(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】がん病変等の治療用装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61N5/067
(21)【出願番号】P 2021524135
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2019055787
(87)【国際公開番号】W WO2020012321
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】102018000007185
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521017491
【氏名又は名称】エレスタ ソチエタ ペル アチオーニ
【氏名又は名称原語表記】ELESTA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Baldanzese, 17 50041 Calenzano (FI) ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】マゾッティ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ブレスキ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペレッタ,トマーゾ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレオーラ,ファビオ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-515798(JP,A)
【文献】特表2007-535972(JP,A)
【文献】特表2009-509616(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102179010(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0210278(US,A1)
【文献】特表2013-518684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん性病変の治療装置(1;5)であって、
保護カニューレ(7)と、
保護カニューレ(7)に同軸に収容可能な管状吸引部材(9)と、
管状吸引部材(9)内に同軸に収容可能であり、かつ、光ファイバ(23)を内部に収容するように適合されたカテーテル(21)と
を備え、
前記カテーテル(21)の遠位端(21A)に膨張可能バルーン(25)が密閉連結部材によって固定され、膨張可能バルーン(25)がカテーテル(21)を通して送られる流体によって膨張できるようにし、
保護カニューレ(7)が、管状吸引部材(9)及びカテーテル(21)に対して軸線方向に移動可能であり、
前記管状吸引部材(9)が円筒形の壁を備え、その壁の厚み部分に、少なくとも一つ
の吸引パイプ(11)及び少なくとも一つの洗浄液供給パイプ(11)が設けられ、
前記カテーテル(21)が二つの通路を有し、各通路が、膨張拡張可能バルーン(25)を充填及び膨張させるための流体の入口及び出口用である
ことを特徴とする治療装置。
【請求項2】
前記カテーテル(21)が、相互に同軸であり、それらの間に環状導管を画定する外側筒状要素(21Y)及び内側筒状要素(21X)を備え、
光ファイバーが内側筒状要素(21X)に収容され、
膨張可能バルーン(25)が前記密閉連結部材によって外側環状要素(21Y)の遠位端に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
前記保護カニューレ(7)をスライド可能に受け入れるように適合された外部カニューレ(3)をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の治療装置。
【請求項4】
複数の吸引パイプ(11)が、筒状吸引部材(9)の厚み部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の治療装置。
【請求項5】
複数の洗浄液供給パイプ(11)が、筒状吸引部材(9)の厚み部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の治療装置。
【請求項6】
各吸引パイプ(11)が吸引ラインに接続可能であり、各洗浄液供給パイプ(11)が洗浄液体供給ラインに接続可能である
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の治療装置。
【請求項7】
管状吸引部材(9)が遠位端(9A)を有し、
一つ又は複数の前記吸引及び洗浄液パイプ(11)が、管状吸引部材(9)の遠位端(9A)において遠位端(11A)を有する
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の治療装置。
【請求項8】
外部カニューレ(3)を有する請求項1~7の何れか一項に記載の治療装置(5)と、外部カニューレ(3)に挿入可能な生検針(41)とを有する
ことを特徴とするがん性病変の治療用キット。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の治療装置(1)と、
前記治療装置(1)の光ファイバ(23)に接続可能なレーザー光源と
を備えていることを特徴とする医療装置。
【請求項10】
・管状吸引部材(9)の少なくとも一つの吸引パイプ(11)に接続可能な吸引部材(13)、
・管状吸引部材(9)の少なくとも一つの供給パイプ(11)に接続可能な洗浄液供給部材、及び
・膨張流体を膨張可能バルーン(25)に供給するように適合された膨張回路(27)
の一つ又は複数をさらに有する
