(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】冷却剤と接触状態にある、HNBR-PEGアクリレートコポリマーを含む加硫物の使用
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240220BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20240220BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240220BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20240220BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L9/02
C08K5/14
C08F8/04
C08F236/12
(21)【出願番号】P 2020551960
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2019058372
(87)【国際公開番号】W WO2019201601
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・リーバー
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ダーヴィト
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190213(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190214(WO,A1)
【文献】特表2016-511786(JP,A)
【文献】特開2006-052404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146650(WO,A1)
【文献】特開2009-132923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08F 8/04
C08F236/00-236/22
C08J 3/00- 3/28
C09K 3/10- 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用であって、
前記加硫可能な組成物が、
(i)少なくとも1種のHNBR-PEGアクリレートコポリマー、及び
(ii)少なくとも1種のペルオキシド化合物、
を含み、
ここで、前記HNBR-PEGアクリレートコポリマーが、
10重量%~35重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
15重量%~80重量%の共役ジエン単位、及び
10重量%~50重量%のPEGアクリレート単位、
を含み、
前記冷却剤が、水、凝固点降下剤、及び腐食抑制剤を含
む組成物であって、かつ、前記PEGアクリレート単位が下記一般式
【化1】
式 (I)
[式中、
Rは、水素、又は分岐状若しくは非分岐状のC
1
~C
20
-アルキルであり、
n=2~8であり、
R
1
は、水素又はCH
3
-である]
のPEGアクリレートから誘導されたものである
ことを特徴とする、
加硫可能な組成物の使用。
【請求項2】
前記少なくとも1種のペルオキシド化合物(ii)が、有機ペルオキシドであることを特徴とする、請求項
1に記載の、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用。
【請求項3】
前記ペルオキシド化合物(ii)が、100重量部の成分(i)を基準にして、1~20重量部の
量で存在することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用。
【請求項4】
前記HNBR-PEGアクリレートコポリマー(i)が、18重量%~33重量%のアクリロニトリルモノマー単位、36重量%~69重量%の1,3-ブタジエンモノマー単位、及び13重量%~30重量%のブチルジグリコールメタクリレートモノマー単位を含むことを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用。
【請求項5】
前記冷却剤が、
a)水、
b)アルキルグリコール又は塩類
、及び
c)中和された有機酸
、
を含む、請求項
1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記加硫物が、少なくとも、冷却剤と接触状態にある、構成部品を製造するための、請求項
1~5のいずれか1項
において定義されている加硫可能な組成
物から製造される加硫物の使用。
【請求項7】
(i)請求項1において定義されている少なくとも1種のHNBR-PEGアクリレートコポリマー及び(ii)少なくとも1種のペルオキシド化合物を含むことを特徴とする加硫可能な組成物から製造され
る加硫物を含む
少なくとも1種の構成部品と
冷却剤とを含
み、前記少なくとも1種の加硫物が、前記冷却剤と接触状態にある、冷却ユニット。
【請求項8】
前記ペルオキシド化合物(ii)が、100重量部の成分(i)を基準にして
、2~20重量部の量で存在することを特徴とする、請求項
1に記載の、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用。
【請求項9】
前記冷却剤が、
a)水、
b)
エチレングリコール又はプロピレングリコールから選択されるアルキルグリコール又は塩類
、及び
c)中和された有機酸
、
を含む、請求項
1に記載の使用。
【請求項10】
前記冷却剤が、
a)水、
b)アルキルグリコール又は塩類
、及び
c)
イソノナン酸ナトリウムから選択される中和された有機酸
、
を含む、請求項
1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却剤と接触状態にある、加硫物を製造するための、HNBR-PEGアクリレートコポリマーを含む加硫可能な組成物の使用に関する。
【0002】
本発明はさらに、構成部品として、好ましくは、冷却剤と接触状態にあるガスケットとして、又はホースとしての、HNBR-PEGアクリレートコポリマーを含む加硫可能な組成物から製造される加硫物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
自動車におけるゴム物質には、高い応力がかかる。たとえばガスケットにおけるゴム物質への要求性能は、絶えず高くなっている。たとえば、最近の要求性能は、たとえば電気自動車についての場合、ガスケットにおける、-40℃までの低温可撓性である。これらの要求性能は、冷却剤と接触状態にあるゴム物質に対しても適用されうる。それらの要求性能に対しては、たとえば水素化ニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)又はEPDMのような慣用されるゴム物質は、多くの場合、不適切であるが、その理由は、最近の冷却剤の組成物は、ゴム物質に対してさらに高いストレスを与え、そのことにより時間の経過と共に低温可撓性が失われていくからである。その結果、密封性が失われ、より頻繁なガスケットの交換が必要となる。
【0004】
冷却剤は、熱を運び去るために使用される、単一又は複数の液体物質である。冷却剤は、冷却サイクルにおいて、温度勾配に沿って、より低温のサイトにエンタルピーを移送することができる。冷却剤は、冷却するべき物質を、直接的又は熱交換器を介して冷却することができる。
【0005】
