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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】収納容器、および、巻回体入り収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B65D5/72 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020217378
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102568
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関 孝幸
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147341(JP,A)
【文献】特開2018-108823(JP,A)
【文献】特開2016-141401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0121140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、前記底板に立設された前板、後板、左板、および右板とを備え、前記底板に立設された各板の上辺が開口を区切る容器本体と、
前記後板の上辺に回動可能に連設された蓋体と、を備え、
前記左板および前記右板の少なくとも一方が本体側面板であり、
前記本体側面板は、前記本体側面板の上辺に前記容器本体の外側に向けて突出した蓋係止片を備え、
前記蓋体は、前記開口を覆う上蓋板と、前記上蓋板が前記開口を閉じた閉塞状態で前記蓋係止片と前記本体側面板の少なくとも一部とを覆う蓋体側面板と、を備え、
前記蓋体側面板は、前記蓋体の内側に位置する接合片を備え、
前記接合片は、前記上蓋板と前記蓋体側面板との交線と対向する辺である接合段辺を備え、前記蓋体側面板の内面における前記交線と前記接合段辺との間に前記閉塞状態で前記蓋係止片が嵌まり込む段部を区画し、
前記接合段辺における前記後板側の端部である段辺後端は、前記蓋係止片における前記後板側の端部である係止後端よりも前記閉塞状態において前記前板側に位置し、
前記接合片は、前記閉塞状態で前記段辺後端よりも前記底板側に位置し、かつ前記段辺後端よりも前記後板側に突き出る突部をさらに備え、
前記蓋体が前記閉塞状態から所定角度だけ回動するとき、前記接合段辺が前記蓋係止片における前記前板側を擦り上げた後に、前記接合段辺の前記後板側が、前記蓋係止片における前記後板側を擦り上げ、前記蓋体が前記閉塞状態に戻るとき、前記蓋係止片における前記前板側が押し下げられる前に、前記突部が前記蓋係止片における前記後板側を押し下げはじめる
収納容器。
【請求項2】
前記所定角度が20°以上60°以下である
請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
前記蓋係止片の前後方向における長さは、前記本体側面板における頂辺の前後方向における長さの0.5倍以上0.75倍以下である
請求項1または2に記載の収納容器。
【請求項4】
前記蓋係止片の前記係止後端と、前記後板における高さ方向の短辺との間の距離は、前記前板と前記後板の間の前後方向における長さの0.1倍以上0.4倍以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の収納容器。
【請求項5】
前記突部は、第1突部であり、
前記接合片は、前記第1突部よりも大きい第2突部であって、前記閉塞状態で前記第1突部よりも前記底板側に位置し、かつ前記第1突部よりも前記後板側に突き出る前記第2突部をさらに備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の収納容器。
【請求項6】
長尺物が巻かれた巻回体と、
請求項1から5のいずれか一項に記載の収納容器と、を備える
巻回体入り収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物の巻回体を収納するための収納容器、および、巻回体入り収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した収納容器は、上面が開口した容器本体と、開口を開閉する蓋体とを備える。容器本体は、ラップフィルムやアルミホイルなどの長尺物の巻回体を収納する。容器本体は、底板に立設された周壁を備え、容器本体の開口は、周壁の上辺によって区画されている。容器本体の周壁は、前板、後板、および相互に対向する2つの本体側面板を備える。蓋体は、後板の上辺に連設された上蓋板、上蓋板の前辺に連設された蓋前板、および相互に対向する2つの蓋体側面板を備える。
【0003】
図8が示すように、収納容器の第1例は、本体側面板51に連設された蓋係止片51Pと、当該蓋係止片51Pと係合する段部62Sとをさらに備える。蓋係止片51Pは、本体側面板51の上辺511から外方に延びるように上辺511に連設される。蓋前板に連設された接合片61Pは、蓋体側面板62の内面に接着されて蓋体側面板62の内面に段部62Sを形成する。段部62Sは、閉塞状態で蓋係止片51Pと係合するように蓋体側面板62の内面に設けられる。蓋係止片51Pは、蓋体61が開口を閉じている状態で段部62Sに嵌まり込み、これによって、蓋体61が開口から浮き上がることを抑える(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
