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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電磁シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240220BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240220BHJP
   H01R 13/6591 20110101ALI20240220BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/02 Z
H01R13/6591
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021088702
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181652
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 勲
(72)【発明者】
【氏名】青野 通和
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-297493(JP,A)
【文献】特開2013-222684(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083923(WO,A1)
【文献】特開2007-141753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00- 4/22
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線に接続されるインナ端子と、
インナ端子収容室に前記インナ端子を収容するインナハウジングと、
前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出して前記絶縁体と前記編組との間に挿入される筒状のシールドスリーブと、
編組加締め片が前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締められた加締め部材と、を備え、
前記インナ端子が挿入される前記インナハウジングの開口後端面に、前記芯線を導出させた前記絶縁体の先端面が当接しており、
前記インナ端子における芯線接続部の後端と前記絶縁体の前記先端面とは離れており、前記インナ端子の前記後端と前記絶縁体の前記先端面との間における前記芯線の撓み変形しやすい部分が、前記インナ端子収容室内に露出していることを特徴とする電磁シールドコネクタ。
【請求項2】
前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片との間で溶融固化されたはんだが、前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを接合することを特徴とする請求項1に記載の電磁シールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
伝送特性の劣化を抑制するシールド電線の端末構造が知られている(特許文献1参照)。
このシールド電線の端末構造は、絶縁電線の端部における絶縁体から露出した導体(芯線)に接続されたインナ端子と、絶縁電線の周囲を覆っている長尺状の電磁シールドシートと、絶縁電線の周囲を覆っている絶縁フィルム層上に巻きつけられているシース材(被覆)と、絶縁体の端部が所定長さ露出するように配置されている電磁シールドシートの折り返し部に圧着されており、インナ端子を覆っている筒状のアウタ端子と、を備える。
そして、アウタ端子(シールドアッセンブリ)をシールド電線(ケーブル)の端末に接続する際には、アウタ端子のシールド圧着部(編組加締め片)が電磁シールドシートの折り返し部に加締められ、アウタ端子のシース圧着部(被覆加締め片)が絶縁電線の端部に加締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-195034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のシールド電線の端末構造では、シールド電線の端末にアウタ端子を接続する際、アウタ端子とシールド電線の相対的な加締め位置が規制できる手段がないと、インナ端子における導体圧着部の後端とシールド電線における絶縁体の先端面との間の導体が、変形した状態で加締められる虞がある。この導体が変形した導体変形部は、インピーダンスの乱れの要因となる。