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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240220BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61M25/00 600
A61M39/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021566633
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050816
(87)【国際公開番号】W WO2021130896
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑太
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅友
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-035595(JP,Y1)
【文献】特開2007-295998(JP,A)
【文献】特開平03-280971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入装置であって、
第1ルーメンを有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端部に接続され、前記第1ルーメンに連通する第2ルーメンを有するコネクタと、
を備え、
前記コネクタには、前記コネクタの外周面から前記コネクタの内周面まで延び、前記コネクタの他の部分より脆弱な脆弱部が形成されており、
前記脆弱部の外周面は前記コネクタの前記外周面よりも径方向外側に突出していない、
薬液注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記第2ルーメンは、第1の部分と、前記第1の部分より前記コネクタの基端側に位置し、前記第1の部分より内径が大きい第2の部分と、を含み、
前記脆弱部は、前記コネクタの前記内周面のうち、前記第2ルーメンの前記第1の部分を規定する部分まで延びている、
薬液注入装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薬液注入装置であって、
前記脆弱部は、前記コネクタの前記内周面からの距離が短いほど前記コネクタの先端側に位置するように、前記コネクタの径方向に対して傾斜している、
薬液注入装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記コネクタは、前記第2ルーメンを有する筒状のコネクタ本体部であって、前記コネクタ本体部の外周面に開口し、かつ、前記第2ルーメンに連通する連通孔が形成されたコネクタ本体部を有し、
前記脆弱部は、前記連通孔と、前記連通孔を封止する封止部材と、から構成されている、
薬液注入装置。
【請求項5】
請求項4に記載の薬液注入装置であって、
前記封止部材は、前記連通孔内に充填されている、
薬液注入装置。
【請求項6】
請求項5に記載の薬液注入装置であって、
前記封止部材は、前記連通孔の全長にわたって充填されている、
薬液注入装置。
【請求項7】
請求項5に記載の薬液注入装置であって、
前記封止部材は、前記連通孔のうち、前記コネクタ本体部の前記外周面側の一部分のみに充填されている、
薬液注入装置。
【請求項8】
請求項4に記載の薬液注入装置であって、
前記封止部材は、前記コネクタ本体部の前記外周面に、前記連通孔の開口を覆うように配置されている、
薬液注入装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記封止部材は、樹脂材料により形成されている、
薬液注入装置。
【請求項10】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、さらに、
前記コネクタの基端に取り付けられたキャップ部材を備える、
薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血管系や消化器官系等の生体管腔内に挿入可能なカテーテルを用いて、患者の体内に薬液を注入する薬液注入装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された薬液注入装置では、シースチューブの基端部に接続されたコネクタに薬液投与チューブが接続され、薬液投与チューブから薬液を投与することにより、コネクタおよびシースチューブを介して、患者の体内に薬液が注入される。また、特許文献2に記載された薬液注入装置では、カテーテルを構成する管状部材の基端部に接続されたYコネクタにシリンジが接続され、シリンジから薬液を投与することにより、Yコネクタおよび管状部材を介して、患者の体内に薬液が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-291902号公報
