(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】リアルタイムドーズ制御のために光学素子の屈曲部におけるビーム電流の推測のための上流電流測定値および下流電流測定値をミックスする方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20240220BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01J37/317 C
H01J37/244
(21)【出願番号】P 2021546317
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020018516
(87)【国際公開番号】W WO2020168328
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】デルカ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】デマリオ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】モリカ,ロサリオ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-520773(JP,A)
【文献】特開2013-127940(JP,A)
【文献】特開2018-041595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0269526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
前記イオンビームを質量分析する質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置された屈曲素子と、
前記屈曲素子の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定する第1測定装置と、
前記屈曲素子の上流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定する第2測定装置と、
前記イオンビームによってワークピースをスキャンするワークピーススキャン装置と、
前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定し、かつ、前記注入電流に基づいて前記ワークピースのスキャン速度を制御するようにワークピーススキャン装置を制御するコントローラと、を備えており、
前記イオンビームの前記注入電流の決定は、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて
おり、
前記第2測定装置は、ターミナル帰還電流測定装置およびエネルギーフィルタ電流測定装置のうちの1つ以上を含んでいる、イオン注入システム。
【請求項2】
前記第1測定装置
は、ファラデー
を含んでいる、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記第2測定装置は、前記イオン源のターミナルに関連するターミナル電流と、エネルギーフィルタに関連するエネルギーフィルタ電流とを比較す
る、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記屈曲素子は、前記エネルギーフィルタを含んでいる、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記第1測定装置は、前記屈曲素子の下流に配置された1つ以上のファラデーを含んでいる、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記第1測定装置は、前記イオンビームの両側において前記屈曲素子の下流に配置された2つのファラデーを含んでいる、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
1つ以上の軸に沿って、前記イオンビームをスキャンするビームスキャン装置をさらに備えている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記ワークピースのスキャン速度をさらに制御するために、ソフトウェア補償係数を使用する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流の平均を決定することによって、前記注入電流を決定する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流の前記平均を重み付けすることによって、前記注入電流を決定する、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記コントローラは、所定のレートによって前記注入電流を繰り返し決定し、
前記スキャン速度は、前記所定のレートによって更新される、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記所定のレートは、1~50ミリ秒毎に1回のオーダーである、請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
イオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
前記イオンビームを質量分析する質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置された屈曲素子と、
前記屈曲素子の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定する第1測定装置と、
前記屈曲素子の上流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定する第2測定装置と、
前記イオンビームによってワークピースをスキャンするワークピーススキャン装置と、
前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定し、かつ、前記注入電流に基づいて前記ワークピースのスキャン速度を制御するようにワークピーススキャン装置を制御するコントローラと、を備えており、
前記イオンビームの前記注入電流の決定は、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいており、
前記コントローラは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流の平均を決定することによって、前記注入電流を決定する、イオン注入システム。
【請求項14】
ワークピースにイオンを注入するためのイオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
前記イオンビームを質量分析する質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの軌道を屈曲させる屈曲素子と、
前記屈曲素子の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定する第1測定装置と、
