(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】延線工事用の電線接続方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20240220BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240220BHJP
H01R 4/20 20060101ALI20240220BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G1/02
H01R4/20
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2020166293
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505268677
【氏名又は名称】株式会社九建
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 眞二
(72)【発明者】
【氏名】塚野 香
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-51711(JP,A)
【文献】実開昭48-85178(JP,U)
【文献】実開昭49-458(JP,U)
【文献】特開2013-126306(JP,A)
【文献】特開昭59-226484(JP,A)
【文献】特開2019-201511(JP,A)
【文献】特開平8-88914(JP,A)
【文献】特開平3-256512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 1/02
H01R 4/20
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線とこれを覆う被覆より線からなる複数の電線の端部同士を接続して支持物に吊られた金車に通し、ウィンチで牽引して支持物間に延線する工法に用いられる電線の接続方法であって、
接続される2本の前記電線の被覆より線を端部から所定長さ範囲にわたって切断除去することによって、所定長さの心線露出部を形成する第1の工程と、
前記各電線の切断された被覆より線の端部の外周に金属製の被覆線キャップを外挿し、これを外周から前記被覆より線及び前記心線もろとも圧縮して被覆より線の外周に圧着する第2の工程と、
前記2本の電線の心線露出部同士を重ね合わせ、当該重ね合わせ部に相互間隔を置いて複数の金属製圧縮スリーブを外挿し、これを重ね合わせ部の外周に圧縮接続する第3の工程とを含むことを特徴とする電線接続方法。
【請求項2】
前記被覆線キャップは、前記電線の切断された被覆より線の端部の外周に外挿される筒状部と、当該筒状部の一端側に設けられ前記切断された被覆より線の端部に当接すると共に前記心線露出部を貫通させる孔を有する端壁部とを具備することを特徴とする請求項1に記載の電線接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の延線工事の際に用いられる電線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電線の端部同士を延線クランプを介して仮接続し、これを鉄塔に吊られた金車に通し、ウィンチで牽引して鉄塔間に延線する工法が知られている。この延線工法において、電線の相互間を仮接続する延線クランプとして、例えば、電線の端部にくさびによって固定するくさび型延線クランプや、電線の端部のうち鋼心線の部分を鋼心線圧縮部に挿入して圧縮すると共に、アルミより線の部分をアルミ線圧縮部に挿入して圧縮接続する圧縮型延線クランプが知られている(特許文献1)。これらの延線クランプを用いて送電線の端部相互間を接続する場合には、それぞれの電線の端部に接続された延線クランプのアイ部同士をボルトで結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の延線クランプを用いた電線の接続方法による場合には、接続部に棒状の延線クランプが2つ並ぶため、接続部が金車を通過する時、延線クランプが金車に引っかかり、急激に張力が増加する。張力は、クランプの外径が大きいほど、また、長さが長いほど大きくなるが、クランプの外径・長さの縮小は引張強度の確保のために限界がある。張力が増加すると、電線のダンピングなどが生じるおそれがある。特に、リターン延線工法では、金車通過時に延線クランプの抱角が大きくなるため、通過抵抗が大きくなり、重大事故が起こる可能性が高まる。そのため、延線区間全体の監視が必要で、多くの人工や時間が必要となる。