【文献】特開2010-137099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の薬液注入装置では、患者の体内への薬液注入が完了した後に、薬液投与チューブやYコネクタといった薬液の供給経路内に、比較的多くの薬液が残存し、薬液の無駄を抑制することが難しいという課題がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される薬液注入装置は、薬液注入装置であって、第1ルーメンを有するカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの基端部に接続され、前記第1ルーメンに連通する第2ルーメンを有するコネクタと、を備え、前記コネクタには、前記コネクタの外周面から前記コネクタの内周面まで延び、前記コネクタの他の部分より脆弱な脆弱部が形成されている。
【0009】
本薬液注入装置によれば、例えば注射器の注射針によって脆弱部を穿刺することにより、注射器のシリンジとコネクタに形成された第2ルーメンとが注射針を介して連通した状態を形成することができる。この状態では、シリンジに収容された薬液を直接、第2ルーメンに供給することができ、ひいては、該薬液を第2ルーメンに連通した第1ルーメンに供給することができる。そのため、本薬液注入装置によれば、例えば、コネクタの基端部に薬液投与チューブが接続された構成や、コネクタの代わりにYコネクタを使用してYコネクタの分岐管にシリンジが接続された構成等と比較して、患者の体内への薬液注入が完了した後に薬液の供給経路内に残存する薬液の量を少なくすることができ、薬液の無駄を抑制することができる。
【0010】
(2)上記薬液注入装置において、前記第2ルーメンは、第1の部分と、前記第1の部分より前記コネクタの基端側に位置し、前記第1の部分より内径が大きい第2の部分と、を含み、前記脆弱部は、前記コネクタの前記内周面のうち、前記第2ルーメンの前記第1の部分を規定する部分まで延びている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成では、脆弱部が、コネクタの内周面のうち、第2ルーメンを構成する第1の部分を規定する部分まで延びているため、脆弱部を貫通した注射針を介して、シリンジに収容された薬液が第2ルーメンの第1の部分に供給される。この第1の部分は、第2の部分よりコネクタの先端側に位置しているため、第1の部分に供給された薬液が、第1の部分より大径であるために容量の大きい第2の部分に流れ込むことを抑制することができる。従って、本薬液注入装置の構成によれば、患者の体内への薬液注入が完了した後に、比較的容量の大きい第2の部分に薬液が残存することを回避することができ、薬液の無駄を効果的に抑制することができる。
【0011】
(3)上記薬液注入装置において、前記脆弱部は、前記コネクタの前記内周面からの距離が短いほど前記コネクタの先端側に位置するように、前記コネクタの径方向に対して傾斜している構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、脆弱部を貫通した注射針を介して、シリンジに収容された薬液を、第2ルーメンにおける、より先端側の位置に供給することができ、その結果、薬液の供給経路内に残存する薬液の量を極めて少なくすることができ、薬液の無駄を効果的に抑制することができる。また、本薬液注入装置の構成によれば、注射針の先端が第2ルーメンを通過して反対側の内壁に刺さることを抑制することができ、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。
【0012】
(4)上記薬液注入装置において、前記コネクタは、前記第2ルーメンを有する筒状のコネクタ本体部であって、前記コネクタ本体部の外周面に開口し、かつ、前記第2ルーメンに連通する連通孔が形成されたコネクタ本体部を有し、前記脆弱部は、前記連通孔と、前記連通孔を封止する封止部材と、から構成されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、コネクタに脆弱部を容易に設けることができ、脆弱部を設けることに伴い薬液注入装置の製造効率が低下することを抑制することができる。
【0013】
(5)上記薬液注入装置において、前記封止部材は、前記連通孔内に充填されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、脆弱部を貫通した注射針と封止部材との密着性を向上させることができ、注射針まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を抑制することができる。
【0014】
(6)上記薬液注入装置において、前記封止部材は、前記連通孔の全長にわたって充填されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、脆弱部を貫通した注射針と封止部材との接触面積を大きくすることができ、注射針まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
(7)上記薬液注入装置において、前記封止部材は、前記連通孔のうち、前記コネクタ本体部の前記外周面側の一部分のみに充填されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、注射針の先端が第2ルーメンを通過して反対側の内壁に刺さることを回避しつつ、かつ、注射針の先端の孔が封止部材から露出するように、注射針の位置を調整することが容易になり、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。
