(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】複数チャンバの蓋装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021123485
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2019020855の分割
【原出願日】2014-03-14
【審査請求日】2021-08-26
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514273055
【氏名又は名称】セフェィド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン、 ポール
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/052671(WO,A1)
【文献】特表2005-526977(JP,A)
【文献】特表2005-526522(JP,A)
【文献】特表2003-500674(JP,A)
【文献】特表2009-523102(JP,A)
【文献】特表2005-501698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料容器
(200)の頂部を密封する蓋装置
(300)であって、前記蓋装置
(300)は、
主開口
(308)と、前記主開口
(308)の周りに複数の開口
(330)を有し、ヒンジ接続端
(305)とスナップ嵌合端
(312)を含む上蓋
(302)と、
上側部分
(320)と下側部分
(338)を備え、前記上蓋
(302)にヒンジ接続された底キャップ
(304)であって、前記上側部分
(320)は複数の開口
(342)を備え、前記複数の開口
(342)は該複数の開口を取り囲み、該上側部分
(320)から突出する
台部(310)を備え、前記複数の開口
(342)のそれぞれは貫通通路を画定して複数の通路
(342)に相当し、
前記下側部分
(338)は、
下側主面
(150)と、
前記下側主面
(150)から下方向に延在する最外端
(352a)と、
前記下側部分
(338)から前記最外端(352a)に沿って下方向に延在して前記液体試料容器(200)を密封する、連続外部リッジ
(156)と、
を含む、蓋装置
(300)。
【請求項2】
前記連続外部リッジ
(156)は連続外部溶接リッジであり、複数チャンバを備える液体試料容器
(200)の連続外部上端に超音波溶接される、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項3】
前記底キャップ
(304)に接続される、複数チャンバを備える液体試料容器
(200)を更に備え、前記液体試料容器
(200)の連続外部上端はガスケットまたは接着剤で前記底キャップ
(304)の前記最外端
(352a)に密封取付けされる、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項4】
開放配置において前記上蓋
(302)は前記底キャップ
(304)からヒンジ接続されて開かれ、閉鎖配置において、前記上蓋
(302)は前記底キャップ
(304)と係合し、前記閉鎖配置において、前記上蓋
(302)の前記スナップ嵌合端
(312)は前記底キャップ
(304)の前記下側部分
(338)の前記最外端
(352a)のスナップ部
(316)と係合する、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項5】
さらに内側リッジパターン
(158)を備え、前記内側リッジパターン
(158)は前記下側主面
(150)から延び、前記下側主面
(150)の前記複数の通路
(342)に隣接して延びるように形成される、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項6】
前記内側リッジパターン(158)は、複数チャンバを備える液体試料容器(200)の対応する端に超音波溶接される、溶接
リッジを備える、請求項5に記載の蓋装置(300)。
【請求項7】
前記底キャップ
(304)に接続された複数チャンバを備える液体試料容器
(200)をさらに備え、前記複数チャンバを備える液体試料容器
(200)の対応する端は、前記連続外部リッジ
(156)と前記内側リッジパターン
(158)とに溶接されて、前記複数チャンバを備える液体試料容器
(200)のチャンバが、前記液体試料容器
(200)と前記底キャップ
(304)との間の接続部において相互に流体的に密封される、請求項5記載の蓋装置