ことを特徴とする請求項9に記載の医療装置。
【請求項11】
前記膨張回路(27)が、前記膨張可能バルーン(25)内で前記膨張流体を循環させるように適合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん病変を治療するための外科用装置に関する。本明細書に開示される実施形態は、特に、乳房病変の低侵襲治療のための装置に関する。
【0002】
がん病変、特に乳房病変の低侵襲治療のための方法も開示されている。
【背景技術】
【0003】
乳がんは、女性のがんによる主要な死因であり、50歳以前の腫瘍性死因の30%、50歳から69歳迄の22%、及び70歳以上の15%に相当する、様々な年齢における死因の第一原因である(出典ISTAT)。乳がん死亡率の減少に向かう継続的な傾向が観察されており(2.2%/年)、これは早期診断プログラムのより大きな普及と治療プログラムの進化に伴う科学的進歩によるものである(イタリア腫瘍内科協会,2017)。
【0004】
予防への関心の高まりにより、特にリンパ節転移の証拠のない1cm未満の病変を含む臨床段階のT1a及びT1bにおける早期乳がんの診断がますます可能になってきている。これにより、外科医が、ますます温存手術を行うことが可能になっている。
【0005】
低侵襲技術及び手術の使用に向けた治療の進化、並びに画像診断の進歩は、今や、温存手術のための患者のますますの差し迫ったニーズによって強く求められている。
【0006】
熱切除やレーザー温熱療法等の低侵襲法には、審美的結果、患者の快適さ、並びに罹患率及びコストの低下という明らかな改善を伴いながら、外科的治療と同等の完全な病理学的反応が得られるという利点がある。
【0007】
レーザー光は、組織の局所的な温度上昇を誘発する優れた手段を提供し、それは、局所的な温度上昇とそれに続く誘発された組織壊死を通した低侵襲腫瘍治療に使用され得る。レーザー間質温熱療法(LITT)は、非常に細い光ファイバー(直径0.3mm)を使用して、特定の線量のレーザーエネルギーを特定の時間送達できる一つ又は複数のアプリケーターの腫瘍組織内での位置決めに基づいている。経皮的アクセスでは、最新の画像技術の助けを借りて、様々なサイズの導入針が光ファイバ又はレーザーエネルギーアプリケーターの位置決めに使用される。この最初のステップの後、治療はレーザー装置のスイッチを入れてエネルギーを供給することから始まる。アプリケーターエミッターによって放出された放射線は、レーザーと組織の相互作用の法則に従って周囲の組織に拡散する。
【0008】
現在、診断-治療法には、次の一連の操作が含まれている。
A)例えば、Mammotome(登録商標)又は同様のシステムによって実行される生体技術による複数の腫瘍性組織の抽出を通した真空アシスト生検病変
B)生検フラスチュール及び腫瘍分類の組織学的評価
C)健康なマージンを伴う病変を切除するための新しい外科的処置
D)術後の治療処置(組織学的分析の結果によって決定される)
【0009】
Bi-Rads分類とそれに続く生検サンプルの組織学的確認により、五つの可能な結果B1-B2-B3-B4-B5が得られる。
B1:正常組織
B2:良性病変
B3:悪性腫瘍の可能性が不確かな病変:このカテゴリーの全体的な陽性予測値(VPP=手術/外科的病変で発見された悪性病変の数)は、約25~35%である。
B4:病変の疑いあり:この診断カテゴリーの頻度は、真空アシスト生検サンプルでは低い(<2%)。陽性予測値は85%である。
B5:悪性腫瘍病変:上皮内がん、浸潤がん及びその他のより稀な悪性腫瘍(リンパ腫、肉腫等)を含む可能性がある悪性病変
【0010】
同じBi-Rads分類が、腫瘍病変と同様に組織学的確認が必要とされる微小石灰化にも適用される。本明細書に開示される方法及び装置は、微小石灰化にも使用され得る。
【0011】
現在、B4及びB5に分類される病変は手術に送られる。その目的は、健康なマージンを得ることによって病気を完全に根絶することにある。B3に分類された病変は、より徹底的な評価が必要であり、その結果は、経過観察又はその後の切除手術(症例の50%以上)に繋がり得る。
【0012】
経過観察に入れられたB3病変は、概して、後の管理の中でB3病変が増加し、より根本的な外科的治療に繋がる可能性をもって生活する女性を不安な状態にする。代わりに、悪性腫瘍の疑いが高いために手術に向けられたB3病変は、悪性タイプの25~35%にすぎないため、必要がなかった女性(65~75%の症例)に対して過剰な治療(切除手術)を決定することになる。いずれにしても、B3生検分類の女性の一部とB4-B5分類の全ての女性は、真空アシスト生検法に加えて、二次的外科的切除と生検マージンの拡大を受けることになる。
【0013】
上記した方法の欠点を減らすために、新規な手術技術及び新規な器具を特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0014】
一態様によれば、保護カニューレと、保護カニューレに同軸に収容可能な管状吸引部材と、管状吸引部材内に同軸に収容可能であり、かつ、光ファイバを内部に収容するように適合されたカテーテルとを備え、前記カテーテルが、その遠位端に、カテーテルを通して送られる流体によって膨張されるように適合された膨張可能バルーンを備え、保護カニューレが、管状吸引部材及びカテーテルに対して軸線方向に移動可能である装置が提供される。
【0015】
前記装置のさらに有利な特徴及び実施形態は、以下に説明され、かつ、本明細書と一体である添付した特許請求の範囲に示されている。
【0016】
生検針、例えば、限定するものではないが、真空アシスト生検針、外部カニューレ及び上記で定義された装置を含むキットも開示される。
【0017】
前記装置及びキットは、病変又は他の部分からの腫瘍組織の切除処置を実行すること、及び切除によって生成された空洞のマージン(即ち、空洞の縁)のレーザー温熱療法治療を実行することを可能にする。従って、切除及びその後のレーザー照射による凝固治療及び/又はクリアリングによって、病変を治療するための低侵襲的処置を実施することが可能である。