冷却剤は、典型的には、水、凝固点降下剤、好ましくはアルキルグリコール又は塩類、より好ましくはエチレングリコール又はプロピレングリコール、並びに腐食抑制剤、好ましくは中和された有機酸、より好ましくはエチルヘキサン酸ナトリウムを含む組成物である。
【0006】
従来、慣用される冷却剤には、ケイ酸塩が、添加剤として使用されていた。ケイ酸塩は、アルミニウム部品の上にケイ酸アルミニウムの保護層を形成することにより腐食を防止するものの、急速に劣化するので、定期的に更新しなければならなかった。そのため、より新世代の冷却剤には、腐食防止のために、ケイ酸塩に代えるか又はそれに加えて、有機化合物が含まれるが、その理由は、それらの方が長持ちするからである。
【0007】
このところ、冷却剤においては、OAT(organic acid technology=有機酸技術)が使用されるようになってきた。この技術においては、中和された有機酸、たとえばエチルヘキサン酸ナトリウムが添加剤として使用されている。しかしながら、高温では、時間の経過と共に、エチルヘキサン酸の塩から、遊離の酸が形成される。この酸が、慣用される加硫物の場合において、早すぎる老化を起こす可能性がある。OATを含む冷却剤濃縮物の一例が、Glysantin(登録商標)G64(登録商標)(BASF製)であるが、このものには、主成分のエチレングリコール及びイソノナン酸ナトリウムに加えて、安息香酸塩及びリン酸塩をさらに含み、水で希釈してから、冷却剤として使用される。
【0008】
従来技術には、たとえば、冷却剤と接触状態にある、低温で使用するためのHNBRターポリマーが開示されている。
【0009】
たとえば、(特許文献1)には、冷却剤たとえばG13と接触状態にある加硫物を製造するための、加硫可能な組成物の使用が開示されているが、ここでその加硫可能な組成物には、HNBR、少なくとも1種のシランコーティングしたウォラストナイト、及び少なくとも1種のペルオキシド化合物が含まれている。
【0010】
(特許文献2)には、冷却剤と接触状態にあるガスケットのための組成物の記載があるが、それには、HNBR(31重量%~50重量%のアクリロニトリルモノマーを含む)、カーボンブラック、多官能架橋剤、及び有機ペルオキシドが含まれている。
【0011】
(特許文献3)には、改良された耐凍結性を有するオイルガスケット用ゴム組成物が開示されているが、それには、5~20mol%の含量でアクリロニトリルを含み、そのHNBRの水素飽和度が80%~90%である、水素化ニトリルゴム(HNBR)が含まれている。この場合、オイルは、冷却剤を意味しているとも理解される。
【0012】
(特許文献4)には、25重量%~38重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、40重量%~60重量%の共役ジエン単位、及び10重量%~25重量%のPEGアクリレート単位を含む水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーが開示されており、それらはガスケットのために使用される。冷却剤と接触状態にある、加硫物を製造するための加硫可能な組成物における使用については、何の開示もない。
【0013】
(特許文献5)には、HNBRを含むだけではなく、不凍液添加剤としてのエチレングリコールも含む、ガスケット組成物が開示されている。
【0014】
(特許文献6)には、フルオロカーボン及び/又は冷凍機用オイルと共に使用するための、ゴム組成物が開示されている。前記ゴム組成物は、実質的に、ベースとしての、ニトリル基含有ゴム(たとえば、NBR、HNBR、及びCNBR(カルボキシレート化ニトリルゴム))、クロロプレンゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに単官能エポキシ化合物を含むが、ここで前記単官能エポキシ化合物は、前記ベースの中に混ぜ込むか、又は他の方法で組みこまれている。
【0015】
しかしながら、従来技術では、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するのに適したHNBR-PEGアクリレートゴム組成物は、開示されていない。
【0016】
したがって、本発明が取り組んだ一つの課題は、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造のための使用に適した、HNBRゴム組成物を提供することであった。取り組んださらなる課題は、さらには、低いガラス転移温度も有するHNBRゴム組成物を提供することであった。
【0017】
残念ながら、どのようなHNBRゴム組成物がそれらの要求を満たすかは、直ちに予見できることではない。
【0018】
慣用されるHNBRゴム物質、たとえばHNBRコポリマーゴムのTherban(登録商標)3407は、冷却剤の中で貯蔵した後でも、高い硬度安定性を有している。残念ながら、それらの物質は、それらのガラス転移温度(Tg)が高いために、冷却ユニットにおけるすべての低温性能に適合している訳ではない。
【0019】
より高度な低温要求性能に対処するためには、一般的には、Therban(登録商標)LTシリーズからの低温タイプが使用される。それらの物質は、ターモノマーとして、アクリル酸ブチルが含まれていて、それが、水素化ブタジエンの結晶化を乱し、そのためにガラス転移温度が低下する。
【0020】
しかしながら、良好な低温性能を有する、これら公知のHNBRゴム物質、たとえばHNBRターポリマーゴムのTherban(登録商標)LT1707VPは、冷却剤の中で貯蔵した後では、顕著に高い硬度を示す。それと同時に、貯蔵媒体の分析では、ブタノールを検出することができたが、このものは、HNBRターポリマーゴムの分解反応生成物として形成された可能性がある。同様にして、架橋性の化学物質及び添加物を含まない、Therban(登録商標)LT1707VPの生ポリマー(raw polymer)の場合においては、冷却剤との接触でゲル化が観察された。純粋な冷却剤を貯蔵しても、ブタノールは一切検出されなかった。このことは、HNBRターポリマーゴムの中のアクリル酸ブチルターモノマーが冷却剤の中でエステル交換反応し、それに続けてゴムを架橋させたことを示唆している。したがって、アクリル酸アルキルのターモノマーが、冷却剤の中に貯蔵している間に分解し、その結果、そのターモノマーに基づいた性質も、時間の経過と共に失われるのである。したがって、アクリル酸アルキルターモノマー、たとえばアクリル酸ブチルターモノマーを含むHNBRターポリマーゴムは、冷却剤と接触する用途では、十分には適していないように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】欧州特許出願公開第A3255088号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A2700692号明細書
【文献】独国特許出願公開第A102016107592号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A3196240号明細書
【文献】韓国特許第20130003554号明細書
【文献】米国特許第5912288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ここで取り組んだ課題は、低いガラス転移温度を有すると同時に、冷却剤の中で貯蔵した後で硬度の上昇が小さく、そして場合によっては、冷却剤の中に純粋なポリマーを貯蔵した後でのゲル化が低い物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
驚くべきことには、HNBR-PEGアクリレートコポリマーが、冷却剤と接触状態で使用するのに適しているということが今や見出されたが、その理由は、それらが、慣用されるコポリマーよりも低いガラス転移温度を有し、そして冷却剤の中で貯蔵しても硬度上昇が小さいからである。