(300)。
【請求項8】
前記連続外部リッジ
(156)と前記内側リッジパターン
(158)はガスケットまたは接着剤で、前記複数チャンバを備える液体試料容器
(200)の対応する端に密封取付けされる、請求項7に記載の蓋装置(300)。
【請求項9】
前記上蓋
(302)の主開口
(308)は円形の開口である、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項10】
前記上蓋
(302)は、前記ヒンジ接続端
(305)と前記スナップ嵌合端(312)との間に延在する、第1の側部
(152b)と第2の側部
(152b)を備えている、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項11】
前記上蓋
(302)の前記ヒンジ接続端
(305)は、それぞれが前記第1の側部
(152b)及び第2の側部
(152b)から横方向に変位している、第1のヒンジと第2のヒンジを備えている、請求項10に記載の蓋装置
(300)。
【請求項12】
前記スナップ嵌合端
(312)は、前記上蓋
(302)の曲線部分から変位して離れている、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項13】
前記上蓋
(302)は、上蓋最上面から下方向に延在する円筒壁
(324)を備え、前記円筒壁
(324)が前記主開口
(308)を画定する、
請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項14】
前記上蓋
(302)は前記上蓋最上面に対向する上蓋底面を備え、前記円筒壁
(324)は前記上蓋底面を越えて延在する、
請求項13に記載の蓋装置
(300)。
【請求項15】
前記上蓋
(302)は、前記上蓋底面から延在する複数の円筒壁を含む、
請求項14に記載の蓋装置
(300)。
【請求項16】
前記底キャップ
(304)はさらに、前記複数の開口
(342)に囲まれた中央開口
(343)を備えている、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項17】
前記複数の開口
(342)はそれぞれ円形である、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項18】
前記底キャップ
(304)の前記上側部分
(320)は、前記複数の通路
(342)とは別の少なくとも1つの通路
(344)を含み、前記少なくとも1つの通路
(344)は前記複数の通路
(342)それぞれよりも大きい、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項19】
前記底キャップ
(304)の前記最外端
(352a)は端部位置合わせ部
(154a)を備える、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項20】
更に、前記底キャップ
(304)の複数の通路の各開口
(342)に対する分離した空洞を形成する複数の壁
(158)を有し、前記複数の壁
(158)は前記底キャップの下側主面
(150)から延びる、請求項1に記載の蓋装置(300)。
【請求項21】
分離された空洞を画定する前記複数の壁
(158)は、更に複数の楔形空洞を形成する、
請求項20に記載の蓋装置
(300)。
【請求項22】
前記底キャップ
(304)は、前記複数の開口
(342)とは別の穴
(340)を備え、前記穴
(340)は鍵穴形状である、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項23】
前記蓋装置
(300)は、プラスチックまたは金属で形成される、請求項1に記載の蓋装置
(300)。
【請求項24】
液体試料容器
(200)の頂部を密封する蓋装置(400)であって、前記蓋装置(400)は、
複数の開口(409)を有し、ヒンジ接続端(407)とスナップ嵌合端(408)を含む上蓋(401)と、
前記上蓋(401)にヒンジ接続された底キャップ(403)であって、上側部分(410)と下側部分(411)を備え、前記上側部分(410)は、複数の
開口(435)と、縁部(424, 402)を備え、前記縁部(424, 402)は前記上側部分(401)の下方面から上方へ延び、前記開口(435)は上蓋(401)の対応する開口(409)と整列し、
前記底キャップ(403)の前記下側部分(411)は、
下側主面(406)と、
前記下側主面(406)から下方向に延在する最外端(412)と、
