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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/10 20230101AFI20240220BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240220BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240220BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C08G59/20
C08G65/26
C08L63/00 C
H05B33/04
H05B33/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021516005
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016313
(87)【国際公開番号】W WO2020218065
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2019082053
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼崎 一平
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】深尾 健司
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/111283(WO,A1)
【文献】特開2014-225380(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194410(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111525(WO,A1)
【文献】特開2011-122076(JP,A)
【文献】特開2017-115074(JP,A)
【文献】特開2017-115072(JP,A)
【文献】特開2017-115073(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199092(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199091(WO,A1)
【文献】特開2008-266308(JP,A)
【文献】特開2007-137926(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067046(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/196669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
H05B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有するカチオン重合性化合物と、
ビニルオキシ基を有するビニルエーテル系化合物と、
光カチオン重合開始剤と、
リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選択される一種又は二種以上の硬化遅延剤と、
を含有し、
前記ビニルエーテル系化合物の含有量が、前記カチオン重合性化合物及び前記ビニルエーテル系化合物の合計100質量部に対して50質量部より大きく95質量部以下である、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項2】
前記ビニルエーテル系化合物の25℃における粘度が、前記カチオン重合性化合物の25℃における粘度より低い、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記光カチオン重合開始剤の含有量が、前記カチオン重合性化合物及び前記ビニルエーテル系化合物の合計100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項4】
E型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した場合の粘度が2~200cpsである、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項5】
前記ビニルエーテル系化合物が、前記ビニルオキシ基を2個有し、環式基を更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤の硬化体。
【請求項7】
厚さ10μm当たりの波長380~800nmにおける全光線透過率が80%以上である、請求項6に記載の硬化体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
第一の部材に、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を付着させる付着工程と、
付着させた前記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に光を照射する照射工程と、
光照射された前記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を介して、前記第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、
を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。
【0003】
有機EL表示素子は、発光層、電極等が外気に曝されるとその発光特性が劣化してしまうため、外気から遮断するための封止技術が不可欠となっており、封止技術の一つとして光硬化性の封止剤が知られている(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-357973号公報
【文献】特許第5919574号公報
【文献】特許第4800247号公報
【文献】特開2016-058273号公報
【文献】特許第4384509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光硬化性の封止剤を部材に塗布する場合、封止剤が低粘度であると作業性が向上する。このことから、作業性の向上のため、例えば封止剤に有機溶剤を添加することで粘度を調整する方法が採られてきたが、残存する有機溶剤がアウトガスの発生を増加させる等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、粘度が低く、且つ、硬化後の信頼性に優れる、組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記組成物を含む有機EL表示素子用封止剤、当該有機EL表示素子用封止剤の硬化体、当該硬化体を含む封止材、当該封止材を含む有機EL表示装置、及び当該有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、カチオン開環重合性基を有するカチオン重合性化合物と、ビニルオキシ基を有するビニルエーテル系化合物と、光カチオン重合開始剤と、を含有し、上記ビニルエーテル系化合物の含有量が、上記カチオン重合性化合物及び前記ビニルエーテル系化合物の合計100質量部に対して50質量部より大きく95質量部以下である、組成物に関する。
【0008】
上記組成物は、ビニルオキシ基を有するビニルエーテル系化合物とカチオン重合性化合物とを組み合わせて、且つ、ビニルエーテル系化合物の含有量を一定量以上としている。この特定の組成によって、上記組成物は、低い粘度と、硬化後の優れた防湿性及び透明性とを両立することができる。このことから、上記組成物を含む有機エレクトロルミネッセンス表示用封止剤は、部材に均一に塗布することが容易となり、作業性に優れる。また、上記組成物は硬化後の防湿性及び透明性に優れるため、上記組成物を有機エレクトロルミネッセンス表示用封止剤として用いることで、信頼性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示装置が実現できる。
【0009】
一態様において、上記ビニルエーテル系化合物の25℃における粘度は、上記カチオン重合性化合物の25℃における粘度より低くてよい。
【0010】
一態様において、上記カチオン開環重合性基は、エポキシ基及びオキセタン基からなる群より選択されてよい。
【0011】
一態様において、上記光カチオン重合開始剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物及び上記ビニルエーテル系化合物の合計100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下であってよい。
【0012】
一態様に係る組成物は、硬化遅延剤を更に含有するものであってよい。
【0013】
一態様において、E型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した場合の粘度は2~200cpsであってよい。
【0014】