【0016】
(8)上記薬液注入装置において、前記封止部材は、前記コネクタ本体部の前記外周面に、前記連通孔の開口を覆うように配置されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、封止部材によって連通孔をより確実に封止することができ、脆弱部を介した薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。また、本薬液注入装置の構成によれば、注射針の先端が第2ルーメンを通過して反対側の内壁に刺さることを回避しつつ、かつ、注射針の先端の孔が封止部材から露出するように、注射針の位置を調整することが容易になり、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。
【0017】
(9)上記薬液注入装置において、前記封止部材は、樹脂材料により形成されている構成としてもよい。本薬液注入装置の構成によれば、注射針によって容易に穿刺できる脆弱部を実現することができ、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。また、本薬液注入装置の構成によれば、脆弱部を貫通した注射針と封止部材との密着性をさらに向上させることができ、注射針まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、薬液注入装置やその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における薬液注入装置100の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態における薬液注入装置100の使用方法を示す説明図
図3】第2実施形態における薬液注入装置100aの構成を概略的に示す説明図
図4】第3実施形態における薬液注入装置100bの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.薬液注入装置100の構成:
図1は、第1実施形態における薬液注入装置100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、薬液注入装置100の縦断面(YZ断面)の構成が、互いに直交するXYZ軸と共に示されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。この点は、他の図においても同様である。本明細書では、薬液注入装置100およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0021】
薬液注入装置100は、生体管腔内に挿入可能なカテーテルを用いて、患者の体内に薬液を注入するための装置である。ここで、生体管腔は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった種々の管腔を含む。
【0022】
図1に示すように、薬液注入装置100は、カテーテルシャフト10と、コネクタ20と、キャップ部材50とを備える。なお、図1では、カテーテルシャフト10の先端側の一部の図示を省略している。
【0023】
カテーテルシャフト10は、患者の生体管腔内に挿入され、患者の体内の所望の位置まで薬液を運搬し、該所望の位置に薬液を注入するための部材である。カテーテルシャフト10は、先端から基端まで軸方向に延びる貫通孔17が形成された長尺の筒状部材である。貫通孔17により構成される空間は、薬液を流通させるためのルーメン(以下、「第1ルーメンL1」という。)として機能する。カテーテルシャフト10の各位置における横断面(XY断面)の外形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。また、貫通孔17の各位置における横断面(XY断面)の外形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。カテーテルシャフト10の外径は、例えば0.5mm~2.0mm程度であり、貫通孔17の直径(第1ルーメンL1の直径)は、例えば0.3mm~1.5mm程度である。図1では、カテーテルシャフト10がZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテルシャフト10は湾曲させることができる程度の可撓性を有している。本実施形態では、カテーテルシャフト10は、その先端部に中空の針部(不図示)を有しており、該針部の中空部は、第1ルーメンL1の一部を構成している。
【0024】
カテーテルシャフト10は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成されている。カテーテルシャフト10を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。また、カテーテルシャフト10を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。なお、カテーテルシャフト10の全体が同一の材料により形成されていてもよいし、カテーテルシャフト10の一部が他の一部とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0025】
