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  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図1
  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図2
  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図3
  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図4A
  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図4B
  • 特許-後退可能なバックフラッシュ器具 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】後退可能なバックフラッシュ器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61F9/007 130C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531439
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 IB2019060637
(87)【国際公開番号】W WO2020121205
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】62/778,443
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シャラー
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューエブラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リンジ
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-016203(JP,A)
【文献】特表2017-500123(JP,A)
【文献】特開平11-019116(JP,A)
【文献】特表2006-522648(JP,A)
【文献】特開平10-225476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 5/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具であって、
ハンドピースと、
前記ハンドピースの遠位端部に連結された近位端部を有する外管と、
アクチュエータと、
前記外管内に収容された内管であって、軟質先端に連結された遠位端部と、前記アクチュエータに連結された近位端部とを有する内管と、
前記ハンドピースの内部に収容され、且つ前記アクチュエータの近位端部に連結された弁と
を含み、
前記弁は、能動吸引モードをサポートするための孔を備え、前記孔は、前記孔を通して空気が吸引されるのを防ぐために、ユーザによって覆われるように適合され、受動吸引モードでは、前記孔は、流体出口として使用し得るように適合され、
前記アクチュエータの後退は、前記弁を圧縮するように構成され、
前記軟質先端は、前記弁が非圧縮状態にあるとき、少なくとも部分的に前記外管の遠位端部を越えて延び、且つ前記弁が圧縮状態にあるとき、少なくとも部分的に前記外管の前記遠位端部内に後退する、手術器具。
【請求項2】
バックフラッシュ器具を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記アクチュエータは、
前記弁の遠位端部に挿入されるように構成された円筒状挿入体と、
前記内管の前記近位端部を収容するように構成された円筒状要素と
を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記弁は、蛇腹状である、請求項1に記載の手術器具。
【請求項5】
前記アクチュエータは、プラスチック材料を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記ハンドピースは、前記ハンドピースの前記遠位端部において、前記アクチュエータを収容するためのキャップを含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項7】
前記キャップは、中空通路であって、それを通して前記アクチュエータが後退することができる、中空通路を含む、請求項6に記載の手術器具。
【請求項8】
