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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】移動無線機及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/16 20090101AFI20240220BHJP
【FI】
H04W48/16 110
H04W48/16 134
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021049828
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148228
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】松川 朋樹
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175737(JP,A)
【文献】特表2010-537478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムで使用される移動無線機において、
周波数スキャンを開始すると、当該移動無線機が所在する無線エリアの周波数及び当該無線エリアに隣接する無線エリアの周波数のスキャンを、他の無線エリアの周波数のスキャンよりも優先して実行し、その際に、各無線エリアに対する割り当て周波数がそれぞれ異なる複数の通信グループがある場合は、当該移動無線機が使用する通信グループの周波数を対象にして周波数スキャンを行うことを特徴とする移動無線機。
【請求項2】
それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムで使用される移動無線機において、
当該無線通信システムで使用される複数の周波数を記憶するテーブルと、各無線エリアに対する割り当て周波数を記憶するテーブルと、各無線エリアに隣接する無線エリアを記憶するテーブルとを有し、周波数スキャンを開始すると、これらテーブルに基づいて、当該移動無線機が所在する無線エリアの周波数及び当該無線エリアに隣接する無線エリアの周波数を特定し、これら無線エリアの周波数のスキャンを、他の無線エリアの周波数のスキャンよりも優先して実行し、その際に、各無線エリアに対する割り当て周波数がそれぞれ異なる複数の通信グループがある場合は、当該移動無線機が使用する通信グループの周波数を対象にして周波数スキャンを行うことを特徴とする移動無線機。
【請求項3】
それぞれ異なる周波数の無線エリアを形成する複数の基地局と、いずれかの無線エリア内で無線通信を行う移動無線機とを備えた無線通信システムにおいて、
前記移動無線機は、周波数スキャンを開始すると、当該移動無線機が所在する無線エリアの周波数及び当該無線エリアに隣接する無線エリアの周波数のスキャンを、他の無線エリアの周波数のスキャンよりも優先して実行し、その際に、各無線エリアに対する割り当て周波数がそれぞれ異なる複数の通信グループがある場合には、当該移動無線機が使用する通信グループの周波数を対象にして周波数スキャンを行うことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムで使用される移動無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムが実用されている。このような無線通信システムで使用される移動無線機は、エリア間を移動しても無線通信を継続できるように、移動先のエリアの周波数を発見するために周波数スキャンを実行する機能を有する。周波数スキャンは、例えば、移動無線機が所在するエリアの基地局から送信される信号の受信レベルが閾値以下となり、無線通信を継続できないと判定された場合に実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-210539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の周波数スキャンの方式として、システムで使用される全ての周波数を格納したテーブルを移動無線機に予め記憶させておき、このテーブルに従って移動無線機が各周波数の受信レベルを測定し、受信レベルの高い順に信号の復号を行い、圏内判定を行う方式が考えられる。このように全周波数をスキャンする方式の場合、エリア数が多くてスキャンする周波数が多い場合には周波数スキャンの時間が長くなるため、その短縮が求められている。例えば、特許文献1には、過去の受信実績に基づいてスキャン対象の周波数に優先順位をつけることで、周波数スキャンの時間を短縮する発明が開示されている。しかしながら、特許文献1の手法は、過去の受信実績がない場合には適用できない。
【0005】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、周波数スキャンの時間を効率的に短縮することが可能な無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、移動無線機を以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る移動無線機は、それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムで使用される移動無線機において、周波数スキャンを開始すると、当該移動無線機が所在する無線エリアの周波数及び当該無線エリアに隣接する無線エリアの周波数のスキャンを、他の無線エリアの周波数のスキャンよりも優先して実行することを特徴とする。
