(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】耐熱性カーボンコーティング
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240220BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240220BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240220BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240220BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C23C14/06 F
C23C14/06 P
C23C26/00 C
B32B7/027
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2021524997
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2019080620
(87)【国際公開番号】W WO2020094817
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510302157
【氏名又は名称】ナノフィルム テクノロジーズ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanofilm Technologies International Limited
【住所又は居所原語表記】28 Ayer Rajah Crescent,#02-02/03,139959 Singapore SINGAPORE
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】シ,シュ
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098845(JP,A)
【文献】特開2016-056435(JP,A)
【文献】特表2009-504919(JP,A)
【文献】特開2010-116295(JP,A)
【文献】特開2014-122415(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106637207(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0129934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F16L 59/00-59/22
C23C 14/00-14/58
C23C 24/00-30/00
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42,43/50
B29C 45/26-45/44,45/64-45/68,45/73
B29C 49/48-49/56,49/70
B29C 51/30-51/40,51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層コーティングを有する被覆された基材であって、該被覆された基材が、以下の順で:
(a)基材;
(a-i)SiCを含むシード層;
(b)
Si
3
N
4
を含む断熱層;
(c)
SiCを含む界面層;および
(d)ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層;
を含み、該界面層が、該ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層の該断熱層への密着を促進する、被覆された基材。
【請求項2】
前記断熱層が0.2μmから1μmの厚さを有する、
請求項1に記載の被覆された基材。
【請求項3】
前記断熱層の熱伝導率が25℃の温度で測定した場合、10W/(m,K)またはそれ以下である、
請求項1または2に記載の被覆された基材。
【請求項4】
前記ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層が0.1μmから1μmの総厚さを有する、
請求項1から3のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項5】
前記界面層が0.05μmから0.3μmの厚さを有する、
請求項1から4のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項6】
前記コーティングの前記総厚さが1μmから5μmである、
請求項1から5のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項7】
前記基材がグラファイトを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項8】
前記グラファイト基材が有機シーラントで黒鉛化されている、請求項
7に記載の被覆された基材。
【請求項9】
前記基材がSiO
2
で被覆されたセラミック材料である、請求項1から6のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項10】
ta-C
からなる2つまたはそれ以上の層がある、
請求項1から9のいずれかに記載の被覆された基材。
【請求項11】
前記界面層が、前記断熱層とta-C
からなる第1層とのものの間の中間であるヤング率および/または硬さの値を有
