IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 三和テッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図1
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図2
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図3
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図4
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図5
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】山形鋼材の研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/00 20060101AFI20240220BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B24B27/00 L
B24B29/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113148
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011789
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 雅人
(72)【発明者】
【氏名】上原 勇希
(72)【発明者】
【氏名】金子 顕
(72)【発明者】
【氏名】島田 喜明
(72)【発明者】
【氏名】新貝 昌大
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-126609(JP,A)
【文献】特開2018-122371(JP,A)
【文献】実開平1-120468(JP,U)
【文献】特開2000-302071(JP,A)
【文献】特開昭63-68353(JP,A)
【文献】特開2020-138242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/00
B24B 29/00
B08B 1/00 - 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山形鋼材の第1及び第2の山側面を長手方向に移動しつつ研磨するための装置であって、
前記山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在の走行体と、当該走行体に結合され前記第1及び第2の山側面を研磨する本体とを具備し、
前記走行体は、前記第1及び第2の山側面にそれぞれ吸着する磁石車輪を具備し、当該磁石車輪を転動させて前記山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在に構成され、
前記本体は、前記走行体に結合される支持枠と、前記第1及び第2の山側面にそれぞれ接するように前記支持枠に支持される各一対の研磨ブラシと、前記支持枠に支持される駆動装置と、当該駆動装置の回転を前記研磨ブラシに伝えるように前記支持枠に支持される伝動機構とを具備し、
前記支持枠は、前記山形鋼材の第1の山側面に沿う第1の支持部と、第2の山側面に沿う第2の支持部とを具備し、
前記研磨ブラシは、前記一対で前記第1又は第2の山側面の全幅を研磨できるように、ブラシ毛の先端が前記第1又は第2の山側面の少なくとも半幅に接し、その回転軸を前記第1又は第2の山側面に垂直に向けて、前記第1又は第2の支持部に揺動部材を介して回転自在に支持され、
前記揺動部材は、基端部において第1又は第2の支持部に同軸により枢支され、前記山形鋼材の長手方向に沿って互いに反対方向へ延出し、先端部にそれぞれ前記研磨ブラシが取り付けられる第1及び第2の揺動部材からなり、それぞれ前記一対の研磨ブラシを、協働して前記山形鋼材の山側面の全幅を研磨できる位置に置くように弾性的に回転付勢して設けられ、
それによって、前記各一対の研磨ブラシが、前記山形鋼材の第1又は第2の山側面からの突出物を回避しつつ前記第1又は第2の山側面を研磨可能に構成されることを特徴とする山形鋼材の研磨装置。
【請求項2】
前記本体は、前記山形鋼材の第1又は第2の山側面に吸着して前記研磨ブラシのブラシ毛を前記山形鋼材の第1又は第2の山側面に圧接さように前記支持枠に支持される磁石をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の山形鋼材の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨ブラシは、カップブラシからなり、前記磁石は、当該カップブラシの中心部に、前記山形鋼材の第1又は第2の山側面に吸着して、前記カップブラシのブラシ毛を前記山形鋼材の第1又は第2の山側面に圧接させるように設けられることを特徴とする請求項2に記載の山形鋼材の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨ブラシは、その回転軸が、ばねにより軸方向に弾性的に前記揺動部材に軸支されることを特徴とする請求項3に記載の山形鋼材の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装前のケレン等の目的で、山形鋼材の山側面をその長手方向に移動しながら研磨する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ドリルドライバ型の本体にカップ型ブラシを装着したケレン機として、特許文献1に記載されたものが知られている。