前記下側部分(411)から前記最外端(412)に沿って下方向に延在する、連続外部リッジ(414)と、
前記下側主面(406)から延在する内部リッジパターン(415)であって、前記下側主面(406)から延びるどの壁面とも同じ空間を占めない、内部リッジパターン(415)と、を備え、
開放配置においては、前記上蓋(401)は前記底キャップ(403)からはヒンジ接続されて開かれており、閉鎖配置においては、前記上蓋(401)は前記底キャップ(403)と係合しており、前記閉鎖配置では、前記上蓋(401)の前記スナップ嵌合端(408)が前記底キャップ(403)の前記下側部分(411)の最外端(412)のスナップ部(416)に係合する、蓋装置(400)。
【請求項25】
前記連続外部リッジ(414)と前記内部リッジパターン(415)はそれぞれ、複数チャンバを備える液体試料装置(200)の対応する端に超音波溶接される、溶接
リッジを備える、請求項24に記載の蓋装置(400)。
【請求項26】
前記連続外部リッジ
(414)と前記内部リッジパターン
(415)は、複数チャンバを備える液体試料装置
(200)の対応する端に、ガスケットまたは接着剤で密封取付けされる、
請求項24に記載の蓋装置
(400)。
【請求項27】
前記蓋装置
(400)は、プラスチックまたは金属で形成される、
請求項24に記載の蓋装置
(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/791,696号の利益を主張し、参照によりこれを本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
試料テストを行う業界においては、ヒンジ接続された蓋のある複数チャンバ容器が使用される。これらの蓋は、典型的には容器の各チャンバに1つの、複数の充填ポートを持つことがある。こうすることで、特に容器の各チャンバへの同時充填が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような蓋は、ポリマー材料で成形され、後から例えば超音波溶接によって容器に固定されることが多い。そのような複数チャンバの蓋装置に対する特有の物理特性とユーザ要求のために、製造及び使用の両面において問題点を生じていた。蓋装置を容器に溶接するときに、溶接部が流体密であり、流体容器のチャンバは、流体容器と蓋装置との間の接続部で相互に流体的に密封されることが求められる。また、蓋装置内の複数のサブ容器は相互に流体的に隔離できることも求められる。本発明はこれら並びにその他の難点の解決を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態では、主開口を持ち、ヒンジ接続端とスナップ嵌合端を含む上蓋と、上側部分と下側部分を備え、上蓋にヒンジ接続された底キャップとが、装置に備えられる。上側部分は上側部分の下面から上に向かって延びる平坦台部を備え、平坦台部は複数の開口を含んでもよい。底キャップの下側部分は、下側主面と、下側主面から下方向に延びる最外端とを備えていてもよい。複数の位置合わせ部が、下側主面から下方向に延びていてもよい。連続外部溶接リッジが、最外端と位置合わせ部の間で、下側部分から下方向に延びていてもよい。複数の壁面が分離された空洞を画定して、平坦台部の複数の通路の各通路を構成していてもよい。複数の壁面が平坦台部の底面から延びていてもよい。内部溶接パターンが、壁面の端部と下側主面から延びていてもよい。内部溶接パターンは、複数の壁面によって画定される各空洞が内部溶接パターンで囲まれるような配置となっていてもよい。開放配置においては、上蓋が底キャップからヒンジで開かれ、閉鎖配置においては、上蓋が底キャップと係合する。閉鎖配置においては、上蓋のスナップ嵌合端が底キャップの下側部分最外端のスナップ部と係合し、平坦台部が上蓋の主開口の中に嵌り込む。
【0005】
いくつかの実施形態では、複数チャンバ容器を底キャップに接続することができる。複数チャンバ容器の対応する端部が、外部溶接リッジと内部溶接パターンとに溶接されて、複数チャンバ容器と底キャップとの間の接続部において複数チャンバ容器の各チャンバは流体的に相互に密封される。
【0006】
いくつかの実施形態では、上蓋の主開口は、円形の開口を備えている。
【0007】
いくつかの実施形態では、上蓋は、ヒンジ接続端とスナップ嵌合端との間に延びる、第1の側部と第2の側部を備えている。
【0008】
いくつかの実施形態では、上蓋のヒンジ接続端は、それぞれが第1の側部及び第2の側部から横方向に変位している、第1のヒンジと第2のヒンジを備えている。
【0009】
いくつかの実施形態では、上蓋のヒンジ接続端は、ヒンジを1つだけ備えている。