例えば、蓋体61が開放位置から閉塞位置に向けて回動するとき、まず、接合片61Pが蓋係止片51Pの先端辺を押し下げ、次いで、蓋係止片51Pの先端辺が下方に向いた状態で段部62Sに嵌まり込む。反対に、蓋体61が閉塞位置から開放位置に向けて回動するときは、まず、接合片61Pが蓋係止片51Pの先端辺を押し上げて、本体側面板51の上辺511を中心に蓋係止片51Pが回動する。次いで、蓋係止片51Pは、接合片61Pが形成する段部62Sとの係合から外れるが、接合片61Pに接触している状態ではまだ上方を向いている。ここから蓋体61を更に開放すると、蓋係止片51Pが接合片61Pから離れ、蓋係止片51Pの先端辺が下方に向いた状態に戻る。
【0005】
ただし、上述した構成では、蓋体61が閉塞位置から開放位置に向けて回動し、蓋係止片51Pの先端辺が段部62Sとの係合から外れた後、まだ蓋係止片51Pが上方を向き接合片61Pに接触している状態にある。この状態で再び蓋体61が閉塞位置に戻されると、蓋係止片51Pの先端辺が上方を向いたまま、蓋係止片51Pの先端辺が段部62Sに嵌まり込む。その結果、蓋係止片51Pと段部62Sとの係合が不十分な状態となり、蓋体61が開口から偶発的に浮き上がってしまう。
【0006】
図9が示すように、収納容器の第2例は、蓋体側面板62と後板との交線62Aを通り、かつ上蓋板65と蓋体側面板62との交線に対して60度よりも小さい角度θを形成する仮想直線61Lを定める。蓋体側面板62の内面は、仮想直線61Lよりも後板側の面を接合片61Pが接着されていない低面部62S2として備える。そして、蓋係止片51Pの先端辺が仮想直線61Lの上に到達する所定角度まで、蓋体61が閉塞位置から開放位置に向けて回動すると、蓋体61が閉塞位置に戻されるとしても、仮想直線61Lの上に位置する接合片61Pの後端辺61Eが板紙1枚分の段差となり、蓋係止片51Pの先端辺を効果的に押し下げる。これにより、蓋体61が角度θまで回動すれば、蓋体61が開放位置に到達する前に閉塞位置に戻されるとしても、蓋係止片51Pの先端辺が下方に向いた状態で段部62Sに嵌まり込む(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
図10が示すように、収納容器の第3例は、接合片61Pにおける後板52側の後端辺61Eよりもさらに後板52側に、蓋係止片51Pにおける後板52側の後端辺51Eを配置する。接合片61Pの後端辺61Eと蓋係止片51Pの後端辺51Eとの距離は、蓋係止片51Pの高さの所定倍数の大きさを有する。後端辺61Eと後端辺51Eとをこのような位置関係にすることにより、蓋体61が閉塞位置から開放位置に向けて回動するとき、蓋係止片51Pの先端辺51Bなかの後端辺51Eの付近が、接合片61Pによって押し上げられにくくなる。これにより、蓋体61が閉塞位置に戻されるとしても、蓋係止片51Pの先端辺51Bを下方に向けやすくなる(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-40434号公報
【文献】特開2016-141401号公報
【文献】特開2016-141402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、蓋体が閉塞位置から開放位置に向けて徐々に回動するとき、蓋係止片の先端辺は、接合片に押し上げられる位置を前板側の前端から後板側の後端に移しながら、徐々に擦り上げられる。
【0010】
ここで、蓋体側面板62の内面が上述した低面部62S2を備える第2例では、蓋体61が角度θだけ回動するまでに、上述した擦り上げが連続的に進められる。そして、蓋体61が角度θだけ回動したときに、蓋係止片51Pが接合片61Pに押し上げられる位置が蓋係止片51Pの先端辺51Bのなかの後端まで到達してしまい、蓋係止片51Pにおいて先端辺51Bの全てが上方に向いてしまう。その結果、蓋体61を角度θだけ回動してから閉塞位置に戻す操作において、蓋係止片51Pの先端辺を再び下方に向けることが困難となっている。
【0011】
また、接合片の後端辺を蓋係止片の後端辺よりも前方に配置する第3例では、開放位置から閉塞位置に向けて蓋体61を回動するとき、接合片61Pの後端辺61Eが前方に位置する分だけ、接合片61Pによる蓋係止片51Pの押し下げ位置も前方に位置する。そして、上方に向いた蓋係止片51Pの先端辺51Bは、当該先端辺51Bの前端と後端との間から、下方に向けて押し下げられることになる。