(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】オーディオ信号の個人適用のためのパラメータを設定するための方法
(51)【国際特許分類】
H03G 9/00 20060101AFI20240220BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20240220BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20240220BHJP
H03G 5/16 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
H03G9/00
G10K15/04 302F
H04R3/04
H03G5/16 165
(21)【出願番号】P 2020542188
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2018077951
(87)【国際公開番号】W WO2019076773
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】102017218483.3
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・エッティング
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ブルンス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・レニース-ホッホムート
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】千葉 輝久
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0277855(US,A1)
【文献】特開2012-213114(JP,A)
【文献】特開2002-281599(JP,A)
【文献】特開2001-156568(JP,A)
【文献】特開平10-341123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G9/00
H03G5/16
H04R3/04
G10K15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号の個人適用のためのパラメータを設定するための方法であって、
以下のサブステップを有する第1の聴取試験を実施するステップ(110)であって、
異なるレベルを有する異なる周波数範囲についての複数の第1のオーディオ信号(AS1)を演奏して、個人に前記異なる周波数範囲で異なる音圧レベルの複数の第1の音響信号を出力する、サブステップ(112)と、
前記個人から、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、前記複数の第1の音響信号のうちのどの第1の音響信号が個人の聴取閾値(HS)より高いかのフィードバックを取得する、サブステップ(114)と、
前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、フィードバックが利用可能な前記複数の第1のオーディオ信号の前記異なるレベルのうちの最低レベルであって、前記個人の聴取閾値(HS)より高い音響オーディオ信号として前記関連する第1の音響オーディオ信号を特徴づける最低レベルを、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の前記個人の聴取閾値(HS)についてのレベルとして使用する、サブステップ(116)と
を含む、ステップ(110)と、
以下のサブステップを有する第2のオーディオ信号(AS2)の適用を実施するステップ(150)であって、
音響適用特性マップ(KF)を考慮することによって前記個人が選択した総合音量レベルにしたがって前記第2のオーディオ信号(AS2)を演奏して、前記個人に対して後処理した第2の音響信号を出力する、サブステップ(150)と、
前記音響適用特性マップ(KF)のさらなる変更を望まないことを相互作用によって前記個人が示すまで、ユーザインターフェースまたは制御の手段によって前記音響適用特性マップ(KF)を変更するサブステップ(154)と
を有する、ステップ(150)と
を含み、
前記音響適用特性マップ(KF)が、異なる周波数範囲についての入力レベル毎に、前記出力レベルの個々の増加および/または個々の削減を規定し、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の前記個人の聴取閾値(HS)についての前記レベルが、前記個人によって変更された前記音響適用特性マップ(KF)における最小出力レベルとして使用される、方法。
【請求項2】
前記第2のオーディオ信号(AS2)の前記適用を実施するステップが、異なる総合音量レベルについて繰り返される、および/または前記音響適用特性マップ(KF)を総合音量レベル毎に記憶するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の聴取試験および/または前記適用が、前記個人によって選択される、および/または前記個人の音響環境でのオーディオデバイスを使用することによって実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
経時的な結果として得られる音響特性の変動および/または経時的な前記音圧レベルの差異を平滑化するため、前記音響適用特性マップ(KF)のうちの少なくとも1つの次元を連続的に適用することによって、前記音響適用特性マップ(KF)を変更するステップが実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のオーディオ信号が試験信号、複合オーディオ信号、周波数範囲が限られる複合オーディオ信号、および/または1曲の音楽である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記音響適用特性マップ(KF)を変更するステップが、入力レベルについて、前記個人の聴取閾値(HS)についてのレベルより上で、および/または限界
