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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】メソ多孔性触媒化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/70 20060101AFI20240220BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240220BHJP
   C07C 4/06 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20240220BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
B01J29/70 M
B01J35/60 A
C07C4/06
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021556421
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020014539
(87)【国際公開番号】W WO2020190367
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】62/819,815
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ビューテル,ティルマン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】マハノ サンチェス,ヘラルド ホタ
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,ブライアン エム
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ヒマンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブロディ,ジョン エフ
(72)【発明者】
【氏名】ワイゲル,スコット ジェイ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527304(JP,A)
【文献】特開2012-092063(JP,A)
【文献】特開2010-202613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169623(US,A1)
【文献】特開2015-034128(JP,A)
【文献】特開2007-181777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 4/06
C07C 11/04
C07C 11/06
C07C 11/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C3~C7炭化水素供給原料の脱水素分解反応によりC2~C4オレフィンを製造するためのメソ多孔性触媒化合物であって、
MFI、MSE、MTW、BA、FAU、MOR、MTT、及びMRE、又はそれらの組合せから選択される構造型を有するゼオライトであって、5~40のケイ素対アルミニウムのモル比(Si/Al比)および0.1mL/g以上の全中間細孔体積を有するゼオライトを含む、メソ多孔性触媒化合物。
【請求項2】
前記ゼオライトがメソ多孔性MCM-68またはZSM-5である、請求項1に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項3】
前記ゼオライトが複数の12員環および/または複数の10員環を有する、請求項1または2に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項4】
前記ゼオライトが以下の特性:400m2/g~600m2/gの全表面積、0.1mL/g~0.8mL/gの全中間細孔体積、又は0.2mL/g~0.6mL/gの全細孔体積のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項5】
前記ゼオライトが、75トール、及び90℃で、触媒の全重量に基づいて5wt%~15wt%のヘキサン収着能を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の触媒化合物と1つ又は複数の13族金属とを含む、メソ多孔性触媒組成物。
【請求項7】
13族金属がGa、In、Tl、又はそれらの混合物である、請求項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項8】
前記13族金属が前記ゼオライト上に担持される、請求項のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項9】
前記13族金属が前記ゼオライト内に担持される、請求項のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項10】
ゼオライト含有量が前記触媒組成物の重量の20wt%~99.99wt%である、請求項のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項11】
13族金属含有量が前記触媒組成物の重量の0.01wt%~20wt%である、請求項のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項12】
前記触媒組成物が、75トールの圧力、及び90℃の温度で、40mg/g~150mg/gのヘキサン収着能を有する、請求項11のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項13】
C3~C7炭化水素供給原料の脱水素分解反応によりC2~C4オレフィンを製造するためのメソ多孔性触媒化合物であって、
5~40のケイ素対アルミニウムのモル比(Si/Al比)と、
少なくとも12員環の環サイズと、
400m2/g~600m2/gの全表面積と、
0.1mL/g以上の全中間細孔体積とを有するゼオライトを含む、メソ多孔性触媒化合物。
【請求項14】
前記ゼオライトが構造型MSEを有する、請求項13に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項15】
前記ゼオライトが、75トール、及び90℃で、触媒の全重量に基づいて5wt%~15wt%のヘキサン収着能を有する、請求項1314のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項16】
請求項1315のいずれか一項に記載の触媒化合物と1つ又は複数の13族金属とを含む、メソ多孔性触媒組成物。
【請求項17】
13族金属がGa、In、Tl、又はそれらの混合物である、請求項16に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項18】
前記13族金属が前記ゼオライト上に担持される、請求項1617のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項19】
前記13族金属が前記ゼオライト内に担持される、請求項1617のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項20】
ゼオライト含有量が前記触媒組成物の重量の20wt%~99.99wt%である、請求項1619のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項21】
13族金属含有量が前記触媒組成物の重量の0.01wt%~20wt%である、請求項1619のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項22】
前記ゼオライトが8以上のSi/Alモル比を有する、請求項1621のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項23】
前記触媒組成物が、75トールの圧力、及び90℃の温度で、40mg/g~150mg/gのヘキサン収着能を有する、請求項1622のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒化合物。
【請求項24】
バインダーをさらに含む、請求項1323のいずれか一項に記載のメソ多孔性触媒組成物。
【請求項25】
大気圧の反応器圧力及び400℃~600℃の反応器温度、並びに50h-1~800h-1の毎時重量空間速度(WHSV)で栓流反応器内でC3~C7炭化水素供給原料を請求項6~11および16~22のいずれか一項に記載の1つ又は複数の触媒組成物と接触させることによって前記C3~C7炭化水素供給原料を脱水素化分解して、C2~C4オレフィンを形成する工程を含む、C2~C4オレフィンを製造するためのプロセス。
【請求項26】
平均コークス失活速度定数が0~0.2である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
生成物中のオレフィン:パラフィンの平均モル比が10:1~0.5である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
生成物中のプロピレン:エチレンの平均モル比が2以上である、請求項27に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ又は複数の13族原子を有するメソ多孔性触媒化合物及び組成物を提供する。本開示はさらに、炭化水素供給原料を小オレフィンに変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業におけるプロピレンの現在の世界的な増大する需要により、その製造を改良する新技術の開発が促進されている。プロピレンの大部分(約60%)は最近、プロパンの水蒸気分解プロセス、プロパンの脱水素プロセス(UOP Oleflex(商標)プロパン脱水素プロセス)、メタノールからオレフィンへの転化(MTO)法、又はナフサなどの炭化水素供給原料(または炭化水素原料;hydrocarbon feedstock)の加熱水蒸気分解プロセスの副生成物としてなど、様々な方法によって製造される。
【0003】
しかしながら、プロピレン製造のさらなる改良が必要とされ、現行方法は、現在のプロピレン需要をもはや満たすことができない。例えば、現行方法は典型的には、高い熱エネルギー(例えば、約800℃~約950℃の高温、例えば、>800℃におけるプロパン及びナフサの水蒸気分解)を必要とし、これらの方法は、プロピレン対エチレンの低い重量比(約0.5)をもたらす。スチームクラッカーは>800℃の温度で作動し、軽オレフィンの高収率(例えば、エチレン及びプロピレン、生成物中に約50wt%)をもたらす。さらに、ナフサ及びC5~C7パラフィンの水蒸気分解は、かなりの量のメタン(生成物中約10wt%)を製造する。
【0004】
さらに、MTOプロセスは、天然ガス(NG)からの合成ガス及び水蒸気改質又は石炭ガス化によるナフサの形成のため、多段階であり、高価で且つエネルギー集約的である。また、プロパン脱水素プロセスは液化石油ガス(LPG)原料に限定されない。芳香族化合物及びパラフィン混合物などのより多様な原料をナフサの水蒸気分解のために使用することができる。それにもかかわらず、かなりの量のメタンが形成される。さらに、それらをガソリンに使用するのを難しくする低オクタンを有する、ペンタンなどの直鎖又は中位の分岐C4~C7パラフィンが反応され得、また、ペンタンの高い蒸気圧は、輸送用燃料におけるその使用を制限する。
【0005】
さらに、エチレンを製造するためのエタン系供給原料における最近の関心はまた、このような技術により製造されるプロピレンの量は限られているので、プロピレン供給に影響を与え得る。さらに、様々な軽炭化水素(例えば、シェール油、シェールガスから回収される凝縮物及びガスから液体燃料を製造する(Gas-To-Liquids)(GTL)プロセスから得られるオレフィン炭化水素)の、貴重な軽オレフィンへの変換も、資源の効率的使用に関する課題であった。
【0006】
ナフサ系供給原料からオレフィンを製造するプロセスには、触媒脱水素及び分解によってパラフィンを変換する触媒プロセス、並びに非触媒熱経路が含まれる。固体酸触媒、例えば、ZSM-5によるナフサなどの炭化水素の触媒分解が、従来の加熱水蒸気分解に代わる計画的プロピレン製造の別の方法として提案されている。水蒸気分解プロセスと比較したとき、固定床反応器で触媒分解を使用する利点には、プロピレンに対する高い選択率(プロピレン対エチレンの重量比>2.0)及び低い温度(<650℃)によるエネルギー節減が含まれる。さらに、固定床方式の分解プロセスは、反応装置における操作の簡単さの観点からいえば流動接触分解(FCC)プロセスよりも優れている。しかし、固定床反応器を使用する触媒分解プロセスの商業化は、固定床反応器に適用可能な、すぐれた安定性を有する効率的及び実用的クラッキング用触媒を開発する必要があるため、達成されていない。例えば、ヘキサン及びへプタンの混合物、並びにガソリンから個々の脱水素及びクラッキング用触媒を使用して400℃~650℃でプロピレンを製造する固定床触媒プロセスは、脱水素のためのCr系又はPt系触媒及びクラッキング(分解)のための酸性ゼオライト又はシリカ-アルミナ-リン混合酸化物を使用して開発されている。しかしながら、このプロセスにおけるプロピレンに対する選択率は低い(5%~10%の選択率)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、プロピレンに対する需要を満たすとともにオレフィン製造プロセスにおけるエネルギー消費を低減するためにナフサ(広範囲に入手可能な供給原料)からプロピレンを効率的に製造する方法が必要とされている。例えば、C4~C7パラフィンを含有するNG液体の品質向上において使用され得る触媒など、中位の条件下でプロピレンを効率的に製造する軽炭化水素の固定床型分解のための高度に活性及び安定な触媒が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、1つ又は複数の13族原子を有するメソ多孔性触媒化合物(または配合物または混合物またはコンパウンド;compound)及び組成物を提供する。本開示はさらに、炭化水素供給原料を小オレフィンに変換するための方法に関する。少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、触媒化合物と1つ又は複数の13族金属とを含有する。