その結果、第3例においても、蓋体61を閉塞位置に戻す操作において、蓋係止片51Pの先端辺51Bを再び下方に向けることが困難となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための収納容器は、底板と、前記底板に立設された前板、後板、左板、および右板とを備え、前記底板に立設された各板の上辺が開口を区切る容器本体と、前記後板の上辺に回動可能に連設された蓋体と、を備え、前記左板および前記右板の少なくとも一方が本体側面板であり、前記本体側面板は、前記本体側面板の上辺に前記容器本体の外側に向けて突出した蓋係止片を備え、前記蓋体は、前記開口を覆う上蓋板と、前記上蓋板が前記開口を閉じた閉塞状態で前記蓋係止片と前記本体側面板の少なくとも一部とを覆う蓋体側面板と、を備え、前記蓋体側面板は、前記蓋体の内側に位置する接合片を備え、前記接合片は、前記上蓋板と前記蓋体側面板との交線と対向する辺である接合段辺を備え、前記蓋体側面板の内面における前記交線と前記接合段辺との間に前記閉塞状態で前記蓋係止片が嵌まり込む段部を区画し、前記接合段辺における前記後板側の端部である段辺後端は、前記蓋係止片における前記後板側の端部である係止後端よりも前記閉塞状態において前記前板側に位置し、前記接合片は、前記閉塞状態で前記段辺後端よりも前記底板側に位置し、かつ前記段辺後端よりも前記後板側に突き出る突部をさらに備え、前記蓋体が前記閉塞状態から所定角度だけ回動するとき、前記接合段辺が前記蓋係止片における前記前板側を擦り上げた後に、前記接合段辺の前記後板側が、前記蓋係止片における前記後板側を擦り上げ、前記蓋体が前記閉塞状態に戻るとき、前記蓋係止片における前記前板側が押し下げられる前に、前記突部が前記蓋係止片における前記後板側を押し下げはじめる。
【0013】
上記課題を解決するための巻回体入り収納容器は、長尺物が巻かれた巻回体と、上記収納容器と、を備える。
上記各構成によれば、蓋体が閉塞状態から所定角度だけ回動するとき、接合段辺が蓋係止片における前板側を擦り上げ、次いで、接合段辺の後板側が、蓋係止片における後板側を擦り上げる。この際、突部が接合段辺の段辺後端よりも底板側に位置するため、蓋係止片の擦り上げが一度途切れる。そのため、蓋体が所定角度だけ回動した後に閉塞状態に戻されるとしても、蓋係止片の擦り上げが途切れた分だけ、擦り上げられる蓋係止片の後方は十分に上方を向かない状態になるため、蓋係止片が水平に戻りやすい。そのうえ、突部が蓋係止片における後板側から蓋係止片を押し下げる。これにより、接合段辺の段辺後端が蓋係止片における前後方向の中央付近から蓋係止片を押し下げることに比べて、擦り上げられた蓋係止片は突部によりさらに押し下げられやすく、下方に戻りやすい。その結果、蓋体が所定角度だけ回動した後に閉塞状態に戻されるとしても、蓋係止片が下方に戻りやすくなるため、蓋係止片が下方に向いた状態で段部に嵌り込むことが可能となる。
【0014】
上記収納容器において、前記所定角度が20°以上60°以下であってもよい。
上記構成によれば、巻回体に巻かれている長尺物を収納容器から引き出すための角度の範囲において、上述した効果が得られる。そのため、巻回体を収納するための収納容器に適した構成を実現することが可能ともなる。
【0015】
上記収納容器において、前記蓋係止片の前後方向における長さは、前記本体側面板における頂辺の前後方向における長さの0.5倍以上0.75倍以下であってもよい。
上記構成によれば、蓋係止片の長さが本体側面板における頂辺の0.75倍以下であるから、蓋係止片の擦り上げを戻しやすくすることの実効性を高めることが可能ともなる。また、蓋係止片の長さが本体側面板における頂辺の0.5倍以上であるから、閉塞状態での上蓋板の浮き上がりを抑えることの実効性を高めることが可能ともなる。
【0016】
上記収納容器において、前記蓋係止片の前記係止後端と、前記後板における高さ方向の短辺との間の距離は、前記前板と前記後板の間の前後方向における長さの0.1倍以上0.4倍以下であってもよい。
【0017】
上記構成によれば、後板における高さ方向の短辺と係止後端との間の距離が前板と後板の間の前後方向における長さの0.1倍以上であるから、突部で蓋係止片を押し下げやすくすることが可能ともなる。また、後板における高さ方向の短辺と係止後端との間の距離が前板と後板の間の前後方向における長さの0.4倍以下であるから、接合段辺の段辺後端を係止後端よりも前板側に配置する設計が容易ともなる。
【0018】
上記収納容器において、前記突部は、第1突部であり、前記接合片は、前記第1突部よりも大きい第2突部であって、前記閉塞状態で前記第1突部よりも前記底板側に位置し、かつ前記第1突部よりも前記後板側に突き出る前記第2突部をさらに備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、第1突部よりも後板側に突き出る第2突起を接合片が備えるため、接合片の機械的な強度、および蓋体側面板の機械的な強度やカートニング機との機械適正を高めることが可能ともなる。また、接合片の面積を下方に拡大することが可能となるから、接合片と蓋体側面板との接着領域を増やすことが可能となり、箱体の形状が外力を受けて歪むことを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】巻回体入り収納容器の一実施形態であって未開封の状態を示す斜視図。
図2図1の巻回体入り収納容器であって蓋体が開いた状態を示す斜視図。
図3】容器本体を製造するため中間体の構造を示す平面図。
図4】蓋体が閉じた状態の蓋係止片に対する接合片の相対位置を示す側面図。
図5】接合片の作用を示す作用図。
図6】接合片の作用を示す作用図。
図7】接合片の作用を示す作用図。
図8】収納容器の第1例における接合片を蓋係止片と共に示す側面図。
図9】収納容器の第2例における接合片を蓋係止片と共に示す側面図。
図10】収納容器の第3例における接合片を蓋係止片と共に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、収納容器、および巻回体入り収納容器の一実施形態を説明する。
[巻回体入り収納容器]
図1が示すように、巻回体入り収納容器は、収納容器10と巻回体50Rとを備える。