前記屈曲素子の上流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定する第2測定装置と、
前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定するコントローラと、を備えて
おり、
前記第2測定装置は、ターミナル帰還電流測定装置およびエネルギーフィルタ電流測定装置のうちの1つ以上を含んでいる、イオン注入システム。
【請求項15】
前記第1測定装置
は、ファラデー
を含んでいる、請求項
14に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記第2測定装置は、前記イオン源のターミナルに関連するターミナル電流と、エネルギーフィルタに関連するエネルギーフィルタ電流とを比較す
る、請求項
14に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
前記屈曲素子は、前記エネルギーフィルタを含んでいる、請求項
16に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
前記第1測定装置は、前記屈曲素子の下流に配置された1つ以上のファラデーを含んでいる、請求項
16に記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流を平均化する、請求項
14に記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記イオンビームによって前記ワークピースをスキャンするワークピーススキャン装置をさらに備えており、
前記コントローラは、前記注入電流に基づいて前記ワークピースのスキャン速度を制御するように前記ワークピーススキャン装置を制御する、請求項
14に記載のイオン注入システム。
【請求項21】
ワークピースにイオンを注入するためのイオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
前記イオンビームを質量分析する質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの軌道を屈曲させる屈曲素子と、
前記屈曲素子の下流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定する第1測定装置と、
前記屈曲素子の上流に配置されており、かつ、前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定する第2測定装置と、
前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定するコントローラと、を備えており、
前記コントローラは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流の平均を決定することによって、前記注入電流を決定する、イオン注入システム。
【請求項22】
ワークピースのイオン注入のための方法であって、
イオンビームを形成するステップと、
前記イオンビームを質量分析するステップと、
前記イオンビームの質量分析後に、前記イオンビームを屈曲させるステップと、
前記イオンビームの屈曲後に、
第1測定装置によって前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定するステップと、
前記イオンビームの屈曲前に、
第2測定装置によって前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定するステップと、
前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定するステップと、を含んで
おり、
前記第2測定装置は、ターミナル帰還電流測定装置およびエネルギーフィルタ電流測定装置のうちの1つ以上を含んでいる、方法。
【請求項23】
ワークピースのイオン注入のための方法であって、
イオンビームを形成するステップと、
前記イオンビームを質量分析するステップと、
前記イオンビームの質量分析後に、前記イオンビームを屈曲させるステップと、
前記イオンビームの屈曲後に、前記イオンビームの第1イオンビーム電流を決定するステップと、
前記イオンビームの屈曲前に、前記イオンビームの第2イオンビーム電流を決定するステップと、
前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースにおける前記イオンビームの注入電流を決定するステップと、を含んでおり、
前記注入電流を決定するステップは、前記第1イオンビーム電流および前記第2イオンビーム電流の平均を決定するステップを含んでいる、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、「A METHOD OF MIXING UPSTREAM AND DOWNSTREAM CURRENT MEASUREMENTS FOR INFERENCE OF THE BEAM CURRENT AT THE BEND OF AN OPTICAL ELEMENT FOR REALTIME DOSE CONTROL」というタイトルが付された、2019年2月15日に出願された米国仮出願第62/806,173号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、全般的には、イオン注入システムに関する。より具体的には、本発明は、イオン注入中にイオンドーズ量を制御するために、イオンビーム電流を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
[背景]
半導体デバイスの製造においては、半導体に不純物をドープするためにイオン注入が用いられる。多くの場合、イオン注入システムは、イオンビームに由来するイオンによってワークピース(例:半導体ウェハ)をドープするために利用される。これにより、(i)n型またはp型の材料ドーピングを生成すること、または、(ii)集積回路の製造時にパッシベーション層を形成することができる。集積回路の製造時に半導体材料を生成する目的において、所定のエネルギーレベルにおいて、かつ、制御された濃度において、特定のドーパント材料の不純物をウェハに選択的に注入するために、このようなビームの取り扱いがなされることが多い。イオン注入システムは、半導体ウェハをドーピングするために使用される場合、所望の外因性材料を生成するために、選択されたイオン種をワークピース内に注入する。例えば、アンチモン、ヒ素、またはリンなどのソース材料(源材料)から生成されたイオンを注入することにより、「n型」の外因性材料ウェハが得られる。これに対し、「p型」の外因性材料ウェハは、ホウ素(ボロン)、ガリウム、またはインジウムなどのソース材料によって生成されたイオンから得られる場合が多い。
【0004】