【0007】
ここで、移動無線機が、当該無線通信システムで使用される複数の周波数を記憶するテーブルと、各無線エリアに対する割り当て周波数を記憶するテーブルと、各無線エリアに隣接する無線エリアを記憶するテーブルとを有し、これらテーブルに基づいて、当該移動無線機が所在する無線エリアの周波数及び当該無線エリアに隣接する無線エリアの周波数を特定してもよい。
【0008】
また、各無線エリアに対する割り当て周波数がそれぞれ異なる複数の通信グループがある場合に、移動無線機は、当該移動無線機が使用する通信グループの周波数を対象にして周波数スキャンを行うようにしてもよい。
【0009】
また、移動無線機は、使用する通信グループを切り替え可能であり、使用する通信グループを切り替える際に、切り替え前の通信グループの周波数を対象にして実行した周波数スキャンの結果に基づいて、通信グループの切り替え後に使用する周波数を決定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周波数スキャンの時間を効率的に短縮することが可能な無線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】移動無線機の機能ブロックの例を示す図である。
図3】無線通信システムのエリア配置例を示す図である。
図4】周波数管理テーブルの例を示す図である。
図5】周波数割り当て管理テーブルの例を示す図である。
図6】隣接エリア管理テーブルの例を示す図である。
図7】個別設定テーブルの例を示す図である。
図8】周波数スキャンの全体的な処理フローの例を示す図である。
図9】自エリアスキャンの処理フローの例を示す図である。
図10】隣接エリアスキャンの処理フローの例を示す図である。
図11】他エリアスキャンの処理フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示してある。同図の無線通信システムは、複数の基地局20と、これら基地局が形成する無線エリア内で使用される複数の移動無線機10と、これら基地局にケーブル等で接続された複数の地上設備40とを備えている。図1では、移動無線機10の例として2つの移動無線機10-1,10-2を示し、基地局20の例として2つの基地局20-1,20-2を示し、地上設備30の例として2つの地上設備30-1,30-2を示しているが、これらの数は任意である。
【0013】
移動無線機10は、その位置を無線エリアに含む基地局20との間で無線通信を行い、基地局20を介して他の移動無線機10や地上設備30との通信を実現する。ここで、基地局20は、無線エリア間の干渉を防ぐために、互いに異なる周波数が割り当てられている。なお、全ての無線エリアが異なる周波数でなくともよく、例えば、無線エリアが隣接しない基地局20間で同じ周波数を用いてもよい。このように各無線エリアで異なる周波数が使用される場合、移動無線機10が各無線エリア内で無線通信を行うには、その無線エリアで使用されている周波数を探索するために周波数スキャンを実施する必要がある。
【0014】
ここで、ある移動無線機10(例えば、移動無線機10-1)がエリアAからエリアBへ移動したとする。この場合、移動無線機10は、エリアAの基地局20が送信する信号の受信レベルが閾値以下となってエリアAでの無線通信を継続できないと判定した場合に、周波数スキャンを実施する。この周波数スキャンにより、エリアBの基地局20が送信する信号を発見することで、エリアB内に存する他の移動無線機10や地上設備30との通信が可能となる。このとき、移動無線機10は、基地局20から受信した信号を復号して自システムの信号かどうかを判定し、自システムの信号であることを確認できた場合に圏内と判定する。
【0015】
図2には、移動無線機10の機能ブロックの例を示してある。本例の移動無線機10は、無線通信を行う無線部11と、無線部11により受信された信号を処理し、周波数の切り替えや受信レベルの測定などを行う信号処理部12と、信号処理部12により処理された信号を用いて復調を行う復調部13と、周波数スキャンのために、周波数の切り替え制御や復調及び復号したデータに基づく圏内判定などを行う制御判定部14と、周波数スキャン用のデータを記憶するメモリ15とを有する。以下、本提案に係る周波数スキャンについて、図3に示すように、移動無線機10の移動方向が限定されるエリア配置を例にして説明する。図3では、交差する2本の高速道路40-1,40-2に沿って、エリアA~Eを含む複数の無線エリアが設けられている。
【0016】
本例の移動無線機10は、図4に示すように、本システムで使用される周波数を管理する周波数管理テーブルをメモリ15に記憶する。図4の周波数管理テーブルには、移動無線機10から基地局20に向かう上り方向の通信に使用する上り周波数Fu1~FuNと、基地局20から移動無線機10に向かう下り方向の通信に使用する下り周波数Fd1~FdNとをセットにした周波数グループf1~fNを設定してある。同じ周波数グループの上り周波数と下り周波数(例えば、Fu1とFd1)は、共通の周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。
【0017】
