(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】海苔の微小異物検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2020145910
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
(72)【発明者】
【氏名】川島 久幸
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162685(JP,A)
【文献】特開2001-299288(JP,A)
【文献】特開2012-217427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 33/00 - G01N 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥海苔の生産工程で使用される微小異物検出装置であって、透過方式により海苔中に付着した微小異物を検出,判別可能であり、コンベア,光源,カメラ,判別手段を有しており、
該コンベアは、海苔を搬送し、該光源は、搬送される海苔に対向配設され、該カメラは、該光源からの照射光を、海苔を介し透過光として受光可能であり、
該判別手段は、該カメラの検出データについて、微小異物用に設定された閾値以下で面積値以上のものが存する場合、透過光を受光不能な微小異物有と判別し、
微小異物判別用の閾値は、微小異物より形状大の通常異物判別用の閾値に比し、低く設定されると共に、
微小異物判別用の面積値は、通常異物判別用の面積値に比し、小さく設定されていること、を特徴とする海苔の微小異物検出装置。
【請求項2】
請求項1において、微小異物判別用の閾値は、256フル階調で50階調以下に設定され、面積値は、0.2mm
2以上に設定され、
通常異物判別用の閾値は、256フル階調で110階調以下に設定され、面積値は、1.5mm
2以上に設定されること、を特徴とする海苔の微小異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の微小異物検出装置に関する。すなわち、海苔中に付着した微小異物、特に微小金属の検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
乾燥海苔(以下、単に海苔という)の生産工程では、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥の各工程の後、検査,集積,整列,折曲,結束の各工程を辿って、海苔が生産されている。
検査工程では、検査装置により、各種夾雑物や金属等の異物が付着した海苔の検出,判別が行われると共に、形状不良の海苔の検出,判別も行われる。異物は、海苔の外表面つまり表面や裏面に付着すると共に、海苔中つまり海苔内部にも付着している。
そして、このように海苔中に付着した異物の検出,判別には、従来、検査装置に金属検査装置が併用されていた。
【0003】
《従来技術》
このような従来の検査工程の検査装置等について、更に詳述する。
検査装置では、海苔の外表面に付着した異物については、光源とアナログモノクロカメラを用い、反射方式にて反射光により検出,判別していた。
これに対し、海苔中に付着した外見上見えない異物(海苔で覆われ埋もれた異物)については、光源とアナログモノクロカメラを用い、透過方式にて検出,判別していた。透過光,透過面積等により検出,判別していた。
しかしながら、海苔内部に付着した異物中、面積1.5mm2以上程度の通常異物より遥かに小さい微小異物、特に微小金属の検出,判別は、小さ過ぎて困難とされており、専用の金属検査装置が併用されていた。
すなわち、従来の検査装置の透過方式の検出,判別(面積1.5mm2以上が目安)では、極めて小さい微小金属に関し、分解能不十分,検出性能不安定,誤動作等が指摘されていた。もって、磁界変化で検出,判別する金属検査装置(金属探知機)が、必須的に別途導入されていた。検査装置に金属探査機が、併設,連設,又は組込まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このような従来技術としては、例えば次の特許文献1,2中に示されたものが、挙げられる。