コネクタ(「ハブ」とも呼ばれる。)20は、カテーテルシャフト10の基端部12に接続され、カテーテルシャフト10へ薬液を供給するための部材である。コネクタ20は、コネクタ本体部23を備える。コネクタ本体部23は、先端から基端まで軸方向(Z軸方向)に延びる貫通孔27が形成された筒状部材である。コネクタ20の各位置における横断面(XY断面)の外形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。また、貫通孔27の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。
【0026】
コネクタ本体部23は、例えば、樹脂材料により形成されている。コネクタ本体部23を形成するための樹脂材料としては、例えば、アクリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等を採用することができる。なお、コネクタ本体部23の全体が同一の材料により形成されていてもよいし、コネクタ本体部23の一部が他の一部とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0027】
コネクタ本体部23に形成された貫通孔27は、先端側から基端側に向けて順に並ぶ、シャフト収容部271と、小径部272と、テーパ部273と、大径部274とから構成されている。貫通孔27を構成するこれらの各部は、互いに同軸であり、かつ、互いに連通している。シャフト収容部271の直径は、小径部272の直径より大きく、大径部274の直径は、小径部272の直径より大きい。また、テーパ部273の直径は、小径部272との境界位置では小径部272の直径と略同一であり、大径部274との境界位置では大径部274の直径と略同一であり、小径部272との境界位置から大径部274との境界位置に向けて徐々に大きくなっている。小径部272の直径は、例えば0.5mm~1.0mm程度であり、大径部274の直径は、例えば0.8mm~2.0mm程度である。小径部272は、特許請求の範囲における第1の部分の一例であり、テーパ部273および/または大径部274は、特許請求の範囲における第2の部分の一例である。
【0028】
コネクタ本体部23に形成された貫通孔27のシャフト収容部271には、カテーテルシャフト10の基端部12が挿入されている。また、貫通孔27の小径部272とテーパ部273と大径部274とにより構成される空間は、ガイドワイヤ(不図示)を挿入するため、および、薬液を流通させるためのルーメン(以下、「第2ルーメンL2」という。)として機能する。ここで、貫通孔27の小径部272は、シャフト収容部271に挿入されたカテーテルシャフト10の第1ルーメンL1に連通している。そのため、小径部272とテーパ部273と大径部274とから構成される第2ルーメンL2は、カテーテルシャフト10の第1ルーメンL1に連通している。
【0029】
キャップ部材50は、コネクタ20の基端に取り付けられた蓋状の部材である。キャップ部材50がコネクタ20に取り付けられた状態では、コネクタ20に形成された第2ルーメンL2の基端側が密閉される。キャップ部材50は、例えば、樹脂材料により形成されている。キャップ部材50を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等を採用することができる。
【0030】
A-2.脆弱部24の構成:
本実施形態の薬液注入装置100では、コネクタ20に、コネクタ20の外周面からコネクタ20の内周面まで延び、コネクタ20の他の部分より脆弱な脆弱部24が形成されている。以下、この点について説明する。
【0031】
コネクタ本体部23には、コネクタ本体部23の外周面に開口し、かつ、第2ルーメンL2に連通する連通孔25が形成されている。連通孔25は、コネクタ本体部23の内周面からの距離(軸方向に直交する方向の距離)が短いほどコネクタ20の先端側に位置するように、コネクタ20の径方向(軸方向に直交する方向)に対して傾斜している。また、連通孔25は、第2ルーメンL2のうち、小径部272に連通している。連通孔25の延伸方向に直交する断面形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。また、連通孔25の直径は、例えば0.3mm~1.0mm程度である。
【0032】
コネクタ本体部23に形成された連通孔25内には、封止部材26が充填されている。すなわち、封止部材26は、連通孔25を塞ぐ栓として機能する。本実施形態では、封止部材26は、連通孔25の全長にわたって充填されている。封止部材26の外周面は、コネクタ本体部23の外周面よりも径方向外側には突出しておらず、また、径方向内側に凹んでもいない。即ち、封止部材26の外周面はコネクタ本体部23の外周面とともに平坦面を形成している。また、封止部材26の内周面は、コネクタ本体部23の内周面よりも径方向内側には突出しておらず、また、径方向外側に凹んでもいない。即ち、封止部材26の内周面はコネクタ本体部23の内周面とともに平坦面を形成している。尚、封止部材26の外周面がコネクタ本体部23の外周面よりも径方向外側に突出する、又は、径方向内側に凹む構成としてもよい。また、封止部材26の内周面がコネクタ本体部23の内周面よりも径方向内側に突出する、又は、径方向外側に凹む構成としてもよい。また、本実施形態は、封止部材26は、樹脂材料により形成されている。封止部材26を形成するための樹脂材料としては、例えば、ウレタンゴムやシリコンゴム等を採用することができる。