【0009】
1つの態様において、触媒化合物は、AFI、AFS、ATO、BEA、BEC、BOG、BPH、CAN、CON、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITN、IWR、IWW、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、OFF、OKO、OSI、SAF、SAO、SEW、SFE、SFO、SSF、SSY、及びUSI骨格、又はそれらの組合せを有する大細孔ゼオライトを含有する。少なくとも1つの実施形態において、ゼオライトは、MCM-68又はUZM-35(MSE構造型)である。ゼオライトのケイ素対アルミニウムのモル比(Si/Al比)は約8~約30の範囲である。
【0010】
別の態様において、触媒化合物は、MFI(例えば、ZSM-5、FeS-1、MnS-1、ムティーナ沸石、エンシライト(Encilite)、AZ-1、ZBH、ZKQ-1B、TS-1、ボラライトC、シリカライト、AMS-1B、USC-4、ZMQ-TB、USI-108、NU-5、ZBH、TSZ-III)、MTT構造型(例えばZSM-23)又はMRE構造型(例えばZSM-48)又はそれらの組合せを有する中細孔ゼオライトを含有する。
【0011】
さらなる態様において、C2~C4オレフィンを製造するためのプロセス(または方法;process)は、大気圧の反応器圧力及び400℃~600℃の反応器温度、並びに約50h-1~約800h-1の毎時重量空間速度(WHSV)で1つ又は直列又は並列の複数の反応器内でC3~C7炭化水素供給原料を1つ又は複数の触媒組成物と接触させることによってC3~C7炭化水素供給原料を脱水素化分解して、C2~C4オレフィンを形成する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】1つの実施形態による、H-MCM-68及びメソ多孔性H-MCM-68のN2-BET等温線の測定を示すグラフである。
図2】1つの実施形態による、H-MCM-68及びメソ多孔性H-MCM-68の細孔径分布(バレット-ジョイナー-ハレンダ脱着方法)を示すグラフである。
図3】1つの実施形態による、H-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応におけるパラフィン及びオレフィン生成物リストの生成物の平均選択性(モル%単位)を示すグラフである。
図4】1つの実施形態による、H-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応における変換の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)のモル比を示すグラフである。
図5】1つの実施形態による、可変WHSVで測定されるH-MCM-68触媒について運転経過時間の関数としてアルファ測定値を示すグラフである。
図6】1つの実施形態による、Ga-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応におけるパラフィン及びオレフィン生成物リストの生成物の平均選択性(モル%)を示すグラフである。
図7】1つの実施形態による、Ga-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応における変換の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)のモル比を示すグラフである。
図8】1つの実施形態による、可変WHSVで測定されるGa-MCM-68触媒について運転経過時間の関数としてアルファ測定値を示すグラフである。
図9】1つの実施形態による、Ga-メソ-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応におけるパラフィン及びオレフィン生成物リストの生成物の平均選択性(モル%)を示すグラフである。
図10】1つの実施形態による、Ga-メソ-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応における変換の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)のモル比を示すグラフである。
図11】1つの実施形態による、可変WHSVで測定されるGa-メソ-MCM-68触媒について運転経過時間(time on stream)の関数としてアルファ測定値を示すグラフである。
図12】1つの実施形態による、H-MCM-68、Ga-MCM-68、及びGa-メソ-MCM-68触媒についてn-ヘキサン分解反応における平均アルファ値及びそれらの標準偏差を示すグラフである。
図13】1つの実施形態による、n-ヘキサン分解反応における可変WHSVでエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)の平均モル比を示すグラフである。
図14】1つの実施形態による、H-MCM-68、Ga-MCM-68、及びGa-メソ-MCM-68のn-ヘキサンのクラッキング試験における平均コークス失活速度定数及びそれらの標準偏差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、1つ又は複数の13族原子(例えば、ガリウム)がメソ多孔性ゼオライトで担持された(または配置された;disposed)1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト(例えば、メソ多孔性MCM-68)(例えば、1つ又は複数の13族原子が注入されたメソ多孔性ゼオライト)を含有するメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を提供する。少なくとも1つの実施形態において、メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物は、脱水素機能と酸による分解機能とを果たすよう構成されるゼオライトを含有する。メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物は、1つ又は複数の13族原子(例えば、Ga-メソ-MCM 68)をゼオライトと13族原子との比で含有し得、これらの組成物は任意選択により、バインダー(金属酸化物支持材料など)を含有する。
【0014】
本開示はさらに、脱水素化分解プロセスを使用して燃料品質向上のためにC3~C7炭化水素供給原料(例えば、軽質(lower value)軽ナフサなどのナフサパラフィン、GTLプロセスからのオレフィン炭化水素、NGからの凝縮物、他の任意の適した燃料油)を小オレフィン(例えば、エチレン及び/又はプロピレン)に変換するための方法に関する。本明細書中で用いられるとき、脱水素化分解プロセスは、1つ又は複数の脱水素プロセスと1つ又は複数の分解プロセスとの組合せである。炭化水素供給原料を小オレフィンに変換するためのプロセスは、1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を接触させることによってn-ヘキサンなどの炭化水素供給原料を脱水素化分解して、C2~C5オレフィン、例えばC2~C4オレフィン(例えば、プロピレン)などのC1~C5生成物と水素とをもたらす工程を含み得る。脱水素化分解プロセスは、栓流(またはプラグ流またはプラグ・フロー;plug flow)反応器、固定床型反応器、連続触媒再生システムを備える反応器、又は流動床反応器で中位の温度で運転され得るか、又は移動床反応器(例えば、約400℃~約600℃)で運転され得る。
【0015】
例えば、流動床反応器において、変換プロセスは、約6~約20、例えば約7~約18、例えば約8~約16の触媒/燃料油比において、及び/又は約0.5秒~約300時間、例えば約1時間~約250時間、例えば約2時間~約200時間、例えば約24時間~約96時間、或いは約4分~約25分、或いは約1秒~約5秒の滞留時間において実施され得る。固定床反応器において、変換プロセスは、約50h-1~約800h-1、例えば約200h-1~約650h-1の毎時重量空間速度(WHSV)で実施され得る。
【0016】
例えば、メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物は、メソ多孔性MCM-68ゼオライト及びGaを含有し得、「Ga-メソ-MCM-68」触媒とも称される。反応条件下で、Ga-メソ-MCM-68触媒は、n-ヘキサンの、プロピレンと水素とへの変換をもたらし得、メタンの形成を低減又は除去(例えば、約7モル%以下)、プロパンの形成を低減又は除去する(例えば、約7モル%、以下)。n-ヘキサンの、プロピレンと水素とへの変換は、約600℃以下、例えば約400℃~約600℃(例えば、約540℃)の温度で、大気圧、及び/又は約50h-1~約800h-1、例えば約200h-1~約650h-1のWHSVでなど、中位の条件下でもたらされ得る。
【0017】
別の実施形態において、メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物は、メソ多孔性H-MCM-68などのゼオライトの水素化形態であり得るが、メソ細孔を有し、これは本明細書において「H-メソ-MCM-68」触媒と称される。H-メソ-MCM-68触媒を使用するプロセスは、n-ヘキサンの、C2~C5オレフィン(例えば、プロピレン)などのC1~C5生成物と水素とへの変換をもたらし得、メタンの形成を低減又は除去(例えば、約6モル%以下)、プロパンの形成を低減又は除去する(例えば、約7モル%以下)。n-ヘキサンの、C1~C5生成物、例えばC2~C4オレフィン(例えば、プロピレン)などの生成物への変換は、約600℃以下、例えば約400℃~約600℃(例えば、538℃)の温度、大気圧で、及び/又は約50h-1~約800h-1の毎時重量空間速度(WHSV)、例えば約200h-1~約650h-1など、中位の条件下でもたらされ得る。
【0018】
本開示の触媒組成物及びプロセスは、(例えば、約50モル%の平均プロピレン選択率)、約5%~約25%変換の変換率、約0~約0.2(例えば、0.08)の平均コークス失活速度定数(例えば、触媒の耐コークス性のアルファ失活速度定数)、及び/又は約10:1~約0.5のオレフィン/パラフィンの平均モル比(例えば、約7.2のプロピレン/プロパン)のうちの1つ又は複数を提供することができる。少なくとも1つの実施形態において、本開示の触媒組成物及びプロセスは、メソ多孔性MCM-68ゼオライトの酸分解機能がGaの脱水素機能と組み合わせられるとき、プロピレンに対する高い選択率を有するC2~C4オレフィンなどのC2~C5オレフィンの製造を提供する。さらに、典型的なクラッキング用触媒と比較して、メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物(例えば、Ga-メソ-MCM-68触媒)は、i)高いプロピレン選択率を維持しながら、非メソ多孔性H-MCM-68(MCM-68ゼオライトの非メソ多孔性酸形態)と同等のレベルまでコークス形成によって触媒の失活速度を低減させることができる、ii)エチレン選択率を低下させることができ、より高いプロピレン/エチレン比をもたらす、及び/又はiii)コークス形成を抑えることができ、触媒の再生までいっそう長いサイクル時間を可能にする。したがって、パラフィンを水素とオレフィンとに脱水素化することができ、それをその後、酸部位でより小さなオレフィン(主にプロピレン)に分解することができる。中間オレフィンのこのような水素化は、酸分解機能及びプロセスを経て中間オレフィンの迅速な連続変換により最小にされ得る。脱水素機能と酸分解機能との組合せを有する本開示の触媒は、生成物流における非平衡オレフィン/パラフィンのモル比を提供することができる。
【0019】
本開示の目的のために、Chemical and Engineering News,63(5),pg.27(1985)に記載されている周期表の族の付番方式が使用される。したがって、「13族金属」は、周期表の13族からの元素、例えば、Al、Ga、又はInである。
【0020】
別記しない限り、周囲温度は23℃である。
【0021】
代わりに「アルケン」とも称される「オレフィン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素及び水素の直鎖、分岐、又は環式の化合物である。
【0022】
用語「アルキル」には、直鎖、分岐、又は環状であり得るC1~C100アルキルが含まれる。アルキルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシル、オクチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルの他、それらの置換類似体が含まれ得る。
【0023】
用語「オレフィン性」は、検出されるオレフィンの総計対パラフィンの総計のモル比を意味する。オレフィン性は、オレフィン/パラフィンのモル比が増加するときに増加する。オレフィン性は、オレフィン/パラフィンのモル比が減少するときに減少する。
【0024】
本開示及びそれに対する請求の範囲のために、用語「置換された」は、非水素原子、例えば、炭素や、窒素、硫黄、酸素、又はハロゲンなどのヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基で置き換えられていることを意味する。例えば、ヘテロ原子は窒素、硫黄、酸素、ハロゲン等であり得る。
【0025】
本明細書の記載において、触媒は触媒前駆体、予備触媒化合物、又は触媒化合物として記載され得、これらの用語は互いに交換可能で用いられる。
【0026】