【0018】
凝固とクリアリングの作用には二つの目的がある。第一に、凝固作用は、生体手術の早期中断につながる処置中と、処置後との両方において、その後の治療の必要性を伴う最も頻繁な合併症の一つである出血をブロックすることを目的としている。除去作用は、真空アシスト生検処置又は他のCNB針生検によって抽出されなかった腫瘍細胞を破壊することを目的としている。この最後の理由から、腫瘍病変の周囲の安全マージンを得るために、生検の対象となる領域の周囲の組織の一部で細胞死を引き起こすことが重要である。
【0019】
この方法は、乳腺の腫瘍病変の治療に特に有用であり得るが、本明細書に開示される方法及び装置を、人間又は動物、従って、医療及び獣医学の両方の分野で、他のタイプの病変、典型的には、限定するものではないが、腫瘍タイプの病変の治療に適用することの可能性は排除されない。また、この方法を、植物部門に拡大する可能性も排除されない。
【0020】
幾つかの用途では、この方法は、患者の心理的及び身体的苦痛を軽減することもできる迅速かつ低侵襲の治療を得るように、病変組織の切除中に、リアルタイムで、即ち、即時に組織学的分析をすることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】腫瘍、排他的ではないが、特に、乳房腫瘍の低侵襲手術用装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を示す添付図面及び説明によってより良く理解されることになる。
本明細書に記載の実施形態では、装置は、例えば、真空アシスト生検用の任意のタイプのCNB針生検用キットと組み合わせられるか、又は、その一部であり得る。また、前記キットは外部カニューレを有し、前記外部カニューレは、装置の一部であり得、又は生検針キットの一部であり得る。この装置は、治療すべき組織に生検針によって生成された空洞のマージン(即ち、空洞の縁)のレーザー治療を実行するように構成されている。生検針は、治療を必要とする対象の器官又は組織から、一つ又は複数の組織フラスチュールの形態で、がん病変などを除去するために使用され得る。組織内に空洞が生成され、かつ、病変組織全体が除去されると、好ましくは生検針を通して病変組織を除去するために使用されたカニューレと同じカニューレを通して、光ファイバを収容するよう適合されたカテーテルと、カテーテルの遠位端に又はその近くに設けられた膨張可能バルーンとを有する装置を挿入することが可能になる。
【0023】
カテーテルは、バルーン膨張流体を導入及び除去するための一つ又は二つの有路を有し得る。好ましくは、二つの通路が、膨張流体の連続的又は断続的、即ち、不連続的な循環を得るために設けられる。管状吸引部材が、カテーテルに関連付けられ得る。この管状吸引部材は、カテーテルに対して同軸であり、カテーテルの外部にあり得る。管状吸引部材の壁には、一つ又は複数の吸引パイプが形成され得、場合によっては、治療前、治療後、又は治療中に空洞を洗浄するための洗浄液を供給するための一つ又は複数のパイプが形成され得る。
【0024】
このタイプのキットを使用することで、病変の組織を除去する第一ステップ、及び除去によって生成された空洞のマージンをレーザー治療、クリアリング及び/又は凝固する第二ステップを提供する治療方法を実行することが可能になる。以下の説明から明らかになるように、特に第一ステップで抽出された組織を、即時、即ち、リアルタイム組織学的分析に供することができる場合、二つの治療ステップを同じセッションで実行することができる。これにより、カニューレを取り外すことなく、生検針及びそれに続くレーザー治療装置を順番に導入するカニューレを導入することができる。
【0025】
実際には、前記キットは、外部カニューレ、生検針、及びレーザー治療装置を含み得る。他の実施形態では、前記キットは、レーザー治療装置のみを有し得、該レーザー治療装置は、外部カニューラを有し得る生検針キットと組み合わせて機能するように構成され得る。
【0026】
レーザー光によるクリアリング動作のための装置は、Mammotome(登録商標)タイプ又は他のタイプのCNB針生検用装置又はキットと組み合わせて使用され得る。
【0027】
ここで、添付図面に示された実施形態について説明すると、
図1、2、3A及び3Bは、治療装置を示している。装置は、全体が符号1で示されている。図示実施例では、装置1は、例えば、金属製であり得るメインカニューレ、即ち、外部カニューレ3を備え、又は、それに関連付けられている。外部カニューレ3は、生検用装置、例えば、真空アシスト生検を実行するための装置の一部であり得る。カニューレ3は、例えば治療を行う組織又は器官に生検針を挿入するために使用され得る。外部カニューレ3は、遠位端3A及び近位端3Bを有する。
【0028】
外部カニューレ3を用いて、レーザー治療装置が、治療すべき組織に挿入され得る。レーザー治療装置は、以下に複合部材5として示されており、その様々な構成要素は以下に詳細に説明される。複合部材5は、生検針又は他の方法によって治療すべき組織に生成された空洞のレーザー温熱療法治療を実行するために使用され、好ましくは、以下に治療手順の実行の例を参照して説明するように、同じ外部カニューレ3を通して作用する。
【0029】
いくつかの実施形態では、治療装置は、複合部材5及び外部カニューレ3を有する。他の実施形態では、外部カニューレ3は生検キットの一部であり得、この場合のレーザー治療装置は、複合部材5を含むが、外部カニューレ3を含まない。幾つかの実施形態では、レーザー治療装置は、生検針、外部カニューレ3、及び複合部材5を含むキットの一部であり得る。
【0030】
複合部材5は、使用条件下で、外部カニューレ3の内部にほぼ同軸に挿入される保護カニューレ7を備える。保護カニューレ7は、遠位端7A及び操作者側の近位端7Bを有する。保護カニューレ7は、以下に明確にする目的のために、外部カニューレ3の内側の二重矢印f7に従ってスライド可能である。