【0033】
ここで、本実施形態では、封止部材26の形成材料は、コネクタ本体部23の形成材料より柔軟な材料である。そのため、コネクタ20において、連通孔25と連通孔25に充填された封止部材26とから構成される部分は、コネクタ20の他の部分より脆弱な部分(以下、「脆弱部24」という。)となる。この脆弱部24は、コネクタ20の外周面からコネクタ20の内周面まで延びている。
【0034】
上述したように、脆弱部24を構成する連通孔25は、コネクタ本体部23の内周面からの距離が短いほどコネクタ20の先端側に位置するように、コネクタ20の径方向に対して傾斜しているため、脆弱部24も同様に傾斜している。また、脆弱部24を構成する連通孔25は、第2ルーメンL2を構成する小径部272に連通しているため、脆弱部24は、コネクタ20の内周面のうち、第2ルーメンL2を構成する小径部272を規定する部分まで延びている。
【0035】
A-3.薬液注入装置100の作用:
本実施形態の薬液注入装置100の使用方法は、以下の通りである。なお、薬液注入装置100の使用の際には、例えばコネクタ20に形成された第1ルーメンL1に挿入されたガイドワイヤ等に導かれて、カテーテルシャフト10の先端部(針部)が、患者の体内の目的位置(薬液を投与しようとする位置)まで移動させられる。また、コネクタ20の基端にキャップ部材50が取り付けられ、第2ルーメンL2の基端側が密閉される。この状態で、図2に示すように、薬液が収容されたシリンジ42と、プランジャ43と、注射針41と、を有する注射器40が用意され、術者は、注射器40の注射針41によって、コネクタ20の脆弱部24を穿刺する。このとき、術者は、注射針41の先端が、連通孔25に充填された封止部材26を貫通し、第2ルーメンL2(貫通孔27の小径部272)に至るまで、注射針41を押し進める。上述したように、封止部材26は、例えばウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な樹脂材料により構成されているため、術者は、注射針41によって封止部材26を容易に穿刺することができる。穿刺後は、封止部材26が弾性変形して注射針41の外周面に密着し、この結果、注射針41の周囲がシール(封止)される。注射針41が封止部材26から抜去されると、注射針41によって封止部材26に開けられた貫通孔は、封止部材26の弾性変形により塞がれ、この結果、連通孔25は封止部材26によって再び封止される。
【0036】
注射針41の先端が封止部材26を貫通して第2ルーメンL2まで挿入された状態において、術者は、注射器40のプランジャ43を押し込むことによって、シリンジ42に収容された薬液をコネクタ20の第2ルーメンL2に送り出す。第2ルーメンL2の基端側はキャップ部材50によって密閉されているため、第2ルーメンL2に供給された薬液は、供給地点から基端側の部分(すなわち、貫通孔27のテーパ部273や大径部274により構成された部分)には進入せず、第2ルーメンL2に連通するカテーテルシャフト10の第1ルーメンL1に向けて進行する。その後、薬液は、第1ルーメンL1を通ってカテーテルシャフト10の先端部に配置された針部(不図示)に至り、針部を介して患者の体内の所望の位置に注入される。
【0037】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の薬液注入装置100は、第1ルーメンL1を有するカテーテルシャフト10と、カテーテルシャフト10の基端部12に接続され、第1ルーメンL1に連通する第2ルーメンL2を有するコネクタ20とを備える。また、コネクタ20には、コネクタ20の外周面からコネクタ20の内周面まで延び、コネクタ20の他の部分より脆弱な脆弱部24が形成されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置100では、注射器40の注射針41によって脆弱部24を穿刺することにより、注射器40のシリンジ42とコネクタ20に形成された第2ルーメンL2とが注射針41を介して連通した状態を形成することができる。この状態では、シリンジ42に収容された薬液を直接、第2ルーメンL2に供給することができ、ひいては、該薬液を第2ルーメンL2に連通した第1ルーメンL1に供給することができる。そのため、本実施形態の薬液注入装置100によれば、例えば、コネクタ20の基端部に薬液投与チューブが接続された構成や、コネクタ20の代わりにYコネクタを使用してYコネクタの分岐管にシリンジが接続された構成等と比較して、患者の体内への薬液注入が完了した後に薬液の供給経路内に残存する薬液の量を少なくすることができ、薬液の無駄を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の薬液注入装置100では、コネクタ20に形成された第2ルーメンL2は、小径部272と、小径部272よりコネクタ20の基端側に位置し、小径部272より内径が大きい部分(大径部274およびテーパ部273)とを含む。また、コネクタ20に形成された脆弱部24は、コネクタ20の内周面のうち、第2ルーメンL2を構成する小径部272を規定する部分まで延びている。