典型的なイオン注入装置(イオン注入器)は、イオン源(イオンソース:ion source)、イオン引出デバイス、質量分析デバイス、ビーム輸送デバイス、およびウェハプロセスデバイス(ウェハ処理デバイス)を含んでいる。イオン源は、所望の原子または分子ドーパント種のイオンを発生させる。これらのイオンは、引出システム(典型的には、電極のセット)によって当該イオン源(the source)から引き出される。引出システムは、イオン源から到来したイオンの流れ(フロー)を励起しかつ方向付けることにより、イオンビームを生成(形成)する。所望のイオンは、質量分析デバイス(典型的には、引き出されたイオンビームの質量分散または質量分離を実行する磁気双極子(磁気ダイポール))内において、イオンビームから分離される。ビーム輸送デバイス(典型的には、一連の合焦デバイスを含む真空システム)は、イオンビームの所望の特性を維持しつつ、当該イオンビームをウェハプロセスデバイスへと輸送する。最終的に、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムによってウェハプロセスデバイスの内外へと移動させられる。ウェハハンドリングシステムは、処理されるべきウェハをイオンビームの前面に配置し、かつ、処理された後のウェハをイオン注入装置から取り出すために、1つ以上のロボットアームを含んでいてもよい。
【0005】
[概要]
本開示の態様は、ワークピース内へのイオン注入と同時に、イオンドーズ量の変動(ばらつき)を緩和するためのイオン注入プロセスを促進する。1つの例示的な態様によれば、イオン注入システムが提供される。上記イオン注入システムは、(i)イオンビームを生成するイオン源と、(ii)上記イオンビームを選択的に輸送するビームラインアセンブリと、(iii)ワークピース内へのイオンの注入のためにイオンビームを受け入れるエンドステーションと、を有している。
【0006】
1つの例示的な態様によれば、イオン注入システムが提供される。イオンビームを形成するイオン源が提供されている。例えば、イオンビームを質量分析する質量分析器が、さらに設けられている。例えばエネルギーフィルタなどの屈曲素子(bending element)が質量分析器の下流に配置されている。当該屈曲素子は、イオンビームの経路を変更する。例えば、第1測定装置は、屈曲素子の下流に配置されており、かつ、イオンビームの第1イオンビーム電流を決定する。さらに、第2測定装置は、屈曲素子の上流に配置されており、かつ、イオンビームの第2イオンビーム電流を決定する。イオンビームによってワークピースをスキャンするワークピーススキャン装置が、さらに設けられている。コントローラは、ワークピースにおけるイオンビームの注入電流を決定し、かつ、当該注入電流に基づいてワークピースのスキャン速度を制御するようにワークピーススキャン装置を制御する。イオンビームの注入電流の決定は、例えば、第1イオンビーム電流および第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいている。
【0007】
一実施例によれば、第1測定装置および第2測定装置のうちの1つ以上は、ファラデー、ターミナル帰還電流測定装置、およびエネルギーフィルタ電流測定装置のうちの1つ以上を含んでいる。第1測定装置および第2測定装置のうちの1つ以上は、例えば、イオン源のターミナルに関連するターミナル電流と、エネルギーフィルタに関連するエネルギーフィルタ電流とを比較するデバイスを含んでいてもよい。
【0008】
別の例では、第1測定装置は、屈曲素子の下流に配置された1つ以上のファラデー、例えば、イオンビームの両側において屈曲素子の下流に配置された2つのファラデーを含んでいてもよい。
【0009】
さらに別の実施例では、1つ以上の軸に沿って、イオンビームをスキャンするビームスキャン装置がさらに設けられてもよい。
【0010】
例えば、コントローラは、第1イオンビーム電流および第2イオンビーム電流の平均を決定することによって、注入電流を決定してもよい。さらに、コントローラは、第1イオンビーム電流および第2イオンビーム電流の平均を重み付けすることによって、注入電流を決定してもよい。別の実施例では、コントローラは、ワークピースのスキャン速度をさらに制御するために、ソフトウェア補償係数を使用(implement)してもよい。別の実施例では、コントローラは、所定のレートによって注入電流を繰り返し決定することができ、スキャン速度は、所定のレート(1~50ミリ秒毎に1回のオーダー)によって更新される。
【0011】
本開示の別の実施例によれば、ワークピースのイオン注入のための方法が提供される。当該方法では、イオンビームが形成され、かつ、質量分析される。イオンビームを質量分析後に、例えば、イオンビームの経路は、変更させられる(例えば、屈曲させられる)。一つの実施例によれば、イオンビームの第1イオンビーム電流は、イオンビームの屈曲後に、決定または測定される。イオンビームの第2イオンビーム電流は、イオンビームの屈曲前に、決定または測定される。ワークピースにおけるイオンビームの注入電流は、第1イオンビーム電流および第2イオンビーム電流に少なくとも部分的に基づいて、さらに決定される。さらに、イオンビームによるワークピースのスキャン速度は、決定された注入電流に少なくとも部分的に基づいて制御されてよい。
【0012】
上記の概要は、本開示の一部の実施形態における一部の構成についての簡単な概要を与えることを意図したものに過ぎず、他の実施形態が、上記のものに追加の、および/または上記のものとは異なる構成を含んでもよい。特に、当該概要は、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきものではない。従って、前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載され、特に特許請求の範囲において挙示されている構成を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちの数例を示すにすぎない。本開示の他の対象、利点、および新規な構成は、以下の本開示の詳細な説明を、図面と併せて考慮することによって明らかになるであろう。
【0013】
[図面の簡単な説明]
図1は、本開示の一部の態様に係る、例示的な真空システムのブロック図である。
【0014】
図2は、一実施例に係る上流および下流ウェイトチューニングを示すグラフである。
【0015】
図3は、フォトレジストコーティングされたワークピースを、ハイパワーイオンビームを通過させながら、光学屈曲部の前後の様々な距離において測定されたビーム電流の例示的な変動を示すグラフである。
【0016】
図4は、イオンビームを通過するワークピースの、移動(translation)のリアルタイム速度制御のためのビーム電流変化に適用される重み付けの、例示的な実験的制御を示すグラフである。
【0017】
図5は、不均一性を決定するためにワークピースを横切る狭い開放ストライプにおいて測定される、ウェハの横断面の均一性を示す例示的なグラフである。
【0018】
図6は、別の実施例に係るイオン注入のリアルタイムドーズ制御のための、光学素子の屈曲部(bend)におけるビーム電流を推測するための方法を示すフローチャートである。
【0019】
[詳細な説明]