【0031】
例示的な実施形態によれば、保護カニューレ7は、保護カニューレ7と実質的に同軸であり、かつ、円筒形の壁を有する管状吸引部材9を収容している。管状吸引部材9には、管状吸引部材9の円筒壁の厚さで形成された一つ又は複数のパイプ11が設けられる。好ましくは、パイプ11の数は偶数である。好ましくは、複数のパイプ11は、互いに等距離にあり、即ち、それらは、管状吸引部材9の軸線A-Aの周りに一定の角度ピッチで配置されている。また、パイプ11は、異なる方法で形成され得、例えば、保護カニューレ7の軸の周り及びその中に配置された細い管として形成され得る。しかしながら、管状吸引部材9の一部の厚さでパイプ11を形成することは、例えば、建設的な単純さの観点から、特に有利である。
【0032】
有利な実施形態では、パイプ11は目詰まり防止機能を有する。
【0033】
図示実施例では、パイプ11は、管状吸引部材9の遠位端9A上に位置合わせされた遠位端11A(
図3A)を有する。図示されていない他の実施形態では、パイプ11は、様々な位置、即ち、管状吸引部材9の遠位端9A上、それに対して引っ込められた位置、管状吸引部材9の外面上に、分配された遠位端を有し得る。各パイプ11は、各々の遠位端11Aから近位端11B、即ち、作業者に面する端部まで延び得る。パイプ11の少なくとも一つの近位端11Bは、符号13(
図1)で概略的に示される吸引部材と流体連絡するように配置され得る。幾つかの実施形態では、全てのパイプ11が、一つの吸引部材又は複数の吸引部材13と流体連結するように配置され得る。
【0034】
他の実施形態では、パイプ11の少なくとも一つの近位端11Bは、流体供給部材15と流体連絡するように配置され得る。好ましくは、少なくとも一つのパイプ11が吸引部材13に接続され得、かつ、少なくとも一つの別のパイプ11が流体供給部材15に接続され得、以下により詳細に説明するように、以下で明らかになる目的のために、流体の循環を生成する。
【0035】
吸引部材は収集タンク17に流体的に連結され得、かつ、供給部材15は、洗浄液、例えば、生理学的溶液の分配タンク19に流体的に結合され得る。
【0036】
管状吸引部材9の内部には、管状吸引部材9に対して同軸のカテーテル21が設けられており、カテーテル21は、それ対してほぼ同軸に延びる光ファイバ23を収容している。光ファイバ23は、レーザー光源24に接続され得る。
【0037】
カテーテル21の遠位端21Aには、膨張可能なバルーン25が設けられ得る。特に、幾つかの実施形態では、膨張可能なバルーン25は、密閉接続によって、カテーテル21の遠位端21Aに固定され得、その結果、以下により詳細に説明するように、カテーテル21を通して流体を導入することによってバルーン25は膨張され得る。光ファイバ23の遠位端23Aは、カテーテル21の遠位端21Aから突出し、膨張可能なバルーン25の中に入り得る。幾つかの実施形態では、光ファイバ23は、カテーテル21内でスライド可能であり得、その遠位端、即ち、先端23Aを、カテーテル21から膨張可能なバルーン25の内側に向けて、多かれ少なかれ突出させることができるようにしている。
【0038】
カテーテル21の近位端21Bは、膨張可能バルーン25用の充填及び膨張流体の供給回路に接続され得る。可能な実施形態では、カテーテル21の近位端21Bは、流体、典型的には、生体適合性液体のための入口接続部21Cを有し得る。生体適合性流体は、ポンプシステムによって供給され得、供給タンクから供給され得る。また、同じ接続部21Cは、治療の終わりに膨張可能バルーン25の充填及び膨張流体を除去するためにも使用され得、その結果、膨張可能バルーン25は、その最小体積に戻り、治療される器官から引き出され得る。
【0039】
他の実施形態では、図面に示すように、膨張可能バルーン25の充填及び膨張流体の連続的又は不連続的な循環が提供され得る。この目的のために、図面に示すように、カテーテル21は、互いに実質的に同軸であり、かつ、それらの間に環状導管を画定する、外部管状要素21Y及び内部管状要素21X(特に
図2、3A、3Bを参照)を有し得る。光ファイバ23は、内部管状要素21Xに収容されている。この方法では、カテーテル21は、膨張可能バルーン25への充填及び膨張流体の導入、並びに、膨張可能バルーン25からの充填及び膨張流体の抽出のための二つの通路を有する。例えば、充填及び膨張流体は、接続部21C及び光ファイバ23と内部管状要素21Xとの間の環状通路を介して膨張可能バルーン25に供給され得、かつ、内部管状要素21Xと外部管状要素21Yとの間の環状通路及び出口接続部21Dを介して膨張可能バルーン25から除去され得る。
【0040】
入口及び出口接続部21C及び21Dは、カテーテル21、従って、膨張可能バルーン25を、符号27で概略的に示された膨張回路に接続するよう適合され、前記膨張回路27において、膨張可能バルーン25の充填及び膨張流体が循環する。概略的には、膨張回路27は循環ポンプ29を有し、かつ、熱交換器31を有し得、回路内を循環する充填及び膨張流体から熱Qを取り出し得る。
【0041】
膨張回路27は、膨張可能バルーン25内に十分な圧力を維持し、それを所望のサイズに膨張させ、同時に循環流体によって処置される組織から熱を取り出すことができるように、膨張可能バルーン25の充填及び膨張流体を循環させるよう適合されている。
【0042】
不図示の他の実施形態では、カテーテル21には、膨張可能バルーン25の充填及び膨張流体を供給するための回路への単一の接続部21Cが設けられ得る。この場合、流体はそれを膨張させるために膨張可能バルーン25に導入されるが、循環されない。処置の終わりに、前記流体がそれを膨張させるために膨張可能バルーンに導入される接続部と同じ接続部を通して、膨張可能なバルーン25から排出される。この場合、カテーテル21の直径がより小さくなる利点のために、外部管状要素2lY及び出口接続部21Dは省略され得る。
