(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H01R13/533 A
(21)【出願番号】P 2022003289
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021104456
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 康弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏侑
(72)【発明者】
【氏名】城阪 和輝
(72)【発明者】
【氏名】金森 孝訓
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207082683(CN,U)
【文献】特開2020-113449(JP,A)
【文献】特開2020-187920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0176653(US,A1)
【文献】特開2005-150033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え
、
前記収容空間内において前記蓄熱部材の周辺に残存する隙間の少なくとも一部を埋めるように前記収容空間内に配置される伝熱部材を、更に備える、
コネクタ。
【請求項2】
請求項
1に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
軟性の基材と、前記基材に混合される伝熱性を有する伝熱体と、を有する、
コネクタ。
【請求項3】
請求項
1又は請求項
2に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
伝熱性を有する線材から構成された網状材を有する、
コネクタ。
【請求項4】
請求項
3に記載のコネクタにおいて、
前記網状材は導電性を有し、
前記伝熱部材は、
前記隙間、及び、前記電線と前記端子との間に配置される、
コネクタ。
【請求項5】
請求項
1~請求項
4の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
多孔質のシート材と、前記シート材を被覆する伝熱性を有する被覆材と、を有する、
コネクタ。
【請求項6】
請求項
1~請求項
5の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
多孔質のシート材と、前記シート材に含浸される蓄熱が可能な含浸材と、を有する、
コネクタ。
【請求項7】
請求項1~請求項
6の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
顕熱蓄熱が可能であり且つ前記接続箇所に少なくとも一部が接触するケース部と、潜熱蓄熱が可能であり且つ前記ケース部の内部に封入される封入部と、を有する、
コネクタ。
【請求項8】
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記接続箇所を取り囲む筒状の形状を有し、
前記シール部材は、
前記蓄熱部材の内周面及び外周面の少なくとも一方の少なくとも一部に接触するように構成される、
コネクタ。
【請求項9】
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記ハウジングに向けて突出する凸部を有し、
前記ハウジングは、
前記凸部を受け入れる凹部を有する、
コネクタ。
【請求項10】
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記収容空間を画成する前記ハウジングの内壁面と、前記端子の表面と、の間に圧入される、
コネクタ。
【請求項11】
請求項
10に記載のコネクタにおいて、
前記端子は、
当該端子を前記電線に加締めることによって前記電線に接続され、当該端子の前記表面に窪み状の加締痕を有し、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕の窪み面に押圧接触するように圧入される、
コネクタ。
【請求項12】
請求項
11に記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕に向けて突出する突起部を有し、前記加締痕の前記窪み面に前記突起部が面接触するように圧入される、
コネクタ。
【請求項13】
請求項
12に記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕と同数の前記突起部を有する、
コネクタ。
【請求項14】
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記シール部材の抜け止めを行うホルダを、更に有し、
前記蓄熱部材は、
前記シール部材を貫通して前記ホルダに接触する延出部を有し、
前記ホルダは、
当該ホルダと前記延出部との接触箇所に、蓄熱が可能な蓄熱部を有する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と、端子と、電線と端子との接続箇所を収容するハウジングと、収容空間の開口部分を封止するシール部材と、収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリに車両外部から電力を供給(充電)するべく、車両に設置される充電用のコネクタが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。この種のコネクタは、一般に、充電インレットとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した種類のコネクタ(充電インレット)は、一般に、各種の規格で定められた構造や特性を有することが求められる。例えば、上述したコネクタを実際に使用する際、通電時に端子に生じるジュール熱に起因し、端子の温度(いわゆる動作温度)が上昇する。そこで、コネクタの品質保持や安全性等の観点から、端子の動作温度の上限値等が、所定の規格で定められている。
【0005】
ところが、上述した従来のコネクタでは、端子と電線との接続箇所は、接触抵抗の大きさに起因して発熱量が多い箇所であるにもかかわらず、防水等の観点からパッキン等で封止されて外部から隔離されている。更に、そのように隔離された空間内の空気が、断熱材としても働く。そのため、端子と電線との接続箇所から外部への放熱が非常に困難であると考えられる。加えて、例えば、バッテリの急速充電を行う場合等には、大電流が短時間にコネクタを通過するため、単位時間あたりの端子(特に、上述した接続箇所)の温度上昇の度合いが、通常充電を行う場合に比べて高まる。このような理由から、従来のコネクタでは、自然放熱のみによっては、端子の動作温度を上記規格で定められている範囲内に収めることが困難となる可能性がある。
【0006】
一方、放熱用の部材(例えば、金属板等)をコネクタの外部に安易に組み付けることは、コネクタの小型化の妨げとなり得る点や、車体内でのコネクタの設置スペースが限られている点などから、望ましくない。
【0007】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、コネクタの大型化を避けながら端子の動作温度の過度な上昇を抑制可能なコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記[1]~[14]を特徴としている。
[1]
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口
部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記収容空間内において前記蓄熱部材の周辺に残存する隙間の少なくとも一部を埋めるように前記収容空間内に配置される伝熱部材を、更に備える、
コネクタであること。
[2]
上記[1]に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
軟性の基材と、前記基材に混合される伝熱性を有する伝熱体と、を有する、
コネクタであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
伝熱性を有する線材から構成された網状材を有する、
コネクタであること。
[4]
上記[3]に記載のコネクタにおいて、
前記網状材は導電性を有し、
前記伝熱部材は、
前記隙間、及び、前記電線と前記端子との間に配置される、
コネクタであること。
[5]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
多孔質のシート材と、前記シート材を被覆する伝熱性を有する被覆材と、を有する、
コネクタであること。
[6]
上記[1]~上記[5]の何れか一つに記載のコネクタにおいて、
前記伝熱部材は、
多孔質のシート材と、前記シート材に含浸される蓄熱が可能な含浸材と、を有する、
コネクタであること。
[7]
上記[1]~上記[6]の何れか一つに記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
顕熱蓄熱が可能であり且つ前記接続箇所に少なくとも一部が接触するケース部と、潜熱
蓄熱が可能であり且つ前記ケース部の内部に封入される封入部と、を有する、
コネクタであること。
[8]
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記接続箇所を取り囲む筒状の形状を有し、
前記シール部材は、
前記蓄熱部材の内周面及び外周面の少なくとも一方の少なくとも一部に接触するように
構成される、
コネクタであること。
[9]
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記ハウジングに向けて突出する凸部を有し、
前記ハウジングは、
前記凸部を受け入れる凹部を有する、
コネクタであること。
[10]
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記蓄熱部材は、