本開示は、概して、注入中にドーズ量を制御するためにイオンビームの電流を決定するためのイオン注入システム方法を対象とする。従って、本発明は、図面を参照して説明される。同様の参照番号は、全体を通して同様の部材を指すために使用されてもよい。これらの態様の説明は、単に例示的なものであり、限定的な意味合いにて解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載では、説明を目的として、本発明の完全な理解を提供すべく、多くの具体的な詳細が説明されている。しかしながら、当業者であれば、本発明をこれらの具体的な詳細がなくても実施できることは、明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に記載される実施形態または実施例によって限定される意図のものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される意図のものである。
【0020】
また、図面は本開示の実施形態の一部の態様の例示を与えるために提供され、従って、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示される部材は、必ずしも互いに縮尺通りではなく、図面における様々な部材の配置は、それぞれの実施形態の明確な理解を提供するように選択され、本発明のある実施形態に従った実施における、様々なコンポーネントの実際の相対位置の表現であると、必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書において説明される様々な実施形態および実施例の構成は、それに反する言及がない限り、互いに組み合わせることができる。
【0021】
また、以下の記載では、図面に示され、または本明細書において説明される機能ブロック、デバイス、コンポーネント、回路素子、または他の物理的または機能的ユニット間における任意の直接接続または直接結合は、間接接続または間接結合によって実施されてもよいことを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたは機能ユニットは、ある一実施形態では別個の構成または回路として実施されてもよく、別の実施形態では、共通の構成または回路において、完全にまたは部分的に実施されてもよいことを理解されたい。例えば、複数の機能ブロックは、例えば信号プロセッサなどの、共通のプロセッサ上において実行されるソフトウェアとして実施されてもよい。さらに、以下の明細書において有線ベースとして記載される任意の接続は、それに反する言及がない限り、無線通信として実施されてもよいことを理解されたい。
【0022】
一般に、イオン注入装置は、イオン源と、イオン引出デバイスと、質量分析デバイスと、ビーム輸送デバイスと、ワークピース処理デバイスとを含みうる。イオン源は、所望の原子ドーパント種または分子ドーパント種のイオンを生成する。当該イオンは、イオン引出デバイスによってイオン源から引き出される。そして、当該イオン抽出デバイスは、イオン源からのイオンの流れを励起し、かつ、方向付ける電極のセットを有する。これにより、イオンビームを形成できる。所望のイオンは、質量分析デバイスにおいてイオンビームから分離される。当該質量分析デバイスは、抽出されたイオンビームの質量分散または分離を実行する磁気双極子を備えうる。一連の合焦デバイスを含む、例えば真空システムなどのビーム輸送デバイスは、イオンビームの所望の特性を維持しながら、イオンビームをワークピース処理デバイスに輸送する。最後に、ワークピース(例えば、半導体ウェハ)は、ワークピースハンドリングシステムを経由してワークピース処理デバイスに出入りする。当該ワークピースハンドリングシステムは、処理されるワークピースをイオンビームの前面に配置し、処理されたワークピースをイオン注入装置から取り出すように構成された1つ以上のロボットアームを含んでもよい。
【0023】
ビームライン内の最終屈曲部(最終的な屈曲部)を通過したイオンビームをフィルタリングするために、イオン注入装置は、ワークピースに比較的近接した光学素子をさらに含みうる。しかし、ビームライン内の最終屈曲部の位置において、イオンビームのイオンフラックス(イオン束)を測定することは、簡単なことではない(non-trivial)。その結果、光学素子とビーム電流測定デバイスとの間(例えば、光学素子の上流または下流のいずれか)に存在し得る高エネルギー中性粒子の一部に対処するために、何らかのソフトウェア補償がビーム電流測定に適用される。
【0024】
本開示は、光学素子内の最終屈曲部におけるビーム電流を推測するために、光学素子の前後両方のビーム電流測定を達成し、かつ、利用するためのシステムおよび方法を提供する。ビーム電流測定値は、例えば、所望のドーパント密度プロファイルを蓄積するように、(例えば、イオンビームを通過するワークピースのスキャンを制御することによって)イオンビームに対するワークピースの曝露時間を制御する目的のために利用されうる。
【0025】
本開示をより良く理解するために、
図1は、例示的な真空システム100を示す。本実施例の真空システム100は、イオン注入システム101を有する。但し、プラズマ処理システム、または他の半導体処理システムなど、様々な他のタイプの真空システムも考えられる。イオン注入システム101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。一般的に言えば、ターミナル102内のイオン源アセンブリ108は、電源110に結合されて、イオン源アセンブリからドーパント材料をイオン化して複数のイオンに変化させ、イオンビーム112を形成する。
【0026】
本実施例におけるイオンビーム112は、ビームステアリング装置114を通過して、エンドステーション106に向かってアパーチャ(開口)116から出る。エンドステーション106では、イオンビーム112は、ワークピース118(例えば、シリコンウェハ、表示パネルなどの半導体)に衝突する。当該ワークピース118は、チャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプされるか、または取り付けられる。ワークピース118のラチス(格子)に埋め込まれると、注入されたイオンはワークピースの物理的特性および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属の仕上げ加工、さらにはマテリアルサイエンス研究における様々な応用に用いられている。
【0027】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルビームもしくはスポットビーム、リボンビーム、スキャンビーム、またはイオンがエンドステーション106に向けられる任意の他の形態など、任意の形態をとることができ、そのような形態は全て、本開示の範囲内に入ると考えられる。1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ124などの処理チャンバ122を含み、処理環境126は前記処理チャンバに関連付けられる。処理環境126は、一般に、処理チャンバ122内に存在する。前記処理環境は、一例では、処理チャンバに結合され、当該処理チャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例えば、真空ポンプ)によって生成された真空を含む。真空源128は、ターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106のうちの1つ以上に動作可能に連結され、それらを選択的に排気するための1つ以上の真空ポンプを備えてもよい。さらに、真空システム100を選択的に制御するために、コントローラ130が設けられている。