一方、大波パネルで構成された大型建物の壁面を塗装前に清掃するケレン装置のキャリッジとして、壁面に吸着するマグネットローラを備えたものが特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-231058号公報
【文献】特開昭62-298474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載されたものは、いずれも山形鋼材の研磨を効率的に行うことができる装置ではない。
したがって、本発明は、山形鋼材の山側面をその長手方向に移動しながら比較的小さな力で効率的に研磨することができる装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の研磨装置1は、走行体2と、これに支持される本体3とを具備する。走行体2は、山形鋼材301の第1及び第2の山側面303,304にそれぞれ吸着する磁石車輪6,7,8を具備し、この磁石車輪6,7,8を転動させることによって山形鋼材301の山側面303,304に沿って長手方向に移動自在である。本体3は、走行体2に結合される支持枠14と、第1及び第2の山側面303,304にそれぞれ接するように支持枠14に支持される各一対の研磨ブラシ9・10,11・12と、支持枠14に支持される駆動装置13と、この駆動装置13の回転を研磨ブラシ9・10,11・12に伝えるように支持枠14に支持される伝動機構16とを具備する。支持枠14は、山形鋼材301の第1の山側面303に沿う第1の支持部141と、第2の山側面304に沿う第2の支持部142とを具備する。研磨ブラシ9・10,11・12は、一対で第1又は第2の山側面303,304の全幅を研磨できるように、ブラシ毛の先端が第1又は第2の山側面303,304の少なくとも半幅に接し、その回転軸91・101,111・121を第1又は第2の山側面303,304に垂直に向けて、第1又は第2の支持部141,142に揺動部材17,18を介して回転自在に支持される。揺動部材17,18は、第1及び第2の揺動部材17a・17b,18a・18bからなり、基端部において第1又は第2の支持部141,142に同軸19,20により枢支され、山形鋼材301の長手方向に沿って互いに反対方向へ延出し、先端部にそれぞれ研磨ブラシ9・10,11・12が取り付けられる。第1及び第2の揺動部材17,18は、それぞれ研磨ブラシ9・10,11・12を、協働して山形鋼材の山側面303,304の全幅を研磨できる位置に置くように弾性的に回転付勢して設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の研磨装置によれば、山形鋼材301の2つ山側面303,304に磁石車輪6,7,8を吸着させ、研磨ブラシ9,10,11,12を2つの山側面303,304に圧接させながら、山形鋼材301の長手方向に移動させて2つの山側面303,304を同時に効率的に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る研磨装置の使用状態を示す斜視図である。
図2図1の研磨装置の正面図である。
図3図1の研磨装置の背面図である。
図4図1の研磨装置の平面図である。
図5図1の研磨装置の右側面図である。
図6図1の研磨装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
研磨装置1による研磨対象である、図1に示す山形鋼材301は、例えば鉄道線路の架線柱として建てられたトラス支柱の4つの主柱材を構成する山形鋼材である。
【0009】
山形鋼材301は、稜部302で互いに直角に接する第1及び第2の山側面303,304を有する。研磨装置1は、山形鋼材301の山側面303,304に沿って長手方向(以下、この方向を上下方向、その直交方向を水平方向あるいは左右方向、山側を後方、谷側を前方として説明するが、使用状況に応じ、これらの方向に限定されるものではない。)に移動しつつ、左右2つの山側面303,304を同時に研磨する装置である。
【0010】
図1に示すように、研磨装置1は、山形鋼材301の山側面303,304に沿って長手方向に移動自在の走行体2と、この走行体2に支持される本体3とを具備する。
【0011】
図2ないし図6によく示すように、走行体2は、上下2つの枠体4,5と、これら枠体4,5に支持される磁石車輪6,7,8とを具備する。
【0012】
本体3は、山形鋼材301の各山側面303,304を研磨する左右各一対の研磨ブラシ9・10,11・12と、それの駆動装置13と、両者を結合する支持枠14とを具備する。
【0013】
走行体2についてさらに詳しく説明する。走行体2を構成する上部枠体4は、図4によく示すように、一対のアーム部41,42と、これらの基端間をつなぐ連結部43と、連結部43から下方へ延出する接続部44を有する。一対のアーム部41,42は、それぞれ山形鋼材301の山側面303,304に沿うように(図1)互いに直交方向に延び、連結部43、接続部44は、山形鋼材301の稜部302に対向する。
【0014】
アーム部41,42の先端部には、磁石車輪6が、山形鋼材301の山側面303,304上を上下方向に転動できるように支持される。連結部43の内側には、山形鋼材301の稜部302を転動するV溝付きのローラ15(図2,4)が設けられ、接続部44の内側には、稜部302の両縁に沿って上下方向に転動できるように(図1)、磁石車輪7が支持される。いずれの磁石車輪6,7,8も吸着力の入り切り操作が可能である。接続部44の下部に本体3の支持枠14が固着される。
【0015】