したがって、本発明は、電線の接続部が金車を通過する際、急激な張力の増加を生じない電線の接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の電線の接続方法は、接続される2本の電線1の被覆より線2を端部から所定長さ範囲にわたって切断除去することによって、所定長さの心線露出部3aを形成する第1の工程と、切断された被覆より線2の端部2aの外周に金属製の被覆線キャップ4を外挿し、これを外周から被覆より線2および心線3もろとも圧縮して被覆より線2の外周に圧着する第2の工程と、2本の電線1の心線露出部3a同士を重ね合わせ、当該重ね合わせ部に相互間隔を置いて複数の金属製圧縮スリーブ5を外挿し、これを重ね合わせ部の外周に圧縮接続する第3の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば被覆線キャップ4によって被覆より線2の端部が結束把持され、そこから延線方向に離れた位置において心線露出部3aが相互間隔を置いて複数の圧縮スリーブ5によって結束把持されるため、電線1の相互間は複数の比較的短い圧縮スリーブ5によって強固に接続されると共に、被覆より線2の端部2aは被覆線キャップ4によって確実に保護され、かつ電線の硬点となる被覆線キャップ4と複数の圧縮スリーブ5が延線方向に分散配置されるため、電線接続部が金車Pを通過する際、金車Pに沿って比較的柔軟に湾曲し、急激な張力の増加を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の方法による電線の接続部を示す斜視図である。
【
図2】本発明の方法による電線の接続工程を示す説明図である。
【
図5】(A)は本発明の方法に使用する被覆線キャップの断面図、(B)は圧縮スリーブの斜視図である。
【
図6】本発明の方法による電線接続部の金車通過状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
心線3とこれを覆う被覆より線2とからなる電線1の延線工事のために、本発明の方法により接続された2本の電線1の接続部を
図1に示す。以下、心線が鋼より線からなる鋼心線であり、被覆より線がアルミより線である鋼心アルミより線を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
図1において、2本の電線1は、アルミより線2の端部を被覆するアルミ線キャップ4と鋼心線3同士を接続する複数の圧縮スリーブ5を用いて接続される。
【0009】
上記2本の電線1の接続方法について説明する。まず、
図2(A)に示すように、接続すべき2本の電線1の各端部のアルミより線2を所定の長さ切断して除去し、鋼心線3の露出部3aを形成する。
【0010】
次いで、
図2(B)に示すように、各電線1の切断されたアルミより線2の端部2aの外周に金属製のアルミ線キャップ4を鋼心線露出部3a側から外挿して装着する。アルミ線キャップ4は、アルミ等の金属製で、切断されたアルミより線2の端部2aの外周に外挿される筒状部4aと、この筒状部4aの一端側に設けられる端壁部4bとを具備する。端壁部4bは、鋼心線露出部3aを貫通させる孔4cを有し、内側面には、アルミより線2の端面を当接させることができる。
【0011】
次いで、
図2(C)、
図3に示すように、油圧圧縮器等により、アルミ線キャップ4の筒状部4aを外側からアルミより線2、鋼心線3もろとも圧縮してアルミより線2の外周に圧着する。これにより、アルミより線2の端部2aが被覆され、鋼心線3の外周に強固に結束される。
【0012】
次いで、
図2(D)に示すように、2本の電線1の鋼心線露出部3a同士を重ね合わせ、この重ね合わせ部に、相互間隔を置いて複数(図示の実施形態においては3つ)のアルミ等の金属製圧縮スリーブ5を外挿する。
【0013】
次いで、
図2(E)、
図4に示すように、油圧圧縮器等により、圧縮スリーブ5を外側から順次圧縮して2本の鋼心線露出部3aの外周に圧着する。これにより、鋼心線露出部3a同士が強固に接続される。
【0014】
以上の工程を経て、
図1に示す電線1の接続構造が形成される。この接続構造の場合、
図6に示すように、電線接続部が金車Pを通過する時、個々の金具が同時に金車Pに掛からず、かつ短時間で通過するので、接続部が金車Pに沿って比較的柔軟に湾曲し、個々の金具の通過時に急激な張力の増加を生じない。アルミより線2の端部2aはアルミ線キャップ4により強固に把持されて被覆されるので、延線時に損傷したり撚りの戻りが生じたりすることがない。
【符号の説明】
【0015】
1 電線
2 アルミより線(被覆より線)
2a 端部
3 鋼心線(心線)
3a 鋼心線露出部(心線露出部)
4 アルミ線キャップ(被覆線キャップ)
4a 筒状部
4b 端壁部
4c 貫通孔
5 圧縮スリーブ