【0028】
本開示によれば、イオン源材料(イオンソース材料)132は、イオンビーム112に関連するイオンを生成するために、イオン源アセンブリ108のアークチャンバ134に提供される。イオン源材料132は、例えば、様々なドーパント種を含んでもよく、気体または固体の形態にてアークチャンバに提供されてもよい。例えば、1つ以上の電極138を備える引出電極アセンブリ136が、引出アパーチャ140を通じてイオン源アセンブリ108からイオンを引き出するために提供される。この場合、引出アパーチャに近接する1つ以上の電極(図示せず)は、イオン源アセンブリに近接するか、または引出電極に戻る中和電子の逆流を抑制するようにバイアスされ得る。
【0029】
一例によれば、第1ビーム電流測定デバイス142(例えば、ファラデーカップ)は、イオンビーム112の経路144に沿って設けられている。第1ビーム電流測定デバイスは、光学素子146(例えば、イオンビームの経路に沿った最終屈曲素子)とワークピース118との間のある位置においてイオンビーム電流を測定するように構成されている。イオンビーム電流は、以下の式の挙動に従って残留ガスを通過しながら減衰することが知られており、
【数1】
上記式において、Iは領域に入るビーム電流であり、nは残留ガス密度であり、シグマ(σ)は電荷交換のための断面積であり、dxは残留ガス148(例えばワークピース118由来の脱ガス化されたフォトレジスト)を通過するイオンの経路長である。より高いエネルギーでは、ストリッピング反応(stripping reaction)は、イオンビーム電流の増加(例えば、第1ビーム電流測定デバイス142において収集された電荷)が測定されることを引き起こし得る。しかしながら、低エネルギー、高電流のイオン注入装置の場合、支配的な効果は、イオンの中和由来のものであるから、それらのイオンは光学素子146とワークピース118との間の第1ビーム電流測定デバイス142において計数(カウント)されない。
【0030】
本開示は、光学素子に関連する最終光学屈曲部150におけるビーム電流を推測するために、イオンビーム112の経路144に沿って存在する光学素子146の前後の両方において行われるビーム電流測定を使用するシステムおよび方法を記載している。これによって、ワークピース118のイオンビームへの曝露時間が、所望のドーパント密度プロファイルをワークピースに蓄積するように制御される。
【0031】
対策がなされていない場合、光学素子146と第1ビーム電流測定デバイス142との間に存在するイオンビーム112内の中性粒子(図示せず)は、一般に、ワークピース118への見通し線(視線,照準線)(line of sight)経路に従う。従って、オーバードーズの可能性が生じる。本開示では、残留ガス148が光学素子146の上流に伝播する場合、例えば、第1ビーム電流測定デバイス142において観察されるビーム電流への変更を無視すると、光学素子の前方に生じた任意の中性粒子が、ワークピース118に到達する前にイオンビーム112からフィルタリングされ得るので、アンダードーズになる傾向があることが理解されている。
【0032】
従って、本開示は、ワークピース118内へのイオンの注入ドーズ量をより良好に制御するように、最終光学屈曲部の位置におけるイオン電流の推測を提供するために、経路144に沿った最終光学屈曲部150の上流に第2ビーム電流測定デバイス152(例えば、ファラデーカップまたは「リアルタイム」ビーム電流測定デバイス)を提供する。最終光学屈曲部150の直後および直前(例えば、最終光学屈曲部の出口および入口のそれぞれに近接して)に第1ビーム電流測定デバイス142および第2ビーム電流測定デバイス152において得られるビーム電流測定値は、例えば、最終光学屈曲部でのビーム電流の変化を推測するために数学的に利用(例えば、平均化)されてもよい。しかしながら、アーキテクチャが、第1ビーム電流測定デバイス142および第2ビーム電流測定デバイス152のそれぞれと、最終光学屈曲部150との間の経路144に沿った、些細ではない長さを提供する場合、最終光学屈曲部の前後におけるイオン中和の差に対処するために、重み付け関数が含まれてもよい。このような重み付け関数は、例えば、ドーズの均一性を維持するために、要求されるワークピーススキャン速度における各測定の変動の影響を調整するための、イオン注入システム101のオペレータを提供する。
【0033】
図2は、第1重み付け202(例えば、上流=0、下流=1)、第2重み付け204(例えば、上流=1、下流=2)、および第3重み付け206(例えば、上流=0.5、下流=2)を示す例示的なグラフ200を示す。より高いネット(量)の重み付けが下流の測定値(この実施例では、2つの下流測定の設計的選択によって)に与えられるように、全ての3つの測定値の重み付けのデフォルト値は、無処理のウェハシート抵抗Rsターゲット208に対して1パーセント以内の範囲に収まるように、いずれも等しく十分である。ウェハの垂直スキャンに協調する直径にわたってオープンストライプを有するフォトレジストコーティングされたウェハの、垂直方向の直径にわたって測定されるウェハシート抵抗Rsの線形フィッティング(linear fitting)を用いて、例えば、最適化された上流の重み0.65と、最適化された下流の重み2とが、無処理のウェハ参照値(例えば、得られた2つの下流の測定値のそれぞれに対する、1という等しい重み付け)に一致するように与えられる。
【0034】
一実施例に従うと、
図1のイオンビーム112を通過するワークピース118のスキャン速度を修正するリアルタイムフィードレートFeed
Modは、第1ビーム電流測定デバイス142によってリアルタイム測定された下流ビーム電流I
Down、第2ビーム電流測定デバイス152によってリアルタイム測定された上流ビーム電流I
Up、下流参照ビーム電流I
RefDown、および上流参照ビーム電流I
RefUpに基づいて、下流重み係数WF
Downおよび上流重み係数WF
Upに従って、下記の式の通り決定することができる。
【数2】
【0035】
図3には、プロット300が示されている。プロット300は、第1下流ビーム電流304、第2下流ビーム電流306、上流ビーム電流308、およびイオンビームの中心に対するワークピースの中心のスキャン半径位置310に関連する、スキャン速度に対するリアルタイム修正302によるイオン注入のドーズ量を制御する一例を示す。
図3は、例えば、いわゆる「フィードレート(feed rate)」の例示である。当該「フィードレート」は、3つの位置において測定されるビーム電流の重み付けされた平均変化に基づいて、イオンビームを通過するワークピースのリアルタイム速度に対する、規格化された調整である。
【0036】
この実施形態では、重み付けは、下流ビーム電流I