用語「変換率」は、特定の反応(例えば、脱水素、クラッキング、脱水、カップリング等)における反応体が生成物に変換される度合を意味する。したがって100%の変換率は反応体の完全な消費を意味し、0%の変換率は反応がないことを意味する。炭化水素原料の変換率は、脱水素化分解領域の入口に入る原料の炭化水素成分の質量(又はモル数)と脱水素化分解領域の出口を出る炭化水素成分の質量(又はモル数)との間の差を、脱水素化分解領域の入口に入る原料の炭化水素成分の質量(又はモル数)で割った比によってのみ計算されると理解されるべきであり、変換のパーセント(%)として報告される。
【0027】
用語「ゼオライト」は、結晶性分子ふるい骨格など、酸素原子を架橋することによって連結した四面体原子から形成された多孔性骨格構造を有する結晶性材料を意味する。公知のゼオライト骨格の例は、国際ゼオライト学会構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)の名義で出版された“Atlas of Zeolite Frameworks”6th revised edition,Ch.Baerlocher,L.B.McCusker,D.H.Olson,eds.,Elsevier,New York(2007)に与えられている。ゼオライトは、ゼオライト骨格タイプを有し、並びにケイ素及びアルミニウムと異なるヘテロ原子の酸化物を含有する結晶性構造を有するアルミノケイ酸塩を意味する。このようなヘテロ原子には、ゼオライト骨格に含有させるための任意の適したヘテロ原子、例えばガリウム、ホウ素、ゲルマニウム、リン、亜鉛、及び/又はゼオライト骨格においてケイ素及び/又はアルミニウムの代わりになり得る他の遷移金属などが含まれ得る。ゼオライトは一般的に、温度を使用してそれらの脱水素化分解機能を果たすために、したがって酸素含有ガスの存在下で適切な時間の間約200℃~約800℃の温度で分子ふるいを加熱することによって、活性化される。
【0028】
本明細書中で用いられるとき、並びに特に断りがない限り、用語「大細孔(large pore)ゼオライト」は、12員環を有する複数の細孔を有するゼオライトを意味する。例えば、本開示の大細孔ゼオライトの細孔は、12個の原子(例えば、12員環を形成するSi及び/又はAlの12個の原子)で形成される12員環開口部であり得る。用語「中細孔(medium pore)ゼオライト」は、10員環を有する複数の細孔を有するゼオライトを意味する。用語「小細孔(small pore)ゼオライト」は、8員環を有する複数の細孔を有するゼオライトを意味する。
【0029】
用語「基」及び「部分」は互いに交換可能で使用することができる。
【0030】
本明細書中で用いられるとき、特に断りがない限り、用語「Cn」は、1分子中n個の炭素原子を有する炭化水素(nは正の整数である)を意味する。
【0031】
本明細書中で用いられるとき、特に断りがない限り、用語「炭化水素」は、炭素に結合した水素を含有する化合物のクラスを意味し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、及び(iii)nの異なった値を有する炭化水素化合物の混合物など、炭化水素化合物(飽和及び/又は不飽和)の混合物を包含する。
【0032】
本開示はさらに、脱水素化分解プロセスによってC3~C7炭化水素供給原料を小オレフィン(例えば、プロピレン)に変換するためのプロセスに関する。少なくとも1つの実施形態において、脱水素化分解プロセスは、脱水素化分解触媒をC3~C7炭化水素供給原料と接触させることによって実施され、ここで、脱水素化分解触媒は、メソ多孔性ゼオライト(酸による分解機能)と13族原子(脱水素機能)とを含有するメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を有する。
【0033】
分解される炭化水素供給原料は、全部或いは部分的に、204℃超の初留点、少なくとも260℃の50%点及び少なくとも315℃の端点を有する軽油、ガス油(例えば、軽質、中質、又は重質軽油、ガス油)を含有し得る。また、供給原料は、減圧軽油、ガス油、熱油、残油、循環油、全抜頭油(whole top crudes)、タールサンド油、シェール油、合成燃料、石炭の破壊水素化から得られる炭化水素重質留分、タール、ピッチ、アスファルト、水素化精製供給原料を含有し得る。400℃を超える高沸点石油留分の蒸留は、熱分解を避けるために真空下で実施され得る。本明細書で利用される沸騰温度は便宜上、大気圧に補正された沸点を用いて表される。また、高金属含有量を有する残油又はディーパーカット(deeper cut)軽油、ガス油は本開示のプロセスを用いて分解され得る。
【0034】
触媒組成物の第1の触媒成分:クラッキング成分
少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、1つ又は複数のゼオライトを含む触媒を含有する。本開示のプロセスの間、ゼオライトはクラッキング活性をもたらし得る。本開示のために、ゼオライト成分は大細孔ゼオライト(最大域が12員環開口部を有する)、中細孔ゼオライト(最大域が10員環開口部を有する)、又は小細孔ゼオライト(最大域が8員環開口部を有する)、及び/又はそれらの混合物であり得、それは多孔性、結晶性アルミノケイ酸塩構造を含有し得る。
【0035】
中細孔ゼオライトの例には、MFI構造型(例えば、ZSM-5、FeS-1、MnS-1、ムティーナ沸石、[As-Si-O]-MFI、エンシライト(Encilite)、AZ-1、[Ga-Si-O]-MFI、ZBH、ZKQ-1B、TS-1、ボラライトC、シリカライト、AMS-1B、USC-4、ZMQ-TB、USI-108、NU-5、ZBH、TSZ-III)、Theta-One(TON)構造型(例えば、Theta-1、ZSM-22,ISI-1、NU-10、KZ-2)、及びフェリエライト(FER)構造型(例えば、フェリエライト、ZSM-35、Sr-D、FU-9)、又はそれらの組合せが含まれ得る。
【0036】
少なくとも1つのゼオライトは、例えばMSE骨格ゼオライト(例えば、MCM-68、UZM-35、YNU-2)、BEA、FAU、MOR、MTW骨格ゼオライト(例えばZSM-12、Theta-3、TPZ-12、NU-13、CZH-5、[Ga-Si-O]-MTW、VS-12、[B-Si-O]-MTW)、又はそれらの組合せなどの大細孔ゼオライトであり得る。
【0037】
少なくとも1つのゼオライトは、中細孔ゼオライト、例えばMFI骨格ゼオライト(例えば、ZSM-5、FeS-1、MnS-1、ムティーナ沸石、エンシライト(Encilite)、AZ-1、ZBH、ZKQ-1B、TS-1、ボラライトC、シリカライト、AMS-1B、USC-4、ZMQ-TB、USI-108、NU-5、ZBH、TSZ-III)、MTT構造型(例えば、ZSM-23)、MRE構造型(例えば、ZSM-48)、又はそれらの組合せであり得る。
【0038】
MCM-68及び/又はZSM-5(及び/又は他のMSE/MFI骨格ゼオライト)は、約5:1~約100:1、例えば約10:1~約40:1のケイ素対アルミニウムのモル比(Si/Al比)を有し得る。米国特許第7,198,711号明細書に記載されるように、MCM-68は、例えば大細孔分子ふるいなどの従来のクラッキング用触媒とともに添加剤成分として使用され得る。
【0039】
触媒組成物は、触媒組成物の重量の約0.1wt%~約99.99wt%、例えば約1wt%~約95wt%、例えば約5wt%~約90wt%、例えば約10wt%~約80wt%、例えば約15wt%~約70wt%、例えば約20wt%~約60wt%、例えば約25wt%~約50wt%、例えば約30wt%~約40wt%、もう1つの選択肢として、約10wt%~約95wt%、例えば約20wt%~約90wt%、例えば約30wt%~約80wt%、例えば約40wt%~約70wt%のクラッキング用触媒含有量を有し得る。
【0040】
MCM-68は合成多孔性単一結晶相材料である。理論によって縛られなければ、MCM-68は、1つの12員環チャネルシステムと2つの10員環チャネルシステムとを含む独特の3次元チャネルシステムを有すると考えられ、各々のシステムのチャネルは他のシステムのチャネルに垂直に延在し、12環チャネルは真っ直ぐであり得、10員環チャネルは曲がりくねり得る(正弦曲線)。MCM-68の骨格構造は、国際ゼオライト学会構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)によってコードMSEに帰属された。芳香族アルキル化及びアルキル基移動反応における触媒としてのMCM-68の使用は、米国特許第6,049,018号明細書(その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。MCM-68の構造は、米国特許第7,198,711号明細書及びthe Journal of Physical Chemistry B,110,2045(2006)(参照によって本明細書に組み込まれる)においてさらに考察される。
【0041】
また、MCM-68などのMSE骨格タイプを有する結晶性分子ふるいを合成する方法は、米国特許出願公開第2014/0140921A1号明細書に記載されている。MCM-68は、関係式:X2O3:(n)YO2を要する化学組成を有し、式中、Xは、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、及びクロムの少なくとも1つから選択される、例えばアルミニウムを少なくとも含む三価元素であり、Yは、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、及びゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、例えばケイ素を少なくとも含む四価元素であり、及びnは少なくとも約4、例えば約4~約100,000であり、約10~約1000、例えば約10~約100であり得る。
【0042】
少なくとも1つの実施形態において、MCM-68は熱的に安定しており、焼成形態であり、比較的高い全表面積(例えば、約660m2/g、並びに約0.21mL/gの微孔体積)及びかなりの炭化水素収着能(例えば、約75トール、約90℃において、ゼオライトの量に対して約10.8wt%のn-ヘキサン収着)を示し得る。
【0043】
その活性水素形態において、MCM-68は、約400~約2,000、例えば約500~約1,800、例えば約600~約1,600のアルファ値を有する、比較的高い酸活性を示し得る。アルファ値は、標準触媒と比較して触媒の触媒分解活性の近似指標であり、それは、相対速度定数(ノルマルヘキサン変換速度/触媒の体積/単位時間)を与える。アルファ値は、1のアルファとされるシリカ-アルミナクラッキング用触媒の活性に基づいている(速度定数=0.016sec-1)。アルファ試験は、米国特許第3,354,078号明細書、the Journal of Catalysis,4,527(1965)、及びthe Journal of Catalysis,6,278(1966)、並びにthe Journal of Catalysis,61,395(1980)(各々、その記載に関して参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。本明細書において使用される試験の実験条件には、the Journal of Catalysis,61,395(1980)に詳細に記載されるように、約538℃の一定温度及び可変流量が含まれる。
【0044】
MCM-68は、一般式Alkyl4N+、例えばEthyl4N+を有する、テトラアルキルアンモニウムカチオン、Q1などの1つ又は複数の構造指向剤を使用して調製することができる。任意選択により、テトラアルキルアンモニウムカチオン、Q1に加えて、以下の2つの一般構造(一括してQ2)の一方又は両方を有する、第2の構造指向剤が存在していてもよい:
【化1】
式中、Aは-C(R13)(R14)-基、-(C=O)-基、-N(R15)-、又は-O-基であり、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、及びR10は各々独立に水素、ヒドロキシル基、又はC1~C5炭化水素鎖であり、R13及びR14は各々独立に水素又はC1~C5炭化水素鎖であり、R5、R6、R11、及びR12は各々独立にC1~C5炭化水素鎖であり、R15は嵩高いC4~C12炭化水素部分(例えば、環状、分岐、及び/又はヒドロキシ官能化脂肪族及び/又は芳香族炭化水素部分)、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基、フェニル基、それらのC1~C5アルキル置換誘導体、それらのC1~C5アルコキシ置換誘導体、又はそれらのC1~C3ジアルキル置換誘導体であり、R5及びR6基のうちの1つが代わりに、R13及びR14基のうちの1つと連結してC1~C5炭化水素連結部分を形成することができる。
【0045】
構造指向剤カチオンの適した供給源には、結晶性材料MCM-68の形成に有害ではないこれらのカチオンの、対イオンとして例えば、ハロゲン化物(例えば、ヨウ化物)及び/又は水酸化物との任意の塩が含まれ得る。したがって、アンモニウム窒素がヒドロキシル基に全く共有結合していないことはあり得るが、ヒドロキシルイオンは適切な対イオンであり得る。MSE構造型ゼオライト(例えばMCM-68及びUZM-35など)のための適した構造指向剤は、米国特許第9,035,058号明細書、米国特許第6,049,018号明細書、米国特許第9,504,995号明細書、米国特許第8,916,130号明細書、米国特許第8,900,548号明細書、米国特許第6,049,018号明細書(それらは参照によって本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
【0046】