また、本例の移動無線機10は、図5に示すように、各無線エリアに対して割り当てる周波数グループを管理する周波数割り当て管理テーブルをメモリ15に記憶する。図5の周波数割り当て管理テーブルでは、1つの無線エリアに対して3つの周波数グループを割り当てている。なお、1つの無線エリアに対して割り当てる周波数グループの数は任意であり、1つの無線エリアに対して1つの周波数グループを割り当ててもよい。図5では、周波数グループを3つの通信グループ(グループ1,グループ2,グループ3)に分けて管理している。1つの無線エリアに対して複数の周波数グループが割り当てられている場合、どの通信グループに属する周波数グループを使用するかは移動無線機10毎に設定される。各移動無線機10の通信グループは、予め設定されていてもよいし、移動無線機10の使用者が任意に設定してもよい。
【0018】
ここで、図3のエリア配置のような地理的条件を考慮すると、各無線エリアに隣接する無線エリアを事前に特定することができる。そこで、本例の移動無線機10は更に、図6に示すように、各無線エリアに隣接する無線エリアを設定した隣接エリア管理テーブルをメモリ15に記憶する。このような隣接エリア管理テーブルを用意しておくことで、移動無線機10が自エリア(現在のエリア)から別のエリアに移動する際に、移動無線機10の移動先である可能性が高いエリア、すなわち、自エリアに隣接するエリアを容易に特定することができる。
【0019】
移動無線機10は、自エリアや通信グループの設定、及び、図4図6に示したテーブルに基づいて、図7に示すように、自エリアの周波数や隣接エリアの周波数を特定することができる。図7の個別設定テーブルでは、自エリアは「エリアA」、通信グループは「グループ1」であるため、自エリア周波数は「f1」、隣接エリア周波数は「f4」,「f7」,「f13」となっている。
【0020】
ここで、自エリアは、移動無線機10が所在する現在のエリアを表す。なお、移動無線機10の起動直後は自エリアが不明である。そこで、移動無線機10を使用することが想定されるエリアを自エリアの初期値として事前に登録しておいてもよい。これにより、基本的に移動無線機10を特定のエリアで使用することが想定され、他のエリアへの移動が稀に行われるような運用形態において、事前登録されたエリアやその周辺のエリアを優先的にスキャン対象とすることが可能となる。
【0021】
移動無線機10は、現在通信している無線エリアでの受信レベルを常時又は定期的に測定し、受信レベルが所定の閾値以下に低下したか否かを判定する。その結果、受信レベルが閾値以下に低下したと判定された場合に、メモリ15内の個別設定テーブルの設定内容に基づいて、制御判定部14による制御の下で周波数スキャンを実行する。以下、本提案に係る周波数スキャンについて、図8図11を参照して詳細に説明する。
【0022】
図8には、本提案に係る周波数スキャンの全体的な処理フローの例を示してある。
制御判定部14は、周波数スキャンを開始すると、まずは自エリアのスキャンを行い(ステップS11)、そのスキャン結果を判定する(ステップS12)。自エリアのスキャン結果が「圏外」であれば、次に隣接エリアのスキャンを行い(ステップS13)、そのスキャン結果を判定する(ステップS14)。隣接エリアのスキャン結果も「圏外」であれば、更に他エリアのスキャンを行う(ステップS15)。上記の各スキャンで「圏内」と判定されたものが見つかれば、その周波数を無線通信に使用するように無線部11を制御し、自エリアの設定などを更新して周波数スキャンを終了する。上記の各スキャンの結果が全て「圏外」であれば、無線通信が不能な状態であると判定し、周波数スキャンを終了する。
【0023】
例えば、図7の個別設定テーブルを用いる場合には、自エリアスキャン(ステップS11)にて周波数グループ「f1」が評価され、自エリアの「圏外」と判定された場合には、隣接エリアスキャン(ステップS13)にて周波数グループ「f4」,「f8」,「f13」が評価され、隣接エリアも「圏外」と判定された場合には、他エリアスキャン(ステップS15)にて「グループ1」の通信グループに属する残りの周波数グループ(例えば、周波数グループ「f10」)が評価される。
【0024】
図9には、自エリアスキャン(ステップS11)の処理フローの例を示してある。
自エリアスキャンが開始されると、制御判定部14はまず、信号処理部12を通じて無線部11に自エリアの周波数をセットし(ステップS21)、その周波数での受信レベルを取得する(ステップS22)。次に、受信レベルが所定の閾値以上か否かを判定し(ステップS23)、受信レベルが所定の閾値以上であれば、その周波数で受信した信号の復調、及び、復号を行い、復号したデータを解釈する(ステップS24)。その後、復号結果に基づいて自エリアの圏内としてよいか否かの判定を行い(ステップS25)、圏内と判定された場合には自エリアスキャンの結果として「圏内」を返す。受信レベルが所定の閾値以上でない場合や、圏内と判定されなかった場合には、自エリアスキャンの結果として「圏外」を返す。
【0025】
図10には、隣接エリアスキャン(ステップS13)の処理フローの例を示してある。
隣接エリアスキャンが開始されると、制御判定部14はまず、信号処理部12を通じて無線部11に隣接エリアの周波数の1つをセットし(ステップS31)、その周波数での受信レベルを取得する(ステップS32)。次に、全ての隣接エリアのスキャンが完了したかを判定し(ステップS33)、全ての隣接エリアのスキャンが完了していない場合には、無線部11に次の隣接エリアの周波数をセットし(ステップS34)、その周波数での受信レベルを取得する(ステップS32)。そして、全ての隣接エリアのスキャンが完了した場合には、受信レベルが所定の閾値以下の周波数を除外したものを候補とし、受信レベルが高い順に候補の周波数をソートする(ステップS35)。
【0026】