【0024】
課題は本発明によって解決され、本発明は、加硫可能な組成物が以下のものを含むことを特徴とする、冷却剤と接触状態にある加硫物を製造するための加硫可能な組成物の使用を提供する:
(i)少なくとも1種のHNBR-PEGアクリレートコポリマー、及び
(ii)少なくとも1種のペルオキシド化合物、
ここでHNBR-PEGアクリレートコポリマーは、以下のものを含む:
10重量%~35重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
15重量%~80重量%の共役ジエン単位、及び
10重量%~50重量%のPEGアクリレート単位、
ここで冷却剤は、水、凝固点降下剤、及び腐食抑制剤を含む組成物である。
【0025】
本発明は冷却剤と接触状態にある加硫物の使用を提供し、加硫物がペルオキシド架橋されたHNBR-PEGアクリレートコポリマーを含み、HNBR-PEGアクリレートコポリマーが以下のものを含むことを特徴とする:
10重量%~35重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
15重量%~80重量%の共役ジエン単位、及び
10重量%~50重量%のPEGアクリレート単位。
【0026】
この時点で注意してほしいのは、本発明の範囲には、これまでに述べた、及び以後において記述される、一般的な項目又は好ましい範囲とされた、成分、値及び/又はプロセスパラメーターの範囲のすべての可能な組合せが含まれるということである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<成分(i)-HNBR-PEGアクリレートコポリマー>
本発明の文脈においては、「HNBR-PEGアクリレートコポリマー」という用語は、以下のものを含む水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーである:
(a)10重量%~35重量%、好ましくは15重量%~30重量%、より好ましくは18重量%~33重量%の、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
(b)15重量%~80重量%、好ましくは30重量%~73重量%、より好ましくは36重量%~69重量%の、少なくとも1種の共役ジエン単位、及び
(c)10重量%~50重量%、好ましくは12重量%~40重量%、より好ましくは13重量%~30重量%の、少なくとも1種の、一般式(I)
【化1】
[式中、
Rは、水素、又は分岐状若しくは非分岐状のC
1~C
20-アルキル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、若しくはエチルヘキシルであり、
nは、1~8、好ましくは2~8、より好ましくは2~5、最も好ましくは2であり、そして
R
1は、水素又はCH
3-である]
のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位。
【0028】
本発明の実施態様においては、その共役ジエン単位の少なくとも幾分かは水素化されている。水素化のレベルは、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0029】
この時点で注意してほしいのは、本発明の範囲には、これまでに述べた及び以後において記述される、一般的な項目又は好ましい範囲とされた、成分、値及び/又はプロセスパラメーターの範囲のすべての可能な組合せが含まれるということである。
【0030】
「ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマー」という用語は、本発明の文脈においては、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位と、少なくとも1種の共役ジエン単位と、少なくとも1種の、一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位とを含むコポリマーに関する。
【0031】
「コポリマー」という用語には、2つ以上のモノマー単位を有するポリマーが包含される。本発明の一実施態様においては、そのコポリマーが、もっぱら、たとえば先に述べた3種のモノマーのタイプ(a)、(b)及び(c)から誘導され、そのため、それはターポリマーである。「コポリマー」という用語には同様にして、たとえば、先に述べた3種のモノマーのタイプ(a)、(b)及び(c)と、さらなるモノマー単位とから誘導される、四元ポリマーもさらに包含される。
【0032】
[α,β-エチレン性不飽和ニトリル]
使用される、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリルは、公知のいかなるα,β-エチレン性不飽和ニトリルであってもよい。好ましいのは、以下のものである:(C3~C5)-α,β-エチレン性不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリル、α-ハロアクリロニトリル、たとえばα-クロロアクリロニトリル及びα-ブロモアクリロニトリル、α-アルキルアクリロニトリル、たとえばメタクリロニトリル、エタクリロニトリル、又は2種以上のα,β-エチレン性不飽和ニトリルの混合物。特に好ましいのは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はそれらの混合物である。極めて特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
【0033】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)の量は、全部のモノマー単位を合計した100重量%の量を基準にして、典型的には10重量%~35重量%、好ましくは15重量%~30重量%、より好ましくは18重量%~28重量%の範囲である。
【0034】
[共役ジエン]
共役ジエン単位(b)を形成する共役ジエンは、いかなるタイプであってもよいが、特には共役のC4~C12ジエンである。特に好ましいのは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン(ピペリレン)、又はそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3-ブタジエン及びイソプレン又はそれらの混合物である。極めて特に好ましいのは1,3-ブタジエンである。
【0035】
共役ジエンの量は、全部のモノマー単位を合計した100重量%の量を基準にして、典型的には15重量%~80重量%、好ましくは30重量%~73重量%、より好ましくは36重量%~69重量%の範囲である。
【0036】
[PEGアクリレート]
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位及び共役ジエン単位に加えて、その水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーには、第三の単位として、少なくとも1種の、一般式(I)
【化2】
[式中、
Rは、水素、又は分岐状若しくは非分岐状のC
1~C
20-アルキル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、若しくはエチルヘキシルであり、
nは、1~8、好ましくは2~8、より好ましくは2~5、最も好ましくは2であり、そして
R
1は、水素又はCH
3-である]
のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位が含まれる。