し、および/またはヤング率および/または硬さが、該界面層に隣接する該ta-Cからなる層から最上部のta-C層まで同じままであるか、または増加する、
請求項10に記載の被覆された基材。
【請求項12】
請求項1から8および10から11のいずれかに記載の多層コーティングで被覆された基材であって、
(a)前記基材が有機シーラントでシールされたグラファイトであり、
(ai)前記シード層がSiCを含み、かつ0.1μmから0.2μmの厚さを有し、
(b)前記断熱層がSi
3N
4を含みかつ0.4μmから0.6μmの厚さを有し、
(c)前記界面層がSiCを含みかつ0.1μmから0.2μmの厚さを有し、そして
(d)
前記ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層が0.1μmから0.2μmの厚さを有する、被覆された基材。
【請求項13】
請求項1から
4、6および9から11のいずれかに記載の多層コーティングで被覆された基材であって、
(a)前記基材がSiO
2
で被覆されたセラミッ
クであり、
(a(i))
前記シード層がSiCからなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを
有し;
(b)前記断熱層がSi
3N
4からなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを有し;
(c)前記界面層がSiCからなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを有し;そして
(d)
前記ta-Cからなる1つまたはそれ以上の層が0.4μmから0.8μmの厚さを有する、被覆された基材。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の被覆された基材の作製方法であって、前記基材に以下の順で
(a-i)SiCを含むシード層;
(a)
Si
3
N
4
を含む断熱層;
(b)
SiCを含む界面層:および
(c)ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層
を含むコーティングを析出させる工程を包含し、
該界面層が、
該ta-C
からなる1つまたはそれ以上の層の該断熱層への密着を促進する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温に対して耐性でありかつ高温で安定である改良されたカーボンコーティング、およびそのようなコーティングを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な析出技術が基材のコーティングに使用されている。蒸着技術は、代表的にはマイクロエレクトロニクスアプリケーションやヘビーデューティーアプリケーションを含む、様々なタイプのアプリケーションで薄膜析出層を形成するために使用されている。このような析出技術は、2つの主要なカテゴリーに分類され得る。このような析出技術の第1のカテゴリーは、化学蒸着(CVD)として知られている。CVDは一般に、化学反応によって生じる析出プロセスをいう。CVDプロセスの一般的な例には、半導体Si層析出、エピタキシー、および熱酸化が挙げられる。
【0003】
析出の第2のカテゴリーは、一般に物理蒸着(PVD)として知られている。PVDは一般に、物理的プロセスの結果として生じる固形物質の析出をいう。PVDプロセスの根底にある主な概念は、析出した材料が直接の物質移動を介して基材表面に物理的に移動することである。代表的には、プロセス中に化学反応は発生せず、析出層の厚さは、CVDプロセスとは対照的に化学反応速度から独立している。
【0004】
スパッタリングは、基材上に化合物を析出するための公知の物理蒸着技術であり、原子、イオン、または分子は、粒子衝撃によってターゲット材料(スパッタターゲットとも呼ばれる)から放出され、放出された原子または分子は、薄膜として基材表面に蓄積する。
【0005】
別の公知の物理蒸着技術はカソードアーク蒸着法である。この方法では、電気アークが使用され、カソードターゲットから材料を蒸発させる。その結果、得られる気化材料は基材上で凝縮してコーティングの薄膜を形成する。
【0006】
アモルファスカーボンは、結晶形を有さない炭素の遊離の反応体である。様々な形態のアモルファスカーボン膜が存在し、これらは通常、膜の水素含有量と膜中の炭素原子のsp2:sp3比によって分類される。
【0007】
この分野の文献の例では、アモルファスカーボン膜は7つのカテゴリーに分類される(フラウンホーファー表面工学および薄膜研究所の「カーボンコーティングの名前インデックス」から抜粋した以下の表を参照のこと)。
【0008】
【0009】
四面体の水素を含まないアモルファスカーボン(ta-C)は、水素をほほとんどまたは全く含まず(5モル%未満、代表的には2モル%未満)、sp3混成炭素原子を多く含む(代表的にはsp3状態にある炭素原子が80%を超える)という点で特徴付けられる。
【0010】
「ダイヤモンドライクカーボン」(DLC)という用語は、すべての形態のアモルファスカーボン材料を指すために時折使用されることがあるが、本明細書で使用されるこの用語は、ta-C以外のアモルファスカーボン材料を指す。DLC製造の一般的な方法は、炭化水素(例えばアセチレン)を使用するため、(原料が代表的には水素を含まない高純度グラファイトであるta-C膜とは対照的に)膜に水素が導入される。
【0011】
言い換えれば、DLCは代表的には、50%を超えるsp2炭素含量および/または20モル%以上の水素含量を有する。DLCは、ドープされていないか、あるいは金属または非金属でドープされ得る(上記表を参照)。
