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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】エネルギー吸収装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/22 20060101AFI20240220BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60R19/22 D
B60R19/18 Q
B60R19/18 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021556982
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020055450
(87)【国際公開番号】W WO2020200604
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】102019108742.2
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー・アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ルードルフ・ティム
(72)【発明者】
【氏名】マンスケ・タマラ
(72)【発明者】
【氏名】ムーゼルマン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グロース・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィネ・マズダク
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー・マヌエル
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352028(JP,A)
【文献】実開平02-075249(JP,U)
【文献】特開昭60-143161(JP,A)
【文献】特開2004-196156(JP,A)
【文献】特開2005-263207(JP,A)
【文献】特開2000-318551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0131901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/22
B60R 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にバンパーの幅全体にわたって延在する第1の変形要素と、この第1の変形要素に配置された少なくとも1つの第2の変形要素を備える車両のバンパー用のエネルギー吸収装置において、
第1及び第2の変形要素(8;10)が、異なる密度の発泡材料から成り、第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも50g/l低い密度を有し、第1の変形要素(8)の発泡材料の密度が、20~50g/lであり、第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、80~250g/lであること、及び、第2の変形要素(10)は、衝突時には、第1の変形要素(8)の密度が低いことに基づいて、第2の変形要素(10)が圧縮される前に、まず第1の変形要素(8)が圧縮されるように、車両縦方向に第1の変形要素(8)に隣接して配置されていること、を特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項2】
第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも60g/l低い密度を有すること、を特徴とする請求項1に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項3】
第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも70g/l低い密度を有すること、を特徴とする請求項1に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項4】
第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、90~250g/lであること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項5】
第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、100~250g/lであること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項6】
第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)内に挿入されていること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項7】
第1の変形要素(8)が、第2の変形要素(10)の収容用の凹部(22)を備えること、を特徴とする請求項6に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項8】
第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)の前側に配置されていること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項9】