このため、シールド電線の端末に接続されたアウタ端子を構成部品としている電磁シールドコネクタでは、導体(芯線)の変形によるインピーダンスの乱れに起因して、伝送性能が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ケーブルの芯線に接続されてインナハウジングに装着されたインナ端子と、ケーブルから導出された絶縁体の先端面との間における芯線の変形が生じにくくなる電磁シールドコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線に接続されるインナ端子と、インナ端子収容室に前記インナ端子を収容するインナハウジングと、前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出して前記絶縁体と前記編組との間に挿入される筒状のシールドスリーブと、編組加締め片が前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締められた加締め部材と、を備え、前記インナ端子が挿入される前記インナハウジングの開口後端面に、前記芯線を導出させた前記絶縁体の先端面が当接しており、前記インナ端子における芯線接続部の後端と前記絶縁体の前記先端面とは離れており、前記インナ端子の前記後端と前記絶縁体の前記先端面との間における前記芯線の撓み変形しやすい部分が、前記インナ端子収容室内に露出していることを特徴とする電磁シールドコネクタ。
【0007】
上記(1)に記載の電磁シールドコネクタによれば、シールド本体から延出するシールドスリーブが、同軸で配置される絶縁体と編組との間で、同心円に配置される。そして、ケーブルの端末に接続されたインナ端子は、シールドスリーブに挿入されてインナハウジングのインナ端子収容室に収容される。この際、インナ端子における芯線接続部の後端とケーブルにおける絶縁体の先端面との間の芯線は、絶縁体が皮剥きされることにより撓み変形しやすい部分となっている。そこで、本構成の電磁シールドコネクタは、インナ端子がインナ端子収容室に装着完了すると同時に、インナハウジングの開口後端面に、ケーブルにおける絶縁体の先端面が、当接するように寸法設定されている。このため、インナ端子がインナ端子収容室に装着された後、更にケーブルの基端側から挿入方向の外力が加えられても、この挿入方向の外力が絶縁体の先端面からインナハウジングの開口後端面に加えられ、絶縁体の先端面とインナ端子との間における芯線の撓み変形しやすい部分には作用しなくなる。そして、本構成の電磁シールドコネクタでは、ケーブルの端末における絶縁体の先端面がインナハウジングの開口後端面に当接した状態で、加締め部材の編組加締め片が編組の上からシールドスリーブに加締められる。このように、ケーブルの端末に接続されたインナ端子と絶縁体の先端面との間における芯線の撓み変形しやすい部分を直線状に維持した状態で、電磁シールドコネクタを組み立てることができる。即ち、本構成の電磁シールドコネクタは、従来構造のような芯線変形部が生じにくくなる。
従って、芯線とシールドスリーブの内周面との距離が周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止できる。
【0008】
(2) 前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片との間で溶融固化されたはんだが、前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを接合することを特徴とする上記(1)に記載の電磁シールドコネクタ。
【0009】
上記(2)に記載の電磁シールドコネクタによれば、内周側にシールドスリーブが挿入された編組は、その上から加締め部材の編組加締め片が加締め付けられる。この際、編組加締め片は、編組の下に位置するシールドスリーブを変形させない程度の加締め力で、シールドスリーブの外形状に沿う円筒状に塑性変形されて加締め付けられる。そして、加締め前の編組加締め片の底部に塗布されたはんだペーストは、リフロー処理時に溶融された後、自然冷却されて固化する。はんだペーストは、溶融することにより一部が編組の編み組み(目)を通過してシールドスリーブの内周面に達する。はんだペーストは、固化することによりはんだとなり、所定の強度でシールドスリーブ、編組および編組加締め片を一体的に接合(接合物質であるはんだを溶融させて母材を接合する液相接合)する。本構成の電磁シールドコネクタでは、固化したはんだが所定強度でシールドスリーブ、編組および編組加締め片を一体的に接合するので、編組加締め片を加締める際、筒状のシールドスリーブに変形が生じる程の大きな加締め力を加えて接続強度及び電気接続信頼性を確保する必要がなくなる。
その結果、本構成の電磁シールドコネクタによれば、シールドスリーブに変形がなく、シールドスリーブの内周面と芯線との距離が周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電磁シールドコネクタによれば、ケーブルの芯線に接続されてインナハウジングに装着されたインナ端子と、ケーブルから導出された絶縁体の先端面との間における芯線の変形が生じにくくなる。