典型的な環状アンモニウム構造指向剤カチオン(Q2)には、限定されないが、N,N-ジアルキル-ピペラジニウムカチオン(例えば、N,N-ジメチル-N’-シクロヘキシル-ピペラジニウム、N-メチル-N-エチル-N’-シクロヘキシル-ピペラジニウム、N,N-ジエチル-N’-シクロヘキシル-ピペラジニウム、N,N-ジメチル-N’-フェニル-ピペラジニウム、N-メチル-N-エチル-N’-フェニル-ピペラジニウム、N,N-ジエチル-N’-フェニル-ピペラジニウム、N,N-ジメチル-N’-シクロペンチル-ピペラジニウム、N-メチル-N-エチル-N’-シクロペンチル-ピペラジニウム、N,N-ジエチル-N’-シクロペンチル-ピペラジニウム、及びそれらの組合せ)、4,4-ジアルキル-ピペリジニウムカチオン(例えば、4-メチル-4-エチル-ピペリジニウム、4-メチル-4-プロピル-ピペリジニウム、4-メチル-4-ブチル-ピペリジニウム、4,4-ジエチル-ピペリジニウム、4-エチル-4-プロピル-ピペリジニウム、4-エチル-4-ブチル-ピペリジニウム、及びそれらの組合せ)、N-アルキル-キヌクリジニウムカチオン(例えば、N-メチル-キヌクリジニウム、3-ヒドロキシ-N-メチル-キヌクリジニウム、及びそれらの組合せ)、4,4-ジアルキル-モルホリニウムカチオン(例えば、4-メチル-4-エチル-モルホリニウム、4-メチル-4-プロピル-モルホリニウム、4-メチル-4-ブチル-モルホリニウム、4,4-ジエチル-モルホリニウム、4-エチル-4-プロピル-モルホリニウム、4-エチル-4-ブチル-モルホリニウム、及びそれらの組合せ)、4,4-ジアルキル-ピロリジニウムカチオン(例えば、4-メチル-4-エチル-ピロリジニウム、4-メチル-4-プロピル-ピロリジニウム、4-メチル-4-ブチル-ピロリジニウム、4,4-ジエチル-ピロリジニウム、4-エチル-4-プロピル-ピロリジニウム、4-エチル-4-ブチル-ピロリジニウム、及びそれらの組合せ)、並びにそれらの組合せが含まれ得る。
【0047】
2つ以上のカチオン供給源が構造指向剤組成物において使用されるとき、Q1対Q2のモル比は、少なくとも約1:9、例えば約1:9~約49:1、例えば約1:7~約19:1、例えば約1:5~約9:1、例えば約1:4~約7:1、例えば約1:3~約5:1、例えば約1:2~約4:1、例えば約1:1~約3:1であり得る。加えて又はその代わりに、2つ以上のカチオン供給源が構造指向剤組成物において使用されるとき、Q1対Q2のモル比は約999:1以下、例えば約499:1~1:1、例えば約199:1~約2:1、例えば約99:1~約3:1、例えば約49:1~約4:1、例えば約19:1~約5:1であり得る。
【0048】
少なくとも1つの実施形態において、水の供給源、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、及びゲルマニウムの少なくとも1つから選択される四価元素Yの酸化物の供給源、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、及びクロムの少なくとも1つから選択される三価元素Xの酸化物の供給源、アルカリ又はアルカリ土類金属、Mの供給源をQ1カチオンの供給源及び任意選択によりQ2カチオンの供給源(ここでQは、全ての構造指向カチオン、Q1+Q2を表す。言い換えれば、Q=Q1+Q2)と一緒に含有する反応混合物が製造される。
【0049】
例えば、前記反応混合物中のモル比Q1/YO2又はQ/YO2([Q1+Q2]/YO2)が約0.01~約1、例えば約0.03~約0.7、例えば約0.05~約0.5、例えば約0.07~約0.35の範囲であり得るように反応混合物の組成物を制御することができる。加えて又はその代わりに、以下のモル比の1つ又は複数を選択することによって反応混合物の組成物を制御することができる:YO2/X2O3約4~約200、例えば約4~約150、例えば約4~約120、例えば約4~約100、例えば約4~約80、例えば約6~約200、例えば約6~約150、例えば約6~約120、例えば約6~約100、例えば約6~約80、例えば約8~約200、例えば約8~約150、例えば約8~約120、例えば約8~約100、例えば約8~約80、例えば約12~約200、例えば約12~約150、例えば約12~約120、例えば約12~約100、例えば約12~約80、例えば約15~約200、例えば約15~約150、例えば約15~約120、例えば約15~約100、例えば約15~約80、例えば約18~約200、例えば約18~約150、例えば約18~約120、例えば約18~約100、例えば約18~約80、H2O/YO2約5~約200、例えば約5~約150、例えば約5~約100、例えば約5~約50、例えば約5~約35、例えば約10~約200、例えば約10~約150、例えば約10~約100、例えば約10~約50、例えば約10~約35、例えば約14~約200、例えば約14~約150、例えば約14~約100、例えば約14~約50、例えば約14~約35、例えば約18~約200、例えば約18~約150、例えば約18~約100、例えば約18~約50、例えば約18~約35、OH-/YO2約0.05~約1.5、例えば約0.05~約1.3、例えば約0.05~約1.2、例えば約0.05~約1.1、例えば約0.05~約1、例えば約0.05~約0.9、例えば約0.05~約0.85、例えば約0.05~約0.8、例えば約0.05~約0.75、例えば約0.05~約0.7、例えば約0.05~約0.65、例えば約0.05~約0.6、例えば約0.15~約1.5、例えば約0.15~約1.3、例えば約0.15~約1.2、例えば約0.15~約1.1、例えば約0.15~約1、例えば約0.15~約0.9、例えば約0.15~約0.85、例えば約0.15~約0.8、例えば約0.15~約0.75、例えば約0.15~約0.7、例えば約0.15~約0.65、例えば約0.15~約0.6、例えば約0.25~約1.5、例えば約0.25~約1.3、例えば約0.25~約1.2、例えば約0.25~約1.1、例えば約0.25~約1、例えば約0.25~約0.9、例えば約0.25~約0.85、例えば約0.25~約0.8、例えば約0.25~約0.75、例えば約0.25~約0.7、例えば約0.25~約0.65、例えば約0.25~約0.6、例えば約0.5~約1.5、例えば約0.5~約1.3、例えば約0.5~約1.2、例えば約0.5~約1.1、例えば約0.5~約1、例えば約0.5~約0.9、例えば約0.5~約0.85、例えば約0.5~約0.8、例えば約0.6~約1.5、例えば約0.6~約1.3、例えば約0.6~約1.2、例えば約0.6~約1.1、例えば約0.6~約1、例えば約0.6~約0.9、例えば約0.6~約0.85、例えば約0.6~約0.8、例えば約0.65~約1.5、例えば約0.65~約1.3、例えば約0.65~約1.2、例えば約0.65~約1.1、例えば約0.65~約1、例えば約0.65~約0.9、例えば約0.65~約0.85、例えば約0.65~約0.8、例えば約0.7~約1.5、例えば約0.7~約1.3、例えば約0.7~約1.2、例えば約0.7~約1.1、例えば約0.7~約1、例えば約0.7~約0.9、例えば約0.7~約0.85、例えば約0.7~約0.8、例えば約0.75~約1.5、例えば約0.75~約1.3、例えば約0.75~約1.2、例えば約0.75~約1.1、例えば約0.75~約1、例えば約0.75~約0.9、例えば約0.75~約0.85、及びM/YO2約0.05~約2、例えば約0.05~約1.5、例えば約0.05~約1.2、例えば約0.05~約1.1、例えば約0.05~約1、例えば約0.05~約0.9、例えば約0.05~約0.8、例えば約0.05~約0.7、例えば約0.05~約0.6、例えば約0.10~約2、例えば約0.10~約1.5、例えば約0.10~約1.2、例えば約0.10~約1.1、例えば約0.10~約1、例えば約0.10~約0.9、例えば約0.10~約0.8、例えば約0.10~約0.7、例えば約0.10~約0.6、例えば約0.15~約2、例えば約0.15~約1.5、例えば約0.15~約1.2、例えば約0.15~約1.1、例えば約0.15~約1、例えば約0.15~約0.9、例えば約0.15~約0.8、例えば約0.15~約0.7、例えば約0.15~約0.6、例えば約0.20~約2、例えば約0.20~約1.5、例えば約0.20~約1.2、例えば約0.20~約1.1、例えば約0.20~約1、例えば約0.20~約0.9、例えば約0.20~約0.8、例えば約0.20~約0.7、例えば約0.20~約0.6、例えば約0.30~約2、例えば約0.30~約1.5、例えば約0.30~約1.2、例えば約0.30~約1.1、例えば約0.30~約1、例えば約0.30~約0.9、例えば約0.30~約0.8、例えば約0.40~約2、例えば約0.40~約1.5、例えば約0.40~約1.2、例えば約0.40~約1.1、例えば約0.40~約1、例えば約0.40~約0.9、例えば約0.40~約0.8。OH-/YO2のモル比がこの説明全体にわたって使用されるが、このようなモル比はM及びQの対イオンの化学的特性が何であっても包含することが意図され、ヒドロキシル対イオンを特に使用することができるので本明細書においてOH-/YO2として表されるにすぎないと理解されることに留意しなければならない。同様に、Y、X、M、及びQの特定の例が本明細書においてモル比で言及される場合、それらの範囲は、特に否定されない限り、一般的に可変範囲に及び、可変類の個々の種に必ずしも単に限定されないと理解されなければならない。
【0050】
また、反応混合物は、任意選択により、例えばMCM-68などのMSE骨格タイプ分子ふるいのシードを含むことができ、例えば、反応混合物中のシード/YO2の重量比は、約0.001~約0.3、例えば約0.001~約0.2、例えば約0.001~約0.1、例えば約0.001~約0.08、例えば約0.001~約0.05、例えば約0.01~約0.3、例えば約0.01~約0.2、例えば約0.01~約0.1、例えば約0.01~約0.08、例えば約0.01~約0.05、例えば約0.03~約0.3、例えば約0.03~約0.2、例えば約0.03~約0.1、例えば約0.03~約0.08になるようにできる。
【0051】
四価元素Yはケイ素を含むか又はケイ素であり得、三価元素Xはアルミニウムを含むか又はアルミニウムであり得、アルカリ又はアルカリ土類金属Mはナトリウム及びカリウムの少なくとも1つを含み得る。アルカリ又はアルカリ土類金属Mがカリウムを含む場合、Na対全金属Mのモル比は0~約0.9であり得、例えば、0~約0.5であり得る。したがって、少なくとも1つ実施形態において、アルカリ又はアルカリ土類金属にはナトリウムは実質的に含まれ得ない(例えば、Mの5wt%未満、例えば3wt%未満、例えば1wt%未満、例えば0.5wt%未満、例えば0.3wt%未満、例えば0.1wt%未満、例えば0.05wt%未満、例えば0wt%がナトリウムであり得る)。加えて又はその代わりに、反応混合物は付加的なナトリウムを含有することができない(例えば、或るナトリウムは反応混合物の成分の1つ又は複数に不純物として存在し得るが、ナトリウムを反応混合物に導入するために成分は添加されず、例えば、水酸化カリウムは或る水酸化ナトリウム不純物を含有し得るが、水酸化ナトリウムは添加されない)。
【0052】
上に記載の反応混合物を製造するために使用され得る酸化ケイ素の適した供給源には、限定されないが、コロイドシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ヒュームドシリカ、並びにそれらの組合せが含まれ得る。酸化アルミニウムの適した供給源には、限定されないが、水和酸化アルミニウム、例えばベーマイト、ギブサイト、及び疑似ベーマイト、特にギブサイト、並びに酸素含有アルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウム、並びにそれらの組合せが含まれ得る。アルカリ金属の適した供給源には、ナトリウム及び/又はカリウム水酸化物が含まれ得る。
【0053】
反応混合物が調製されたとき、MCM-68を製造するための結晶化は、静的条件又は撹拌条件のどちらかで適した反応器容器内で、例えば、ポリプロピレンジャー又は任意選択によりテフロン(登録商標)で内張りされたステンレス鋼オートクレーブ内で、例えば、約100℃~約200℃の温度で、最大約28日間まで、例えば約145℃~約175℃の温度で、約24時間~約170時間の間実施することができる。その後、結晶を液体から分離し、回収することができる。
【0054】
合成反応の生成物は有利には、MSE骨格タイプを有し且つその細孔構造物中に本明細書に記載の構造指向剤を含有する結晶性分子ふるいを含むか又はであり得る。得られた合成されただけの材料は、米国特許出願公開第2014/0140921A1号明細書(その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように、他の公知の合成されただけの又は熱処理された結晶性材料のパターンから区別できるX線回折パターンを有し得る。
【0055】
その細孔構造中に構造指向剤を含有する合成されただけの結晶性分子ふるいは通常、このような方法で使用前に活性化されて、構造指向剤を分子ふるいから実質的に除去することができ、分子ふるいの微孔性チャネル内の活性触媒部位を開放状態のままにして供給原料と接触させておくことができる。活性化プロセスは、分子ふるいを酸素含有ガスの存在下で適切な時間の間約200℃~約800℃の温度で加熱することによって行われ得る。もう1つの選択肢として、活性化は、約500℃未満、例えば、約300℃以下の温度のオゾンに暴露することによって行われ得る(例えば、SDAが有効に除去される)。
【0056】
さらに、合成されただけの材料MCM-68の元のアルカリ(及び/又はアルカリ土類)カチオンは、少なくとも部分的には、イオン交換などの適した技術によって、限定されないが金属イオン、水素イオン、水素イオン前駆体、例えば、アンモニウムイオン、及びそれらの混合物などが含まれ得る、他のカチオンと置き換えることができる。例えば、交換カチオンには、存在しているとき、特定の炭化水素変換反応のための触媒活性を調整し得る交換カチオンが含まれ得る(例えば、水素、希土類金属、及び元素の周期表の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13族の金属。カチオンがアルカリ金属カチオンであるとき、交換カチオンには、加えて又はその代わりにアルカリ土類、又は2族の金属が含まれ得る)。
【0057】
