(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】モータ制御装置および車両
(51)【国際特許分類】
H02P 25/092 20160101AFI20240220BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20240220BHJP
【FI】
H02P25/092
H02P6/08
(21)【出願番号】P 2020192753
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田原 知明
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏昭
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-303298(JP,A)
【文献】特開2013-233071(JP,A)
【文献】特開2010-207030(JP,A)
【文献】特開2016-222133(JP,A)
【文献】特開2005-130614(JP,A)
【文献】特開2016-111759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/092
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相のSRモータの各相に対応するコイルの通電を切り替えることにより、前記SRモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
前記各相のコイルに流す電流を制御する電流制御部と、
前記SRモータが搭載される車両の車速を取得する車速取得部と、
前記各相のコイルそれぞれに対応する通電角と、前記各相のコイルそれぞれに対する通電開始位相および通電終了位相を前記各相のインダクタンス変化に応じた所定値から前記通電角を進角側に変化させる角度を表す進角とを記憶するマップ記憶部と、を備え、
前記電流制御部は、前記車速取得部が取得した前記車速に基づいて、前記各相のコイルに流す電流波形を、第一波形および前記第一波形とは異なる第二波形のいずれかに決定する波形決定部を備え、
前記マップ記憶部は、第一波形進角マップと、第一波形通電角マップと、第二波形進角マップとを記憶し、
前記第二波形は、当該第二波形で前記SRモータを駆動する際の駆動音が、前記第一波形で前記SRモータを駆動する際の駆動音よりも小さい波形であ
る
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ制御装置であって、
前記波形決定部は、前記車速が予め定めた閾値以上である場合、前記電流波形を前記第一波形と決定する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のモータ制御装置であって、
前記波形決定部は、前記車速が予め定めた閾値未満である場合、前記電流波形を前記第二波形と決定する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1記載のモータ制御装置であって、
車両の周囲に人がいる場合、前記電流制御部に人検出信号を出力する人検出部をさらに備え、
前記波形決定部は、さらに、前記電流制御部が前記人検出信号を受信している場合は、前記電流波形を前記第一波形と決定する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1記載のモータ制御装置であって、
前記SRモータの回転速度を検出する回転速度検出部をさらに備え、
前記車速は、前記回転速度に基づき、算出される
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1記載のモータ制御装置であって、
前記第一波形と前記第二波形とは、
瞬時に立ち上り、所定期間、最大値を維持後、瞬時に立ち下がる波形形状を有する矩形波と、正弦波形状を有する正弦波との組み合わせ、
前記矩形波と、前記矩形波より緩やかに立上り、所定期間、最大値を維持後、緩やかに立ち下がる波形形状を有する台形波との組み合わせ、
前記台形波と前記正弦波との組み合わせのいずれかである
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項7】
多相のSRモータと、
前記多相のSRモータの駆動を制御する、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御技術に関する。特に、スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータに永久磁石や巻き線が不要なSRモータに関し、使用状態に応じてモータ特性を変更可能な制御技術が知られている。例えば、特許文献1には、「通電相を一方の相から他方の相に切り替える場合に、前記一方の相と前記他方の相との両方の相に通電するオーバーラップ区間を設ける通電タイミング出力部と、前記オーバーラップ区間の少なくとも一部の区間において、前記一方の相と前記他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる電流制御部と、を備える(要約抜粋)」モータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、SRモータの各相のコイルに流す電流を矩形波に基づいて制御する矩形波通電制御を行っているため、トルク特性はよいが、騒音の面で課題が残る。例えば、SRモータを電気自動車等の原動機として用い、静音化を図ると、モータの駆動音が抑えられるため、かえって周囲の歩行者が認知しにくい。