【0022】
収納容器10は、一方向に延びる直方体状を有する。収納容器10は、例えば、コートボール紙などの1枚の厚紙からなる中間体を折り曲げて接着することによって製造される。巻回体50Rは、紙製の筒体50Cを備える。長尺物の一例であるラップフィルム50は、筒体50Cに巻き付けられている。
【0023】
[収納容器]
収納容器10は、容器本体20と蓋体30とを備える。
容器本体20は、上面が開口した箱状を有する。容器本体20は、前板21、後板22、右板23、左板24、および、底板25を備える。前板21、後板22、右板23、および、左板24は、底板25から立設する1つの周壁を構成する。以下、右板23と左板24とは、本体側面板とも言う。
【0024】
容器本体20を構成する各板21,22,23,24,25は、複数の厚紙が積層された積層板として構成してもよいし、1枚の厚紙から構成してもよい。容器本体20の開口20T(図2を参照)は、周壁の上辺によって区画されている。
【0025】
巻回体50Rの軸方向Aは、収納容器10が延在する方向とほぼ平行である。ラップフィルム50は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテンからなる群から選択されるいずれか1種類を原材料とするフィルム、もしくは、これらを組み合わせた多層フィルムであり、これらに限定されるものではない。
【0026】
図1および図2では、底板25に対する開口20Tの側を上側、開口20Tに対する底板25の側を下側として説明する。また、前板21から後板22に向けた方向を後方、後板22から前板21に向けた方向を前方として説明する。右板23から左板24に向けた方向、および、左板24から右板23に向けた方向を、左右方向として説明する。また、底板25から開口20Tに向けた方向を上方、開口20Tから底板25に向けた方向を下方、あるいは高さ方向として説明する。
【0027】
[容器本体20]
前板21、後板22、および、底板25は、左右方向に延びる矩形板状を有する。
前板21と後板22とは、前後方向に向かい合う。底板25の前辺は、前板21の下辺であり、底板25の後辺は、後板22の下辺である。また、前板21において高さ方向に延びる辺は前板短辺であり、後板22の高さ方向に延びる辺は後板短辺である。
【0028】
右板23、および、左板24は、矩形板状を有し、左右方向に向かい合う。右板23の下辺は、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の右辺に繋がる。左板24の下辺もまた、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の左辺に繋がる。
【0029】
前板21は、補助前板21A(図3参照)と主前板21B(図3参照)を備える。
補助前板21Aは、容器本体20の内表面を構成する。主前板21Bは、前板21の外表面を構成する。補助前板21Aは、前板21の上辺21Tで主前板21Bに連接する。主前板21Bの外表面は、ラップフィルム50を仮止めするための仮止め部21Sを備える(図2参照)。
【0030】
主前板21Bは、左右で一対の前板フラップ21Fを備える。
前板フラップ21Fは、主前板21Bのなかの高さ方向の中央よりも前板21の上辺寄りで、仮止め部21Sを左右方向で挟むように位置する。
【0031】
前板フラップ21Fは、主前板21Bの上辺21Tのなかの一部分(図3参照)と、当該一部分に両端を有した曲線状の切断線21FCとによって囲まれる。切断線21FCは、前板21の上辺から下方に向けて凸となる波状を有する。前板フラップ21Fは、主前板21Bを切断線21FCに沿って切り込むことで形成され、前板21の上辺21Tのなかの一部分を回動軸にして前方に回動する。前板フラップ21Fは、容器本体20の開口20Tから引き出されて切断されたラップフィルム50の切断端を主前板21Bから離す。
【0032】
仮止め部21Sは、軸方向Aに並ぶ複数の四角形状を有した仮止め要素を備える。
仮止め部21Sの位置は、前板21の外表面のなかで高さ方向の中央よりも上辺寄りであり、かつ、軸方向Aの中央を含む。仮止め部21Sを構成する各仮止め要素は、前板21の外表面に塗られたUVニスなどから形成される。仮止め部21Sは、容器本体20の開口20Tから引き出されて前板21の上辺から垂れ下がるラップフィルム50を前板21の外表面に仮止めする。
【0033】
補助前板21Aの上部は、前後方向に延びる規制片3R,4R(図2参照)を備える。
規制片3R,4Rは、補助前板21Aの上辺の左右両端部に位置する。規制片3R,4Rは、補助前板21Aの上辺から罫線LR(図3参照)で折り曲げられている。規制片3R,4Rは、筒体50Cの左右両端部に配置され、筒体50Cと当たり接することにより、巻回体50Rが容器本体20から飛び出すことを抑える。
【0034】
右板23は、3枚のフラップ13F,23F,53F(図3参照)を備える。
左板24は、3枚のフラップ14F,24F,54F(図3参照)を備える。
各フラップ13F、14F、23F、24Fは、容器本体20の内表面を構成する。各フラップ53F,54Fは、容器本体20の外表面を構成する。各フラップ23F,24Fは、フラップ13Fの内側とフラップ14Fの内側とに位置する。右板23と左板24とは、本体側面板の一例である。
【0035】
右板23は、前後方向に延びる蓋係止片3T(図2参照)を備える。