前記収容空間を画成する前記ハウジングの内壁面と、前記端子の表面と、の間に圧入さ
れる、
コネクタであること。
[11]
上記[10]に記載のコネクタにおいて、
前記端子は、
当該端子を前記電線に加締めることによって前記電線に接続され、当該端子の前記表面
に窪み状の加締痕を有し、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕の窪み面に押圧接触するように圧入される、
コネクタであること。
[12]
上記[11]に記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕に向けて突出する突起部を有し、前記加締痕の前記窪み面に前記突起部が面
接触するように圧入される、
コネクタであること。
[13]
上記[12]に記載のコネクタにおいて、
前記蓄熱部材は、
前記加締痕と同数の前記突起部を有する、
コネクタであること。
[14]
電線と、
前記電線に接続される端子と、
前記電線と前記端子との接続箇所を収容する収容空間を内部に有するハウジングと、
前記収容空間に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間の開口部分を封止するシール部材と、
前記収容空間内に配置される蓄熱部材と、を備え、
前記シール部材の抜け止めを行うホルダを、更に有し、
前記蓄熱部材は、
前記シール部材を貫通して前記ホルダに接触する延出部を有し、
前記ホルダは、
当該ホルダと前記延出部との接触箇所に、蓄熱が可能な蓄熱部を有する、
コネクタであること。
【0009】
上記[1]の構成のコネクタによれば、電線と端子との接続箇所と、蓄熱部材と、がハウジング内の収容空間に収容されている。換言すると、収容空間内において接続箇所の周辺にある隙間を小さくするように、蓄熱部材が配置されている。これにより、通電時に電線と端子との接続箇所に生じる熱を熱容量の大きな蓄熱部材で吸熱することで、急速充電時のように単位時間あたりの接続箇所での発熱量が大きい場合であっても、端子の動作温度の急激な上昇を抑制し、端子の動作温度を緩やかに上昇させることができる。接続箇所からの吸熱の観点では、蓄熱部材の少なくとも一部が接続箇所に接触していることが好ましい。更に、収容空間内に蓄熱部材が存在する分、断熱材として働く収容空間内の空気の量を少なくすることができる。したがって、本構成のコネクタは、コネクタの大型化を避けながら端子の動作温度の過度な上昇を抑制可能である。
【0010】
更に、上記[1]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材の周辺に残存する隙間の少なくとも一部を埋めるように、伝熱部材が収容空間内に配置される。これにより、例えば、伝熱部材を電線と端子との接続箇所と蓄熱部材との間に配置すれば、接続箇所から蓄熱部材への伝熱(即ち、接続箇所からの吸熱)を更に効率良く行うことができる。また、例えば、伝熱部材を蓄熱部材とハウジングとの間に配置すれば、蓄熱部材からハウジングへの伝熱(即ち、外部への放熱)を更に効率良く行うことができる。
【0011】
上記[2]の構成のコネクタによれば、伝熱部材が、軟性の基材(例えば、グリスやシリコーン)と伝熱体(例えば、アルミナ粒子)との混合物を有する。この混合物が蓄熱部材の周辺に残存する隙間に応じた形状に変形することで、接続箇所や蓄熱部材と、伝熱部材と、を容易に密着させることができる。よって、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0012】
上記[3]の構成のコネクタによれば、伝熱部材が、伝熱性を有する線材(例えば、金属線)で構成された網状材を有する。この網状材は、線材同士が交差する箇所や線材同士が編み込まれる箇所等を有するため、その表面に多数の微小な凹凸を有する。これら多数の凹凸箇所において、電線と端子との接続箇所や蓄熱部材に網状材が接触することになる。よって、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。更に、コネクタに振動等の外力が及ぼされた場合であっても、蓄熱部材の周辺の隙間から網状材が押し出されること(いわゆるポンプアウト)が抑制される。
【0013】
上記[4]の構成のコネクタによれば、導電性の網状材が、電線と端子との接続箇所と蓄熱部材との間の隙間に加え、電線と端子との間にも配置される。これにより、接続箇所からの吸熱や外部への放熱の効率を向上できることに加え、電線と端子との間の電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0014】
上記[5]の構成のコネクタによれば、伝熱部材が、伝熱性を有する被覆材(例えば、銅メッキ)で被覆された多孔質のシート材(例えば、不織布)を有する。このシート材は、その表面に開口した多数の孔の周縁等において多数の微小な凹凸を有する。これら多数の凹凸箇所において、電線と端子との接続箇所や蓄熱部材に、シート材を被覆する被覆材が接触することになる。よって、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。更に、接続箇所や蓄熱部材の表面形状に追従できる程度に柔軟なシート材を用いれば、接続箇所や蓄熱部材への密着性を向上することもできる。
【0015】
上記[6]の構成のコネクタによれば、伝熱部材が、蓄熱が可能な含浸材(例えば、パラフィン)が含浸された多孔質のシート材(例えば、不織布)を有する。このシート材は、多数の孔内に含浸材を保持できる。含浸材の蓄熱効果により、伝熱部材が、接続箇所からの吸熱や外部への放熱に加え、蓄熱部材を補助する蓄熱効果を発揮することができる。更に、接続箇所や蓄熱部材の表面形状に追従できる程度に柔軟なシート材を用いれば、接続箇所や蓄熱部材への密着性を向上することもできる。なお、潜熱蓄熱が可能な含浸材を用いることで、後述するように、蓄熱時の相転移に伴って含浸材の流動性が増すことで、接続箇所や蓄熱部材への伝熱部材の密着性を向上することもできる。
【0016】
上記[7]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材が、顕熱蓄熱が可能なケース部と、潜熱蓄熱が可能であり且つケース部の内部に封入される封入部と、を有する。即ち、ケース部では、ケース部を構成する材料の熱容量に応じてケース部そのものの温度が変化することにより、熱エネルギーが蓄えられる(即ち、顕熱蓄熱を行う)ことになる。一方、封入部では、封入部を構成する材料の相転移を利用し、転移熱が熱エネルギーとして蓄えられる(即ち、潜熱蓄熱を行う)ことになる。このように、蓄熱原理の異なるケース部と封入部とを併用することで、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。例えば、電線と端子との接続箇所での発熱の度合い(例えば、想定される接続箇所の最高温度等)を考慮し、ケース部と封入部との質量比を適宜設定すればよい。なお、封入部を構成する材料の密度がケース部を構成する材料の密度よりも小さければ、本構成のコネクタのようにケース部の一部を封入部に置き換えることで、蓄熱部材の軽量化を図ることもできる。
【0017】
上記[8]の構成のコネクタによれば、筒状の形状を有する蓄熱部材の内周面及び外周面の少なくとも一方の少なくとも一部に、シール部材が接触する。これにより、蓄熱部材からシール部材へ効率良く伝熱させることができ、蓄熱部材に加えてシール部材を蓄熱のために用いることができる。よって、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0018】
上記[9]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材が凸部を有することで、そのような凸部を有さない場合に比べて蓄熱部材の体積が増大し、蓄熱部材の蓄熱性能を向上できる。更に、蓄熱部材の凸部がハウジングの凹部に入り込むことで、両者間の伝熱に寄与する表面積が増大し、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0019】
上記[10]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材が、収容空間を画成するハウジングの内壁面と、端子の表面と、の間に圧入される。これにより、蓄熱部材とハウジングとの密着性、及び、蓄熱部材と端子の表面(即ち、接続箇所)との密着性が高まり、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0020】
上記[11]の構成のコネクタによれば、端子の加締痕の窪み面を利用することで、端子の表面に専用の圧入突起等を設けることなく、蓄熱部材と端子の表面とを適正に密着させることができる。
【0021】
上記[12]の構成のコネクタによれば、端子の加締痕の窪み面と蓄熱部材の突起部とが面接触することで、蓄熱部材と端子の表面とを更に適正に密着させることができる。
【0022】
上記[13]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材が加締痕と同数の突起部を有することで、加締痕の窪み面と蓄熱部材の突起部とが面接触する箇所の数を、過剰な設計負担なく増やすことができる。
【0023】
上記[14]の構成のコネクタによれば、蓄熱部材が有する延出部が、シール部材を貫通してホルダの蓄熱部に接触する。これにより、蓄熱部材に加えてホルダの蓄熱部を蓄熱のために用いることができる。よって、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、コネクタの大型化を避けながら端子の動作温度の過度な上昇を抑制可能なコネクタを提供できる。
【0025】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタが電線に接続された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すコネクタを構成する複数の部品の一部が分解された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、一対の電線が接続された一対の端子にベースホルダ及びリアホルダが装着された組立体を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す組立体が分解された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態における