これを解消するために、走行音を発する部品が別途取り付けられることがあるが、その分、構造が複雑化するとともにコストが増大する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、原動機として用いられるSRモータにおいて、新たな部品を追加することなく走行音を調整可能な制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多相のSRモータの各相に対応するコイルの通電を切り替えることにより、前記SRモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、前記各相のコイルに流す電流を制御する電流制御部と、前記SRモータが搭載される車両の車速を取得する車速取得部と、前記各相のコイルそれぞれに対応する通電角と、前記各相のコイルそれぞれに対する通電開始位相および通電終了位相を前記各相のインダクタンス変化に応じた所定値から前記通電角を進角側に変化させる角度を表す進角とを記憶するマップ記憶部と、を備え、前記電流制御部は、前記車速取得部が取得した前記車速に基づいて、前記各相のコイルに流す電流波形を、第一波形および前記第一波形とは異なる第二波形のいずれかに決定する波形決定部を備え、前記マップ記憶部は、第一波形進角マップと、第一波形通電角マップと、第二波形進角マップとを記憶し、前記第二波形は、当該第二波形で前記SRモータを駆動する際の駆動音が、前記第一波形で前記SRモータを駆動する際の駆動音よりも小さい波形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原動機として用いられるSRモータにおいて、新たな部品を追加することなく走行音を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)~(c)は、第一実施形態の概要を説明するための説明図である。
【
図2】(a)は、第一実施形態のモータ制御装置が適用される車両制御システムを、(b)は、第一実施形態のSRモータを、それぞれ説明するための説明図である。
【
図3】第一実施形態のモータ制御装置の構成図である。
【
図4】第一実施形態の電流制御部とマップ記憶部のブロック図である。
【
図5】第一実施形態の電流制御処理のフローチャートである。
【
図6】第二実施形態のモータ制御装置の構成図である。
【
図7】第二実施形態の電流制御処理のフローチャートである。
【
図8】(a)および(b)は、本発明の実施形態の変形例の電流駆動波形を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<第一実施形態>>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、3相のSRモータを例にあげて説明する。しかしながら、SRモータの相数はこれに限定されない。
【0010】
本実施形態のモータ制御装置は、駆動音が大きく、高トルクを実現可能な矩形波通電制御と、矩形波通電制御に比べて駆動音が小さく、低トルクの正弦波通電制御とを、状況に応じて使い分ける。例えば、制御対象のSRモータが車両の原動機として用いられる場合、車両が低速走行する低速モード時は、正弦波通電制御を行い、低速モードよりも車速が早い高速モード時は、矩形波通電制御を行う。
【0011】
具体的には、モータを駆動する駆動電流を、条件に応じて、
図1(a)に示す矩形波電流と、
図1(b)に示す正弦波電流との間で切り替える。なお、矩形波電流は、ロータの回転位置(ロータ電気角)に応じて、電流指令値が矩形波状に変化する駆動電流であり、正弦波電流は、ロータ電気角に応じて電流指令値が正弦波状に変化する駆動電流である。なお、矩形波は、瞬時に立ち上り、所定期間最大値を維持後、瞬時に立ち下がる波形形状を有する波形をいう。
【0012】
SRモータの制御においては、
図1(c)に示すように、正弦波電流による通電制御は、SRモータの速度とトルクとに応じて使用可能な領域が限定される。トルクおよび速度がこの領域内である場合、切り替えが可能である。本実施形態では、低振動低作動音が要求される領域で用いる正弦波通電制御から、矩形波通電制御に切り替えることにより、本図に示すように、高回転高負荷領域でのトルク特性が向上し、高負荷領域にも対応できるようになる。
【0013】
[車両制御システム]
以下、本実施形態では、SRモータが電気自動車(車両)の原動機として用いられる場合を例に説明する。まず、本実施形態のモータ制御装置が適用される車両制御システム100について、
図2を用いて説明する。
【0014】
車両制御システム100は、車両を操作するための操作子の操作量や操作状態に応じてSRモータの駆動力を制御する。操作子は、例えば、運転者が車両に種々の挙動を与えるための操作対象物であり、車両の速度調整を行うためのアクセルペダルやドライブ、後退、ニュートラル、パーキングなどの車両状態のレンジを選択するためのシフトレバーが含まれる。これらの操作子には、例えば、操作子の操作量や操作状態に連動して電気的な出力値を出力するセンサが設けられている。各センサの出力値は、モータ制御装置に入力される。以下、本実施形態では、操作子としてアクセルペダルに取り付けられたセンサからの出力値を用いる。
【0015】
図2(a)に示すように、車両制御システム100は、モータ制御装置200と、SRモータ120と、レゾルバ121と、アクセル操作検出部112と、を備える。
【0016】
アクセル操作検出部112は、アクセル信号を検出し、モータ制御装置200に出力する。アクセル信号は、スロットルポジションセンサからの出力値である。スロットルポジションセンサは、アクセルペダル111に設けられ、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)によって変化する回転角を検出するセンサである。スロットルポジションセンサは、例えば、ポテンショメータであり、アクセルペダル111の回転軸等に設けられ、アクセルペダル111の回転角に応じて抵抗値が変化する。スロットルポジションセンサからの出力値は、アクセル開度と比例する。アクセル操作検出部112は、スロットルポジションセンサに電圧を与えて、この抵抗値を検出する。そして、アクセル操作検出部112は、検出した抵抗値をAD変換してモータ制御装置200に出力する。