左板24は、前後方向に延びる蓋係止片4T(図2参照)を備える。
蓋係止片3Tは、右板23を構成するフラップ53F(図3参照)の上辺3Eに接続されている。蓋係止片3Tは、フラップ53Fの上辺3Eで容器本体20の外側(右側)に折り曲げられて、容器本体20の右側に突き出ている。蓋係止片3Tは、前後方向に延在している。
【0036】
蓋係止片4Tは、左板24を構成するフラップ54F(図3参照)の上辺4Eに接続されている。蓋係止片4Tは、フラップ54Fの上辺4Eで容器本体20の外側(左側)に折り曲げられて、容器本体20の左側に突き出ている。蓋係止片4Tは、前後方向に延在している。
【0037】
収納容器10の製造に際して、主前板21Bは、底板25と主前板21Bとの境界である罫線L(図3参照)で折り曲げられる。補助前板21Aは、主前板21Bの内側に位置するように、主前板21Bと補助前板21Aとの境界である罫線で折り曲げられ、主前板21Bの内側に貼り付けられる。後板22は、前板21と対向するように、底板25と後板22との境界である罫線L(図3参照)で折り曲げられる。
【0038】
右板23と左板24との形成に際して、内側から順に、まず、後板22に対して罫線LT(図3参照)でフラップ23F,24Fが折り曲げられる。次いで、前板21に対して罫線LTでフラップ13F,14Fが折り曲げられる。続いて、底板25に対して罫線LT(図3参照)でフラップ53F,54Fが折り曲げられる。続いて、フラップ23F,13F,53Fの間、および、フラップ24F,14F,54Fの間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。最後に、蓋係止片3T,4Tが、フラップ53F,54Fの上辺で容器本体20の外側に折り曲げられる。
【0039】
[蓋体30]
図1に戻り、蓋体30は、上蓋板31、蓋前板32、蓋右板33、および、蓋左板34を備える。上蓋板31は、後板22の上辺に回転可能に連接されている。上蓋板31は、後板22の上辺を軸として、容器本体20に対して回転し、容器本体20の開口20Tを開閉する。
【0040】
蓋前板32と前板21とは、相互にほぼ同形の矩形板状を有する。蓋前板32の上辺は、上蓋板31の前辺である。蓋前板32は、蓋体30が開口20Tを閉じた状態で、前板21の外表面全体を覆う。蓋前板32は、高さ方向の中間よりも底板25の側に、半円状を有した複数の切り込み部32Cを備える。
【0041】
切り込み部32Cの内面は、前板21の外表面と接着されている。蓋前板32における高さ方向のほぼ中央は、左右方向の全幅にわたるミシン目線32Mを備える。ミシン目線32Mは、頂部を下方に向けた略V字状を有する。ミシン目線32Mの右端は、ミシン目線32Mに沿って蓋前板32の切断を開始するための開封端32Nである。
【0042】
開封端32Nが前方に引っ張られるとき、蓋前板32はミシン目線32Mで切断される。また、前板21と蓋前板32との接着は、切り込み部32Cで引き剥がされて、蓋前板32の左右方向の全幅が、ミシン目線32Mを境にして、下側半分と上側半分とに分割される。
【0043】
蓋前板32のなかでミシン目線32Mに区画された上側半分は、掩蓋板32Pである。蓋前板32のなかでミシン目線32Mに区画された下側半分は、切り取り片32Kであり、ラップフィルム50の使用の開始に際して、容器本体20から切り離される。切り取り片32Kが蓋体30から切り離されると、掩蓋板32Pの下端辺から、切断刃35(図2参照)の刃先の全体が露出する。そして、蓋体30が後板22の上辺で回転することによって、容器本体20の開口20Tが開けられる。
【0044】
掩蓋板32Pは、蓋体30が開口20Tを閉じた状態で、上蓋板31の前辺から底板25に向けて延びる板状を有し、前板21の外表面上部を覆う。掩蓋板32Pの高さ方向での幅は、左右方向の両端部を除き、左右方向の中央部で最も大きく、左右方向の中央部からそれぞれの端部に移動するにつれて、高さ方向の幅が短くなる。収納容器10の製造に際して、掩蓋板32Pは、上蓋板31に対して罫線L(図3参照)で折り曲げられる。
【0045】
掩蓋板32Pの内面には、切断刃35が接合されている。切断刃35は、左右方向に並ぶ刃先を有した鋸刃状を有する。切断刃35は、蓋体30が開口20Tを閉じた状態で、複数の刃先が掩蓋板32Pから下方に突出するように、掩蓋板32Pに接合されている。掩蓋板32Pに切断刃35を接合する方法は、例えば、掩蓋板32Pと切断刃35との間にシーラント材や接着層を介在させて、超音波接着によって行われる。また、切断刃35を構成する刃材樹脂層にシーラント層をラミネートした構成とすることもできる。
【0046】
切断刃35を構成する材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、あるいは、金属である。切断刃35は、例えば、樹脂と添加剤とを含み、添加剤の種類や、その添加量によって、切断刃35の剛性や、掩蓋板32Pに対する切断刃35の接着性を調整することができる。
【0047】
切断刃35を構成する樹脂は、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン)樹脂である。切断刃35を構成する添加剤は、例えば、オレフィン系樹脂などの樹脂や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルクなどの無機材料である。シーラント層を構成する樹脂は、例えば、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリオレフィン等が使用される。