一態様において、上記ビニルエーテル系化合物は、上記ビニルオキシ基を2個有し、環式基を更に有していてよい。
【0015】
本発明の他の一側面は、上述の組成物を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に関する。
【0016】
本発明の更に他の一側面は、上述の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤の硬化体に関する。
【0017】
一態様において、厚さ10μm当たりの波長380~800nmにおける全光線透過率は80%以上であってよい。
【0018】
本発明の更に他の一側面は、上述の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材に関する。
【0019】
本発明の更に他の一側面は、有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、上述の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【0020】
本発明の更に他の一側面は、第一の部材に、上述の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を付着させる付着工程と、付着させた上記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された上記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を介して、上記第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粘度が低く、且つ、硬化後の信頼性に優れる、組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物を含む有機EL表示素子用封止剤、当該有機EL表示素子用封止剤の硬化体、当該硬化体を含む封止材、当該封止材を含む有機EL表示装置、及び当該有機EL表示装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係る組成物は、樹脂組成物として使用できる。本実施形態に係る樹脂組成物は、カチオン重合性化合物((A)成分)と、ビニルエーテル系化合物((B)成分)と、光カチオン重合開始剤((C)成分)と、を含有する。
【0024】
本実施形態において、カチオン重合性化合物((A)成分)はカチオン開環重合性基を有する。
【0025】
本実施形態において、ビニルエーテル系化合物((B)成分)は、ビニルオキシ基を有する。また、ビニルエーテル系化合物の含有量は、カチオン重合性化合物及びビニルエーテル系化合物の合計100質量部に対して50質量部より大きく95質量部以下である。
【0026】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ビニルオキシ基を有するビニルエーテル系化合物とカチオン重合性化合物とを組み合わせて、且つ、ビニルエーテル系化合物の含有量を一定量以上としている。この特定の組成によって、上記樹脂組成物は、低い粘度と、硬化後の優れた防湿性及び透明性とを両立することができる。このため、本実施形態に係る樹脂組成物を含む有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子用封止剤(以下、単に封止剤ともいう)は、信頼性に優れた封止材を形成でき、信頼性に優れた有機EL表示装置を実現できる。
【0027】
((A)成分:カチオン重合性化合物)
(A)成分は、カチオン開環重合性を有する化合物であり、カチオン開環重合性基を有する化合物ということもできる。カチオン開環重合性基としては、環状エーテル基(例えば、エポキシ基(オキシラン環))、オキセタン基(オキセタン環)等が挙げられ、接着性及び防湿性の観点から、エポキシ基及びオキセタン基からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0028】
(A)成分は、カチオン開環重合性基を1個有する化合物であってよく、2個以上有する化合物であってもよい。(A)成分は、カチオン開環重合性基を2個以上有することが好ましく、カチオン開環重合性基を2個有することがより好ましい。
【0029】
エポキシ基を有する化合物としては、接着性及び防湿性の観点から、エポキシ基及び脂環基を有する化合物(以下、脂環式エポキシ化合物ということもある)並びにエポキシ基及び芳香族基を有する化合物(以下、芳香族エポキシ化合物ということもある)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0030】
<(A1)成分:エポキシ基を有する脂環式化合物>
(A1)成分は、エポキシ基を1個有する化合物であってよく、2個以上有する化合物であってもよい。(A1)成分は、エポキシ基を2個以上有することが好ましく、エポキシ基を2個有することがより好ましい。(A1)成分は、芳香環を有しない化合物であってよい。(A1)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
(A1)成分は、例えば、シクロアルケン環を有する化合物をエポキシ化して得られる化合物又はその誘導体であってよい。シクロアルケン環としては、例えば、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等が挙げられる。エポキシ化は、例えば酸化剤を用いて行うことができる。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸等が挙げられる。このような(A1)成分としては、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル等が挙げられる。
【0032】
(A1)成分は、例えば、エポキシ基及び芳香環を有する化合物を水素化して得られる化合物又はその誘導体であってもよい。エポキシ基及び芳香環を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。このような(A1)成分としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
(A1)成分としては、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する化合物としては、例えば、式(A1-1)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
式(A1-1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。
【0036】
Xが単結合であるとき、式(A1-1)で表される化合物は(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシルである。
【0037】
Xは連結基であることが好ましい。連結基は、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又はこれらが複数個連結した基であってよい。連結基としては、エステル結合を有する基が好ましく、エステル結合及び2価の炭化水素基を連結した基がより好ましい。
【0038】
2価の炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルカンジイル基がより好ましい。
【0039】
式(A1-1)で表される化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが特に好ましい。
【0040】
(A1)成分の分子量は、樹脂組成物の保存安定性及び硬化体の防湿性の観点から、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300未満が更に好ましく、280以下が一層好ましい。また、(A1)成分の分子量は、例えば100以上であってよい。
【0041】
(A1)成分が分子量分布を有する場合は、(A1)成分の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
・溶媒(移動相):THF
・脱気装置:ERMA社製ERC-3310
・ポンプ:日本分光社製PU-980
・流速:1.0ml/min
・オートサンプラ:東ソー社製AS-8020
・カラムオーブン:日立製作所製L-5030
・設定温度:40℃
・カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK-GELMULTIPORE HXL-M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
・検出器:RI 日立製作所製L-3350
・データ処理:SIC480データステーション
【0042】
<(A2)成分:エポキシ基を有する芳香族化合物>
芳香族エポキシ化合物は、エポキシ基を1個有する化合物であってよく、2個以上有する化合物であってもよい。芳香族エポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上有することが好ましく、エポキシ基を2個有することがより好ましい。芳香族エポキシ化合物は、脂環基を有しない化合物であってよい。芳香族エポキシ化合物は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