【0017】
SRモータ120は、リアギア114を介して後輪115を駆動する多相の駆動用モータである。例えば、
図2(b)に示すように、SRモータ120は、複数の励磁コイルを有するステータ122と、ステータ122内に回転自在に配置されたロータ123とを備える。ロータ123は、4つの突極部を備える。各突極部は、回転軸124から径方向の外方に向かって突出するよう形成される。ステータ122は、ロータ123の回転軸124と同芯にロータ123の周囲を覆うように設けられ、6つの突極を備える。各突極は、ロータ123の回転軸124に向かって径方向の内方に突出するよう形成される。
【0018】
ステータ122の6つの突極には、それぞれ導線が巻かれて励磁コイルが形成される。6つの突極のうち、対向する突極を対として励磁コイルLu,Lv,Lwが形成される。ロータ123の回転位置は、レゾルバ121によって検知される。
【0019】
レゾルバ121は、SRモータ120のロータ123の位置(ロータ回転角)を検出する回転角センサである。検出結果を回転角信号としてモータ制御装置200に出力する。
【0020】
モータ制御装置200は、SRモータ120の駆動(回転駆動)を制御する。本実施形態では、モータ制御装置200は、アクセル操作検出部112から取得するアクセル信号とレゾルバ121から取得する回転角信号とに基づいて、SRモータ120の駆動を制御する。具体的には、モータ制御装置200は、アクセル信号に基づいて、SRモータ120に流す電流の目標値の最大値である最大電流指令値を算出する。そして、モータ制御装置200は、SRモータ120に流れる電流値が、最大電流指令値と回転角信号に応じたロータ回転角とで定まる電流指令値になるようにフィードバック制御を行う。
【0021】
また、モータ制御装置200は、各励磁コイルLu,Lv,Lwへの通電を切り替えることにより、SRモータ120を駆動する。ここでは、モータ制御装置200は、レゾルバ121の検出結果に基づいて、ロータ回転角を得、それに応じて、一対の各励磁コイルLu,Lv,Lwに対して選択的に順次通電するよう制御する。これにより、ステータ122の突極にロータ123の突極が磁気吸引されながら回転を繰り返し、ロータ123に回転トルクが発生してSRモータ120に回転駆動力が発生する。
【0022】
その他、車両制御システム100は、シフトポジションセンサ等を備えてもよい。シフトレバーには、シフトポジションセンサが設けられており、シフトレバーのレンジの切替位置を検出する。シフトポジションセンサは、例えば、各レンジに設けられたスイッチにより、いずれのレンジにシフトレバーが位置しているか検出する。シフトポジションセンサは、シフトレバーのポジションの位置を検出し、検出した検出値をモータ制御装置200に出力する。シフトポジションセンサは、シフトレバーのレンジに応じて異なる抵抗値をモータ制御装置200に出力する。
【0023】
[モータ制御装置]
次に、モータ制御装置200の構成について説明する。
図3に示すように、モータ制御装置200は、駆動回路210と、駆動回路制御装置240と、を備える。
【0024】
駆動回路210は、バッテリ113からSRモータ120へ入力される電力をスイッチングして各相の励磁コイルLu,Lv,Lwに供給する。スイッチングは、駆動回路制御装置240からのゲート信号に従って行われる。
【0025】
駆動回路制御装置240は、ステータ122の各相の励磁コイルLu,Lv,Lwへの通電や切替えを制御する。本実施形態では、駆動回路制御装置240は、ゲート信号を生成し、駆動回路210に出力する。
【0026】
[駆動回路]
駆動回路210は、駆動回路制御装置240から出力されるゲート信号(駆動信号)に基づいて、スイッチング動作を行い、バッテリ113の電源電圧を、3相(U相、V相、W相)の交流電圧として、励磁コイルLu,Lv,Lwに通電信号として供給する。
【0027】
駆動回路210は、例えば、バッテリ113に接続される。駆動回路210は、コンデンサ211、スイッチング素子221~226およびダイオード231~236を備える。スイッチング素子221~226は、例えば、n型チャネルのFETである。例えば、スイッチング素子221~226は、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)、FET(Field Effective Transistor)、およびBJT(bipolar junction transistor)のいずれか一つで構成されてもよい。
【0028】
コンデンサ211は、一端がバッテリ113の正極に接続され、他端がバッテリ113の負極に接続される。コンデンサ211は、平滑用コンデンサであり、バッテリ113の電圧変動に対して電源を安定化させる。
【0029】
スイッチング素子221は、ドレインがバッテリ113の正極に接続され、ソースがダイオード231のカソードに接続される。ダイオード231のアノードは、バッテリ113の負極に接続される。ダイオード232は、カソードがバッテリ113の正極に接続され、アノードがスイッチング素子222のドレインに接続される。スイッチング素子222のソースは、バッテリ113の負極に接続される。
【0030】
スイッチング素子223は、ドレインがバッテリ113の正極に接続され、ソースがダイオード233のカソードに接続される。ダイオード233のアノードは、バッテリ113の負極に接続される。ダイオード234は、カソードがバッテリ113の正極に接続され、アノードがスイッチング素子224のドレインに接続される。スイッチング素子224のソースは、バッテリ113の負極に接続される。
【0031】
