(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240220BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/16
(21)【出願番号】P 2020124657
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家亀 寛
(72)【発明者】
【氏名】竹井 啓起
(72)【発明者】
【氏名】林 将平
(72)【発明者】
【氏名】横溝 涼太
(72)【発明者】
【氏名】大槻 慧
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030489(JP,A)
【文献】特開2002-362204(JP,A)
【文献】特開2014-148215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッション又は前記シートバックに傾動可能に設けられ、初期位置に対して傾動されることで前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方が変位されるレバーと、
前記シートクッション又は前記シートバックに取付けられ、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の一方側の面に当接する第1規制部と、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の他方側の面に当接する第2規制部と、を有するカバーと、
を備え
、
前記カバーには、該カバーの内側と外側とを連通すると共に前記レバーが挿通される挿通孔が形成され、
前記第1規制部は、前記カバーの内側に設けられ、
前記第2規制部は、前記カバーの外側に設けられ、
前記レバーが前記初期位置に配置された状態で、前記第2規制部の全体が前記レバーに覆われる車両用シート。
【請求項2】
前記レバーは、前記シートクッションに設けられ、
前記レバーが前記初期位置からシート下方側へ傾動されることで、前記シートクッションがシート下方側へ変位され、
前記レバーが前記初期位置からシート上方側へ傾動されることで、前記シートクッションがシート上方側へ変位され、
前記カバーは、前記シートクッションのシート幅方向の一方側の端部に取付けられ、
前記レバーの傾動範囲の全てにおいて、前記第1規制部及び前記第2規制部が前記レバーに当接している請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッション又は前記シートバックに傾動可能に設けられ、初期位置に対して傾動されることで前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方が変位されるレバーと、
前記シートクッション又は前記シートバックに取付けられ、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の一方側の面に当接する第1規制部と、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の他方側の面に当接する第2規制部と、を有するカバーと、
を備え、
前記レバーは、レバー本体と、該レバー本体に取付けられていると共に着座乗員に操作される操作部と、を含んで構成され、
前記第1規制部及び前記第2規制部が前記操作部に当接し、
前記カバーには、前記第1規制部と隣合って配置されていると共に前記レバー本体とシート幅方向に対向して配置された第3規制部が設けられてい
る車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1~特許文献3には、乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションのシート上下方向への高さを調節する機構を備えた車両用シートが開示されている。これらの文献に記載された車両用シートは、当該車両用シートに着座した乗員によって操作されるレバーを備えている。そして、このレバーを操作することで、シートクッションのシート上下方向への位置を調節することが可能となっている。また、これらの文献に記載された車両用シートでは、レバーの振動を抑制するための凸部が、シートクッションのシート幅方向外側の端部に取り付けられたカバー等に設けられている。この凸部がレバーに当接していることで、レバーの振動を抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-148215号公報
【文献】特開2016-22905号公報