【0048】
蓋右板33は、蓋体側面板33F,接合片323(図2参照)を備える。
蓋左板34は、蓋体側面板34F,接合片324(図2参照)を備える。
蓋右板33と蓋左板34とにおいて、各蓋体側面板33F,34Fは、蓋体30の外表面を構成し、各接合片323,324は、蓋体30の内表面を構成する。蓋右板33と蓋左板34とは、蓋体30が開口20Tを閉じた状態で、右板23の外表面上部を覆い、また、左板24の外表面上部を覆う。
【0049】
接合片323は、上蓋板31と蓋体側面板33Fとの交線と接合片323との間に隙間を空けて位置する。接合片324もまた、上蓋板31と蓋体側面板34Fとの交線と接合片324との間に隙間を空けて位置する。これにより、接合片323,324は、上蓋板31との間に隙間を空けて位置し、各蓋体側面板33F,34Fの内表面に、段部33S,34Sを形成する。上述した各蓋係止片3T,4Tは、蓋体30が開口20Tを閉じるとき、段部33S,34Sに嵌まり込み、クリック音を発生させて、段部33S,34Sと係合する。各蓋係止片3T,4Tは、段部33S,34Sとの係合を通じ、閉塞状態で上蓋板31が浮き上がることを抑える。
【0050】
蓋体30の形成に際して、まず、掩蓋板32Pに対して罫線LT(図3参照)で各接合片323、324が折り曲げられる。次いで、上蓋板31に対して罫線LT(図3参照)で各蓋体側面板33F,34Fが折り曲げられる。最後に、蓋体側面板33Fと接合片323との間、および、蓋体側面板34Fと接合片324との間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。
【0051】
[接合片323,324]
次に、接合片323,324の構成および作用を説明する。
図4は、蓋体30が閉塞位置に配置された状態における蓋係止片4Tと接合片324との相対位置を示す側面図であり、蓋体側面板34Fの内面から見た図である。図5は、蓋体30が閉塞位置から開放位置に向けて回動しはじめた状態、あるいは蓋体30が開放位置から閉塞位置に向けて回動し終える状態における、蓋係止片4Tと接合片324との相対位置を示す側面図であり、図4と同じく、蓋体側面板34Fの内面から見た図である。図6は、図5に示す状態から蓋体30がさらに開放位置に向けて回動した状態における、蓋係止片4Tと接合片324との相対位置を示す側面図であり、図4と同じく、蓋体側面板34Fの内面から見た図である。図7は、図6に示す状態から蓋体30がさらに開放位置に向けて回動した状態、あるいは蓋体30が開放位置から閉塞位置に向けて回動し、接合片324の突部が蓋係止片4Tを通過するときの蓋係止片4Tと接合片324との相対位置を示す側面図であり、図4と同じく、蓋体側面板34Fの内面から見た図である。
【0052】
なお、容器本体20の左右方向での中心を通り、かつ、左右方向と直交した対称面に対して、接合片323と接合片324とは面対称であり、蓋係止片3Tと蓋係止片4Tとは面対称である。以下では、接合片323と蓋係止片3Tとの構成について重複した説明を割愛し、接合片324と蓋係止片4Tとの構成を主に説明する。
【0053】
図4が示すように、接合片324は、接合段辺32Tを備える。接合段辺32Tは、図4の二点鎖線で示す交線LTXと対向する辺であり、接合片324の上辺である。接合段辺32Tは、蓋係止片4Tの係止先端辺T4Kと対向する辺を含み、蓋係止片4Tの係止先端辺T4Kと当接する。なお、接合段辺32Tは、蓋係止片4Tの係止先端辺T4Kと当接する状態であれば、前後方向に対して傾斜していてもよい。交線LTXは、上蓋板31(図2参照)と蓋体側面板34F(図2参照)とを接続する罫線LTである。交線LTXは、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、前後方向に沿って延びる直線状を有する。交線LTXは、上蓋板31の上面31Sから上蓋板31の厚さ分だけ、上面31Sの下方に位置する。接合段辺32Tもまた、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、前後方向に沿って延びる直線状を有する。
【0054】
交線LTXと接合段辺32Tとは、蓋体側面板34Fの内面に段部34Sを区画する。段部34Sは、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、蓋係止片4Tが嵌まり込む窪みである。交線LTXと接合段辺32Tとに挟まれる段部34Sは、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、前後方向に沿って延びる領域を有する。
【0055】
後板22と上蓋板31との交線は、回転軸線LAである。回転軸線LAは、後板22と上蓋板31とを接続する罫線Lである。回転軸線LAは、蓋体30の回転中心として機能する。図4では、後板22と上蓋板31と蓋体側面板34Fの交点をLA’とし、交点LA’は後板における高さ方向の短辺を含む。蓋体30が閉塞位置から開放位置に向けて回動するとき、回転軸線LAを中心として、図4の左回りに接合片324が回転する。蓋体30が開放位置から閉塞位置に向けて回動するとき、回転軸線LAを中心として、図4の右回りに接合片324が回転する。
【0056】
