(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】チャンバポンプおよびパージによるプロセスチャンバの低減に対するガス放出の影響
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20240220BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L21/265 603Z
H01L21/68 N
H01L21/265 603C
(21)【出願番号】P 2020539737
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 US2019015748
(87)【国際公開番号】W WO2019152448
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-24
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バゲット,ジョン
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-031764(JP,A)
【文献】特開平05-029448(JP,A)
【文献】特表2014-525139(JP,A)
【文献】特開2017-224608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース処理システムであって、
ワークピースを処理するためのプロセスチャンバと、
上記プロセスチャンバに動作可能に接続されたガス放出チャンバと、
上記ガス放出チャンバに関連するヒータと、
上記ガス放出チャンバと選択的に流体連通する真空源と、
上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間において上記ワークピースを選択的に搬送するワークピース搬送装置と、
コントローラと、を備えており、
上記プロセスチャンバは、上記プロセスチャンバに関連するプロセス環境を有しており、
上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出チャンバ内に画定されたガス放出環境から上記プロセス環境を選択的に隔離するガス放出チャンババルブを有しており、
上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出環境内において上記ワークピースを選択的に支持する第1ワークピースサポートを有しており、
上記ヒータは、上記ワークピースを第1所定温度まで選択的に加熱し、
上記真空源は、上記ガス放出チャンバを第1所定圧力まで選択的に減圧し、
上記コントローラは、上記ワークピースが上記ガス放出チャンバ内に存在している場合に、上記ガス放出チャンババルブを制御することによって、上記ガス放出チャンバ内の上記ワークピースを隔離し、
上記コントローラは、(i)上記ヒータを制御することによって上記ワークピースを上記第1所定温度まで加熱すると同時に、(ii)上記真空源を制御することによって上記第1所定圧力まで上記ガス放出チャンバを減圧し、
上記コントローラは、所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り、上記ワークピースをほぼ上記第1所定温度かつほぼ上記第1所定圧力に維持し、
上記ガス放出チャンババルブを制御することによって、上記ガス放出チャンバ内の上記ガス放出環境を上記プロセス環境とのみ選択的に流体連通させることにより、上記ガス放出環境が外部環境と流体連通することが防止され
、
上記ワークピース処理システムは、上記ガス放出チャンバと選択的に流体連通するパージ源をさらに備えており、
上記パージ源は、上記ガス放出チャンバを第2所定圧力まで選択的に加圧し、
上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力よりも高く、かつ、上記第1所定圧力と大気圧力との間の圧力である、ワークピース処理システム。
【請求項2】
上記コントローラは、上記ワークピース搬送装置を制御することによって、上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間において上記ワークピースを選択的に搬送する、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項3】
上記所定のガス放出閾値は、上記ワークピースからガス放出されるガスの量によって規定されている、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項4】
上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出チャンバ内のガス放出圧力を測定する圧力センサを備えている、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項5】
上記所定のガス放出閾値は、上記ガス放出圧力が50ミリトール未満であることによって規定されている、請求項4に記載のワークピース処理システム。
【請求項6】
上記所定のガス放出閾値は、上記第1期間によって規定されている、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項7】
上記パージ源は、不活性ガス源を含んでいる、請求項
1に記載のワークピース処理システム。
【請求項8】
不活性ガスは、窒素を含んでいる、請求項
7に記載のワークピース処理システム。
【請求項9】
上記コントローラは、上記パージ源を制御することによって、上記所定のガス放出閾値に関連する第2期間に亘り、ほぼ上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供する、請求項
1に記載のワークピース処理システム。
【請求項10】
上記コントローラは、上記ヒータを制御することによって、上記第2期間に亘り、第2所定温度において上記ワークピースを提供する、請求項
9に記載のワークピース処理システム。
【請求項11】
上記コントローラは、上記真空源および上記パージ源を制御することによって、所定の反復回数に亘り、上記第1所定圧力および上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供する、請求項
1に記載のワークピース処理システム。
【請求項12】
上記第1所定圧力および上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供する上記反復回数に応じた、第1所定期間および第2所定期間は、変更可能である、請求項
11に記載のワークピース処理システム。
【請求項13】
上記ワークピースの処理中に上記プロセスチャンバ内において上記ワークピースを支持するチャックをさらに備えており、
