(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アクチニド塩単相粉末の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
C07C 51/41 20060101AFI20240220BHJP
C07C 53/06 20060101ALI20240220BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20240220BHJP
G21C 21/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07C51/41
C07C53/06
C07F5/00 E
G21C21/02 230
G21C21/02 240
(21)【出願番号】P 2020573551
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 RU2019050237
(87)【国際公開番号】W WO2020139168
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521001227
【氏名又は名称】ジョイント - ストック カンパニー ≪フローピン ラジウム インスティテュート≫
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アロイ アルベルト セメノビチ
(72)【発明者】
【氏名】サモイロフ セルゲイ エヴゲニエビチ
(72)【発明者】
【氏名】コリツォバ タチアーナ イワノブナ
(72)【発明者】
【氏名】メタリディ ミハイル ミハイロビチ
(72)【発明者】
【氏名】リャブコフ ドミトリー ビクトロビチ
(72)【発明者】
【氏名】ベズノシュク ヴァシリー イワノビチ
(72)【発明者】
【氏名】シュキン ウラジミール セルゲエビチ
(72)【発明者】
【氏名】アバシキン アンドレイ ユーリエビチ
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-144613(JP,A)
【文献】米国特許第04201738(US,A)
【文献】特開2003-172795(JP,A)
【文献】特開平07-206790(JP,A)
【文献】特開2001-151765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
G21C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチニド塩単相粉末の製造方法であって、
硝酸アクチニド含有溶液及びギ酸の円筒形加熱反応器への供給、得られた粉末の粉砕及び取り出しを含み、以下を特徴とする:
硝酸アクチニド含有溶液及びギ酸を反応器上部ゾーンに継続的に投入し、
反応化学物質が熱交換表面の薄膜上で混合され、ここで、反応混合物は、ローターブレードにより継続的にかき混ぜられ、
一方、脱硝、関連混合物の形成、その乾燥と粉砕、重力によるアクチニドの乾燥塩のホッパーへの回収のプロセスが順次行なわれる
アクチニド塩単相粉末の製造方法。
【請求項2】
アクチニド含有溶液及びギ酸を、硝酸イオン-ギ酸イオンのモル比が(1:4.3)-(1:4.5)になるように継続的にかつ個別に供給することを特徴とする
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱交換表面温度を140±5°Cで維持することを特徴とする
請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力分野、詳しくは、核燃料ペレット製造用前駆物質である単相アクチニド塩粉末の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によると、シュウ酸塩やポリウラン酸塩、炭酸塩等の溶液化合物の共沈による単相アクチニド塩粉末の工業用製造方法が知られている。この全ての方法は濾過、沈殿物のフィルター洗浄、当該雰囲気中の乾燥を含む(非特許文献1)。沈殿法の共通欠点は、母溶液及び洗浄溶液が処理を必要とする放射能廃棄物として大量に発生することである。
【0003】
上記の欠点を解消するためにはマイクロ波加熱を用いる硝酸溶液の直接乾燥・脱硝方法が開発されている(非特許文献2)
上記の方法は以下の順次操作を含む。
【0004】
1.混合溶液の濃縮及び120°Cでの乾燥
2.溶融塩の150°Cでの分解(脱硝)
3.残留水分の250°C以上での焼成及び蒸留
4.混合物の焼成及び酸化
この方法は、多段の性質があり、混合物が入った容器を一つの加熱炉から他の加熱炉に移す必要があること並びに形成する焼結体の追加粉砕が必要であることの欠点を持つ。
【0005】