【0043】
幾つかの実施形態では、膨張可能バルーン25に供給される充填及び膨張流体は、拡散粒子、例えば、ヒドロキシアパタイト、TiO2、TiO2、Al2O3、BaSO4の粒子を含み得、光ファイバ23の先端から放射されるレーザー放射のより均一な拡散を得る。拡散粒子の使用は、光ファイバ23が平坦な先端23Aを有する場合に特に有用であり得る。他の実施形態では、光ファイバ23から来る光放射線のほぼ球形の分布を得るために、他の特徴が想定され得、例えば、円錐形の先端を有する光ファイバ23が使用され得る。
【0044】
装置1について説明したので、次に、可能な治療方法のステップを説明する。実施例として、乳腺Mの病変の治療のための手順が参照される。他のタイプの病変、特に他の腫瘍性病変の治療のために本明細書に記載の装置及び方法を使用する可能性は排除されない。
【0045】
手順のステップは、
図4A~
図4Fのシーケンスに概略的に示されている。
【0046】
可能な実施形態では、治療プロセスは、真空アシスト生検システム又は典型的には生検針を使用する別のシステムを用いて腫瘍病変を切除する第一ステップを提供し得る。
【0047】
切除ステップは、例えば、Mammotomeシステム(登録商標)を有する真空アシストシステムを用いて複数の腫瘍性組織を取り出すことを通じて実行され得る。より一般的には、切除は、上述の外部カニューレ3のようなカニューレを介して乳腺の組織(又は治療すべき他の器官)に導入された低侵襲装置を用いて行われ得る。
【0048】
図4A及び4Bは、この処理ステップを示している。生体吸引針、即ち、符号41で示される真空アシスト生検用の針、又は、他の適切な外科用器具が、除去すべき腫瘍病変Tが位置する組織に導入される。導入は、外部カニューレ3を介して実行され得る。切除手順は、超音波装置又は他の画像化システムの制御下で実行され得る。
【0049】
本明細書に記載の手順では、組織フラスチュールの除去は、疑わしい組織が全て除去され、組織内に空の空洞CVが残るまで、数回繰り返され得る。
【0050】
この特性は、
図4A~
図4Cのシーケンスから理解され得る。
図4A及び4Bは、二つの連続する操作(針41の異なる角度位置で他の操作を実行できるので、必ずしも連続的ではない)を示し、これにより、二つの組織フラスチュールが除去される。手順のこの第一部分の終わりに、切除した組織塊を保持した(
図4C)生検針41は、その組織に挿入されたままであり得る外部カニューレ3を通して除去され得る。外部カニューレ3の遠位端の前に、以前は除去された組織によって占められていた空洞CVが残る。
図4Cでは、空洞CVは空の空間として示されているが、この空間は、実際には、以下に説明する次の操作までに、生検針41によって切除された組織によって以前に占められていた空間を満たす周囲の組織によって全体的又は部分的に一時的に占められ得る。
【0051】
抽出された各フラスチュール、又はそれらの少なくとも一部は、リアルタイム、即ち、即時の組織学的分析に供され得る。リアルタイム、即ち、即時分析は、この場合には、外科手術中に実行される組織学的分析を意味する。即時の組織学的分析により、操作者は、組織切除手術を実行するかどうか、及びどの程度実行するかを決定することができ、その後、外部カニューレ3を介して生検針(又は他の適切な器具)を通して次の処置で腫瘍塊全体を除去することができる。
【0052】
処置の第一ステップの間、幾つかの実施形態では、抽出された組織の各フラスチュール又はサンプル(又は、それらの少なくとも幾つか)は、例えば長手方向平面に沿って二つの部分に分割され得、組織サンプルの第一部分はリアルタイムの組織学的分析に供され、同じフラスチュール(組織サンプル)の第二の部分は、予後因子及び関連する治療後療法のための二次的遅延組織学的分析に使用される。
図4Aは、長手方向平面P-Pに沿って二つの部分F1及びF2に分割されたフラスチュールFを概略的に示している。二つの部分F1及びF2のうちの一方は、即時の組織学的分析のために使用され、他方は、その後の組織学的分析のために保存される。
【0053】
上述したように、サンプルの収集は、生検針によって腫瘍組織の完全な切除まで数回繰り返される。リアルタイムの組織学的分析を実行することで、病変の性質を即座に確認することができる。実際には、組織学的分析により、除去された組織が上記で定義されたB3,B4又はB5に分類される病変内にあることが確認された場合にのみ、次のステップが実行される。
【0054】
リアルタイムの組織学的分析により、病変が悪性又は潜在的に悪性であることが確認された場合、好ましくは同じセッション中に、病変マージン、即ち、残存空洞表面CVのレーザー温熱療法によって、次のクリアリングステップ及び場合によっては凝固ステップが実行される。有利には、この第二ステップは、好ましくは、レーザー治療部材5を挿入するために、生検針を導入するために使用されるのと同じ外部カニューレ3を使用して実行される。
【0055】
第二ステップでは、生検針41が最初に外部カニューレ3から引き抜かれる。続いて、装置5が、同じ外部カニューレ3、より正確には、既に配置されている外部カニューレ3内の構成要素を通して導入される。
【0056】
図4Dに概略的に示されている上記したような装置5の導入は、超音波又は他の画像化装置の制御下で実行され得る。複合部材5は、
図1、
図3A及び
図3Bの配置で使用され、即ち、膨張可能バルーン25が、収縮し、かつ、保護カニューレ7の内部で保護されている。
【0057】
複合部材5の保護カニューレ7の遠位部分7Aが、腫瘍塊の生検針41による除去の前の段階で乳腺Mの組織に形成された空洞CVに持ってこられると、保護カニューレ7が、カテーテル21及び膨張可能バルーン25を軸方向に停止させたまま、外部カニューレ3の内側に引っ込められ得、その結果、保護カニューレ7は、空洞CV内に膨張可能バルーン25をリリースし得る。このステップは、
図4Eに概略的に示されている。
【0058】