上記チャックは、上記ワークピースをプロセス温度まで加熱する、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項14】
上記第1所定温度は、上記プロセス温度よりも高い、請求項
13に記載のワークピース処理システム。
【請求項15】
上記コントローラは、所望のプロセススループットに少なくとも部分的に基づいて、
上記第1所定温度、上記第1所定圧力、および上記第1期間のうちの1つ以上を決定する、請求項1に記載のワークピース処理システム。
【請求項16】
処理システムにおいてガス放出を軽減するための方法であって、
ガス放出チャンバ内にワークピースを配置する工程を含んでおり、
上記ガス放出チャンバは、プロセスチャンバに動作可能に接続されており、
上記プロセスチャンバは、上記プロセスチャンバに関連するプロセス環境を有しており、
上記方法は、
上記ガス放出チャンバ内の上記ワークピースを上記プロセスチャンバから隔離する工程を含んでおり、
上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出チャンバに関連するガス放出環境を有しており、
上記方法は、
上記ワークピースを第1所定温度まで加熱する工程と、
上記ワークピースのガス放出を誘発してガス放出生成物を形成するために、上記ワークピースを加熱すると同時に上記ガス放出チャンバを第1所定圧力まで減圧する工程と、
上記第1所定圧力を所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り維持する工程と、
上記ガス放出チャンバから上記ガス放出生成物を除去する工程と、を含んでおり、
ガス放出チャンババルブを制御することによって、上記ガス放出チャンバ内の上記ガス放出環境を上記プロセス環境とのみ選択的に流体連通させることにより、上記ガス放出環境が外部環境と流体連通することが防止され
、
上記ガス放出チャンバは、上記処理システムのパージ源と選択的に流体連通し、
上記パージ源は、上記ガス放出チャンバを第2所定圧力まで選択的に加圧し、
上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力よりも高く、かつ、上記第1所定圧力と大気圧力との間の圧力である、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2018年1月31日に出願された「OUTGASSING IMPACT ON PROCESS CHAMBER REDUCTION VIA CHAMBER PUMP AND PURGE」いう名称の米国仮出願第15/884,492号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般的にはイオン注入システムに関し、より具体的には、イオン注入システムにおけるワークピースのガス放出を改善することに関する。
【0003】
[背景]
半導体処理においては、イオン注入などの多くの操作がワークピースまたは半導体ウェハ上で実行されうる。イオン注入プロセス技術が進歩することにつれて、ワークピースにおける様々なイオン注入温度を採用して、ワークピースにおける様々な注入特性を実現することができる。例えば、従来のイオン注入プロセスでは、(i)ワークピースにおけるプロセス温度(処理温度)が室温未満の温度に維持される低温注入、(ii)ワークピースにおけるプロセス温度が一般的には100~600℃の範囲の高温に維持される高温または加熱注入、および、(iii)ワークピースにおけるプロセス温度が室温よりわずかに高いが高温注入において使用される温度よりも低い温度に維持され、準室温注入温度が一般的には50~100℃の範囲である、いわゆる準室温注入、の3つの温度状況(温度レジーム)が一般的に考慮される。
【0004】
例えば、加熱注入はより一般的になりつつある。加熱注入には、プロセス温度は一般的には加熱チャック(加熱されたチャック)によって実現され、ワークピースは一般的に、注入中に静電力(静電気力)または機械式クランプ(機械的クランプ,メカニカルクランプ)によって、加熱チャックのクランプ表面(挟持面)に固定される。例えば、機械式クランプは、機械的手段によって、加熱チャックに対するワークピースの位置を機械的に維持する。一方、加熱された静電チャック(electrostatic chuck)(ESC)は、静電力を使用してワークピースを保持またはクランプする。従来の高温ESCは例えば、ESCおよびワークピースをプロセス温度(例:100~600℃)まで加熱するためにクランプ表面の下に埋め込まれたヒータのセットを備える。これにより、ガス界面(ガスインターフェース)は従来、クランプ表面からワークピースの背面(裏面,バックサイド)に熱界面(熱インターフェース)を提供する。
【0005】
加熱注入の間、ワークピース(例:ワークピースの基板および/または基板上に形成されたフィルム、フォトレジストなど)からのガス放出は、プロセス温度と共に増加する傾向がある。このようなガス放出は、プロセスチャンバ内の圧力を上昇させ、また、不要な異物およびガスをプロセスチャンバ内に導入する可能性がある。プロセスチャンバ内の圧力の上昇は、イオンビームおよび処理(プロセス)に悪影響を及ぼす可能性があり、従って、プロセスチャンバ圧力(例:真空)が安定状態に回復するまで、注入が一時停止されることが一般的であるため、スループット(処理量)を低下させる。
【0006】
[概要]
本発明は、イオン注入システムにおけるワークピースの加熱に関連するガス放出を低減するためのシステム、装置、および方法を提供することによって、従来技術の制約(制限)を解消する。そこで、以下では、本発明の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。本概要は、本発明の広範な概観ではない。本概要は、本発明の主要または重要な要素を特定することも意図していないし、かつ、本発明の範囲を規定(delineate)することも意図していない。その目的は、後に記載するより詳細な説明の序文として、本発明の一部の概念を単純化した形で示すことにある。
【0007】
本開示によれば、ワークピースにイオンを注入するためのイオン注入システムなどのワークピース処理システムが提供される。ワークピース処理システムは、例えば、プロセスチャンバ内に配置されたワークピースに複数のイオンを供給するように構成されたイオン注入装置を備えていてもよい。プロセスチャンバは、当該プロセスチャンバに関連するプロセス環境を有する。
【0008】