Downの2つの測定値と上流ビーム電流I
Upの1つの測定値とを利用することによって達成される。本開示では、イオンビーム112のイオン種、エネルギー、および/または減速空間にわたる重み付けにおけるより少ない変動、および重み付けにおけるより高い均一性が、最終光学屈曲部150にできるだけ近い、
図1の第1ビーム電流測定デバイス142および第2ビーム電流測定デバイス152の配置によって達成され得ることが理解されている。第1ビーム電流測定デバイス142および第2ビーム電流測定デバイス152の位置が最終光学屈曲部150から遠ざかるにつれて、ソフトウェアの重み付けは、無処理のウェハの結果に対する、フォトレジストストライプ状ウェハ(photoresist-striped wafers)によって得られる結果との実験的なシート抵抗Rsのマッチングを通じて決定され得る。これにより、最終光学屈曲部の前後に形成される中性粒子の相対的割合を推測できる。
【0037】
図4~
図5は、式(2)の下流重み係数WF
Downと上流重み係数WF
Upの比率を微調整(ファインチューニング)する手法の例示的なグラフ400、500を示す。この実施例では、3つのRsのモニタウェハをフォトレジストによってコーティングし、かつ、各ウェハの直径に沿ってフォトレジストに狭いストライプを開けることによって、ウェハがイオンビームを通過して移動する方向またはスキャンされる方向に、狭いストライプが位置合わせされる。各ウェハは、ハイパワービームを用いて、上流重み係数WF
Upおよび下流重み付けWF
Downの測定値の異なった速度において注入される。
【0038】
図5は、ドーズ量の不均一性を下記の式:
100%×Rsの標準偏差/Rsの平均値 (3)
の通り計算するために使用されるウェハの直径にわたって収集される、Rsの測定値を示す。
【0039】
図4は、所望のターゲット(例えば、<0.5%の不均一性)を満たすウェイトレシオ(重み比率)を探索するために使用される、線量不均一性の線形傾向を示す。1つの例示的な実施形態では、この方法は、線形補間(linear interpolation)によって、生産イオン注入システムのための適切な重みを自動的に入力(ポピュレート)するためのバックグラウンドテーブルを提供するために、状態のフレームワークにわたって適用され得る。別の例示的な実施形態では、何らかの既存の記録ツールの特有の不均一性にマッチさせるために、生産環境における特定の要望に対して任意の不均一性プロファイルにマッチさせるように、これらの重みを微調整することができる。
【0040】
本開示では、フォトレジストドーズ制御が、様々なイオン注入デバイスのために利用され得ることがさらに理解されている。このようなフォトレジストドーズ制御に関連する変動に対応するために、本開示では、例えば、
図1の最終光学屈曲部150の下流においてビーム電流を測定し、次に、(a)フォトレジスト脱ガス化効果(photoresist outgassing effect)を無視すること、(b)圧力ゲージにおける圧力上昇を測定し、圧力変化によってスキャン速度を補償すること、または、(c)屈曲部の近傍におけるバイアスされたアパーチャにおける電流上昇を測定し、屈曲部における中和の量を推測して、スキャン速度を補償すること、のうちの1つを行うことができる。
【0041】
1つの実施例では、本開示では、最終光学屈曲部150の前後においてビーム電流を直接的に測定する。これにより、例えば、イオン注入システム101のオペレータが、ハードウェア設計(例えば、第1電流測定デバイス142および第2ビーム電流測定デバイス152のファラデーの位置および数)に由来するデフォルト重み付けが、種々の他の利用可能なソフトウェア重み付け関数を微調整することなく、フォトレジストコーティングされたワークピース118を、無処理のウェハにマッチさせるために十分であると判断できるようになる。
【0042】
例えば、従来のイオン注入システムが所望のドーズ量変動よりも高いドーズ量を経験した場合、ドーズ量を累積するために公称スキャン速度に対する修正が行われた。しかしながら、このような修正は、イオン源(the source)から到来した注入イオンビームが経時的に変化する位置である、ビームライン内の上流の位置のみを考慮している。こうした修正は、ワークピースの近傍においてイオンビームをフィルタリングする(1つ以上の)合焦素子に関するより大きい問題に対処していない。ワークピース上のフォトレジストが脱ガス化すると、例えば、何らかの電荷交換が存在し、従って中和するイオンの一部はワークピースに対して見通し線を有するが、他の非中性イオンは有さない。
【0043】
典型的には、イオン注入装置は、ワークピースに対する見通し線位置におけるイオンビーム電流を測定する。その結果、ソフトウェア補償(ソフトウェア補償係数とも呼ばれる)が使用されてきた。ワークピース近傍にエネルギーフィルタを有するイオン注入装置の場合、注入中にイオンビームがワークピースに到達した場合に、ビーム電流を決定するメカニズムを有していることが望ましい。古い世代では、ビームラインにおけるワークピース全体に対する一直線の(ストレートな)見通し線がある場合、ワークピースが垂直方向に移動したときのビーム電流は無視できた。ワークピース上のフォトレジストに由来するガス放出に対する圧力応答がビームを中和し、中性粒子の全てがウェハに到達するからである。しかしながら、エネルギーフィルタがイオン注入装置に実装されている場合、このような中和は、イオンビームがワークピースに対して見通し線を有する場合と、イオンビームが当該見通し線を有さない場合との両方において、イオンビームに影響を与える。
【0044】
ソフトウェア補償係数が、圧力応答、および/または、ワークピース近傍のイオンビーム電流を考慮するために利用されている。この場合、中性粒子を含む実際のイオンビーム電流を予測するために計算が使用される。本開示は、イオンビームが最終光学屈曲部150において光学素子146に入射するとき、ならびに、イオンビームが光学素子から出射するときに、イオンビーム電流をさらに測定することによって利点を提供する。従って、1つの実施例において、これらの2つの測定値の平均を利用して、最終光学屈曲部150の位置におけるイオンビーム112の実際の電荷フラックスを推測することができる。従って、本開示によって排除されるわけではないが、ワークピース118における正確なドーズ(線量)を得るために、ソフトウェア補償係数を実装する必要はない。
【0045】
別の例では、イオン注入システム101は、最終光学屈曲部150の上流のイオンビームスキャナ160によってイオンビーム112をスキャンする。この場合、光学素子146の下流にある第1測定装置142は、1つ以上のファラデーカップを備えていてもよい(例えば、2つのファラデーカップにわたって、イオンビーム112をスキャンすることができる)。そのような例では、光学素子146の上流にある第2測定装置152は、ターミナル帰還電流を利用してイオンビーム電流を測定することができる。この場合、2つの電源(例えば、電源110として図示されている)の減算が、ターミナル102を離れて光学素子(例えば、エネルギーフィルタ)に入る正電荷の量を測定するために使用される。また、第2測定装置152としてファラデー装置(例えば、固定ファラデー装置)を用い、イオンビーム112をファラデーにスキャンしてイオンビーム電流を測定してもよい。本開示は、ファラデー測定、電源減算、または屈曲素子への入口および出口において適用され得る、任意の他のビーム電流測定などの、光学素子146の前後両方のイオンビーム電流を決定するための任意のデバイス、装置、または方法を考慮に入れている。