【文献】特開2012-217427号公報
【文献】特開2015-198594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《各問題点》
ところで、このような従来技術については、次の問題が課題として指摘されていた。
第1に、コスト面に問題が指摘されていた。
すなわち、微小金属専用の金属検査装置(金属探知機)が、検査装置に併設,連設,又は組込まれており、その分、コストが嵩んでいた。金属検査装置の併用,導入に伴い、その分コスト負担が増加し、装置が高額化していた。
第2に、スペース面に問題が指摘されていた。
すなわち、金属検査装置が併設,連設,又は組込まれた分だけ、海苔の検査エリアが広域化,長大化し、スペースを取っていた。金属検査装置の併用,導入に伴い、その分、装置が大型化し別途スペースを要していた。
第3に、検出精度面にも問題が指摘されていた。
すなわち、金属検査装置は、微小金属以外の近くの金属メカ部位に反応したり、振動に対して敏感であり、悪影響を受けノイズが生じ易かった。もって、検出精度向上,誤動作防止のため、絶縁,除電,その他のノイズ対策を要していた。
【0006】
《本発明について》
本発明の海苔の微小異物検出装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、コスト面に優れると共に、第2に、スペース面に優れ、第3に、検出精度にも優れた、微小異物検出装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔の微小異物検出装置は、乾燥海苔の生産工程で使用される。そして、透過方式により海苔中に付着した微小異物を検出,判別可能であり、コンベア,光源,カメラ,判別手段を有している。
該コンベアは、海苔を搬送する。該光源は、搬送される海苔に対向配設される。
該カメラは、該光源からの照射光を、海苔を介し透過光として受光可能である。
該判別手段は、該カメラの検出データについて、微小異物用に設定された閾値以下で面積値以上のものが存する場合、透過光を受光不能な微小異物有と判別する。
【0008】
そして、微小異物判別用の閾値は、微小異物より形状大の通常異物判別用の閾値に比し、低く設定されると共に、微小異物判別用の面積値は、通常異物判別用の面積値に比し、小さく設定されていること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔の微小異物検出装置では、請求項1において、微小異物判別用の閾値は、256フル階調で50階調以下に設定され、面積値は、0.2mm2以上に設定されている。通常異物判別用の閾値は、256フル階調で110階調以下に設定され、面積値は、1.5mm2以上に設定されること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)海苔は、微小異物検出装置において、コンベアにて搬送される。
(2)そして、海苔中に付着した微小金属等の微小異物等が、検出,判別される。
(3)すなわち、光源からの照射光が、海苔を介し、透過光としてカメラに受光可能であり、カメラの検出データに基づき、判別手段が異物の付着の有無を判別する。
(4)判別手段は、カメラの検出データについて、設定された閾値以下で面積値以上のものが存する場合、微小異物の付着有の海苔と判別する。
(5)代表例では、微小異物判別用の閾値は、例えば50階調以下、面積値は、0.2mm2以上(又は0.5mm2以上)に設定される。
これに対し、通常異物判別用の閾値は、110階調以下(又は150階調以下)、面積値は、1.5mm2以上に設定される。
(6)なお微小異物としては、微小金属が代表的である。通常異物としては、各種夾雑物が代表的である。光源は、赤外光LEDよりなる。カメラは、デジタルモノクロ・ラインスキャンカメラよりなる。
(7)判別手段は、搬送、走査される海苔について、例えば各画素の階調値の検出データ,所定閾値,面積値等に基づき、判別を行う。
(8)そして、微小異物付着有の海苔は、通常異物付着有や異物付着無の海苔とは別の専用バケットに、搬出,廃棄される。