【0037】
「(メタ)アクリレート」という用語は、本発明の文脈においては、「アクリレート」及び「メタクリレート」を表している。一般式(I)の中のR1基が、CH3-である場合には、その分子はメタクリレートである。
【0038】
「ポリエチレングリコール」又は略して「PEG」という用語は、本発明の文脈においては、1個のエチレングリコール繰り返し単位を有するモノエチレングリコールセクション(PEG-1;n=1)と、2~8個のエチレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコールセクション(PEG-2~PEG-8;n=2~8)との両方を表している。
【0039】
「PEGアクリレート」という用語は、PEG-X-(M)Aとも略されるが、ここで「X」は、エチレングリコール繰り返し単位の数を表し、「MA」はメタクリレートを表し、「A」は、アクリレートを表している。
【0040】
一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるアクリレート単位は、本発明の文脈においては、「PEGアクリレート単位」と呼ばれる。
【0041】
好ましいPEGアクリレート単位は、次の式no.1~no.10のPEGアクリレートから誘導されるが、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、又は8、好ましくは2、3、4、5、6、7、又は8、より好ましくは2、3、4、5、又は5、最も好ましくは2である。
【0042】
【0043】
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(式no.3)についての他の一般的に使用される名称は、たとえば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、アクリロイル-PEG、メトキシ-PEGアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノアクリレート、又はmPEGアクリレートである。
【0044】
これらのPEGアクリレートは、市場で購入することが可能で、たとえばArkemaからSartomer(登録商標)の商品名として、EvonikからVisiomer(登録商標)の商品名として、或いはSigma Aldrichから販売されている。
【0045】
本発明のコポリマーの中のPEGアクリレート単位の量は、合計して100重量%の全モノマー単位の量を基準にして、10重量%~50重量%、好ましくは12重量%~40重量%、より好ましくは13重量%~30重量%の範囲である。
【0046】
好ましい本発明のHNBR-PEGアクリレートコポリマーにおいては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル、より好ましくはアクリロニトリルから誘導され、共役ジエン単位(b)は、イソプレン又は1,3-ブタジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンから誘導され、そしてPEGアクリレート単位(c)は、一般式(I)のPEGアクリレート(ここでn=1~8)、より好ましくはn=2の一般式(I)のPEGアクリレートから誘導される。
【0047】
加えて、そのHNBR-PEGアクリレートコポリマーには、1種又は複数のさらなる共重合性モノマーを、合計して100重量%の全モノマー単位を基準にして、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の量で含んでいてもよい。その場合においては、他のモノマー単位の量を適切に減らし、合計が常に100重量%になるようにする。使用することが可能なさらなる共重合性モノマーとしては、たとえば以下のものが挙げられる:
・ 芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン、及びビニルピリジン、
・ フッ素含有ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-フルオロメチルスチレン、ビニルペンタフルオロベンゾエート、ジフルオロエチレン、及びテトラフルオロエチレンなど、
・ α-オレフィン、好ましくはC2~C12オレフィン、たとえばエチレン、1-ブテン、4-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、又は1-オクテン、
・ 非共役ジエン、好ましくはC4~C12ジエン、たとえば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、4-シアノシクロヘキセン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど、
・ アルキン、たとえば1-ブチン又は2-ブチン、
・ α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、又はケイ皮酸、
・ α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル、好ましくはアクリル酸ブチル、
・ α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、
・ α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル、たとえば
○ アルキルモノエステル、特にC4~C18-アルキルモノエステル、好ましくはn-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシルモノエステル、より好ましくは、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノ-n-ブチル、シトラコン酸モノ-n-ブチル、イタコン酸モノ-n-ブチル;
○ アルコキシアルキルモノエステル、特にC4~C18-アルコキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12-アルコキシアルキルモノエステル、
○ ヒドロキシアルキルモノエステル、特にC4~C18-ヒドロキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12-ヒドロキシアルキルモノエステル、
○ シクロアルキルモノエステル、特にC5~C18-シクロアルキルモノエステル、好ましくはC6~C12-シクロアルキルモノエステル、より好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル、シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチル、イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、及びイタコン酸モノシクロヘプチル、
○ アルキルシクロアルキルモノエステル、特にC6~C12-アルキルシクロアルキルモノエステル、好ましくはC7~C10-アルキルシクロアルキルモノエステル、より好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル及びマレイン酸モノエチルシクロヘキシル、フマル酸モノメチルシクロペンチル及びフマル酸モノエチルシクロヘキシル、シトラコン酸モノメチルシクロペンチル及びシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル及びイタコン酸モノエチルシクロヘキシル、