【文献】特開2018-30408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1~特許文献3に記載された車両用シートの構成では、車両用シートに伝達される振動の大きさや周期によっては、レバーの振動に伴う異音の発生を抑制できないことが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、レバーの振動に伴う異音の発生を抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッション又は前記シートバックに傾動可能に設けられ、初期位置に対して傾動されることで前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方が変位されるレバーと、前記シートクッション又は前記シートバックに取付けられ、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の一方側の面に当接する第1規制部と、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の他方側の面に当接する第2規制部と、を有するカバーと、を備え、前記カバーには、該カバーの内側と外側とを連通すると共に前記レバーが挿通される挿通孔が形成され、前記第1規制部は、前記カバーの内側に設けられ、前記第2規制部は、前記カバーの外側に設けられ、前記レバーが前記初期位置に配置された状態で、前記第2規制部の全体が前記レバーに覆われる。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、レバーを初期位置から傾動させることで、シートクッション及びシートバックの少なくとも一方が変位される。ここで、レバーが初期位置に配置されている状態では、カバーに設けられた第1規制部がレバーにおけるシート幅方向の一方側の面に当接すると共に、第2規制部がレバーにおけるシート幅方向の他方側の面に当接する。これにより、レバーのシート幅方向への移動がカバーの第1規制部及び第2規制部によって規制される。その結果、レバーの振動に伴う異音の発生を抑制することができる。
また、請求項1記載の車両用シートによれば、第1規制部がカバーの内側に設けられていることにより、車両用シートの意匠が第1規制部によって損なわれることを抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記レバーは、前記シートクッションに設けられ、前記レバーが前記初期位置からシート下方側へ傾動されることで、前記シートクッションがシート下方側へ変位され、前記レバーが前記初期位置からシート上方側へ傾動されることで、前記シートクッションがシート上方側へ変位され、前記カバーは、前記シートクッションのシート幅方向の一方側の端部に取付けられ、前記レバーの傾動範囲の全てにおいて、前記第1規制部及び前記第2規制部が前記レバーに当接している。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、レバーが初期位置からシート下方側へ傾動されると、シートクッションがシート下方側へ変位される。また、レバーが初期位置からシート上方側へ傾動されると、シートクッションがシート上方側へ変位される。ここで、シートクッションのシート幅方向の一方側の端部に取付けられたカバーには、レバーの傾動範囲の全てにおいて当該レバーに当接する第1規制部及び第2規制部が設けられている。これにより、初期位置に配置されたレバーの振動に伴う異音の発生を抑制することができると共に、レバーが初期位置から上方側又は下方側へ傾動される際における当該レバーのシート幅方向へのぐらつきを第1規制部及び第2規制部によって抑制することができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッション又は前記シートバックに傾動可能に設けられ、初期位置に対して傾動されることで前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方が変位されるレバーと、前記シートクッション又は前記シートバックに取付けられ、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の一方側の面に当接する第1規制部と、少なくとも前記初期位置に配置された前記レバーにおけるシート幅方向の他方側の面に当接する第2規制部と、を有するカバーと、を備え、前記レバーは、レバー本体と、該レバー本体に取付けられていると共に着座乗員に操作される操作部と、を含んで構成され、前記第1規制部及び前記第2規制部が前記操作部に当接し、前記カバーには、前記第1規制部と隣合って配置されていると共に前記レバー本体とシート幅方向に対向して配置された第3規制部が設けられている。
【0013】
請求項4記載の車両用シートによれば、カバーに設けられた第1規制部及び第2規制部がレバーの操作部に当接することにより、レバーの振動に伴う異音の発生を抑制することができる。また、レバーに過大な力が入力されて、レバーがシート幅方向一方側へ変位すると、レバーのレバー本体がカバーに設けられた第3規制部に当接する。これにより、上記の過大な力がレバーに入力された際に、カバーにおける第1規制部の周辺に応力が集中することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用シートは、レバーの振動に伴う異音の発生を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両用シートのシート下方側の部分を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートのシート下方側の部分を示す側面図である。