(9)微小異物検出装置は、このように、一般的な検査装置の透過方式を利用して、検出,判別を実施する。金属検査装置(金属探知機)を併用,導入することなく、検出,判別を実施する。
(10)この微小異物検出装置は、一般的な検査装置を活用すると共に、デジタルカメラを採用し、閾値や面積値を設定したことにより、検出,判別が精度高く安定的に実施される。ノイズの虞もなく、ノイズ対策も要しない。
(11)そこで、本発明に係る海苔の微小異物検出装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、コスト面に優れている。
本発明の微小異物検出装置は、既存の一般的な検査装置を利用して、透過方式により海苔中に付着した微小異物等を、検出,判別する。そして、デジタルカメラを採用すると共に、微小異物と通常異物の判別用に、それぞれの閾値と面積値を設定したことを、特徴とする。
もって、海苔中に付着した微小異物特に微小金属と通常異物とを、透過方式により共に検出,判別可能である。前述したこの種従来技術のように、微小金属を検出,判別する金属検査装置(金属探知機)を、通常異物を検出,判別する検査装置に、併設,連設,組込み等しないので、コスト面に優れている。
2つの検出,判定を、1つの検出装置で実施し、金属検査装置を併用,導入することを要しないので、その分、コスト負担が軽減され、装置が低額化される。
【0012】
《第2の効果》
第2に、スペース面に優れている。
本発明の微小異物検出装置は、既存の検査装置を利用し、透過方式により、海苔中に付着した微小異物特に微小金属と通常異物とを、同時にそれぞれ検出,判別可能である。
前述したこの種従来技術のように、金属検査装置(金属探知機)を、検査装置に併設,連設,組込等しないので、スペース面に優れている。
金属検査装置を併用,導入しないので、その分、海苔の検査エリアが広域化,長大化せず、装置が大型化せず、設置スペース,別途スペースを取ることもなく、省スペース化が実現される。
【0013】
《第3の効果》
第3に、検出精度にも優れている。
本発明の微小異物検出装置は、既存の検査装置を利用すると共に、デジタルカメラを採用し、閾値と面積値を設定したことを、特徴とする。
もって、海苔中に付着した微小異物特に微小金属を、精度に優れ安定して検出,判別可能である。
前述したこの種従来技術のように、金属検査装置(金属探知機)を併用,導入,使用しないので、この面からも、微小金属を精度に優れ安定して検出,判別可能である。すなわち、ノイズ発生の虞がなく、ノイズ対策も不要である。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る海苔の微小異物検出装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、海苔の検査装置全体の側面説明図である。
【
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、検出データの階調値と異物判別用の閾値等との関係を示す、説明図である。そして(1)図は、異物無のケース、(2)図は、通常異物判別のケース、(3)図は、微小異物(微小金属)判別のケース、(4)図は、通常異物判別および微小異物判別のケースを示す。
【
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、画素説明図、(2)図は、海苔一枚分の検出データの展開データマップである。
【
図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、海苔の平面説明図、(2)図は、海苔の断面説明図であり、通常異物有を示す。(3)図は、海苔の平面説明図、(4)図は、海苔の断面説明図であり、微小異物(微小金属)有を示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《海苔Aについて》
まず、海苔Aについて説明する。
海中から摘取されて生産工程で加工製造される海苔Aは、規格上、左右横幅寸法190mm、前後縦長さ寸法210mm程度の長方形シート状をなす(