【0012】
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングは、硬度値が高く、摩擦係数が低いため、耐摩耗性コーティングとして有用である。これまで、DLCコーティングは切削工具、自動車エンジン部品、その他の分野で広く使用されてきた。しかし、一部の分野では、コーティングが高温での良好な耐摩耗性を維持するために必要とされる。しかし、これらの用途では、従来のダイヤモンドライクカーボンコーティングはこれらの要件を満たさない。特に、水素化DLCは代表的には、水素ガスを放出するため、高温では不安定になる。
【0013】
耐熱性カーボンコーティングは、ガラスレンズの製造に使用される金型のコーティングに特に有用である。対称レンズは研削によって形成され得るが、非対称レンズは代表的には、軟化ガラスから成形される。金型は高温(例えば600~700℃)に耐えることができなければならず、形状およびサイズは温度に依存しない必要がある(つまり、金型の温度が上下しても金型が伸縮しないようにする必要がある)。現在、タングステンカーバイドの金型がこの目的のために使用されている。しかし、これらの金型の寿命は限られている。
【0014】
同様に、湾曲した携帯電話スクリーンの製造では、現在、グラファイト製の金型が高温の無酸素(例えば窒素)環境下で軟化したガラス材料をプレスするために使用されている。この現在のプロセスには、グラファイト製の金型の寿命が短いという欠点がある(通常、650℃の環境では、プレスできる製品の数が非常に限られている)。これに加えて、収量は低い。グラファイト自体は比較的緩い材料であるため、グラファイトの「ダスト」がグラファイト製の金型に集まる可能性がある。たとえ金型の表面が研磨されていても、プレスプロセス中に、時間の経過とともにガラスの表面がグラファイトの「ダスト」粒子で汚染される。スクリーンの硬度を上げるために、一部の湾曲したスクリーンのプレス温度が850~900℃に上昇させられた。この温度では、グラファイト製の金型の寿命はさらに短くなる。これらの問題の結果として、またこのプロセスの高コストに関連して、湾曲した携帯電話のスクリーンを作製する用途およびコストは大きく影響を受ける。
【0015】
WO2007/020138は、基材、中間層、および四面体炭素層を含む被覆された基材であって、四面体炭素層のヤング率は、中間層のヤング率よりも大きくなければならない基材について言及している
【0016】
JP2010-116295は、ガラス製金型のための多層コーティングを開示している。
【0017】
WO2017/011315は、熱膨張係数が低いカプセル化コーティングを有するガラス製金型を開示している。
【0018】
Bernhardtら、「Development of a ta-C diamond-like carbon (DLC) coating by magnetron sputtering for use in precision glass molding」, Materialwissenschaft Und Werstofftechnik.,第44巻,第8号,(2013年),p.661-666は、ガラス成形システムのためのコーティングとしてDLCを使用することを教示している。
【0019】
高温で安定であるカーボンコーティングは、サーマルプリンタのサーマルヘッドにも使用され得る。現在、サーマルプリントヘッドは、プリンタから紙への熱の伝達を可能にする薄膜でコーティングされている。しかし、既存のサーマルプリントヘッドに共通する問題は、コーティングがすぐに摩耗するため、頻繁に交換を必要とすることである。より耐摩耗性のコーティングはこの問題を減じることであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、例えば、レンズ製造またはサーマルプリントヘッドの金型に使用するために、容易に損傷せず、高温(例えば、400℃を超える、好ましくは600℃を超える)に対して耐性でありかつ高温で安定である硬質のカーボンコーティングの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明者は、レンズおよび湾曲したガラススクリーンをプレスする用途で酸素を含まない環境にて高温(例えば、600℃から900℃)で使用され得るグラファイト基材上にta-Cを適用することを可能にすることを含む、様々な用途を有する耐熱性コーティングを開発した。
【0022】
したがって、本発明は、多層コーティングで被覆された基材であって、以下の順で:
(a)基材;
(b)断熱層;
(c)界面層;および
(d)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含み、ここで、界面層はta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の断熱層への密着を促進する、基材を提供する。
【0023】
本発明はまた、特定の基材(例えば、グラファイト)について、多層コーティングで被覆された基材であって、以下の順で:
(a)基材;
(b)界面層;
(c)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;および必要に応じて界面層と基材との間のシード層、
を含み、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の基材への密着を促進するか、またはシード層が存在する場合、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層のシード層への密着を促進する、基材を提供する。