【0011】
以上、本発明について明確に開示した。更に、以下の発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)の記載から本発明はより明確かつ十分に読み取れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁シールドコネクタの斜視図である。
図2図1に示した電磁シールドコネクタの分解斜視図である。
図3図1に示した電磁シールドコネクタの縦断面図である。
図4図2に示したシールドアッセンブリの分解斜視図である。
図5】ケーブルの端末に接続されたインナ端子がインナハウジングのインナ端子収容室に挿入される前の縦断面図である。
図6】インナ端子がインナ端子収容室に挿入された後のインナハウジングとケーブルの端末とをその要部拡大図と共に表した縦断面図である。
図7】加締め部材が加締められる前のシールドアッセンブリの縦断面図である。
図8】加締め部材が加締められた後のシールドアッセンブリの縦断面図である。
図9図8におけるA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁シールドコネクタ11の斜視図である。
本実施形態に係る電磁シールドコネクタ11は、図1に示すように、ケーブル13の端末に取り付けられることにより、電磁シールドコネクタ付きケーブルを構成する。ケーブル13としては、例えば同軸ケーブルが用いられる。
【0014】
ケーブル13は、中心側より、芯線15、絶縁体17、編組19、および被覆21より構成される(図3参照)。導電性を有する芯線15は、単線、複数の素線を撚った撚り線のいずれであってもよい。絶縁体17は、電気絶縁性を有して芯線15を覆う。編組19は、導電性を有して絶縁体17の外周を覆う。被覆21は、電気絶縁性を有して編組19の外周を覆う。
【0015】
なお、本実施形態において、ケーブル13は、編組19を有する同軸ケーブルであるが、編組19を有するケーブル13であればその他の構成は限定されない。
【0016】
ケーブル13に接続される電磁シールドコネクタ11は、収容される端子の雌雄に従って雄電磁シールドコネクタと、雌電磁シールドコネクタとに分けられる。本実施形態に係る電磁シールドコネクタ11は、雄電磁シールドコネクタおよび雌電磁シールドコネクタのいずれにも用いることができる。本発明に係る構成の主要部は、雄電磁シールドコネクタと雌電磁シールドコネクタとでほぼ同一である。以下の説明では、雌電磁シールドコネクタを代表例として本発明に係る構成の主要部を説明する。以下、雌電磁シールドコネクタは、単に電磁シールドコネクタ11と称す。
【0017】
図2は、図1に示した電磁シールドコネクタ11の分解斜視図である。
電磁シールドコネクタ11は、図2に示すように、アウタハウジング23と、サイドスペーサ25と、シールドアッセンブリ27とにより構成される。アウタハウジング23は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。サイドスペーサ25は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。アウタハウジング23は、ロック突起29が設けられた弾性変形可能なロックアーム31を有している。
【0018】
図3は、図1に示した電磁シールドコネクタ11の芯線15に沿う方向の縦断面図である。
アウタハウジング23には、前後方向で貫通する端子収容室33が成形されている。アウタハウジング23には、端子収容室33に突出するように、弾性係止片35(可撓ランス)が形成されている。また、アウタハウジング23には、端子収容室33の一部を端子挿入方向と交差方向に横断するスペーサ挿入孔37が形成されている。
【0019】
シールドアッセンブリ27は、インナ端子39と、インナハウジング41と、後述するようにシールド本体57、シールドスリーブ59および加締め部材61の3部品より構成されるシールドアウタ端子43とにより構成されている。インナ端子39は、導電性を有する金属により筒状に形成された雌インナ端子である。インナハウジング41は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。シールドアウタ端子43は、導電性を有する金属により筒状あるいは一対の挟持片状に形成されている。シールドアッセンブリ27は、ケーブル13の端末に接続される。
【0020】
アウタハウジング23の端子収容室33には、ケーブル13の端末に接続されたシールドアッセンブリ27が挿入される。アウタハウジング23の端子収容室33に挿入されたシールドアッセンブリ27は、シールドアッセンブリ27に設けられた係止突起45が端子収容室33の弾性係止片35に係止されることにより、アウタハウジング23の端子収容室33に保持される。
【0021】
