搬送部7による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部7による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0015】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0016】
エンドフェンス3は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。
【0017】
昇降モータ4は、給紙台2を昇降させる。
【0018】
浮上部5は、給紙台2上に重ねて積載された複数の用紙Pからなる用紙束(シート束に相当)PTに対して下流側の側方から空気を吹きつけ、用紙束PTの上端部の複数の用紙Pを浮上させる。浮上部5は、浮上ファン11と、シャッタ12とを備える。
【0019】
浮上ファン11は、給紙台2上の用紙束PTの用紙Pを浮上させるための浮上気流A1(
図5参照)を発生させる。
【0020】
シャッタ12は、用紙束PTへの浮上気流A1の吹き付けのオンオフを切り替える。
【0021】
なお、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの浮上部5がさらに設けられていてもよい。
【0022】
分離部6は、浮上部5により浮上させられて搬送部7に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させる。分離部6は、分離ファン16を備える。
【0023】
分離ファン16は、搬送部7に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に空気を流し込んで最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるための分離気流A2(
図5参照)を発生させる。
【0024】
なお、用紙Pの幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの分離部6がさらに設けられていてもよい。
【0025】
搬送部7は、浮上部5により浮上させられた複数の用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。搬送部7は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23と、搬送モータ24と、吸引機構部25とを備える。
【0026】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22と従動ローラ23とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、複数のベルト穴(図示せず)が全周に渡って形成されている。搬送ベルト21は、吸引機構部25の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ22の駆動により搬送ベルト21が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0027】
駆動ローラ22は、搬送ベルト21を回転(無端移動)させる。
【0028】
従動ローラ23は、駆動ローラ22とともに搬送ベルト21を支持する。従動ローラ23は、回転する搬送ベルト21に従動回転する。
【0029】
搬送モータ24は、駆動ローラ22を回転させる。
【0030】
吸引機構部25は、搬送ベルト21のベルト穴を介して空気を吸引することで、用紙Pを搬送ベルト21に吸着させる。吸引機構部25は、ベルト穴を介して空気を吸引するファン(図示せず)を備える。
【0031】
上限センサ8は、給紙台2上に積載された用紙Pの下流側(右側)の端面を監視するものである。上限センサ8は、給紙台2より下流側において、浮上領域F(
図5参照)内の浮上している用紙Pを検出可能な高さ位置に配置されている。浮上領域Fは、上下方向における浮上部5が用紙Pを浮上させる領域である。
【0032】
制御部9は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部9は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0033】
制御部9は、浮上部5により給紙台2上の用紙束PTの上端部の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送ベルト21に吸着させ、印刷装置100からの給紙開始信号(供給開始信号に相当)に応じて、最上位の用紙Pを印刷装置100へ搬送するよう搬送部7を制御する。
【0034】
この際、制御部9は、シャッタ12を開放して浮上部5により用紙束PTに空気を吹き付けて浮上領域F内に複数の用紙Pを浮上させた状態で給紙開始信号を待つ。給紙開始信号を受信すると、制御部9は、シャッタ12を閉鎖することで、浮上部5による用紙束PTへの空気(浮上気流A1)の吹き付けを停止して上から2枚目以下の用紙Pの落下を開始させ、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させた後、搬送部7を駆動させて用紙Pを印刷装置100へ搬送させる。
【0035】
次に、給紙装置1の動作について説明する。
【0036】
図3、
図4は、給紙装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、後述するように、印刷装置100からの給紙開始信号が遅延することがあるが、