一例によれば、ガス放出チャンバはプロセスチャンバに動作可能に接続(連結)されている。上記ガス放出チャンバは、ガス放出チャンババルブ(ガス放出チャンバ弁)を備える。上記ガス放出チャンババルブは、上記ガス放出チャンバ内に画定されたガス放出環境から上記プロセス環境を選択的に隔離する(分離する,切り離す)ように構成されている。例えば、上記ガス放出チャンバは、第1ワークピースサポート(第1ワークピース支持体)を備える。上記第1ワークピースサポートは、上記ガス放出環境内において、上記ワークピースを選択的に支持するように構成されている。さらに、例えば、ヒータは、上記ガス放出チャンバに関連している(関連付けられている)。上記ヒータは、上記ワークピースを第1所定温度まで選択的に加熱するように構成されている。上記ヒータは、(i)加熱ワークピースサポート(加熱されたワークピースサポート)、(ii)加熱ランプ、または、(iii)上記ワークピースを加熱するように構成された任意の他の装置、のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0009】
一例においては、真空源(真空ソース)は、上記ガス放出チャンバと選択的に流体連通(流体連結)する。上記真空源は、上記ガス放出チャンバを第1所定圧力まで選択的に減圧するように構成されている。例えば、ワークピース搬送装置は、上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間において上記ワークピースを選択的に搬送するように構成されている。さらに、コントローラは、上記ワークピースが上記ガス放出チャンバ内に存在している場合に、上記ガス放出チャンババルブを制御することによって、上記ガス放出チャンバ内の上記ワークピースを選択的に隔離するように構成されている。例えば、上記コントローラは、(i)上記ヒータを制御することによって上記ワークピースを上記第1所定温度まで加熱すると同時に(加熱するとともに)、(ii)上記真空源を制御することによって上記ガス放出チャンバを上記第1所定圧力まで減圧するように、さらに構成されている。例えば、上記コントローラは、所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り、上記ワークピースをほぼ上記第1所定温度かつほぼ上記第1所定圧力に維持するように、さらに構成されている。
【0010】
別の例においては、上記コントローラは、上記ワークピース搬送装置を制御することによって、上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間において上記ワークピースを選択的に搬送するように、さらに構成されている。例えば、上記コントローラは、上記所定のガス放出閾値に達した後に、上記ワークピースを上記ガス放出チャンバから上記プロセスチャンバへと搬送するように構成されている。
【0011】
例えば、上記所定のガス放出閾値は、(i)上記ワークピースからガス放出されるガスの量、または、(ii)上記ガス放出チャンバ内のガス放出圧力によって、規定されていてもよい。例えば、上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出チャンバ内の上記ガス放出圧力を測定するように構成された圧力センサを備えていてもよい。一例においては、上記所定のガス放出閾値は、上記ガス放出圧力が50ミリトール未満であることによって規定されている。別の例においては、上記第1所定圧力は、上記ガス放出圧力と同じである。別の例においては、上記第1期間は、約5秒である。さらに別の例においては、上記所定のガス放出閾値は、上記第1期間によって規定されている。
【0012】
別の例によれば、上記ガス放出チャンバと選択的に流体連通するパージ源(パージソース)が提供される。上記パージ源は、上記ガス放出チャンバを第2所定圧力まで選択的に加圧するように構成されている。上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力よりも高い。上記第2所定圧力は、ほぼ大気圧力(大気圧)であってもよい。あるいは、上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力と大気圧力との間の圧力であってもよい。上記パージ源は、不活性ガス(例:窒素)の源(ソース)(不活性ガス源)を含んでいてもよい。
【0013】
例えば、上記コントローラは、上記パージ源を制御することによって、上記所定のガス放出閾値に関連する第2期間に亘り、ほぼ上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供(供給)するように、さらに構成されていてもよい。例えば、上記コントローラは、上記ヒータを制御することによって、上記第2期間に亘り、第2所定温度において上記ワークピースを提供するように、さらに構成されていてもよい。別の例においては、上記コントローラは、上記真空源および上記パージ源を制御することによって、所定の反復回数に亘り、上記第1所定圧力および上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供するように、さらに構成されていてもよい。例えば、上記第1所定期間および上記第2所定期間は、上記第1所定圧力および上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供する上記反復(上記反復回数)(the iteration)に基づいて、変更可能(可変)である。
【0014】
別の例においては、上記ガス放出チャンバは、上記プロセスチャンバに動作可能に連結されたロードロックチャンバを含んでいる。上記ロードロックチャンバは、大気バルブ(大気弁)をさらに備えている。上記大気バルブは、上記ガス放出環境を外部環境から選択的に隔離するように構成されている。また、上記ワークピース搬送装置は、上記ガス放出バルブを介して、上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間において上記ワークピースを選択的に搬送するように構成されていてもよい。
【0015】
チャック(例:静電チャック)は、上記ワークピースの処理中に上記プロセスチャンバ内において上記ワークピースを支持するように構成されていてもよい。上記チャックは、上記ワークピースをプロセス温度まで加熱するように、さらに構成されていてもよい。一例においては、上記第1所定温度は、上記プロセス温度よりも高い。別の例においては、上記チャックは、プロセス温度まで上記ワークピースを冷却するように構成されている。
【0016】
さらに別の例においては、上記コントローラは所望のプロセススループット(プロセス処理量)に少なくとも部分的に基づいて、上記第1所定温度、上記第1所定圧力、および上記第1期間のうちの1つ以上を決定するように、さらに構成されている。さらに、温度監視システムが設けられてもよい。上記温度監視システムは、上記ワークピースの温度を測定するように構成されていてもよい。
【0017】