○ アリールモノエステル、特にC6~C14-アリールモノエステル、好ましくはマレイン酸モノアリール、フマル酸モノアリール、シトラコン酸モノアリール又はイタコン酸モノアリール、より好ましくはマレイン酸モノフェニル又はマレイン酸モノベンジル、フマル酸モノフェニル又はフマル酸モノベンジル、シトラコン酸モノフェニル又はシトラコン酸モノベンジル、イタコン酸モノフェニル又はイタコン酸モノベンジル、又はそれらの混合物、
○ 不飽和ポリアルキルポリカルボン酸エステル、たとえばマレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、又はイタコン酸ジエチル;又は
○ アミノ基を含むα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチル又はアクリル酸ジエチルアミノエチル、
・ 共重合性抗酸化剤、たとえばN-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリン、又は
・ 架橋性モノマー、たとえばジビニル成分、たとえばジビニルベンゼン;ジ(メタ)アクリル系エステル、たとえばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はトリ(メタ)アクリル系エステル、たとえばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;自己架橋性モノマー、たとえばN-メチロール(メタ)アクリルアミド又はN,N’-ジメチロール(メタ)アクリルアミド。
【0048】
さらに好ましい実施態様においては、そのHNBR-PEGアクリレートコポリマーが、以下のものを含む、水素化ニトリル-ジエン-PEGアクリレートコポリマーである:
10重量%~35重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
15重量%~80重量%の共役ジエン単位、
10重量%~50重量%の、一般式(I)から誘導されるPEGアクリレート単位、及び
0重量%~20重量%の少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位。
【0049】
いくつかのさらなる共重合性モノマーは、本発明の水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーの物理的性質に影響を与える。
【0050】
少なくとも1種の遊離のカルボン酸基、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル又はエチレン性不飽和ジカルボン酸を有するモノマー単位が共重合されていると、一般的には、耐老化性の低下がもたらされる。ポリマー中に遊離の酸基があることの結果として、高温での老化の後での伸びの低下が見出されるようになった。それと同時に、ガラス転移温度の上昇も観察されるようになったが、このことは、本明細書で達成した優れた低温可撓性の要件に対しては悪影響を及ぼす。耐老化性への影響は、共重合されたPEGアクリレート単位の長さも含めた因子に依存するが、特にPEG-1単位が共重合されている場合、すなわち、(アルコキシ)モノエチレングリコール(メタ)アクリレートから誘導されたPEGアクリレート単位の場合に、耐老化性における劣化が顕著である。
【0051】
一実施態様においては、本発明の水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーには、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)、共役ジエン単位(b)、及びnが1である一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位(c)の他には、遊離のカルボン酸基を含むモノマー単位は含まれない。
【0052】
さらにより好ましくは、水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーには、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)、共役ジエン単位(b)、及び一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位(c)の他には、遊離のカルボン酸基を含むモノマー単位は含まれない。
【0053】
最も好ましくは、水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーには、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)、共役ジエン単位(b)、及び一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位(c)の他には、さらなるモノマー単位は含まれない。このことが意味しているのは、この実施態様は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)、共役ジエン単位(b)、及び一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位(c)のみで構成されているということである。
【0054】
特に好ましい実施態様においては、PEGアクリレート単位(c)は、ブチルジグリコールメタクリレートである。したがって、成分(i)は、特に好ましい実施態様においては、アクリロニトリルから誘導される単位及び1,3-ブタジエンから誘導される単位と共に、ブチルジグリコールメタクリレートから誘導される単位をさらに含んでいる。
【0055】
加えて、成分(i)には、より好ましくは、18重量%~33重量%のアクリロニトリルモノマー単位、36重量%~69重量%の1,3-ブタジエンモノマー単位、及び13重量%~30重量%のブチルジグリコールメタクリレートモノマー単位が含まれる。
【0056】
最も好ましくは、成分(i)には、19重量%~26重量%のアクリロニトリルモノマー単位、47重量%~59重量%の1,3-ブタジエンモノマー単位、及び22重量%~28重量%のブチルジグリコールメタクリレートモノマー単位が含まれる。
【0057】
本発明の水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーは、典型的には10,000g/mol~2,000,000g/mol、好ましくは50,000g/mol~1,000,000g/mol、より好ましくは100,000g/mol~500,000g/mol、最も好ましくは150,000g/mol~300,000g/molの数平均分子量(Mn)を有している。
【0058】
本発明の水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーは、典型的には1.5~6、好ましくは2~5、より好ましくは2.5~4の多分散性指数(PDI=Mw/Mn、ここでMwは重量平均分子量である)を有している。
【0059】
本発明の水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーは、典型的には10~150、好ましくは20~120、より好ましくは25~100のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。
【0060】
HNBR-PEGアクリレートコポリマーを調製するためのプロセスは、たとえば(特許文献4)から公知である。
【0061】
<成分(ii)-ペルオキシド化合物>