次に、制御判定部14は、候補の周波数があるか否かを判定し(ステップS36)、候補の周波数がある場合には、無線部11に候補の周波数の1つをセットし(ステップS37)、その周波数で受信した信号の復調、及び、復号を行い、復号したデータを解釈する(ステップS38)。その後、復号結果に基づいて隣接エリアの圏内としてよいか否かの判定を行い(ステップS39)、圏内と判定された場合には、隣接エリアスキャンの結果として「圏内」を返す。一方、圏内と判定されなかった場合には、次の候補の周波数があるか否かを判定する。(ステップS40)。そして、次の候補の周波数があれば、その周波数を無線部11に候補の周波数の1つをセットして(ステップS41)、信号復号(ステップS38)及び圏内判定(ステップS39)を行う。候補の周波数がなかった場合や、候補の周波数の中に「圏内」と判定されるもの見つからなかった場合には、隣接エリアスキャンの結果として「圏外」を返す。
【0027】
図11には、他エリアスキャン(ステップS15)の処理フローの例を示してある。
他エリアスキャンが開始されると、制御判定部14はまず、信号処理部12を通じて無線部11に未スキャンエリアの周波数の1つをセットし(ステップS51)、その周波数での受信レベルを取得する(ステップS52)。次に、全てのエリアのスキャンが完了したかを判定し(ステップS53)、全てのエリアのスキャンが完了していない場合には、無線部11に次の未スキャンエリアの周波数をセットし(ステップS54)、その周波数での受信レベルを取得する(ステップS52)。そして、全てのスキャンが完了した場合には、受信レベルが所定の閾値以下の周波数を除外したものを候補とし、受信レベルが高い順に候補の周波数をソートする(ステップS55)。
【0028】
次に、制御判定部14は、候補の周波数があるか否かを判定し(ステップS56)、候補の周波数がある場合には、無線部11に候補の周波数の1つをセットし(ステップS57)、その周波数で受信した信号の復調、及び、復号を行い、復号したデータを解釈する(ステップS58)。その後、復号結果に基づいて隣接エリアの圏内としてよいか否かの判定を行い(ステップS59)、圏内と判定された場合には、他エリアスキャンの結果として「圏内」を返す。一方、圏内と判定されなかった場合には、次の候補の周波数があるか否かを判定する。(ステップS60)。そして、次の候補の周波数があれば、その周波数を無線部11に候補の周波数の1つをセットして(ステップS61)、信号復号(ステップS58)及び圏内判定(ステップS59)を行う。候補の周波数がなかった場合や、候補の周波数の中に「圏内」と判定されるもの見つからなかった場合には、他エリアスキャンの結果として「圏外」を返す。
【0029】
以上のように、本例の移動無線機10は、周波数スキャンを開始すると、自エリア(移動無線機10が所在する現在の無線エリア)の周波数及びその隣接エリアの周波数のスキャンを、他のエリアの周波数のスキャンよりも優先して実行するように構成されている。このように、無線接続できる確率が高い周波数の順にスキャンを実行することで、システムで使用される全ての周波数をスキャンしていた従来方式に比べて、スキャン時間を短縮することができる。しかも、特許文献1の手法では必要であった過去の受信実績が不要であるため、スキャン時間の短縮を効率的に実現することができる。
【0030】
また、本例の移動無線機10は、当該無線通信システムで使用される複数の周波数を記憶する周波数管理テーブル(図4)と、各無線エリアに対する割り当て周波数を記憶する周波数割り当て管理テーブル(図5)と、各無線エリアに隣接する無線エリアを記憶する隣接エリア管理テーブル(図6)とを有し、これらテーブルに基づいて、自エリアの周波数及び隣接エリアの周波数を特定するように構成されている。このような構成によれば、事前に定義した地理的条件を考慮して、隣接エリアの周波数を容易に特定することができる。
【0031】
また、本例の移動無線機10は、各無線エリアに対する割り当て周波数がそれぞれ異なる複数の通信グループがある場合に、移動無線機10が使用する通信グループの周波数を対象にして周波数スキャンを行うように構成されている。このような構成によれば、スキャン対象となる周波数の数を減らすことができるので、スキャン時間を短縮することができる。
【0032】
なお、移動無線機10は、使用者の操作により、通信に使用する通信グループを切り替え可能であってもよい。このとき、通信に使用する通信グループを切り替える際に、切り替え後の通信グループについて上記と同様の周波数スキャンを行ってもよい。あるいは、切り替え前の通信グループの周波数を対象にして実行した周波数スキャンの結果に基づいて、通信グループの切り替え後に使用する周波数を決定するようにしてもよい。この場合には、通信グループの切り替え時の周波数スキャンを省略できるので、通信グループの切り替え後に通信可能となる時間を短縮することができる。
【0033】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0034】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、それぞれ異なる周波数を使用する複数の無線エリアを有する無線通信システムにおいて利用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10:移動無線機、 11:無線部、 12:信号処理部、 13:復調部、 14:制御判定部、 15:メモリ、 20:基地局、 30:地上設備、 40:高速道路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11