【0010】
いくつかの実施形態では、スナップ嵌合端は、曲線部分から変位して離れた直線スナップ部を備えている。
【0011】
いくつかの実施形態では、曲線部分はくり抜かれている。
【0012】
いくつかの実施形態では、上蓋は、閉鎖配置では底キャップの平坦台部に平行となる、上蓋最上面を備えている。
【0013】
いくつかの実施形態では、上蓋は、上蓋最上面から下方向に延びる円筒壁を備え、円筒壁が主開口を画定している。
【0014】
いくつかの実施形態では、上蓋は上蓋最上面に対向する上蓋底面を備え、円筒壁は上蓋底面を越えて延びている。
【0015】
いくつかの実施形態では、上蓋は、上蓋底面から延びる複数の円筒壁を含んでいる。
【0016】
いくつかの実施形態では、平坦台部の複数の通路は、複数の円形開口に囲まれた中央開口を備えている。
【0017】
いくつかの実施形態では、平坦台部は、複数のへこみを有する円形端部を備えている。
【0018】
いくつかの実施形態では、平坦台部は、複数の通路の1つの通路と複数のへこみの内の1つのへこみとの間に延びる、少なくとも1つの溝を備えている。
【0019】
いくつかの実施形態では、上蓋の上面にフィルムシールが被覆されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、底キャップの上側部分下面は、少なくとも1つの通路を含んでいる。
【0021】
いくつかの実施形態では、底キャップの上側部分下面には通路がない。
【0022】
いくつかの実施形態では、底キャップの下側部分にある複数の位置合わせ部は、最外端から離れる方向に延びる曲線壁を備えている。
【0023】
いくつかの実施形態では、分離した空洞を画定している底キャップ下側部分にある複数の壁が、中央円筒形空洞と、中央円筒形空洞から延びる複数の花弁型空洞を形成する。
【0024】
いくつかの実施形態では、分離した空洞を画定している複数の壁が、複数の楔形空洞を更に形成する。
【0025】
いくつかの実施形態では、分離された空洞を画定する複数の壁は、均一の壁厚となっている。
【0026】
いくつかの実施形態では、内部溶接パターン(すなわち、リッジまたはエネルギディレクタ)は、三角形断面である。
【0027】
いくつかの実施形態では、連続外部溶接パターン(すなわち、リッジまたはエネルギディレクタ)は、三角形断面である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の開口を有し、ヒンジ接続端とスナップ嵌合端を含む上蓋を持つ装置が提供される。底キャップは上蓋にヒンジ接続することができる。底キャップは、上側部分と下側部分を備えることができる。上側部分は上側部分の下面から上に向かって延びる複数の煙突状突起を備えることができる。各煙突状突起は通路を含み、各煙突状突起は上蓋の対応する開口と嵌合することができる。底キャップの前記下側部分は、下側主面を備えることができる。最外端は、下側主面から下方向に延びることができる。複数の最外端位置合わせ部が、下側主面から下方向に延びることができる。位置合わせ部は、最外端に近接して存在することができる。連続外部溶接リッジが、最外端と最外端位置合わせ部の間で、下側部分から下方向に延びることができる。内部溶接パターンは、壁の端部から、また下側主面から延びて、内部溶接パターンが下側主面から延びるどの壁面とも同じ空間を占めないようにすることができる。開放配置においては、上蓋が底キャップからヒンジで開かれ、閉鎖配置においては、上蓋が前記底キャップと係合する。閉鎖配置においては、上蓋のスナップ嵌合端は底キャップ下側部分最外端のスナップ部に係合する。
【0029】
本発明の別の態様では、本明細書に開示した装置を含む流体容器で反応または分析を遂行するための方法が含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、この方法には、細胞又は微生物の溶解が含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、この方法には、対象の検体を単離または精製するためのサンプルを流体カートリッジ内に準備することが含まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、この方法には対象の検体を検出することが含まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、対象の検体は、細胞、タンパク質、及び核酸から成る群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、この方法は、酵素または結合成分を利用することを含む。