架橋剤としての少なくとも1種のペルオキシド化合物が、成分(ii)として使用される。好適なペルオキシド化合物(ii)は、たとえば以下のペルオキシド化合物である:ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブテン、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ポリ(tert-ブチルペルオキシカーボネート)、エチル3,3-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3-ジ(tert-アミルペルオキシ)ブチレート、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエ-ト、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエ-ト、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエ-ト、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエ-ト、クミルペルオキシネオデカノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン3-ジ-tert-アミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、及びカリウムペルオキソジスルフェート。
【0062】
本発明による加硫可能な組成物における少なくとも1種のペルオキシド化合物が、有機ペルオキシドであれば好ましく、以下のものであればより好ましい:ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキシ-3-イン2,5-ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、及び/又は1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、最も好ましくは、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン。
【0063】
成分(ii)は、本発明による加硫可能な組成物の中に、成分(i)の100重量部を基準にして、好ましくは1~20重量部の量、より好ましくは2~10重量部の量で存在する。
【0064】
加えて、その加硫可能な組成物には、さらにゴム添加剤を含んでいてもよい。標準的なゴム添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:本発明の成分(i)の定義から外れたポリマー、充填剤、充填剤活性化剤、加工助剤、オイル、特には加工オイル、鉱油、又はエクステンダーオイル、可塑剤、加硫促進剤、多官能架橋剤、老化安定剤、加硫戻り安定剤、光安定剤、抗オゾン剤、抗酸化剤、離型剤、加硫遅延剤、粘着付与剤、発泡剤、安定剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、エクステンダー、充填剤たとえば、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミノシリケート、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、Teflon(後者は、好ましくは粉体の形態にあるもの)、シリケート、カーボンブラック、シリカ、熱分解法シリカ、シリカ、シラン処理シリカ、天然物たとえば、アルミナ、カオリン、ウォラストナイト、有機酸、加硫遅延剤、金属酸化物、繊維(有機繊維及びガラスから作成した無機繊維を含む)、布帛、脂肪族及び芳香族ポリアミドから作成した繊維(ナイロン(登録商標)、アラミド(登録商標))、ポリエステル及び天然繊維製品、及びさらには繊維パルプ、加硫活性化剤、さらなる重合性モノマー、ダイマー、トリマー若しくはオリゴマー、不飽和カルボン酸の塩たとえば、亜鉛ジアクリルレート(ZDA)、亜鉛メタクリレート(ZMA)及び亜鉛ジメタクリレート(ZDMA)、液状アクリレート、又はゴム産業において公知のその他の添加剤(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D-69451 Weinheim,1993,vol.A23,”Chemicals and Additives”,p.366~417)。
【0065】
有用な充填剤-活性化剤としては、有機シラン、特に、たとえば以下のものが挙げられる:ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、又は(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤-活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミン又は74~10,000g/molの分子量を有するエチレングリコールのような界面活性物質が挙げられる。充填剤-活性化剤の量は、100重量部のゴム(i)を基準にして、典型的には0重量部~10重量部である。
【0066】
また別な実施態様においては、その加硫可能な組成物には、いかなるシランコーティングされたウォラストナイトも含まれない。
【0067】
有用な老化安定剤としては、特には、ペルオキシド加硫において、最小限のラジカルを捕捉するものが挙げられる。それらは、特には、以下のものである:オリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)、4-及び5-メチルメルカプトベンゾイミダゾール(MB2)、又は4-及び5-メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(ZMB2)。加えて、公知のフェノール系老化安定剤たとえば、立体障害フェノール、又はフェニレンジアミンをベースとする老化安定剤を使用することもできる。上述の老化安定剤を組合せたもの、好ましくはZMB2又はMB2と組合せたCDPA、より好ましくはCDPAとMB2との組合せを使用することもまた可能である。
【0068】
老化安定剤は、100重量部のゴム(i)を基準にして、典型的には0.1~5重量部、好ましくは0.3~3重量部の量で使用される。
【0069】
有用な離型剤の例としては以下のものが挙げられる:飽和又は部分不飽和の脂肪酸及びオレイン酸又はそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、又は脂肪酸アミドの形態にあるもの)、及びさらには、金型表面に適用することが可能な製品、たとえば低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、及びフェノール系の樹脂をベースとする製品。
【0070】
それらの離型剤は、ブレンド成分として、100重量部のゴム(i)を基準にして、0.2~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量で使用される。
【0071】
米国特許第A4,826,721号明細書の教示に従って、芳香族ポリアミド(アラミド)を用いた強化と同様にして、ガラスの補強要素を用いてその加硫物を強化することもまた可能である。
【0072】
本発明はさらに、成分(i)及び(ii)、場合によってはさらなる成分を混合することによる、上述の本発明による加硫可能な組成物を製造するためのプロセスも提供する。これは、当業者には公知の、装置及び混合ユニットを使用して、実施することができる。
【0073】
それらの成分を相互に混合する順序は、本質的には重要ではないが、それぞれの場合において、利用可能な混合ユニット及び温度管理体制にマッチさせる。
【0074】