【0046】
一実施例では、光学素子146に入るイオンビーム電流は、ワークピース118がスキャンされるときに、ワークピーススキャン装置170によって測定される。この場合、ワークピーススキャン装置は、1つ以上の方向(例えば、矢印172として図示される)において、イオンビーム112によってワークピースをスキャンするように構成されている。従って、本開示によれば、イオンビーム112を通過するように移動するワークピース118の瞬間的な速度を有利に制御して、ワークピースに注入されるイオンのドーズ量を制御することができる。例えば、イオンビーム112は、ワークピース118がイオンビーム112を通過してスキャンされるときに、固定された周波数および固定された波形においてスキャンされることができる。本非限定的な実施例では、ワークピース118を横切る、イオンビームスキャナ160によるイオンビーム112のスキャンの速度は変化しない。むしろ、イオンビーム112を通過するワークピース118の機械的スキャンの速度は、ワークピーススキャン装置170を制御することによって、選択的に制御される。
【0047】
従来、上述のソフトウェア補償係数は、ドーズ量の制御のために利用されていた。例えば、屈曲部の下流位置においてファラデーをモニタリングするか、または、下流位置においてファラデーをモニタリングし、かつ、信号が予測するよりも速くまたは遅くワークピースを移動させるために、その信号に対してソフトウェア補正を適用することによって、制御が達成されていた。
【0048】
しかしながら、本開示によれば、光学素子146の前後の両方の位置において、イオンビーム電流は、モニタリングされるか、または測定される。イオンビーム112は、経路144に沿って進むにつれて中和する傾向を有し、イオンビームが光学素子146の下流において測定される場合、実際に存在するよりも多量のビーム電流の減少が測定され得る。しかしながら、イオンビーム電流が光学素子146の上流において測定される場合、本開示において提供されるように、実際に存在するよりも少量のイオンビーム電流の減少が測定される。わずかに感度が低い測定、および、わずかに感度が高い測定を利用することによって、光学屈曲部150の実際の位置において、または、その非常に近くにおいて、ビーム電流変化を推測することができる。その位置に存在する荷電イオンは、ワークピース118に向かって通過すると仮定され得る。ファラデーは、典型的には、その高電圧ゆえに、光学屈曲部150に配置することができない(例えば、イオンビーム112を屈曲させるために最大60kvが利用される)。このように、本開示は、光学屈曲部150の位置におけるイオンビーム電流を予測するために有利に実施されることができる。
【0049】
本開示では、様々な測定値に由来する電流測定値の相違が、イオンビーム112内に存在する中性粒子に起因し得ることが理解されている。従って、本開示では、注入が開始される前にイオンビーム電流を測定し、かつ、垂直スキャンの短い持続時間を加算することによって、リアルタイム信号によって決定されるイオンビーム電流測定値は、ワークピース118に由来する脱ガス化効果に起因しうる。例えば、第1測定装置142および第2測定装置152を利用することによって、イオン源108に由来するビーム電流に1%の変化がある場合、両方の測定値が1%減少し、それによって、ワークピースのスキャン速度が1%減少しうる。従って、上流の変化は、両方の信号において均等に追従される。しかしながら、例えば、信号がワークピース118に由来するフォトレジストの脱ガス化によって影響を受ける場合、下流信号は、ワークピースがどれだけ減速されるべきかを過大評価し、上流信号は過小評価することになりうる。この場合、正確なスキャン速度を決定するために、平均の過不足(average the over/under)を利用することができる。
【0050】
ワークピース118上のフォトレジストまたはコーティングは、ワークピースの所望の領域を注入するために、ワークピースをマスクするために一般に利用される。しかしながら、非常に高いビーム電流のイオン注入装置では、フォトレジストに入る電力は大きく、大きい圧力応答が経験され、従って、イオンビーム112の顕著な中和を引き起こす。より多くの中和が経験されるにつれて、何個の中性粒子がワークピース118に渡されるか、および何個が最終光学屈曲部150においてフィルタリング除去されるかを決定するために、より正確性が必要とされる。高電力注入は、フォトレジストを脱ガス化させ、従って、フォトレジストから蒸発する物質により圧力を増加させうる。イオンビーム112は、例えば、残留ガスがフォトレジスト、窒素漏れ、または他のガスに由来するか否かにかかわらず、残留ガスを通過して減衰する。このため、イオンビームの一部がこのような分子に衝突する場合、例えばイオンビームの中和、バックグラウンドガスのイオン化などの、多くの効果が経験される。しかしながら、線量測定では、抑制電圧に起因して、反応中に形成される低エネルギーイオンは測定されないので、問題になる効果は、イオンの中和である。さらに、中性粒子は、電荷を有しておらず、かつ、ステアリング可能でもない。その一方で、磁気力または静電力によってイオンビーム112をステアリングすることが望ましい。その結果、光学素子146の前方においてイオンビーム112内に存在する中性粒子は、グラファイトダンプまで直進し続ける。その一方で、光学素子の後方においてイオンビーム内に存在する中性粒子は、ワークピースまで見通し線を伸ばし続けるであろう。
【0051】
従って、本開示は、最終光学屈曲部150の位置に、何個のイオンが存在するかを決定するためのハードウェアを提供する。これにより、屈曲部における全てのイオンは、当該屈曲部の後方において中和されても、ワークピースへの見通し線経路を有することになる。光学屈曲部150の前方において、既に中和されているいかなるものも、ワークピース118に対する見通し線を有しておらず、フィルタリング除去される。
【0052】
本開示では、微調整のためのソフトウェア補償係数の任意選択の組み込みが、さらに考案されている。但し、本開示は、ソフトウェア補償を必要とすることなく、ハードウェアのみによって十分に正確であり得る、最終光学屈曲部150におけるイオンビーム電流を推測することができる利点を有する。しかしながら、光学素子146の上流の第2測定装置152から光学素子の下流側の第1測定装置までの経路長、および光学素子から光学素子の下流側の第1測定装置までの経路長は、非ゼロであり、光学屈曲部150において何らかの変化があってもよいことが理解される(例えば、各種およびエネルギーは、中和のために異なる断面を有する)。本開示では、イオンビーム電流を測定するための「完全な(perfect)」位置が、光学屈曲部150において直接的であることが理解されている。しかしながら、上述の屈曲素子の性質に起因して、イオンビーム電流を測定するための「完全な」位置は、本開示のシステムおよび方法によってより良く推測される。