(A2)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及び、これらの変性物等が挙げられる。
【0044】
(A2)成分としては、ビスフェノール構造(例えば、ビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールS構造等)を有する化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0045】
(A2)成分としては、例えば、式(A2-1)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
式(A2-1)中、nは0.1~30の実数を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基を示す。R23及びR24が複数存在するとき、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、オキシアルキル基等が挙げられ、これらのうちフッ素原子が好ましい。
【0049】
21、R22、R23及びR24は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、R21、R22、R23及びR24は、全て同じ基であることが好ましい。
【0050】
(A2)成分の分子量は、硬化体の防湿性の観点から、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上が更に好ましい。また、(A2)成分の分子量は、硬化体の防湿性の観点から、5000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、450以下が最も好ましい。
【0051】
(A2)成分が分子量分布を有する場合は、(A2)成分の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0052】
オキセタン基を有する化合物としては、例えば、下記(A3)成分が挙げられる。
【0053】
<(A3)成分:オキセタン基を有する化合物>
(A3)成分は、オキセタン基を1個有する化合物であってよく、2個以上有する化合物であってもよい。(A3)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(A3)成分としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製、商品名OXT-101等)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(東亜合成(株)製、商品名OXT-121等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亜合成(株)製、商品名OXT-211等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(東亜合成(株)製、商品名OXT-221等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亜合成(株)製、商品名OXT-212等)等が挙げられる。
【0055】
(A)成分は、(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分以外の他の化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、下記(A4)成分が挙げられる。
【0056】
<(A4)成分>
(A4)成分は、カチオン開環重合性基を有する化合物であればよく、例えば、環状エーテル基を有する化合物等であってよい。(A4)成分は、カチオン開環重合性基を1個有する化合物であってよく、2個以上有することが好ましい。(A4)成分は、脂環基、芳香環及びオキセタン基を有しない化合物であってよい。(A4)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
(A4)成分のうち、環状エーテル基を有する化合物としては、エポキシ基(オキシラン環)を有する化合物等が挙げられる。(A4)成分としては、グリシジルオキシ基を有する化合物が好ましい。グリシジルオキシ基を有する化合物は、グリシジルオキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0058】
グリシジルオキシ基を有する化合物としては、例えば、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等が挙げられる。アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0059】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中、例えば5質量部以上であってよく、硬化後の耐久性が一層向上する観点からは10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中、例えば49.9質量部以下であってよく、硬化後の耐久性が一層向上する観点からは40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0060】
((B)ビニルエーテル系化合物)
(B)成分は、ビニルオキシ基を有する化合物である。(B)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
ビニルオキシ基を有する化合物は、ビニルオキシ基(CH=CH-O-)の酸素原子が炭素原子に結合したビニルエーテル基を有する化合物が好ましい。そのような化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0062】
(B)成分は、ビニルオキシ基を2個有し、環式基を更に有することが好ましい。そのような(B)成分としては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、2,2-アダマンタンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
(B)成分の含有量は、粘度を低く抑える観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、50質量部より大きいことが好ましく、51質量部以上がより好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましい。また、(B)成分の含有量は、耐久性に優れる硬化体が得られやすくなる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、95質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、75質量部以下が更に好ましい。
【0064】
(B)成分の25℃における粘度(初期粘度)は、特に限定されないが、粘度を低く抑える観点から、(A)成分の25℃における粘度より低いことが好ましい。
【0065】
((C)光カチオン重合開始剤)
(C)成分は、光によって活性化して、(A)成分のカチオン重合を開始させることができる成分であればよい。(C)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
(C)成分としては、例えば、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、LW-S1、ダブルボンド社製のチバキュア-1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP-2074等)、アレン-イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤、その他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。
【0067】
(C)成分としては、上述の効果がより顕著に得られる観点から、オニウム塩化合物が好ましい。
【0068】
(C)成分のオニウム塩化合物としては、例えば、式(C-1)で表されるオニウム塩化合物が挙げられる。
【0069】
【化3】
【0070】
式(C-1)中、Aは、VIA属~VIIA属の原子価mの元素を示し、mは1又は2を示す。pは0~3の整数を示す。Rは、Aに結合する有機基を示す。Xはオニウムの対イオンを示し、その個数は1分子当たり(p+1)個である。Dは、下記式(C-1-1)で表される2価の基を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。複数存在するXは互いに同一でも異なっていてもよい。Aが複数存在するとき、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。Dが複数存在するとき、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0071】
【化4】
【0072】