【
図3】
図2に示された3-3線に沿って切断した車両用シートのカバー及びレバーの断面を示す断面図である。
【
図4】カバーにおいて第1規制部が設けられた部分を拡大して示す
図3に対応する拡大断面図である。
【
図5】カバー及び操作部の図示を省略したレバーを示す斜視図である。
【
図6】カバー及びレバーの操作部をシートクッションフレーム側から見た斜視図である。
【
図7】カバー及び初期位置に配置されたレバーを模式的に示す側面図である。
【
図8】カバー及び上端位置に配置されたレバーを模式的に示す側面図である。
【
図9】カバー及び下端位置に配置されたレバーを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図9を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シートに着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート10は、シートクッション12をシートバック14に対してリクライニングさせるリクライニング機構16と、シートクッション12を上下方向に移動させるリフタ機構18と、を備えている。
【0018】
シートクッション12は、表皮材に覆われたシートクッションパッド20がシートクッションフレーム22に取付けられること等により形成されている。なお、
図1においてはシートクッションパッド20の図示を省略している。
図1に示されるように、シートクッションフレーム22は、左右方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム部24を備えている。また、シートクッションフレーム22は、左右一対のサイドフレーム部24の前端部を左右方向につなぐ前フレーム部26と、左右一対のサイドフレーム部24の後端部を左右方向につなぐ後フレーム部28と、を備えている。シートクッションフレーム22における右側のサイドフレーム部24には、当該右側のサイドフレーム部24を右側から覆うカバー30が取付けられている。なお、このカバー30の細部の構成については、後に詳述する。
図1及び
図2に示されるように、シートクッションフレーム22は、リフタリンク32を介してシートスライドレール34に連結されている。
【0019】
シートバック14は、表皮材に覆われたシートバックパッド36がシートバックフレームに取付けられること等により形成されている。このシートバック14は、シートクッション12の後端部に取付けられている。
【0020】
リクライニング機構16は、シートクッション12とシートバック14との間に設けられている。このリクライニング機構16は、シートバック14の下端部に対して右側に配置されたリクライニングレバー38を備えている。そして、着座乗員がリクライニングレバー38を操作することで、シートバック14をシートクッション12に対してリクライニング(傾動)させることが可能となっている。
【0021】
リフタ機構18は、シートクッションフレーム22に連結されることでシートクッション12を上下方向に移動可能に支持するリフタリンク32と、シートクッションフレーム22の右側のサイドフレーム部24に固定されたリフタブレーキ40と、リフタブレーキ40に傾動可能に連結されたレバー42と、を備えている。
【0022】
図2に示されるように、リフタブレーキ40は、レバー42が初期位置に配置されている状態ではリフタリンク32を所定の姿勢に固定すると共に、レバー42が初期位置から上方側又は下方側へ傾動された際にリフタリンク32の姿勢の固定を解除するように構成されている。また、リフタブレーキ40は、レバー42の傾動に伴い回動する出力部を備えている。そして、この出力部の回転力がリフタリンク32に伝達されることで、リフタリンク32が動かされるようになっている。
【0023】
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、レバー42は、鋼鈑材にプレス加工等が施されることにより形成されたレバー本体44と、レバー本体44に取付けられた操作部46と、を備えている。
【0024】
図2及び
図5に示されるように、レバー本体44は、リフタリンク32に連結される連結部44Aと、連結部44Aから前方側へ向けて延びる第1延在部44Bと、第1延在部44Bの前端から上方側へ向けて屈曲して延びる第2延在部44Cと、第2延在部44Cの上端から前方側へ向けて屈曲して延びる第3延在部44Dと、を備えている。そして、後述する操作部46がレバー本体44の第2延在部44C及び第3延在部44Dに取付けられるようになっている。
【0025】
図1、
図2、
図3及び