前記アクチュエータは、部分的に前記中空通路の外側に延びて、前記アクチュエータを後退させ、且つ解放するための手動操作を可能にする、請求項7に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がReto Grueebler,Thomas Linsi及びPhilipp Schallerである、2018年12月12日に出願された「A RETRACTABLE BACKFLUSH INSTRUMENT」という名称の米国仮特許出願第62/778,443号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、後退可能なバックフラッシュ器具に関する。
【背景技術】
【0003】
バックフラッシュ器具は、概して、身体部位(例えば、患者の眼)から流体(例えば、平衡塩溶液(BSS)、シリコーン油、パーフルオロカーボン(PFC))を真空吸引又は吸引するための手術(例えば、眼科手術)中に使用される。例えば、特定の眼科手術中、流体の抽出、網膜下液の内部ドレナージ、網膜ひだ操作、同時又は順次交換(例えば、液体/空気、空気/ガス、液体/ガス、液体/PFC、PFC/ガスなど)のためにバックフラッシュ器具が使用され得る。特定のバックフラッシュ器具は、バックフラッシュ器具が身体部位又は組織に接触したとき、身体部位又は身体部位の任意の組織が損傷を受けないことを確実にするための軟質の遠位先端を含む。一例では、手術の一部として、バックフラッシュ器具を身体部位内に導入するために、バックフラッシュ器具が弁付きカニューレなどのカニューレに挿入される。しかしながら、軟質先端を備えたバックフラッシュ器具をカニューレに挿入することは、困難であり得、バックフラッシュ器具に損傷を与え得る。例えば、バックフラッシュ器具が弁付きカニューレの弁に挿通されているとき、軟質先端が曲がってトロカールカニューレ内に嵌り込んで動かせなくなることがあり得る。ある場合には、軟質先端が過度に曲がると、軟質先端がバックフラッシュ器具を剪断することさえあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、概して、後退可能なバックフラッシュ器具に関する。
【0005】
本明細書で説明する特定の実施形態は、手術器具であって、ハンドピースと、ハンドピースの遠位端部に連結された近位端部を有する外管と、外管内に収容された内管であって、軟質先端に連結された遠位端部と、アクチュエータに連結された近位端部とを有する内管と、ハンドピースの内部に収容され、且つアクチュエータの近位端部に連結された弁とを含む手術器具を提供する。アクチュエータの後退は、弁を圧縮し、且つ軟質先端を外管の遠位端部内に後退させるように構成され、それにより、軟質先端は、弁が非圧縮状態にあるとき、少なくとも部分的に外管の遠位端部を越えて延び、且つ弁が圧縮状態であるとき、少なくとも部分的に外管の遠位端部内に後退する。
【0006】
以下の説明及び関連する図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の例示的特徴を詳述する。
【0007】
添付の図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の態様を示し、したがって本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、バックフラッシュ器具の従来技術の例を図示する。
図2図2は、いくつかの実施形態による、例示的な後退可能なバックフラッシュ器具を図示する。
図3図3は、いくつかの実施形態による、図2のバックフラッシュ器具の断面図を図示する。
図4A図4Aは、いくつかの実施形態による、図2及び図3に示すバックフラッシュ器具の後退可能なアクチュエータに関連する異なる状態のより詳細な拡大図を図示する。
図4B図4Bは、いくつかの実施形態による、図2及び図3に示すバックフラッシュ器具の後退可能なアクチュエータに関連する異なる状態のより詳細な拡大図を図示する。
図5図5は、いくつかの実施形態による、蛇腹状の弁を備えた例示的なバックフラッシュ器具を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を容易にする目的で、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り同一の参照符号が使用される。一実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図されている。
【0010】
本開示の態様は、後退可能なバックフラッシュ器具を提供する。
【0011】
上記で説明したように、軟質先端を備えたバックフラッシュ器具を弁付きカニューレなどのカニューレに挿入することは、困難であり得、バックフラッシュ器具の軟質先端に損傷を与え得る。本開示で説明する特定の実施形態は、弁付きカニューレへの器具の挿入前に軟質先端を後退させるためのアクチュエータを提供し、それにより、挿入中に軟質先端が曲がるか又は損傷を受けることを防止することにより、これらの欠陥を克服することを試みるものである。
【0012】