図3、
図4は、給紙開始信号の遅延がない場合のタイミングチャートを示している。ここでは、まず、
図3、
図4を参照して、給紙開始信号の遅延がない場合について説明する。
【0037】
給紙装置1では、給紙を行う際、まず、給紙を開始するための準備である初期化動作を行う。
【0038】
具体的には、印刷ジョブが入力されて初期化動作を開始する
図3の時刻t1において、制御部9は、シャッタ12を開放する。また、制御部9は、吸引機構部25、浮上ファン11、および分離ファン16を順次駆動開始させる。なお、これらを駆動開始させる順序は限定されない。
【0039】
吸引機構部25、浮上ファン11、および分離ファン16の駆動開始後、
図5に示すように、浮上気流A1により浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着される。
【0040】
この後、吸引機構部25、浮上ファン11、および分離ファン16の風量が安定した
図3の時刻t2において、制御部9は、シャッタ12を閉鎖する。これにより、浮上気流A1が停止される。この結果、
図6に示すように、分離気流A2により最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離され、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0041】
図3の時刻t2でシャッタ12を閉鎖してからシャッタ閉鎖時間Tc後の時刻t3において、制御部9は、シャッタ12を開放する。これにより、浮上気流A1が生じ、再度、
図5のように浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態となる。
【0042】
この状態で、制御部9は、印刷装置100からの給紙開始信号を待つ。
図3の時刻t3でシャッタ12を開放してからシャッタ開放時間Tf後の時刻t4において、1枚目の給紙開始信号が入力されると、制御部9は、初期化動作を終了し、シャッタ12を閉鎖する。
【0043】
上述のシャッタ閉鎖時間Tc、シャッタ開放時間Tfは、それぞれ給紙動作において給紙する用紙1枚ごとにシャッタ12を閉鎖する時間、シャッタ12を開放する時間として予め設定されたものである。シャッタ閉鎖時間Tcおよびシャッタ開放時間Tfは、給紙条件(用紙種類、用紙サイズ等)に応じて設定されている。
【0044】
ここで、制御部9は、初期化動作の開始後、搬送時間Thに待機時間Trを加算した時間、および初期化動作が終了可能となるタイミングを印刷装置100に通知する。
【0045】
上述の搬送時間Thは、搬送部7から印刷装置100までの用紙Pの搬送に要する時間である。搬送時間Thは、給紙条件(用紙種類、用紙サイズ等)によって決まるものである。
【0046】
上述の待機時間Trは、給紙開始信号を受信してから搬送部7による用紙Pの搬送を開始させるまでに要する時間である。待機時間Trは、
図5のように浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態でシャッタ12を閉鎖してから、上から2枚目以下の各用紙Pが、用紙Pの重送等が発生しない程度に十分に落下するまでの時間に相当する。待機時間Trは、給紙条件(用紙種類、用紙サイズ等)に応じて設定されている。
【0047】
搬送時間Thに待機時間Trを加算した時間は、印刷装置100が給紙開始信号を送信してから当該給紙開始信号に応じて搬送された用紙Pを受け取るまでに要する時間として、給紙装置1が印刷装置100に通知するものである。
【0048】
上述の初期化動作が終了可能となるタイミングは、シャッタ12を一旦閉鎖した後に開放したタイミング(時刻t3)からシャッタ開放時間Tf後のタイミング(時刻t4)である。初期化動作が終了可能となるタイミングでは、
図5のように浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態になっている。
【0049】
印刷装置100の制御部(図示せず)は、初期化動作が終了可能となるタイミング以降であって、1枚目の用紙受け入れタイミングから(Th+Tr)だけ遡ったタイミングで、1枚目の給紙開始信号を給紙装置1へ送信する。
【0050】
図3、
図4の例では、初期化動作が終了可能となるタイミング(時刻t4)で遅延なく1枚目の給紙開始信号が制御部9に入力されている。前述のように、1枚目の給紙開始信号が入力されると、制御部9は、初期化動作を終了し、シャッタ12を閉鎖する。
【0051】
初期化動作において、上述のように、給紙動作中と同様のシャッタ12の開閉制御を行うことで、給紙台2上の用紙Pの状態が、給紙動作中と近い状態となるようにしている。
【0052】
図3、
図4の時刻t4において初期化動作を終了してシャッタ12を閉鎖すると、
図6のように、分離気流A2により最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離され、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0053】
時刻t4でシャッタ12を閉鎖してから待機時間Tr後の時刻t5において、制御部9は、搬送モータ24の駆動を開始させ、搬送部7が所定の搬送速度で用紙Pを搬送するよう制御する。そして、制御部9は、時刻t5において搬送モータ24の駆動を開始させてから駆動時間Tb後に搬送モータ24を停止するよう制御する。
【0054】
上述の駆動時間Tbは、搬送部7が搬送ベルト21に吸着された最上位の用紙Pを搬送する際に搬送ベルト21を駆動(回転)させる時間として予め設定された時間である。駆動時間Tbは、用紙サイズに応じて設定されている。