走行体2を構成する下部枠体5は、山形鋼材301の山側面303,304に沿うように互いに直交方向に延びる一対のアーム部51,52を有し、クランプ金具53により駆動装置13に連結される。アーム部51,52の先端部には、磁石車輪8が、山形鋼材301の山側面303,304上を上下方向に転動できるように支持される。
【0016】
次に、本体3について説明する。本体3は、支持枠14、これに揺動部材17,18を介して支持される研磨ブラシ9・10,11・12、それの駆動装置13、両者間の伝動機構16(図4)を具備し、支持枠14を介して走行体2の上部枠体4に接続される。
【0017】
図示の実施形態において、研磨ブラシ9・10,11・12の駆動装置13は、市販のコードレスディスクグラインダを適用したものであるが、これに限定されるものではない。駆動装置13は、上下方向に延びるハンドル部131、その上部のヘッド部132、ヘッド部132から前後方向に突出する出力軸であるスピンドル133(図4)を有する。駆動装置13は、ハンドル部131においてクランプ金具53により走行体2の下部枠体5に接続される。
【0018】
本体3の支持枠14は、ケース状で、その後面側に駆動装置13のヘッド部132が接続される。図4に破線で示すように、スピンドル133は、支持枠14内に突出し、歯車群、ベルト群等からなる伝動機構16を介して、左右各一対の研磨ブラシ9・10,11・12の回転軸91・101,111・121に接続される。
【0019】
支持枠14は、山形鋼材301の第1の山側面303に沿う第1の支持部141と、第2の山側面304に沿う第2の支持部142とを具備する。
【0020】
研磨ブラシ9・10,11・12は、カップブラシからなり、その回転軸91・101,111・121を山側面303,304に垂直に向け、揺動部材17,18を介して第1又は第2の支持部141,142に支持される。研磨ブラシ9・10,11・12は、その回転軸91・101,111・121が、ばねにより、軸方向に弾性的に揺動部材17,18に軸支され、またその中心部に、山形鋼材の山側面302,303に吸着する磁石92・102,112・122を具備する。回転軸91・101,111・121の軸方向の弾性支持と、磁石92・102,112・122の磁力とが相俟って、ブラシ毛の先端を山側面302,303に弾性的に圧接させる。これにより、山側面302,303に対する一定のブラシ押し付け力が得られると共に、凹凸による装置の反動を防止し、均一な研磨面を得ることができる。
【0021】
揺動部材17,18は、それぞれ上部及び下部の2つの揺動部材17a・17b、18a・18bからなり、基端部において第1又は第2の支持部141,142に同軸18,19により枢支される。揺動部材17,18は、基端部から山形鋼材301の長手方向に沿って互いに反対方向(上下方向)へ延出し、先端部にそれぞれ研磨ブラシ9・10,11・12が取り付けられる。
【0022】
研磨ブラシ9・10,11・12は、ブラシ毛の先端が山側面303,304の少なくとも半幅に接し、上下の一対が山側面303,304の幅方向に偏移した状態で全幅を研磨できる。第1及び第2の揺動部材17a・17b、18a・18bは、それぞれ上下の研磨ブラシ9・10,11・12の位置をずらして配置する基本位置に、図1に矢線で示すように弾性的に回転付勢して設けられる。
【0023】
揺動部材17a・17b、18a・18bが弾性的に適宜揺動することよって、各一対の研磨ブラシ9・10,11・12は、山側面303,304からの突出するボルト305のような、突出物を回避しつつ、円滑に山側面303,304を研磨することができる。
【0024】
研磨装置1を用いて、山形鋼材301の山側面303,304を研磨する場合には、例えば、駆動装置13のハンドル131を握り、研磨装置1を山形鋼材301の山側面303,304に向け、磁石車輪6,7,8を山側面303,304又は陵部302の縁に吸着させる。駆動装置13のスイッチを入れ、ブラシ9,10,11,12を回転させながら、研磨装置1を手動にて山側面303,304に沿って上下に移動させて研磨する。図1に示すように、山側面303,304の途上にボルト305等が突出している場合、下方から上方へ向けてブラシ9,10,11,12を移動させると、上方の揺動部材18aが図1において付勢力に抗して右方へ揺動して、ボルト305を回避しつつ、その右側周りを研磨し、これを通過した後再び元位置に戻る。次いで下方の揺動部材18bが、付勢力に抗して図1において左方へ揺動して、ボルト305を回避しつつ、その左側周りを研磨し、これを通過した後再び元位置に戻る。
【0025】
本発明は、上記実施形態だけでなく、例えば水平方向に配設されたビーム等に用いられる山形鋼材への使用など、他の種々の設置形態の山形鋼材に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 研磨装置
2 走行体
3 本体
4 上部枠体
41 アーム部
42 アーム部
43 連結部
44 接続部
5 下部枠体
51 アーム部
52 アーム部
53 クランプ金具
6 磁石車輪
7 磁石車輪
8 磁石車輪
9 研磨ブラシ
91 軸
92 磁石
10 研磨ブラシ
101 軸
102 磁石
11 研磨ブラシ
111 軸
112 磁石
12 研磨ブラシ
121 軸
122 磁石
13 駆動装置
131 ハンドル部
132 ヘッド部
133 スピンドル
14 支持枠
141 第1の支持部
142 第2の支持部
15 ローラ
16 伝動機構
17 揺動部材
17a 上部揺動部材
17b 下部揺動部材
18 揺動部材
18a 上部揺動部材
18b 下部揺動部材
18 連結部
19 軸
20 軸
301 山形鋼材
302 陵部
303 山側面
304 山側面
305 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6