この状態に達すると、空洞CV内に配置された膨張可能バルーン25は、膨張回路27から来る充填及び膨張流体によって膨張され得る。充填及び膨張流体の圧力は、膨張可能バルーン25を空洞CVの内面に付着させ、周囲の組織を押す程度にされる。
図4Fは、膨張可能バルーン25の膨張ステップが終わりに達した状態を示している。
【0059】
充填及び膨張流体は、適切な圧力、従って、膨張可能バルーン25の適切な膨張に達するまで供給され得、その後、流体の供給は中断して、膨張可能バルーン25内の圧力は、到達した圧力に維持され得る。他方、別の実施形態では、充填及び膨張流体は、例えば、治療領域から熱を取り除くために、膨張可能バルーン25内を連続的又は不連続的に循環され、レーザー放射の拡散を低下又は妨害し得る局所的な過熱及び組織の炭化の現象を回避する。
【0060】
図4Fに示すように、バルーン25が膨張状態に達すると、除去された病変のマージンのクリアリングステップ、即ち、前の切除ステップで形成された空洞CVを区切る組織の表面をクリアリングするステップが実行され得る。この目的のために、レーザー放射が、レーザー源24によって光ファイバ23に入れられ、光ファイバ23の先端、即ち、遠位端23Aを介して、膨張可能バルーン25の内部容積に放射される。放射は、直接又は、充填及び膨張液体に含まれる拡散粒子を介した複数の反射及び拡散の後に、この目的のためにレーザー放射の波長で透過又は拡散する膨張可能バルーン25の壁を通過する。膨張可能バルーン25の壁を通して放射された放射線は、周囲の組織に影響を与える。
【0061】
空洞CVの周囲の組織でのレーザー放射の吸収によって生み出される熱は、変性を引き起こし、従って、空洞CVの周囲の組織を除去し、十分な安全マージンを生成し、残留腫瘍細胞を排除する。さらに、熱エネルギーには凝固効果があり、腫瘍組織の切除の以前の処置によって引き起こされ得る出血を回避、低減、又は止める。
【0062】
上述の一つ又は複数のステップの間に、管状吸引部材9によって、少なくとも一つ、幾つか又は全てのパイプ11を介して吸引を活性化し、レーザー治療中に空洞CV内に生成される、例えば、液体、固体、又は気体の形態の残骸を除去することが可能になる。
図1、2、3A及び3Bの実施形態では、パイプ11は、すべて同じ軸方向位置で終端しており、この位置は、有利には(装置が動作位置にある時に)光ファイバ23の先端の後ろにあり、即ち、レーザーエネルギーの供給を妨害しないように、光ファイバ23の遠位端23Aに対して後方に設定された位置にある。しかしながら、前述のように、パイプ11が異なる長さを有し、例えば、管状部材9の遠位端を超えて可変延長することは排除されない。
【0063】
幾つかの実施形態では、全てのパイプ11が吸引パイプであり得るが、他の実施形態では、
図1に概略的に示され上記で説明したように、パイプ11の少なくとも一つが吸引パイプであり、それらの少なくとも他の一つは、ここで説明した処置の一つ又は複数のステップの間に、典型的には、レーザーエネルギー伝搬ステップの間に、空洞CVの連続的または断続的な洗浄を実行するように洗浄流体を供給するように構成される。
【0064】
レーザー治療ステップが終了すると、器具が取り出され得、患者は通常の時間と方法で、手術後の治療処置を受けることができる。手術後の治療処置は、リアルタイムの組織学的分析に使用されなかったサンプルにおいて実行される遅延組織学的分析の結果によって決められる。また、組織学的分析は、レーザーで除去された部分の周囲の乳腺組織から外科的に採取された新しい生物学的サンプルに対しても実行され得る。これは、特に、本明細書に記載の方法の変形及び改良ステップにおいて適切である。
【0065】
機器を取り出すために、上記の操作とは逆の一連の操作が実行され得る。始めに、光源24によるレーザー放射の送達を中断した後に、拡張するために用いられた流体が膨張可能バルーン25から引き出され、膨張可能バルーン25が折り畳まれる。膨張可能バルーン25が収縮すると、保護カニューレ7の遠位端部7Aが、膨張可能バルーン25全体がその中で保護されるまで前進する。次いで、保護カニューレ7、管状吸引部材9、カテーテル21、光ファイバ23、及び膨張可能バルーン25を含む複合部材5が、外部カニューレ3の内側でスライドすることによって取り出される。最後に、外部カニューレ3が取り外される。
【0066】
他方、カテーテル21は、膨張可能バルーン25が保護カニューレ7に付いた状態で引っ込められ得、続いて、保護カニューレ7が外部カニューレ3から引っ込められ得る。他の実施形態では、カテーテル21及び膨張可能バルーン25、並びに、保護カニューレ7及び外部カニューレ3の引っ込み動作は、組織及び/又は装置の構成要素を損傷するリスクを回避する任意の他の適切な順序で実行することができる。
【0067】
上記の説明から理解されるように、この方法では、治療すべき器官M内に空洞CVが形成され、その内部で、同じ処置セッションにおいて、治療目的のために、例えば約0.1mmから約20mm、好ましくは約1mmから約10mmの適切な厚さの組織を除去し、同時に空洞の壁からの出血、即ち、治療された生体組織内の血管における出血を凝固によって止めるためにレーザーエネルギーが続いて分散される低侵襲法が得られる。
【0068】
提案した方法は、如何なる場合でも術後の治療経路(例えば、腫瘍学者によって必要であるとみなされる薬理学的療法)を変更しない。
【0069】
図4A~
図4Fに示した治療方法の説明では、その結果に基づいて即時の組織学的分析を行い、さらなる切除及びレーザー温熱療法治療のための次の処置が実行されることが仮定される。しかしながら、本明細書に記載の方法及び装置は、また、何らかの理由で即時の組織学的分析を進めることができない病変の治療にも適用される。これは、例えば、組織学的確認を必要とする幾つかのタイプの疑わしい微小石灰化で発生する。この場合、生検は第一処置セッションにおいて最初に行われる。これに続いて、実験室で組織学的分析が行われる。