点(L)のレベルより下のレベルに実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
入力レベルについて前記音響適用特性マップ(KF)を変更するステップが、前記個人の聴取閾値(HS)についてのそれぞれのレベルより少なくとも10dB上となる、および/または限界
点(L)のそれぞれのレベルより少なくとも3dB下となる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のオーディオ信号(AS2)を演奏するステップがマルチバンドコンプレッサの助けをかりて実施され、前記マルチバンドコンプレッサが、前記音響適用特性マップ(KF)に応じて前記異なる周波数範囲における前記出力レベルに関して前記第2のオーディオ信号(AS2)を後処理する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記音響適用特性マップ(KF)がマスキング閾値より下に下がらないように前記音響適用特性マップ(KF)が選択され、前記マスキング閾値が前記個人の聴取閾値(HS)に依存する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の第1のオーディオ信号(AS1)を演奏するとき、信号の部分が前記オーディオ信号に追加され、このことによって、運転および/または環境雑音のシミュレーションが可能になる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のオーディオ信号(AS2、ASL)が再生されるべきオーディオ信号であり、前記第2のオーディオ信号(AS2、ASL)の適用が動作期間に繰り返される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータ上でプログラムが走るときに請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【請求項13】
オーディオ信号の個人適用のためのパラメータを設定するための装置であって、
異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に個人の聴取閾値(HS)についてのレベルを規定するための最初の適用ステージであって、
異なるレベルを有する異なる周波数範囲についての複数の第1のオーディオ信号(AS1)を演奏して、個人に前記異なる周波数範囲で異なる音圧レベルの複数の第1の音響信号を出力する手段、
前記個人から、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、前記複数の第1の音響信号のうちのどの第1の音響信号が前記個人の聴取閾値(HS)より高いかのフィードバックを取得する手段(114)、および
前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、フィードバックが利用可能な前記複数の第1のオーディオ信号の前記異なるレベルのうちの最低レベルであって、前記個人の聴取閾値(HS)より高い音響オーディオ信号として前記関連する第1の音響オーディオ信号を特徴づける前記最低レベルが、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の前記個人の聴取閾値(HS)についてのレベルとして使用される手段
を備える、最初の適用ステージと、
音響適用特性マップ(KF)を考慮することによって前記個人が選択した総合音量レベルにしたがって第2のオーディオ信号(AS2)を演奏して、前記個人に対して後処理した第2の音響信号を出力する手段、および
前記音響適用特性マップ(KF)のさらなる変更を望まないことを相互作用によって前記個人が示すまで、ユーザインターフェースまたは制御の手段によって前記音響適用特性マップ(KF)を変更する手段(154)
を備える、前記第2のオーディオ信号(AS2)を適用するためのさらなる適用ステージと
を備え、
前記音響適用特性マップ(KF)が、異なる周波数範囲についての入力レベル毎に、前記出力レベルの個々の増加および/または個々の削減を規定し、前記異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の前記個人の聴取閾値(HS)についての前記レベルが、前記個人によって変更された前記音響適用特性マップ(KF)における最小出力レベルとして使用される、装置。
【請求項14】
前記フィードバックを受け取るため、および/もしくは前記音響適用特性マップ(KF)を変更するためのユーザインターフェースを含む、または
前記フィードバックを受け取るため、および/もしくは前記音響適用特性マップ(KF)を変更するためのユーザインターフェースを含み、前記ユーザインターフェースが、少なくとも2つの周波数範囲もしくは2次元音響適用マップにおいて前記出力レベルの個々の増加および/もしくは個々の削減のための1つまたはいくつかの制御を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記音響適用特性マップ(KF)を記憶するためのメモリを含む、請求項13または14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、オーディオ信号を個人に適用することができるパラメータを設定するための方法ならびに装置に関する。さらなる実施形態は、コンピュータプログラムに関する。好ましい実施形態は、実効聴取閾値を考慮することによる、個人の音響適用に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽信号を個人の聴覚に適応するため、現在のオーディオデバイスにおける等化器の適用は、広く知られているバリエーションである。