プロトタイプとして、アクチニド固溶体の製造方法が選択された(特許文献1)。この方法では、硝酸塩アクチニドの硝酸溶液を事前に90°Cまで加熱した後、適切な比率で、硝酸イオン-ギ酸のモル比が(1:3)-(1:4)になるように、ギ酸を添加する。反応混合物は、120°Cでゆっくり2時間空気中乾燥する。蛍光X線分析により、ギ酸塩アクチニド(即ち、ウラニル及びプルトニウム)の単相混合物の形成が認められている。蛍光X線分析データによると、ギ酸塩混合物を出口温度400°Cで熱処理した後、混合酸化物の固溶体(U,Pu)O2 が得られる。
【0006】
このプロトタイプ方法の欠点として、アクチニドの硝酸溶液と高濃度ギ酸との事前混合及び高温下での溶融の危険性が挙げられる。これらの反応は、次の通り、進む。
【0007】
2HNO3 +2HCOOH → NO+NO2 +2CO2 +3H2 O
2HNO3 +3HCOOH → 2NO+3CO2 +4H2 O
上記の反応が自己触媒反応の性質を有するので、爆発性ガス混合物の形成を伴う制御不可の反応現象が発生する可能性があり、成分の混成後、反応混合物をゆっくり最長2時間乾燥しなければならないが、これは、プロセスを断続的にし、非生産的にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Collins, Emory D, Voit, Stewart L, and Vedder, Raymond James. Evaluation of Co-precipitation Processes for the Synthesis of Mixed-Oxide Fuel Feedstock Materials, United States: 2011, web. doi:10.2172/1024695
【文献】Teruhiko NUMAO, Hiroshi NAKAYASHIKI, Nobuyuki ARAI, Susumu MIURA, Yoshiharu TAKAHASHI. Results of Active Test of Uranium - Plutonium Co-denitration Facility at Rokkasho Ryprocessing Plant, Global 2007, Boise, Idaho, September 9-13, 2007, 238-244
【発明の概要】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、小型で簡素な装置によって、単段階でのアクチニド塩の乾燥した粉末の製造を可能にし、プロセスの改善された生産性並びに化学的かつ核安全性を供給するアクチニド塩単相粉末を製造する方法及びその装置の提供である。
【0011】
上記の技術的効果を達成するため、以下を提案する。アクチニド塩単相粉末の製造方法において、硝酸アクチニド含有溶液及びギ酸の円筒形加熱反応器への供給、得られた粉末の粉砕及び取り出しを含み、以下を特徴とする。硝酸アクチニド含有溶液及びギ酸を反応器上部ゾーンに継続的に投入し、反応化学物質が熱交換表面の薄膜上で混合され、ここで、反応混合物は、ローターブレードにより継続的にかき混ぜられ、一方、脱硝、関連混合物の形成、その乾燥と粉砕、重力によるアクチニドの乾燥塩のホッパーへの回収のプロセスが順次行なわれる。
【0012】
上記の方法では、アクチニド含有硝酸溶液及びギ酸を硝酸イオン-ギ酸イオンのモル比が(1:4.3)-(1:4.5)になるように継続的に投入し、熱交換表面温度を140±5°Cで維持する。
【0013】
また、上記の技術的効果を達成するため、アクチニド塩単相粉末の製造装置も提案する。この装置は、ヒーター及び反応化学物質を投入し消費ガスを排出するチョークを備える垂直回転型膜反応器を有する。その中に、全長方向に沿って固定されたブレードを備え、回転可能に設けられたなローターが配置される。反応化学物質を受け入れるチョークは、T形をしており、取り入れホッパーは、内部への低温空気吸収を低減できるように、反応器に接続され、ヒーターを備える。
【0014】
更に:
- ローターは、4枚のブレードと溶接され、ブレード端部と壁面との隙間は、0.5mm-1.5mmである。
【0015】
- 溶液を供給するT形フローチョーク及び蒸気-ガス混合物を排出するためチョークは、反応器上部で、ブレード端部の上に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実施例1で得られた粉末のX線回折パターンを示す。
【
図3】実施例2で得られた粉末のX線回折パターンを示す。
【
図4】実施例3で得られた粉末のX線回折パターンを示す。
【
図5】実施例4で得られた粉末のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この方法の実施の形態の目的で、
図1に示す核-爆発安全装置が用いられる。
【0018】