第2の変形要素(10)が、直方体状又は角錐状に形成されていること、を特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項10】
第2の変形要素(10)が、ストリップ状に形成されていること、を特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項11】
第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)の幅方向の広がりの主要部にわたって延在すること、を特徴とする請求項10に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項12】
第2の変形要素(10)が、噛合い係合及び/又は接着によって及び/又は別個の結合要素によって、第1の変形要素(8)と結合されていること、を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項13】
第1及び第2の変形要素(8もしくは10)が、多成分発泡部品として製造されていること、を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のエネルギー吸収装置を備えた自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による車両、特に自動車のバンパー用のエネルギー吸収装置と請求項14による自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102015209714号明細書から、クロスメンバーとして形成されたバンパーの前側に配置された、自動車のバンパー用のエネルギー吸収装置が公知である。この公知のエネルギー吸収装置は、「基体」を構成する第1の変形要素(独国特許出願公開第102015209714号明細書の用語では、「第2の変形要素」と呼ばれる)と、局所的な第2の変形要素(独国特許出願公開第102015209714号明細書の用語では、「第3の変形要素」と呼ばれる)から成る。第2の変形要素は、好ましくは、自動車のサイドメンバーの延長部内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102015209714号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、公知のエネルギー吸収装置を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を備えたエネルギー吸収装置によって解決される。請求項14は、本発明によるエネルギー吸収装置を備えた自動車に関する。
【0006】
本発明の核心思想は、複合型の発泡部品から成るエネルギー吸収装置を提供することであり、この発泡部品の構成要素は、著しく異なる密度を、従って著しく異なる剛性を備える。
【0007】
本発明によれば、第1の変形要素の発泡材料は、第2の変形要素よりも少なくとも50g/l低い密度を有する(「密度間隔」)。本発明の実施形態では、第1の変形要素の発泡材料は、第2の変形要素よりも少なくとも60g/l低い密度を有する。本発明の別の実施形態では、第1の変形要素の発泡材料は、第2の変形要素よりも少なくとも70g/l低い密度を有する。
【0008】
更に、第1の変形要素の発泡材料の密度は、20~50g/l(「密度1」)である。本発明の実施形態では、第1の変形要素の発泡材料の密度は、25~40g/lである。本発明の別の実施形態では、第1の変形要素の発泡材料の密度は、25~35g/lである。
【0009】
更に、本発明によれば、第2の変形要素の発泡材料の密度は、80~250g/l(「密度2」)である。本発明の実施形態では、第2の変形要素の発泡材料の密度は、90~250g/lである。本発明の別の実施形態では、第2の変形要素の発泡材料の密度は、100~250g/lである。
【0010】
密度値に関するすべての情報には、+/-10%の公差が割り当てられている。
【0011】
本発明は、「密度間隔」と「密度1」及び「密度2」との任意の組合せを、即ち、両変形要素の発泡材料の密度の規定された差を備えた第1及び第2の変形要素の対を含む。
【0012】
基本的に、指定の範囲の下端の「密度1」の値に比べると、「密度1」が、指定の範囲の上端の値を有する場合は、より大きい絶対「密度間隔」が有効である。これにより、両場合で、比較可能な相対「密度間隔」が得られる。
【0013】
出願人は、歩行者保護と「低速衝突」の間の部分的に矛盾する要求を解決する必要がある広範な調査での新しいアプローチで、第1及び第2の変形要素の発泡材料の密度に関する指定の値範囲を特定した。
【0014】
第1の変形要素は、そのエネルギー吸収挙動を、基本的に歩行者保護の要件に合うように設計されている。
【0015】
更に、いわゆる「低速衝突」(衝突速度<20km/h)での高い荷重入力に対処するため、本発明によるエネルギー吸収装置の場合、より大きい剛性を備えた少なくとも1つの第2の変形要素もうけられている。これにより、本発明によるエネルギー吸収装置は、全体的に歩行者保護と「低速衝突」の両方の要件を満足する。
【0016】
「低速衝突」とは、例えば駐車衝撃又は低速(もしくは、前の制動後の低い残留速度)での追突である。そのような衝突は、通常は、車両の乗員を保護するためのエアバッグシステムのトリガ閾値未満である。「低速衝突」時に生じる車両の損傷は、車両の支持構造に害を与えないいわゆる軽微な損傷である。それにもかかわらず、車両の被害を制限するためには、エネルギー吸収装置内でできるだけ多くの衝突エネルギーを除去することが不可欠である。これは、修理費用を削減する。これにより、車両保険会社は、より有利な保険料の分類を達成することができる。