図4を参照)。そして、夾雑物や金属が異物Bとして多々付着している。
すなわち、ビニール片,羽毛,貝殻,紙,木片,木屑,石屑,砂,土,微細石,海老,虫等々の夾雑物が、付着していることも多い。又、鉄を始めアルミ,銅,ステンレス,その他の金属の歯こぼれ片,微小片,磨耗片,錆,微粉,残滓等々が、付着していることもある。
海苔Aについては、以上のとおり。
【0016】
《検査装置1について》
次に、検査装置1について、
図1を参照して一般的に説明する。
加工製造された海苔Aには、異物Bが付着している可能性があるので、検査装置(異物選別機)1にて、その検出,判別が実施される。異物Bが付着した海苔Aは、他の良品の海苔Aから取り除かれて、別途回収される。
検査装置1では、海苔Aは、ベルトコンベアやローラーコンベア等のコンベア2にて、搬送方向Cに水平搬送される。そして、搬送される海苔Aについて、異物Bが付着した海苔Aの検出,判別,取り除きが行われる。
【0017】
すなわち、上側の表用光源3からの照射光を、海苔Aを介し上側の表用カメラ4が反射光として受光し、その検出データに基づき、判別手段5にて、海苔Aの表面に付着した表異物Bの検出,判別が行われる。
又、下側の裏用光源6からの照射光を、海苔Aを介し下側の裏用カメラ7が反射光として受光し、その検出データに基づき、判別手段5にて、海苔Aの裏面に付着した裏異物Bの検出,判別が行われる。
更に、下側の中用光源8からの照射光を、海苔Aを介し上側の中用カメラ9が透過光として受光し、その検出データに基づき、判別手段5にて、海苔A中つまり海苔A内部に付着した中異物Bの検出,判別が行われる。
なお検査装置1では、形状不良の海苔Aの検出,判別も行われる。すなわち、下側の形状用光源10からの照射光を、海苔Aを介し上側の形状用カメラ11が受光し、その検出データに基づき、判別手段5にて、形状不良の海苔Aの検出,判別が行われる。
検査装置1の一般的説明については、以上のとおり。
【0018】
《本発明の概要》
以下、本発明について、
図1~
図4を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の微小異物検出装置12は、上述した検査装置1を利用し、その一環として組み込まれている。つまり検査装置1は、部分的に微小異物検出装置12として利用,把握される。
そこで微小異物検出装置12は、まず、一般的な検査装置1に準じ、海苔Aの生産工程で使用され透過方式により海苔A中に付着した異物Bを検出,判別可能であり、コンベア2,中用光源8,中用カメラ9,判別手段5等を備えている。
そして検査装置1に準じ、コンベア2は、海苔Aを搬送し、中用光源8は、搬送される海苔Aに対向配設され、中用カメラ9は、中用光源8からの照射光を、海苔Aを介し透過光として受光可能である。
【0019】
これと共に、本発明の微小異物検出装置12は、上述した検査装置1に比し、次の特徴を備えている。
本発明の判別手段5は、中用カメラ9の検出データについて、微小異物B
1用に設定された閾値以下で面積値以上のものが存する場合、透過光を受光不能な微小異物B
1有と判別すること、を特徴とする。
すなわち、微小異物B
1判別用の閾値は、微小異物B
1より形状大の通常異物B
2判別用の閾値に比し、低く設定されると共に、微小異物B
1判別用の面積値は、通常異物B
2判別用の面積値に比し、小さく設定されていること、を特徴とする(微小異物B
1や通常異物B
2については、
図4を参照)。
微小異物B
1としては、微小金属が代表的である。中用光源8は、赤外光LEDよりなり、中用カメラ9は、デジタルモノクロ・ラインスキャンカメラよりなる。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の微小異物検出装置12について、詳述する。
【0020】
《本発明の詳細》
微小異物検出装置12について、微小異物B1,中用光源8,中用カメラ9,判別手段5等に関し、更に詳述する。
まず、微小異物B1としては微小金属が代表的であり、微小金属は、金属の歯こぼれ片,微小片,磨耗片,錆,微粉,又は残滓よりなる。