【0035】
本発明の別の態様では、流体容器に液体試薬を充填する方法が含まれる。ここで、その流体容器には本明細書に開示の蓋が嵌合される。
【0036】
いくつかの実施形態では、この方法には、流体カートリッジの一つ又は複数のチャンバに試薬を充填することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】本発明のある実施形態による蓋装置の斜視図である。
【
図2】本発明のある実施形態による蓋装置の組立工程を示す図である。
【
図3】本発明のある実施形態による蓋装置の斜視図である。
【
図4A】本発明のある実施形態による蓋装置の別の斜視図である。
【
図4B】本発明のある実施形態による蓋装置の別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1Aは装置100の斜視図である。装置100は、ヒンジ(この図には示されていない)によって底キャップ104に接続された上蓋102を含んでいる。上蓋102には主開口108を画定する上面106がある。主開口は円形または三日月形を持つように示されている。上面106には、他の開口、通路、穴が画定されていてもよい。
【0039】
上蓋102には、底キャップ104の一部の上に“スナップ留め”される、張り出し形状を画定する部分を持ったスナップ嵌合端112が含まれる。スナップ嵌合端112は、球状端部114に連なる曲線状の輪郭をしており、それが非平行な側面116につながっている。この非平行な側面がヒンジ接続端118につながり、そこは直線的な輪郭となっている。平坦台部120は底キャップ104から上に延びている。上蓋102を閉じると、上面106が平坦台部120と同じ空間に広がる。
【0040】
図1Bは開放配置で広げられた、上蓋102と底キャップ104を示している。ここで、上蓋102はヒンジ105で底キャップ104に接続されて開かれている。上蓋102の下向きの面122が表示されており、そこから主開口108の主円筒壁124が延びている。内側の壁面126が、下向きの面122の外周から延びて境界となっている。下端面128が内側壁面の頂点にある。内側壁面126の境界の内部に複数の円筒壁130があり、流体容器のキャップとしての役目をしている。
【0041】
スナップ嵌合端112は、下向きの面122から内側側面126と共に(それより長く)下方向へ延びている。外側の曲面壁132と内側の曲面壁134とで、スナップ嵌合端の三日月形状を画定する。外側の曲面壁132と内側の曲面壁134の間に形成された空洞136が、全体を一定の壁厚に保つようにしている。内側の曲面壁134の曲線は、中央にある屈曲タブ136によって途切れている。屈曲タブ136は、対応する底キャップ104の直線部分との界面となる直線端部を有している。曲線状のタブ端部を利用する従来デバイスでは、十分なスナップ嵌合を満足できないことがわかっている。
【0042】
平坦台部120は底キャップ104の下面138から延びている。下面138は充填穴140などの一つ又は複数の開口を含むことができ、これらは鍵穴のような形状とすることができる。平坦台部120は複数の通路142を含んでいる。通路は、中央通路143の周りに軌道のような形で配置されている。ただし他の配置も可能である。
【0043】
平坦台部120の面取りした端部146と通路の1つとの間に溝144が形成されている。溝144は結合された通路の通気口となっている。溝144は1つしか図示されていないが、各通路142が溝を持つこともできる。
【0044】
平坦台部120の面取りされた端部146の周りには複数のへこみ148が図示されている。へこみ148は、平坦台部120の下の壁面が交差する点での壁厚を一定に維持する助けとなっている。これがない場合には、そのような交差部では材料が相対的に大きな結節となり易い。
【0045】
図1Cは底キャップ104の下側部分の底面図を示しており、下側主面150が含まれている。最外端152aは、下側主面150aから下向きに延び、外壁152bを形成している。外壁152bは底キャップ104の外周の周りにほぼ連続してあり、ヒンジ(この図には示さず)に隣接する2か所で途切れている。端部位置合わせ部154aが、下側主面150の両側沿いに、外壁152bに近接して配置されている。
【0046】
端部位置合わせ部154aは、複数チャンバ流体容器の壁面を底キャップ104に位置合わせするための控え壁を提供する。このキャップの使用に適する典型的な流体容器が