スイッチング素子225は、ドレインがバッテリ113の正極に接続され、ソースがダイオード235のカソードに接続される。ダイオード235のアノードは、バッテリ113の負極に接続される。ダイオード236は、カソードがバッテリ113の正極に接続され、アノードがスイッチング素子226のドレインに接続される。スイッチング素子226のソースは、バッテリ113の負極に接続される。
【0032】
すなわち、コンデンサ211と、直列に接続されたスイッチング素子221およびダイオード231と、直列に接続されたスイッチング素子222およびダイオード232と、直列に接続されたスイッチング素子223およびダイオード233と、直列に接続されたスイッチング素子224およびダイオード234と、直列に接続されたスイッチング素子225およびダイオード235と、直列に接続されたスイッチング素子226およびダイオード236とは、それぞれバッテリ113に対して並列に接続される。
【0033】
また、スイッチング素子221とダイオード231との接続点には、SRモータ120の励磁コイルLuの一端が接続され、スイッチング素子222とダイオード232との接続点には、励磁コイルLuの他端が接続される。スイッチング素子223とダイオード233との接続点には、SRモータ120の励磁コイルLvの一端が接続され、スイッチング素子224とダイオード234との接続点には、励磁コイルLwの他端が接続される。スイッチング素子225とダイオード235との接続点には、SRモータ120の励磁コイルLwの一端が接続され、スイッチング素子226とダイオード236との接続点には、励磁コイルLwの他端が接続される。
【0034】
スイッチング素子221,222、ダイオード231,232でHブリッジ回路を構成し、スイッチング素子221,222のオンオフにより励磁コイルLuに磁性を発生することができる。スイッチング素子223,224、ダイオード233,234でHブリッジ回路を構成し、スイッチング素子223,224のオンオフにより励磁コイルLvに磁性を発生することができる。スイッチング素子225,226、ダイオード235,236でHブリッジ回路を構成し、スイッチング素子225,226のオンオフにより励磁コイルLwに磁性を発生することができる。
【0035】
上述のように、駆動回路210は、3つのHブリッジ回路により構成される。そして、駆動回路制御装置240から出力されるゲート信号がスイッチング素子221~226のゲートに入力され、入力される制御信号に応じて、スイッチング素子221~226のオンとオフとが切り替えられる。これにより、バッテリ113からの電流が、SRモータ120が有する励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに通電される。なお、スイッチング素子221~226がオフ状態となった場合、ダイオード231~236は、励磁コイルLu,Lv,Lwの電流の逆流を防止する。
【0036】
電流センサ212は、SRモータ120が有する励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに流れる電流を検出して駆動回路制御装置240に出力する。駆動回路制御装置240は、これを受け、駆動回路210にゲート信号を出力し、スイッチング素子221~226を制御して励磁コイルLu,Lv,Lwにそれぞれ通電するタイミングによりロータ123の回転方向、回転速度、トルクを制御する。
【0037】
[駆動回路制御装置]
駆動回路制御装置240は、多相のSRモータ120の各相に対応する励磁コイルLu,Lv,Lwの通電を切り替えることにより、SRモータ120の駆動を制御する。本実施形態では、ロータ電気角に応じて電流指令値が矩形波形状(第一波形形状)で変化する矩形波電流(第一波形電流)と、ロータ電気角に応じて電流指令値が正弦波形状(第二波形形状)で変化する正弦波電流(第二波形電流)との間で、駆動回路210を駆動する駆動電流波形を切り替える。なお、正弦波電流による駆動は、矩形波電流による駆動よりも低駆動音である。
【0038】
駆動回路制御装置240は、駆動に用いる電流が矩形波電流である場合、矩形波駆動信号を駆動回路210に出力することで、励磁コイルLu,Lv,Lwを、矩形波通電信号により通電し、SRモータ120のロータ123を駆動する。また、駆動回路制御装置240は、駆動に用いる電流が正弦波電流である場合、正弦波駆動信号を、駆動回路210に出力することで、励磁コイルLu,Lv,Lwを、正弦波通電信号により通電し、SRモータ120のロータ123を駆動する。
【0039】
以下、本実施形態における駆動回路制御装置240について説明する。
図3に示すように、駆動回路制御装置240は、電流指令値生成部241と、電流検出部242と、位置検出部243と、回転速度検出部244と、電流制御部245と、PWM(Pulse Width Modulation)出力部246と、進角・通電角設定部247と、通電タイミング出力部248と、ゲート駆動部249と、マップ記憶部250と、車速取得部256と、を備える。
【0040】
電流指令値生成部241は、要求負荷からSRモータ120の各相の励磁コイルLu,Lv,Lwに流す電流の目標値の最大値(以下、「最大電流指令値」)を生成する。具体的には、アクセル操作検出部112から出力されたアクセル信号を取得し、アクセル信号の値に応じて、最大電流指令値を生成する。そして、電流指令値生成部241は、生成した最大電流指令値を電流制御部245および進角・通電角設定部247に出力する。
【0041】
例えば、電流指令値生成部241は、アクセルペダル111の操作量と最大電流指令値とが関連付けられたテーブルを備え、アクセル操作検出部112から出力されたアクセル信号が示すアクセルペダル111の操作量に対応する最大電流指令値を、そのテーブルから読み出すことで、最大電流指令値を生成する。また、電流指令値生成部241は、アクセル操作検出部112から出力されたアクセル信号が示すアクセルペダル111の操作量から、実験的に最大電流指令値を決定してもよい。
【0042】