成分(i)及び(ii)を含む組成物は、温度に応じて、ゴム産業において一般的に使用される、典型的な混合システムを使用して混合することができる。混合ロール又はインターナルミキサーの形態のバッチ式混合ユニット、及び混合エクストルーダーのような連続式混合ユニットを使用することが可能である。
【0075】
約30~40℃の範囲の所定のミキサー温度で、成分(i)と(ii)との混合を実施するのが特に有用であることが見出されたが、その理由は、ここで上述の混合ユニットを用いると、十分に高い剪断力を加えることが可能となるためであり、それらの混合ユニットは、ゴム加工産業においては、良好な混合を達成させるために慣用されている。
【0076】
本発明によるHNBR-PEGアクリレートコポリマー(i)を最初に仕込んで素練りし、その後で、加硫用化学物質(ペルオキシド化合物及び架橋助剤)以外の、さらなる成分全部を添加するのが好ましい。適切な混合時間の後で、その混合物を排出させる。第二の工程で、ペルオキシド化合物及び架橋助剤を、ロール上で混ぜ込む。この場合、ロールの速度を調節して、安定したスキンが得られるようにする。
【0077】
実際においては、本発明における成分を混合した後では、その加硫可能な組成物は、たとえば、「スキン(skin)」、フィードストリップ、若しくはフィードスラブと呼ばれている形態、又はそうでなければ、ペレット若しくは顆粒の形態で得られる。それらは次いで、型の中に圧入するか、又は射出成形することが可能であり、そして使用したフリーラジカル供与体に合わせた適切な条件下で架橋させる。
【0078】
本発明はさらに、上述の加硫可能な組成物に、エネルギーを注入、特には加熱処理することによる、加硫物の製造も提供する。
【0079】
そのエネルギーの注入は、たとえば、熱エネルギーの形で実施することができる。
【0080】
加熱処理の手段により加硫製品を製造することは、本発明における加硫可能な組成物を、適切な型の中で、慣用される方法で、好ましくは120~200℃、より好ましくは140~180℃の範囲の温度とすることにより実施される。たとえば圧縮加硫、水蒸気加硫など、各種の方法を用いて、加硫をもたらすことができる。
【0081】
本発明における加硫可能な組成物の架橋の過程において、ペルオキシド化合物(ii)が、使用したゴム(i)の間でのフリーラジカル架橋をもたらす。
【0082】
<冷却剤>
当業者の理解では、冷却剤とは、熱を取り去るための液状の単一物質又は物質混合物を意味している。冷却剤は、冷却サイクルにおいて、温度勾配に沿って、より低温のサイトにエンタルピーを移送することができる。冷却液状物は、冷却するべき物質を、直接的又は熱交換器を介して冷却することができる。
【0083】
本発明の文脈においては、冷却剤は、水、凝固点降下剤、好ましくはアルキルグリコール又は塩類、より好ましくはエチレングリコール又はプロピレングリコール、並びに腐食抑制剤、好ましくは中和された有機酸を含む組成物である。
【0084】
本発明はさらに、上述の、HNBR-PEGアクリレートコポリマー(i)及びペルオキシド化合物(ii)を含む加硫可能な組成物を架橋させることによって得ることが可能な架橋されたゴム、すなわち加硫物、並びに冷却剤と接触状態にある構成部品(component parts)を製造するための、それらの加硫物の使用も提供する。
【0085】
本発明はさらに、加硫可能な組成物から製造される、冷却剤と接触状態にある加硫物を含む構成部品も提供するが、その加硫可能な組成物が、以下のものを含むことを特徴としている:
(i)少なくとも1種のHNBR-PEGアクリレートコポリマー、及び
(ii)少なくとも1種のペルオキシド化合物。
【0086】
好ましくは、それらの構成部品は、ガスケット、冷却器のガスケット、ホース、冷却器のホース、自動車の冷却水ホース、加熱ホース、及び冷却器のハウジングである。加硫可能な組成物を加硫させることによって得られる加硫物を慣用される方法によって加工して、冷却器のホース、加熱ホース、冷却器のハウジング、冷却器のガスケットなどを得ることが可能であり、それらの製品は、上述の性能を有する特に優れた製品である。より詳しくは、このタイプの加硫物は、改良された老化安定性を有している。
【0087】
本発明はさらに、上述の成分(i)及び(ii)を含む加硫可能な組成物から製造された少なくとも1種の加硫物、並びに冷却剤を含む冷却ユニットを提供する。そのような冷却ユニットの例は、自動車のための冷却装置である。
【実施例】
【0088】
貯蔵試験(生ポリマー):
8グラムの生ポリマーを、200mLの媒体中、150℃で7日間貯蔵する。
【0089】
Tgの測定(DSC):
ガラス転移温度は、ASTM E 1356-03又はDIN 11357-2に従い、DSC測定の手段により測定した。この目的のためには、10mg~15mgのサンプルをアルミニウムトレイの上に秤込み、封入した。TA Instruments製のDSC装置の中で、そのトレイを、-150℃から150℃まで、10K/分の加熱速度で2回加熱した。ガラス転移温度は、2回目の加熱曲線から、標準平均値法により求めた。
【0090】
MEK中でのゲル含量の測定:
ゲル含量は、23℃でのメチルエチルケトン(MEK)中でのポリマー不溶分の割合である。ゲル含量を測定するためには、250mgのポリマーを、25mLのMEKの中に溶解させ、23℃で24時間振盪させる。20,000rpmでの遠心分離をさせた後、その不溶性画分を取り出し、乾燥させる。ゲル含量は、乾燥残留物の、出発重量に対する商から計算し、重量パーセントの形で報告する。
【0091】
実施例で記述されている重量部での量は、100重量部のゴム(i)を基準にしたものである。
【0092】
MDR
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイル及びそれに伴う分析データは、ASTM D5289-95に従い、Monsanto MDR 2000レオメーターで測定した。
【0093】
硬度(H)の測定:
ショアーA硬度は、ASTM-D 2240-81に従って測定した。
【0094】
引張強度(TS)及び破断時伸び(EB)の測定:
変形の関数としての歪みを求めるための引張試験は、DIN 53504又はASTM D 412-80に従って実施した。
【0095】
体積の増加(ΔV:膨潤)及び質量の増加(Δ質量)の測定:
その測定は、貯蔵の後、室温で直接実施する。
【0096】
MCB中溶解度(5%)の測定:
モノクロロベンゼン(MCB)中への溶解度は、10mLのMCBの中に5gのポリマーを、23℃で24時間振盪させて溶解させることにより求める。可溶性と不溶性の区別は、目視により行う。
【0097】
ブタノール含量の測定:
冷却剤中のブタノール含量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーを使用して求めた。標準添加法を使用して、ブタノールピークの同定及び定量をした。
【0098】
使用した成分:
Therban(登録商標)3407:水素化ニトリルゴム、ACN含量:34重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):70MU、残存二重結合含量:最大0.9%、ARLANXEO Deutschland GmbHから入手可能。
Therban(登録商標)LT1707VP:アクリル酸ブチル含有、水素化ニトリルゴム、ACN含量:17重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):74MU、残存二重結合含量:最大0.9%、ARLANXEO Deutschland GmbHから入手可能。
HNBR-PEGアクリレート1:PEGアクリレート含有、水素化ニトリルゴム(ターモノマー=アクリル酸メトキシエチル)、ACN含量:20重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):28MU、残存二重結合含量:最大0.9%。