本開示の別の例示的な態様によれば、処理システムにおいてガス放出を軽減するための方法が提供される。例えば、上記方法は、ガス放出チャンバ内にワークピースを配置する工程を含んでいる。上記ガス放出チャンバは、プロセスチャンバに動作可能に接続されており。上記プロセスチャンバは、上記プロセスチャンバに関連するプロセス環境を有している。上記ガス放出チャンバ内の上記ワークピースは、上記プロセスチャンバから選択的に隔離される。上記ガス放出チャンバは、上記ガス放出チャンバに関連するガス放出環境を有している。上記ワークピースは、第1所定温度まで加熱される。そして、上記ガス放出チャンバは、上記ワークピースの加熱と同時に(加熱に伴って)、第1所定圧力まで減圧させられる。これにより、上記ワークピースのガス放出を誘発(誘引,誘起)して、ガス放出生成物(ガス放出された生成物)を形成(生成)できる。上記ガス放出チャンバ内において、上記第1所定圧力は、所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り維持される。そして、上記ガス放出生成物は、上記ガス放出チャンバから除去される(取り除かれる)。
【0018】
一例においては、上記ガス放出チャンバ内の上記ワークピースを上記プロセスチャンバから隔離する工程は、上記ガス放出チャンバと上記プロセスチャンバとの間に配置されたガス放出チャンババルブを閉じる工程を含んでいる。これにより、上記ガス放出環境を上記プロセス環境から隔離することができる。例えば、上記ワークピースを上記ガス放出チャンバ内に配置する工程は、上記ガス放出チャンバ内のワークピースサポート上に上記ワークピースを配置する工程を含んでいてもよい。上記ワークピースを上記第1所定温度に加熱する工程は、(i)加熱ワークピースサポート、(ii)加熱ランプ、または、(iii)上記ワークピースを加熱するように構成された任意の他の装置、のうちの1つ以上に、上記ワークピースを曝露する工程を含んでいてもよい。一例においては、上記ガス放出チャンバを上記第1所定圧力まで減圧する工程は、上記ガス放出チャンバと選択的に流体連通する真空源によって上記ガス放出チャンバを排気する工程を含んでいる。
【0019】
別の例においては、上記ガス放出チャンバから上記ガス放出生成物を除去した後に、上記ワークピースは、上記ガス放出チャンバから上記プロセスチャンバへとさらに搬送される。例えば、上記ワークピースを上記ガス放出チャンバから上記プロセスチャンバへと搬送する工程は、上記ワークピースを上記プロセスチャンバ内のチャック上に配置する工程をさらに含んでいる。上記ワークピースは、上記チャックによってプロセス温度までさらに加熱されてもよい。例えば、上記第1所定温度は、上記プロセス温度よりも高くてもよい。別の例においては、上記ワークピースは、上記チャックによってプロセス温度まで冷却される。この場合、上記第1所定温度は、上記プロセス温度よりも低い。別の例によれば、上記プロセスチャンバ内において上記ワークピースにイオンがさらに注入されてもよい。
【0020】
別の例においては、上記方法は、上記第1期間の後に、パージガスによって第2所定圧力まで上記ガス放出チャンバを加圧する工程を含んでいる。上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力よりも高い。上記第2所定圧力は、ほぼ大気圧力であってもよい。あるいは、上記第2所定圧力は、上記第1所定圧力と大気圧力との間の圧力であってもよい。上記第2所定圧力は、上記所定のガス放出閾値に関連する第2期間に亘り、維持されてもよい。上記ワークピースは、上記第2期間において、第2所定温度までさらに加熱されてもよい。
【0021】
さらに、上記方法は、真空源およびパージ源を制御することによって、上記第1所定圧力および上記第2所定圧力を反復的に提供してもよい。例えば、上記第1所定期間および上記第2所定期間は、上記第1所定圧力および上記第2所定圧力において上記ワークピースを提供する反復回数に基づいて、変更可能であってもよい。例えば、上記第1所定温度、上記第1所定圧力、および上記第1期間のうちの1つ以上は、所望のプロセススループットに少なくとも部分的に基づいて、決定されてもよい。
【0022】
上述の概要は単に、本発明の一部の実施形態についての一部の構成に関する簡潔な概覧を与えることを意図したものであり、他の実施形態は、上述の構成に対して付加的な構成および/または異なる構成を含んでもよい。特に、本概要は、本出願の範囲を限定していると解釈されるべきではない。従って、上述の関連する目的を達成するために、本発明は、以下に説明され、特に特許請求の範囲において摘示される構成を含む。以下の記載および添付の図面は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理(原則)を用いることができる様々な方法のうちの一部を示している。本発明の他の目的、利点、および新規な構成は、図面を併せて考慮することによって、本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0023】
[図面の簡単な説明]
図1は、本開示の複数の態様に係るイオン注入システムを備える例示的な真空システムのブロック図である。
【0024】
図2は、本開示の別の態様に係るワークピースのガス放出を軽減する方法を示す。
【0025】
[詳細な説明]
本開示は一般的に、加熱されたイオン注入システムにおいてワークピースのガス放出を軽減するためのシステム、装置、および方法を対象とする。以下、図面を参照して本発明を説明する。本明細書において、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素(部材)を指すために使用されてもよい。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載では、説明のために、本発明の完全な理解を提供すべく、様々な特定の詳細が開示されている。当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細がなくとも実施できることが明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または例(実施例)によって限定されることを意図していない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図している。
【0026】
また、図面は、本開示の実施形態の一部の態様の例示を与えるために提供されている。従って、図面は、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることも留意されたい。特に、図面に示されている各部材は、必ずしも互いにスケール(縮尺)通りではない。図面における様々な部材の配置は、それぞれの実施形態についての明確な理解を提供するように選択されている。当該配置は、本発明の実施形態に係る実施例(implementations)における様々な部材の実際の相対位置を表現したものであると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書において説明される様々な実施形態および実施例の構成は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0027】