等化器によって、音楽信号が演奏される前に、音楽信号に、周波数依存性の増幅を適用することができる。しかし、素人にとって、等化器を操作するのは、複雑であることが多い。というのは、現在では単に個々の周波数帯域だけを変えることができるためである。したがって、過去に、簡略化した方法またはガイド付きの方法で音を聴覚に適用するための方法が開発されている。ここでは、知覚する音に影響を及ぼす様々な態様、すなわち、スピーカ/ヘッドホンから耳への音響経路、最大音響レベルについての技術的な制限、背景雑音、聴覚能力の考えられる限界、ならびに、適用するべき音楽の曲のスペクトル成分を考慮しなければならない。聴覚能力を補償するために、いくつかの方法は、個人の聴取閾値を決定するための測定方法を使用する。最近の研究では、音楽を聴くときの好ましい音響設定は、聴取閾値に基づいて推定することができない、すなわち、同じ周波数依存性聴取閾値を有する人が、非常に異なる音響選好を有する場合があることが示される。通常の音量で(すなわち、聴取閾値より上で)音楽を聴くことは、非常に限られた程度までだけ、絶対聴取閾値によって決定される。さらに、音響選好は、音楽の様々な曲間で異なり、そのため、音楽の様々な曲のための唯一の最適な等化器設定は存在しない。
【0003】
いくつかの既存の方法では、ユーザの聴取閾値を推定すること(たとえば、Mimi Musicアプリ、Samsung Sound Adapt)、およびそれによって、音響の個人化のためのパラメータを設定することを試みる(ここでは、同じ聴取閾値には同じ音響設定が生じる)。ここで、1つの問題は、聴取閾値測定が未校正のオーディオデバイスで実施されることである。使用されるヘッドホン、したがって、システムの伝送経路は知られていない。したがって、校正した聴力計でのような、絶対聴取閾値測定を行うことができない。
【0004】
補聴器の設定は、測定した聴取閾値に基づいて行われるが、適用は専門家(聴覚機能訓練士)によって行われる。補聴器のユーザは、予め決められたプログラム間で切り換えることができるが、音響パラメータの任意の自由な変更を行うことができない。
【0005】
聴取閾値を決定しない適用方法では、音響パラメータについてのデフォルト設定がユーザインターフェース上でユーザに提供され、それによってユーザは、現在の信号の音を設定することができる(たとえば、Soundhawkアプリ、EARs、Earmachine、BioAid)。しかし、これらの適用概念は、1曲の音楽の平穏な流れの中で役割を果たす、ユーザの個人の聴取閾値を考慮しない。
【0006】
車の中の音響適用については、システム(たとえば、Christoph, Markus著、「Noise dependent equalization control」、Audio Engineering Society Conference: 48th International Conference: Automotive Audio. Audio Engineering Society、2012を参照)が提案されており、そのシステムは、所与の背景雑音について、ターゲット信号に対して周波数依存性の増幅を適用し、その結果、変動する背景雑音について音の印象が維持される。しかし、この解決策は、たとえば、個人の聴覚能力に基づいて存在する聞き手の個人の差異を考慮していない。
【0007】
自動車用オーディオシステムのための方法が特許化されており(「Sound reproduction device including auditory scenario simulation」たとえば、米国特許第9,445,169号または日本特許第5898305号)、ユーザにシミュレーションした運転/環境雑音を演奏する一方、彼/彼女は個人の音響設定を実施し(トレーニングフェーズ)、次いで、動作フェーズの間に真の運転/環境雑音を分析し、シミュレーションした環境雑音が真の雑音と一致する可能性が最も高い音響設定を自動的に選択する。したがって、改善した手法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9,445,169号
【文献】日本特許第5898305号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Christoph, Markus著、「Noise dependent equalization control」、Audio Engineering Society Conference: 48th International Conference: Automotive Audio. Audio Engineering Society、2012
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ユーザの聴取特性および聴取選好を十分に考慮する概念を提供することが本発明の目的である。
【0011】
目的は、独立請求項によって解決される。
【0012】
本発明の実施形態は、オーディオ信号の個人適用のためのパラメータを設定するための方法を提供する。この設定方法は、2つのフェーズへと分割される。第1のフェーズでは、(周波数範囲毎の)個人の聴取閾値に適用されるレベルを取得するという目的で、何らかの種類の聴取試験が実施される。第1のフェーズは、試験信号または同様に現実の信号などといった、第1のオーディオ信号の助けをかりて実施される。第2のフェーズでは、周波数範囲毎の個人の聴取閾値についてのレベルを考慮することによって、音響適用特性マップを変えることにより第2の(たとえば、実際の)オーディオ信号が設定される。詳細には、方法は、第1の聴取試験を実施するステップと、第2のオーディオ信号の適用を実施するステップとを含む。第1の聴取試験は、以下の、