図1は、コネクタ101と、ハンドピース102と、外管105と、外管105の遠位端部を越えて延びる軟質先端106が取り付けられた内管(例えば、図3に示す内管312)とを含むバックフラッシュ器具100の従来技術の例を図示する。内管は、ハンドピース102のキャップ107に連結される、外管105により取り囲まれる円筒状中空管である。内管の近位端部は、ホース状であり、且つコネクタ101に直接又は間接的に(例えば、ハンドピース102内のいくつかの他の要素を介して)連結される弁103に連結される。結果として、弁103は、内管とコネクタ101との間に流体接続を提供する。弁103は、バックフラッシュ器具100が動作中であるモードに応じて機能が異なる孔104も含む。例えば、バックフラッシュ器具100は、以下に説明するように、能動吸引モード又は受動吸引モードで使用され得る。
【0013】
本明細書では、様々な構成要素を特定の形状(ホース状又は円筒状など)で説明するが、構成要素は、当業者により理解されるような他の同様の適切な形状をとり得ることに留意すべきである。
【0014】
コネクタ101は、吸引及び/又は洗浄機構を備えた手術用コンソール(図示せず)にハンドピース102を接続する。一例では、外科医などの使用者は、ハンドピース102を使用して、外管105と軟質先端106とを含むバックフラッシュ器具100の先端を、少なくとも部分的にカニューレを通して身体部位内に案内する。身体部位の内部に入ると、バックフラッシュ器具100は、身体部位からの物質(例えば、BSS、油又は他の流体など)の真空吸引又は吸引などの特定の動作を行う。そのような動作中、流体は、コネクタ101と、弁103と、内管とを通して流れる。
【0015】
上述のように、特定の実施形態では、バックフラッシュ器具100は、2つの動作モード:能動吸引モード及びと受動吸引モードを有し得る。能動吸引モードでは、バックフラッシュ器具100は、流体を能動的に吸引し得る手術用コンソールにコネクタ101を介して接続され得る。能動吸引モードでは、外科医は、孔104を(例えば、指で)覆って、空気が孔104を通して吸引されることを防止する。
【0016】
受動吸引モードでは、バックフラッシュ器具100は、コネクタ101を介して手術用コンソールに接続されることなく使用される。そのような実施形態では、身体部位(例えば、患者の眼)内の圧力は、大気圧よりも高いため、外科医がバックフラッシュ器具100を身体部位に挿入すると、流体が身体部位からバックフラッシュ器具100内に流れて貫通孔104から流出し得る。換言すれば、受動吸引モードでは、孔104を流体出口として使用し得る。
【0017】
内管及び外管105は、通常、金属(例えば、ステンレス鋼)などの剛性材料で作製される。軟質先端106は、通常、バックフラッシュ器具100が接触する身体部位に損傷を与えないように、軟質で可撓性の材料(例えば、シリコーン、ゴム、ポリウレタン(PUR))で作製される。上記で説明したように、軟質先端106は、バックフラッシュ器具100の先端が挿入される身体部位が損傷しないことを確実にするために使用される。しかしながら、外科医が、軟質先端106を備えたバックフラッシュ器具100を弁付きカニューレに挿通することは、面倒又は不可能である場合がある。挿通が面倒又は不可能であるのは、バックフラッシュ器具100の先端が弁付きカニューレの弁に押し通されたとき、軟質先端106を曲げるのに十分な対抗力が弁により軟質先端106に加えられ得るからである。ある場合には、曲がった軟質先端106を外科医がカニューレに無理に押し通すと、軟質先端106が内管から分離又は剪断することさえある。
【0018】
したがって、本開示の特定の実施形態は、後退可能な軟質先端を備えたバックフラッシュ器具を提供する。このようなバックフラッシュ器具を使用して、外科医は、バックフラッシュ器具を弁付きカニューレに押し通す前にバックフラッシュ器具の内管を後退させることができ、それにより弁付きカニューレに挿通されたときに内管の先端(例えば、軟質先端106)が曲がるか又は剪断する可能性を排除又は低減する。
【0019】
図2は、本開示の特定の実施形態に係る例示的な後退可能なバックフラッシュ器具200を図示する。図示のように、バックフラッシュ器具200は、弁203に連結され、且つキャップ207内の中空通路209内を近位側に摺動するように構成されるスライダ又はアクチュエータ208を含む。より具体的には、アクチュエータ208は、アクチュエータ208をバックフラッシュ器具200の近位端部側に(例えば、使用者の指により)引き寄せることができるように構成される。アクチュエータ208は、アクチュエータ208を近位方向に引き寄せることによって内管を後退させるように内管の近位端部に連結される。近位方向への内管の後退により、軟質先端206は、もはや外管205の遠位端部を越えて延びない。この機構を使用して、外科医は、バックフラッシュ器具200を弁付きカニューレに押し通す前などに軟質先端206を後退させることができ、それにより軟質先端206への損傷の可能性を排除又は低減する。特定の実施形態では、アクチュエータ208は、プラスチックで作製され得る。