図2に示されている。位置合わせ壁154bは端部位置合わせ部154aから、場合によってはその中間に延びていて、流体容器の壁面に対して更なる係合点を提供する。隆起した溶接リッジ156は、底キャップ104の外周の周りで、端部位置合わせ部154aと外壁152bとの間に連続的に連なっている。適切に配置されると、端部位置合わせ部154aと位置合わせ壁154bは、底キャップ104が流体容器に対して余分な回転をすることを防止して、底キャップ104の隆起した溶接リッジ156を底部容器の溶接可能部(例えば壁の端部)に位置合わせする。
【0047】
複数の壁158が下側主面150の中央部から延びている。壁は、中央円筒の周りに、花弁状の配置模様となっている。ここでは、壁158は6つの花弁になっている。隆起した溶接パターン160が壁158の上端にある。隆起した溶接パターン160は溶接リッジ156につながっている。こうして、花弁の外側に4つの流体ゾーンが形成される。流体容器と底キャップ104が、隆起した溶接パターン160と溶接リッジ156を介して溶接されると、底部容器内のサブ容器は(少なくとも流体容器と底キャップ104の間の界面において)相互に流体的に隔離される。
【0048】
図1Dは三角形断面をした、隆起した溶接パターン160の拡大図である。この形状は、隆起した溶接パターン160(及び同様に同じような形状をした隆起した溶接リッジ156)を容器に溶接するために、装置100に超音波エネルギを印加する際の“エネルギディレクタ”として作用する。装置100は、いずれも三角形である、隆起した溶接パターン160と隆起した溶接リッジ156を除いて、均一な壁厚となっている。こうしてエネルギは、容器の端部に接触する三角形の先端に優先的に向けられて、三角形の隆起した溶接パターン160と隆起した溶接リッジ156が容器の壁に対して溶融される。
【0049】
図2は、流体容器200に関連する蓋装置100を示している。容器200には複数のチャンバがあり、これらは内部弁アセンブリの位置によって、流体的に連結されたり、連結されなかったりすることが可能である。チャンバは容器200の上端に向かって延びる壁によって画定される。蓋装置100と流体容器200の間に溶融界面が形成されて、隆起した溶接パターン160と隆起した溶接リッジ156の間の溶接界面と、容器200のチャンバとによって、チャンバが密閉分離される。
【0050】
この蓋装置100は、蓋装置を容器200の上に着座させた状態で、平坦台部120に接する超音波溶接ホーンによって流体容器に溶接することができる。溶接ホーン210は通常、平坦台部に対してその周りに接触するような形状となっている金属円筒を備えている。溶接ホーン210は、溶接ホーン210にエネルギを供給する大きな溶接装置(図示せず)の一部である。Hermann Ultrasonics社(60103イリノイ州バートレット)や、Emerson Industrial Automation社の一部門であるBranson Ultrasonics社(55344ミネソタ州Eden Prarie)から入手可能な市販の超音波溶接装置がこのプロセスに使用可能である。いくつかの実施形態では、蓋装置が当業者には周知のガスケットまたは接着剤を利用して、流体容器に固定される。
【0051】
蓋装置100と容器は、それに限るものではないが金属、セラミックス、及び/又はプラスチックなどの、任意の好適な材料から製造することができる。好適なプラスチックとしては、ポリプロピレンなどの熱可塑性プラスチックがある。これは生物学試料を扱うのには好適な材料であるが、最適な溶接特性を持っていない。蓋装置100は、底キャップ104全体に亘りほぼ均一な壁厚とすることでこの点を克服している。均一な壁厚とすることで、従来設計品の350-500Jに対して、比較的低い出力の150Jで装置100を容器に溶接することが可能である。テストでは、低出力設定にも拘らず良好な浸透深さ(13~29/1000)が得られることが示された。他の好適なポリマーとしては、これに限るものではないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ABS、ポリカーボネート、などがある。
【0052】
いくつかの実施形態では、蓋装置100を流体容器200に溶接するために、底キャップ104を最初に流体容器200に接触させる。端部位置合わせ部154aと位置合わせ壁154bが、流体容器200に対して底キャップ104が余分な回転をしないようにして、底キャップ104の隆起した溶接パターン160と隆起した溶接リッジ156を流体容器200の端部に位置合わせする。蓋装置100が適切に配置された後、溶接ホーン210を下げて平坦台部120に接触させる。そうして、150Jのエネルギを数秒間溶接ホーンに印加すると、溶接された蓋アセンブリが出来上がる。
【0053】