このように、本実施形態の薬液注入装置100では、脆弱部24が、コネクタ20の内周面のうち、第2ルーメンL2を構成する小径部272を規定する部分まで延びているため、脆弱部24を貫通した注射針41を介して、シリンジ42に収容された薬液が第2ルーメンL2を構成する小径部272に供給される。小径部272は、大径部274やテーパ部273と比べてコネクタ20の先端側に位置しているため、小径部272に供給された薬液が、小径部272より大径であるために容量の大きい大径部274やテーパ部273に流れ込むことを抑制することができる。従って、本実施形態の薬液注入装置100によれば、患者の体内への薬液注入が完了した後に、比較的容量の大きい大径部274やテーパ部273に薬液が残存することを回避することができ、薬液の無駄を効果的に抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の薬液注入装置100では、コネクタ20に形成された脆弱部24が、コネクタ20の内周面からの距離が短いほどコネクタ20の先端側に位置するように、コネクタ20の径方向に対して傾斜している。そのため、本実施形態の薬液注入装置100によれば、脆弱部24を貫通した注射針41を介して、シリンジ42に収容された薬液を、第2ルーメンL2における、より先端側の位置に供給することができ、その結果、薬液の供給経路内に残存する薬液の量を極めて少なくすることができ、薬液の無駄を効果的に抑制することができる。また、本実施形態の薬液注入装置100によれば、注射針41の先端が第2ルーメンL2を通過して反対側の内壁(内周面)に刺さることを抑制することができ、薬液注入装置100の操作性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の薬液注入装置100では、コネクタ20は、第2ルーメンL2を有する筒状のコネクタ本体部23を有する。コネクタ本体部23には、コネクタ本体部23の外周面に開口し、かつ、第2ルーメンL2に連通する連通孔25が形成されている。また、脆弱部24は、連通孔25と、連通孔25を封止する封止部材26とから構成されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置100によれば、コネクタ20に脆弱部24を容易に設けることができ、脆弱部24を設けることに伴い薬液注入装置100の製造効率が低下することを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の薬液注入装置100では、封止部材26は、コネクタ20に形成された連通孔25内に充填されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置100によれば、脆弱部24を貫通した注射針41と封止部材26との密着性を向上させることができ、注射針41まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を抑制することができる。特に、本実施形態の薬液注入装置100では、封止部材26は、コネクタ20に形成された連通孔25の全長にわたって充填されているため、脆弱部24を貫通した注射針41と封止部材26との接触面積を大きくすることができ、注射針41まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の薬液注入装置100では、封止部材26は、樹脂材料により形成されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置100によれば、注射針41によって容易に穿刺できる脆弱部24を実現することができ、薬液注入装置100の操作性を向上させることができる。また、本実施形態の薬液注入装置100によれば、脆弱部24を貫通した注射針41と封止部材26との密着性をさらに向上させることができ、注射針41まわりからの薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。
【0043】
B.第2実施形態:
図3は、第2実施形態における薬液注入装置100aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の薬液注入装置100aの構成の内、上述した第1実施形態の薬液注入装置100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0044】
図3に示すように、第2実施形態における薬液注入装置100aは、脆弱部24aの構成が、第1実施形態の薬液注入装置100の脆弱部24の構成と異なっている。より具体的には、第2実施形態における薬液注入装置100aでは、脆弱部24aを構成する封止部材26aが、連通孔25のうち、コネクタ本体部23の外周面側の一部分のみに充填されている。この場合においても、封止部材26aの外周面は、第1実施形態と同様に、コネクタ本体部23の外周面よりも径方向外側には突出せず、また、径方向内側に凹んでもいない。即ち、封止部材26aの外周面がコネクタ本体部23の外周面とともに平坦面を形成している。尚、封止部材26aの外周面がコネクタ本体部23の外周面よりも径方向外側に突出する、又は、径方向内側に凹む構成としてもよい。
【0045】