【0024】
さらに提供されるのは、以下の順で:
(a)断熱層;
(b)界面層;および
(c)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含み、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の断熱層への密着を促進する、基材用のコーティングである。
【0025】
さらに提供されるのは、以下の順で:
(a)界面層;
(b)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;および必要に応じて界面層と基材との間のシード層、
を含み、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の基材への密着を促進するか、またはシード層が存在する場合、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層のシード層への密着を促進する、特定基材(例えば、グラファイト)用のコーティングである。
【0026】
さらに提供されるのは、以下の順で:
(a)断熱層;
(b)界面層;および
(c)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含み、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の断熱層への密着を促進する、基材上にコーティングを析出させる工程を含む、基材のコーティング方法である。
【0027】
断熱層を含めると、コーティングの耐熱性が向上する。しかし、適切な界面層も、断熱層を上部のta-Cコーティングに密着するために必要であることが見出された。特定の実施形態では、特定基材(例えば、グラファイト)について、絶縁層は省略される。
【0028】
したがって、本発明は、以下により詳細に記載される本発明の実施形態の試験によって示されるように、良好な耐摩耗性および耐熱性を示す薄くて硬いコーティングを用いる基材のコーティングを可能にする。コーティングは、とりわけ、非対称レンズまたは湾曲したガラススクリーンの製造のためのガラス製金型、および感熱印刷ヘッドに使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、以下の添付の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、実施例1に記載された本発明のコーティングの構造(原寸に比例していない)の概略図を示す。
【
図2A】
図2Aは、実施例1に記載の本発明のコーティングの硬さ試験中に得られた負荷曲線および除荷曲線を示す。
【
図2B】
図2Bは、実施例1に記載の本発明のコーティングの硬さ試験中に得られた負荷曲線および除荷曲線を示す。
【
図3】
図3は、実施例3に記載された本発明のコーティングの構造(原寸に比例していない)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記のように、本明細書で使用される「四面体アモルファスカーボン」(ta-CまたはTAC)という用語は、低水素含量および低sp2炭素含量を有するアモルファスカーボンをいう。
【0031】
ta-Cは、無秩序なダイヤモンドに存在するものと同様に、無秩序なsp3で構成され、強い結合で連結されていると説明されている高密度のアモルファス材料である(Neuville S、「New application perspective for tetrahedral amorphous carbon coatings」, QScience Connect 2014:8, http://dx.doi.org/10.5339/connect.2014.8を参照)。ta-Cはまた、ダイヤモンドと構造的に類似しているため、硬度値がしばしば30GPaを超える非常に硬い材料である。
【0032】
例えば、ta-Cは、10%未満、代表的には5%またはそれ以下、好ましくは2%またはそれ以下(例えば1%またはそれ以下)の水素含量を有し得る。ここで提供される水素の含量の百分率は、(質量による水素の百分率ではなく)モル%をいう。ta-Cは、30%未満、代表的には20%またはそれ以下、好ましくは15%またはそれ以下のsp2炭素含量を有し得る。好ましくは、ta-Cは、2%またはそれ以下の水素含量および15%またはそれ以下のsp2炭素含量を有し得る。ta-Cは、好ましくは他の材料(金属または非金属)でドープされていない。
【0033】
対照的に、本明細書で使用される「ダイヤモンドライクカーボン」(DLC)という用語は、ta-C以外のアモルファスカーボンを指す。したがって、DLCはta-Cよりも水素含有量とsp2炭素含量が多くなる。例えば、DLCは、20%またはそれ以上、代表的には25%またはそれ以上、例えば30%またはそれ以上の水素含量を有し得る。ここで提供される水素の百分率含量は、(質量による水素の百分率ではなく)モルパーセンテージを指す。DLCは、50%またはそれ以上、代表的には60%またはそれ以上のsp2炭素含量を有し得る。代表的には、DLCは、20%より多い水素含量と、50%より多いsp2炭素含量を有し得る。DLCは、ドープされていないか、あるいは金属および/または非金属でドープされていてもよい。
【0034】
本発明は、高温(例えば、500℃を超える温度)に晒された場合でも、安定であり、かつそれらの高い硬度および耐摩耗性を維持することができる析出ta-Cコーティングを有利に提供する。