また、以下の説明では、図面に示されている、または本明細書において説明されている、機能ブロック、デバイス、コンポーネント、回路素子、または他の物理的または機能的ユニット間の任意の直接的な接続または連結は、間接的な接続または連結によって実施され得ることを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたはユニットは、一実施形態では個別の構成または回路として実装(実現)されてよい。あるいは、機能ブロックまたはユニットは、別の実施形態では、共通の構成または回路によって完全にまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、複数の機能ブロックは、共通のプロセッサ(例:信号プロセッサ)上において実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、以下の記載において有線ベースとして説明されている任意の接続は、特に断りのない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0028】
本開示の一態様によれば、
図1は、例示的なイオン注入システム100を示す。本例におけるイオン注入システム100は、例示的なイオン注入装置101を備える。但し、プラズマ処理システムまたは他の半導体処理システムなど、様々な他の種類の真空ベースの半導体処理システムも企図されている。イオン注入装置101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備える。
【0029】
一般的には、ターミナル102内のイオン源108は、ドーパントガスを複数のイオンにイオン化してイオンビーム112を形成するために、電源110に接続されている。本例におけるイオンビーム112は、質量分析装置114を通って、開口部116から出て、エンドステーション106に向かうように、方向付けられている。エンドステーション106では、チャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプされたまたは取り付けられたワークピース118(例:シリコンウェハ、表示パネルなどの基板)にイオンビーム112が衝突する。注入されたイオンは、ワークピース118の格子内に埋め込まれると、ワークピースの物理的特性および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属仕上げ、ならびに材料科学の研究における様々な用途において使用されている。
【0030】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルまたはスポットビーム、リボンビーム、スキャンビーム(走査ビーム)、もしくはイオンがエンドステーション106に向かうように方向付けられた任意の他の形態など、任意の形態をとりうる。そのような形態は全て、本開示の範囲内に含まれると理解されている。
【0031】
ある例示的な態様によれば、エンドステーション106は、プロセスチャンバ122(例:真空チャンバ124)を備える。プロセス環境126は、プロセスチャンバと関連している。一般的に、プロセス環境126は、一般的にチャンバ122内に存在する。一例においては、プロセス環境126は、プロセスチャンバに接続されており、かつ、当該プロセスチャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例:真空ポンプ)によって生じた真空を含む。
【0032】
例示的なイオン注入システム101(例:マサチューセッツ州ビバリーのAxcelis Technologies社製のPurion MまたはPurion Hイオン注入システム)を利用する例示的なイオン注入では、300mmの直径を有するワークピース118がイオンビーム112に曝露される。
【0033】
一例においては、イオン注入装置101は、高温イオン注入を実現するように構成されている。この場合、ワークピース118は、チャック120上においてプロセス温度(例:約100~600℃)まで加熱される。従って、本例においては、チャック120は、加熱チャック130を含む。加熱チャックは、ワークピースをイオンビーム112に曝露する前、曝露している間、および/または曝露した後に、プロセスチャンバ122内においてワークピース118をさらに加熱する間、ワークピース118を支持および保持するように構成されている。
【0034】
本例の加熱チャック130は、周囲または外部環境132(例えば、「大気環境」とも称される)の周囲温度(雰囲気温度)または大気温度よりも大幅に高いプロセス温度までワークピース118を加熱するように構成された静電チャック(ESC)を含んでいる。あるいは、加熱チャック130は、ワークピース118を選択的に固定するための機械式クランプ(不図示)を有するチャックを含んでいてもよい。
【0035】
加熱システム134がさらに設けられていてもよい。当該加熱システムは、加熱チャック130を加熱し、次いで、当該加熱チャック上に存在しているワークピース118を所望のプロセス温度まで加熱するように構成されている。加熱システム134は例えば、加熱チャック130内に配置された1つ以上のヒータ136によってワークピース118を選択的に加熱するように構成されている。
【0036】
一部の高温注入では、所望の温度に達するまで、ワークピース118は、プロセス環境126の真空内において、加熱チャック130上に「ソーク(浸漬)」されてよい。あるいは、イオン注入システム100のサイクル時間を増加させるために、ワークピースは、プロセスチャンバ122に動作可能に接続された1つ以上のチャンバ138A、138B(例:1つ以上のロードロックチャンバ)内において、予熱装置152を用いて予熱されてもよい。
【0037】
ツールアーキテクチャ、プロセス、および所望のスループットに応じて、ワークピース118は、予熱装置152によって第1温度まで予熱されてもよい。当該第1温度は、プロセス温度以上の温度である。この場合、真空チャンバ124内の加熱チャック130において、最終的な熱均一化が可能となる。このようなシナリオにより、ワークピース118は、プロセスチャンバ122への搬送中にある程度の熱を失いうる。この場合、プロセス温度への最終加熱は、加熱チャック130において行われる。本開示において、他の例では、第1温度は、プロセス温度よりも低いか、等しいか、または高い温度であることが考慮されている。
【0038】
1つ以上のチャンバに関連する予熱装置152(例えば、