-異なるレベルを有する異なる周波数範囲についての複数の第1のオーディオ信号を演奏して、個人に対して異なる周波数範囲で異なる音圧レベルの複数の第1の音響信号を出力するサブステップ
-個人から、異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、複数の第1の音響信号のうちのどの第1の音響信号が個人の聴取閾値より高いかのフィードバックを取得する、サブステップ
-異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎に、フィードバックが利用可能な複数の第1のオーディオ信号の異なるレベルのうちの最低レベルであって、個人の聴取閾値(HS)より高い音響オーディオ信号として関連する第1の音響オーディオ信号を特徴づける最低レベルを、異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の個人の聴取閾値のためのレベルとして使用する、サブステップを含む。
【0013】
その方法で決定された個人の(周波数依存性の)聴取閾値についての周波数依存性レベルに基づいて、以下の、
-音響適用特性マップを考慮することによって個人により選択された総合音量レベルにしたがって第2のオーディオ信号を演奏して、個人に対して後処理した第2の音響信号を出力する、サブステップ
-音響適用特性マップのさらなる変更を望まないことを相互作用によって個人が示すまで、音響適用特性マップを変更する、サブステップで適用が実施される。
【0014】
ここで、音響適用特性マップは、異なる周波数範囲についての入力レベル毎に、出力レベルの個々の増加および/または個々の削減を規定する。異なる周波数範囲のうちの周波数範囲毎の個人の聴取閾値についてのレベルが、音響適用特性マップにおける最小出力レベルとして使用される。その方法では、(周波数範囲毎の)個人の聴取閾値についてのレベルが、音響適用特性マップにやはり記憶される。
【0015】
本実施形態によれば、この音響適用特性マップを、第2のオーディオ信号、すなわち、たとえば、現在演奏されるオーディオ信号を再生するために使用することができるように記憶が行われる。さらなる実施形態によれば、たとえばオーディオ信号のバリエーションが望まれるときに、適用するステップを、後の時間に繰り返すことができる。実施形態によれば、このステップは、音響適用オンラインまたは現在の信号の再調整と呼ばれ、第1の聴取試験で決定された周波数範囲毎の個人の聴取閾値についてのレベルを依然として考慮している。
【0016】
本発明の実施形態は、2フェーズ法によって実効聴取閾値を考慮することによって個人の音響適用を得ることができるという知識に基づく。第1のフェーズでは、実効聴取閾値を推定するために、(オフライン)聴取試験が実施され、一方、第2のフェーズでは、音楽信号の音響適用のための方法が(オフラインまたはオンラインで)実施される。任意選択で、現在の信号の再調整のための第3のフェーズによって、本手法を拡張することができ、この第3のフェーズは、本質的に、音響特性を「オンラインで」(すなわち、動作期間に)変更するために第2のフェーズのステップを繰り返す。このために、第1のフェーズが繰り返される必要はない。というのは、実効聴取閾値は、人に関係し(それぞれの人の視点からは、不変の聴取特性を表し)、通常は再決定する必要がないためである。
【0017】
第1のフェーズにおける実効聴取閾値を推定することには、信号の提示についての下限を決定する効果がある。これは、演奏されるオーディオ信号に音響適用特性マップを後で適用する際に、全周波数範囲で静かな信号部分が聞こえること、すなわち個人の実効聴取閾値より高いことを保つように音響適用特性マップが規定されることを意味する。ユーザにより選択される圧縮設定の選択によって音響の個人化が実施され、ここでユーザは、さらなる実施形態にしたがって、聴取の際に異なる音響適用間でライブを変えることができる(フェーズ3)。このフェーズ2で、または繰り返されるフェーズ2で、すなわち、フェーズ3で、好ましくは、中間および高い信号レベルで音響の適用が実施される。
【0018】
別の視点から、これは、第1のフェーズの音響適用特性マップが少なくとも個人の聴取閾値についてのレベル(最小レベル)を含み、そのことによって、それぞれの(出力)レベル適用が中間および高い信号レベルを(入力レベルで)拡張されることを意味する。ここで、個人の聴取閾値が異なる周波数範囲で規定されること、ならびに中間および高い信号レベルについてのレベル増加/削減が周波数選択方法で変わることの両方が明らかである。最も重要な利点は、音響設定内で、個人の音の選好および個人の実効聴取閾値を考慮することである。実効聴取閾値によって、静かな信号部分が聞こえることが確実に保たれる。中間から高い音量範囲では、実効聴取閾値は小さい役割を果たすだけである。こうして、ここで、音の選好の設定が使用される。この方法は、実際の聴取条件の下で音楽を聴くため、個人の実効聴取閾値および個人の音響適用を考慮することを組み合わせる。
【0019】
実施形態によれば、聴取試験および適用は、個人によって選択され、および/または個人の音響環境でのオーディオデバイスを使用することによって実施される。これには、特別に校正されたデバイスは必要なく、デバイス固有の特性が同様に直接考慮されるという利点がある。さらに、リスニングルームまたはリスニングルームの中の個人の位置によって影響を受ける特性、ここで特に、距離および音量レベルの関連する減衰がやはり考慮される。この手法には、本概念は特定のハードウェアに限定されず、完全な聴取状況が考慮されるという利点もある。聴取状況が変わるとき、方法を再び実施することができる。さらなる実施形態によれば、個人の聴取閾値を決定するための第1のオーディオ信号が、運転および/または環境雑音のシミュレーションを可能にする信号部分を含むことができることにも留意されたい。
【0020】