なお、シフトポジションセンサを備え、シフト信号の入力がある場合は、電流指令値生成部241は、シフト信号に基づいてシフトレバーのシフトポジションがリバースのレンジに入れられており、後進走行ポジションであると判定した場合には、SRモータ120の回転方向が逆回転であると判定する。そして、電流指令値生成部241は、SRモータ120の回転方向が逆回転であることを示す回転方向指令信号を電流制御部245に出力してもよい。
【0043】
電流検出部242は、電流センサ212より出力されるSRモータ120の励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに流れる電流値を検出し、電流検出値として電流制御部245に出力する。電流検出部242は、例えば、各電流センサ212から出力される各相電流(巻線電流)の検出信号に基づき、SRモータ120に通電されている相電流を検出し、この相電流の検出値を電流制御部245に出力する。
【0044】
位置検出部243は、レゾルバ121が出力する回転角信号に基づいて、ロータ電気角を検出して、回転速度検出部244、電流制御部245、および通電タイミング出力部248に出力する。
【0045】
回転速度検出部244は、ロータ123の回転速度(ロータ回転速度)を算出して進角・通電角設定部247および車速取得部256に出力する。回転速度検出部244は、位置検出部243が出力するロータ電気角の単位時間あたりの変化量を検出し、検出した変化量からロータ回転速度を算出する。
【0046】
電流制御部245は、SRモータ120の各相の励磁コイルLu,Lv,Lwに流す電流を所定の波形(駆動電流波形)に基づいて制御する通電制御を行う。電流制御部245は、電流指令値生成部241から出力される最大電流指令値と、位置検出部243が検出したロータ電気角と、回転速度検出部244から出力されるロータ回転速度と、電流検出部242が検出した各励磁コイルLu,Lv,Lwの電流検出値とを用いて、電流差分値を算出する。算出した電流差分値は、PWM出力部246に出力される。ここで算出される電流差分値は、最大電流指令値、駆動電流波形およびロータ電気角により定まる電流指令値と電流検出値との偏差である。
【0047】
また、本実施形態の電流制御部245は、後述する車速取得部256が取得した車速に応じて、駆動電流波形を矩形波と正弦波との間で切り替えて、いずれかの波形の電流により通電制御を行う。これを実現するため、本実施形態の電流制御部245は、
図4に示すように、波形決定部255と、矩形波制御部245aと、正弦波制御部245bと、を備える。
【0048】
波形決定部255は、SRモータ120の駆動電流波形を、SRモータ120が搭載される車両の車速に基づいて、矩形波か正弦波のいずれにするかを決定する。すなわち、波形決定部255は、各相の励磁コイルLu,Lv,Lwに流す電流を、矩形波電流と正弦波電流とのいずれにするかを決定する。決定結果は、矩形波制御部245a、正弦波制御部245bおよび進角・通電角設定部247に出力する。
【0049】
以下、モータ制御装置200が矩形波電流でSRモータ120を駆動する駆動モードを矩形波駆動モード、正弦波電流でSRモータ120を駆動する駆動モードを正弦波駆動モードと呼ぶ。したがって、波形決定部255は、後述する車速取得部256からの出力に応じて、SRモータ120の駆動モードを、矩形波駆動モードとするか正弦波駆動モードとするかを決定する。具体的には、車速取得部256が取得した車速が、予め定めた車速閾値未満である場合、正弦波駆動モードと決定し、車速閾値以上である場合、矩形波駆動モードと決定する。決定手法の詳細については、後述する。
【0050】
矩形波制御部245aは、波形決定部255が矩形波駆動モードと決定した際、ロータ電気角に応じて電流指令値が矩形波状に変化する矩形波電流に基づいて、上述の電流制御を行う。
【0051】
正弦波制御部245bは、波形決定部255が正弦波駆動モードと決定した際、ロータ電気角に応じて電流指令値が正弦波状に変化する正弦波電流に基づいて、上述の電流制御を行う。
【0052】
PWM出力部246は、電流差分値が減少するように、スイッチング素子221~226のデューティ比を決定する。PWM出力部246は、算出したデューティ比をゲート駆動部249に出力する。なお、PWM出力部246は、電流差分値に基づいて、公知のPI(Proportional Integral)制御、または、PID(Proportional Integral Derivative)制御等を用いて上述のデューティ比を算出してもよい。
【0053】
進角・通電角設定部247は、電流指令値生成部241から出力された電流指令値と、回転速度検出部244から出力された回転速度と、波形決定部255が決定した駆動電流波形と、に応じて、進角および通電角を、通電タイミング出力部248に出力する。進角および通電角は、マップ記憶部250から取得する。
【0054】
通電タイミング出力部248は、位置検出部243から出力されるロータ電気角と、進角・通電角設定部247から出力される進角および通電角とに基づいて、SRモータ120の各相の各励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに通電する通電タイミングを決定する。そして、通電タイミング出力部248は、決定した通電タイミングをゲート駆動部249に出力する。
【0055】
ゲート駆動部249は、通電タイミング出力部248から出力されたタイミング信号と、PWM出力部246から出力されたデューティ比とに基づいて、駆動回路210が備えるスイッチング素子221~226をオン状態またはオフ状態にする制御信号(PWM信号)を、スイッチング素子221~226のゲートに出力する。
【0056】
マップ記憶部250には、矩形波進角マップ251と、矩形波通電角マップ252と、正弦波進角マップ253と、が記憶される。
【0057】