核-爆発安全装置は、ヒーター(2)により加熱される垂直円筒形反応器(1)、溶液を個別に供給するためのT形フローチョーク(3)、蒸気-ガス混合物を排出するチョーク(4)を備える。反応器(1)は、分配ディスク及びブレードを備えるローター(5)及びヒーター(7)を備える受入ホッパー(6)を備える。
【0019】
上記の単相アクチニド塩の製造方法及びその装置を用いると、以下の効果を発揮する。
【0020】
- 温熱条件下で、乾燥のため同時の深い蒸発により、継続的に反応化学物質の内在期間が短縮し、工程の生産性及び安全性が向上する。
【0021】
- 装置の小型化及びその設計の簡素化は、検査のための必要に応じた装置の分解及び内面洗浄を可能にする。
【0022】
- 工程をスケーリングしアクチニド高含有溶液を使用するとき、装置内の薄膜における核物質量を最小化することにより、核的安全性が確保される。
【0023】
上記の方法は、以下の通り、実施される。
【0024】
アクチニド含有硝酸溶液及びギ酸は、投入ポンプを用いて、ヒーター(2)より高い位置にあるチョーク(3)経由で、反応器(1)のローターディスク(5)に、個別に投入される。反応混合物は、ローター(5)の回転の際に発生する遠心力の作用により、ローターディスクから反応器(1)の加熱済み表面に排出される。反応混合物が、上から底部へ熱交換表面に沿って、流れるにつれて、ローター(5)のブレードは、反応混合物を継続的に混合し、乾燥アクチニド塩が得られ、重力によって、ヒーター(7)を備えるホッパー(6)に回収され、蒸気-ガス混合物は、チョーク(4)経由で、反応器(1)から除去される。
【0025】
実施例1
濃度100g/lのウラン濃度及び濃縮ギ酸とともに、1モルのHNO
3 における硝酸ウラニル溶液は、室温で、硝酸イオン-ギ酸のモル比が1:3.6となるように、投入ポンプによりT形フローチョーク経由で、反応器に個別に供給される。反応器の壁面の温度は、142°Cで、受入ホッパーの壁面の温度は、145°Cである。粉末は、受入ホッパーに均等に注がれる。蛍光X線分析データによると、上記の粉末は、50重量%のギ酸塩水和物(CH
2 O
5 U)と50重量%の水溶性ギ酸塩(C
2 H
2 O
6 U・H
2 O)との2つの結晶相から構成される。実施例1で得られた粉末のX線回折パターンを
図2に示す。
図2において、●(黒い丸で示すプロット点)は、CH
2 O
5 U構造を持つ化合物で、■(黒い四角で示すプロット点)は、C
2 H
2 O
6 U・H
2 O構造を持つ化合物である。
【0026】
実施例2
濃度100g/lのウラン濃度及び濃縮ギ酸とともに、1モルのHNO
3 における硝酸ウラニル溶液は、室温で、硝酸イオン-ギ酸のモル比が1:4.0となるように、投入ポンプによりT形フローチョーク経由で、反応器に個別に供給される。反応器の壁面の温度は、140°Cで、受入ホッパーの壁面の温度は、130°Cである。粉末は、受入ホッパーに均等に注がれる。蛍光X線分析データによると、上記の粉末は、20重量%のギ酸塩水和物(CH
2 O
5 U)と80重量%の水溶性ギ酸塩(C
2 H
2 O
6 U・H
2 O)との2つの結晶相から構成される。実施例2で得られた粉末のX線回折パターンを
図3に示す。
図3において、●(黒い丸で示すプロット点)は、CH
2 O
5 U構造を持つ化合物で、■(黒い四角で示すプロット点)は、C
2 H
2 O
6 U・H
2 O構造を持つ化合物である。
【0027】
実施例3
濃度100g/lのウラン濃度及び濃縮ギ酸とともに、1モルのHNO
3 における硝酸ウラニル溶液は、室温で、硝酸イオン-ギ酸のモル比が1:4.3となるように、投入ポンプによりT形フローチョーク経由で、反応器に個別に供給される。反応器の壁面の温度は、142°Cで、受入ホッパーの壁面の温度は、160°Cである。粉末は、受入ホッパーに均等に注がれる。蛍光X線分析データによると、上記の単相の粉末は、100質量%の水溶性ギ酸塩(C
2 H
2 O
6 U・H
2 O)から構成される。実施例3で得られた粉末のX線回折パターンを
図4に示す。
図4において、■(黒い四角で示すプロット点)は、C
2 H
2 O
6 U・H
2 O構造を持つ化合物である。
【0028】
実施例4
91.1g/lの濃度のウランと9.0g/lの濃度のトリウム及び濃縮ギ酸とともに、0.845モルのHNO
3 における硝酸ウラニル溶液は、室温で、硝酸イオン-ギ酸のモル比が1:4.5となるように、投入ポンプによりT形フローチョーク経由で、反応器に個別に供給される。反応器の壁面の温度は、142°Cで、受入ホッパーの壁面の温度は、160°Cである。粉末は、受入ホッパーに均等に注がれる。蛍光X線分析データによると、化合物は、水溶性のギ酸塩と化学式(C
2 H
2 O
6 (U,Th)・H
2 O)から構成される。実施例4で得られた粉末のX線回折パターンを
図5に示す。
図5において、■(黒い四角で示すプロット点)は、C
2 H
2 O
6 U・H
2 O構造を持つ化合物である。