さらなる実施形態によれば、特に、第2のオーディオ信号を適用するステップが、異なる総合音量レベルについて(すなわち、ユーザによって選択された異なる出力音量レベルについて)繰り返される。これは、音響適用特性マップを総合音量レベル毎に記憶することを可能にする。正常に実装した後、オーディオシステムの音量制御が個人の聴取状況に対して校正され、その結果、信号だけが聴取閾値より下に低下し、それによって、制御の最低ステージで聞こえなくなる。最大音量設定は、技術システムのダイナミックレンジ全体を使用する。
【0021】
特に、第3のフェーズまたは第2のフェーズを実施するとき、連続的に適用を実施することが望ましいことになる。したがって、結果として得られる音響特性の経時的な変動および/または音圧レベルの経時的な差異を平滑化するため、音響適用特性マップのうちの少なくとも1つの次元を連続的に適用することによって、音響適用特性マップを変更するステップを実施する。この適用は、典型的には、たとえば、2次元シフト制御またはバス、ミドル、およびトレブルについての3つの個別制御などといった制御を作動させるユーザとの相互作用によって実施される。同様の制御で、実効聴取閾値を決定するときに、ユーザと実行装置の間の相互作用が行われる。ここで、実効聴取閾値を決定するための信号は、たとえば、試験信号であってよく、一方、第2のオーディオ信号は、試験信号または(周波数範囲が限られる、または限られない)複合オーディオ信号またはさらに現在の1曲の音楽のいずれかであってよいことに留意されたい。
【0022】
実施形態によれば、音響適用特性マップを変更するステップは、入力値について、個人の聴取閾値についてのレベルより上で、限界のレベルより下のレベルに実施される。ここで、さらなる実施形態によれば、個人の聴取閾値についてのそれぞれのレベルより少なくとも10dB上の入力レベルおよび/または限界のそれぞれのレベルより少なくとも3dB下のレベルに変更することができる。このレベル範囲は特に興味深い。というのは、このレベル範囲が音響特性を決定するためである。さらなる実施形態によれば、音響適用特性マップの変形形態は、音響適用特性マップがマスキング閾値より下に下がらないようなものであって、マスキング閾値は、個人の聴取閾値に依存する。
【0023】
音響適用特性マップを適用または用いるステップは、異なる周波数範囲の中の出力レベルに関する音響適用マップに応じて第2のオーディオ信号を後処理するように構成されるマルチバンドコンプレッサの助けをかりて実施される。
【0024】
さらなる実施形態は、上で議論した方法のうちの1つを実施するためのコンピュータプログラムに関する。
【0025】
さらなる実施形態は、オーディオ信号の個人適用のためのパラメータの設定を実施することができる装置に関する。この装置は、聴取試験のサブステップを実施するための手段を備えた追加適用ステージならびに適用のサブステップを実施するための手段を備えた第2のオーディオ信号を適用するためのさらなる適用ステージを含む。
【0026】
さらなる発展形態は従属請求項に規定される。本発明の実施形態は、添付図面を参照して下で議論されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】一実施形態による、個人適用のためのパラメータを設定するための方法の概略流れ図である。
【
図1b】実施形態による、個人適用のためのパラメータを説明するための帯域中の圧縮特性曲線の概略図である。
【
図1c】一実施形態による、3次元音響適用特性マップの概略図である。
【
図2】実施形態による、個人適用のための方法における、個別化ステージの概略図である。
【
図3】さらなる実施形態による、オーディオ信号を適用するためのユーザインターフェースの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態が図を参照して下で議論される前に、同じ要素および構造は同じ参照番号を備え、その結果、同じ要素および構造の記載が相互に適用可能または相互に交換可能であることに留意されたい。
【0029】
図1aは、2つのフェーズ110および150を有する方法100を示す。第1のフェーズ110では、(異なる周波数範囲に関する)周波数範囲毎の個人の聴取閾値についてのレベルを決定する目的で、第1の聴取試験が実施される。フェーズ150は適用の働きをし、予め規定された個人の聴取閾値を考慮した音響の個人化の音響適用特性マップを得るという目的を有する。
【0030】
フェーズ110では、本質的に、以下の3つのステップ112、114、および116が実施される。ステップ112では、異なるレベル、たとえば、減少するレベルを有する第1のオーディオ信号が演奏される。この第1のオーディオ信号は、好ましくは、異なる周波数範囲で演奏され、個人に対して異なる周波数範囲で異なる切換レベルを有する第1の音響信号を出力する。ステップ114で、個人は、それを聞いて、周波数範囲毎にフィードバックを提供する。フィードバックは、最小のもの、または一般的に、個人の聴取閾値より上の第1の音響信号を特徴づける。たとえば、ユーザ/個人は、彼/彼女が第1の音響信号がもはや聞こえなくなるまで、第1の音響信号を取得することを認めることができる。ステップ116で表されるように、フィードバックが利用可能で、関係する音響信号が個人の聴取閾値より上である、このために使用される周波数範囲毎の最低レベルが、周波数範囲毎の個人の聴取閾値についてのレベルとして採用される。というのは、個人の聴取閾値は周波数選択性であるためである。この第1の聴取試験は、たとえば、高い周波数範囲および低い周波数範囲、または複数の異なる周波数範囲(20~100Hz、100~400Hz、400~4,000Hz、4,000~10,000Hz、10,000~20,000Hz)といった異なる周波数範囲で繰り返される。たとえば、第1のオーディオ信号として、特に準備した音楽信号(たとえば、帯域制限した音楽信号)を使用することができ、その結果、正弦波の音色で測定した聴力検査の聴力閾値からは逸脱する場合がある音楽信号についての実効聴取閾値が決定される。
【0031】
フェーズ110の結果は、後で、
図1bに基づいて議論されることになる。