矩形波進角マップ251は、最大電流指令値とロータ回転速度との組み合わせ毎に、矩形波駆動モード時に用いる進角の値を対応づけたマップである。ここで、進角は、SRモータ120の各相の励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに対する通電開始位相および通電終了位相を各相のインダクタンス変化に応じた所定位置(例えば、インダクタンスの増大開始位相および減少開始位相等)から通電角を進角側に変化させる角度を表す。
【0058】
矩形波通電角マップ252は、最大電流指令値とロータ回転速度との組み合わせ毎に、矩形波駆動モード時に用いる通電角の値を対応づけたマップである。通電角は、SRモータ120の各相の励磁コイルLu,Lv,Lwそれぞれに対して対応づけられる。
【0059】
正弦波進角マップ253は、矩形波進角マップ251同様、最大電流指令値とロータ回転速度との組み合わせごとに正弦波駆動モード時に用いる進角の値を対応付けたマップである。
【0060】
なお、進角は、最大電流指令値とロータ回転速度との増加に対して増加傾向にある。矩形波進角マップ251および正弦波進角マップ253は、例えば、シミュレーションの結果に基づいて設定される。矩形波進角マップ251および正弦波進角マップ253は、シミュレーションの結果だけでなく、実機を測定した測定結果に基づいて設定されてもよい。また、矩形波通電角マップ252は、シミュレーションの結果に基づいて設定される。矩形波通電角マップ252は、シミュレーションの結果だけでなく、実機を測定した測定結果に基づいて設定されてもよい。
【0061】
また、進角・通電角設定部247は、波形決定部255から通知された駆動モードに応じて、マップ記憶部250を参照し、対応するマップから進角および通電角を抽出し、通電タイミング出力部248に出力する。すなわち、矩形波駆動モードとの通知を受け取ると、矩形波進角マップ251および矩形波通電角マップ252を参照し、進角および通電角を通電タイミング出力部248に出力する。一方、正弦波駆動モードとの通知を受けると、正弦波進角マップ253を参照し、進角のみを出力する。
【0062】
車速取得部256は、本実施形態のSRモータ120が搭載される車両の車速を取得し、波形決定部255に出力する。車速取得部256が取得するのは、車速に対応する指標値であってもよい。以下、両者を合わせて、車速と称する。本実施形態では、例えば、回転速度検出部244で検出されるロータ回転速度を車速として用いる。その他、車速取得部256は、車両から車速を示す信号を取得してもよいし、アクセル信号から車速を算出してもよい。
【0063】
[電流制御処理]
上記の波形決定部255による波形決定処理を含む、電流制御部245による電流制御処理の流れを説明する。
図5は、本実施形態の電流制御処理の処理フローである。本処理は、予め定められた電流制御周期毎に行われる。
【0064】
電流制御部245は、電流検出値I_u*と、ロータ電気角θ*と、最新の最大電流指令値Imax*と、最新の車速v*とを取得する(ステップS1101)。
【0065】
次に、波形決定部255は、最新の車速v*が低速であるか否かを判別する(ステップS1102)。ここでは、波形決定部255は、取得した車速v*を、予め定めた車速閾値と比較する。そして、車速v*が比較閾値未満である場合、車速は低速であると判別する。
【0066】
車速が低速と判別された場合、波形決定部255は、駆動モードを正弦波駆動モードと決定し、正弦波制御部245bに通知する(ステップS1103)。このとき、波形決定部255は、進角・通電角設定部247にも正弦波駆動モードと決定したことを示す信号を出力する。
【0067】
正弦波制御部245bは、正弦波通電制御処理を行い(ステップS1104)、処理を終了する。具体的には、正弦波制御部245bは、正弦波通電制御処理として、まず、最大電流指令値Imax*と、ロータ電気角θ*とにより定まる、正弦波電流の電流指令値Iu_refを算出する。そして、電流指令値Iu_refと電流検出値I_u*との差分を電流差分値として算出する。
【0068】
なお、進角・通電角設定部247は、正弦波駆動モードと決定されたことを示す信号を受信すると、電流指令値生成部241から受信した最大電流指令値と回転速度検出部244から受信したロータ回転速度とに対応付けられた進角を正弦波進角マップ253から取得し、通電タイミング出力部248に出力する。
【0069】
一方、ステップS1102において、車速が低速でないと判別された場合、波形決定部255は、駆動モードを矩形波駆動モードと決定し、矩形波制御部245aに通知する(ステップS1105)。このとき、波形決定部255は、進角・通電角設定部247にも矩形波駆動モードと決定したことを示す信号を出力する。
【0070】
矩形波制御部245aは、矩形波通電制御処理を行い(ステップS1106)、処理を終了する。具体的には、矩形波制御部245aは、矩形波通電制御処理として、まず、最大電流指令値Imax*を矩形波電流の電流指令値Iu_refとして算出する。そして、電流指令値Iu_refと電流検出値I_u*との差分を電流差分値として算出する。
【0071】
なお、進角・通電角設定部247は、矩形波駆動モードと決定されたことを示す信号を受信すると、電流指令値生成部241から受信した最大電流指令値と回転速度検出部244から受信したロータ回転速度とに対応付けられた通電角および進角を、それぞれ、矩形波進角マップ251および矩形波通電角マップ252から取得し、通電タイミング出力部248に出力する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置200は、多相のSRモータ120の各相に対応するコイル(例えば、励磁コイルLu,Lv,Lw)の通電を切り替えることにより、SRモータ120の駆動を制御するモータ制御装置200であって、各相のコイルに流す電流を所定の波形に基づいて制御する電流制御部245を備える。そして、この電流制御部245は、所定の波形を、第一波形および第一波形よりも低駆動音の第二波形のいずれかに決定する波形決定部255を備える。そして、この波形決定部255は、SRモータ120が搭載される車両の車速に基づいて、所定の波形を決定する。