【0017】
本発明は、第2の変形要素が、第1の変形要素の局所的な補強材を構成することによって際立っている。この場合、第1の変形要素は、それ自体で第2の変形要素を収容する「基体」を構成することができる。第2の変形要素は、第1の変形要素の1つの位置もしくはいくつかの位置に挿入又は装着することができる。
【0018】
第2の変形要素の位置及び/又は大きさは、車両の形成に、特にバンパー及び/又は第1の変形要素の形成に依存する。エネルギー吸収装置の設計は、通常は、試験片(例えば障壁、振り子)による試験で行われる。例えば、第2の変形要素の位置及び/又は大きさは、第1の変形要素が同時に最大に膨張した場合でも、通常使用される試験片との十分な幾何学形状的重なりがあるように寸法設定される。これにより、システム全体は、歩行者保護と「低速衝突」の両方の要求を満足する。
【0019】
即ち、本発明により、歩行者保護と「低速衝突」の間の目標の対立が、車両内で使用可能な取付けスペースと、車両のパッケージから設定される車両比率からの要求を考慮して解決される。
【0020】
この場合、「低速衝突」では、第1の変形要素内での適切なエネルギー吸収による歩行者保護の要求を同時に満足しつつ車両の損害を最小化するために、第2の変形要素により、試験片の侵入が最小に低減される。
【0021】
第2の変形要素は、第1の変形要素上又は内でのその位置決めに基づいて及び/又はその形状及び/又はその大きさに基づいて、歩行者保護に対して大きな影響を有しない。
【0022】
第2の変形要素は、本発明の実施形態では、例えば圧力ホースによる歩行者の衝撃の感知に影響を与えないように寸法設定されている。この感知は、例えば、アクティブフロントフラップ用のアクチュエータを起動するために使用される。
【0023】
車両メーカーの異なる車両モデル及び/又は1つの車両モデルのバリエーション及び/又は1つの車両モデルの国別バージョンがある場合、第1及び第2の変形要素を相応に組み合わせることにより個々の適合を達成することが、本発明により簡単に可能である。この場合、個々の車両バリエーションの変形要素は、第1の変形要素上又は内での第2の変形要素の配置に関してだけでなく、例えばその密度及び/又はその幾何学形状(幅、高さ、厚さ)の点で異なり得る。
【0024】
本発明により、車両の縦方向の、即ちバンパーカバーとバンパーの前側との間の必要な取付けスペースを減少させる可能性が与えられており、歩行者保護及び/又は「低速衝突」からの要求を損なうことはない。これにより、フロントアクスルの前のボディの「オーバーハング」が減少させられ、これが、車両の外観にプラスに作用する。既に前で述べたように、第2の変形要素のエネルギー吸収の増大により、衝突に起因した侵入の低減(従って、車両の損害発生の低減)を達成することができ、車両の保険の分類に関して利点を有する。加えて、バンパーの後には、例えばバンパーの後に配置されたラジエターのために、より少ない変形スペースしか必要ない。
【0025】
第2の変形要素は、第1の変形要素と比べて、少ない広がりを、車両横方向及び/又は車両高さ方向及び/又は車両縦方向に有する。即ち、第2の変形要素は、エネルギー吸収装置内の局所的な補強材である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2つの第2の変形要素が設けられ、これら第2の変形要素は、例えば、車両の縦方向中心平面に対して鏡面対称に、即ち第1の変形要素の右側及び左側の部分上又は内に配置されている。
【0027】
第2の変形要素は、例えば、車両のフロントサイドメンバーの延長部の領域に配置されている。これらフロントサイドメンバーは、エンジンマウントとも呼ばれ、その前端にバンパーを収容する。フロントサイドメンバーは、その前方領域に、衝突時にエネルギーを吸収するためのいわゆる「デフォボックス」を有する。第2の変形要素の変形が生じる力のレベルは、例えば、「デフォボックス」の変形が生じる力のレベルの若干下にある。この実施形態により、第2の変形要素の圧縮は、例えば、「デフォボックス」が作動させられる前に、場合によってはそのロックまで得られる。
【0028】
当然、2つより多くの第2の変形要素を設けることができる。第2の変形要素の対での配置に対して付加的又は選択的に、好ましくは第1の変形要素上又は内の中心に配置された1つの第2の変形要素を設けることもできる。
【0029】
第1の変形要素は、バンパーの少なくともほぼ全幅にわたって連続的に延在することができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、第2の変形要素が、第1の変形要素内に挿入されている。
【0031】
このため、有利には、少なくとも1つの凹部が、第1の変形要素に設けることができ、この凹部内に、第2の変形要素が収容されている。これにより、第1の変形要素は、挿入された第2の変形要素の領域に、小さい材料厚さを備える。
【0032】
本発明の有利な実施形態では、第2の変形要素が、第1の変形要素の前側に、即ち隣接するバンパーカバーに隣接して配置されている。
【0033】
選択的に、第2の変形要素は、第1の変形要素の裏側に、隣接するバンパーに隣接して挿入することもできる。「多成分発泡部品」(以下の定義参照)から成るエネルギー吸収装置の場合、第2の変形要素は、第1の変形要素の内部に配置することが、即ち、第1の変形要素によって全面的に包囲することができる。これらの場合、歩行者の衝撃の感知は、例えば第1の変形要素の前側の領域内の装置によって行なうことができる。