図7に対応する図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態における
図7に対応する図である。
【
図11】
図11は、第5実施形態に使用される蓄熱部材を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第5実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図14】
図14は、第5実施形態の変形例における、
図13のD-D断面図に相当する断面図である。
【
図15】
図15は、第6実施形態に使用される伝熱部材を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、第6実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図17】
図17は、第7実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図18】
図18は、第8実施形態及び第9実施形態に使用される伝熱部材を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、第8実施形態及び第9実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図20】
図20は、第10実施形態に使用される電線が接続された端子を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、第10実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図23】
図23は、第11実施形態に使用される蓄熱部材を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、第11実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【
図26】
図26は、第12実施形態に使用される蓄熱部材、パッキン、及びリアホルダを示す斜視図である。
【
図27】
図27は、第12実施形態における
図7に対応する図である(ただし、ヒートシンクの図示は省略)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るコネクタ1について説明する。コネクタ1は、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に設置されるとともに、当該車両に搭載されたバッテリから延びる電線に接続されるコネクタである。コネクタ1は、充電インレットとも呼ばれる。コネクタ1の嵌合凹部63(
図1等参照)に、相手側コネクタ(いわゆる充電ガン)を嵌合することで、車両外部からバッテリに電力が供給されて、バッテリが充電される。
【0028】
以下、説明の便宜上、
図1等に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「上」、「下」、「前」及び「後」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1及び相手側コネクタ(図示省略)の嵌合方向と一致しており、コネクタ1からみて嵌合方向正面側(相手側コネクタに近づく側)を「前側」と呼び、コネクタ1からみて嵌合方向解除側(相手側コネクタから遠ざかる側)を「後側」と呼ぶ。
【0029】
コネクタ1は、
図1及び
図6等に示すように、一対の端子10と、一対の端子10が格納されるハウジング20と、を備える。一対の端子10には、一対の電線2の一端部がそれぞれ接続される。一対の電線2の他端部は、バッテリ(図示省略)に接続されている。電線2は、導体芯線2aと、導体芯線2aを覆う絶縁樹脂製の被覆2bと、で構成されている(
図6参照)。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明する。
【0030】
まず、一対の端子10について説明する。第1実施形態では、一対の端子10は、同形である。各端子10は、金属製であり、
図5及び
図6に示すように、小径部11と、小径部11の後側に位置する大径部12と、からなる段付き円柱状の部分を有する。小径部11及び大径部12の境界部には、環状の段部13が形成されている。段部13は、後述するベースホルダ30の係止突部37(
図6参照)に係止されることになる。
【0031】
小径部11には、その前端面から前方に突出する円筒状のメス端子部14が一体に設けられている。一対の端子10のうち、一方の端子10のメス端子部14は陽極側端子として機能し、他方の端子10のメス端子部14は陰極側端子として機能する。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合時、一方の端子10のメス端子部14及び他方の端子10のメス端子部14はそれぞれ、相手側コネクタが有する陽極側のオス端子部及び陰極側のオス端子部と接続されることになる。
【0032】
大径部12の後端面には、前方へ窪む凹部15が形成されている(
図6及び
図7参照)。凹部15には、電線2の一端部にて露出した導体芯線2aが挿入されて、加締め固定されている。これにより、端子10と電線2の一端部とが電気的に接続されている。端子10の大径部12及び電線2の導体芯線2aが、電線2と端子10との「接続箇所」を構成している。
【0033】
図6に示すように、小径部11の段部13近傍の外周面には、環状溝16が形成され、大径部12の段部13近傍の外周面には、環状溝17(
図7も参照)が形成されている。環状溝16には、後述する伝熱シート80及びロック片94(
図6参照)が装着されることになり、環状溝17には、後述するOリング92(
図6及び
図7参照)が装着されることになる。以上、一対の端子10について説明した。
【0034】
次いで、ハウジング20について説明する。ハウジング20は、第1実施形態では、
図1及び
図6等に示すように、ベースホルダ30と、リアホルダ40と、ヒートシンク50と、内側ハウジング本体60と、外側ハウジング本体70と、を備える。ベースホルダ30、リアホルダ40、ヒートシンク50、内側ハウジング本体60、及び外側ハウジング本体70の各々は、ハウジング20の骨格部品であり、ハウジング20の外表面の一部を構成している。以下、ハウジング20を構成する各部品について順に説明する。なお、ハウジング20の「骨格部品」とは、例えば、端子10と相手側端子(図示省略)との嵌合時に端子10が受ける外力に抗して端子10の位置を保持するようにハウジング20自体の形状を保つべく、十分な硬さや強度を有する部品を表す。換言すると、端子10の動作温度の上昇に起因して形状保持が困難な程度にまで軟化や脆化等が生じないような材料で構成された部品を表す。
【0035】
まず、ベースホルダ30について説明する。ベースホルダ30は、一対の端子10を幅方向に間隔を空けて互いに絶縁した状態で保持する機能を果たす。ベースホルダ30は、樹脂成形品であり、
図5に示すように、幅方向に並ぶ一対の端子保持部31と、一対の端子保持部31を幅方向に連結する連結部32とを、一体に備える。
【0036】
各端子保持部31は、
図5及び
図6に示すように、小径部33と、小径部33の後側に位置する中径部34と、中径部34の後側に位置する大径部35と、からなる、前後方向に延びる段付き円筒状の形状を有している。連結部32は、一対の端子保持部31の中径部34及び大径部35を連結している。一対の端子保持部31の内部空間31a(
図6及び
図7参照)には、後側から、一対の端子10が挿入されることになる。
【0037】
中径部34及び大径部35の境界部には、環状の段部36が形成され、小径部33及び中径部34の境界部には、環状の段部38が形成されている。段部36には、後述するヒートシンク50の筒状部51の後端面が係止されることになる(
図6及び
図7参照)。小径部33の前端部の内壁面には、端子10の段部13に対応して、小径部33の径方向内側に突出する環状の係止突部37が形成されている(
図6参照)。
【0038】
次いで、リアホルダ40について説明する。リアホルダ40は、ベースホルダ30に後側から組み付けられると共に、一対の端子10から後方に延びる一対の電線2を幅方向に間隔を空けた状態で保持する機能を果たす。リアホルダ40は、樹脂成形品であり、
図5に示すように、前後方向に延びる筒状部41と、筒状部41の後側開口を塞ぐ後壁部42と、を一体に有する。
【0039】
筒状部41は、ベースホルダ30の一対の大径部35及び連結部32によって形成される外周形状に対応する外周形状を有しており、一対の大径部35及び連結部32の後端部の外周面を覆うように、ベースホルダ30の後端部に装着可能となっている。後壁部42には、一対の大径部35に対応して、幅方向に並び且つ前後方向に貫通する一対の電線挿通孔43が形成されている。一対の電線挿通孔43には、一対の電線2が挿通されることになる(
図6及び
図7参照)。
【0040】
次いで、ヒートシンク50について説明する。ハウジング20の骨格部品を構成する複数の部品のうち、ヒートシンク50のみが金属製である。ヒートシンク50は、ベースホルダ30に前側から組み付けられると共に、一対の端子10に生じる熱を吸熱・放熱する機能を果たす。この点については、後に詳述する。
【0041】
ヒートシンク50は、
図3及び
図6に示すように、前後方向に延びる筒状部51を備えている。筒状部51は、ベースホルダ30の一対の中径部34及び連結部32によって形成される外周形状に対応する外周形状を有しており、一対の中径部34及び連結部32の外周面を覆うようにベースホルダ30に装着可能となっている。
【0042】
筒状部51の前端部には、当該前端部の幅方向両側部から幅方向外側に延出する一対の延出部52と、一対の延出部52の延出端部から前方に延びる一対の側壁部53と、が一体で設けられている。一対の側壁部53は、前後方向からみて、内側ハウジング本体60の後述する筒状部61(