蓋係止片4Tは、前後方向に延びる四角板状を有する。蓋係止片4Tは、係止基端辺LT2と係止先端辺T4Kとを備える。係止基端辺LT2は、左板24を構成するフラップ54F(図3参照)の上辺を含む。蓋係止片4Tは、係止基端辺LT2で折り曲げられて、容器本体20の左側である紙面手前に向けて突き出ている。
【0057】
係止先端辺T4Kは、蓋係止片4Tの辺のなかで係止基端辺LT2とは反対側の辺である。係止先端辺T4Kは、蓋体30が閉塞位置に配置されるとき、接合片324の接合段辺32Tと少なくとも一部が当接する辺である。係止先端辺T4Kの少なくとも一部が接合段辺32Tと当接することにより、蓋体30が容器本体20から浮き上がることを抑える。なお、図4では、接合片324と蓋係止片4Tとの詳細な構成を説明する便宜上、係止先端辺T4Kと接合段辺32Tとの間に若干の隙間を空けて示す。係止先端辺T4Kは、蓋体30が閉塞位置から回動しはじめるとき、係止先端辺T4Kの前板21の側から順に、接合片324の接合段辺32Tによって擦り上げられる辺である。
【0058】
蓋係止片4Tは、係止後端T4Eを備える。係止後端T4Eは、蓋係止片4Tのなかで最も後板22側に位置する部分であり、蓋係止片4Tの後板22側の末端である。係止後端T4Eは、後板22における高さ方向の短辺を含む交点LA’よりも前方に位置する。係止後端T4Eと交点LA’との間の前後方向における距離は、前板21と後板22との間の前後方向における長さの0.1倍以上0.4倍以下でもよい。なお、係止後端T4Eと交点LA’との間の前後方向における距離は、係止後端T4Eから後板22における高さ方向の短辺である後板短辺までの距離でもよく、係止後端T4Eと後板短辺との間の水平方向の距離でもよい。係止後端T4Eにおいて、後板短辺までの距離が係止先端辺T4Kと係止基端辺LT2とで異なる場合には、係止先端辺T4Kから後板短辺までの距離とする。蓋係止片4Tの前後方向における長さは、本体側面板24における頂辺の前後方向における長さの0.5倍以上0.75倍以下でもよい。
【0059】
接合片324は、段辺後端32Eを備える。段辺後端32Eは、接合段辺32Tにおける前後方向の両端のなかで後板22の側の端である。蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、段辺後端32Eは係止後端T4Eよりも前方に位置する。接合段辺32Tは、前後方向において、蓋係止片4Tよりも前方に位置し、かつ係止先端辺T4Kよりも前方に位置する部分を有する。蓋係止片4Tは、前後方向において、接合段辺32Tよりも後方に位置する部分を有する。
【0060】
接合片324は、第1突部321を備える。第1突部321は、段辺後端32Eを頂点とする角部を通じて、接合段辺32Tと接続されている。段辺後端32Eを頂点とする角部は、接合段辺32Tと、段辺後端32Eから下方に延びる辺とから構成される。
【0061】
第1突部321は、後方に向けて突き出る三角板状を有する。第1突部321が有する斜辺は、接合片324における後方縁の一部である。接合片324の後方縁は、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、接合片324の縁のなかで後板22と対向する部分である。
【0062】
第1突部321の斜辺に沿って延び、かつ回転軸線LAを通る直線は、誘導直線32Lである。誘導直線32Lと交線LTXとが形成する角度は、所定角度である誘導角θaである。誘導角θaは、20°以上60°以下でもよい。
【0063】
第1突部321は、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、接合段辺32Tよりも下方、かつ後方に位置する。
【0064】
第1突部321の先端と接合段辺32Tの段辺後端32Eとの間の前後方向における距離は、第1突部321の突出量T1である。第1突部321の先端は、前後方向において蓋係止片4Tの係止後端T4Eよりも前方に位置する。
【0065】
接合片324は、第2突部322を備える。第2突部322は、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、第1突部321の下方に位置する。また、第2突部322は、第1突部321よりも後方に位置する部分を有し、後方に向けて突き出る四角板状を有する。第2突部322の縁は、第1突部321の斜辺と同じく、接合片324における後方縁の一部である。接合片324の後方縁は、例えば、後方に突き出る突部を下方に向けて2回繰り返す辺であり、上下方向に延びる波線状の縁のなかに、第1突部321および第2突部322のみを備える。
【0066】
第2突部322の先端と接合段辺32Tの段辺後端32Eとの間の前後方向における距離は、第2突部322の突出量T2である。突出量T2は、突出量T1よりも大きく、第2突部322の先端は、前後方向において蓋係止片4Tの係止後端T4Eとほぼ等しい位置に配置されている。突出量T2を有した第2突部322は、例えば、収納容器10の中間体において、蓋体側面板34Fよりもさらに外側に向けて突き出る(図3参照)。こうした第2突部322は、収納容器10の中間体を搬送において、中間体を安定して整列させるためのガイドなどとして機能する。
【0067】
第1突部321は、誘導直線32Lを挟んで、第2突部322に対する前方、かつ上方に位置する。第2突部322は、誘導直線32Lを挟んで、第1突部321に対する後方、かつ下方に位置する。