【0034】
この場合、第2の変形要素は、直方体状又は角錐状に形成することができる。選択的に、第2の変形要素は、ストリップ状に形成することができる。両実施形態において、第2の変形要素は、第1の変形要素の前側及び/又は裏側及び/又は内部の上及び/又は下に配置することができる。
【0035】
ストリップ状の形成において、第2の変形要素は、第1の変形要素の幅方向の広がりの一部にわたって延在することができる。本発明の1つの実施形態では、第2の変形要素は、第1の変形要素の幅の主要部にわたって延在する。第2の変形要素は、好ましくは、第1の変形要素の高さ方向の広がりよりも小さい高さ方向の広がりを有する。ストリップ状の第2の変形要素は、第1の変形要素の「溝状の」凹部内に収容することができる。選択的に、ストリップ状の第2の変形要素は、第1の変形要素の前側及び/又は裏側に平らに装着することができる。
【0036】
「基体」としての第1の変形要素の形成以外に、第1及び第2の変形要素は、幅方向又は高さ方向に交互にバンパーに直接的に配置することもできる。この場合、第2の変形要素の体積比率は、歩行者保護の要求を満たすため、第1の変形要素の体積比率よりも小さい。
【0037】
本発明の有利な実施形態では、第1の変形要素は、第2の変形要素から突出するので、衝突時にはまず第1の変形要素が圧縮される。しかしながらまた、既に前で述べたように、第1の変形要素は、第2の変形要素の「後」又は「内」に配置することができる。
【0038】
しかしながら、第1の変形要素の密度が低いことに基づいて、その後第2の変形要素が圧縮される前に、まず第1の変形要素が圧縮されることが、前記全ての実施形態に共通する。
【0039】
前で使用した全ての位置の呼称は、車両内の本発明によるエネルギー吸収装置の取付け位置に関する。
【0040】
第1の変形要素の「基体」と、その内に挿入される又はそれと結合される第2の変形要素から成る本発明によるエネルギー吸収装置の製造は、異なる方法で行なうことができる。一方では、別個に製造されかつ後から接合される発泡部品を備えた「組立て式のエネルギー吸収装置」であり得る。他方では、エネルギー吸収装置は、分離不能に互いに結合された発泡成分(「多成分発泡部品」)から成り得る。
【0041】
「組立て式のエネルギー吸収装置」の場合、第1及び第2の変形要素は、別個に製造される。第1の変形要素は、本発明の好ましい実施形態では、第2の変形要素を収容するための凹部を備える。第2の変形要素は、第1の変形要素の凹部内に挿入され、例えば噛合い係合式の結合によって第1の変形要素内に固定される。噛合い係合式の結合は、例えば、第2の変形要素(硬質発泡部品)の第1の変形要素内への、例えば第1の変形要素のアンダーカットへの又は斜面に沿った挿入により行なうことができる。
【0042】
選択的又は付加的に、第2の変形要素は、接着によって第1の変形要素と結合することができる。
【0043】
選択的又は付加的に、例えばクリップのような、第1の変形要素に第2の変形要素を固定するための補助要素を設けることができる。
【0044】
「多成分発泡部品」の製造時、例えば、予備製造された第2の変形要素(「硬質発泡部品」)が自動成形機に挿入される。次いで、自動成形機に、第1の変形要素の材料が吹き込まれ、これにより、第2の変形要素が発泡で包囲される。
【0045】
更に、「多成分発泡部品」は、例えば、2つの異なるプラスチック材料を連続的に充填することによってスライドを備えた自動成形機内で、予備成形された「硬質発泡部品」なしで製造することができる。
【0046】
前の説明では、「第2の変形要素」と関連しては、「少なくとも1つの第2の変形要素」であるとの意味で、基本的に単数形が使用されている。
【0047】
本発明は、更に、本発明によるエネルギー吸収装置を備えた自動車に関する。
【0048】
本発明の可能な実施例を図面に図示し、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】従来技術によるエネルギー吸収装置(図1の左半分)もしくは本発明によるエネルギー吸収装置(図1の右半分)を備えたバンパー装置の概略図
図2】従来技術によるバンパー用の第1の変形要素の斜視図
図3】第2の変形要素が挿入された本発明による第1の変形要素の図2に対応する図
図4】第2の変形要素を別個に図示した図3の詳細Zの拡大図
図5】本発明の第2の実施例の斜視図
図6図5の切断線VI-VIによる斜視断面図
図7図5の切断線VII-VIIによる斜視断面図
図8】本発明の第3の実施例の斜視図
図9図8の切断線IX-IXによる斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明によるエネルギー吸収装置と対比して従来技術によるエネルギー吸収装置の構造を説明する。
【0051】
その全体を102で指示した自動車用の公知のバンパー装置は、自動車の横方向に延在するバンパー104(バンパーサイドメンバー)を備え、このバンパーは、左側のサイドメンバー106と図示してない右側のサイドメンバーを介して自動車の支持構造に結合されている。バンパー104は、エネルギー吸収装置を備えており、このエネルギー吸収装置は、バンパー104の前側に配置された第1の変形要素108によって構成される。自動車のフロントフラップの前端は、105で指示されている。走行方向とは反対方向で、バンパー装置102の後に、特にラジエター107が設けられている。第1の変形要素108は、例えば80mmの厚さDを有する。厚さDは、自動車の横方向にほぼ一定であること又は自動車の横方向に変化することができる。