式(C-1-1)中、Eは2価の基を示し、Gは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン、又はフェニレン基(R’は、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基)を示す。aは0~5の整数を示す。a+1個のE及びa個のGはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0073】
RはAに結合している有機基であり、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、又は炭素数2~30のアルキニル基を示し、これらはアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキレンオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン基からなる群より選択される一種又は複数種で置換されていてもよい。
【0074】
Rの個数は(m+p(m-1)+1)個であり、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、2個以上のRが、直接、又は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して、元素Aを含む環構造を形成していてもよい。ここで、R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【0075】
炭素数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル基等の単環式アリール基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ベンズアントラセニル基、アントラキノリル基、フルオレニル基、ナフトキノン基、アントラキノン基等の縮合多環式アリール基等が挙げられる。
【0076】
炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基は、一種以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクダデシル基等の炭素数1~18の直鎖アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基等の炭素数1~18の分岐アルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~18のシクロアルキル基;
ヒドロキシ基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;
アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、2-メチルプロピオニル基、ヘプタノイル基、2-メチルブタノイル基、3-メチルブタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;
ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数7~11のアリールカルボニル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、オクチロキシカルボニル基、テトラデシルオキシカルボニル基、オクタデシロキシカルボニル基等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;
フェニルチオカルボニル基、ナフトキシチオカルボニル基等の炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;
アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、tert-ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、テトラデシルカルボニルオキシ基、オクタデシルカルボニルオキシ基等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアシロキシ基;
フェニルチオ基、2-メチルフェニルチオ基、3-メチルフェニルチオ基、4-メチルフェニルチオ基、2-クロロフェニルチオ基、3-クロロフェニルチオ基、4-クロロフェニルチオ基、2-ブロモフェニルチオ基、3-ブロモフェニルチオ基、4-ブロモフェニルチオ基、2-フルオロフェニルチオ基、3-フルオロフェニルチオ基、4-フルオロフェニルチオ基、2-ヒドロキシフェニルチオ基、4-ヒドロキシフェニルチオ基、2-メトキシフェニルチオ基、4-メトキシフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ基、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ基、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ基、4-(フェニルチオ)フェニルチオ基、4-ベンゾイルフェニルチオ基、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ基、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ基、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ基、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ基、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ基、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ基、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ基、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ基、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ基等の炭素数6~20のアリールチオ基;
メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、tert-ペンチルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基;
チエニル基、フラニル基、ピラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、キサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノキサチイニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、ジベンゾチエニル基、キサントニル基、チオキサントニル基、ジベンゾフラニル等の炭素数4~20の複素環基;
フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~10のアリールオキシ基;
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec-ブチルスルフィニル基、tert-ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、ネオペンチルスルフィニル基、tert-ペンチルスルフィニル基、オクチルスルフィニル基等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルフィニル基;
フェニルスルフィニル基、トリルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基等の炭素数6~10のアリールスルフィニル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、tert-ペンチルスルホニル基、オクチルスルホニル基等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルホニル基;
フェニルスルホニル基、トリルスルホニル基(トシル基)、ナフチルスルホニル基等の炭素数の6~10のアリールスルホニル基;
下記式(C-1-2)で表されるアルキレンオキシ基;
無置換のアミノ基、並びに、炭素数1~5のアルキル及び/又は炭素数6~10のアリールでモノ置換若しくはジ置換されているアミノ基;
シアノ基;
ニトロ基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基等が挙げられる。
【0077】
【化5】
【0078】
式(C-1-2)中、Qは水素原子又はメチル基を示し、kは1~5の整数を示す。k個のQは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0079】
式(C-1)中のオニウムイオン(A)としては、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン、セレニウムイオンが好ましい。これらの代表例を以下に示す。