このように、第2実施形態における薬液注入装置100aでは、脆弱部24aを構成する封止部材26aが、連通孔25のうち、コネクタ本体部23の外周面側の一部分のみに充填されている。そのため、第2実施形態における薬液注入装置100aによれば、注射針41の先端が第2ルーメンL2を通過して反対側の内壁(内周面)に刺さることを回避しつつ、かつ、注射針41の先端の孔が封止部材26aから露出するように、注射針41の位置を調整することが容易になり、薬液注入装置100aの操作性を向上させることができる。
【0046】
C.第3実施形態:
図4は、第3実施形態における薬液注入装置100bの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態の薬液注入装置100bの構成の内、上述した第1実施形態の薬液注入装置100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0047】
図4に示すように、第3実施形態における薬液注入装置100bは、脆弱部24bの構成が、第1実施形態の薬液注入装置100の脆弱部24の構成と異なっている。より具体的には、第3実施形態における薬液注入装置100bでは、脆弱部24bを構成する封止部材26bが、コネクタ20の外周面に巻き付けられたOリングにより構成されている。すなわち、脆弱部24bを構成する封止部材26bが、連通孔25内に充填されているのではなく、コネクタ本体部23の外周面に、連通孔25の開口を覆うように配置されている。
【0048】
このように、第3実施形態における薬液注入装置100bでは、脆弱部24bを構成する封止部材26bが、コネクタ本体部23の外周面に、連通孔25の開口を覆うように配置されている。そのため、第3実施形態における薬液注入装置100bによれば、封止部材26bによって連通孔25をより確実に封止することができ、脆弱部24bを介した薬液の漏洩による無駄の発生を効果的に抑制することができる。また、第3実施形態における薬液注入装置100bによれば、注射針41の先端が第2ルーメンL2を通過して反対側の内壁(内周面)に刺さることを回避しつつ、かつ、注射針41の先端の孔が封止部材26bから露出するように、注射針41の位置を調整することが容易になり、薬液注入装置100bの操作性を向上させることができる。
【0049】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
上記各実施形態における薬液注入装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態では、脆弱部24が、コネクタ20の内周面からの距離が短いほどコネクタ20の先端側に位置するようにコネクタ20の径方向に対して傾斜しているが、脆弱部24が上記と異なる向きに傾斜していてもよいし、脆弱部24がコネクタ20の径方向に平行に延びていてもよい。
【0051】
また、上記各実施形態では、脆弱部24が、コネクタ20の内周面のうち、第2ルーメンL2の小径部272を規定する部分まで延びているが、脆弱部24が、コネクタ20の内周面のうち、第2ルーメンL2の他の部分(テーパ部273や大径部274)を規定する部分まで延びているとしてもよい。また、貫通孔27の形状は任意に変更可能であり、例えば、テーパ部273が無くてもよいし、貫通孔27の直径が軸方向に略一定であるとしてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、脆弱部24が、コネクタ本体部23に形成された連通孔25と、連通孔25を封止する封止部材26とから構成されているが、脆弱部24の構成はこれに限られない。例えば、脆弱部24が、コネクタ本体部23の一部に所定の処理を行うことによって脆弱にさせた部分であってもよいし、コネクタ本体部23の一部の厚さを極めて薄くした部分であってもよい。
【0053】
また、上記各実施形態における薬液注入装置100は、脆弱部24を1つ設けられた構成を有しているが、脆弱部24は2つ以上設けられていてもよい。具体的には、コネクタ20の周方向に沿って、又は、軸方向に沿って2つ以上設けられていてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、コネクタ20の基端にキャップ部材50が取り付けられているが、コネクタ20の基端にYコネクタやシリンジが取り付けられていてもよい。また、上記各実施形態では、脆弱部24が、注射針41によって穿刺されるように構成されているが、脆弱部24が、注射針41以外の他の器具によって穿刺されるように構成されていてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態における薬液注入装置100を構成する各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:カテーテルシャフト 12:基端部 17:貫通孔 20:コネクタ 23:コネクタ本体部 24:脆弱部 25:連通孔 26,26a,26b:封止部材 27:貫通孔 40:注射器 41:注射針 42:シリンジ 43:プランジャ 50:キャップ部材 100,100a,100b:薬液注入装置 271:シャフト収容部 272:小径部 273:テーパ部 274:大径部 L1:第1ルーメン L2:第2ルーメン
図1
図2
図3
図4