【0052】
その全体を2で指示した自動車用の本発明によるバンパー装置も、自動車の横方向に延在するバンパー4(バンパーサイドメンバー)を備え、このバンパーは、図示してない左側のサイドメンバーと右側のサイドメンバー6を介して自動車の支持構造に結合されている。バンパー4の前側に、第1の変形要素8を備えたエネルギー吸収装置が配置されている。第1の変形要素8内には、車両サイドごとに(右側しか図示してない)、外側と内側の第2の変形要素10が挿入されている。フロントフラップの前端は、5で指示されている。バンパー装置2の後には、特にラジエター7が設けられている。
【0053】
第1の変形要素8は、発泡材料、好ましくはプラスチック材料、例えばEPP又はPUから成り、例えば、自動車の横方向、縦方向及び高さ方向に例えば約30g/lの均一の密度を備える。第2の変形要素10も、発泡材料、好ましくはプラスチック材料、例えばEPP又はPUから成る。第2の変形要素10の密度は、第1の変形要素8の密度よりも著しく高く、例えば約100g/lである。それに応じて、第2の変形要素10の剛性も、f第1の変形要素8の剛性よりも著しく大きい。従って、第2の変形要素10は、いわゆる「硬質発泡部品」である。
【0054】
第1及び/又は第2の変形要素の発泡材料は、例えばEPPのようなパーティクルフォームによって構成される。同様に、例えばPURフォームを使用することもできる。
【0055】
第1の変形要素8は、第2の変形要素10が設けられていない部分に、例えば80mmの厚さDを有する。第2の変形要素10を備えた領域では、第1の変形要素8の厚さD1は、例えば40mmである。第2の変形要素10の厚さD2は、例えば40mmである。この場合、「厚さ」とは、自動車の縦方向の広がりと理解する。
【0056】
第2の変形要素10により、例えば標準化された試験方法(例えば振り子衝撃試験)において、衝突物の侵入深さは、第2の変形要素10による局所的な補強に基づいて、局所的に著しく低減される。減少した侵入深さにより、自動車のフロントフラップの前端5は、従来技術による自動車の場合よりも更に前方に引き出すことができる。
【0057】
図2に、成形発泡部品として形成された従来技術による第1の変形要素108が示されている。第1の変形要素108の外側輪郭は、図示してないバンパーカバーの内側に適合されているので、図2に図示した「ギザギザ」の外側輪郭が得られる。例えば、変形要素108は、PDCセンサ用の凹部130と、牽引アイ用の凹部132を有する。図2では見えない変形要素108の裏側は、大きい面の当接面の意味で、図示してない対応するバンパー104に応じて成形されている。更に、複数の固定アーム134がわかるが、これら固定アームによって、第1の変形要素108は、バンパー104に噛合い係合式に配置することができる。
【0058】
図3は、本発明による第1の変形要素8を示すが、この第1の変形要素は、右側及び左側の凹部20(図4に図示した)を除いて図2による第1の変形要素108と同一である。凹部20は、本発明によれば、右側及び左側の第2の変形要素10を収容するために使用される。その他、第1の変形要素8は、第1の変形要素108に応じた凹部30及び32と固定アーム34を有する。
【0059】
図4には、公知の変形要素108本発明による変形要素8の間の決定的な差が、拡大して図示されている。第2の変形要素10は、例えば、第1の変形要素8の凹部20にクリップ留めすることができる硬質発泡体として形成されている。第1の変形要素8は、例えば成形発泡部品として形成されている。
【0060】
図5は、本発明の第2の実施例を示す。図5による実施例の変形要素8及び10は、例えば、意匠バリエーション用のバンパーカバーの形状に適合されている。同じ及び同じ作用の部品は、第1の実施例でのものと同じ符号を備えている。
【0061】
第1の実施例とは異なり、図5によれば、右側及び左側の第2の変形要素10は、幾何学形状的に異なるように形成されている。右側の第2の変形要素10は、左側の第2の変形要素10とは違って、ねじ込み可能な牽引アイ用の固定ブッシュのための凹部22を外側に備える。加えて、右側の第2の変形要素10の前側には、牽引アイ用の開口を覆うためのカバー用の凹部24が設けられている。
【0062】
図6及び7は、両変形要素10を拡大断面図で示す。この場合、第1の変形要素8の裏側に、バンパー4への衝撃を感知するための図示してない流体ホースを収容するための通路26が図示されている。
【0063】
図8及び9は、第1及び第2の変形要素8もしくは10を備えたエネルギー吸収装置を示す。両変形要素8及び10は、図示してないバンパー(バンパークロスメンバー)の幅の主要部にわたって延在する。この場合、第1の変形要素8は、バンパーに全面的に当接するために形成されている。第1の変形要素8は、バンパーに結合するための固定要素(例えば組立てプラグ)を挿入可能な凹部40を有する。第1の変形要素8のバンパーに対向する裏側に、流体ホース42の収容用の通路26が設けられている。流体ホース42は、バンパーへの衝撃を感知するために使用される。第1の変形要素8内の隣接する通路26a及び26bは、中央の通路26の邪魔されない変形を可能にし、これにより、歩行者の衝撃が生じた場合に、流体ホース42が最適に変形し、これにより衝撃を最善に感知することができる。
【0064】