【0073】
例えば、本実施形態の波形決定部255は、車速が低速であれば、所定の波形を正弦波とする。これにより、モータ制御装置200は、低騒音の正弦波電流による通電制御を行う正弦波駆動モードでSRモータ120を駆動する。一方、車速が低速でない場合は、波形決定部255は、所定の波形を矩形波とする。これにより、モータ制御装置200は、振動および騒動音が大きくなるものの、高トルクが得られる矩形波駆動モードでSRモータ120を駆動する。
【0074】
一般に、車両は、街中や住宅街等で低速走行し、幹線道路等で高速走行する。本実施形態によれば、上述の手法で、高トルクが要求される高速走行時には、矩形波電流で通電制御を行い、低速走行時には、正弦波電流で静音化を図り、それぞれ、通電制御を行うことができる。したがって、本実施形態によれば、原動機として用いられるSRモータ120において、新たな部品を追加することなく、必要に応じて、自動的に最適な走行音に調整できる。
【0075】
<<第二実施形態>>
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態のモータ制御装置は、第一実施形態のモータ制御装置と同様に、SRモータ120が搭載された車両が低速走行時は、正弦波駆動モードでSRモータ120を駆動し、高速走行時は、矩形波モードで駆動する。ただし、本実施形態のモータ制御装置は、低速走行時であっても、車両の周囲に人が検知された場合は、SRモータ120を矩形波駆動モードで駆動する。
【0076】
本実施形態の車両制御システム100は、第一の実施形態と基本的に同じ構成を有する。ただし、本実施形態の車両制御システム100は、車両の周囲に人がいるか否かを検知するため、周囲検知センサ116を備える(
図6参照)。以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる点に主眼をおいて説明する。
【0077】
周囲検知センサ116は、車両の周囲を監視し、所定の時間間隔で、周囲検出信号を人の有無を判別する。そして。車両の周囲の予め定めた領域内に人が存在すると判別した場合、人検出信号を、駆動回路制御装置240に出力する。周囲検知センサ116の検出部は、カメラ、レーザセンサ等で実現される。なお、人の存在を検出する範囲は、車両の走行方向に限定してもよい。
【0078】
本実施形態のモータ制御装置201の構成を
図6に示す。本図に示すように、本実施形態のモータ制御装置201は、第一実施形態と同様に、駆動回路210と、駆動回路制御装置240aと、を備える。駆動回路210は、第一実施形態の駆動回路210と同じである。
【0079】
本実施形態の駆動回路制御装置240aは、第一実施形態の駆動回路制御装置240の構成に、さらに、人検出部257を備える。
【0080】
人検出部257は、周囲検知センサ116から人検出信号を受信し、電流制御部245の波形決定部255に出力する。なお、人検出部257が、人検出信号を受信するタイミングは、電流制御周期と同期していてもよいし、非同期であってもよい。
【0081】
本実施形態の波形決定部255は、車速に加え、人検出信号を受信しているか否かで矩形波駆動モードか正弦波駆動モードかを決定する。具体的には、波形決定部255は、所定時間以内に、人検出部257から人検出信号を受信しているか否かにより判別する。すなわち、波形決定部255は、所定時間以内に人検出信号を受信していれば、人を検出したと判別し、それ以外の場合は、非検出と判別する。そして、波形決定部255は、人を検出した場合は、矩形波駆動モードと決定し、非検出の場合は、正弦波駆動モードと決定する。
【0082】
[電流制御処理]
上記の波形決定部255による波形決定処理を含む、電流制御部245による電流制御処理の流れを説明する。
図5は、本実施形態の電流制御処理の処理フローである。本処理は、予め定められた電流制御周期毎に行われる。
【0083】
電流制御部245は、電流検出値I_u*と、ロータ電気角θ*と、最新の最大電流指令値Imax*と、最新の車速v*とを取得する(ステップS1101)。
【0084】
次に、波形決定部255は、第一実施形態と同様の手法で、最新の車速v*が低速であるか否かを判別する(ステップS1102)。
【0085】
車速が低速と判別された場合、波形決定部255は、人を検出したか否かを判別する(ステップS2101)。
【0086】
非検出と判別した場合、波形決定部255は、駆動モードを正弦波駆動モードと決定し、正弦波制御部245bに通知する(ステップS1103)。以下の処理は、第一実施形態と同じであるため、省略する。
【0087】
一方、ステップS1102において、車速が低速でないと判別された場合、波形および、ステップS2101において、人が検出されたと判別した場合、波形決定部255は、駆動モードを矩形波駆動モードと決定し、矩形波制御部245aに通知する(ステップS1105)。以下の処理は、第一実施形態と同じであるため、省略する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の波形決定部255は、第一の実施形態同様、車速が低速であれば、所定の波形を第二波形(正弦波)とする。しかし、本実施形態の波形決定部255は、車速が低速であっても、車両の周囲に人がいることを検出した際に出力される人検出信号を受信している場合は、所定の波形を前記第一波形(矩形波)と決定する。
【0089】