MSE及び/又はMFI骨格ゼオライト以外のさらに別のゼオライトが存在しているとき、さらに別のゼオライトは任意選択により、(米国特許第4,016,218号明細書に規定されるように)1~12の拘束係数を有する少なくとも1つの中細孔(10員環細孔)アルミノケイ酸塩ゼオライトに相当し得る。別の適したゼオライトの例は、ZSM-11などのMEL骨格を有するゼオライトであり得る。ゼオライト骨格中にケイ素及びアルミニウムと異なるヘテロ原子を含有するゼオライトに関して、ゼオライト骨格構造を有するSAPO及びAlPO分子ふるいの非限定的な例には、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、AlPO-11、AlPO-31、AlPO-41及びPST-6のうちの1つ又は組合せが含まれ得る。任意選択により、ゼオライトは、少なくとも1つ大細孔アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩、又は12員環細孔を含有するシリコアルミノリン酸塩ゼオライトであり得る。
【0058】
任意選択により、MSE及び/又はMFI骨格ゼオライトはリンを含有し得る。例えば、リンを含有することは場合によっては、本明細書に記載されるように、脱水素化分解プロセスの間に存在している反応条件においてゼオライトの安定性の増加をもたらし得る。リンの重量は、脱水素化分解触媒の重量に基づいて約0.1wt%~約10wt%、例えば約0.1wt%~約5wt、例えば約0.1wt%~約3wt%であり得る。リンの全重量は、ゼオライト構造物の骨格中にリンが存在するため、ゼオライト自体に起因する量を含有しないものとする。
【0059】
H-ゼオライト
少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、H-ゼオライトとも称される、酸性形態での1つ又は複数のゼオライトを含有する触媒を含有する。H-ゼオライトは、使用中にクラッキング活性をもたらすことができる。このような態様において、少なくとも1つのH-ゼオライトは、MSE骨格ゼオライト(例えば、H-MCM-68、UZM-35、H-YNU-2)、H-MFI骨格ゼオライト(例えば、H-ZSM-5、H-FeS-1、H-MnS-1、H-[As-Si-O]-MFI、H-エンシライト(Encilite)、H-AZ-1、H-[Ga-Si-O]-MFI)、TON構造型(例えばZSM-22、NU-10、THETA-1、KZ-2)、MTT構造型(例えばZSM-23)、MRE構造型(例えばZSM-48)又はそれらの組合せに相当し得る。
【0060】
本開示のために、H-MCM-68などのゼオライトの酸形態は、(酸性にされていない)ゼオライトを約200℃~約600℃、例えば約250℃~約550℃、例えば約300℃~約500℃、例えば約350℃~約450℃の温度で予備焼成することによって形成され得る。焼成は、例えば、窒素又はアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、約10分~約120分、例えば約20分~約60分、例えば約30分間実施され得る。次いで、不活性ガスを空気流と取り換えることができる。次いで焼成はさらに、約400℃~約800℃、例えば約500℃~約700℃(例えば、600℃)の温度、及び/又は約10分~約6時間、例えば約30分~約4時間、例えば約1時間~約2時間の反応時間で実施され得る。
【0061】
得られた材料は、焼成されたゼオライトをNH4Cl、(NH4)2SO4、又はNH4NO3などの任意の適したアンモニウム塩と接触させることによって、NH4-MCM-68などの相当するアンモニウム型中間物(「アンモニウムゼオライト」)に変換され得る。接触は、約50℃~約150℃、例えば約75℃~約125℃(例えば、98℃)の温度で行われ得る。少なくとも3つの処理プロセスの終了時など、各々のアンモニウム処理プロセスの間でNH4-ゼオライトを水で「洗浄」することができる。その後スチーミング反応が約2時間~約10時間、例えば約4時間~約8時間(例えば、6時間)の時間の間、及び/又は約400℃~約700℃、例えば約450℃~約650℃、例えば約500℃~約600℃(例えば、538℃)の温度で行われ得る。次いで、アンモニウムゼオライト、例えばNH4-MCM-68は、約200℃~約800℃、例えば約300℃~約700℃、例えば約400℃~約600℃(例えば、500℃)の温度の空気中で焼成され得、及び/又は約30分~約6時間、例えば約1時間~約5時間、例えば約2時間~約4時間の間焼成され、ゼオライトの酸形態(「H-ゼオライト」)、H-MCM-68を生じ得る。
【0062】
例えばH-MCM-68及び/又はH-ZSM-5(及び/又は他のH-MSE/H-MFI骨格ゼオライト)などのH-ゼオライトは、約0.001~約20、例えば約0.01~約15、例えば約0.1~約12.5のケイ素対アルミニウムのモル比(Si/Al比)を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、H-ゼオライトのSi/Alモル比は約10である。2つ以上のH-ゼオライトが存在している場合、他の適したH-ゼオライトには、中細孔及び/又は大細孔ゼオライトが含まれ得る。
【0063】
少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物の重量の約0.1wt%~約99.99wt%のH-ゼオライト含有量、例えば約1wt%~約95wt%、例えば約5wt%~約90wt%、例えば約10wt%~約80wt%、例えば約15wt%~約70wt%、例えば約20wt%~約60wt%、例えば約25wt%~約50wt%、例えば約30wt%~約40wt%、もう1つの選択肢として、約10wt%~約95wt%、例えば約20wt%~約90wt%、例えば約30wt%~約80wt%、例えば約40wt%~約70wt%のH-ゼオライト含有量を有する。
【0064】
H-ゼオライト成分は、約300m2/g~約700m2/g、例えば約350m2/g~約650m2/g、例えば約400m2/g~約600m2/gの全表面積を有し得る。H-ゼオライト成分は、約0.1mL/g~約0.8mL/g、例えば約0.15mL/g~約0.7mL/g、例えば約0.2mL/g~約0.6mL/gの全細孔体積を有し得る。
【0065】
H-ゼオライト成分は、約75トール、約90℃において、約40mg/g~約150mg/g、例えば約50mg/g~約130mg/g、例えば約60mg/g~約80mg/g、或いは約90mg/g~約110mg/gの炭化水素収着能(sorption capacity)(例えば、n-ヘキサン収着)を有し得る。
【0066】
H-メソ-ゼオライト
少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、クラッキング活性をもたらす、H-メソ-ゼオライトとも称される酸性及びメソ多孔性形態の1つ又は複数のH-メソ-ゼオライトを含む触媒を含有する。このような態様において、少なくとも1つのH-メソ-ゼオライトは、H-メソ-MSE骨格ゼオライト(例えば、H-メソ-MCM-68、H-メソ-YNU-2)、H-メソ-MFI骨格ゼオライト(例えば、H-メソ-ZSM、H-メソ-FeS-1、H-メソ-MnS-1、H-メソ-[As-Si-O]-MFI、H-メソ-エンシライト(Encilite)、H-メソ-AZ-1、H-メソ-[Ga-Si-O]-MFI)、又はそれらの組合せに相当し得る。
【0067】
H-メソ-ゼオライトを脱ケイ酸プロセス及び脱アルミニウムプロセスによってH-ゼオライトから調製するため、H-ゼオライトに:i)約25℃~約150℃の温度(例えば、65℃)のアルカリ性溶液(例えば、NaOH)を約5分~約60分間にわたって(例えば、30分間)導入し、及びii)骨格(例えば、EDTA)からアルミニウム原子をキレートし得る任意の適したキレート化剤を導入し、このようにメソ細孔の形成をもたらす。例えば、EDTAをアルミニウムイオンなどの多価カチオンと組み合わせて、簡単な処理(例えば、濾過、水による洗浄プロセス)によって除去され得る可溶性非イオン性錯体を形成する。H-ゼオライトの脱ケイ酸プロセスは、アルカリ性溶液(例えば、NaOH)又はアルカリ性溶液(例えば、NaOH)とテトラ-アルキルアンモニウム塩(例えば、TPABrとも称される臭化テトラプロピルアンモニウム)などのアンモニウム塩との混合物を使用して、約25℃~約150℃の温度(例えば、65℃)で、約5分~約60分間(例えば、30分)で実施され得る。混合物は、水などの1つ又は複数の極性プロトン性溶剤中で撹拌され得る。脱アルミニウムは脱ケイ酸後に引き続いて、約25℃~約150℃の温度(例えば、100℃)で、約5分~約24時間の間(例えば、6時間)、骨格(例えば、EDTA)からアルミニウム原子をキレートし得る任意の適したキレート化剤を使用して実施され得る。脱ケイ酸/脱アルミニウム後に形成される得られた生成物の更なる処理は、イオン交換プロセスによって、得られた生成物を精製及び単離する工程を含み得る。
【0068】
ゼオライトのメソ細孔性を評価するための任意の適した方法を使用することができる。例えば、メソ多孔性ゼオライトの全表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)表面吸着方法を使用して評価することができる。細孔径分布は、バレット-ジョイナー-ハレンダ(BJH)方法、並びにHalsey Faas補正を使用して等温線の脱着枝から計算することができる。ヒステリシスループの形成は、例えば、H-ゼオライトの脱ケイ酸(ケイ素原子の除去)によって生成され得る、メソ細孔の存在の指標である。少なくとも1つの実施形態において、H-メソ-ゼオライトの細孔径分布は、中間細孔(またはメソ細孔;mesopore)体積(または容積または容量;volume)の大きな増大を示す。本明細書中で用いられるとき、「中間細孔体積」は、H-中間細孔ゼオライトの約2nm~約50nmの細孔径範囲の累積体積である。全中間細孔体積は、BET表面吸着によって測定されるとき、約0.1mL/g~約0.8mL/g、例えば約0.15mL/g~約0.75mL/g、例えば約0.2mL/g~約0.7mL/g、例えば約0.32mL/g~約0/36mL/gであり得る。
【0069】
H-メソ-ゼオライト成分は、約350m2/g~約600m2/g、例えば約375m2/g~約575m2/g、例えば約400m2/g~約550m2/gの全表面積を有し得る。H-メソ-ゼオライト成分は、BET表面吸着によって測定されるとき、約0.1mL/g~約0.8mL/g、例えば約0.15mL/g~約0.75mL/g、例えば約0.2mL/g~約0.7mL/g、例えば約0.42mL/g~約0.46mL/gの全細孔体積を有し得る。
【0070】
H-メソ-ゼオライト成分は、約75トール、約90℃において、約40mg/g~約150mg/g、例えば約50mg/g~約130mg/g、例えば約60mg/g~約120mg/gの炭化水素収着能(例えば、n-ヘキサン収着)を有し得る。
【0071】
H-メソ-ゼオライトは、約0.001~約40、例えば約0.1~約35、例えば約1~約30、例えば約5~約25、例えば約7.5~約20、例えば約5~約12のSi/Alモル比を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、H-メソ-MCM-68のSi/Alモル比は約9である。2つ以上のゼオライトが存在している場合、他の適したゼオライトには、中細孔及び/又は大細孔ゼオライトが含まれ得る。
【0072】
少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物の重量の約0.1wt%~約99.99wt%、例えば約1wt%~約95wt%、例えば約5wt%~約90wt%、例えば約10wt%~約80wt%、例えば約15wt%~約70wt%、例えば約20wt%~約60wt%、例えば約25wt%~約50wt%、例えば約30wt%~約40wt%、もう1つの選択肢として、約10wt%~約95wt%、例えば約20wt%~約90wt%、例えば約30wt%~約80wt%、例えば約40wt%~約70wt%のH-メソ-ゼオライト含有量を有する。
【0073】
触媒組成物の第2の触媒成分:脱水素成分
13族-ゼオライト
本開示のゼオライトの酸性形態は、1つ又は複数の遷移金属をその中に担持させることができる。少なくとも1つの実施形態において、例えばH-MSE及び/又はH-MFI骨格ゼオライトなどの1つ又は複数のH-ゼオライトは、例えばGa又はInの形態の、1つ又は複数の13族遷移金属などの遷移金属、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。13族金属には、例えばAl、Ga、In、Tlが含まれ得る。遷移金属を注入及び/又はイオン交換などの任意の適した方法によってH-ゼオライト上に/内に組み込むことができ、例えばその中に担持させることができる。
【0074】
例えば、H-ゼオライト(例えば、H-MCM-68)は、H-ゼオライトの重量の約0.01wt%~約99.99wt%、例えば約0.5wt%~約75wt%、例えば約1wt%~約50wt%の13族遷移金属含有量(例えば、Ga)を注入され得る。例えば、H-ゼオライトは、硝酸ガリウム(III)水和物(99.9%)などの金属硝酸塩の水溶液を使用して、Gaなどの遷移金属を注入され得、その後に、例えば約2時間~約8時間の間(例えば、6時間)乾燥が行われ得る。乾燥は周囲条件で行われ得、その後に、約10時間~約20時間の間(例えば、16時間)及び/又は約70℃~約150℃(例えば、約120℃)の温度でさらに乾燥が行われ得る。乾燥後に、触媒は、空気中(例えば、約5L/分の流量)で約400℃~約700℃、例えば約500℃~約600℃(例えば、約540℃)の温度で、及び/又は約30分~約6時間、例えば約1時間~約5時間の間(例えば、約3時間)焼成され得る。
【0075】
13族-ゼオライト成分は、約300m2/g~約700m2/g、例えば約325m2/g~約675m2/g、例えば約350m2/g~約650m2/gの全表面積を有し得る。13族-ゼオライト成分は、BET表面吸着によって測定されるとき、約0.1mL/g~約0.6mL/g、例えば約0.15mL/g~約0.55mL/g、例えば約0.2mL/g~約0.5mL/g、例えば約0.42mL/g~約0.46mL/gの全細孔体積を有し得る。
【0076】
13族-ゼオライト成分は、75トール、約90℃で、約40mg/g~約150mg/g、例えば約50mg/g~約130mg/g、例えば約60mg/g~約120mg/gの炭化水素収着能(例えば、n-ヘキサン収着)を有し得る。