【0035】
本発明は、以下の順で:
(a)基材;
(b)断熱層;
(c)界面層;および
(d)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含む多層コーティングでコーティングされた基材を提供し、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の断熱層への密着を促進する。
【0036】
コーティングの最上層(d)は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層であり、これらは、好ましくはta-Cからなる。ヤング率および/または硬度が同じままであるか、層から層へと増加し、最上部のta-C層(通常はコーティングされた基材の外側に露出している層)の特性でピークまたは最高になる、いくつかのそのような機能層が存在し得る。好ましくは、ヤング率および/または硬度は、層から層へと増加し、最上部のta-C層の特性でピークに達するか、または最高潮に達する。(例えば以下の実施例で報告されているような)被覆された基材のコーティング硬度の試験は、この最終製品で行われるが、個々の層のヤング率と硬度もまた、例えば、理論的に、あるいはさらなるまたは最終的な層の付与/析出の前に未完成の製品を試験することにより、試験されるか、あるいは決定され得る。
【0037】
ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の総厚さは、代表的には2μmまたはそれ以下、より代表的には0.1μmから1μm、好ましくは0.1μmから0.7μm、より好ましくは0.1μmから0.3μmである。
【0038】
本発明の目的は、高温で安定であり、かつそれらの硬度および耐摩耗性を維持することができる硬質のコーティングを提供することである。本発明の被覆された基材は、好ましくは、少なくとも2000HV、好ましくは2500HVまたはそれ以上の硬度を有するコーティングを有する。硬度値が約3000HVのコーティングを含め、これらの範囲内で測定された硬度値の範囲が広いコーティングが作製されている(以下の実施例を参照)。コーティングがta-Cを含む1層より多くを含む場合、一般に、界面層に隣接するta-C層(ta-C層は基材に最も近いと言われることもある)は、より柔らかいta-C層であり、硬度を界面層からこの最初のta-C層を通って最上部の外側のta-C層に移行させることができる。この最も近いta-C層は、1000HVまたはそれ以上の硬度を有し得る。これは、上部のta-C層までさらに硬度を上げるためのベースを提供する。硬度の増加は、ta-C析出パラメータの変化によって適切に達成される(例えば、基材のバイアスを調整してFCVAを使用する場合)。界面層に隣接する機能層のta-C層もまた、1200HVまたはそれ以上、または1600HVまたはそれ以上の硬度を有し得る。
【0039】
断熱層は、熱伝導率が低い(例えば、25℃の温度で測定した際に10W/(m.K)またはそれ以下、好ましくは1.0W/(m.K)またはそれ以下の熱伝導率を有する)材料を含むか、またはその材料からなる。代表的には、断熱層は非金属である。断熱層は金属元素の化合物を含み得るが、断熱層は金属元素または合金からなるものではない。
【0040】
適切な断熱材料の例としては、シリコン(Si)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、二ケイ化チタン(TiSi2)、ケイ化クロム(CrSi)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、および窒化チタンアルミニウム(TiAlN)が挙げられる。好ましい例としては、Si3N4、AlNおよびAlTiNが挙げられる。コーティングが600℃を超える温度(例えば、900℃まで)で安定であることが所望される場合、断熱材料は、代表的には、シリコン含有化合物であるか、またはそれを含む。適切なシリコン含有化合物の例は、シリコン(Si)、窒化ケイ素(Si3N4)、二ケイ化チタン(TiSi2)およびケイ化クロム(CrSi)である。好ましくは、ケイ素含有化合物は窒化ケイ素(Si3N4)である。
【0041】
断熱層の総厚さは、代表的には0.1μmから1μm、好ましくは0.2μmから0.8μm、より好ましくは0.3μmから0.7μmである。以下に説明する実施例では、断熱層の厚さは約0.4μmから0.5μmであり、多くの場合、約0.5μmである。
【0042】
断熱層とta-Cとの間の密着は代表的には不十分であるため、本発明のコーティングはさらに界面層を含む。界面層は、密着を促進するために、断熱層とta-Cとの間の中間のヤング率および/または硬度値を有し得る。これに関連して、中間とは、硬度の場合、層間で少なくとも50HVまたは少なくとも100HVの増加を示し、ヤング率の場合、層間で少なくとも5または10の増加を示す。
【0043】
追加的または代替的に、界面層は、2つの層の間の化学結合を強化するために断熱層に存在する化学元素を含む。界面層はまた、界面層とta-Cを含む1つまたはそれ以上の層との間の化学結合を強化するために、炭化物化合物から形成され得る。
【0044】
例えば、界面層は、SiC、WC、TiCまたはそれらの混合物を含み得るか、またはそれらからなり得る。断熱層がシリコンを含む場合(例えば、断熱層がSi3N4から形成されている場合)、界面層は、好ましくは炭化ケイ素を含むか、または炭化ケイ素からなる。
【0045】