このように、本実施形態の波形決定部255は、第一実施形態同様、SRモータ120が搭載されている車両の車速により駆動回路210を制御する駆動電流の波形を決定する。このため、本実施形態のモータ制御装置201によれば、第一実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態のモータ制御装置201は、SRモータ120を搭載する車両が低速であっても、その周囲に人が検出された場合は、SRモータ120を矩形波駆動モードで駆動させる。すなわち、それほどトルクを必要としない低速走行時であっても、周囲に人がいる場合は、モータ制御装置201は、人に車両の存在を認知させるため、駆動音の大きい矩形波駆動モードでSRモータ120を駆動させる。これにより、モータ駆動車の、走行音が小さく、人が認知しにくいことを改善できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、周囲に人が検出された際、駆動モードを変更することにより、走行音を発生させる。すなわち、本実施形態によれば、走行音を発する部品を別途取り付けることなく、駆動音を大きくすることができる。これにより、構造を複雑化したり、コストを増大させたりすることなく、必要に応じて自動的に最適な走行音に調整でき、周囲に車両の存在を知らしめることができる。したがって、本実施形態によれば、追加の構成なしに、安全性を高めることができる。
【0091】
<変形例>
上記実施形態では、周囲検知センサ116で人の有無を判別し、人検出信号を人検出部257に出力しているが、これに限定されない。例えば、周囲検知センサ116で取得した周囲検出情報を、所定の時間間隔で、そのまま人検出部257に送信してもよい。この場合、人検出部257において、周囲検出情報を解析し、人の有無を判別する。
【0092】
<変形例>
なお、上記各実施形態では、SRモータ120の駆動に用いる駆動電流波形として、低トルクではあるものの駆動音の小さい正弦波と、高トルクではあるものの駆動音の大きい矩形波との2種を用いる場合を例にあげて説明した。しかしながら、SRモータ120の駆動に用いる駆動電流波形はこれに限定されない。異なるトルクを発生可能な2種の波形(第一波形および第二波形)であればよい。すなわち、第一波形と、第一波形よりも変化が緩やかで低駆動音の第二波形を用いればよい。
【0093】
このような2種の電流波形の組み合わせの他の例を示す。例えば、
図8(a)に示すように、第一波形を矩形波とし、第二波形を台形波としてもよい。台形波は、矩形波の立ち上がり、立下り領域に傾斜を有する形状である。すなわち、台形波は、矩形波より緩やかに立上り、所定期間最大値を維持後、緩やかに立ち下がる波形形状を有する。また、
図8(b)に示すように、第一波形を台形波とし、第二波形を正弦波としてもよい。
【0094】
<変形例>
なお、上記各実施形態では、車速取得部256は、車速を、SRモータ120の回転速度から推定しているが、これに限定されない。加速度センサ、GPSデータ等を用いて車速を推定してもよい。また、車載カメラのデータを用いることができる場合は、撮影データから車速を推定してもよい。
【0095】
<変形例>
なお、上記実施形態では、正弦波電流および矩形波電流のパラメータは、予め用意されているが、この手法に限定されない。例えば、正弦波電流のパラメータのみ保持し、必要に応じて、この正弦波電流を整形し、矩形波電流を生成してもよい。これにより、保持するパラメータを減らし、メモリの負担を低減できる。
【0096】
また、上記各実施形態では、正弦波電流による通電制御の場合、通電角を調整していない。しかしながら、これに限定されない。例えば、正弦波通電制御においても、通電角を調整してもよい。これにより、さらに静音化を図ることができる。
【0097】
上述の実施形態において、上述の実施形態において、ダイオード231~236は、IGBT、FETおよびBJT等のスイッチング素子に代替されてもよい。
【0098】
また、モータ制御装置200、201の各部は、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。ソフトウェアで実現される場合、モータ制御装置200は、CPUと、メモリと、記憶装置とを備える。そして、CPUが、記憶装置に予め記憶されたプログラムを、メモリにロードして実行することにより、各機能を実現する。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されていてもよく、ネットワークに接続された記憶装置に記憶されていてもよい。なお、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体等のことをいう。また上記プログラムは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。なお、マップ記憶部250は、記憶装置に構築される。
【0099】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0100】
100:車両制御システム、111:アクセルペダル、112:アクセル操作検出部、113:バッテリ、114:リアギア、115:後輪、116:周囲検知センサ、120:SRモータ、121:レゾルバ、122:ステータ、123:ロータ、124:回転軸、
200:モータ制御装置、201:モータ制御装置、210:駆動回路、211:コンデンサ、212:電流センサ、221:スイッチング素子、222:スイッチング素子、223:スイッチング素子、224:スイッチング素子、225:スイッチング素子、226:スイッチング素子、231:ダイオード、232:ダイオード、233:ダイオード、234:ダイオード、235:ダイオード、236:ダイオード、
240:駆動回路制御装置、240a:駆動回路制御装置、241:電流指令値生成部、242:電流検出部、243:位置検出部、244:回転速度検出部、245:電流制御部、245a:矩形波制御部、245b:正弦波制御部、246:PWM出力部、247:通電角設定部、248:通電タイミング出力部、249:ゲート駆動部、250:マップ記憶部、251:矩形波進角マップ、252:矩形波通電角マップ、253:正弦波進角マップ、255:波形決定部、256:車速取得部、257:人検出部