【0068】
[作用]
図5が示すように、蓋体30が閉塞位置から開放位置に向けて回動しはじめると、接合段辺32Tの前板21側が、後板22側よりも上方に大きく変位しはじめる。そして、蓋係止片4Tの係止先端辺T4Kにおける前板21側が、接合段辺32Tによって徐々に擦り上げられる。ここで、蓋係止片4Tの前板21側または後板22側とは、蓋係止片4Tの係止先端辺T4Kの前後方向における長さの中間を境に、前板21に近い方を前板21側、後板22に近い方を後板22側とする。また、擦り上がるとは、図6が示すように、接合段辺32Tが蓋係止片4Tを前側から回転するように持ち上げていく動きに対して、蓋係止片4Tが前側から持ち上げられるのに対し、蓋係止片4Tの後側はまだ下側に押さえられた状態となり、蓋係止片4Tが前後で歪みながら回転する状態を示す。
【0069】
図6が示すように、蓋体30が閉塞位置から開放位置に向けてさらに回動すると、接合段辺32Tの後板22側の段辺後端32Eが、蓋係止片4Tの後板22側の係止先端辺T4Kを擦り上げる。この際、段辺後端32Eが蓋係止片4Tの係止後端T4Eよりも前方に位置するため、蓋係止片4Tにおける段辺後端32Eよりも後板22側に位置する部分は、擦り上げられず、下方を向き続ける。
【0070】
図7が示すように、蓋体30が閉塞位置から誘導角θaまで回動すると、第1突部321は係止先端辺T4Kを通過する。
この際、第1突部321が段辺後端32Eよりも下方に位置するため、段辺後端32Eによる擦り上げの終了で擦り上げ動作が完了する。第1突部321は段辺後端32Eよりも下方にあるため、係止先端辺T4Kと段辺後端32Eの擦り上げが終了した時点で係止先端辺T4Kと段辺後端32Eとの係合が外れ、第1突部321の擦り上げ効果は少なくなる。そのため、蓋体30が誘導角θaだけ回動する直前に、あるいは誘導角θaだけ回動した直後に、蓋体30が閉塞状態に戻されるとしても、蓋係止片4Tの擦り上げが途切れた分だけ、蓋係止片4Tが下方に戻りやすい。
【0071】
また、第1突部321の先端が、蓋係止片4Tの係止後端T4Eよりも前方に位置するため、蓋係止片4Tにおける後板22側の部分は、完全には擦り上げられず、一部が下方を向き続ける。そして、蓋体30が誘導角θaだけ回動した直後に、蓋体30が閉塞状態に戻されるとしても、第1突部321の32L上の斜辺が蓋係止片4Tにおける後板22側を上方から押し下げはじめる。これにより、蓋係止片4Tにおける前後方向の中央付近から段辺後端32Eが蓋係止片4Tを押し下げることに比べて、蓋係止片4Tがさらに戻りやすく、押し下げられやすい。
【0072】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)蓋体30が誘導角θaだけ回動した直後に蓋体30が閉塞状態に戻されるとき、接合段辺32Tによる押し下げに先駆けて、蓋係止片4Tにおける後板22側から第1突部321が蓋係止片4Tを押し下げはじめる。これにより、蓋係止片4Tが押し下げられやすいため、蓋体30が誘導角θaだけ回動した後に閉塞状態に戻されるとしても、蓋係止片4Tが下方に戻りやすくなり、蓋係止片4Tが下方を向いた状態で段部33Sに嵌り込むことが可能となる。
【0073】
(2)誘導角θaが20°以上60°以下である場合、収納容器10から長尺物を引き出すための角度の範囲において、上記(1)に準じた効果が得られる。そのため、巻回体を収納するための収納容器10に適した構成を実現することが可能ともなる。
【0074】
(3)蓋係止片4Tの前後方向における長さが側面幅Wの0.5倍以上である場合、閉塞状態での上蓋板31の浮き上がりを抑えることの実効性を高めることが可能ともなる。蓋係止片4Tの前後方向における長さが側面幅Wの0.75倍以下である場合、蓋係止片4Tの擦り上げを戻しやすくすることの実効性を高めることが可能ともなる。
【0075】
(4)係止後端T4Eと後板短辺との間の前後方向における距離は、前板と後板の間の前後方向における長さの0.1倍以上である場合、第1突部321で蓋係止片4Tを押し下げやすくすることが可能ともなる。係止後端T4Eと後板短辺との間の前後方向における距離は、前板と後板の間の前後方向における長さの0.4倍以下である場合、段辺後端32Eを係止後端T4Eよりも前板21側に配置する設計が容易ともなる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・第1突部321は、後方に向けて突き出る三角板状に限らず、後方に向けて突き出る四角板状や不定形板状であってもよい。第1突部321は、蓋体30が閉塞位置に配置されているとき、接合段辺32Tよりも下方、かつ後方に位置する構成であって、接合片324の角のように、段辺後端32Eから下方に向けて延びる短い辺を介して、接合段辺32Tと接続される構成であればよい。
・接合片323,324は、第2突部322を割愛された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
θa…誘導角
T4E…係止後端
10…収納容器
20…容器本体
20T…開口
21…前板
22…後板
25…底板
30…蓋体
323,324…接合片
32E…段辺後端
33S、34S…段部
32T…接合段辺
3T、4T…蓋係止片
35…切断刃
50R…巻回体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10