図1のチャンバ138A内に図示されている)は、ワークピースをプロセスチャンバ120のプロセス環境126の真空へと搬送することに先立ち、外部環境132の大気圧力においてワークピース118を加熱してもよい。一部の例では、ワークピース118は、予熱装置152上において、初期温度(例:室温)から第1所定温度まで加熱されてもよい。
【0039】
処理中の熱移動を実現するために、ワークピース118の背面は、加熱チャック130と伝導性連結(conductive communication)させられている。この伝導性連結は、加熱チャック130とワークピース118との間の圧力制御されたガス界面(「バックサイドガス」とも称される)によって実現されている。一般的に、バックサイドガスの圧力は、例えば加熱チャック130の静電力によって制限されている。バックサイドガスの圧力は、概ね1~20トール(Torr)の範囲内に維持されうる。一例においては、バックサイドガス界面厚さ(例:ワークピース118と加熱チャック130との間の距離)は、ミクロンのオーダ(典型的には5~20μm)に制御される。従って、この圧力レジームにおける分子平均自由行程は、界面厚さが遷移分子ガスレジーム(transitional and molecular gas regime)内にシステムを押し込むのに十分な大きさになる。
【0040】
本開示は、いわゆる「高温注入」のためにシステム100を利用することを考慮している。この場合、加熱チャック130は20~100℃の温度での準室温注入とともに、約100~600℃の高注入温度まで加熱される。さらに、チャック120は、20℃未満の温度において低温注入を提供するために冷却されてもよい。高温注入では、ワークピース118は、加熱チャック130上に配置される前に、ほぼ高注入温度までさらに予熱されてもよい。この場合、予熱されたワークピース118は加熱チャック上にロード(搭載)され、高温注入が実行される。従って、本開示は、高温注入、準室温注入、および低温注入を実行するためのシステムおよび方法を提供する。
【0041】
別の例示的な態様によれば、コントローラ170がさらに設けられている。コントローラ170は、加熱システム134と予熱装置152と冷却装置とを、選択的に起動するように構成されている。これらの部材は、当該部材上にそれぞれ存在するワークピース118を選択的に加熱または冷却する。例えば、コントローラ170は、(i)チャンバ138A内において、ワークピース118を予熱装置152によって加熱し、(ii)プロセスチャンバ122内において、加熱チャック130および加熱システム134によって、ワークピースを所定温度まで加熱し、(iii)イオン注入装置101によってワークピースにイオンを注入し、(iv)チャンバ138B内において、冷却装置160によってワークピースを冷却し、かつ、(v)ポンプおよびベント172、それぞれの大気ドア174A、174B、およびそれぞれのチャンバ138A、138Bの真空ドア176A、176B、ならびにワークピース搬送装置178(例:ワークピースを支持するように構成されたエンドエフェクタ180を有するロボット)を制御することによって、大気環境132と真空環境126との間においてワークピースを選択的に搬送するように構成されていてもよい。ワークピース118は例えば、
図1のワークピース搬送装置178(例:ロボット)を用いて、エンドエフェクタ180によって保持または支持されてよい。エンドエフェクタ180は例えば、ワークピース118が重力によって当該エンドエフェクタ上に載置されるトレイまたは他のスタイルの受動的把持機構(受動的グリップ機構)を含んでいてもよい。
【0042】
本開示のある例示的な態様によれば、ガス放出チャンバ182が提供される。当該ガス放出チャンバは、真空チャンバ124から選択的に隔離させられる(切り離される)。当該ガス放出チャンバは、ワークピース118のガス放出を有利に引き起こすように構成されている。ガス放出チャンバ182は例えば、プロセスチャンバ124に動作可能に接続されている。ガス放出チャンバは、ガス放出チャンババルブ184を備える。ガス放出チャンババルブは、プロセス環境126をガス放出チャンバ内に画定されたガス放出環境186から選択的に隔離するように構成されている。ガス放出チャンバ182は例えば、第1ワークピースサポート188をさらに備える。第1ワークピースサポートは、ガス放出環境186において、ワークピース118を選択的に支持するように構成されている。
【0043】
例えば、ヒータ190は、ガス放出チャンバ182に関連している。当該ヒータは、ワークピース118を第1所定温度まで選択的に加熱するように構成されている。第1所定温度は、例えば、プロセス温度よりも高くてもよい。あるいは、第1所定温度は、プロセス温度以下であってもよい。ヒータ190は例えば、(i)加熱ワークピースサポート、(ii)加熱ランプ、または、(iii)ワークピース118を加熱するように構成された任意の他の装置、のうちの1つ以上を含んでいてもよい。例えば、ワークピース118の温度を測定するために、温度監視システム191が設けられてもよい。
【0044】
一例によれば、真空源192は、ガス放出チャンバ182と選択的に流体連通するように設けられている。当該真空源は、ガス放出チャンバ(例:ガス放出環境186)を第1所定圧力まで選択的に減圧するように構成されている。
【0045】
ワークピース搬送装置178は例えば、ガス放出チャンバ182とプロセスチャンバ124との間においてワークピース118を選択的に搬送するように、さらに構成されている。例えば、ワークピース搬送装置178は、ガス放出チャンババルブ184を介して、ガス放出チャンバ182とプロセスチャンバ124との間においてワークピース118を選択的に搬送するように構成されている。
【0046】
加えて、別の例によれば、コントローラ170は、ワークピースがガス放出チャンバ内に存在している場合に、ガス放出チャンババルブ184を制御することによって、ガス放出チャンバ182内のワークピース118を選択的に隔離するように、さらに構成されている。コントローラ170は例えば、(i)ヒータ190を制御することによるワークピース118の第1所定温度までの加熱と、(ii)真空源192の制御することによるガス放出チャンバ182の第1所定圧力までの減圧と、を同時に(共に)行うように、さらに構成されている。従って、コントローラ170は、所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り、ほぼ第1所定温度かつほぼ第1所定圧力にワークピース118を維持するように、構成されている。
【0047】