図4に示されるように、操作部46は、シート右側から見て略三角形状のブロック状に形成されている。ここで、操作部46において着座乗員に触れられることが想定される右側の面46A、上面46B、下面46C等は、滑らかな面となるように設定されている。なお、操作部46において右側の面46A、上面46B、下面46Cをそれぞれ形成する部分を右壁部46D、上壁部46E及び下壁部46Fと呼ぶ。
【0026】
また、
図6に示されるように、操作部46は、左側が開放された形状となっている。これにより、操作部46の内部には、中空部46Gが形成されている。また、中空部46Gには、上壁部46Eと下壁部46Fとを上下方向につなぐ複数の縦リブ46H及び複数の縦リブ46Hを前後方向につなぐ横リブ46Jが設けられている。
【0027】
ここで、複数の縦リブ46Hの中で中空部46Gの前後方向の中央部に設けられた複数の縦リブ46Hは、前後方向にほぼ等間隔に配置された当接リブ46Kとされている。
図4及び
図6に示されるように、後述するカバー30の外側規制部30Gが複数の当接リブ46Kの左側の端に当接するようになっている。
【0028】
図3に示されるように、操作部46には、レバー本体44の第2延在部44C及び第3延在部44Dが係止される係止部46Lが設けられている。レバー本体44の第2延在部44C及び第3延在部44Dがこの係止部46Lに係止された状態では、当該レバー本体44の第2延在部44C及び第3延在部44Dが操作部46によって覆われるようになっている。
【0029】
図2及び
図3に示されるように、操作部46は、レバー本体44の第2延在部44C及び第3延在部44Dが係止部46Lに係止された状態でレバー本体44の第1延在部44Bにおける右側の面に沿って延びる舌片状の当接片部46Mを備えている。そして、後述するカバー30の内側規制部30Mが当接片部46Mの右側の面に当接するようになっている。
【0030】
次に、カバー30の詳細な構成について説明する。
【0031】
図1及び
図5に示されるように、カバー30は、レバー42の操作部46と同様の樹脂材料を用いて形成されている。このカバー30は、シートクッションフレーム22の右側のサイドフレーム部24側が開放された形状に形成されている。
【0032】
具体的には、カバー30は、シートクッションフレーム22の右側のサイドフレーム部24の前端部から前後方向の中央部にかけての範囲を覆う第1被覆部30Aと、サイドフレーム部24の後端部を覆う第2被覆部30Bと、を備えている。第1被覆部30Aと第2被覆部30Bとの境目には、左右方向に高さの差を有する段差30Cが形成されている。これにより、第2被覆部30Bの右側の面30Eが、第1被覆部30Aの右側の面30Dに対して右側にオフセットしている。
【0033】
カバー30における第1被覆部30Aと第2被覆部30Bとの境目には、当該カバー30の内側である右側のサイドフレーム部24側とカバー30の外側である右側のサイドフレーム部24とは反対側とを連通すると共にレバー42のレバー本体44が挿通される挿通孔30Fが形成されている。この挿通孔30Fは、前方側から見て上下方向を長手方向とする長孔状に形成されている。そして、車両用シート10の組立工程では、レバー42のレバー本体44を挿通孔30Fに挿通させながら、カバー30を右側のサイドフレーム部24に取付ける。次に、レバー本体44においてカバー30の外側に突出している部分である第2延在部44C及び第3延在部44Dに操作部46を取付ける。これにより、操作部46が、カバー30における段差30Cの前方側において第1被覆部30Aの右側の面30Dに沿って配置されるようになっている。
【0034】
図3、
図4、
図5及び
図6に示されるように、カバー30の第1被覆部30Aの右側の面30Dにおいてレバー42の操作部46と左右方向に重なる部分には、操作部46側へ向けて突出する第2規制部としての外側規制部30Gが形成されている。この外側規制部30Gは、上下方向を長手方向とする矩形ブロック状に形成されていると共に右側から見て前方側へ凸となるように緩やかに湾曲している。この外側規制部30Gの右側の端が、操作部46の複数の当接リブ46Kの左側の端に常に当接していることで、操作部46の左側への変位が規制されるようになっている。なお、
図6においては、カバー30の第1被覆部30Aの大部分の図示を省略して操作部46を視認可能に表現している。また、
図6においては、外側規制部30Gを二点鎖線で示している。
【0035】
図6に示されるように、第2被覆部30Bは、左側が開放された形状となっている。これにより、第2被覆部30Bの内部には、中空部30Hが形成されている。なお、第2被覆部30Bにおいて中空部30Hの底を形成する部分を底壁部30Jと呼ぶ。底壁部30Jには、複数の縦リブ30K及び複数の横リブ30Lが左側へ向けて立設されている。これにより、第2被覆部30Bの剛性が確保されている。また、底壁部30Jには、操作部46の当接片部46M側へ向けて突出する第1規制部としての内側規制部30Mが形成されている。この内側規制部30Mは、上下方向を長手方向とする薄肉のリブ状に形成されていると共に左側から見て前方側へ凸となるように緩やかに湾曲している。
図3及び
図6に示されるように、内側規制部30Mの左側の端が、操作部46の当接片部46Mの右側の面に常に当接していることで、操作部46の右側への変位が規制されるようになっている。