【0053】
従って、本開示では、ソフトウェア補償係数を含む必要性を生じさせないために、光学素子146から測定位置までの距離は最小限に抑えられる。但し、その場合にも、微調整のためにソフトウェア補償を利用することができる。一実施例では、無処理のワークピース118(例えば、フォトレジストが脱ガス化効果を生じていない)と任意のフォトレジストが脱ガス化している状態との間の平均シフトが、1%未満であることをターゲット(目標)とする。場合によっては、システムは、ソフトウェア補償によって、無処理ワークピースシナリオ(bare workpiece scenario)に、ほぼ正確に微調整されてもよい。例えば、上流信号が使用される(例えば、ビーム電流測定値)。この場合、ビーム電流がワークピース118において減少するとき、その信号におけるビーム電流が、減少する。この場合、上流信号と下流信号とは両方とも同じ方向を減衰させる。それゆえ、計算エラーによって誤った方向に過補正するリスク(従来のシステムにおいて見られる)はない。
【0054】
従って、本開示では、光学屈曲素子の前後においてビーム電流を測定し、次いで、それらの測定値を使用し、かつ、選択的に、イオンビームを通過して移動するワークピース118のビーム電流と速度とを決定するための重み係数を使用する。上流ビーム電流測定値および下流ビーム電流測定値の単純平均(straight average)を利用してビーム電流を推測することができる。そして、重み付けされた平均値(重み付け平均,加重平均)(weighted average)を、さらに微調整に利用することができる。
【0055】
別の例示的な態様によれば、
図6において、ワークピースへのイオン注入においてリアルタイムドーズ制御を提供するための方法600が示されている。本明細書では、例示的な方法が、一連のアクト(行為)またはイベント(事象)として図示および記載されている。但し、本開示は、記載された一連のアクトまたはイベントの例示された順序によって限定されず、一部のステップは、本開示に従って、本明細書において図示および説明されているものとは別の、異なる順序によって、および/または他のステップと同時に起こり得ることに留意されたい。さらに、本開示による方法論を実施するために、図示された全てのステップが必要とされるわけではない。さらに、これらの方法は、本明細書において図示され、かつ記載されたシステムに関連して、また、説明されていない他のシステムとも関連して包含させることができることが、理解されるであろう。
【0056】
図1のコントローラ130は、
図6の方法600を実行するように構成されていてもよい。この場合、上述の様々なコンポーネントの制御は、本明細書に記載されている方法によって実現されてもよいことに留意されたい。
図6に図示されるように、例示的な方法600は、アクト602から始まる。アクト602では、イオンビームを通過するワークピースの初期速度が決定される。アクト604では、各リアルタイム測定装置に対する参照値が確立される。例えば、
図1の第1測定装置142および第2測定装置152の参照値が、アクト604において確立される。
図6のアクト606において、ワークピースは、例えば
図1のワークピーススキャン装置170によって、初期速度によってイオンビームを通過するように移動されられる。
【0057】
図6のアクト610では、所定の測定期間に亘りリアルタイム測定が実行される。例えば、アクト610は、第1測定装置142および第2測定装置152を通じて、コントローラ130に関連付けられた制御スキームによって、イオンビーム112のビーム電流測定値を得ることを含んでもよい。
図6のアクト612において、ワークピース上のイオンの総累積ドーズ(total accumulated dose)が決定される。アクト614では、アクト612において決定された累積ドーズが、注入時の特定の期間に亘り注入されるイオンの、所望のドーズ量(desired dosage)と比較される。アクト614において、イオンの累積ドーズ量(accumulated dosage)がイオンの所望のドーズ量に等しい(例えば、所定のマージン内)と判定された場合、アクト616において、注入が完了したと見なされる。しかしながら、イオンの累積ドーズ量がワークピースに注入されるイオンの所望のドーズ量に等しくないと決定された場合、イオンビームを通過するワークピースの移動についての修正速度(修正された速度)が、アクト618において決定される。例えば、修正速度の決定は、以前に得られたビーム電流測定値、ワークピースの以前の速度、および/または他の要因に基づいて行うことができる。
【0058】
アクト620では、ワークピースは、修正速度によってイオンビームを通過するように移動させられる。これにより、ワークピースにイオンがさらに注入される。次に、方法600は、再びアクト610に進み、リアルタイム測定が再び実行される。アクト612において総累積ドーズが再び決定され、アクト614において累積ドーズが再び所望のドーズ(desired dose)と比較される。このプロセスは、上述したように、アクト616において注入が完了したと見なされるまで続く。
【0059】
本発明は、1つまたは複数の特定の実施形態に関して図示され、記載されてきたが、上述の実施形態は、本発明の一部の実施形態の実施のための例としてのみ機能し、本発明は、これらの実施形態にのみ適用されるわけではないことに留意されたい。特に、上述のコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」(means)への言及を含む)は、それに反する言及がない限り、記載される構成要素の特定の機能を実行する任意のコンポーネント(機能的に同等のものなど)と一致する。しかし、それらは本明細書に示された本発明の例示的な実施形態において、機能を実行する開示された構造と構造的に同等ではない。更に、本発明の特定の構成は、複数ある実施形態のただ1つに対してのみ開示されてきたが、本発明の特定の構成は、任意の既知の用途、または特定の用途にとって望ましく、かつ有利な、他の実施形態における1つ以上の構成と組み合わされ得るものである。従って、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本開示の一部の態様に係る、例示的な真空システムのブロック図である。
【
図2】一実施例に係る上流および下流ウェイトチューニングを示すグラフである。
【
図3】フォトレジストコーティングされたワークピースを、ハイパワーイオンビームを通過させながら、光学屈曲部の前後の様々な距離において測定されたビーム電流の例示的な変動を示すグラフである。
【
図4】イオンビームを通過するワークピースの、移動のリアルタイム速度制御のためのビーム電流変化に適用される重み付けの、例示的な実験的制御を示すグラフである。
【
図5】不均一性を決定するためにワークピースを横切る狭い開放ストライプにおいて測定された、ウェハの横断面の均一性を示す例示的なグラフである。
【
図6】別の実施例に係るイオン注入のリアルタイムドーズ制御のための、光学素子の屈曲部におけるビーム電流を推測するための方法を示すフローチャートである。