【0080】
スルホニウムイオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;
ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;
フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;
ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0081】
これらの中でも、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0082】
式(C-1)において、Xは対イオンである。対イオンの個数は、1分子あたり(p+1)個である。対イオンは特に限定されないが、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲンイオン類;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO 等のスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2-等の硫酸イオン類;HCO 、CO 2-、等の炭酸イオン類;HPO4-、HPO 2-、PO 3-等のリン酸イオン類;PF 、PFOH、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等のフルオロリン酸イオン類;BF 、B(C 、B(CCF 等のホウ酸イオン類;AlCl ;BiF 、SBF 、SBFOH等のフルオロアンチモン酸イオン類;AsF 、AsFOH等のフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0083】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、例えば、式(C-1-3)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
【0084】
【化6】
【0085】
式(C-1-3)中、Rはフッ化アルキル基を示す。bはRの個数であり、1~5の整数を示す。b個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0086】
bは2~4が好ましく、2~3がより好ましい。
【0087】
のフッ化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基を示す。アルキル基の炭素原子数は1~8が好ましく、1~4がより好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分岐アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0088】
フッ化アルキル基の具体例としては、CF-、CFCF-、(CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、(CFCFCF-、CFCF(CF)CF-、(CFC-等が挙げられる。
【0089】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF等が挙げられる。
【0090】
本実施形態では、(C)成分として、式(C-2)で表されるジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、及び、式(C-3)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートを特に好適に用いることができ、これらのうち、式(C-3)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートがより好ましい。
【0091】
【化7】
【0092】
【化8】
【0093】
(C)成分は、(A)成分等の他の成分との混合を容易にするため、あらかじめ溶剤に溶解したものを用いてよい。溶剤は特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。
【0094】
(C)成分の含有量は、樹脂組成物の光硬化性の観点からは、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.15質量部以上がより好ましい。また、(C)成分の含有量は、硬化体の接着耐久性の観点からは、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、5.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
【0095】
樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0096】
その他の成分としては、例えば、硬化遅延剤((X)成分)が挙げられる。硬化遅延剤とは、反応に関わる活性種を一時捕捉する等の作用により、光照射後の粘度の上昇を抑え、可使時間を延長する化合物をいう。
【0097】
((X)成分:硬化遅延剤)
硬化遅延剤は、リン酸系硬化遅延剤((D)成分)及びエーテル系硬化遅延剤((E)成分)からなる群より選択される硬化遅延剤が好ましい。硬化遅延剤は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
<(D)成分:リン酸系硬化遅延剤>
リン酸系硬化遅延剤は、リン酸エステル((D1)成分)及び亜リン酸エステル((D2)成分)からなる群より選択される硬化遅延剤である。(D)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
(D1)成分としては、例えば、ジエチルベンジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O(Rは、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基)、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2ージクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチルピロホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、アンモニウムエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート塩等が挙げられる。(D1)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
(D1)成分は、カチオンに対する適度な反応性及びアウトガスの低減の観点から、式(D1-1)で表される化合物、式(D1-2)で表される化合物及び式(D1-3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、式(D1-2)で表される化合物を含有することがより好ましい。
【0101】
【化9】
【0102】
【化10】
【0103】
【化11】
【0104】
式(D1-1)、式(D1-2)及び式(D1-3)中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0105】
式(D1-2)中のR、R及びR、並びに、式(D1-3)中のR及びRは、各式中で同一の基であることが好ましい。
【0106】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシアルキル基等が挙げられる。R、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、非置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0107】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、例えば1~18であってよく、4~13であることが好ましい。
【0108】
式(D1-1)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルホスフェート(すなわち、Rがアルキル基である化合物)等であってよく、具体例としては、モノエチルホスフェート、モノn-ブチルホスフェート、モノ(ブトキシエチル)ホスフェート、モノ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0109】
式(D1-2)で表される化合物としては、トリアルキルホスフェート(すなわち、R、R及びRがアルキル基である化合物)が好ましい。このとき、R、R及びRのアルキル基の炭素原子数は、1~18であることが好ましく、4~12であることがより好ましく、8であることが更に好ましい。
【0110】
トリアルキルホスフェートの具体例としては、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O(Rは、ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基)等が挙げられる。
【0111】