【0077】
13族-ゼオライトは、約0.001~約40、例えば約0.1~約35、例えば約1~約30、例えば約5~約25、例えば約7.5~約20、例えば約10~約15のSi/Alモル比を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、13族-MCM-68触媒(例えば、Ga-MCM-68)のSi/Alモル比は約12である。
【0078】
本開示のために、13族遷移金属原子はGa、In、Tl、又はAlであり得る。触媒組成物は、脱水素化分解触媒の重量の約0.05wt%~約50wt%、例えば約0.1wt%~約40wt%、例えば約0.5wt%~約30wt%、例えば約0.75wt%~約20wt%の遷移金属含有量を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物Ga-MCM-68は、約0.5wt%~約2wt%のGa含有量を有する。
【0079】
13族-メソ-ゼオライト
また、本開示のゼオライト触媒のメソ形は、その上に担持される(例えば、メソゼオライト内に担持される)遷移金属を含有し得る。少なくとも1つの実施形態において、例えばH-メソ-MSE骨格ゼオライト(例えば、H-メソ-MCM-68、H-メソ-UZM-35、H-メソ-YNU-2)、H-メソ-MFI骨格ゼオライト(例えば、H-メソ-ZSM、H-メソ-FeS-1、H-メソ-MnS-1、H-メソ-[As-Si-O]-MFI、H-メソ-エンシライト(Encilite)、H-メソ-AZ-1、H-メソ-[Ga-Si-O]-MFI)などの1つ又は複数のH-メソ-ゼオライト、又はそれらの組合せは、例えばGa又はInの形態の、1つ又は複数の13族遷移金属などの遷移金属、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。遷移金属を注入及び/又はイオン交換などの任意の適した方法によってH-メソ-ゼオライト内に組み込むことができる。
【0080】
例えば、H-メソ-ゼオライトは、硝酸ガリウム(III)水和物(99.9%)などの金属硝酸塩の水溶液を使用して、Gaなどの遷移金属を注入され得、その後に、例えば約2時間~約8時間(例えば、6時間)の間乾燥が行われ得る。乾燥は周囲条件で行われ得、その後に、約10時間~約20時間の間(例えば、16時間)及び/又は約70℃~約150℃(例えば、約121℃)の温度でさらに乾燥が行われ得る。乾燥後に、触媒は、(例えば、空気中で、例えば約5L/分の流量で)400℃~約700℃、例えば約500℃~約600℃(例えば、約538℃)の温度で、及び/又は約30分~約6時間、例えば約1時間~約5時間の間(例えば、約3時間)焼成され得る。
【0081】
本開示のために、13族-メソ-ゼオライト成分は大細孔ゼオライトであり得る。13族-メソ-ゼオライト成分は、約300m2/g~約700m2/g、例えば約325m2/g~約675m2/g、例えば約350m2/g~約650m2/gの全表面積を有し得る。13族-メソ-ゼオライトは、約0.1mL/g~約0.6mL/g、例えば約0.15mL/g~約0.55mL/g、例えば約0.2mL/g~約0.5mL/gの全細孔体積を有し得る。
【0082】
13族-メソ-ゼオライト成分は、約75トール、約90℃において、約40mg/g~約150mg/g、例えば約50mg/g~約130mg/g、例えば約60mg/g~約120mg/gの炭化水素収着能(例えば、n-ヘキサン収着)を有し得る。
【0083】
13族-メソ-ゼオライトは、約0.001~約40、例えば約0.1~約35、例えば約1~約30、例えば約5~約25、例えば約7.5~約20、例えば約10~約15のSi/Al(モル)比を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、13族-メソ-MCM-68触媒のSi/Alモル比は約9である。
【0084】
本開示のために、13族遷移金属原子はGaであり得る。触媒組成物は、脱水素化分解触媒の重量の約0.05wt%~約50wt%、例えば約0.1wt%~約40wt%、例えば約0.5wt%~約30wt%、例えば約0.75wt%~約20wt%のGa含有量を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、触媒組成物Ga-MCM-68は、約0.5wt%~約2wt%のGa含有量を有する。
【0085】
少なくとも1つの実施形態において、13族遷移金属がゼオライト骨格内に導入/封入される。別の実施形態において、13族遷移金属が骨格の外側に局在化されるように、13族遷移金属がゼオライト骨格内に導入/封入されてゼオライト骨格と「配位」される。
【0086】
支持材料(バインダー)
また、本開示による触媒組成物は任意選択により、ゼオライト成分の他にバインダーなどの支持材料を含有する。バインダー成分は、ゼオライトが埋め込まれる母材の形態で触媒中に存在している。酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム又は酸化ケイ素などの無機酸化物、並びにそれらの混合物、特に上記の酸化物と酸化アルミニウムとの混合物、並びに非晶質アルミノケイ酸塩の他、例えばアルミニウムリン酸塩などの非酸化物バインダーをバインダーとして使用することができる。酸化アルミニウムが使用されるのが好ましい。例えばリン改質酸化アルミニウムなどの改質酸化アルミニウムを同様に使用することができる。アルミニウムトリアルキレン又はアルミニウムアルコラートの加水分解によって得られ得るか又は解膠性水和酸化アルミニウムの形態で使用される、微粉酸化アルミニウムバインダーの使用が特に好ましい。解膠性水和酸化アルミニウムがバインダーとして使用されるのが特に非常に好ましい。さらに好ましくは、(平均直径に対して)解膠性水和酸化アルミニウムの粒子の少なくとも95%が≦100μmである。
【0087】
バインダーを触媒組成物(すなわちゼオライトとバインダー)の全重量に対して5wt%~60wt%、例えば10~40wt%、例えば15wt%~35wt%の量で使用することがさらに好ましい。
【0088】
本発明による触媒のBET表面積はDIN 66131に従って決定されるとき250m2/g~500m2/g、好ましくは300m2/g~450m2/g及び特に好ましくは320m2/g~400m2/gである。
【0089】
脱水素化分解プロセス
本開示は、C3~C7炭化水素供給原料とメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物とが脱水素化分解条件下で接触されるプロセスに関する。供給原料をそのまま導入することができ、又は不活性ガス(例えば、N2)中で稀釈することができる。原料の稀釈は炭化水素分圧を低下させ得、それは変換の低下をもたらすが、それにもかかわらず、稀釈を必要としないプロセスと比較したとき、より高い生成物選択率を提供する。
【0090】
少なくとも1つの実施形態において、脱水素化分解は、1つ又は直列又は並列に接続される複数の反応器内で行われる。触媒の脱水素化分解プロセスは、固定床反応器、移動床反応器又は流動床反応器などの任意の適した反応器内で行われ得、C3~C7炭化水素流は、触媒流に並流又は向流のどちらであってもよい。少なくとも1つの実施形態において、触媒の脱水素化分解プロセスは、固定床方式の流通型反応器など、固定床反応器を使用して行われる。
【0091】
1つ又は直列又は並列の複数の反応器を用いてもよく、例えば1つ又は並列の複数の反応器を用いてもよい。メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を粉末、ペレット、溶液、スラリー、又はそれらの混合物として、反応器に別々に供給し、反応器の直前にインラインで活性化するか、又は予備活性化し、活性化された溶液又はスラリーとして反応器にポンプで送ってもよい。脱水素化分解は、単一反応器運転において実施され得、ここで供給原料とメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物とが単一反応器に連続的に添加されるか、又は直列の反応器運転において実施され得、ここで上記の成分は直列に接続される2つ以上の反応器の各々に添加され得る。触媒成分を直列の第1の反応器に添加することができる。また、触媒成分を両方の反応器に添加してもよく、1つの成分が第1の反応器に添加され、別の成分が他の反応器に添加される。少なくとも1つの実施形態において、脱水素化分解プロセスは連続プロセスである。
【0092】
少なくとも1つの実施形態において、C3~C7炭化水素供給原料を脱水素化分解してプロピレンなどの少なくとも1つのオレフィンと水素とを製造するプロセスが提供される。このプロセスは、n-ヘキサン、ペンタン、又はイソペンタンなどの少なくとも1つC3~C7炭化水素を本開示のメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物(例えば、H-メソゼオライト又は13族-メソ-ゼオライト)と接触させる工程と、プロピレンなどのより小さな分子量オレフィンを得る工程とを含み得る。
【0093】
少なくとも1つの実施形態において、C3~C7炭化水素供給原料を脱水素化分解して少なくとも1つのC2~C4オレフィン(例えば、プロピレン)を製造するプロセスは、Ga-メソ-MCM-68触媒を使用して行われる。
【0094】
脱水素化分解プロセスは、C2~C4オレフィンを得るために適した任意の温度及び/又は圧力で行われ得る。少なくとも1つの実施形態において、温度及び/又は圧力には、約400℃~約600℃、例えば約425℃~約575℃、例えば約450℃~約550℃の範囲の温度(例えば、約540℃)、大気圧で、及び/又は約50h-1~約800h-1、例えば約125h-1~約775h-1、例えば約150h-1~約750h-1、例えば約175h-1~約725h-1、例えば約200h-1~約700h-1、或いは約50h-1~約200h-1の毎時重量空間速度(WHSV)が含まれる。
【0095】
少なくとも1つの実施形態において、コークスを触媒から除去することによって触媒を再生する間欠空気(例えば、O2)再生プロセスを使用して脱水素化分解反応が行われる。形成されるコークスの量は、脱水素化分解反応の間の操作条件及び使用される特定の触媒に依存する。空気(例えばO2)再生前に脱水素化分解反応の適した実行時間は少なくとも60分であり得る。脱水素化分解の供給流を止めてもよく、次いで空気(例えば、O2)を約10分間触媒に導入して触媒を再生することができる。空気(例えば、O2)再生は約500℃~約600℃、例えば約525℃~約575℃、例えば約550℃の温度で行われ得る。複数の空気再生サイクルが2つ以上の温度で行われ得る。例えば、少なくとも1つの実施形態において、約5回の空気再生サイクルが500℃で行われ得、約5回の空気再生サイクルが525℃で行われ得、約5回の空気再生サイクルが550℃で行われ得、約5回の空気再生サイクルが575℃で行われ得、及び/又は約5回の空気再生サイクルが600℃で行われ得る。
【0096】
少なくとも1つの実施形態において、触媒再生のために使用される空気は、約1モル%~約15モル%のO2、例えば約5モル%のO2を含有する。再生のために使用される空気は、約50モル%~約70モル%のN2、例えば約61モル%のN2を含有し得る。再生のために使用される空気は、約20モル%~約50モル%のH2O、例えば約34モル%のH2Oを含有し得る。或いは、触媒再生のために使用される空気は約100%のO2を含有する。
【0097】
少なくとも1つの実施形態において、水素は、脱水素化分解プロセスの間に脱水素化分解反応器内に約0.05トール~約2,500トール(約0.05ミリバール~約3,333ミリバール)、例えば約0.5トール~約1,500トール(約0.67ミリバール~約2,000ミリバール)、例えば約5トール~約500トール(約5.67ミリバール~約667ミリバール)の分圧で存在している。
【0098】
例えば、ヘリウムは、脱水素化分解プロセスの間に脱水素化分解反応器内に約0.05トール~約200トール(約0.05ミリバール~約2667ミリバール)、例えば約0.5トール~約250トール(約0.67ミリバール~約333ミリバール)、例えば約5トール~約150トール(約5.67ミリバール~約200ミリバール)の分圧で存在している。少なくとも1つの実施形態において、ヘリウムは約100トール(133ミリバール)の分圧で脱水素化分解反応器内に存在している。
【0099】
少なくとも1つの実施形態において、C3~C7炭化水素供給原料の変換率は、反応域に入る供給原料の重量に基づいて少なくとも5%、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上である。
【0100】
本開示のプロセスは、原油精製工場内で製造しただけの過剰ガソリンをより貴重な組成物に品質向上させる、例えばガソリンをプロピレンに品質向上させる簡単な方法を提供することができる。パラフィン系供給原料は天然ガス液、軽直留ナフサ、凝縮物であり得る。他の適したパラフィン系供給原料には、ペンタン及びイソペンタン化合物が含まれ得る。さらに、天然ガス液、軽直留ナフサ、凝縮物供給原料は、精製工場環境内でガソリン留分から単離されるペンタン及びイソペンタンとブレンドされ得る。自動車ガソリンのリード蒸気圧(RVP)規格に適合し得るガソリンブレンディング原料を得るためにペンタン及びイソペンタンを前記ガソリン留分から分離することが望ましいことがある。したがって、メソ多孔性ゼオライト系クラッキング成分及び13族系脱水素成分を含有するメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を使用する本開示のプロセスは、ペンタン及びイソペンタンなどのこのようなパラフィン系供給原料の、高い選択率でのプロピレンへの変換をもたらすことができる。また、本脱水素化分解プロセスの流出物から単離されるガソリン留分は、このプロセスのための原料として使用されるガソリン留分よりもモーター法オクタン価及びリード蒸気圧に関して改良された特性を有することができる。
【0101】
その活性水素形態において、MCM-68は比較的高い酸活性を有し得、アルファ値が約500~約2,000、例えば約600~約1,500、例えば700~約1,250である。