図3も参照)の外周形状(円筒形状)の周方向の一部に対応する形状を有しており、筒状部61の後端部の外周面を覆うように筒状部61に装着可能となっている。
【0043】
一対の側壁部53の外周面(幅方向外側面)には、
図3に示すように、複数箇所(第1実施形態では、4箇所)にて、ボルト挿通部54がそれぞれ設けられている。各ボルト挿通部54には、前後方向に貫通するボルト挿通孔55が形成されている。ボルト挿通孔55には、20の組み付け用のボルト91(
図3参照)が挿通されることになる。
【0044】
次いで、内側ハウジング本体60について説明する。内側ハウジング本体60は、ヒートシンク50の筒状部51に前側から組み付けられると共に、コネクタ1の嵌合凹部63(
図1も参照)を構成する機能を果たす。内側ハウジング本体60は、樹脂成形品であり、前後方向に延びる円筒状の筒状部61と、筒状部61の後側開口を塞ぐ後壁部62と、を一体に有する。筒状部61及び後壁部62により、前方に開口し且つ後方に窪む嵌合凹部63が画成されている。
【0045】
後壁部62には、一対の端子10のメス端子部14に対応して、一対の円筒状のメス端子収容部64が、前方に突出するように設けられている(
図3及び
図6参照)。各メス端子収容部64は、嵌合凹部63内に位置しており、前後方向に貫通する内部空間を有している。
【0046】
筒状部61の外周面における前後方向中央より後側の位置には、
図3に示すように、筒状部61の径方向外側に突出する環状のフランジ部65が設けられている。フランジ部65には、ヒートシンク50の複数のボルト挿通部54に対応して、周方向の複数箇所(第1実施形態では、4箇所)にて、ボルト挿通部66がそれぞれ設けられている。各ボルト挿通部66には、前後方向に貫通するボルト挿通孔67が形成されている。ボルト挿通孔67には、ハウジング20の組み付け用のボルト91(
図3参照)が挿通されることになる。
【0047】
次いで、外側ハウジング本体70について説明する。外側ハウジング本体70は、内側ハウジング本体60の筒状部61に前側から組み付けられると共に、ハウジング20全体を車両に設けられたコネクタ1の取付対象部(図示省略)に固定する機能を果たす。外側ハウジング本体70は、樹脂成形品であり、前後方向に延びる円筒状の筒状部71を有する。筒状部71は、内側ハウジング本体60の筒状部61の外周面を覆うように筒状部61に前側から装着可能となっている(
図6参照)。
【0048】
筒状部71の外周面における前後方向中央より後側の位置には、
図3に示すように、筒状部71の径方向外側に突出する環状のフランジ部72が設けられている。フランジ部72は、前後方向からみて長方形状の外周形状を有している。フランジ部72の4角部にはそれぞれ、前後方向に貫通するボルト挿通孔73が形成されている。ボルト挿通孔73には、コネクタ1をコネクタ1の上記取付対象部へ固定するためのボルト(図示省略)が挿通されることになる。
【0049】
以上、ハウジング20を構成する各部品について説明した。
【0050】
次いで、コネクタ1の組み付け手順について説明する。先ず、一対の電線2の一端部が接続された一対の端子10を、ベースホルダ30に挿入する。このため、その準備として、
図5及び
図6に示すように、一対の端子10に接続された一対の電線2の被覆2bに、リアホルダ40の一対の電線挿通孔43を前側から挿通させ、次いで、一対の電線の被覆2bの各々に、前後方向に延びる円筒状のゴム製のパッキン93を、リアホルダ40の後壁部42の前側に隣接するように前側から挿通させ、次いで、一対の電線の被覆2bの各々に、前後方向に延びる円筒状の蓄熱部材95を、パッキン93の前側に隣接するように前側から挿通しておく。更に、一対の端子10の環状溝17の各々に、ゴム製のOリング92(
図6及び
図7参照)を装着しておく。
【0051】
蓄熱部材95は、顕熱蓄熱が可能な金属材料から構成され、電線2と端子10との接続箇所に生じる熱を吸熱するとともに外部に放熱する機能を果たす(この点については後述する)。蓄熱部材95は、端子10の大径部12の外周面とベースホルダ30(端子保持部31)の中径部34の内周面との間の隙間に介挿されることになる(
図6及び
図7参照)。蓄熱部材95の先端部には、ベースホルダ30の段部38(
図7参照)の内周面に沿って傾斜する先細り部95aが設けられている。蓄熱部材95の内周面は、その少なくとも一部において端子10の大径部12の外周面に接触しており、蓄熱部材95の外周面は、その少なくとも一部においてベースホルダ30の中径部34の内周面に接触している。
【0052】
次いで、ベースホルダ30の一対の端子保持部31の内部空間31a(
図6及び
図7参照)に、後側から、一対の端子10を挿入する。この挿入は、一対の端子10の小径部11及びメス端子部14が一対の端子保持部31の前端から前側に突出し、一対の端子10の段部13が一対の端子保持部31の係止突部37に係止されるまで、継続される。この挿入が完了した状態(即ち、一対の端子10のベースホルダ30への挿入が完了した状態)では、
図6及び
図7に示すように、端子10に装着されたOリング92が端子保持部31の小径部33の内壁面に押圧接触している。
【0053】
次いで、ベースホルダ30の一対の端子保持部31の内部空間31a(より具体的には、電線2及び端子10の外周面と、端子保持部31(中径部34及び大径部35)の内周面との間の隙間、
図6及び
図7参照)に、伝熱部材96を所定量だけ注入する。伝熱部材96は、グリスやシリコーンペースト等の流動性及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入されて構成される。伝熱部材96は、電線2と端子10との接続箇所から蓄熱部材95への伝熱(即ち、接続箇所からの吸熱)や、蓄熱部材95から端子保持部31への伝熱(ひいては、ハウジング20の外部への放熱)を促進させる機能を果たす(この点については後述する)。
【0054】
次いで、リアホルダ40をベースホルダ30に装着する。このため、リアホルダ40を前側に押し付けて、リアホルダ40、リアホルダ40の前側に位置する一対のパッキン93、及び、一対のパッキン93の前側に位置する一対の蓄熱部材95を、一対の電線2に対して前側に移動させることで、リアホルダ40の筒状部41をベースホルダ30の後端部に装着する(
図4、
図6及び
図7参照)。
【0055】
リアホルダ40のベースホルダ30への装着が完了した状態では、
図6及び
図7に示すように、各蓄熱部材95が、端子10の大径部12の外周面と端子保持部31の中径部34の内周面との間の隙間に位置している。第1実施形態では、少なくとも、各蓄熱部材95の内周面の一部が端子10の大径部12の外周面と密着している。即ち、蓄熱部材95は、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)に接触している。このことによる作用については後述する。なお、蓄熱部材95は、電線2と端子10とを加締め固定する際に一括して、端子10(大径部12の外周面)に加締め固定されていてもよい。
【0056】
更に、端子保持部31の内部空間31aに位置する伝熱部材96は、内部空間31a内に進入してきた蓄熱部材95に押し退けられて、
図7に示すように、蓄熱部材95の周辺に残存する隙間Hを埋めるように、内部空間31a内に位置している。例えば、伝熱部材96は、蓄熱部材95と、ベースホルダ30の内壁面と、端子10の外壁面と、電線2と、の間に生じる隙間Hに充填される。更に、例えば、伝熱部材96は、端子10の凹部15が導体芯線2aに加締められる(例えば、六角形状の断面形状を有するように加締められる)ことによって凹部15が非円形の断面形状を有する場合、凹部15と蓄熱部材95との間に生じる隙間Hに充填される。伝熱部材96が隙間Hを埋めることによる作用については後述する。
【0057】
更に、各パッキン93が、端子保持部31の大径部35の内壁面と電線2(被覆2b)の外周面との間で押圧挟持されている。具体的には、各パッキン93が有する複数のリブ93aが、大径部35の内壁面と電線2(被覆2b)の外周面とに押し付けられている。この結果、一対のOリング92及び一対のパッキン93の止水機能の発揮により、一対の端子保持部31の内部空間31aが外部から隔離される。この結果、外部から一対の端子保持部31の内部空間31a(即ち、電線2と端子10との接続箇所)への水の侵入が抑制されている。更に、ベースホルダ30によって、一対の端子10が幅方向に間隔を空けて互いに絶縁した状態で保持され、且つ、リアホルダ40によって、一対の端子10から後方に延びる一対の電線2が幅方向に間隔を空けた状態で保持されている。
【0058】
リアホルダ40のベースホルダ30への装着が完了すると、次いで、ヒートシンク50をベースホルダ30に装着する(
図3参照)。このため、ヒートシンク50の筒状部51を、前側から、ベースホルダ30の一対の中径部34及び連結部32の外周面を覆うようにベースホルダ30に装着する(
図6参照)。この装着が完了した状態では、
図6及び
図7に示すように、筒状部51の後端面がベースホルダ30の段部36に当接している。この状態では、ヒートシンク50の一対の延出部52の前端面の前後方向位置と、一対の端子保持部31の前端面の前後方向位置とが一致している。
【0059】
ヒートシンク50のベースホルダ30への装着が完了すると、次いで、
図6に示すように、一対の端子保持部31の前端(即ち、小径部33の前端)より前側に位置して露出している一対の端子10の環状溝16の各々に、伝熱シート80を装着し、次いで、ロック片94を、伝熱シート80の前側に隣接するように装着する。
【0060】
伝熱シート80は、絶縁性を有し且つ伝熱性に優れる材料からなり、端子10からヒートシンク50に熱を伝える機能を果たす(この点については後述する)。伝熱シート80は、
図6に示すように、一端部が環状溝16に係止され、且つ、他端部がヒートシンク50の延出部52の前端面に当接するように、装着される。
【0061】