【0055】
搬送モータ24を停止させた後、時刻t4からシャッタ閉鎖時間Tc後の時刻t6において、制御部9は、シャッタ12を開放する。これにより、浮上気流A1が生じ、
図5のように浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態となる。
【0056】
この状態で、時刻t6からシャッタ開放時間Tf後の時刻t7において2枚目の給紙開始信号が入力されると、制御部9は、シャッタ12を閉鎖する。ここで、給紙開始信号は、用紙サイズに応じた給紙時間間隔Tpで入力される。
【0057】
時刻t7でシャッタ12を閉鎖してから待機時間Tr後の時刻t8において、制御部9は、搬送モータ24の駆動を開始させ、搬送部7により用紙Pを搬送させる。
【0058】
この後も上述のような1枚目、2枚目の用紙Pの給紙時と同様の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から印刷装置100へ順次給紙される。
【0059】
この給紙動作中において、制御部9は、給紙による給紙台2上の用紙Pの減少に応じて給紙台2を上昇させる制御を行う。具体的には、制御部9は、1枚の給紙ごとに、用紙Pの浮上中のタイミングで上限センサ8のセンサ値を取得する。そして、制御部9は、取得したセンサ値が所定の追従閾値未満の場合、センサ値と追従閾値との差に応じた高さ分だけ、給紙台2を上昇させる。
【0060】
次に、給紙開始信号の遅延が生じた場合の給紙装置1の動作について説明する。
【0061】
前述のように、給紙開始信号の遅延が生じることがある。例えば、給紙装置1からの給紙を、印刷装置100が備える給紙トレイからの給紙に一時的に切り替えた場合に、給紙開始信号の遅延が生じることがある。また、例えば、給紙装置1が複数段の給紙台2を備える構成である場合に、給紙台2の切り替えにより、給紙台2ごとの給紙開始信号に遅延が生じることがある。
【0062】
また、例えば、印刷装置100に接続された排紙装置における排紙先の切り替えや、排紙時のオフセット位置の切り替えにより、給紙開始信号に遅延が生じることがある。その他、高精細モードでの印刷のために印刷速度が遅くなることや、両面印刷のための間欠給紙、解析に長時間を要する印刷ジョブの処理、印刷中におけるメンテナンス等により、給紙開始信号に遅延が生じることがある。
【0063】
図7に示すように、1枚目の給紙開始信号に遅延が生じた場合、初期化動作が終了可能となるタイミングである時刻t4になっても給紙開始信号が入力されない。
【0064】
この場合、制御部9は、時刻t4でシャッタ12を閉鎖することなく、シャッタ12を開放したまま、
図5のように浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態で給紙開始信号を待つ。
【0065】
時刻t4より後の時刻t11において、1枚目の給紙開始信号が入力されると、制御部9は、シャッタ12を閉鎖する。これにより、分離気流A2により最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離され、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0066】
そして、時刻t11でシャッタ12を閉鎖してから待機時間Tr後の時刻t12において、制御部9は、搬送モータ24の駆動を開始させ、搬送部7により用紙Pを搬送させる。
【0067】
2枚目以降の給紙開始信号に遅延が生じた場合も、
図8に示すように、制御部9は、シャッタ12を開放した状態で給紙開始信号を待つ。具体的には、例えば、時刻t6でシャッタ12を開放してからシャッタ開放時間Tf後の時刻t7になっても2枚目の給紙開始信号が入力されない場合、制御部9は、時刻t7でシャッタ12を閉鎖することなく、
図5のような状態で給紙開始信号を待つ。
【0068】
時刻t7より後の時刻t21において、2枚目の給紙開始信号が入力されると、制御部9は、シャッタ12を閉鎖する。これにより、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。そして、時刻t21でシャッタ12を閉鎖してから待機時間Tr後の時刻t22において、制御部9は、搬送モータ24の駆動を開始させ、搬送部7により用紙Pを搬送させる。
【0069】
以上説明したように、給紙装置1では、制御部9は、シャッタ12を開放して浮上部5により用紙束PTに空気(浮上気流A1)を吹き付けて浮上領域F内の複数の用紙Pを浮上させた状態で給紙開始信号を待つ。給紙開始信号が入力されると、制御部9は、シャッタ12を閉鎖することで、浮上部5による用紙束PTへの空気の吹き付けを停止して上から2枚目以下の用紙Pの落下を開始させる。
【0070】
ここで、本実施の形態とは異なり、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着されるとシャッタ12を閉鎖し、上から2枚目以下の用紙Pを十分に落下させた状態で給紙開始信号を待つ場合、
図9に示すように、最上位の用紙Pにおける搬送ベルト21に吸着されていない部分が垂れ下がることがある。給紙開始信号の遅延が生じると、上から2枚目以下の用紙Pを落下させた状態で給紙開始信号を待つ時間が長くなり、
図9のような用紙Pの垂れ下がりが発生しやすい。
【0071】
図9のような最上位の用紙Pの垂れ下がりが生じた状態で給紙開始信号が入力されて搬送部7による用紙Pの搬送が行われると、用紙Pの垂れ下がった部分が周辺の部材に接触することでジャムが発生するおそれがある。