アウタハウジング23のスペーサ挿入孔37には、サイドスペーサ25が端子収容室33を横断する方向に挿入されるようにして組み付けられる。シールドアッセンブリ27が装着されたアウタハウジング23では、ケーブル13に図3の左方向の引っ張り力が加わった際、モーメントにより、係止突起45と弾性係止片35の係止が解除されるように、弾性係止片35が弾性変形しようとする。このとき、サイドスペーサ25は、弾性係止片35の弾性変形を規制して、シールドアッセンブリ27の係止突起45と弾性係止片35の係止状態を確実なものとしている。
【0022】
アウタハウジング23は、相手側アウタハウジング(不図示)との正規嵌合を検知して保証する嵌合検知部材47(CPA:Connector Position Assurance)を備える。嵌合検知部材47は、アウタハウジング23の側面にコネクタ嵌合方向で、仮係止位置と本係止位置に移動自在に取り付けられる。嵌合検知部材47は、アウタハウジング23と相手側アウタハウジングとが嵌合完了したときに、即ち、電磁シールドコネクタ(雌電磁シールドコネクタ)11と雄電磁シールドコネクタとが嵌合完了したときに、仮係止位置から本係止位置(嵌合保証位置)に移動が可能となる。
【0023】
電磁シールドコネクタ11は、雄電磁シールドコネクタの不図示のフード部に挿入されて嵌合されると、ロックアーム31のロック突起29が、不図示の被ロック部と係合する。これにより、電磁シールドコネクタ11と雄電磁シールドコネクタとの嵌合状態が維持される。
【0024】
嵌合状態において、アウタハウジング23に設けられる嵌合検知部材47は、仮係止位置から図3に示す仮係止位置よりも同図の左方にスライドされた本係止位置へ移動される。嵌合検知部材47は、不図示の被ロック部に係合しているロック突起29に、検知アーム49の先端に設けられている検知部51が係合することにより、電磁シールドコネクタ11と雄電磁シールドコネクタとの正規嵌合を検知する。また、嵌合検知部材47は、本係止位置に移動されると、ロックアーム規制部53が、ロックアーム31におけるロック解除片55の解除空間に挿入され、ロックアーム31のロック解除を不能とする。つまり、嵌合検知部材47は、正規嵌合を検知するとともに、その正規嵌合を保証するように作動する。
【0025】
嵌合状態において、一方のケーブル13の端末に接続された電磁シールドコネクタ11と、不図示の他方のケーブル13の端末に接続された雄電磁シールドコネクタが電気的に接続されることになる。即ち、インナ端子39と不図示の雄インナ端子が電気的に接続され、ケーブル13の芯線同士が導通して通信回路が形成される。同時に、シールドアウタ端子43と不図示の相手側シールドアウタ端子が電気的に接続され、ケーブル13の編組同士が導通してシールド回路が成形される。
【0026】
図4は、図2に示したシールドアッセンブリ27の分解斜視図である。
シールドアッセンブリ27は、図4に示すように、インナ端子39、インナハウジング41およびシールドアウタ端子43より構成されている。シールドアウタ端子43は、シールド本体57、シールドスリーブ59および加締め部材61の3部品より構成されている。
【0027】
インナ端子39は、ケーブル13の芯線15に加締めにより、電気的に接続される。つまり、インナ端子39は、芯線15を覆う絶縁体17の外周が編組19により覆われたケーブル13の芯線15に接続されている。
【0028】
シールド本体57は、略円筒状である。シールド本体57は、導電性を有する金属からなり、前方から後方にかけて、前方円筒接続部63と、拡径された拡径部65とを有して成形される。シールド本体57には、前後方向で貫通するインナハウジング収容室67が成形されている。なお、本明細書中、前方とは、コネクタが嵌合方向に進む方向を言い、後方とはその反対の方向を言う。
【0029】
前方円筒接続部63には、弾性変形可能な接触片69が切り起こしにより成形されている。接触片69は、不図示の雄電磁シールドコネクタが嵌合された状態で、不図示の相手側シールドアウタ端子と弾性的に接触し、電気的に接続する機構を構成するものである。また、シールド本体57は、拡径部65の後部に、一対の平行な起立片71が切り起こしにより成形されている。起立片71は、アウタハウジング23に形成されるガイド溝72(図3参照)に挿入されることにより、シールドアッセンブリ27の挿入姿勢を定めるスタビライザを構成するものである。
【0030】
シールドスリーブ59は、略円筒状に形成される。シールドスリーブ59は、導電性を有する金属からなり、前方から後方にかけて、嵌入部73と、編組覆われ部75とが連続する筒状に形成される。嵌入部73は、編組覆われ部75よりも大径の円筒状となって、編組覆われ部75と同軸で成形される。シールドスリーブ59には、前後方向で貫通する挿入空間が成形される。
【0031】
加締め部材61は、導電性を有する金属からなり、U字状に形成される。加締め部材61には、連結部77を介して、編組加締め片79と被覆加締め片81とが前後方向に接続して一体で形成される。