ロック片94は、ベースホルダ30に装着されたヒートシンク50のベースホルダ30からの前方への抜け(分離)を抑制する機能を果たす。ロック片94は、樹脂製の板体であり、伝熱シート80に対応する形状を有している。ロック片94は、一端部が環状溝16に係止され、且つ、他端部が伝熱シート80の他端部の前端面に当接するように、装着される。
【0062】
このように、一対の端子10の環状溝16の各々に伝熱シート80及びロック片94が装着されることで、
図6に示すように、伝熱シート80の一端部が、端子10の環状溝16の後側の溝側面とロック片94の一端部とで前後方向に挟持され、且つ、伝熱シート80の他端部が、ヒートシンク50の延出部52の前端面とロック片94の他端部とで前後方向に挟持される。
【0063】
この結果、伝熱シート80の一端部が端子10(の環状溝16)と密着し、且つ、伝熱シート80の他端部がヒートシンク50(の延出部52)と密着することで、伝熱シート80は、端子10からヒートシンク50に熱を伝え得る状態となる。更に、ロック片94の一端部が端子10の環状溝16に装着され、且つ、ロック片94の他端部が伝熱シート80の他端部を介してヒートシンク50の延出部52の前端面に係止されることで、ベースホルダ30に装着されたヒートシンク50のベースホルダ30からの前方への抜け(分離)が抑制される。
【0064】
一対の端子10の環状溝16の各々に伝熱シート80及びロック片94が装着されると、次いで、内側ハウジング本体60をヒートシンク50に装着する(
図3及び
図6参照)。このため、ヒートシンク50の一対の側壁部53が内側ハウジング本体60の筒状部61の外周面の一部を覆うように、且つ、一対の端子10のメス端子部14が内側ハウジング本体60の一対のメス端子収容部64に挿入されるように、内側ハウジング本体60を、前側から、ヒートシンク50に装着する(
図6参照)。この装着が完了した状態では、
図6に示すように、ヒートシンク50の一対の側壁部53の前端面が、内側ハウジング本体60のフランジ部65の後端面に当接している。
【0065】
内側ハウジング本体60のヒートシンク50への装着が完了すると、次いで、外側ハウジング本体70を内側ハウジング本体60に装着する(
図3及び
図6参照)。このため、外側ハウジング本体70の筒状部71が、内側ハウジング本体60の筒状部61の外周面を覆うように、外側ハウジング本体70を、前側から、内側ハウジング本体60に装着する(
図6参照)。この装着が完了した状態では、
図6に示すように、外側ハウジング本体70の筒状部71の後端面が、内側ハウジング本体60のフランジ部65の前端面に当接している。
【0066】
外側ハウジング本体70の内側ハウジング本体60への装着が完了すると、次いで、
図3に示すように、複数(第1実施形態では、4本)のボルト91を、後側から、ヒートシンク50の複数のボルト挿通孔55及び内側ハウジング本体60の複数のボルト挿通孔67に挿通させて、外側ハウジング本体70に設けられた複数の締付け箇所(図示省略)に締め付ける。これにより、ヒートシンク50及び内側ハウジング本体60が外側ハウジング本体70に対して共締めされることで、ハウジング20の骨格部品を構成するベースホルダ30、リアホルダ40、ヒートシンク50、内側ハウジング本体60、及び外側ハウジング本体70が一体化される。これにより、コネクタ1の組み付けが完了し、
図1に示すコネクタ1が得られる。
【0067】
組み付けが完了したコネクタ1は、外側ハウジング本体70の複数のボルト挿通孔73に挿通された複数のボルト(図示省略)を利用して、車両に設けられたコネクタ1の取付対象部(図示省略)に締結固定される。
【0068】
車両に搭載されたバッテリ(図示省略)を充電する場合、車両の取付対象部に固定されたコネクタ1の嵌合凹部63に、相手側コネクタ(いわゆる充電ガン)を嵌合する。これにより、車両外部から、相手側コネクタ、コネクタ1、及び一対の電線2を順に介して、バッテリに電力が供給されて、バッテリが充電される。
【0069】
次いで、コネクタ1に、金属製のヒートシンク50及び伝熱シート80を設けたことによる作用について説明する。上述のように、コネクタ1を利用してバッテリを充電する際、通電によるジュール熱に起因し、コネクタ1内の一対の端子10の温度が上昇する。特に、バッテリの急速充電を行う場合、短時間で大きな電流が一対の端子10を通過することになるため、一対の端子10の単位時間あたりの温度上昇の度合いも高まり易い。
【0070】
この点、第1実施形態では、端子10に生じる熱は、主として伝熱シート80を介して、ヒートシンク50に伝達されて、ヒートシンク50に吸収される。ヒートシンク50に吸収された熱は、ヒートシンク50の外表面(外部に露出する面)を介して、外部に放熱される。この結果、端子10の温度上昇が抑制される。
【0071】
更に、ヒートシンク50が、樹脂ではなく金属で構成されている。一般に、金属製の部材と樹脂製の部材とを、同じ体積で比較した場合、金属の密度が樹脂の密度より高いことに起因して、金属製の部材の熱容量が、樹脂製の部材の熱容量より大きくなる。このため、金属製のヒートシンク50の熱容量が、ヒートシンク50と同じ形状の樹脂製のヒートシンクの熱容量より大きくなる。即ち、ヒートシンク50を、樹脂ではなく金属で構成することで、ヒートシンク50の熱容量をより大きくすることができる。なお、ヒートシンク50を構成する材料は、必ずしも金属に限られず、上述したような適度な熱容量を有する限りにおいて他の材料であってもよい。
【0072】
ヒートシンク50の熱容量が大きいほど、端子10に生じる熱を吸収するヒートシンク50の温度上昇が緩やかになる。よって、例えば、急速充電時のように端子10に生じるジュール熱が大きい場合であっても、熱容量の大きな金属製のヒートシンク50を使用することで、ヒートシンク50の温度上昇を緩やかにすることができ、この結果、端子10の温度上昇をも緩やかにすることができる。
【0073】
なお、急速充電により上昇したヒートシンク50の温度は、急速充電終了後にて、自然放熱により下降していく。その際、ヒートシンク50の熱容量が大きいほど、ヒートシンク50の温度の下降が緩やかになる(即ち、ヒートシンク50の温度が常温に戻るまでに比較的長い時間を要する)。しかしながら、コネクタ1は、バッテリの充電以外の目的で使用されることがなく、且つ、急速充電終了後の短期間後に急速充電が再び開始される事態が想定し難い。よって、急速充電終了後のヒートシンク50の温度の下降が緩やかであっても(ヒートシンク50の温度が常温に戻るまでに比較的長い時間を要しても)、コネクタ1の機能に照らして問題はない。
【0074】
更に、ヒートシンク50は、ハウジング20の骨格部品の一部を構成している。このため、端子10に生じる熱を吸熱・放熱するためのヒートシンクをハウジング20(コネクタ1)の外部に組み付ける態様と比べて、コネクタ1の大型化を抑制できる。
【0075】
次いで、コネクタ1に、蓄熱部材95、及び伝熱部材96を設けたことによる作用について説明する。上述のように、コネクタ1を利用してバッテリを充電する際、通電によるジュール熱に起因し、コネクタ1内の一対の端子10の温度が上昇する。特に、電線2と端子10との接続箇所は、接触抵抗の大きさに起因して発熱量が多い箇所であるにもかかわらず、端子保持部31の内部空間31a内にて、Oリング92及びパッキン93で封止されて外部から隔離されていること、及び、隔離された内部空間31a内の空気が断熱材として働くこと等から、外部への放熱が困難な箇所である。よって、端子10の温度上昇を緩やかにするためには、電線2と端子10との接続箇所に生じる熱を効率良く吸熱することが重要である。
【0076】
この点、第1実施形態では、電線2と端子10との接続箇所に接触する蓄熱部材95が、端子保持部31の内部空間31aに収容されている。換言すると、内部空間31a内において電線2と端子10との接続箇所の周辺にある隙間H(
図7参照)を小さくするように、蓄熱部材95が配置されている。
【0077】
更に、蓄熱部材95が、金属で構成されている。一般に、金属製の部材と空気とを、同じ体積で比較した場合、金属の密度が空気の密度より高いことに起因して、金属製の部材の熱容量が、空気の熱容量より大きくなる。このため、金属製の蓄熱部材95の熱容量が、蓄熱部材95と同じ体積の空気の熱容量より大きくなる。即ち、端子保持部31の内部空間31a内に金属製の蓄熱部材95を収容することで、内部空間31a全体の実質的な熱容量をより大きくすることができる。更に、内部空間31a内に蓄熱部材95が存在する分、断熱材として働く内部空間31a内の空気の量を少なくすることができる。なお、蓄熱部材95を構成する材料は、必ずしも金属に限られず、上述したように内部空間31a全体の実質的な熱容量を蓄熱部材95を設けない場合よりも大きくすることができる熱容量を有する限りにおいて、他の材料であってもよい。
【0078】
以上のことから、通電時に電線2と端子10との接続箇所に生じる熱を熱容量の大きな蓄熱部材95で吸熱することで、急速充電時のように単位時間あたりの接続箇所の発熱量が大きい場合であっても、端子10の温度の急激な上昇を抑制し、端子10の温度を緩やかに上昇させることができる。
【0079】
更に、第1実施形態では、流動性及び粘性を有する材料で構成された伝熱部材96が、蓄熱部材95の周辺に残存する隙間H(
図7参照)を埋めるように、端子保持部31の内部空間31a内に配置される。これにより、電線2と端子10との接続箇所から蓄熱部材95への伝熱(即ち、接続箇所からの吸熱)や、蓄熱部材95から端子保持部31(即ち、ハウジング20)への伝熱(即ち、外部への放熱)を、更に効率良く行うことができる。
【0080】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、蓄熱部材95は、その全体が、顕熱蓄熱が可能な金属材料で構成されている(
図7参照)。これに対し、本発明の第2実施形態に係るコネクタ1では、
図8に示すように、金属製の円筒状の蓄熱部材95の内部に、後方に開口する円筒状の隙間95bを形成し、隙間95bに、後方から、潜熱蓄熱が可能な相転移部材97が封入されている。相転移部材97が封入された隙間95bの開口は、
図8に示す第2実施形態では、パッキン93の前面で塞がれている。このように、隙間95bの開口が塞がれるので、隙間95bに封入されている相転移部材97が隙間95bから漏れ出ることがない。