第2の変形要素10は、ストリップ状に形成され、第1の変形要素8の前側の下の領域に配置、即ち第1の変形要素8の前に支承されている。第2の変形要素は、例えば接着によって第1の変形要素8と結合されている。この場合、第2の変形要素10は、横方向終端部で第1の変形要素8から突出する。第2の変形要素1の高さは、第1の変形要素8の高さの約半分の大きさである。第2の変形要素10は、第1の変形要素8と比べて若干大きい厚さを有する。第2の変形要素10の前側及び/又は上側には、例えば牽引アイを案内するため又はPDCセンサ用のスペースを提供するための凹部44,46及び48が設けられている。
【0065】
第1の変形要素8は、例えば約30g/lの密度を有するが、第2の変形要素10は、例えば130g/lの密度を備える。
【0066】
図9の図は、CAD断面図に基づく。明確化のため、両変形要素8及び10が当然中実材料であることを指摘する。
【0067】
本発明は、以下のように要約することができる:自動車のバンパー4用のエネルギー吸収装置は、バンパー4の前側に第1の変形要素8を備える。第1の変形要素8は、バンパー4の幅にわたって延在する成形発泡部品であり、20~50g/lの密度を備える。第1の変形要素8内に、少なくとも1つの第2の変形要素10が挿入され、第1の変形要素よりも少なくとも50g/l高い密度を備える。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.実質的にバンパーの幅全体にわたって延在する第1の変形要素と、この第1の変形要素に配置された少なくとも1つの第2の変形要素を備える車両のバンパー用のエネルギー吸収装置において、
第1及び第2の変形要素(8;10)が、異なる密度の発泡材料から成り、第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも50g/l低い密度を有し、第1の変形要素(8)の発泡材料の密度が、20~50g/lであり、第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、80~250g/lであること、を特徴とするエネルギー吸収装置。
2.第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも60g/l低い密度を有すること、を特徴とする上記1に記載のエネルギー吸収装置。
3.第1の変形要素(8)の発泡材料が、第2の変形要素(10)の発泡材料よりも少なくとも70g/l低い密度を有すること、を特徴とする上記1に記載のエネルギー吸収装置。
4.第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、90~250g/lであること、を特徴とする上記1~3のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
5.第2の変形要素(10)の発泡材料の密度が、100~250g/lであること、を特徴とする上記1~3のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
6.第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)内に挿入されていること、を特徴とする上記1~5のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
7.第1の変形要素(8)が、第2の変形要素(10)の収容用の凹部(22)を備えること、を特徴とする上記6に記載のエネルギー吸収装置。
8.第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)の前側に配置されていること、を特徴とする上記1~7のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
9.第2の変形要素(10)が、直方体状又は角錐状に形成されていること、を特徴とする上記1~8のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
10.第2の変形要素(10)が、ストリップ状に形成されていること、を特徴とする上記1~8のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
11.第2の変形要素(10)が、第1の変形要素(8)の幅方向の広がりの主要部にわたって延在すること、を特徴とする上記10に記載のエネルギー吸収装置。
12.第2の変形要素(10)が、噛合い係合及び/又は接着によって及び/又は別個の結合要素によって、第1の変形要素(8)と結合されていること、を特徴とする上記1~11のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
13.第1及び第2の変形要素(8もしくは10)が、多成分発泡部品として製造されていること、を特徴とする上記1~11のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置。
14.上記1~13のいずれか1つに記載のエネルギー吸収装置を備えた自動車。
【符号の説明】
【0068】
2 バンパー装置
4 バンパー
5 フロントフラップの前端
6 サイドメンバー
7 ラジエター
8 第1の変形要素
10 第2の変形要素
20 凹部
22 凹部
24 凹部
26 通路
26a 通路
26b 通路
30 凹部
32 凹部
34 固定アーム
40 凹部
42 圧力ホース
44 凹部
46 凹部
48 凹部
102 バンパー装置
104 バンパー
105 フロントフラップの前端
106 サイドメンバー
107 ラジエター
108 第1の変形要素
130 凹部
132 凹部
134 固定アーム
D 厚さ
D1 厚さ
D2 厚さ
Z 詳細
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9