すなわち、海苔A中の内部に付着する微小異物B1の大部分は、微小金属である。微小金属以外の夾雑物も、微小異物B1に含まれることもあるが若干に過ぎず、微小異物B1は、大部分が微小金属よりなる。又、異物Bとしての金属は、ほぼ微小金属化されると共に海苔A内部に付着している。これに対し通常異物B2は、殆ど夾雑物よりなる。
中用光源8は、一般的な検査装置1と同様、赤外光LEDが使用され、海苔Aの左右横幅を照射可能な長尺状をなす。
中用カメラ9として、この微小異物検出装置12では、4096bitのデジタルモノクロ・ラインスキャンカメラが採用されている。前述した一般的な検査装置1では、2048bitのアナログモノクロ・ラインスキャンカメラが用いられていたのに比し、デジタル化が図られている。そして海苔Aの左右横幅に対応し、撮像素子が左右横方向に線状配置されている。
なお中用カメラ9としては、ラインスキャンカメラのほか、撮像素子が縦横二次元的に配置されて一度にデータ検出するエリアカメラも、使用可能である。
【0021】
次に、判別手段5について述べる。判別手段5は、例えばマイクロコンピュータよりなり、中用カメラ9の検出データに基づき、閾値と面積値とについて判別する。
そしてこの透過方式の微小異物検出装置12では、微小異物B1判別用の閾値と面積値が、通常異物B2判別用と共に設定される。
代表例では、微小異物(微小金属)B1判別用の閾値が、256フル階調で50階調以下に設定され、面積値は、0.2mm2以上(又は0.5mm2以上)に設定される。
これに対し、より形状大の通常異物B2判別用の閾値は、256フル階調で110階調以下(又は150階調以下)に設定され、面積値は、1.5mm2以上に設定される。
因に階調は、0階調(黒)から~256階調(白)迄の濃淡・明暗(強弱・入光量)を、フル階調256段階で表現する。又、上記閾値が110階調(又は150階調)を越えると、明る過ぎて検出が容易でなくなる。又、面積値0.2mm2未満(又は0.5mm2未満)は、過小につき検出が容易でなくなる。
【0022】
すなわち、微小異物B1判別も通常異物B2判別も、共に、所定閾値以下の検出データで、所定面積値以上の検出データの場合は、所定異物B有と判別する。このように両判別は、共通の判別方式よりなるが、閾値と面積値の設定値が大きく相違している。
すなわち、形状がより大の通常異物B2判別用では(一般的な検査装置1におけると同様)、海苔A自体を検出してしまわないように、つまり誤動作しないように、面積値を大きく設定すると共に、閾値も誤動作を考慮し低めに設定。
これに対し、微小異物B1判別用では、海苔A自体を検出してしまわないように、つまり誤動作しないように、まずは、閾値を極端に低く設定、面積値は微小異物B1検出の必要値に設定。
【0023】
このような微小異物検出装置12の微小異物B1判別用の設定については、次のa,b,cの各点のとおり。
a.まず、中用光源8の照射光である赤外光(波長850nm程度)は、金属を透過しにくい特性よりなる。もって、透過できない箇所を微小金属つまり微小異物B1有との判別が容易化する。これに対し、夾雑物は金属に比し赤外光を透過し易く、海苔Aは赤外光を極めて透過し易い。
b.中用カメラ9として、4096bitのデジタルモノクロ・ラインスキャンカメラを採用。もって、海苔Aの横幅方向の分解能が、例えば0.12mm程度と倍増し(一般的な検査装置1の2048bitのアナログカメラの2倍)、上記面積値0.2mm2以上(又は0.5mm2以上)の設定が可能化する。
c.中用カメラ9として、4096bitのデジタルモノクロ・ラインスキャンカメラを採用。もって、海苔Aの縦長さ方向の処理スピードつまり走査周期が、倍増し(一般的な検査装置1の2048bitのアナログカメラに比し2~3倍)、海苔Aの縦長さ方向の分解能0.2mm、そして上記面積値0.2mm2以上(又は0.5mm2以上)の設定が可能化する。
本発明の詳細については、以上のとおり。
【0024】
《
図2の例》
次に、本発明の微小異物検出装置12に関し、
図2の例を説明する。
図2は、中用カメラ9の検出データの階調値と、判別手段5の判別用の閾値等との関係を示す。
・図示例では、縦軸方向に階調値を取り、横軸方向に海苔A静止状態での検出データを取る。