【0081】
相転移部材97は、所定の温度に達すると固相から液相に相転移することで潜熱蓄熱が可能な部材であり、典型的には、パラフィンで構成される。
図8に示す第2実施形態では、顕熱蓄熱が可能な蓄熱部材95と潜熱蓄熱が可能な相転移部材97とで蓄熱特性が異なることを利用して、電線2と端子10との接続箇所での発熱の度合い(例えば、想定される接続箇所の最高温度等)を考慮して蓄熱部材95と相転移部材97との質量比を適宜設定すれば、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。更に、金属製の蓄熱部材95の一部がパラフィンで構成される相転移部材97に置き換わることで、蓄熱部材95の軽量化を図ることもできる。
【0082】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態では、蓄熱部材95は、その全体が、顕熱蓄熱が可能な金属材料で構成されている(
図7参照)。これに対し、本発明の第3実施形態に係るコネクタ1では、
図9に示すように、金属製の円筒状の蓄熱部材95の内部に、後方に開口する円筒状の隙間95bを形成し、隙間95bに、後方から、潜熱蓄熱が可能な相転移部材97が封入されている。相転移部材97が封入された隙間95bの開口は、
図9に示す第3実施形態では、円環状の蓋部材98で塞がれている。このように、隙間95bの開口が塞がれるので、隙間95bに封入されている相転移部材97が隙間95bから漏れ出ることがない。
【0083】
第2実施形態と同様、相転移部材97は、所定の温度に達すると固相から液相に相転移することで潜熱蓄熱が可能な部材であり、典型的には、パラフィンで構成される。
図9に示す第3実施形態では、顕熱蓄熱が可能な蓄熱部材95と潜熱蓄熱が可能な相転移部材97とで蓄熱特性が異なることを利用して、電線2と端子10との接続箇所での発熱の度合い(例えば、想定される接続箇所の最高温度等)を考慮して蓄熱部材95と相転移部材97との質量比を適宜設定すれば、接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。更に、金属製の蓄熱部材95の一部がパラフィンで構成される相転移部材97に置き換わることで、蓄熱部材95の軽量化を図ることもできる。
【0084】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係るコネクタ1では、
図10に示すように、円筒状のパッキン93の内部に、前方に開口する円筒状の隙間93bを形成し、且つ、円筒状の蓄熱部材95に更に後方へ延長する延長部分95cを形成し、隙間93bに、前方から、蓄熱部材95の延長部分95cが挿入されている。
図10に示す第4実施形態では、円筒状の蓄熱部材95(延長部分95c)の内周面及び外周面の双方に、パッキン93が接触している。なお、円筒状の蓄熱部材95(延長部分95c)の内周面及び外周面の何れか一方のみに、パッキン93が接触していてもよい。これにより、蓄熱部材95からパッキン93へ効率良く伝熱させることができ、蓄熱部材95に加えてパッキン93を蓄熱のために用いることができる。よって、電線2と端子10との接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0085】
<第5実施形態>
上述した第1実施形態では、円筒状の蓄熱部材95の外周面は凸部を有さない平坦な局面となっている(
図5参照)。これに対し、本発明の第5実施形態に係るコネクタ1では、
図11に示すように、円筒状の蓄熱部材95の外周面に、径方向外側に突出し且つ前後方向に延びる突条95dが、周方向の複数箇所にそれぞれ設けられている。
図12及び
図13に示すように、蓄熱部材95の外周を覆うように配置されているベースホルダ30の中径部34の内周面には、蓄熱部材95の複数の突条95dに対応して、径方向外側に窪み且つ前後方向に延びる溝34aが、周方向の複数箇所にそれぞれ設けられている。換言すると、ベースホルダ30の中径部34の内周面には径方向内側に突出し且つ前後方向に延びる突条34bが周方向の複数箇所に設けられており、周方向において隣り合う突条34b同士の間に溝34aが形成されている。蓄熱部材95の複数の突条95dの各々は、中径部34の対応する溝34aに受け入れられている(進入している)。蓄熱部材95の周辺に残存する隙間Hを埋めるように内部空間31a内に位置する伝熱部材96(
図12参照)は、互いに対向配置されている突条95dと溝34aとの間の隙間Hにも充填されている。なお、伝熱部材96としては、第1実施形態と同様、グリスやシリコーンペースト等の流動性 及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入された部材が用いられている。
【0086】
なお、
図12では、説明の便宜上、ヒートシンク50の図示が省略されている。
図13,14,16,17,19,21,22,24,25,27についても、同様である。
【0087】
図11に示す蓄熱部材95は、第1実施形態と同様、ベースホルダ30に端子10を収容した後に、ベースホルダ30(中径部34)に収容してもよいし、電線2と端子10とを加締め固定する際に一括して端子10(大径部12の外周面)に加締め固定されてもよい。
【0088】
第5実施形態では、蓄熱部材95が突条95dを有することで、そのような凸部を有さない場合に比べて蓄熱部材95の体積が増大し、蓄熱部材95の蓄熱性能を向上できる。更に、蓄熱部材95の突条95dがベースホルダ30の中径部34の溝34aに入り込むことで、蓄熱部材95と中径部34との間の伝熱に寄与する表面積が増大し、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。加えて、突条95dと溝34aとの間の隙間Hに伝熱部材96が充填されることで、この吸熱や放熱の効率が更に高められる。
【0089】
ところで、
図12に示すように、第5実施形態では、蓄熱部材95の後端部がパッキン93の前端部に当接し、且つ、リアホルダ40がパッキン93の後端部に当接している。即ち、蓄熱部材95とリアホルダ40とでパッキン93を挟んでいる。これに対し、
図14に示す第5実施形態の変形例のように、蓄熱部材95の後端部に代えて、ベースホルダ30の中径部34の内周面に設けられている突条34b(
図13も参照)の後端部34cを、パッキン93の前端部に当接させてもよい。即ち、この変形例では、突条34bとリアホルダ40とでパッキン93を挟むことになる。このようにパッキン93を挟むことで、前後方向においてパッキン93が所定の位置に保持される(即ち、位置決めされる)ことになる。なお、
図14は、
図13のD-D断面図そのものではなく、第5実施形態の変形例に係るコネクタ1を、
図13のD-D断面図に相当する箇所で切断した場合のコネクタ1の断面図である。
【0090】
<第6実施形態>
上述した第1実施形態では、蓄熱部材95の周辺に残存する隙間Hを埋めるように内部空間31aに位置する伝熱部材96として、グリスやシリコーンペースト等の流動性及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入された流動性を有する部材が使用されている。これに対し、本発明の第6実施形態に係るコネクタ1では、
図15に示すように、伝熱部材96として、金属製の網状材(以下、金属メッシュともいう。)で構成された円筒状部材が使用されている。
図15に示す円筒状の伝熱部材96は、
図16に示すように、端子10の大径部12の外周面に装着されるとともに、加締め、又は、レーザ接合等の手法によって、大径部12の外周面に固定される。
【0091】
第6実施形態では、
図15に示す伝熱部材96が大径部12の外周面に固定された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、第1実施形態に使用されている蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。これにより、
図16に示すように、蓄熱部材95が、
図15に示す伝熱部材96の外周面と端子保持部31の中径部34の内周面との間の隙間に位置し、少なくとも、蓄熱部材95の内周面が伝熱部材96の外周面と密着している。
【0092】
第6実施形態では、金属メッシュで構成された軟性の伝熱部材96が隙間Hに応じた形状に容易に変形できることで、伝熱部材96と、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)及び蓄熱部材95と、を十分に密着させることができる。よって、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0093】
更に、第6実施形態では、伝熱性を有する線材(金属線)で構成された網状材(金属メッシュ)で、伝熱部材96が構成される。金属メッシュは、線材同士が交差する箇所や線材同士が編み込まれる箇所等を有するため、その表面に多数の微小な凹凸を有する。これら多数の凹凸箇所において、電線2と端子10との接続箇所や蓄熱部材95に、伝熱部材96の線材(網目等)が接触することになる。よって、電線2と端子10との接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。更に、コネクタ1に振動等の外力が及ぼされた場合であっても、蓄熱部材95の周辺の隙間から伝熱部材96が押し出されること(いわゆるポンプアウト)が抑制される。
【0094】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係るコネクタ1では、上記第6実施形態と同様、伝熱部材96として、
図15に示す金属メッシュで構成された円筒状部材が使用される。上記第6実施形態では、円筒状の伝熱部材96の前後方向全域が端子10の大径部12の外周面に固定されている(
図16参照)。これに対し、第7実施形態では、
図17に示すように、
図15に示す円筒状の伝熱部材96の前側領域96aが、端子10の大径部12の内周面と電線2(導体芯線2a)の外周との間に配置されて、電線2と共に大径部12に加締め固定され、伝熱部材96の後側領域96bが、径方向外側且つ前側に折り返されて大径部12の外周面に密着している。