本発明のコーティングは、広範囲の基材上に析出させることができ、基材の選択は、一般に、本発明の特徴ではない。適切な基材には、グラファイト、有機シーラントでシールされたグラファイト、金属、合金、スチール(例えばスチール、ステンレススチール、HSS、工具鋼および合金鋼)ならびに、例えばAl2O3、ZrO2を含むセラミックが挙げられる。これらの基材の定義には、基材のコーティングが施された物品が挙げられる(例えば、グラファイトコーティングを有する金型は、基材としてのグラファイトを参照することにより包含される)。
【0046】
上記のように、本発明の耐熱性カーボンコーティングの1つのアプリケーションは、非対称レンズの製造である。本願発明者は、本発明のコーティングで被覆されたグラファイト製の金型が、非対称レンズの製造に適切に使用できることを見出した。最も外側のta-C層は硬質であるため、損傷に強く(ガラスに欠陥が生じる可能性がある)、高温で安定しており、成形プロセス中にガラスに付着しない。このアプリケーションでは、形状とサイズが温度に大きく依存しないため、グラファイトが好ましい基材である。
【0047】
グラファイトは多孔質であるため、グラファイト基材は(コーティングの前に)基材に有機シーラントをスプレーし、無酸素の状態で、例えば約1000℃の温度まで加熱することによってシールされ得る。これはシーラントの熱分解を引き起こし、シーラント内に架橋炭素構造を提供する。グラファイト表面用に特別に配合された適切な有機シーラントは市販されており、当該分野において公知である。これらのシーラントの性質は、本発明の一部を形成しない。このシーリングプロセスは、グラファイトの穴を埋め、コーティングプロセス中にそうでなければ緩む可能性のあるグラファイト粒子を付着させ、そしてまたグラファイト基材へのコーティングの密着を促進する。
【0048】
コーティングは、さらに必要に応じて、基材への断熱層の密着を促進するために、基材と断熱層との間にシード層を含み得る。シード層の組成は、基材と断熱層の組成に依存する。適切なシード層の例としては、Si、SiN、SiC、WC、TiSi、CrSi、およびAlNが挙げられる。
【0049】
SiCは好ましいシード層である。基材がグラファイトであり、断熱材がシリコン含有層である場合、シード層は炭化ケイ素(SiC)層であることが好ましい。
【0050】
上述のように、本発明のコーティングのさらなる使用は、サーマルプリンタ用のサーマルヘッドの製造である。この用途では、基材は代表的にはSiO2で被覆されたセラミック材料である。基材は、本発明のコーティングで被覆される前に、必要に応じてさらにSiCで被覆され得る。
【0051】
界面層およびシード層の厚さは、代表的にはそれぞれ0.05μmから1μm、例えば、0.05μmから0.5μm、好ましくは0.1μmから0.3μmである。
【0052】
したがって、コーティングの総厚さは代表的には最大5μmまで、例えば1μmから5μm、好ましくは1μmから3μm、最も好ましくは1μmから2μmである。
【0053】
シード層、断熱層、および界面層は、当該分野において公知の多くのPVDまたはCVD方法によって析出され得るが、代表的には、これらの層は、スパッタリングによって析出される。
【0054】
本発明の特定の被覆された基材は、以下の順で:
(a)有機シーラントでシールされたグラファイト基材;
(ai)SiCを含み、0.1μmから0.2μmの厚さを有するシード層;
(b)Si3N4を含み、0.4μmから0.6μmの厚さを有する断熱層。
(c)SiCを含み、0.1μmから0.2μmの厚さを有する界面層;および
(d)0.1μmから0.2μmの厚さを有するta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含む。
【0055】
本発明の他の被覆された基材は、以下の順で:
(a)有機シーラントでシールされたグラファイト基材;
(ai)SiCからなり、0.1μmから0.2μmの厚さを有するシード層;
(b)Si3N4からなり、0.4μmから0.6μmの厚さを有する断熱層;
(c)SiCからなり、0.1μmから0.2μmの厚さを有する界面層;および
(d)0.1μmから0.2μmの厚さを有するta-Cからなる1つまたはそれ以上の層;
を含む。
【0056】
本発明のさらに被覆された基材は、以下の順で:
(a)SiO2で被覆されたセラミック基材(必要に応じてさらにSiCで被覆);
(ai)必要に応じて、SiCからなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを有するシード層;
(b)Si3N4からなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを有する断熱層;
(c)SiCからなりかつ0.4μmから0.8μmの厚さを有する界面層;および
(d)0.4μmから0.8μm厚さを有するta-Cからなる1つまたはそれ以上の層;
を含む。
【0057】
一連の実施形態では、本発明はまた、特定の基材について、多層コーティングで被覆された基材を提供し、以下の順で:
(a)基材;
(b)界面層;
(c)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;および必要に応じて、界面層と基材との間のシード層、
を含み、ここで、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の基材への密着を促進し、そしてシード層が存在する場合、これはまた、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層のシード層への密着を促進する。
【0058】