・海苔Aの左右横幅寸法が190mmなので、図示例では、中用カメラ8のカメラ視野は、余裕をもって240mmとした。もって0~240mmで、0~4096bitとなる。因に1画素サイズは7μm×7μm。
・しかしながら、中用カメラ8のカメラ横方向の分解能は、4096bitも必要ないので、図示例ではカメラ内部での半分処理により、半分の2048bitの検出データを使用。
・もって1bitは240mm/2048bitで、中用カメラ8のカメラ横方向の分解能は、0.12mm。
・そして判別手段5において、微小異物(微小金属)B
1判別用の閾値は、256フル階調で50階調以下に、面積値は、0.2mm
2以上に設定。又、通常異物B
2判別用の閾値は、110階調以下に、面積値は、1.5mm
2以上に設定。
・なお図示例では、異物Bは、面積値(mm
2)によらず、横幅値(mm)で代用(概算,推測)。すなわち、海苔Aそして異物Bは、実際は縦の搬送方向Cに搬送されるが、図示例では静止停止状態で把握。
【0025】
さて、このような微小異物検出装置12において、
図2の(1)図は、対象の海苔Aに異物B付着無とされるケースである。
図2の(2)図は、対象の海苔Aについて、通常異物B
2付着有と判別されるケースである。このケースについては、次のとおり。
・まず、図示の1.5mm幅の異物Bは、上述により分解能0.12mmに鑑み、1.5mm/0.12mmで12.5bit分の照射光を遮蔽し、中用カメラ9にて受光不能とする。
・そして、検出面積値が1.5mm
2以上(上述により1.5mm幅から推測,概算)で、図示のように閾値が110階調以下なので、通常異物B
2付着有として判別。
・因に、仮に閾値が50階調だと、通常異物B
2としては判別不能。
【0026】
図2の(3)図は、対象の海苔Aについて、微小異物(微小金属)B
1付着有と判別されるケースである。このケースについては、次のとおり。
・まず、図示の0.5mm幅の異物Bは、分解能0.12mmに鑑み、0.5mm/0.12mmで4.16bit分の照射光を遮蔽し、中用カメラ9にて受光不能とする。
・そして、検出面積値が0.5mm
2以上(上述により0.5mm幅から推測,概算)で、図示のように閾値が50階調以下なので、微小異物B
1付着有として判別。
・因に、通常異物B
2は面積値1.5mm
2以上(1.5mm幅)なので、閾値が110階調以下ではあるが、通常異物B
2としては判別されない。
【0027】
図2の(4)図では、対象の海苔Aについて、レアケースではあるが通常異物B
2付着有としても微小異物B
1付着有としても、判別されてしまうケースである。このケースについては、次のとおり。
・例えば、異物Bの夾雑物が石,砂等とし、中用カメラ9よりの照射光である赤外光を透過しにくい。
・まず、図示の1.5mm幅の異物Bは、分解能0.12mmに鑑み、1.5mm/0.12mmで12.5bit分の照射光を遮蔽し、中用カメラ9にて受光不能とする。
・そして、検出面積値が1.5mm
2以上(上述により1.5mm幅から推測,概算)で、図示のように閾値が110階調以下なので、通常異物B
2付着有として判別。
・これと共に、検出面積値が0.5mm
2以上(1.5mm幅から推測,概算)で、図示のように閾値が50階調以下なので、微小異物B
1付着有としても判別。
図2の例については、以上のとおり。
【0028】
《
図3の例》
次に、本発明の微小異物検出装置12に関し、
図3の例を説明する。
図3の(1)図は、画素説明図、(2)図は、海苔A一枚分の検出データの展開データマップを示す。
・前述したよう中用カメラ9は、4096bitのデジタルモノクロ・ラインスキャンカメラよりなる。
・左右横幅方向の分解能は、前述したように、4096bitも必要ないので、2048bitの検出データを使用。もって、1bitは240mm/2048bitで、カメラ横方向の分解能は0.12mm。
・そして海苔Aは、縦の搬送方向Cに搬送される(最高66m/分)。縦方向の分解能は0.2mmに設定。
・そこで1スキャン毎に、それぞれ横方向2048個の階調値の検出データが、海苔Aの縦長さ分(210mm)について0.2mm毎に、中用カメラ9から判別手段5に送出される。すなわち、縦長さ210mm/0.2mmで、1050回だけ送出されるので、計2048×1050個の検出データ(スキャンデータ)が送出される。