【0072】
これに対し、給紙装置1では、給紙開始信号の遅延が生じた場合でも、シャッタ12を開放して
図5のような状態で給紙開始信号を待つので、最上位の用紙Pの垂れ下がりが抑えられる。すなわち、
図5の状態では、浮上領域F内の各用紙Pが浮上部5から吹き付けられる空気を介して下の用紙Pに順次支えられるので、搬送ベルト21に吸着された最上位の用紙Pの垂れ下がりが抑えられる。このため、給紙装置1によれば、ジャムを低減できる。
【0073】
また、上述のように上から2枚目以下の用紙Pを落下させた状態で給紙開始信号を待つ場合、給紙開始信号の遅延時間が長くなると、最上位の用紙Pが長時間、分離気流A2にさらされることで、最上位の用紙Pに曲がった癖がつく等のダメージが生じることがある。
【0074】
これに対し、給紙装置1では、給紙開始信号の遅延が生じた場合でも、
図5のように浮上領域F内の各用紙Pが浮上部5から吹き付けられる空気を介して下の用紙Pに順次支えられた状態で給紙開始信号を待つので、最上位の用紙Pに曲がった癖がつく等のダメージが生じることが抑えられる。
【0075】
また、給紙装置1では、制御部9は、搬送時間Thに待機時間Trを加算した時間を、印刷装置100が給紙開始信号を送信してから当該給紙開始信号に応じて搬送された用紙Pを受け取るまでに要する時間として印刷装置100に通知する。
【0076】
これにより、印刷装置100が、待機時間Tr(給紙装置1において給紙開始信号を受信してから搬送部7による用紙Pの搬送を開始させるまでに要する時間)だけ前倒しで給紙開始信号を送信することが可能になる。このため、給紙装置1がシャッタ12を開放した状態で給紙開始信号を待つようにしても、生産性の低下は抑えることが可能になる。したがって、生産性の低下を抑えつつ、ジャムを低減できる。
【0077】
また、給紙装置1では、制御部9は、給紙を開始するための準備である初期化動作を、シャッタ12を開放して浮上部5により用紙束PTに空気(浮上気流A1)を吹き付けて浮上領域F内の複数の用紙Pを浮上させた状態で終了する。これにより、本実施の形態とは異なりシャッタ12を閉鎖して上から2枚目以下の用紙Pを落下させた状態で初期化動作を終了として1枚目の給紙開始信号を待つ場合に比べて、上から2枚目以下の用紙Pの落下を待つ時間が省略される。
【0078】
すなわち、給紙装置1では、初期化動作を終了してシャッタ12を閉鎖してから搬送部7による最上位の用紙Pの搬送開始までに、上から2枚目以下の用紙Pの落下を待つ時間(
図7の時刻t11~t12)が必要となるが、この時間は初期化動作では省略される。このため、初期化動作の開始から1枚目の用紙Pの給紙開始までの時間であるファーストプリント時間が長くなることが抑えられる。したがって、ファーストプリント時間が長くなることを抑えつつ、ジャムを低減できる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、初期化動作において、シャッタ12を一旦閉鎖した後に開放する動作を行ったが、初期化動作においてシャッタ12を閉鎖する動作は省略してもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、用紙を給紙する給紙装置について説明したが、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0081】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0082】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0083】
(付記1)
シート束に空気を吹き付けて前記シート束の複数のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
シートの供給先装置からの供給開始信号に応じて、最上位のシートを搬送するよう前記搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記浮上部により前記シート束に空気を吹き付けて複数のシートを浮上させた状態で前記供給開始信号を待ち、前記供給開始信号が入力されると、前記浮上部による前記シート束への空気の吹き付けを停止して前記浮上部により浮上させられた複数のシートのうちの上から2枚目以下のシートの落下を開始させることを特徴とするシート供給装置。
【0084】
(付記2)
前記制御部は、前記搬送部から前記供給先装置までのシートの搬送時間に、前記供給開始信号を受信してから前記搬送部によるシートの搬送を開始させるまでに要する時間を加算した時間を、前記供給先装置が前記供給開始信号を送信してから当該供給開始信号に応じて搬送されたシートを受け取るまでに要する時間として前記供給先装置に通知することを特徴とする付記1に記載のシート供給装置。
【0085】
(付記3)
前記制御部は、シート供給を開始するための準備を、前記浮上部により前記シート束に空気を吹き付けて複数のシートを浮上させた状態で終了することを特徴とする付記1または2に記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0086】
1 給紙装置
2 給紙台
3 エンドフェンス
4 昇降モータ
5 浮上部
6 分離部
7 搬送部
8 上限センサ
9 制御部
11 浮上ファン
12 シャッタ
16 分離ファン
21 搬送ベルト
22 駆動ローラ
23 従動ローラ
24 搬送モータ
25 吸引機構部
100 印刷装置
P 用紙
PT 用紙束