HNBR-PEGアクリレート2:PEGアクリレート含有、水素化ニトリルゴム(ターモノマー=ブチルジグリコールメタクリレート)、ACN含量:31重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):75MU、残存二重結合含量:最大0.9%。
HNBR-PEGアクリレート3:PEGアクリレート含有、水素化ニトリルゴム(ターモノマー=ブチルジグリコールメタクリレート)、ACN含量:20重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):26MU、残存二重結合含量:最大0.9%。
HNBR-PEGアクリレート4:PEGアクリレート含有、水素化ニトリルゴム(ターモノマー=ブチルジグリコールメタクリレート)、ACN含量:25重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃):26MU、残存二重結合含量:最大0.9%。
Luvomaxx(登録商標)MT N-990:カーボンブラック、Lehmann and Vossから入手可能。
Luvomaxx(登録商標)CDPA:4,4’-ビス-(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、Lehmann and Vossから入手可能。
Tremin(登録商標)283-600 VST:ビニルシランコーティングされたウォラストナイト、Quarzwerkeから入手可能。
Perkadox(登録商標)14-40 B-PD:ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(シリカ上、40%担持);Akzo Nobel Polymer Chemicals BVから入手可能。
Rhenofit(登録商標)TRIM/S:30%のシリカ上、70%のトリメチロールプロパントリメタクリレート:架橋助剤:LANXESS Deutschland GmbHから入手可能。
Vulkanox(登録商標)MB2:4-及び5-メチル-2-メルカプトベンゾイミダゾール;Lanxess Deutschland GmbHから入手可能。
MgO:酸化マグネシウム、CP Hallから入手可能。
TAIC 70%:KETTLITZ-TAIC70:架橋助剤:Kettlitz-Chemie GmbH & Co.KGから入手可能。
Glysantin(登録商標)G64 Ready-Mix:G64冷却剤添加剤、BASFから入手可能:貯蔵試験のためには、50容積部の脱イオン水と50容積部のG64冷却剤添加剤とを混合した。
【0099】
実施例1:
HNBR-PEGアクリレート1~4を調製するためのプロセス
a)重合
以下の一連の実施例で使用されるニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマー(PEG-NBR)は、表1に記載の基本配合に従って調製したが、ここですべてのフィード原料(SDPA/Naugawhite(登録商標)安定剤を除く)は、モノマー混合物100重量%を基準にした重量%で表されている。表1にはさらに、それぞれの重合条件(温度、転化率、及び時間)も含まれている。
【0100】
【0101】
PEG-NBRは、撹拌系を備えた5Lのオートクレーブの中で、バッチ方式で調製した。オートクレーブバッチのそれぞれにおいて、1.30kgのモノマー混合物と、合計して2.51kgの量の水とを使用し、EDTAを、Fe(II)を基準にして等モル量で使用した。オートクレーブの中に、最初に2.25kgの量の水を乳化剤と共に仕込み、窒素流を用いてパージした。その後で、モノマー及び表1に規定された量のt-DDM分子量調節剤を添加し、反応器を閉じた。反応器の内容物の温度調節ができたら、プレミックス溶液と、ピナンヒドロペルオキシド(Glidox(登録商標)500)を添加することにより、重合を開始させた。
【0102】
重合の進行は、重量法の転化率測定によりモニターした。表1に記載した転化率に達したら、ジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を添加することにより重合を停止させた。水蒸気蒸留の手段によって、未転化モノマー及びその他の揮発性成分を除去した。
【0103】
それぞれのNBRラテックスをコアグレーションさせる前に、50%のSDPA及び15%のNaugawhite(登録商標)のエマルション(NBR固形分を基準にして0.5重量%のSDPA/0.15重量%のNaugawhite(登録商標))をそれぞれに添加した。それに続けて、CaCl2を用いてコアグレートさせ、得られたクラムを洗浄及び乾燥させた。
【0104】
b)水素化
続く水素化は、上で合成したニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマー(PEG-NBR1~4)を使用して実施した。
【0105】
乾燥モノクロロベンゼン(MCB)、Wilkinson触媒、及びトリフェニルホスフィンは、VWRから購入し、入手したままで使用した。水素化実験の結果を表2にまとめた。
【0106】
水素化1~4は、10Lの高圧反応器の中で、以下の条件下で実施した:
溶媒:モノクロロベンゼン
固形分濃度:MCB(518g)中、12~13重量%のPEG-NBRターポリマー
反応器温度:137~140℃
反応時間:最長4時間まで
触媒及び担持量:ウィルキンソン触媒:0.337g(0.065phr)
助触媒:トリフェニルホスフィン:5.18g(1.0phr)
水素圧(p H2):8.4MPa
攪拌機速度:600rpm
【0107】
PEG-NBR含有ポリマー溶液を、激しく撹拌しながら、H2(23℃、2MPa)を用い、3回脱気する。反応器の温度を上げて100℃とし、H2圧を6MPaとした。Wilkinson触媒(0.337g)及びトリフェニルホスフィン(5.18g)からなる123.9gのクロロベンゼン溶液を加え、圧力を上げて8.4MPaとしたが、その間反応器の温度は137~140℃に調節した。反応の間、両方のパラメーターは一定に維持した。反応の進行は、IR分光光度法の手段によるニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーの残存二重結合含量(RDB)の測定の手段によってモニターした。4時間以内か、及び/又はRDB含量が1%未満となるかの後に、水素圧を解放することによって反応を停止させた。
【0108】
そのようにして作製された水素化PEG-HNBRを、スチームコアグレーションの手段によって、その溶液から単離した。この目的のためには、そのクロロベンゼン溶液をポリマー含量7重量%になるまで希釈して、100℃に予め加熱した、水を充満させた撹拌しているガラス反応器の中に連続的に計量仕込みした。それと同時に、0.5barのスチームを水の中に使用して、コアグレーションを開始させた。そのようにして析出させたポリマーのクラムについて、水をざっと切り、次いで減圧下55℃で、恒量になるまで乾燥させた。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
本発明によるPEGアクリレート-HNBRゴムの加硫物は、-30℃未満の低いTgと、冷却剤中での貯蔵後での10%未満の低い硬度上昇とを、同時に有している。さらに、ターモノマーの解離も存在しない。
【0117】
Therban(登録商標)LT1707VPも低いTgを有しているものの、冷却剤中で貯蔵した後では、高い硬度上昇及び高いゲル化度を有している。
【0118】
Therban(登録商標)3407では、硬度の上昇はないが、Tgが高すぎる。