コントローラ170は例えば、ワークピース搬送装置178を制御することによって、ガス放出チャンバ182とプロセスチャンバ124との間においてワークピース118を選択的に搬送するように、さらに構成されている。コントローラ170は例えば、所定のガス放出閾値に達すると、ワークピース118をガス放出チャンバ182からプロセスチャンバ124へと搬送するように構成されていてもよい。所定のガス放出閾値は例えば、ガス放出チャンバ182内においてワークピース118からガス放出されるガスの量によって規定されてよい。例えば、付加的または代替的には、所定のガス放出閾値は、ガス放出チャンバ182内のガス放出環境186に関連するガス放出圧力によって規定されてもよい。一例においては、第1所定圧力は、ガス放出圧力に等しくともよい。ガス放出チャンバ182は例えば、ガス放出チャンバ内のガス放出圧力を測定するように構成された圧力センサ194を備えていてもよい。
【0048】
一例においては、所定のガス放出閾値は、ガス放出圧力が50ミリトール未満であることによって規定されている。別の例においては、第1期間は、約5秒である。第1所定圧力および第1期間は例えば、実験データ、スループット、および/または他のファクタ(要因)のうちの1つ以上に基づいて選択されてよい。
【0049】
別の例示的な態様によれば、パージ源196は、ガス放出チャンバ182と選択的に流体連通するように提供されている。パージ源196は例えば、ガス放出チャンバ182を第2所定圧力まで選択的に加圧するように構成されてよい。当該第2所定圧力は、第1所定圧力よりも高い。一例においては、第2所定圧力は、ほぼ大気圧力である。別の例においては、第2所定圧力は、第1所定圧力と大気圧力との間の圧力である。パージ源196は例えば、不活性ガス(例:窒素)の源(不活性ガス源)を含んでいてもよい。
【0050】
本例によれば、コントローラ170は、パージ源196を制御することにより、所定のガス放出閾値に関連する第2期間に亘り、ほぼ第2所定圧力においてワークピース118を提供するように、さらに構成されていてもよい。従って、コントローラ170は、ヒータ190を制御することにより、第2期間に亘り、第2所定温度においてワークピース118を提供するように、さらに構成されていてもよい。別の例においては、コントローラ170は、真空源192およびパージ源196の両方を制御することにより、所定の反復回数(所定回数の反復)に亘り、第1所定圧力および第2所定圧力においてワークピース118を提供するように、さらに構成されていてもよい。例えば、第1所定期間および第2所定期間は、固定されていてもよい(一定であってもよい)。あるいは、上述の通り、第1所定期間および第2所定期間は、第1所定圧力および第2所定圧力においてワークピース118を提供する反復回数に少なくとも部分的に基づいて、変更可能であってもよい。コントローラ170は例えば、所望のスループットに少なくとも部分的に基づいて、第1所定温度、第1所定圧力、および第1期間のうちの1つ以上を決定するように、さらに構成されていてもよい。
【0051】
一例においては、ガス放出チャンバ182内のガス放出環境186は、ガス放出チャンババルブ184を制御することによって、プロセス環境126とのみ選択的に流体連通させられる。これにより、ガス放出環境が外部環境132と流体連通させられることを防止できる。別の例によれば、ガス放出チャンバ182は、プロセスチャンバ124に動作可能に接続されたロードロックチャンバ198(例:チャンバ138A)を含んでいてもよい。当該ロードロックチャンバは、大気バルブ(例:大気ドア174A)をさらに備えている。大気バルブは、ガス放出環境186を外部環境132から選択的に隔離するように構成されている。
【0052】
本開示はさらに、処理システム(例:
図1のシステム100)内におけるワークピースのガス放出を軽減するために、
図2に示す方法200を提供する。例示的な方法は、一連のアクト(行為)またはイベント(事象)として本明細書において例示および図示されている。但し、本開示はこのようなアクトまたはイベントの例示された順序によって限定されないことを理解されたい。本開示に従って、一部のステップ(工程)は、本明細書において例示および記載された順序とは別の異なる順序で、および/または、他のステップと同時に実行されうるためである。さらに、本開示に係る方法を実施するために、例示されたすべてのステップが必要とされるわけではない。また、これらの方法は、本明細書において例示および記載されたシステムに関連して実行されてもよいし、あるいは例示されていない他のシステムに関連して実行されてもよいことが理解される。
【0053】
図2に示されるように、方法200は、アクト202から開始する。アクト202において、ワークピースは、プロセスチャンバに動作可能に接続されたガス放出チャンバ内に配置される。例えば、
図1のワークピース118は、ガス放出チャンバ182内のワークピースサポート188上に位置決めまたは配置されてよい。
【0054】
図2のアクト204において、ワークピースは、ガス放出チャンバ内において、プロセスチャンバから隔離される。これにより、ガス放出環境をプロセス環境から隔離できる。ガス放出チャンバ内において、ワークピースをプロセスチャンバから隔離するステップは、例えば、
図1のガス放出チャンババルブ184を閉じることによって、ガス放出環境186をプロセス環境126から隔離するステップを含んでもよい。
【0055】
図2のアクト206において、例えば、(i)加熱ワークピースサポート、および、(ii)ワークピースを加熱するように構成された加熱ランプ、のうちの1つ以上に、ワークピースを曝露することによって、ワークピースが第1所定温度まで加熱される。アクト208では、アクト206におけるワークピースの加熱とともに、ガス放出チャンバが第1所定圧力まで減圧させられる。例えば、
図1のガス放出チャンバ182は、ガス放出チャンバと選択的に流体連通している真空源192によって、真空引き(排気)またはポンプダウン(減圧)されてよい。従って、ワークピース118のガス放出は、
図2のアクト206および208によって誘発される。これにより、ガス放出生成物(ガス放出された生成物)が形成される。アクト210において、所定のガス放出閾値に関連する第1期間に亘り、第1所定圧力が維持される。これにより、ワークピースのガス放出が継続しうる。アクト212において、ガス放出生成物は、例えば
図1の真空源192によって、ガス放出チャンバから除去される。なお、
図2のアクト208および212は、同時に実行されてもよい。この場合、ガス放出生成物は、ガス放出チャンバの減圧と同時に除去される。
【0056】
ある代替例においては、アクト212においてガス放出生成物がガス放出チャンバから除去された後、アクト214において、ガス放出チャンバは第1期間の後にパージガスによって第2所定圧力まで加圧されてもよい。一例においては、第2所定圧力は、第1所定圧力よりも高い。第2所定圧力および第2期間は例えば、所定のガス放出閾値にさらに関連付けられていてもよい。アクト206、208、210、212、および214は、
図1の真空源192、パージ源196、およびヒータ190を選択的に制御することによって、反復的に実行されてよい。
【0057】
一例によれば、所定のガス放出閾値は、