【0032】
ケーブル13の端末に接続されたシールドアッセンブリ27は、インナ端子39が、インナハウジング41のインナ端子収容室83に収容される。インナ端子39を収容したインナハウジング41は、シールド本体57のインナハウジング収容室67に収容される。インナハウジング41は、挿入方向の中央部が大径部85となり、大径部85を挟んで前方と後方が、大径部85よりも小径の前方円筒部87と後方円筒部89となる。
【0033】
また、シールド本体57の拡径部65には、シールドスリーブ59の嵌入部73が嵌め込まれる。シールド本体57とシールドスリーブ59とは、一体化され、拡径部65と嵌入部73は、圧入された上ではんだ91(図9参照)で電気的に接合され、保持される。なお、拡径部65と嵌入部73は、圧入のみ、はんだ接合のみ、または係止機構等で保持させるようにしてもよい。
【0034】
また、シールドスリーブ59の編組覆われ部75には、編組覆われ部75の外周を覆うように、ケーブル13の編組19が配置される。シールドスリーブ59は、インナハウジング41の外周を覆うシールド本体57から延出して、絶縁体17と編組19との間に編組覆われ部75が挿入される(図3参照)。加締め部材61は、編組加締め片79が編組19の外周を覆うように加締められる。この際、編組加締め片79のU字状の底部93(図4参照)には、はんだペースト95が塗布される。
【0035】
編組加締め片79の底部93には、はんだペースト95が塗布される。加締め部材61の編組加締め片79は、ケーブル13の長手方向に直交する3本の溝97を内周面99に有する。溝97は、編組加締め片79の内周面99より窪むように形成されている。編組加締め片79の内周面99に溝97を有した加締め部材61は、編組加締め片79が編組19の上からシールドスリーブ59の外形状に沿うように変形して加締められる。
【0036】
編組19の上からシールドスリーブ59の編組覆われ部75の外形状に沿うように変形した編組加締め片79と、シールドスリーブ59とは、はんだ91により一体的に接合(ろうづけ)される。つまり、母材である編組加締め片79とシールドスリーブ59との間は、接合物質であるはんだ91により接合(液相接合)される。
【0037】
加締め部材61の被覆加締め片81は、ケーブル13の被覆21に外周から加締められる。つまり、シールドアッセンブリ27は、加締め部材61が編組19と被覆21との双方に固定される。
【0038】
次に、上述したケーブル13の端末に接続されるシールドアッセンブリ27の製造方法について説明する。
【0039】
図5は、ケーブル13の端末に接続されたインナ端子39がインナハウジング41のインナ端子収容室83に挿入される前の縦断面図である。
所定の長さに切断したケーブル13は、端末における絶縁体17や被覆21の一部を切除して、芯線15と編組19を露出させる。
インナ端子39は、図5に示すように、ケーブル13の芯線15に加締めにより電気的に接続される。
編組19をほぐし、編組19と絶縁体17の間に隙間を作るように、編組19を拡径させる。
【0040】
図6は、インナ端子39がインナ端子収容室83に挿入された後のインナハウジング41とケーブル13の端末とをその要部拡大図と共に表した縦断面図である。
インナハウジング41のインナ端子収容室83にインナ端子39を挿入すると同時に、編組19と絶縁体17の間にシールドスリーブ59の編組覆われ部75を挿入する。
この際、インナ端子39が挿入されるインナハウジング41の開口後端面101に、絶縁体17の先端面103が当接する。
シールドスリーブ59の編組覆われ部75の外周を編組19で覆うために、拡径した編組19を縮径させる。
【0041】
図7は、加締め部材61が加締められる前のシールドアッセンブリ27の縦断面図である。
加締め前の編組加締め片79の底部93には、図7に示すように、所定量のはんだペースト95が塗布される。本実施形態において、所定量とは、リフロー処理により溶融したはんだペースト95が、少なくとも編組加締め片79とシールドスリーブ59との間に、編組19を通過して十分に広がる量である。
【0042】
はんだペースト95は、一対の編組加締め片79のU字状の底部93に塗布されることにより、例えば編組19の外周面に塗布する場合に比べ、容易な塗布が可能となる。また、塗布されたはんだペースト95は、重力によりU字状の底部93に定着して貯留させることができる。このことは、後工程における編組加締め片79の加締め作業を円滑にする上で有効となる。
【0043】
図8は、加締め部材61が加締められた後のシールドアッセンブリ27の縦断面図である。