図1bは、入力レベルと比較した出力レベルの図を示す。線形事前増幅において、入力レベルは、出力レベルに1対1でマッピングされる。たとえば、-100dBが仮定される場合、音響適用なしで、-100dB信号が出力される。しかし、そのような信号は、聴取閾値より小さく、参照番号HSで示される。この聴取閾値HSは、本実施形態では約-70dBを有するが、個人に固有であり、周波数に固有である。その方法では、この図は、1つの周波数範囲についてだけ、また1人の人物についてだけ有効である。
【0032】
この決定された聴取閾値から開始して、低い入力レベルに関係する信号が増加され、その結果、-100dBと-70dBの間の範囲または-100dBと-60dBの間の範囲の入力レベルに基づく出力レベルは、常に聴取閾値HSより上にある。
【0033】
第2のフェーズ150では、第2のオーディオ信号が適用される。この音響適用は、好ましくは、周波数範囲全体にわたる中間および高い信号レベルに関し、ここでは、適用は、周波数スペクトル全体の異なる周波数範囲にわたってやはり実施される。ここで、周波数範囲は、フェーズ110における適用と類似した、またはそれらとやはり独立に、周波数帯域のうちの1つへと再分割することができる。
【0034】
フェーズ150は、2つのステップ152および154を含む。ステップ152は、個人によって選択された総合音量レベルに対応する現在の音楽信号などといった、第2のオーディオ信号を演奏するステップに関する。これは重要である。というのは、音響選好は、しばしば異なる音量範囲において聞き手で異なり、その結果、特に、フェーズ150によって決定される適用が、好ましくは、総合音量レベル範囲に適用されるためである。その理由は、ユーザが、低い総合音量でバスタブ曲線(バスおよびトレブルを増加する)を好む場合がある一方で、同じユーザが、より高い総合音量で線形増幅の傾向がある場合があり、その結果、バスおよびトレブルが不快な出力レベル範囲に増加されないためである。さらに、この音響適用特性マップに応じて後処理された第2のオーディオ信号を出力するために、この第2のオーディオ信号が、音響適用特性マップを考慮することによって演奏されることに留意されたい。
図1bは、音響適用特性マップのセクション、すなわち、たとえば、100Hzの周りの範囲(800~1500Hz)といった、特定の周波数範囲における特性直線Kを示す。すべての関連する/聞こえる周波数(30Hz~20kHzまたは20Hz~22kHz)にわたる音響適用特性マップ全体が
図1cに図示される。
【0035】
図1cに基づいてわかるように、音響適用特性マップは、3次元を含む。すなわち、
図1bに既に示されたように、出力レベルと比較した入力レベルのマッピング、およびkHzの周波数範囲である第3の次元である。図示されないときでさえ、この音響適用特性マップが、第4の次元、すなわち総合音量レベルによって拡張することがやはりできることに留意されたい。
【0036】
ステップ154で、ユーザが、たとえば、バス、ミドル、またはトレブルを増加することによって、音響適用特性マップKFを変更する。この変更によって、第2の音響信号の後処理が変わり、その結果、ユーザは直接フィードバックを受ける。しかし、音響適用マップを変更するときに、変更は参照番号HSLによって示される個人の聴取閾値より下には下がらず、したがって、音響適用特性マップが線HSLによって1つの領域に限定されることが依然として考慮される。以下では、
図1bを参照して、変更154が議論されることになる。コンプレッサの帯域について
図1bに図示される、この圧縮特性曲線Kは、2つの黒点間の、いわゆる音響個別化範囲KIBで変更することができる。個の音響個別化範囲は、典型的には、いわゆる限界点Lと聴取閾値HSの間であって、好ましい実施形態によれば、HSに対して10dBおよびLに対して3dBなどといった、特定の距離が存在する。したがって、わかるように、音響個別化範囲は上部の範囲に配置される。下部の範囲は、聴取試験によって決定される聴取閾値HSによって決定または支配される。この聴取閾値から開始して、範囲U1における音響個別化範囲の下部の点への移行が行われ、これは、点HSおよび音響個別化範囲KIBに応じてシフトする。ユーザが、たとえば、この周波数範囲内の周波数範囲を増加することを望むとき、音響個別化範囲KIBは、上方に向けて部分的または全体的にシフトする一方、この周波数範囲のレベルを削減することが望まれるとき、下方へ向けてのシフトが行われる。既に示されたように、実施形態によれば、範囲KIBは、線形な要素として(圧縮なし)シフトすることができ、または範囲KIBを、異なる他の範囲へと分割することもできる。音響適用内のこの中間の範囲のシフトから開始して、ユーザによって設定された周波数の重み付けが実施される。限界Lまでの移行が行われるように、KIBのシフトに応じて、範囲U2が適用される。
【0037】
図に関して、対角線(点線)からの音響個別化範囲KIBの距離は、入力レベルに対する出力レベルの増加または削減が行われるかを図示することに留意されたい。ここで図示される実施形態では、-10~0dBの間の入力レベルの範囲(制限)以外、常に増加される。
【0038】
その方法で設定される圧縮特性曲線から開始して、第2のオーディオ信号はたとえば、以下のように後処理される。プレゼンテーションレベルが聴取閾値HSに近い場合、実効聴取閾値が処理を決定する。プレゼンテーションレベルが閾値HSより著しく高い場合、範囲KIBにおける音響の個人化により処理が決定される。聴取音量を減少させるとき、この方法は、すべての信号部分が可聴範囲に残り、個々の周波数範囲が聴取閾値より下には下がらないことを可能にする。中間から高い音量範囲では、個人の音の選好が信号処理の設定を支配する。
【0039】
この適用は、いくつかの周波数範囲にわたって実施され、それによって、特性マップKFが結果として得られる。