【0095】
第7実施形態では、
図17に示すように伝熱部材96が配置された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、第1実施形態に使用されている蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。これにより、
図17に示すように、蓄熱部材95が、伝熱部材96の後側領域96bの外周面と端子保持部31の中径部34の内周面との間の隙間に位置し、少なくとも、蓄熱部材95の内周面が伝熱部材96の後側領域96bの外周面と密着している。
【0096】
第7実施形態では、上記第6実施形態と同じ作用・効果が奏される。更に、第7実施形態では、伝熱部材96を構成する導電性の網状材が、電線2と端子10との接続箇所と蓄熱部材95との間の隙間に加え、電線2と端子10(導体芯線2a)との間にも配置される。これにより、電線2と端子10との接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことに加え、電線2と端子10との間の電気的接続の信頼性を向上できる。
【0097】
<第8実施形態>
上述した第6実施形態では、伝熱部材96として、金属メッシュで構成された円筒状部材が使用されている(
図15及び
図16参照)。これに対し、本発明の第8実施形態に係るコネクタ1では、
図18に示すように、伝熱部材96として、銅メッキ等の金属メッキで被覆された不織布で構成されたシート状部材が使用されている。
図18に示すシート状の伝熱部材96は、
図19に示すように、端子10の大径部12の外周面に巻き付けられると共に、加締め、又は、レーザ接合等の手法によって、大径部12の外周面に固定される。
【0098】
第8実施形態では、
図18に示す伝熱部材96が大径部12の外周面に巻き付けられ固定された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、第1実施形態に使用されている蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。これにより、
図19に示すように、蓄熱部材95が、
図18に示す伝熱部材96の外周面と端子保持部31の中径部34の内周面との間の隙間に位置し、少なくとも、蓄熱部材95の内周面が伝熱部材96の外周面と密着している。
【0099】
第8実施形態では、金属メッキで覆われた不織布で構成された軟性の伝熱部材96が隙間Hに応じた形状に容易に変形できることで、伝熱部材96と、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)及び蓄熱部材95と、を十分に密着させることができる。よって、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0100】
更に、第8実施形態では、伝熱性を有する被覆材(金属メッキ)で被覆したシート状部材で、伝熱部材96が構成される。不織布は、その表面に開口した多数の孔の周縁等において多数の微小な凹凸を有する。これら多数の凹凸箇所において、電線2と端子10との接続箇所や蓄熱部材95に、金属メッキが接触することになる。よって、電線2と端子10との接続箇所からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0101】
<第9実施形態>
上述した第8実施形態では、伝熱部材96として、銅メッキ等の金属メッキで覆われた不織布で構成されたシート状部材が使用されている(
図18参照)。これに対し、本発明の第9実施形態に係るコネクタ1では、伝熱部材96として、パラフィン等の蓄熱が可能な含浸材が含浸された不織布で構成されたシート状部材が使用されている。伝熱部材96の形状や配置については、第8実施形態と同様である(
図18及び
図19を参照)。即ち、第9実施形態で用いられるシート状の伝熱部材96は、
図18に示す形状を有し、
図19に示すように、端子10の大径部12の外周面に巻き付けられると共に、加締め、又は、レーザ接合等の手法によって、大径部12の外周面に固定される。
【0102】
第9実施形態では、
図18に示す伝熱部材96が大径部12の外周面に巻き付けられ固定された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、第1実施形態に使用されている蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。これにより、
図19に示すように、蓄熱部材95が、
図18に示す伝熱部材96の外周面と端子保持部31の中径部34の内周面との間の隙間に位置し、少なくとも、蓄熱部材95の内周面が伝熱部材96の外周面と密着している。
【0103】
第9実施形態では、蓄熱が可能な含浸材が含浸された不織布で構成された軟性の伝熱部材96が隙間Hに応じた形状に容易に変形できることで、伝熱部材96と、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)及び蓄熱部材95と、を十分に密着させることができる。よって、電線2と端子10との接続箇所(大径部12)からの吸熱や外部への放熱を、更に効率良く行うことができる。
【0104】
更に、第9実施形態では、含浸材の蓄熱効果により、伝熱部材96が、接続箇所(大径部12)からの吸熱や外部への放熱に加え、蓄熱部材95を補助する蓄熱効果を発揮することができる。更に、接続箇所(大径部12)や蓄熱部材95の表面形状に追従できる程度の柔軟性を不織布が有しているため、接続箇所(大径部12)や蓄熱部材95への密着性を向上することもできる。なお、パラフィン等のように潜熱蓄熱が可能な含浸材を用いることで、蓄熱時の相転移に伴って含浸材の流動性が増すことで、接続箇所(大径部12)や蓄熱部材95への伝熱部材96の密着性を向上することもできる。
【0105】
<第10実施形態>
本発明の第10実施形態に係るコネクタ1では、
図20に示すように、端子10の大径部12の外周面に、電線2と端子10とを加締め固定する際に形成された凹状の加締痕12aが、周方向の複数箇所(6箇所)にそれぞれ形成されている。凹状の加締痕12aの前端を画成する内壁面は、径方向外側に進むにつれて前側に移動する向きに傾斜する傾斜面12bとなっている(
図20~
図22参照)。
【0106】
第10実施形態では、電線2が加締め固定された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、第1実施形態に使用されている蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。その際、
図21及び
図22に示すように、蓄熱部材95の環状の先端95e(
図22参照)が端子10の傾斜面12bに押し付けられることで、蓄熱部材95の環状の先端95eが傾斜面12bに線接触(又は点接触)すると共に、蓄熱部材95の先端部分が傾斜面12bとベースホルダ30の中径部34の内周面との間に圧入される。なお、第10実施形態では、伝熱部材96は省略されている。
【0107】
第10実施形態では、蓄熱部材95が、内部空間31aを画成するベースホルダ30の中径部34の内壁面と、端子10の凹状の加締痕12aの傾斜面12bと、の間に圧入される。これにより、蓄熱部材95とベースホルダ30との密着性、及び、蓄熱部材95と端子10の表面(即ち、電線2と端子10との接続箇所)との密着性が高まり、当該接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0108】
更に、第10実施形態では、端子10の加締痕12aの傾斜面12bを利用することで、端子10の表面に専用の圧入突起等を設けることなく、蓄熱部材95と端子10の表面とを適正に密着させることができる。
【0109】
<第11実施形態>
本発明の第11実施形態に係るコネクタ1では、上記第10実施形態と同様、
図20に示す端子10が使用される。更に、第11実施形態では、
図23に示すように、円筒状の蓄熱部材95の内周面に、端子10の大径部12の複数(6つ)の加締痕12aに対応して、径方向内側に突出し且つ前後方向に延びる突条95fが、周方向の複数箇所(6箇所)にそれぞれ設けられている。即ち、蓄熱部材95は、端子10の加締痕12aと同数の突条95fを有している。各突条95fの前端面は、径方向外側に進むにつれて前側に移動する向きに傾斜する傾斜面95gとなっている(
図23及び
図25参照)。
【0110】
第11実施形態では、電線2が加締め固定された端子10が、ベースホルダ30に収容され、その後、
図23に示す蓄熱部材95が、ベースホルダ30(中径部34)に収容される。その際、
図24及び
図25に示すように、蓄熱部材95の各突条95fの傾斜面95g(
図25参照)が端子10の傾斜面12bに押し付けられることで、蓄熱部材95の各突条95fの傾斜面95gが傾斜面12bに面接触すると共に、蓄熱部材95の先端部分が傾斜面12bとベースホルダ30の中径部34の内周面との間に圧入される。なお、第11実施形態でも、上記第10実施形態と同様、伝熱部材96は省略されている。
【0111】
第11実施形態によれば、蓄熱部材95が、内部空間31aを画成するベースホルダ30の中径部34の内壁面と、端子10の凹状の加締痕12aの傾斜面12bと、の間に圧入される。これにより、蓄熱部材95とベースホルダ30との密着性、及び、蓄熱部材95と端子10の表面(即ち、電線2と端子10との接続箇所)との密着性が高まり、当該接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0112】
更に、第11実施形態によれば、端子10の加締痕12aの傾斜面12bと蓄熱部材95の突条95fの傾斜面95gとを面接触させることで、蓄熱部材95と端子10の表面とを更に適正に密着させることができる。
【0113】
更に、第11実施形態によれば、蓄熱部材95が加締痕12aと同数の突条95fを有することで、加締痕12aの傾斜面12bと蓄熱部材95の突条95fの傾斜面95gとが面接触する箇所の数を、過剰な設計負担なく増やすことができる。