図2の方法200を実行する前に、ガス放出するワークピースを特性評価すること(characterizing)によって有利に決定される。例えば、第1所定圧力、第1所定温度、第1期間のうちの1つ以上が、
図1のワークピース118と同様の特性を有するサンプルワークピースを用いて特性評価される。例えば、ワークピース118は様々な材料を含みうる。各材料は、蒸気温度圧力曲線(vapor temperature and pressure curve)を有する。所定のガス放出閾値は例えば、経験的に、理論的に、またはそれらの任意の組合せによって導出されてよい。例えば、所定のガス放出閾値は、ワークピース118の材料組成およびワークピースの構成成分のそれぞれの蒸気圧力(蒸気圧)に基づく、実験データおよび/または計算に基づきうる。ワークピース118のガス放出によって引き起こされるプロセスチャンバ124内における圧力の変動の分析は、所定のガス放出閾値を決定するためにさらに利用されてよい。例えば、ワークピース118は、プロセスチャンバ124から隔離されることなく加熱されてよい(例えば、ガス放出チャンババルブ184が開いている)。この場合、ワークピースの加熱中に、ガス放出の影響を決定するために、プロセスチャンバ内の圧力が時間的に監視される。従って、例えば、プロセスチャンバが所定圧力(例えば、所望のプロセスパラメータに基づく「許容可能な」圧力)に回復するまでに要する時間が、所定のガス放出閾値の一態様として利用されてよい。
【0058】
図2の方法200は例えば、アクト212においてガス放出生成物がガス放出チャンバから除去された後に、アクト216において、ガス放出チャンバからプロセスチャンバ内のチャックへとワークピースを搬送するステップをさらに含んでいてもよい。さらに、アクト218において、プロセスチャンバ内のワークピースにイオンが注入されてよい。
【0059】
方法200は、
図1のシステム100におけるワークピースの所望のスループットに少なくとも部分的に基づいて、第1所定温度、第1所定圧力、および第1期間のうちの1つ以上を決定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0060】
従って、本開示は、イオン注入システムにおいて処理されるワークピースの有利なガス放出を提供する。なお、ガス放出チャンバの減圧は、ガス放出速度(ガス放出率)が所定の許容範囲の速度(率,比率)未満になるまで、ガス放出チャンバの単一の連続的な排気であってよい。あるいは、ガス放出生成物を除去するために、1つ以上の排気およびベント/パージのシーケンスが、ガス放出チャンバ内において実施されてよい。例えば、
図1のガス放出チャンバ182内において大部分のガス放出が生じた後に、ワークピース118は、イオンが注入されるようにプロセスチャンバ124内へと有利に搬送されてもよい。ワークピース118は既に加熱されかつ減圧されているので、ワークピースがプロセスチャンバ124内に搬送された後、ガス放出の量は減少する。
【0061】
従って、本開示は、プロセスチャンバ内のプロセス環境126に影響を及ぼさずに、ガス放出のためにワークピース118をプロセスチャンバ124から有利に隔離する。このような隔離は、隔離されたチャンバ(例:ガス放出チャンバ182)内においてガス放出生成物を予熱かつ排気(pumping)することによって、プロセスチャンバ124内におけるガス放出を低減する。ガス放出はワークピースの温度および圧力の関数(作用)であるため、ガス放出チャンバ182をより長時間に亘って排気することは、発生しうる放出ガス(アウトガス)を除去するために有益である。さらに、多数の排気(pump)およびパージ(例:
図2のアクト208および214)を制御することによって、ワークピースのさらなるガス放出を有利に実現することができる。例えば、3回の排気およびパージのサイクルが実行されてよい。この場合、ワークピースはガス放出チャンバ内に存在している間(例:アクト204)、最初に大気圧力下にあり、加熱され(例:アクト206)、第1所定圧力(例:アクト208において50ミリトール)までポンプダウンされる。第1所定圧力に達した後、パージまたは加圧(例:アクト214)が行われ、ワークピースを第2の所定の上昇圧力(例えば、大気圧力)まで引き上げる。第2の所定圧力に達した後、アクト206、208、210、212、および214が繰り返しされてもよい(例えば、2~3回の繰り返し)。
【0062】
従って、アクト216においてワークピースがプロセスチャンバ内に搬送されると、プロセスチャンバ内では、その後のワークピースのガス放出はほとんど生じない。本開示は、ワークピースに対する並列処理をさらに可能にする。例えば、第1のワークピースに対して
図2の方法200を実行している間に、別のワークピースをロードロックチャンバ138A内にロードし、および/またはプロセスチャンバ124内において注入を行うことができる。従って、プロセスチャンバ124に接続された個別のチャンバであるガス放出チャンバ182を有することによって、従来見られた有害なガス放出を最小限に抑えつつ、スループットを増加させることができる。さらに、ガス放出チャンバ182は、複数のワークピース118を同時に支持および加熱するように構成されていてもよい。このような場合、ヒータ190は、ガス放出チャンバ内の複数のワークピースを同時に加熱するように構成された加熱ランプまたは別の加熱装置を含んでいてもよい。
【0063】
本発明は1つ以上の特定の実施形態について示され、説明されてきたが、上述の実施形態はあくまで、本発明のいくつかの実施形態を実施するための例であり、本発明の適用はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、上述のコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、当該コンポーネントを説明するために使用されるターム(「手段」(means)への言及を含む)は、特段の指定がない限り、本発明に示されている例示的な実施形態において、特定の機能を実行する開示される構造と構造的に同等ではないにもかかわらず、説明されるコンポーネントの上記機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意のコンポーネントに対応することが意図されている。加えて、本発明の特定の構成は、複数の実施形態のうちの1つのみに関して開示されているが、そのような構成は任意の所与または特定の用途に関して、望ましくかつ有益であるように、他の実施形態の1つ以上の他の構成と組み合わせることができる。従って、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本開示の複数の態様に係るイオン注入システムを備える例示的な真空システムのブロック図である。
【
図2】本開示の別の態様に係るワークピースのガス放出を軽減する方法を示す。