図2は、適用のフェーズについての可能な制御を示す。ここで、2次元マップは、第1の次元において(矢印22参照)、設定点20が方向T(バス)または方向H(トレブル)のいずれに動かされるかに応じて、音響適用がバスの方向により大きく、またはトレブルの方向により大きく行われることを可能にすると仮定される。20を方向Tへ動かすことによって、低周波数周波数帯域(たとえば、20Hzと150Hzの間の周波数帯域)についての範囲KIBの増加がもたらされる。一方で、方向Hへの動きは、低周波数周波数帯域における範囲KIBを減少させ、一方、高周波数周波数帯域(たとえば、1,000Hzと20,000Hzの間の範囲)におけるKIBによる増加を増やす。150Hzと1,000Hzの間の中間の範囲を増加するため、点20を方向M(中間)に軸24に沿ってシフトする。これによって、中間周波数帯域についてのKIBの増加がもたらされる。
【0040】
本明細書に説明される制御の代わりに、トレブルとバスを互いに独立に制御するため、等化器と同様の制御、すなわち、T、M、およびHについての3つの制御の構成を、互いに独立して設けることができる。
【0041】
ステップ154を参照して記載したように、すべての制御は、音響適用特性マップの変更を可能にする。
【0042】
いくつかの音量レベル(総合音量レベル)についていくつかの特性曲線が有用となる可能性があるために、さらなる実施形態によれば、ここで異なる総合音量レベルに関連する音響適用特性マップを記憶することができる。また、異なる音響適用特性マップの記憶は、異なる信号(たとえば、音声信号と音楽信号)に対して提供することができ、または異なる音楽スタイル(クラシック対ポップス)に対して提供することができる。
【0043】
さらなる実施形態によれば、
図3を参照して下で説明するように、このフェーズ150を繰り返すことができる。
図3は、2つのフェーズ110、150、ならびに、現在の信号(第2のオーディオ信号としての現在の音楽信号ASL)の再調整が行われる関連するさらなるフェーズ160を図示する。フェーズ160は、本質的にはフェーズ150と比較することができ、ここで差異は、予め規定された試験信号(AS2)の助けをかりてオフラインで音響適用が行われるフェーズ150と異なり、現在の音楽信号ASLが使用されることである。このフェーズ160は、いわゆる生活適用と呼ぶこともできる。フェーズ110を参照して、ここで試験信号(参照番号AS1を参照)がやはり使用されることに留意されたい。
【0044】
さらなる実施形態によれば、フェーズ110とフェーズ150および(明らかに)フェーズ160の両方は、実際の音響経路で行われ、その結果、音響適用特性マップを決定するときに、背景雑音の影響およびユーザの個人の聴取能力が考慮される。
【0045】
図1bおよび
図1cの実施形態の文脈では、それぞれに分割した周波数範囲が、やはり互いに影響を及ぼす場合があることに留意されたい。ここで、たとえば、ある周波数範囲と比較して、他の周波数範囲が極端に増加されると、ある周波数範囲がマスクされる。したがって、実施形態によれば、マスキング閾値を推定することによって、どの信号部分が聴取閾値HSより高いが、隣接する帯域のマスキングに起因して聞こえないのかを決定することができる。これらの周波数部分では、聴取閾値を下げること、逆に、マスキング帯域を増加することができ、その結果、これらの部分がマスクされ、したがって処理後に聞こえないままとなる。
【0046】
さらなる実施形態は、方法100を適用する装置に関する。試験信号源およびフィードバック入力のための手段は別として、この装置は、音響適用のための手段をやはり含む。音響適用のためのこれらの手段は、たとえば、音響適用特性マップにしたがって音響適用を実施するように構成される、いわゆるマルチバンドダイナミックコンプレッサであってよい。
【0047】
上述の実施形態では、周波数範囲全体が3つの部分的(バス、ミドル、およびトレブル)な範囲へと分割されると仮定されてきた。明らかに、その方法において、著しく多くの部分的範囲、たとえば、オクターブステップまたは同等のものへと分割することが可能である。
【0048】
図3cの実施形態を参照して、好ましくは、フェーズ110および150について、実際の条件下での音響経路が使用されることに留意されたい。たとえば、車用ラジオが仮定される場合、たとえば、環境雑音たとえば音響雑音が存在するときに実際の条件が満足される。なお静的な状況での適用を依然として実施するためには、さらなる実施形態によれば、聴取試験110または音響適用150の期間に聴取するシナリオのシミュレーションを行うことができる。ここで、実際に予め規定された聴取信号に加えて、環境雑音または運転雑音などのシミュレーション信号を試験信号に混ぜ、その結果、この環境雑音を、実効聴取閾値の測定または推定、および適用に組み込むことができる。ここで、オーディオシステムの再生動作の期間の音響設定が、実際的な周囲の条件下で行われるのは有利であり、その方法では、個人の聴取閾値または既存の環境雑音のどちらも低い聴取音量での可聴性を低下させないことは確かである。
【0049】
上で議論した実施形態のすべては、ユーザの実効聴取閾値を決定するためにユーザとの相互作用が存在することと、オーディオ信号を聴取閾値より高く適用するためのユーザとの相互作用の両方を共有する。個人の助けをかりたこれらの主観的測定結果の両方が次いで信号処理で考慮され、その結果、低い聴取音量での音響設定期間に、特に個人の聴取閾値の個人の影響が提供され、一方で中間および高い聴取音量における他の設定(たとえば、EQ)は、聴取閾値に依存する。
図1bを参照して、聴取閾値HSと音響個別化範囲KIBの間に移行範囲U1があり、移行範囲U1は、聴取閾値とKIBの両方によって影響を受ける。
【0050】
上で議論した方法は、音楽を聴くためなど、オーディオ信号を再生するのに好適なすべてのデバイス上に実装することができる。特に、車の中で音楽を聴くのは、用途の基本的な分野である。というのは、ここでは時間で変わる背景雑音が存在し、音楽を聴くとき、個人には大きい音響選好があるためである。家庭でラジオおよびTVを使用すること、飛行機で音楽を聴くこと、MP3プレーヤおよびスマートフォン上は、用途のさらなる分野である。