【0020】
図3は、バックフラッシュ器具200の例示的な断面図を図示する。図示のように、アクチュエータ208の遠位端部は、内管312に連結され、内管312の遠位端部は、外管205の遠位端部を越えて延びる軟質先端206に連結される。より具体的には、アクチュエータ208は、内管312の近位端部を収容するように構成される円筒状要素311を含む。特定の実施形態では、内管312及び円筒状要素311は、接着剤を使用して互いに連結される。特定の実施形態では、内管312及び円筒状要素311は、インサート成形技術を使用して互いに連結される。特定の実施形態では、内管312の近位端部は、円筒状要素311内に圧入される。アクチュエータ208の近位端部は、上記で説明したように、管状又はホース状であり得る弁203の遠位端部に連結される。図示のように、アクチュエータ208は、弁203の遠位端部に挿入されるように構成される円筒状挿入体310を含む。特定の実施形態では、円筒状挿入体310及び弁203は、接着剤を用いて互いに連結される。特定の実施形態では、円筒状挿入体310は、弁203内に圧入される。アクチュエータ208を近位方向に後退させることにより、弁203が圧縮され、この弁203は、可撓性及び/又は圧縮性材料で作製される。例えば、弁203は、シリコーンで作製され得る。圧縮された弁203は、図4Bにより詳細に図示されている。後退されたアクチュエータ208が解放されると、弁203は、(例えば、ばね力に基づいて)自動的に復元して、アクチュエータ208を元の位置に押し戻し、それにより、図3に示すように、内管312の軟質先端206が外管205の遠位端部を越えて延びる。
【0021】
図3に更に示すように、弁203の近位端部では、弁203は、コネクタ(例えば、コネクタ101)に連結する、管315に弁203の近位端部を接続する接続要素314に連結される。図示のように、管315の近位端部は、バックフラッシュ器具200の近位端部313におけるコネクタと接続する。
【0022】
アクチュエータ208と弁203とが別個の構成要素として示されているが、特定の実施形態では、アクチュエータ208及び弁203は、単一部品として製造され得る。例えば、アクチュエータ208及び弁203の両方は、同じ材料から作製され得る。別の例では、アクチュエータ208及び弁203は、2成分射出モデリングプロセスで製造され得る。また、図3は、軟質先端206及び内管312を、互いに取り付けられる別個の構成要素として示しているが、特定の実施形態では、内管312及び軟質先端206は、同じ材料を使用して単一部品として製造され得る。そのような実施形態では、内管312は、可撓性で軟質の材料(例えば、シリコーン、PURなど)でも作製され得る。内管312及び軟質先端206は、異なる部品として製造されるか又は同じ部品として製造されるかにかかわらず、本明細書では互いに連結されたものとみなされることに留意されたい。
【0023】
図4A及び図4Bは、本開示の特定の実施形態における、異なる状態にある後退可能なアクチュエータ208のより詳細な拡大図を図示する。より具体的には、図4Aは、静止時のアクチュエータ208を図示する一方、図4Bは、後退されたアクチュエータ208を図示する。図4Bに示すように、アクチュエータ208を後退させることにより、弁203が圧縮されており、弁203の内面及び外面が特定の領域で折り曲がっている。アクチュエータ208は、一定の距離416だけ後退されるように構成される。距離416は、アクチュエータ208が静止しているとき(例えば、アクチュエータ208を後退させていないとき)、外管205の外側に延びる内管312の一部である、軟質先端206と同じ長さ(又はそれを超える長さ)を有し得る。上記で説明したように、弁203が圧縮されたとき、弁203に一定量の力(例えば、ばね力と同様の力)が蓄積されるため、後退されたアクチュエータ208が解放されると、この力は、アクチュエータ208を押して摺動させ、図4Aに示す静止状態に戻す。
【0024】
図5は、一部が蛇腹状に成形された弁503に、静止したアクチュエータ208が連結された、本開示の特定の実施形態に係るバックフラッシュ器具500を図示する。特定の実施形態では、弁503が蛇腹状であるため、弁503は、アクチュエータ208を後退させたときの圧縮に対する抵抗が少ない。同様に、弁503のより容易な変形を可能にし、且つアクチュエータ208の後退を可能にする弁503の他の形状も本開示の教示内で可能である。
【0025】
前述の説明は、本明細書で説明した様々な実施形態を当業者が実施できるようにするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正形態は、当業者に容易に明らかになり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言に一致する全範囲が認められるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5