式(D1-3)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルホスフェート(すなわち、R及びRがアルキル基である化合物)等が挙げられる。ジアルキルホスフェートの具体例としては、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0112】
(D2)成分は亜リン酸エステルである。(D2)成分としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2-エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。(D2)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
(D2)成分は、カチオンに対する適度な反応性の観点から、式(D2-1)で表される化合物、式(D2-2)で表される化合物、式(D2-3)で表される化合物、式(D2-4)で表される化合物、式(D2-5)で表される化合物及び式(D2-6)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0114】
【化12】
【0115】
【化13】
【0116】
【化14】
【0117】
【化15】
【0118】
【化16】
【0119】
【化17】
【0120】
式(D2-1)~式(D2-6)中、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0121】
、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシアルキル基等が挙げられる。R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基は、非置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0122】
、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、例えば1~30であってよく、1~18であることが好ましい。
【0123】
式(D2-2)中のR及びR、式(D2-3)中のR10、R11及びR12、式(D2-4)中のR13及びR14、並びに、式(D2-5)中のR15及びR16は、各式中で互いに同一であることが好ましい。
【0124】
式(D2-1)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルホスファイト(すなわち、Rがアルキル基である化合物)等が挙げられる。
【0125】
式(D2-2)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルホスファイト(すなわち、R及びRがアルキル基である化合物)等が挙げられる。
【0126】
式(D2-3)で表される化合物としては、例えば、トリアルキルホスファイト(すなわち、R10、R11及びR12がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(D2-3)で表される化合物の具体例としては、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト等が挙げられる。
【0127】
式(C2-4)で表される化合物としては、例えば、ビス(アルキル)ペンタエリスリトールジホスファイト(すなわち、R13及びR14がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(D2-4)で表される化合物の具体例としては、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0128】
式(D2-5)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルハイドロゲンホスファイト(すなわち、R15及びR16がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(D2-5)で表される化合物の具体例としては、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0129】
式(D2-6)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルハイドロゲンホスファイト(すなわち、R17がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(D2-6)で表される化合物の具体例としては、モノエチルハイドロゲンホスファイト、モノ(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、モノラウリルハイドロゲンホスファイト、モノオレイルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0130】
(D2)成分としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2-エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイトからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト及びトリス(ノニルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される少なくとも一種を含有することがより好ましい。
【0131】
樹脂組成物が(D)成分を含むとき、(D)成分の含有量は、より長い可使時間が得られる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましい。また、(D)成分の含有量は、硬化体の防湿性及び接着強度の観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0132】
樹脂組成物が(D)成分を含むとき、(D)成分の含有量は、(C)成分100質量部に対して、より長い可使時間が得られる観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、(D)成分の含有量は、(C)成分100質量部に対して、光硬化性の観点から、2000質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましい。
【0133】
<(E)成分:エーテル系硬化遅延剤>
(E)成分は、エーテル結合を有する硬化遅延剤である。(E)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
(E)成分は、鎖状エーテル又は環状エーテルであってよい。鎖状エーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドが挙げられる。環状エーテルとしては、クラウンエーテル等が挙げられる。
【0135】
(E)成分は、カチオンに対する適度な反応性の観点から、環状エーテルであることが好ましく、クラウンエーテルがより好ましい。
【0136】
樹脂組成物が(E)成分を含むとき、(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、より長い可使時間が得られる観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また、(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、硬化体の防湿性及び接着強度の観点から、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0137】
樹脂組成物が(E)成分を含むとき、(E)成分の含有量は、(C)成分100質量部に対して、より長い可使時間が得られる観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、(E)成分の含有量は、(C)成分100質量部に対して、光硬化性の観点から、2000質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましい。
【0138】
樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(X)成分以外のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0139】
その他の成分としては、例えば、光増感剤が挙げられる。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、光カチオン重合開始剤からカチオンを効率良く発生させる化合物をいう。
【0140】
光増感剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のフェニルケトン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体がより好ましい。光増感剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0141】