加締め部材61の編組加締め片79が、編組19の外周を覆うようにして加締められる。また、加締め部材61の被覆加締め片81が、ケーブル13の被覆21に外周から加締められる。つまり、シールドアッセンブリ27は、加締め部材61が編組19と被覆21との双方に固定される。この際、編組加締め片79の内周面99は、シールドスリーブ59を覆っている編組19に対し、接している程度の加締め状態である。即ち、編組加締め片79は、編組19やシールドスリーブ59を圧縮変形させるような加締め状態とはなっていない。その結果、シールドスリーブ59の編組覆われ部75は、円筒状が維持されている。
【0044】
また、ケーブル13は、インナハウジング41の開口後端面101に、絶縁体17の先端面103が当接した状態に維持される。つまり、絶縁体17の先端面103とインナ端子39との間の芯線15には、加締め作業による軸方向の圧縮力が作用しないように構成されている。
【0045】
編組19の外周を覆って加締められた編組加締め片79は、例えばリフロー処理により加熱される。この加熱により、はんだペースト95が溶融する。なお、はんだペースト95の溶融は、レーザ照射装置を用いて、編組加締め片79にレーザ光をスポット的に照射して、はんだペースト95を溶融してもよい。
【0046】
ここで、編組加締め片79には、溝97が形成された内表面と、編組19の外周との間に、隙間が存在する。この隙間には、リフロー処理により溶融したはんだペースト95が流入する。そして、溶融したはんだペースト95は、溝97の内表面と編組19の外周との間の隙間を毛細管現象により、上方へ広がっていく。
【0047】
図9は、図8におけるA部拡大図である。
編組加締め片79の内表面を上方へ広がると同時に、溶融したはんだペースト95は、軸方向(前後)にも広がるようにして、シールドスリーブ59の外周面と編組19との間、編組19の目、および編組加締め片79の内周面99と編組19の間に広がる。そして、最終的に、少なくとも、編組加締め片79の内周面99全体に広がる。そして、溶融したはんだペースト95は、固化することによりはんだ91となる。はんだ91は、編組19の上からシールドスリーブ59の外形状に沿うように変形した編組加締め片79と、シールドスリーブ59とを一体的に接合(液相接合)する。
【0048】
即ち、母材である編組加締め片79とシールドスリーブ59との間は、接合物質であるはんだ91により接合(液相接合)される。これにより、電磁シールドコネクタ11は、シールドスリーブ59と編組19と編組加締め片79とが、はんだ91により電気的に接合される。編組覆われ部75、編組19および編組加締め片79と、これらを接合しているはんだ91とは、編組加締め部105を構成する。
【0049】
溶融したはんだペースト95を固化させ、はんだ91とすることにより、ケーブル13の端末に接続されるシールドアッセンブリ27の製造を完了する。
【0050】
次に、上記した実施形態に係る電磁シールドコネクタ11の作用を説明する。
本実施形態に係る電磁シールドコネクタ11では、シールド本体57から延出するシールドスリーブ59の編組覆われ部75が、同軸で配置される絶縁体17と編組19との間で、同心円に配置される。そして、ケーブル13の端末にシールドアッセンブリ27が接続される。この際、ケーブル13の端末には、絶縁体17が除去された芯線15の先端に、インナ端子39が固定されている。インナ端子39は、シールドスリーブ59の編組覆われ部75に挿入される。シールドスリーブ59は、編組覆われ部75の先端側に嵌入部73が形成されている。シールドスリーブ59の嵌入部73は、シールド本体57の内側(拡径部65)に挿入されて一体に固定されている。この嵌入部73の内周には、インナ端子収容室83を有するインナハウジング41が嵌合されている。
【0051】
従って、インナ端子39は、最終的に、嵌入部73の内側に嵌合するインナハウジング41のインナ端子収容室83に装着される。
【0052】
図9に示すように、ケーブル13は、インナ端子39における芯線接続部107の後端109とケーブル13における絶縁体17の先端面103との間の芯線15が、絶縁体17が皮剥きされることにより撓み変形しやすい部分となっている。例えば、この芯線15の撓み変形しやすい部分は、インナ端子39がインナハウジング41のインナ端子収容室83に装着された後、更にケーブル13の基端側から挿入方向の外力が加わると、皮剥きされていない外径の大きい絶縁体17により軸方向の圧縮力が加わり、変形(座屈)する場合がある。
【0053】
そこで、本実施形態の電磁シールドコネクタ11は、インナ端子39がインナ端子収容室83に装着完了すると同時に、インナハウジング41の開口後端面101に、ケーブル13における絶縁体17の先端面103が、当接するように寸法設定されている。このため、インナ端子39がインナ端子収容室83に装着された後、更にケーブル13の基端側から挿入方向の外力が加えられても、この挿入方向の外力が絶縁体17の先端面103からインナハウジング41の開口後端面101に加えられ、絶縁体17の先端面103とインナ端子39との間における芯線15の撓み変形しやすい部分には作用しなくなる。
【0054】