これらの特定の実施形態では、基材は好ましくはグラファイトであるか、またはグラファイトを含み、界面層は好ましくはSiC、TiCまたはWC、より好ましくはSiCである。これらの実施形態の他の任意でかつ好ましい特徴は、本発明の他の実施形態に関して本明細書の他の場所に記載されている通りであり、これらの特定の実施形態については、界面層が、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の基材への密着を促進するか、またはシードが存在する場合に、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層のシード層への密着を促進する。界面層がSiC、TiCまたはWC、より好ましくはSiCである場合、それは界面層およびシード層の両方として作用し得る。
【0059】
したがって、本発明のさらに被覆された基材は、以下の順で:
(a)グラファイト基材;
(ai)SiCからなりかつ0.3μmから0.5μmの厚さを有するシード/界面層;
(b)ta-Cからなりかつ0.3μmから0.5μmの厚さを有する層;
(c)ta-Cからなりかつ0.2μmから0.4μmの厚さを有する第2の層;
を含む。
【0060】
本発明のコーティングは、適切には100ppmまたはそれ以下のO2、より適切には50ppmまたはそれ以下、例えば、約10ppmまたはそれ以下の低酸素環境で使用され得る。このような使用は、一般にすべての基材、特にグラファイト、セラミックおよびスチール、特にグラファイトの基材に適用されます。適切な環境は、不活性ガス環境(例えば窒素または窒素を含む環境)であり得る。このような使用は、高温(例えば500℃を超え1000℃まで)であってもよい。
【0061】
本発明の他のコーティングは、酸素の存在下(例えば空気中)で使用され得る。ただし上記範囲の上限ではあまり適切ではない。酸素中の使用については、グラファイトは一般的にあまり好ましい基材ではない。
【0062】
また、本発明によって提供されるのは、以下の順:
(a)断熱層;
(b)界面層;および
(c)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層;
を含むコーティングを基材上に析出させる工程を包含し、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の断熱層への密着を促進する、基材のコーティング方法である。
【0063】
基材をコーティングする別の方法は、以下の順:
(a)界面層;および
(b)ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層、および必要に応じて界面層と基材との間のシード層;
を含むコーティングを基材上に析出させる工程を包含し、界面層は、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の基材への密着を促進するか、またはシード層が存在する場合、ta-Cを含む1つまたはそれ以上の層のシード層への密着を促進する。
【0064】
本明細書に記載されるように、この方法は、本発明のコーティングを析出させるのに有用であり、かつこの方法は、断熱層、界面層、および/またはta-Cを含む1つまたはそれ以上の層の任意かつ好ましい特徴を含む、コーティングの任意かつ好ましい特徴によってさらに特徴付けられる。
【0065】
従来のCVDおよびPVD法、特にスパッタリングおよびCVAプロセスは公知であり、広範囲の基材に使用されており、そして本発明の方法は、同様に広範囲の基材をコーティングするのに適している。
【0066】
本発明のコーティングは多層であり、それぞれの層は、CVD、PVD、マグネトロンスパッタリングおよびマルチアークイオンめっきを含む一連の公知かつ従来の析出技術を使用して独立して析出され得る。スパッタリングは、特に中間層(シード層(存在する場合)、断熱層、および界面層を含む)に適した方法の1つである。CVAは、ta-Cを含むまたはta-Cからなる層に適切に使用される。CVAプロセスは代表的には、例えば以下に説明するように、フィルタ処理陰極真空アーク(FCVA)プロセスである。FCVAコーティングのための装置および方法は公知であり、本発明の方法の一部として使用され得る。FCVAコーティング装置は、代表的には、真空チャンバー、アノード、ターゲットからプラズマを発生するためのカソードアセンブリ、および基材を所定電圧にバイアスするための電源を備える。FCVAの性質は従来のものであり、本発明の一部ではない。
【0067】
硬さは、すべての金属に使用でき、硬さ試験のうち最も広いスケールの1つを有するビッカース硬さ試験(1921年にVickers社のRobert L. SmithおよびGeorge E. Sandlandによって開発された(標準試験についてはASTM E384-17も参照)を使用して適切に測定される。試験で得られた硬さの単位はビッカースピラミッド数(HV)として知られており、パスカルの単位(GPa)に変換され得る。硬さの数値は、試験で使用されたくぼみの表面積全体の荷重によって決定される。例として、マルテンサイト(鋼の硬質体)は約1000のHVを有し、ダイヤモンドは約10,000HV(約98GPa)のHVを有し得る。ダイヤモンドの硬さは、正確な結晶構造と配向によって変化し得るが、約90から100GPaを超える硬さが一般的である。
【0068】