樹脂組成物が光増感剤を含むとき、光増感剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましい。また、光増感剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。このような範囲とすることで、より良好な硬化性及び貯蔵安定性が得られる。
【0142】
その他の成分としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を含有することで、樹脂組成物の接着性及び接着耐久性が向上する傾向がある。
【0143】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン及びγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。シランカップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
樹脂組成物がシランカップリング剤を含むとき、シランカップリング剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。シランカップリング剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。このような含有量範囲とすることで、より高い接着性及び接着耐久性が得られる。
【0145】
本実施形態において、樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述の各成分を混合すればよい。混合方法は、上述の各成分を十分に混合できる方法であれば特に制限されない。混合方法は、例えば、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0146】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、有機EL表示素子の封止に寄与するように使用されてよい。例えば、樹脂組成物は、有機EL表示素子を被覆する被覆材の形成のために用いてよく、有機EL表示装置を構成する部材同士を接着するための接着剤として用いてもよい。
【0147】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光照射後に粘度が適度に上昇し、その後、カチオン重合性化合物の重合反応の進行に伴って硬化する。光照射後の樹脂組成物は、加熱によって迅速に硬化させることもできる。
【0148】
樹脂組成物に照射する光の光源は特に限定されず、例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、光カチオン重合開始剤の反応波長に対応したエネルギー線の照射を効率良く行える点で好ましい。
【0149】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光カチオン重合開始剤の反応波長等により適宜選択され得る。また、自然光(太陽光)も樹脂組成物の反応開始光源になり得る。
【0150】
照射方法としては、直接照射、反射鏡等による集光照射、ファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等を利用した照射を行うこともできる。
【0151】
光の照射量は、特に限定されず、樹脂組成物の塗膜の厚さ等によって適宜調整してよい。光の照射量は、例えば50~20000mJ/cmであってよく、好ましくは100~10000mJ/cmである。
【0152】
光照射後の加熱(後加熱ともいう。)を行う場合、その加熱温度は、有機EL表示素子へのダメージを避ける観点から、150℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。後加熱を行う場合、その加熱温度は、50℃以上が好ましい。
【0153】
本実施形態に係る樹脂組成物の、E型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した場合の粘度は、ディスペンサやインクジェット装置等の吐出に用いる装置から意図せず垂れ落ちることを防止する観点から、2cps以上が好ましく、5cps以上がより好ましい。また、上記粘度は、塗布・吐出性の容易さの観点から、200cps以下が好ましく、50cps以下がより好ましく、30cps以下がさらに好ましい。粘度が30cps以下であれば、25℃において、インクジェット型の装置による吐出が容易である。
【0154】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光を照射してから20分後の粘度が、光照射前の粘度と比較して、1.2倍以上10倍未満であることが好ましい。例えば、単位面積当たりの塗布量が10mg/cmとなるように塗布された樹脂組成物に対して、高圧水銀灯にて紫外線を照射量100mW/cmで10秒間照射してから20分後の粘度が、紫外線照射前の粘度と比較して1.2倍以上10倍未満であることが好ましい。
【0155】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光を照射した後、高温雰囲気下に10分間養生後の粘度が、養生前の粘度と比較して3倍以上であることが好ましい。例えば、80℃雰囲気下に養生した場合、養生後10分後の粘度が、養生前の粘度と比較して3倍以上となることが好ましい。
【0156】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光照射後の可使時間を十分に長くできる。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、光照射後の粘度が適度に上昇するため、部材の貼り合わせが容易となり作業性に優れる。さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は硬化後の防湿性及び接着性に優れる。このため、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、封止特性に優れる封止材を形成でき、また、信頼性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造できる。
【0157】
本実施形態において、封止剤は、樹脂組成物を含むものであってよい。
【0158】
本実施形態に係る封止剤の硬化体は、0.1m厚での透湿度が、250g/(m・24hr)以下であることが好ましく、200g/(m・24hr)以下であることがより好ましい。なお、本明細書中、硬化体の透湿度は、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で測定される値を示す。
【0159】
本実施形態に係る封止剤の硬化体は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、硬化体は、厚さ10μm当たりの波長380~800nmにおける全光線透過率が、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0160】
本実施形態に係る封止剤の使用方法は特に限定されない。例えば、対象物(例えば、有機EL表示装置を構成する部材)に封止剤を塗布し、対象物上で封止剤を硬化させることによって、封止剤の硬化体からなる封止材を形成できる。
【0161】
また、封止剤を所定の形状(例えば、フィルム状、シート状等)に硬化させて、所定の形状を有する封止材を形成してもよい。この場合、例えば、有機EL表示装置の組立に際し、当該封止材を有機EL表示素子上に配置することで、有機EL表示素子を封止できる。
【0162】
本実施形態において、封止材は、封止剤の硬化体からなるものであってよく、封止剤の硬化体と他の構成材料とを含むものであってもよい。他の構成材料としては、例えば、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素等の無機物層、シリカ、マイカ、カオリン、タルク、酸化アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。
【0163】
本実施形態に係る封止剤によれば、有機EL表示素子と封止材とを含む、有機EL表示装置を容易に製造できる。
【0164】
有機EL表示装置の製造方法は、例えば、第一の部材に、上述の封止剤を付着させる付着工程と、付着させた封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された封止剤を介して第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を備えていてよい。このような製造方法によれば、有機EL表示装置を構成する第一の部材及び第二の部材との接合面を封止材で封止できる。
【0165】
付着工程で第一の部材上に配置された封止剤は、光照射によって増粘する。貼合工程では、光照射された封止剤が硬化するまでの間に、第一の部材と第二の部材とを貼り合わせることで、第一の部材と第二の部材とが封止剤によって接着される。第一の部材と第二の部材との間に介在する封止剤は、必要に応じて後加熱することで硬化し、封止材を形成する。
【0166】
上記製造方法では、照射工程後の工程について、光を遮断して実施してもよい。これにより、第二の部材を光に晒すことなく、第一の部材に接着させることができる。