【0070】
生検は、真空アシスト生検用の生検針を使用して、又は別のタイプの器具を使用して、有利には、実質的に上述し、かつ、
図4A~
図4Cに示したような保護カニューレ3を介して、組織内に空洞CVが得られるまで実行され得る。切除ステップは、病変が完全に除去されるまで実行され得る。
【0071】
除去された組織は、その後、実験室で組織学的分析に供される。試験の結果に基づいて、病変マージンのレーザー除去温熱療法からなる治療の第二ステップが実行され得る。この場合、組織学的分析は生検後に行われるので、処置の第二ステップは、先に形成された空洞に達するまで外部カニューレ3を再び導入し、次いで、外部カニューレ3を介して、複合部材5を導入し、
図4D、4E及び4Fに示した上述の処置を実行する第二セッションにおいて実行される。
【0072】
第一ステップにおける組織の最初の除去を実行し、これに続いて組織学的分析を行うという組織学的分析を別の方法で遅らせて、この方法を実行する可能性は排除されない。組織学的分析により全切除とレーザー治療の必要性が確認された場合、第二ステップにおいて、病変塊の切除を完了し、その後、レーザー治療が行われる。この場合、本質的に、組織の除去は、一部は第一ステップ(処置の第一セッション)で、一部は第二ステップ(処置の第二セッション)で行われる。
【0073】
最終的に、手順の低侵襲性により、生検手順と同時に、即ち、リアルタイム、即ち、即時に生検を実行することによって、この方法を容易に適用することが可能になり、その場合、第一処置セッションにおいて採取されたアンプルの実験室での組織学的分析が実行され、レーザー治療は第二セッションに遅らされる。
【0074】
膨張可能バルーン25は、様々な形状を有することができ、これは、治療すべき組織に形成される空洞CVの形状に応じて選択され得る。幾つかの実施形態では、膨張可能バルーンは、膨張構造において、球形又は球形のような形状、即ち、1に近い比率、典型的には、約0.7より大きい比率、例えば、約0.8より大きい比率の短軸及び長軸を有する楕円形断面を有し得る。他の実施形態では、膨張可能バルーン25は、膨張した構造において、円筒形、又は犬の骨の形状、又は任意の他の適切な形状を有し得る。膨張可能バルーン25は、柔軟で実質的に伸張性を有しない材料で作ることができ、又は、例えば、適切な内圧を受けた時に弾性的又は可塑的にのびることができる伸長可能な材料で作ることができる。前述の説明では、乳腺の腫瘍病変の治療のための本明細書に記載の方法及び装置の使用について特に言及されているが、装置及び方法の少なくとも幾つかの利点は、他の病変、特に腫瘍型、即ち、限定するものではないが、異なる器官、好ましくは、肝臓、甲状腺、前立腺、腎臓又は他の軟組織のような軟組織の腫瘍の治療にも使用することができることは理解されるべきである。さらに、本明細書に開示される技術、方法及び装置は、動物における同様の疾患の治療のために、医学だけでなく獣医学にも適用することができる。本明細書で説明した方法及び装置を植物界において使用する可能性も排除されない。
【0075】
さらにまた、真空アシスト生検針の使用、即ち、吸引を通して組織切除を容易に、又は、促進する特定の適用例が示されているが、病変、例えば、腫瘍組織を除去するために、様々な器具、特に様々な動作原理に基づく生検針が使用され得ることは理解されるべきである。従って、本明細書に記載の実施形態では、生検針は、任意の組織切除装置であり得、特に、例えば、外部カニューレを通して、治療されるべき病変が位置する器官又は他の部位に挿入可能である。
【0076】
これに関して、例えば添付図面を参照して説明したカニューレ3のような外部カニューレは、特定の生検針での作業に適した任意の形状、又は、使用する生検針の種類に応じた任意の形状を有し得ることに留意されたい。例えば、Mammotome(登録商標)のような真空アシスト生検用の生検針の場合、カニューレ3は非円形断面を有し得る。保護カニューレ7及び/又は複合部材5の他の構成要素は、生検針のカニューレ3の断面と互換性のある断面を有するように、又は、生検針と組み合わせて使用されるように成形され得る。
【0077】
本明細書に開示されている技術は、特に、以下で定義する方法に関する。
方法1.
病変の組織を切除することによって組織内に形成された空洞(CV)に隣接するまで外部カニューレ(3)を組織内に挿入するステップ、
前記外部カニューレ(3)を通してレーザー温熱療法治療装置(1; 5)を前記空洞(CV)に向けて挿入するステップ、及び
レーザー温熱療法治療装置(1)の光ファイバー(23)を介して前記空洞(CV)にレーザーエネルギーを送るステップ
を含むことを特徴とする組織の病変の治療方法。
方法2.
外部カニューレ(3)を組織に挿入するステップ、
外部カニューレ(3)を通して病変(T)に向けて生検針(41)を挿入するステップ、
生検針(41)を介して、前記病変(T)から少なくとも一つの組織フラスチュール(F)を除去し、好ましくは、生検針によって許容される範囲で病変の最大部分を除去し、空洞(CV)を形成するステップ、
外部カニューレ(3)から生検針(41)を引き抜くステップ、
前記少なくとも一つの組織フラスチュールを取り出すことによって得られた空洞(CV)に向けてレーザー温熱療法治療装置(1; 5)を挿入するステップ、及び
レーザー温熱療法治療装置(1)の光ファイバー(23)を介して前記空洞(CV)にレーザーエネルギーを送り、前記レーザーエネルギーを介して病変のマージンを除去するステップ
を含むことを特徴とする組織の病変の治療方法。
方法3.
前記空洞に向けてレーザー温熱療法治療装置を挿入するステップが、
外部カニューレ(3)から生検針を引き抜いた後に、外部カニューレを所定の位置に保持するステップ、及び
レーザー温熱療法治療装置を、生検針を介して得られた空洞に到達するまで、所定の位置に保持された同じ外部カニューレ(3)を通して挿入するステップ
を含むことを特徴とする方法2に記載の組織の病変の治療方法。
方法4.