隆起した溶接パターン160と溶接リッジ156の三角形の形状によって、平坦台部120付近の上面から、隆起した接パターン160と溶接リッジ156へエネルギが優先的に指向される。その結果、隆起した溶接パターン160と溶接リッジ156が流体容器200に溶融する。得られた溶接部は流体密であり、流体容器200のチャンバは、流体容器200と底キャップ104との間の接続部で(加圧条件下で)相互に流体的に密封される。
【0054】
図3は本発明の代替実施形態による蓋装置300を示す。蓋装置300は蓋装置100と実質的に同じであるが、蓋装置100の平坦台部120が三日月形状であった代わりに、この蓋装置300は円形をした平坦台部310を含んでいる。ただし、正方形や六角形などのその他の形状も利用することが可能である。実際に、本発明の実施形態は円形と三日月形の平坦台部に限定されないことを理解されたい。
【0055】
図4Aと
図4Bは本発明の代替実施形態による蓋装置400を示す。蓋装置400は蓋装置100と実質的に同じである。ただし、蓋装置400には平坦台部120がなく、その代わりに、上蓋の開口部404の中に突き出た複数の煙突状突起(通路付き)402がある。したがって、蓋装置400は実質的に均一な底面406を持っており、そのため図示した内部溶接パターンは、底面406から延びるいずれの壁面とも同じ空間を占めるようになっていない。
【0056】
本明細書で開示した流体容器装置のチャンバは、種々の目的に対する一つ又は複数の試薬を入れることができる。これらの試薬は様々な形態であってよい。試薬の形態の非制限的な例としては、溶液、乾燥粉末、凍結乾燥粒子がある。これらの試薬は、これに限定するものではないが、化学反応及び/又は酵素反応、試料作製、検出の少なくとも1つを含む様々な目的を意図したものであってよい。非制限的な目的の例としては、細胞や微生物の溶解、対象とする検体(例えば特定の細胞集団、核酸、またはタンパク質)の精製または分離、核酸やタンパク質の分解または修飾、核酸の増幅、及び/又は対象とする検体の検出、がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、装置のチャンバにある試薬は、細胞膜の崩壊を起こしてその後の処理のために細胞の核酸とタンパク質を放出する、溶解試薬(洗剤など)であってよい。溶解試薬は、真核細胞、原核細胞、植物細胞、ウイルス、胞子、などの特定の有機体を効果的に溶解するためにそれぞれが違う配合となっている。
【0058】
いくつかの実施形態における試薬は、所定の分子(例えば、細胞表面抗原、特異的タンパク質、または所期の検出標的である特定の核酸配列、など)に特異的に結合する抗体や核酸や他の部分であってもよい。また、その分子を担持する関連分子や細胞を、分離、精製、または検出する目的で使用される。任意選択では、所望の結合親和性を持つ試薬がチャンバ内部の固体基板上に固定される。特定条件下で抗体または他の試薬部分が溶液中に安定して保管されることもあるが、より安定化するために凍結乾燥されることが多い。
【0059】
いくつかの実施形態では、試薬は、更なる分析を行えるようにするための、標的分子(例えばタンパク質や核酸)を消化可能な酵素であってもよい。既知のプロテアーゼとヌクレアーゼの多くは、市販品を入手可能であり、本発明の装置での使用に選択可能である。他の場合には、試薬は核酸増幅反応用の酵素であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのDNAポリメラーゼや、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のための逆転写酵素であってよい。抗体のように酵素は溶液中に保存されてもよいが、安定性の理由から、本発明の装置内に凍結乾燥または乾燥された形で保存されることも多い。典型的には酵素と共に、反応緩衝成分、遊離デオキシリボヌクレオチド、開始剤などの酵素反応に必要な他の成分もまた同一または別のチャンバ内にあって、所望の反応が必要な時に迅速に構成できるようになっている。
【0060】
いくつかの実施形態では、例えば特定の標的検体を検出すると、検知可能な信号(例えば光学信号)を生成可能であるような、化学反応に必要な成分が試薬に含まれている。適切な反応緩衝成分のほかに、検知可能な信号を発生させることができる少なくとも1つの薬品が一般的に含まれている。
【0061】
上記の説明には多くの特殊性が含まれているが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、現状における好適な実施形態のいくつかを単に説明するものとして考えるべきである。本発明に対する多くの可能な変形及び修正が、本開示を検討することにより当業者には明らかとなるであろう。