【0114】
<第12実施形態>
本発明の第12実施形態に係るコネクタ1では、
図26及び
図27に示すように、円筒状のパッキン93の内部に、前後方向に貫通する円弧状の隙間93cが形成され、且つ、パッキン93の隙間93cに対応して、円筒状の蓄熱部材95の後端面に、更に後方へ延長する延出部95hが形成されている。リアホルダ40の後壁部42の前端面には、パッキン93の隙間93cに対応して、後方に窪み且つ円弧状に延びる凹部42aが形成されており(
図27参照)、凹部42aには、蓄熱可能な蓄熱部99が収容されている。蓄熱部99は、例えば、顕熱蓄熱が可能な金属材料から構成されている。蓄熱部材95の延出部95hは、パッキン93の隙間93cを貫通して、リアホルダ40の後壁部42の凹部42aに収容されている蓄熱部99の前端面に接触している。
【0115】
第12実施形態によれば、蓄熱部材95が有する延出部95hが、パッキン93を貫通してリアホルダ40に収容された蓄熱部99に接触する。これにより、蓄熱部材95に加えてリアホルダ40に収容された蓄熱部99を蓄熱のために用いることができる。よって、電線2と端子10との接続箇所からの吸熱や外部への放熱を更に効率良く行うことができる。
【0116】
<作用・効果>
以上、第1実施形態~第12実施形態に係るコネクタ1によれば、電線2と端子10との接続箇所と、蓄熱部材95と、がハウジング20内の端子保持部31の内部空間31aに収容されている。換言すると、内部空間31a内において接続箇所の周辺にある隙間H(
図7参照)を小さくするように、蓄熱部材95が配置されている。これにより、通電時に電線2と端子10との接続箇所に生じる熱を熱容量の大きな蓄熱部材95で吸熱することで、急速充電時のように単位時間あたりの接続箇所の発熱量が大きい場合であっても、端子10の動作温度の急激な上昇を抑制し、端子10の動作温度を緩やかに上昇させることができる。したがって、第1実施形態~第12実施形態に係るコネクタ1は、コネクタ1の大型化を避けながら端子10の動作温度の過度な上昇を抑制可能である。
【0117】
更に、蓄熱部材95の周辺に残存する隙間H(
図7)を埋めるように、伝熱部材96が内部空間31a内に配置される。これにより、電線2と端子10との接続箇所から蓄熱部材95への伝熱(即ち、接続箇所からの吸熱)や、蓄熱部材95からハウジング20への伝熱(即ち、外部への放熱)を、更に効率良く行うことができる。
【0118】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0119】
例えば、上述した第1実施形態~第12実施形態に係るコネクタ1における蓄熱部材95及び伝熱部材96の特徴のうちの複数を、適宜組み合わせてもよい。具体的には、例えば、第6及び第7実施形態(
図16及び
図17参照)では、伝熱部材96として、
図15に示す金属メッシュで構成された円筒状部材が使用されている。これに対し、伝熱部材96として、
図15に示す金属メッシュで構成された円筒状部材に加えて、第1実施形態で使用されている、グリスやシリコーンペースト等の流動性及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入された流動性を有する部材が、隙間Hを埋めるように配置されてもよい。
【0120】
同様に、第8実施形態及び第9実施形態(
図18及び
図19参照)では、伝熱部材96として、
図18に示すシート状部材が使用されている。これに対し、伝熱部材96として、
図18に示すシート状部材に加えて、第1実施形態で使用されている、グリスやシリコーンペースト等の流動性及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入された流動性を有する部材が、隙間Hを埋めるように配置されてもよい。
【0121】
更に、第10及び第11実施形態(
図21及び
図24参照)では、伝熱部材96が省略されている。これに対し、伝熱部材96として、第1実施形態で使用されている、グリスやシリコーンペースト等の流動性及び粘性を有する基材に、アルミナ粒子等の伝熱促進のための物質が混入された流動性を有する部材が、隙間Hを埋めるように配置されてもよい。
【0122】
更に、第5実施形態の変形例では、ベースホルダ30の内周面に設けられている突条34bの後端部34cを、パッキン93に当接させている(
図14参照)。他の実施形態においても、同様に、ベースホルダ30の内周面に突条34bを設け、突条34bの後端部34cをパッキン93に当接させてもよい。加えて、何れの実施形態においても、パッキン93は、突条34bにも当接せず、且つ、蓄熱部材95にも当接しないように、配置されてもよい。
【0123】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[15]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(2)と、
前記電線(2)に接続される端子(10)と、
前記電線(2)と前記端子(10)との接続箇所を収容する収容空間(31a)を内部に有するハウジング(20)と、
前記収容空間(31a)に収容される前記接続箇所を外部から隔離するように前記収容空間(31a)の開口部分を封止するシール部材(93)と、
前記収容空間(31a)内に配置される蓄熱部材(95)と、を備える、
コネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)であって、
前記収容空間(31a)内において前記蓄熱部材(95)の周辺に残存する隙間(H)の少なくとも一部を埋めるように前記収容空間(31a)内に配置される伝熱部材(96)を、更に備える、
コネクタ(1)。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記伝熱部材(96)は、
軟性の基材と、前記基材に混合される伝熱性を有する伝熱体と、を有する、
コネクタ(1)。
[4]
上記[2]又は上記[3]に記載のコネクタ(1)において、
前記伝熱部材(96)は、
伝熱性を有する線材から構成された網状材を有する、
コネクタ(1)。
[5]
上記[4]に記載のコネクタ(1)において、
前記網状材は導電性を有し、
前記伝熱部材(96)は、
前記隙間(H)、及び、前記電線(2)と前記端子(10)との間に配置される、
コネクタ(1)。
[6]
上記[2]~上記[5]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記伝熱部材(96)は、
多孔質のシート材と、前記シート材を被覆する伝熱性を有する被覆材と、を有する、
コネクタ(1)。
[7]
上記[2]~上記[6]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記伝熱部材(96)は、
多孔質のシート材と、前記シート材に含浸される蓄熱が可能な含浸材と、を有する、
コネクタ(1)。
[8]
上記[1]~上記[7]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
顕熱蓄熱が可能であり且つ前記接続箇所に少なくとも一部が接触するケース部(95)と、潜熱蓄熱が可能であり且つ前記ケース部(95)の内部に封入される封入部(97)と、を有する、
コネクタ(1)。
[9]
上記[1]~上記[8]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
前記接続箇所を取り囲む筒状の形状を有し、
前記シール部材(93)は、
前記蓄熱部材(95)の内周面及び外周面の少なくとも一方の少なくとも一部に接触するように構成される、
コネクタ(1)。
[10]
上記[1]~上記[9]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
前記ハウジング(20)に向けて突出する凸部(95d)を有し、
前記ハウジング(20)は、
前記凸部(95d)を受け入れる凹部(34a)を有する、
コネクタ(1)。
[11]
上記[1]~上記[10]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
前記収容空間(31a)を画成する前記ハウジング(20)の内壁面と、前記端子(10)の表面と、の間に圧入される、
コネクタ(1)。
[12]
上記[11]に記載のコネクタ(1)において、
前記端子(10)は、
当該端子(10)を前記電線(2)に加締めることによって前記電線(2)に接続され、当該端子(10)の前記表面に窪み状の加締痕(12a)を有し、
前記蓄熱部材(95)は、
前記加締痕(12a)の窪み面(12b)に押圧接触するように圧入される、
コネクタ(1)。
[13]
上記[12]に記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
前記加締痕(12a)に向けて突出する突起部(95f)を有し、前記加締痕(12a)の前記窪み面(12b)に前記突起部(95f)が面接触するように圧入される、
コネクタ(1)。
[14]
上記[13]に記載のコネクタ(1)において、
前記蓄熱部材(95)は、
前記加締痕(12a)と同数の前記突起部(95f)を有する、
コネクタ(1)。
[15]
上記[1]~上記[14]の何れか一つに記載のコネクタ(1)であって、
前記シール部材(93)の抜け止めを行うホルダ(40)を、更に有し、
前記蓄熱部材(95)は、
前記シール部材(93)を貫通して前記ホルダに接触する延出部(95h)を有し、
前記ホルダ(40)は、
当該ホルダ(40)と前記延出部(95h)との接触箇所に、蓄熱可能な蓄熱部(99)を有する、
コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0124】
1 コネクタ
2 電線
10 端子
12a 加締痕
12b 傾斜面(窪み面)
20 ハウジング
31a 内部空間(収容空間)
34a 溝(凹部)
40 リアホルダ(ホルダ)
93 パッキン(シール部材)
95 蓄熱部材、ケース部
95d 突条(凸部)
95f 突条(突起部)
95h 延出部
96 伝熱部材
97 相転移部材(封入部)
99 蓄熱部
H 隙間