【0167】
封止剤を付着させる方法は特に限定されず、例えば、インクジェット法、ディスペンサを用いる方法等であってよい。
【0168】
第一の部材及び第二の部材は、それぞれ有機EL表示装置を構成する部材であればよく、特に限定されない。
【0169】
一態様において、第一の部材は有機EL表示素子であってよく、第二の部材は基板であってよい。
【0170】
また、他の一態様において、第一の部材は基板であってよく、第二の部材は有機EL表示素子であってよい。
【0171】
基板の種類は特に限定されず、例えば、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板等が挙げられる。これらのうち、ガラス基板及びプラスチック基板が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0172】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0173】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。特記しない限り、25℃で実施した。
【0174】
(実施例1~13及び比較例1~3)
<封止剤の調製>
表1に示す各成分を、表1に記載の組成割合(質量部)で混合し、実施例の封止剤を調製した。得られた封止剤について、以下に示す評価方法で封止剤の粘度及びインクジェット装置での吐出性を評価した。また、得られた封止剤を、以下に示す光硬化条件で硬化して硬化体を形成し、以下に示す評価方法で硬化体の透湿度、黄色度、透過率及び有機EL評価を測定した。
【0175】
【表1】
【0176】
表1に示す各成分は、それぞれ以下を意味する。
【0177】
((A)成分:カチオン重合性化合物)
(a-1)3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」、粘度:200cps)
(a-2)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX8000」、粘度:18,500cps))
(a-3)3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製「サイクロマーM100」、粘度:100cps)
(a-4)ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(東亞合成社製「アロンオキセタンOXT-221」、粘度:9~14cps)
【0178】
((B)成分:ビニルエーテル系化合物)
(b-1)シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHDVE」、粘度:4.5cps)
(b-2)1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「BDVE」、粘度:1.2cps)
(b-3)トリエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「TEGDVE」、粘度:3.4cps)
(b-4)シクロヘキシルビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHVE」、粘度:1.3cps)
(b-5)4-ヒドロキシブロモビニルエーテル(日本カーバイド社製「HBVE」、粘度:5.2cps)
((C)成分:光カチオン重合開始剤)
(c-1)ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(サンアプロ社製「CPI-110A」)
【0179】
((X)成分:硬化遅延剤)
(x-1)リン酸トリオクチル(大八化学社製)
(x-2)18-クラウン-6-エーテル(日本曹達社製「クラウンエーテル O-18」)
【0180】
[粘度の測定方法]
粘度は、E型粘度計(コーンロータ:1°34’×R24、BROOKFIELD社製「DV3T」)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。
【0181】
[インクジェット装置での吐出性]
得られた組成物を70mm×70mm×0.7mmtの基材(無アルカリガラス(Corning社製 Eagle XG))上に、インクジェット吐出装置(武蔵エンジニアリング社製MID500B、溶剤系ヘッド「MIDヘッド」)を用いて吐出した。吐出性は以下基準により評価した。
A:ノズルの詰まりなく、吐出できる。
B:ノズルが詰まり、吐出できない。
【0182】
[硬化条件]
無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)を用いて、波長365nm、積算光量1,000mJ/cmの条件にて、封止剤を光硬化させた。次いで、80℃のオーブン中で30分間の加熱処理を実施し、硬化体を作製した。
【0183】
[透湿度]
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を、上記硬化条件にて作製した。JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で、硬化体の透湿度を測定した。なお、透湿度は250g/(m・24hr)以下が好ましい。
【0184】
[透過率と黄色度]
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス」を2枚用い、接着厚み10μmで、上記の光硬化条件にて樹脂組成物を硬化させた。硬化後、この樹脂組成物からなる接着剤で接合した試験片を用い、紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV2550)にて、波長300~800nmの光の全光線透過率、及び、JIS K 7373:2006 プラスチック-黄色度及び黄変度の求め方に則った黄色度(b値)を測定した。
【0185】
〔有機EL表示素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板をアセトン、イソプロパノ-ルそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極 ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層 銅フタロシアニン 厚さ30nm
・正孔輸送層 N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチルベンジジン(α-NPD) 厚さ20nm
・発光層 トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å
・電子注入層 フッ化リチウム 厚さ1nm
・陰極 アルミニウム、陽極の膜厚250nm
【0186】
〔有機EL表示素子の作製〕
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、窒素雰囲気下にて塗工装置でガラスに塗布し、樹脂組成物に紫外線照射装置(HOYA社製超高圧水銀ランプ照射装置、「UL-750」)を用いて波長365nm、100mW/cmの紫外線を10秒間照射し、20分後に有機EL表示素子基板と接着厚み10μmで貼り合わせ、80℃雰囲気下で30分間養生し、この樹脂組成物からなる接着剤を硬化させ、有機EL表示素子を作製した。有機EL素子基板の陰極側を、封止剤を介してガラスに貼り合わせた。得られた有機EL表示素子を、以下に示す評価方法で有機EL評価を行った。
【0187】
[有機ELの評価:初期の発光状態評価]
作製した直後の有機EL表示素子に、6Vの電圧を10秒間印加し、有機EL表示素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0188】
[有機ELの評価:高温高湿試験後の発光状態評価]
作製した直後の有機EL表示素子を、60℃、相対湿度90質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を10秒間印加し、有機EL表示素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。ダークスポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことがさらに好ましい。
【0189】
上記の各評価結果を表1に示す。実施例の封止剤によれば、粘度が低く、且つ、硬化後の信頼性に優れることが示された。また、(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中、50質量部より少ない場合、封止剤の粘度が高くなり、塗布・吐出性が低下することが示された(比較例1及び2)。さらに、(C)成分を使用しない場合、封止剤が硬化しないことが示された(比較例3)。
【0190】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、当該樹脂組成物を含む有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子用封止剤、当該封止剤の硬化体を含む有機EL表示素子用封止材、並びに、当該封止材を含む有機EL表示装置として使用できる。