【0029】
そして図示例では、1画素を0.2mm
2とすると共に、閾値を50階調に設定。すると図示では、50階調以下の画素が4個検出されている。もって判別手段5は、その海苔Aについて、0.2mm
2×4=0.8mm
2の異物B有と判別する。
そして、微小異物(微小金属)B
2判定用の閾値が50階調以下で、面積値が0.2mm
2以上の設定なので、このような設定値に照らし、その異物Bは、微小異物(微小金属)B
2であると、判別される。
図3の例については、以上のとおり。
【0030】
《作用等》
本発明の微小異物検出装置12は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)海苔Aの生産工程では、海苔Aは、微小異物検出装置12において、コンベア2にて搬送方向Cに搬送される(
図1を参照)。
【0031】
(2)このように搬送される海苔Aは、海苔A中に付着した微小金属等の微小異物B1および通常異物B2について、透過方式により検出,判別される。
【0032】
(3)すなわち微小異物検出装置12では、中用光源8からの照射光が、海苔Aを介し、透過光として中用カメラ9に受光可能となっている。そして判別手段5が、中用カメラ9の検出データに基づき、異物B付着の有無を判別する(
図1を参照)。
【0033】
(4)微小異物検出装置12の判別手段5は、その海苔Aの中用カメラ9の検出データについて、設定された閾値以下で面積値以上のものが存する場合、透過光を受光不能な微小異物Bの付着有の海苔Aと判別する。
そして、微小異物B1判別用の閾値は、通常異物B2判別用の閾値に比し、遥かに低く設定されると共に、微小異物B1判別用の面積値は、通常異物B2判別用の面積値に比し、遥かに小さく設定される。
【0034】
(5)代表例では、微小異物B1判別用の閾値は、256フル階調で50階調以下に設定され、面積値は、0.2mm2以上(又は0.5mm2以上)に設定される。
これに対し通常異物B2判別用の閾値は、256フル階調で110階調以下(又は150階調以下)に設定され、面積値は、1.5mm2以上に設定される。
【0035】
(6)なお、微小異物B
1としては微小金属が代表的である。微小金属は、金属の歯こぼれ片,微小片,摩耗片,錆,微粉,又は残滓よりなる。通常異物B
2は、微小異物B
1より形状大の各種夾雑物よりなる(
図4を参照)。
又、中用光源8は、赤外光LEDよりなる。中用カメラ9は、4096bitのデジタルモノクロ・ラインスキャンカメラよりなる。
【0036】
(7)判別手段5は、搬送,走査される海苔Aについて、図示例では、その各画素の階調値の検出データと、所定閾値や面積値とを比較して、判別を実施する(
図2,
図3を参照)。
【0037】
(8)そして、異物B付着無の良品海苔Aと、異物B付着有の不良海苔Aとは、異なるバケットへと搬出される(
図1を参照)。
なお、微小異物B
1付着有の海苔Aは、再利用困難なので、専用バケットに搬出されて廃棄される。これに対し、通常異物B
2付着有の海苔Aは、通常異物B
2除去により、良品海苔A化される。
【0038】
(9)さて、微小異物検出装置12は、以上のように、一般的な検査装置1の透過方式を利用して、微小異物B1や通常異物B2を検出,判別する。
特に、微小金属を微小異物B1として検出,判別する。金属検査装置(金属探知機)を併用,導入することなく、微小金属を検出,判別する。
【0039】
(10)そして、このような微小異物検出装置12による微小異物B1等の検出,判別は、既存の検査装置1を活用すると共に、中用カメラ9としてデジタルカメラを採用し、微小異物B1や通常異物B2用の閾値や面積値を設定したことにより、精度高く安定的に実施される。ノイズ発生の虞もなく、ノイズ対策も不要である。
作用等については以上のとおり。
【符号の説明】
【0040】
A 海苔
B 異物
B1 微小異物(微小金属)
B2 通常異物
C 搬送方向
1 検査装置
2 コンベア
3 表用光源
4 表用カメラ
5 判別手段
6 裏用光源
7 裏用カメラ
8 中用光源
9 中用カメラ
10 形状用光源
11 形状用カメラ
12 微小異物検出装置