【0102】
少なくとも1つの実施形態において、1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト系触媒、例えばH-メソ-ゼオライト触媒(例えば、H-メソ-MCM-68)、及び/又は1つ又は複数のメソ多孔性13族-ゼオライト系触媒、例えばGa-メソ-ゼオライト触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)を使用するC3~C7炭化水素供給原料の本脱水素化分解プロセスは、C3~C7炭化水素供給原料の、C2~C4オレフィンへの変換率が約5%~約25%となり、約5%~約25%の変換率(例えば、10%の変換率)がある。さらに、このような変換率はプロピレンに対する高い選択率、少なくとも50%の選択率で達成され得、したがってメタン及び芳香族化合物の形成はほとんど乃至全くない(例えば、脱水素化分解プロセスの間に形成されるメタンの5モル%未満)。
【0103】
1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト系触媒、例えばH-メソ-ゼオライト触媒(例えば、H-メソ-MCM-68)、及び/又は1つ又は複数のメソ多孔性13族-ゼオライト系触媒、例えばGa-メソ-ゼオライト触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)を使用するC3~C7炭化水素供給原料の本脱水素化分解プロセスは、例えば少なくとも3のオレフィン/パラフィンのモル比、例えば約3~約10、例えば約3.5~約9.5、例えば約4~約9、例えば約4.5~約8.5のオレフィン/パラフィンのモル比を有するC2~C4オレフィン生成物を提供することができる。少なくとも1つの実施形態において、Ga-メソ-MCM-68を使用するn-ヘキサンの脱水素化分解プロセスは、約3.2のオレフィン/パラフィンのモル比、例えば約7.1のプロピレン対プロパン(C3=/C3)比を提供する。
【0104】
1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト系触媒、例えばH-メソ-ゼオライト触媒(例えば、H-メソ-MCM-68)、及び/又は1つ又は複数のメソ多孔性13族-ゼオライト系触媒、例えばGa-メソ-ゼオライト触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)を使用するC3~C7炭化水素供給原料の本脱水素化分解プロセスは、少なくとも2のプロピレン/エチレン比、例えば約2~約50、例えば約3~約25、例えば約4~約20、例えば約4.5~約15、或いは約2~約4のプロピレン/エチレン比を有するC2~C4オレフィン生成物を提供することができる。少なくとも1つの実施形態において、Ga-メソ-MCM-68を使用するn-ヘキサンの脱水素化分解プロセスは約3.7のプロピレン/エチレン比を提供する。
【0105】
触媒の安定性(例えば、熱安定性)は、前記触媒の四面体骨格アルミニウムの減少の評価、又は周囲温度より高い温度(例えば、500℃)で前記触媒をスチーミングした後の結晶度によって測定することができる。このような測定は、例えば約30分~約100時間の間行うことができる。したがって、四面体骨格アルミニウムの減少は、ゼオライト骨格アルミニウム含有量の核磁気共鳴(27Al-MAS-NMR)によって、より高い温度(例えば、500℃)での触媒の四面体骨格アルミニウム含有量を四面体骨格アルミニウム含有量から引いた差として定義することができる。例えば、より高い温度(例えば、約60%スチーム残余N2中で500℃で100時間)で、四面体骨格アルミニウム含有量の減少がほとんど乃至全くないことを観察することができ、それは、周囲温度での触媒の四面体骨格アルミニウム含有量の値の少なくとも90%である。
【0106】
さらに、1つ又は複数のメソ多孔性ゼオライト系触媒、例えばH-メソ-ゼオライト触媒(例えば、H-メソ-MCM-68)、及び/又は1つ又は複数のメソ多孔性13族-ゼオライト系触媒、例えばGa-メソ-ゼオライト触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)を使用するC3~C7炭化水素供給原料の脱水素化分解プロセスは、プロセスの間にコークス形成に対する高い耐性を有するとともにプロピレンへの選択的変換をもたらすことができる。例えば、メソ多孔性ゼオライト系触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)は、比較的高い触媒の脱水素化分解活性/酸活性を示すことができ、約600~約1,500のアルファ値、運転経過時間とともに高い安定性を有する。したがって、メソ多孔性ゼオライト系触媒(例えば、Ga-メソ-MCM-68)の平均コークス失活速度定数は、0.1未満、例えば0.08未満であり得る。比較して、非メソ多孔性触媒(例えば、Ga-MCM-68)は少なくとも0.3の平均コークス失活速度定数を示し得、それは、反応器内の高いコークス形成を示し、例えば、ナフサの分解時に芳香族化合物及び/又はコークス形成のために急速な触媒失活をもたらし得る。したがって、触媒の長い寿命は、固定床方式の脱水素化分解プロセスに適用可能であり、触媒のコークス形成に対する耐性のために達成され得る。
【0107】
少なくとも1つの実施形態において、メソ多孔性H-ゼオライトの酸分解機能がGaの脱水素機能と組み合わせられるとき、本開示の触媒組成物及びプロセスは、プロピレンに対する高い選択率を有するC2~C4オレフィンの製造を可能にする。さらに、メソ多孔性ゼオライト系触媒組成物(例えば、Ga-メソ-MCM-68触媒)のメソ細孔は、以下の1つ又は複数など、いくつかの利点を示すことができる:i)高いプロピレン選択率を維持しながら、H-MCM-68(MCM-68ゼオライトの非メソ多孔性酸形態)の失活速度と同等のレベルまでのコークス形成による触媒の失活速度、ii)より高いプロピレン/エチレン比をもたらす、H-MCM-68及びGa-MCM-68と比較した場合の、低いエチレン選択率、iii)H-MCM-68及びGa-MCM-68と比較した場合の、コークス形成の減少。それは、H-MCM-68を使用する脱水素化分解プロセスと比較して、触媒の再生までいっそう長いサイクル時間を可能にする。したがって、パラフィンを水素とオレフィンとに脱水素化することができ、それをその後、酸部位でより小さなオレフィン(例えば、主にプロピレン)に分解することができる。中間燃料オレフィンのこのような水素化は、酸分解機能によって中間オレフィンの迅速な連続変換により最小にされ得る。脱水素機能と酸分解機能との組合せは、生成物流における非平衡オレフィン/パラフィンのモル比を提供することができる。
【実施例
【0108】
1.触媒試料
H-MCM-68の調製(実施例1)
MCM-68は、米国特許出願公開第2014/0140921号明細書(2013年10月15日に出願された米国特許出願第14/054,038号明細書)(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載された方法に従って合成された。ゼオライトの酸形態を調製するため、MCM-68ゼオライトを400℃で窒素流下にて30分間予備焼成し、温度を600℃に上昇させながらパージガスを窒素から空気に切り換え、空気流下にて2時間600℃の温度に維持した。次に、予備焼成された材料を98℃のNH4NO3と3回交換した。各々の交換の間に及び3回の交換の終了時に、MCM-68ゼオライトを水で徹底的に洗浄し、次いで120℃で乾燥させた。最初にMCM-68ゼオライトを交換した後、アンモニウム型を500℃で空気中で2時間焼成し、次にその後6時間の間538℃でスチーミング処理した。スチーミング処理されたMCM-68ゼオライトをその後、予備焼成された粉末に関して前述したようにもう3回交換した。最後に、アンモニウム交換された材料を500℃で空気中で2時間焼成してゼオライトの酸形態、H-MCM-68を生じた。H-MCM-68のSi/Alモル比は、ICPによって測定されるとき約12.1であった。
【0109】
Ga-MCM-68の調製(実施例2)
5グラムのH-MCM-68に4gの脱イオン水中の0.31gの硝酸ガリウム(III)水和物(99.9%)の溶液を注入した。後で触媒を4時間の間周囲条件で、次いで16時間の間121℃で乾燥させた。次に、触媒を538℃の空気(5L/分の流量)中で、2.5時間の加熱傾斜で3時間の間焼成した。最終触媒の蛍光X線分析は、触媒上に担持されるGaが0.9wt%であると判明した。メソ-MCM-68のSi/Alモル比は、蛍光X線によって測定されるとき、15.6であった。
【0110】
H-メソ-MCM-68の調製(実施例3):脱ケイ酸及び脱アルミニウム
a)脱ケイ酸:方法(NaOHを使用):10gのH-MCM-68を290gの0.2M NaOH溶液中で65℃で30分間の間加熱した。溶液を氷冷脱イオン水で急冷し、濾過し、脱イオン水で3回洗浄した。生成物を一晩120℃で乾燥させた。
【0111】
b)脱ケイ酸:方法b(NaOH及びTPABrを使用):脱ケイ酸手順を上記のように実施したが、但し、水酸化ナトリウム及び臭化テトラプロピルアンモニウム(TPABr)を水中に溶解して、0.2M NaOH及び0.06M TPABrの両方の単一溶液を得た。10gのH-MCM-68を0.2M NaOH及び0.06M TPABrの溶液混合物290g中で65℃で30分間の間加熱した。溶液を氷冷脱イオン水で急冷し、濾過し、脱イオン水で3回洗浄した。生成物を一晩120℃で乾燥させた。
【0112】
c)脱アルミニウム:次に、生成物を100℃のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)の0.11M溶液で6時間の間処理し、濾過によって単離し、次いで脱イオン水で3回洗浄した。得られた生成物を1M NH4NO3溶液中でイオン交換によって処理し、その後に、水による洗浄工程(3回)を行い、H-メソ-MCM-68の形成をもたらした。H-メソ-MCM-68を濾過によって回収し、及び120℃で乾燥させた。H-メソ-MCM-68のSi/Alモル比は、ICPによって測定されるとき8.5であった。
【0113】
Ga-メソ-MCM-68の調製(実施例4)
(上に記載されたように、TPABrを使用しない)脱ケイ酸方法を使用して予め調製されたH-メソ-MCM-68触媒2.5gに3.2gの脱イオン水中の0.076gのGa(NO3)3の溶液を注入した。次に、Ga-メソ-MCM-68触媒を4時間の間周囲温度で、次いで6時間の間120℃で空気流下にて乾燥させ、最後に538℃で3時間の間焼成した。蛍光X線分析は、触媒上に担持されるGaが0.51wt%であると判明した。Ga-メソ-MCM-68のSi/Alモル比は、蛍光X線によって測定されるとき12.3であった。
【0114】
2.反応器試験
ノルマルヘキサン、n-ヘキサンをパラフィン系ナフサ供給原料の代表例であるモデル反応体として反応試験のために使用した。
【0115】
触媒を大気圧にて石英栓流反応器内で、1,000°F(538℃)でn-ヘキサン変換について試験した。アルファ試験としても知られる試験は、米国特許第3,354,078号明細書、the Journal of Catalysis,Vol.4,p.527(1965)、the Journal of Catalysis,Vol.6,p.278(1966)、及びthe Journal of Catalysis,Vol.61,p.395(1980)(それぞれが参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。触媒を14~25メッシュの大きさに作り、石英で稀釈した。原料は、100トール(133ミリバール)のヘキサン分圧の、ヘリウム中のn-ヘキサンの混合物からなった。WHSVを約200h-1及び700h-1に調節し、5~25%のヘキサン変換を維持した。4つのデータポイントが4分、11分、18分、及び25分の運転経過時間で測定された。アルファとして表されるn-ヘキサンのクラッキング活性は、シリカ-アルミナ標準に対してn-ヘキサン変換の一次速度定数として定義され、式(A):
α=A*ln(1-X)/τ (A)
(式中:
αは相対一次速度定数であり、
Aは参照速度定数を含み、単位変換=-1.043であり、
Xは分数変換であり、
τは滞留時間=wt/(ρ*F)であり、
ρはg/cm3単位の充填密度であり、
Fはcm3/分単位のガス流量であり、
wtはg単位の触媒重量である)
を使用して決定された。
【0116】
記録されるアルファ値は、18分の運転時間後に取られた。反応生成物のメタン及びC2+炭化水素はGCによって分析された。芳香族化合物は分析されなかった。n-ヘキサン分解反応における触媒の耐コークス性の評価のために、4分、11分、18分、及び25分で測定されたアルファ値が時間の関数としてプロットされ、式(B):
【数1】
(式中、α0は時間t=0分におけるアルファ値であり、cは失活速度定数である)
で与えられる指数関数によってフィットされた。
【0117】
3.N2-ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)
N2等温線は、Gaの注入前に、H-MCM-68試料について、並びに上に記載のメソ多孔性H-MCM-68中間物について測定された。細孔径分布は、Micromeritics TriStar II 3020計測器において使用される手順に従うバレット-ジョイナー-ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)方法、並びにHalsey Faas補正を使用して等温線の吸着枝及び脱着枝(the adsorption and desorption branch)から計算された。
【0118】
図1に示されるように、H-MCM-68触媒(実施例1)のN2-BET等温線の測定は、H-メソ-MCM-68触媒(実施例3)のヒステリシスループを形成する、H-メソ-MCM-68触媒(実施例3)のN2-BET等温線の測定と異なっていた。ヒステリシスループは、H-MCM-68(実施例1)の脱ケイ酸によって生成されるメソ細孔の形成を示した。図2に示される細孔径分布は、中間細孔体積の大きな増大を示した。2.2nm~50nmの範囲で測定される全中間細孔体積は、H-MCM-68のN2等温線の吸着枝について0.071mL/g及び脱着枝について0.077mL/gであった。メソ-H-MCM-68について、2.3nm~49.5nmの範囲で測定される全中間細孔体積は吸着枝について0.32mL/g及び脱着枝について0.381mL/gであった。