【0051】
装置の文脈でいくつかの態様を記載してきたが、これらの態様は、対応する方法の説明をやはり表し、その結果、装置のブロックまたはデバイスがそれぞれの方法ステップまたは方法ステップの特徴にやはり対応することは明白である。それと類似して、方法ステップの文脈で記載された態様は、対応するブロックもしくは詳細または対応する装置の特徴の説明をやはり表す。方法ステップの一部または全部は、マイクロプロセッサ、プログラム可能コンピュータ、または電子回路などといった、ハードウェア装置によって(またはハードウェア装置を使用して)実施することができる。いくつかの実施形態では、最も重要な方法ステップの一部またはいくつかは、そのような装置によって実施することができる。
【0052】
ある種の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装することができる。本実装形態は、それぞれの方法が実施されるようにプログラム可能コンピュータシステムと協働するまたは協働することができ、その上に電気的可読制御信号が記憶されたたとえば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイディスク、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、もしくはフラッシュメモリ、ハードドライブもしくは別の磁気もしくは光メモリといったデジタル記憶媒体を使用して実施することができる。したがって、デジタル記憶媒体はコンピュータ可読であってよい。
【0053】
本発明によるいくつかの実施形態は、プログラム可能コンピュータシステムと協働することができる電気的可読制御信号を含むデータ担体を含み、その結果、本明細書に記載される方法のうちの1つが実施される。
【0054】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実施することができ、プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で走ると、方法のうちの1つを実施するように動作可能である。
【0055】
たとえば、プログラムコードは、機械可読担体上に記憶することができる。
【0056】
他の実施形態は、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためのコンピュータプログラムを含み、コンピュータプログラムは、機械可読担体上に記憶される。
【0057】
言い換えれば、本発明の方法の実施形態は、したがって、コンピュータプログラムがコンピュータ上で走るときに本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムである。
【0058】
本発明の方法のさらなる実施形態は、したがって、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためのコンピュータプログラムを含んでその上に記録したデータ担体(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。
【0059】
本発明の方法のさらなる実施形態は、したがって、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、たとえば、たとえばインターネットを介してデータ通信接続を介して転送されるように構成することができる。
【0060】
さらなる実施形態は、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するように構成される、または適合される、たとえば、コンピュータまたはプログラム可能論理デバイスといった処理手段を含む。
【0061】
さらなる実施形態は、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためのコンピュータプログラムをその上にインストールしたコンピュータを含む。
【0062】
本発明によるさらなる実施形態は、受信器に対して、本明細書に記載される方法のうちの少なくとも1つを実施するためのコンピュータプログラムを送信するように構成される装置またはシステムを含む。送信は、たとえば、電気的または光学的であってよい。受信器は、たとえば、コンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイス、または同様のデバイスであってよい。装置またはシステムは、たとえば、受信器にコンピュータプログラムを送信するためのファイルサーバを含むことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、プログラム可能論理デバイス(たとえば、フィールドプログラム可能ゲートアレイ、FPGA)を使用して、本明細書に記載される方法の機能性の一部または全部を実施することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラム可能ゲートアレイは、本明細書に記載される方法のうちの1つを実施するためにマイクロプロセッサと協働することができる。一般的に、方法は、好ましくは任意のハードウェア装置によって実施される。これは、コンピュータプロセッサ(CPU)などといった汎用ハードウェア、またはASICなどといった、本方法に固有のハードウェアであってよい。
【0064】
上で記載された実施形態は、本発明の原理の単なる説明である。本明細書に記載される配置構成および詳細の修正形態および変更形態は、当業者には明らかであることが理解される。したがって、本発明が、添付される特許請求項の範囲によってのみ限定され、本明細書の実施形態の記載および説明によって提示される特定の詳細のみによっては限定されないことが意図される。
【符号の説明】
【0065】
20 設定点
22 矢印
24 軸