【0036】
また、底壁部30Jにおける内側規制部30Mの後方側には、レバー本体44の第1延在部44B側へ向けて突出する第3規制部としての内側サブ規制部30Nが形成されている。この内側サブ規制部30Nは、内側規制部30Mと同様に上下方向を長手方向とする薄肉のリブ状に形成されていると共に左側から見て前方側へ凸となるように緩やかに湾曲している。この内側サブ規制部30Nの左側の端は、レバー本体44の第1延在部44Bの右側の面に近接してかつ離間して配置されている。
【0037】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0038】
図1及び
図2に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10に着座した乗員が、レバー42の操作部46を把持して、当該レバーを傾動させることで、シートクッション12の上下方向への位置が調節される。
【0039】
具体的には、レバー42を
図1、
図2及び
図7に示された初期位置A1から
図8に示された上端位置A2側へ傾動させると、シートクッション12が上昇する。これに対して、レバー42を
図1、
図2及び
図7に示された初期位置A1から
図9に示された下端位置A3側へ傾動させると、シートクッション12が下昇する。なお、レバー42は、図示しない付勢部材によって初期位置A1へ戻るようになっている。
【0040】
ここで、
図1、
図2、
図3及び
図7に示されるように、レバー42が初期位置A1に配置されている状態では、カバー30に設けられた外側規制部30Gの右側の端が、レバー42の操作部46の複数の当接リブ46Kの左側の端に当接している。これに加えて、カバー30に設けられた内側規制部30Mの左側の端が、レバー42の操作部46の当接片部46Mの右側の面に当接している。これにより、レバー42のシート幅方向への移動がカバー30の外側規制部30G及び内側規制部30Mによって規制される。その結果、レバー42の振動に伴う異音の発生を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、
図7~
図9において模式的に示されるように、レバー42の傾動範囲の全てにおいて当該レバー42に当接する外側規制部30G及び内側規制部30Mが設けられている。これにより、初期位置A1に配置されたレバー42の振動に伴う異音の発生を抑制することができると共に、レバー42が初期位置A1から上方側又は下方側へ傾動される際における当該レバー42の左右方向(シート幅方向)へのぐらつきを外側規制部30G及び内側規制部30Mによって抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、
図3及び
図6に示されるように、レバー42を規制する外側規制部30G及び内側規制部30Mのうち内側規制部30Mが、カバー30の内側に配置された構成となっている。これにより、車両用シート10の意匠が内側規制部30Mによって損なわれることを抑制することができる。また、本実施形態では、
図2及び
図7に示されるように、レバー42が初期位置A1に配置された状態で、外側規制部30Gの全体がレバー42の操作部46に覆われるようになっている。これにより、車両用シート10の意匠が外側規制部30Gによって損なわれることを抑制することができる。なお、外側規制部30G及び内側規制部30Mを設ける位置は、カバー30の構成を考慮して適宜設定すればよい。
【0043】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、レバー42に右側への過大な力が入力されて、レバー42が右側へ傾くように変位すると、レバー42のレバー本体44の第1延在部44Bがカバー30に設けられた内側サブ規制部30Nに当接する。これにより、上記の過大な力がレバー42に入力された際に、カバー30における内側規制部30Mの周辺に応力が集中することを抑制することができる。一例として、内側規制部30Mの座屈を抑制することができる。なお、内側サブ規制部30Nを設けるか否かは、カバー30における内側規制部30M周辺の強度を考慮して適宜設定すればよい。
【0044】
以上説明した本実施形態では、シートクッション12の上下方向の位置を調節するためのレバー42の振動に伴う異音の発生を抑制するために本発明の構成を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の構成は、シートクッション12及びシートバック14の少なくとも一方を変位させて調節するためのレバーの振動に伴う異音の発生を抑制するため適用することができる。また、レバーは、シートバック側に設けられていてもよい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用シート。
12 シートクッション
14 シートバック
A1 初期位置
30 カバー
30F 挿通孔
30G 外側規制部(第2規制部)
30M 内側規制部(第1規制部)
30N 第3規制部
42 レバー
44 レバー本体
46 操作部