【0119】
4.バレット-ジョイナー-ハレンダ(BJH)脱着方法を使用するH-MCM-68及びH-メソ-MCM-68の細孔径分布
図2は、H-MCM-68及びH-メソ-MCM-68について等温線の脱着枝から決定されるBJH細孔径分布曲線を示す。細孔径分布は、BJH方法、並びにHalsey Faas補正を用いて等温線の脱着枝から計算された。ヒステリシスループの形成はメソ細孔の存在の指標であり、それは、例えば、H-ゼオライトの脱ケイ酸によって生成された。H-メソ-ゼオライトの細孔径分布は、中間細孔体積の大きな増大を示した。
【0120】
実施例1:H-MCM-68についての生成物選択率及びオレフィン性
図3に示されるように、C1~C5炭素数生成物の範囲で、パラフィン及びオレフィンの生成物選択性は、6回の反応器運転について平均された。結果は、n-ヘキサンの、約5%~15%変換率のC1~C4変換生成物への変換率を示した。主反応生成物として11%の変換率で約40モル%の平均選択率でプロピレンが得られた。
【0121】
H-MCM-68についてn-ヘキサン分解反応における変換率(%)の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)比のモル比が図4に示され、C2=/C2について2.6、C3=/C3について3.2、C4=/C4について1.4及び全オレフィン/パラフィンのモル比について2.1の平均オレフィン比を示す。
【0122】
実施例1:H-MCM-68についてのコークス失活速度定数
表1は、各々の反応器に導入されるH-MCM-68触媒(実施例1)の異なった量を示し、合計6つの反応器がクラッキング装置内に並列に設定されている。可変WHSVで測定される運転経過時間の関数としてH-MCM-68の触媒活性を表す、図5に示されるように、H-MCM-68の触媒活性は運転経過時間とともに中程度に低下した。平均コークス失活速度定数は式(B)に従って決定され、0.08であると評価された(標準偏差STDEV=0.07)。図5において得られた結果は、18分の実行時間後に決定された平均アルファ値が805であることを示した(STDEV=69)。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例2:Ga-MCM-68についての生成物選択率及びオレフィン性
図6は、Ga-MCM-68についてのn-ヘキサン分解反応におけるC1~C5炭素数生成物リストのパラフィン及びオレフィンの生成物選択性を示す(実施例2)。選択性は4つの反応器運転について平均され、変換は約5%~約25%の範囲であった。これらの反応器運転の平均変換率は14%であった。図6に示されるように、プロピレン選択率は、H-MCM-68のGa促進の効果のために40%から50%に増加した。
【0125】
Ga-MCM-68についてn-ヘキサン分解反応における変換率(%)の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)比のモル比が図7に示され、C2=/C2について9.1、C3=/C3について7.2、C4=/C4について1.0及び全オレフィン/パラフィンのモル比について3.2の平均オレフィン比を示す。GaによるH-MCM-68の改質は、C2=/C2比及びC3=/C3比のかなりの増加をきたし、したがって全オレフィン性の増加をもたらすことが明らかである。
【0126】
実施例2:Ga-MCM-68についてのコークス失活速度定数
表2は、各々の反応器に導入されるGa-MCM-68触媒(実施例2)の異なった量を示し、合計4つの反応器がアルファクラッキング装置内に並列に設定されている。図8は、可変WHSVで測定されるGa-MCM-68触媒(実施例2A、2B、2C、及び2D)について運転経過時間の関数としてGa-MCM-68(実施例2)の触媒活性を示す。触媒活性は、運転経過時間とともに未改質参照触媒H-MCM-68(実施例1)と比較したときにGa-MCM-68(実施例2)よりも大きく低下した。平均コークス失活速度定数は、0.32(STDEV=0.06)であると決定された。18分の実行時間後に決定された平均アルファ値は1190(STDEV=83)であった。経時的にn-ヘキサン脱水素化分解活性の低下が大きくなることと軌を一にして、Ga-MCM-68触媒の初期活性がより高くなる。さらに、Ga-MCM-68(実施例2)は、H-MCM-68(実施例1)よりも高いアルファを有する。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例4:Ga-メソ-MCM-68についての生成物選択率及びオレフィン性
図9は、Ga-メソ-MCM-68(実施例4)についてのn-ヘキサン分解反応におけるC1~C5炭素数生成物リストのパラフィン及びオレフィンの生成物選択性を示す。表3は、各々の反応器に導入されるGa-メソ-MCM-68触媒(実施例4)の異なった量を示し、合計6つの反応器がアルファクラッキング装置内に並列に設定されている。選択性は6つの反応器運転について平均され、変換は約5%~約15%の範囲であり、平均変換率は10%である。生成物分布はGa-MCM-68の生成物分布に非常に似ており、プロピレンが主反応生成物である(約50%の選択率)。有利にも、たった5モル%のメタンがプロセスの間に製造された。
【0129】
【表3】
【0130】
図10に示されるように、Ga-メソ-MCM-68(実施例4)についてn-ヘキサン分解反応における変換の関数としてエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)比のモル比が得られ、平均オレフィン比はC2=/C2について3.8、C3=/C3について7.1、C4=/C4について1.6、及び全オレフィン/パラフィンのモル比について3.2であった。Ga-メソ-MCM-68触媒(実施例4)は、Ga-MCM-68(実施例2)と同じ好ましいC3=/C3比及び全オレフィン性を維持した。Ga-メソ-MCM-68は、Ga-MCM-68よりも低いC2=/C2比をもたらした。有利にも、高いオレフィン/パラフィンのモル比が得られた。理論によって縛られなければ、n-ヘキサンの、プロピレンへの反応変換が速ければ速いほど、ヘキセンが水素化される可能性はより低くなる。したがって、ヘキセンは平衡から離れて取り除かれ、プロピレンが急速に形成される。
【0131】
実施例4:Ga-メソ-MCM-68についてのコークス失活速度定数
図11は、可変WHSVで測定されるGa-メソ-MCM-68触媒について運転経過時間の関数として触媒活性(アルファ)を示す。触媒Ga-メソ-MCM-68(実施例4)の活性は、Ga-MCM-68(実施例2)と比較して運転経過時間とともに安定していた。平均コークス失活速度定数は、0.08(STDEV=0.07)であると決定された。18分の実行時間後に決定された平均アルファ値は659(STDEV=17)であった。
【0132】
図12は、H-MCM-68(実施例1)、Ga-MCM-68(実施例2)、及びGa-メソ-MCM-68(実施例4)触媒についてn-ヘキサン分解反応における平均アルファ値及びそれらの標準偏差を示す。結果は、H-MCM-68及びGa-MCM-68が、約800~約1,200のアルファ値を有する、比較的高いヘキサンのクラッキング活性を示し得ることを実証する。MCM-68ゼオライトが焼成によってその活性、酸性水素形態に変換されるとき、H-MCM 68は高酸性になる。H-MCM-68がさらに、硝酸ガリウム(III)、Ga(NO3)3の溶液を注入することによってGa-MCM-68に変換されるとき、ヘキサンの変換は、ブレンステッド酸部位での直接クラッキングによって、並びにGa部位での脱水素によって起こり得る。H-MCM-68がさらにH-メソ-MCM-68に変換され、その後に、Ga(NO3)3が注入されて、相当するGa-メソ-MCM-68触媒を形成するとき、ヘキサンのクラッキング活性が減少した。
【0133】
図13に示されるように、Ga-メソ-MCM-68についてn-ヘキサン分解反応において可変WHSVでエテン対エタン(C2=/C2)、プロピレン対プロパン(C3=/C3)、ブテン(全てのブテンの総計)対ブタン(全てのブタンの総計)、及び全オレフィン(C2=~C5=)対パラフィン(C1~C5)比の平均モル比は、H-MCM-68及びGa-MCM-68と比較したときプロピレンに対する高い選択率を裏づける。
【0134】
図14は、H-MCM-68、Ga-MCM-68、及びGa-メソ-MCM-68の平均コークス失活速度定数、並びにn-ヘキサンのクラッキング試験におけるそれらの標準偏差を示す。統計学的に、H-MCM-68及びGa-メソ-MCM-68は、同じコークス失活挙動を示すが、Ga-MCM-68は、かなりのアルファ失活速度定数(コークス形成のかなりの増加)を示す。結果は、触媒組成物中のメソ細孔の存在が脱水素化分解プロセスの間の一切のコークス形成を防ぐために有利であることを裏づける。
【0135】
したがって、図1~14に示される結果は、Gaによって与えられる脱水素機能によるH-MCM-68(実施例1)の品質向上は、n-ヘキサンの変換のかなりの増加、並びにプロピレンに対する選択率の著しい増加をもたらすことを実証した。非メソ多孔性ゼオライト(H-MCM-68)にGaを加えることによって、コークス形成が促進された。しかしながら、Ga-MCM-68へのメソ細孔の導入は、有利に高いプロピレン選択率を維持しながら、H-MCM-68と同等のレベルまでコークス形成の失活速度を低下させた。メソ多孔性Ga-メソ-MCM-68触媒のさらに別の利点は、より高いプロピレン/エチレン比をもたらす、そのいっそう低いエチレン選択率であった。
【0136】
典型的なナフサ水蒸気分解は、約15%のメタン、30%のエチレン、及び約16%のプロピレンを生じる(参考文献:Handbook of Petrochemicals Production Processes,edited by Robert A.Meyers,McGraw-Hill Professional Publishing,2005,table 6.1.1)。軽オレフィン収率は高いが、プロピレンよりも多いエチレンが製造される。さらに、比較的多量のメタンが水蒸気分解によって製造される。
【0137】
全体的にみて、本開示の組成物及びプロセスは、酸による分解機能及び13族原子による脱水素機能を有するゼオライトを含有するメソ多孔性ゼオライト系触媒組成物を提供することができる。本開示の脱水素化分解プロセスは、C3~C7炭化水素供給原料の、小オレフィン(例えば、プロピレン)への変換をもたらし、燃料の品質向上をもたらすことができる。本開示の組成物及びプロセスは、高いプロピレン選択率を維持しながら、非メソ多孔性酸ゼオライトと同等のレベルまでコークス形成によって触媒の失活速度を低減させながら、メタン、プロパン及び/又は芳香族化合物の形成を低減又は除去することができる。コークス形成を抑えることによって触媒の再生までいっそう長いサイクル時間を可能にする。
【0138】
特に断りがない限り、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、他の工程、要素、又は材料の存在を排除せず、このような工程、要素、又は材料が本開示の基本的な及び新規な特性に影響を与えない限り、本明細書中で具体的に言及されるか否かにかかわらない。さらに、それらは、使用される要素及び材料に通常関連した不純物及び差異を排除しない。
【0139】
簡単にするために、特定の範囲だけが本明細書において明示的に開示される。しかしながら、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて明示的に列挙されていない範囲を列挙することができ、並びに、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて明示的に列挙されていない範囲を列挙することができ、同じように、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて明示的に列挙されていない範囲を列挙することができる。さらに、範囲には、明示的に列挙されていなくてもその端点間のあらゆる点又は単一値が含まれる。したがって、あらゆる点又は単一値は、任意の他の点又は単一値、或いは任意の他の下限又は上限と組み合わせてそれ自体の下限又は上限となり得、明示的に列挙されていない範囲を列挙することができる。
【0140】
本明細書に記載される全ての文献は、任意の優先権書類及び/又は試験手順など、それらが本文と矛盾しない程度まで本明細書において参照によって組み込まれる。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかであるように、本開示の形態が例示及び説明されたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに様々な改良を行うことができる。したがって、本開示はそれによって限定されることを意図しない。同様に、用語「含む(comprising)」は用語「含有する(including)」と同義語であると考えられる。同様に組成物、要素又は要素の群の前に移行句「含む(comprising)」が置かれるときはいつでも、組成物、要素、又は複数要素の列挙に先行して移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群から選択される(selected from the group of consisting of)」又は「である(is)」を使用して同じ組成物又は要素の群が考えられ、逆もまた同様であるということは理解されたい。
【0141】
本開示は多数の実施形態及び実施例に対して説明されたが、本開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱しない他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14