病変から少なくとも一つの組織フラスチュール(F)を除去するステップが、
病変が完全に除去されるまで、複数のフラスチュールを順次除去するステップから成る
ことを特徴とする方法2又は3に記載の組織の病変の治療方法。
方法5.
前記少なくとも一つの組織フラスチュールに対して、リアルタイムに、即ち、即時に組織学的分析を実行するステップをさらに含む
ことを特徴とする方法2、3又は4に記載の組織の病変の治療方法。
方法6.
前記少なくとも一つの組織フラスチュールを少なくとも二つの部分に、好ましくは、前記フラスチュールの長手方向に平行な分離面に沿って分割するステップを含む
ことを特徴とする方法5に記載の組織の病変の治療方法。
方法7.
a.前記少なくとも二つの部分のうちの第一の部分に対してリアルタイム組織学的分析を実行するステップ、及び
b.遅延組織学的分析のために、前記少なくとも二つの部分のうちの第二の部分を保持するステップ
を含むことを特徴とする方法6に記載の組織の病変の治療方法。
方法8.
少なくとも一つの組織フラスチュール(F)を除去するステップが、
前記生検針(41)を介して複数の組織フラスチュール(F)を順次除去し、前記複数の組織フラスチュール(F)の少なくとも幾つかをリアルタイム組織学的分析に供するステップを含む
ことを特徴とする方法1~方法7の何れかに記載の組織の病変の治療方法。
方法9.
前記生検針(41)を介して複数の組織フラスチュール(F)を順次除去するステップが、
前記生検針の軸の周りに相互にオフセットされた複数の連続する角度位置に前記生検針を配置するステップを含み、
前記オフセットされた角度位置の各々で組織フラスチュールを収集する
ことを特徴とする方法8に記載の組織の病変の治療方法。
方法10.
前記生検針(41)が真空アシスト生検用の生検針である
ことを特徴とする方法2~方法9の何れかに記載の組織の病変の治療方法。
方法11.
前記空洞(CV)にレーザーエネルギーを送るステップが、
例えば、光ファイバ(23)を収容するカテーテルに隣接するか又はそれに同軸の吸引パイプを介して空洞から吸引することで液状、固体状又は気体状の残骸を除去するステップを含む
ことを特徴とする方法1~方法10の何れかに記載の組織の病変の治療方法。
方法12.
吸引によって空洞から残骸を除去するステップが、
洗浄液を空洞に分配し、洗浄液及び残骸を空洞から吸引するステップを含む
ことを特徴とする方法11に記載の組織の病変の治療方法。
方法13.
空洞(CV)にレーザーエネルギーを送るステップが、
光ファイバ(23)がつながる膨張可能バルーン(25)を空洞に挿入するステップ、
充填及び膨張流体を用いて空洞(CV)内で膨張可能バルーン(25)を膨張させて、空洞(CV)の壁を伸張させるステップ、及び
膨張可能バルーン(25)の膨張された容積を介して、かつ、空洞の壁に接触している前記バルーンの可撓性の壁を介してレーザービームを送るステップ
を有することを特徴とする方法1~12の何れかに記載の組織の病変の治療方法。
方法14.
充填及び膨張流体が拡散粒子を含み、ファイバ先端から送られるレーザーエネルギーを、膨張可能バルーン(25)の壁に向けて均一な方法で拡散する
ことを特徴とする方法13に記載の組織の病変の治療方法。
方法15.
膨張可能バルーン(25)内で充填及び膨張流体を連続的又は不連続的に循環させるステップをさらに含む
ことを特徴とする方法13又は14に記載の組織の病変の治療方法。
方法16.
装置(1; 5)を空洞(CV)に向けて挿入するステップが、
外部カニューレ(3)に、その遠位端(21A)に膨張可能バルーン(25)を備えたカテーテル(21)を含む保護カニューレ(7)を挿入するステップであって、前記カテーテル(21)が光ファイバー(23)を備え、カテーテル(21)の遠位端(21A)及び拡張可能なバルーン(25)が、保護カニューレ(7)内に一体的に収容されているステップと、
保護カニューレ(7)の端部、及びそこに収容されている膨張可能バルーン(25)を、外部カニューレ(3)の遠位端(3A)を超えて空洞(CV)内に入れるステップと、
保護カニューレ(7)を、外部カニューレ(3)の近位端(3B)に向けて外部カニューレ(3)内に引っ込めるステップと、
膨張可能バルーン(25)を空洞(CV)で膨張するステップと、
膨張したバルーン(25)を通して光ファイバー(23)によってレーザーエネルギーを送るステップと
を有することを特徴とする方法1~15の何れかに記載の組織の病変の治療方法。
方法17.
外部カニューレ(3)内に、保護カニューレ(7)に収容された管状吸引部材(9)を挿入するステップと、
光ファイバ(23)を介してレーザーエネルギーを送るステップ中に、管状吸引部材(9)を介して前記空洞(CV)で吸引を行うステップと
をさらに有することを特徴とする方法16に記載の組織の病変の治療方法。
方法18.
外部カニューレ(3)に、保護カニューレ(7)に収容された管状吸引部材(9)を挿入するステップであって、前記管状吸引部材(9)に、好ましくは、目詰まり防止機能を有する吸引パイプと、洗浄液供給パイプとが設けられ、カテーテル(21)が管状吸引部材(9)内に配置されているステップと、
光ファイバ(23)を介したレーザーエネルギー供給ステップ中に、前記供給パイプを用いて、前記空洞に洗浄液を供給し、かつ、前記吸引パイプを介して前記空洞内から洗浄液及び残骸を吸引するステップと
をさらに有することを特徴とする方法17に記載の組織の病変の治療方法。