本発明を説明する際に、硬さおよび/またはヤング率の値が、値または値の範囲として、または代表的な値の範囲として与えられる。この値は、完成した被覆された基材上で直接測定されたものである場合があり、これは文脈から明らかである。多層コーティング内の個々の層の硬さおよび/またはヤング率は、一般に、その層が鋼基材上の単一層として所定の析出条件を使用して析出されたときの値を示す。基材へのコーティングの密着性が低い場合、硬さおよび/またはヤング率は、一般に、基材上に析出されたシード層(本明細書に記載される)上に析出したその層の硬さおよび/またはヤング率を示す。与えられた値は、多層コーティングの個々の層内の硬さおよび/またはヤング率を正確に反映する。
【0069】
本発明は、有利には、高い硬さおよび耐摩耗性および耐熱性のta-Cベースのコーティングを提供する。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
本発明のコーティングの第1の例(
図1、10を参照)を、以下に記載のように調製した。
【0071】
【0072】
要約すると、シールされたグラファイト基材上に、SiCのシード層をスパッタリングし、続いてSi3N4、次いでSiCの順に上記の表の厚さで層をスパッタリングした。次いで、これらの中間層上に、FCVA装置を用いてta-Cコーティングを析出させた。
【0073】
グラファイト表面用に特別に配合された市販のシーラント(例えばResbond Graphite Sealer 931S-1)をグラファイトガラスレンズ金型の表面にスプレーし、1000℃の真空炉で焼結して基材をシールした。
【0074】
シールされたグラファイト基材のコーティングを、Nafengによって設計および製造された大規模なta-Cコーティング装置を用いて行った。最初に、シールされたグラファイト基材をコーティング装置チャンバーに入れ、次いでこのチャンバーを加熱して排気した。真空下で、コーティングとの密着性を高めるために、基材の表面にイオン洗浄とイオンエッチングとを行った。次いで、マグネトロンスパッタリングによってSiCのシード層を基材上に析出させ、続いてSi3N4、次いでSiCの順に上記表の厚さで層を析出させた。ターゲット物質はSiであり、使用した反応ガスはアセチレンおよび窒素であった。この下層のコーティングが完了した後、FCVAコーティング技術を使用してta-Cの層を析出させた。
【0075】
コーティングの硬さを、ナノインデンター(CSM NHT2)を用いることにより測定した。500℃の温度に晒される前後の負荷曲線および除荷曲線を
図2Aおよび
図2Bにそれぞれ示す。加熱前ではコーティングは2930HVの硬さの値を有し、加熱後では、硬さの値は3044HVであった。したがって、コーティングの硬さは、高温に晒された結果として損なわれていない。
【0076】
(実施例2)
本発明のコーティングの第2の例を、以下の表に示される構造を用いて、実施例1のコーティングと同様の方法で調製した。
【0077】
【0078】
(実施例3)
サーマルプリンタヘッドを、以下の表に示される構造を用いて実施例1のコーティングと同様の方法で被覆した(
図3、30を参照)。
【0079】
【0080】
このコーティングの性能を、大気圧下で500℃に2時間晒した後に評価した。
【0081】
まず、コーティングのサンプルを、クロスハッチカッター(可変長1.5mm2カッター)を使用してカットした。次いで、ある長さの3M610テープをコーティングの切断面に貼り付け、次いで剥がした。テープでコーティングが剥がれなかったため、このコーティングは基材に充分に密着している。
【0082】
コーティングの耐摩耗性の指標として、以下の条件でコーティングに対してテーバー摩耗試験を行った:
・機器:Taber Linear Abraser TLA 5750
・研磨材:CS-17 Wearaser(登録商標)
・試験荷重:1kg重
・サイクル速度:60サイクル/分
・ストローク長:25mm
【0083】
10,000サイクル後、基材は露出せず、引っかき傷はコーティングに観察されなかった。
【0084】
(実施例4)
サーマルプリンタヘッドを、以下の表に示される構造を用いて、実施例1のコーティングと同様の方法で被覆した。
【0085】
【0086】
このコーティングの性能を、大気圧下で500℃に2時間晒した後に評価し、結果は実施例3で得られたものと同等であった。
【0087】
(実施例5)
本発明のさらなるコーティングを、以下に記載されるように調製した。
【0088】
【0089】
このコーティングを、我々の内部試験に供した。このコーティングは、我々のクロスハッチ試験に合格した。コーティングをまた、我々の内部スチールウール試験(1kg、60ms-1、17mm)および我々の内部摩耗試験(2kg、10分)に供した。この場合も、コーティングはこれらのテストの両方に合格した。
【0090】
60Nの負荷でVDI標準3198に従ってさらにテストを行った。このコーティングは、試験終了後に剥がれはないが多少の引っかき傷があったため、HF-2品質クラスに分類されることがわかった。
【0091】
(実施例6)
本発明のさらなるコーティングを、以下に記載のように調製した。
【0092】
【0093】
このコーティングを、我々の内部試験に供した。このコーティングは、我々のクロスハッチ試験に合格した。コーティングをまた、内部スチールウール試験(1kg、60ms-1、17mm)および我々の内部摩耗テスト(2kg、10分)に供した。この場合も、コーティングはこれらのテストの両方に合格した。
【0094】
60Nの負荷でVDI標準3198に従ってさらにテストを行った。このコーティングは、試験の完了後に剥がれや引っかき傷がなかったため、HF-1品質クラスに分類されることがわかった。
【0095】
上記の実施例に見られるように、本発明のコーティングは安定であり、高温に晒されてもそれらの硬さを維持する。