そして、本実施形態の電磁シールドコネクタ11では、ケーブル13の端末における絶縁体17の先端面103がインナハウジング41の開口後端面101に当接した状態で、加締め部材61の編組加締め片79が編組19の上からシールドスリーブ59の編組覆われ部75に加締められる。
【0055】
シールドアッセンブリ27は、このようにケーブル13の端末に接続されたインナ端子39と絶縁体17の先端面103との間における芯線15の撓み変形しやすい部分を直線状に維持した状態で、電磁シールドコネクタ11を組み立てることができる。即ち、本実施形態の電磁シールドコネクタ11は、従来構造のような芯線変形部が生じにくくなる。
【0056】
従って、芯線15とシールドスリーブ59の内周面との距離が周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止(抑制)できる。
【0057】
また、本実施形態の電磁シールドコネクタ11では、内周側にシールドスリーブ59が挿入された編組19は、その上から加締め部材61の編組加締め片79が加締め付けられる。この際、編組加締め片79は、編組19の下に位置するシールドスリーブ59を変形させない程度の加締め力で、シールドスリーブ59の外形状に沿う円筒状に塑性変形されて加締め付けられる。
【0058】
即ち、シールドスリーブ59、編組19および編組加締め片79は、同心円状に配置されて組み付けられる。そして、加締め前の編組加締め片79の底部93に塗布されたはんだペースト95は、リフロー処理時に溶融された後、自然冷却されて固化する。はんだペースト95は、溶融することにより一部が編組19の編み組み(目)を通過してシールドスリーブ59の内周面に達する。はんだペースト95は、固化することによりはんだ91となり、所定の強度でシールドスリーブ59、編組19および編組加締め片79を一体的に接合(接合物質であるはんだを溶融させて母材を接合する液相接合)する。
【0059】
このように、本実施形態の電磁シールドコネクタ11では、固化したはんだ91が所定強度でシールドスリーブ59の編組覆われ部75、編組19および編組加締め片79を一体的に接合する。そこで、電磁シールドコネクタ11は、編組加締め片79を加締める際、円筒状のシールドスリーブ59に変形が生じる程の大きな加締め力を加えて接続強度及び電気接続信頼性を確保する必要がなくなる。
【0060】
その結果、本実施形態の電磁シールドコネクタ11では、シールドスリーブ59に変形がなく、編組覆われ部75が円筒状となり、編組加締め部105において、シールドスリーブ59の内周面(編組覆われ部75)と芯線15との距離が周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止できる。
【0061】
従って、本実施形態に係る電磁シールドコネクタ11によれば、ケーブル13の芯線15に接続されてインナハウジング41に装着されたインナ端子39と、ケーブル13から導出された絶縁体17の先端面103との間における芯線15の変形が生じにくくなる。
【0062】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
ここで、上述した本発明に係る電磁シールドコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 芯線(15)を覆う絶縁体(17)の外周が編組(19)により覆われたケーブル(13)の前記芯線(15)に接続されるインナ端子(39)と、
インナ端子収容室(83)に前記インナ端子(39)を収容するインナハウジング(41)と、
前記インナハウジング(41)の外周を覆うシールド本体(57)から延出して前記絶縁体(17)と前記編組(19)との間に挿入される筒状のシールドスリーブ(59)と、
編組加締め片(79)が前記編組(19)の上から前記シールドスリーブ(59)の外形状に沿うように変形させて加締められた加締め部材(61)と、を備え、
前記インナ端子(39)が挿入される前記インナハウジング(41)の開口後端面(101)に、前記芯線(15)を導出させた前記絶縁体(17)の先端面(103)が当接していることを特徴とする電磁シールドコネクタ(11)。
[2] 前記シールドスリーブ(59)と前記編組(19)と前記編組加締め片(79)との間で溶融固化されたはんだ(91)が、前記シールドスリーブ(59)と前記編組(19)と前記編組加締め片(79)とを接合することを特徴とする上記[1]に記載の電磁シールドコネクタ(11)。
【符号の説明】
【0064】
11…電磁シールドコネクタ
13…ケーブル
15…芯線
17…絶縁体
19…編組
39…インナ端子
41…インナハウジング
57…シールド本体
59…シールドスリーブ
61…加締め部材
79…編組加締め片
83…インナ端子収容室
91…はんだ
101…開口後端面
103…先端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9