(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ドローン及びドローンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B64D 25/00 20060101AFI20240220BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240220BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240220BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240220BHJP
B64U 10/16 20230101ALI20240220BHJP
B64U 20/30 20230101ALI20240220BHJP
B64U 30/291 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
B64U10/16
B64U20/30
B64U30/291
(21)【出願番号】P 2022015243
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500147023
【氏名又は名称】デジタルアーツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】道具 登志夫
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057225(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171120(WO,A1)
【文献】特開平04-274995(JP,A)
【文献】特許第6990477(JP,B1)
【文献】特開2017-197169(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146431(WO,A1)
【文献】特開2021-031015(JP,A)
【文献】特開2021-147028(JP,A)
【文献】特開2015-110413(JP,A)
【文献】特開2019-196150(JP,A)
【文献】特開2020-117223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00-25/20
B64C 27/00-27/82
B64C 39/00-39/02
B64D 47/08
B64U 10/00-10/80
B64U 70/00-70/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に設けられたロータと、
前記ロータとは別に前記本体に着脱可能に設けられて、少なくとも4つが配置される障害用ロータと、
前記ロータを用いた飛行時に異常を検知する異常検知部と、
前記異常が検知されたときに、前記ロータから前記障害用ロータに切り替えるロータ切替部と
前記障害用ロータを用いて飛行を制御する異常発生時制御部と、
前記本体に設けられた、地上を撮像するカメラと、を備えて、
前記異常発生時制御部は、異常検知後に、現在の位置情報に基づき受信した緊急避難用の安全領域に着陸させるように制御し、
前記カメラにより撮像された地上の画像に基づいて障害物の有無を検知して、障害物が一定時間検知されない領域に着陸させ、
前記障害用ロータは、それぞれが個別に駆動制御可能であり、
異常が検知されたときに、前記ロータの回転制御が可能な場合には、前記ロータが回転している状態で前記障害用ロータの回転制御を開始して、一時的に前記ロータ及び前記障害用ロータを併用する、
ことを特徴とするドローン。
【請求項2】
ドローンの本体にロータと、当該ロータとは別に前記本体に着脱可能に設けられて、少なくとも4つが配置される障害用ロータと、前記本体に設けられた地上を撮像するカメラとを設けて、
前記ロータを用いた飛行時に異常を検知するステップと、
前記異常が検知されたときに、前記ロータから前記障害用ロータに切り替えるステップと、
前記障害用ロータを用いて飛行を制御するステップと、
異常検知後に、現在の位置情報に基づき受信した緊急避難用の安全領域に着陸させるように制御し、前記カメラにより撮像された地上の画像に基づいて障害物の有無を検知して、障害物が一定時間検知されない領域に着陸させるステップと、を含
み、
前記障害用ロータは、それぞれが個別に駆動制御可能であり、
異常が検知されたときに、前記ロータの回転制御が可能な場合には、前記ロータが回転している状態で前記障害用ロータの回転制御を開始して、一時的に前記ロータ及び前記障害用ロータを併用する、
ことを特徴とするドローンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドローン及びドローンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人飛行機、すなわちドローンの活用が急速に広まっており、空撮、測量、農業分野、物資運搬等、幅広い分野での利用が始まっている。特に、ドローンを物資運搬に利用することで、配達員の不足を解消することができるため、その利用が期待されている。
【0003】
しかし、市街地での物資運搬にドローンを利用する場合、人の上空をドローンが行き交うことになり、仮に飛行中のドローンに異常が発生して落下等した場合には大きな被害が発生するおそれがある。
【0004】
従来では、ドローンの飛行時において異常が発生した場合に、ドローン本体に設けられたパラシュートを用いて着陸する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛行中のドローンに異常が発生した際に、パラシュート等の緊急用装備を用いることで、ドローンを着陸させることができるものの、着陸地点を予測できない場合もあり、市街地でドローンを利用する場合には、異常が発生した場合であっても飛行を維持することができ、安全に着陸できる必要がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、異常時に飛行制御を維持することができ、安全に着陸できるドローン及びドローンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態にかかるドローンは、本体に設けられたロータと、前記ロータとは別に前記本体に着脱可能に設けられて、少なくとも4つが配置される障害用ロータと、前記ロータを用いた飛行時に異常を検知する異常検知部と、前記異常が検知されたときに、前記ロータから前記障害用ロータに切り替えるロータ切替部と前記障害用ロータを用いて飛行を制御する異常発生時制御部と、前記本体に設けられた地上を撮像するカメラと、を備えて、前記異常発生時制御部は、異常検知後に、現在の位置情報に基づき受信した緊急避難用の安全領域に着陸させるように制御し、前記カメラにより撮像された地上の画像に基づいて障害物の有無を検知して、障害物が一定時間検知されない領域に着陸させ、前記障害用ロータは、それぞれが個別に駆動制御可能であり、異常が検知されたときに、前記ロータの回転制御が可能な場合には、前記ロータが回転している状態で前記障害用ロータの回転制御を開始して、一時的に前記ロータ及び前記障害用ロータを併用する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、異常時に飛行制御を維持することができ、安全に着陸できるドローン、及びドローンの制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態にかかるドローンの全体構成の一例を示す上面図。
【
図3】ドローンの制御ユニットの構成を示す構成図。
【
図4】ドローンの飛行時に異常が発生した際の、障害用ロータへの切り替えを説明する説明図。
【
図5】ドローンの飛行時に異常が発生した際に、障害用ロータでの着陸を説明する説明図。
【
図6】ドローンの飛行時に異常が発生した際の制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態にかかるドローン10の全体構成の一例を示す上面図である。
【0012】
実施形態にかかるドローン10は、ロータ14とは別に障害用ロータ17を本体30に設けて、ロータ14を用いた飛行時に異常を検知したときに、ロータ14から障害用ロータ17に切り替えて飛行を制御する。
【0013】
ロータ14(14a、14b、14c、14d)は、本体30から突設したアームを介して本体30に接続されており、通常時に回転制御されることでドローン10を飛行させるものである。
【0014】
障害用ロータ17(17a、17b、17c、17d)は、本体30から突設したアームを介して本体30に接続されており、ロータ14による通常の飛行時は停止しており、飛行に異常が発生した場合に回転制御されて、ドローン10を飛行させるものである。障害用ロータ17は、ロータ14と干渉しない位置に独立して配置されており、少なくとも4つが配置される。また、障害用ロータ17のそれぞれは、本体30から着脱可能に設けられてもよい。
【0015】
図2は、ドローン10のハードウェア構成を示す構成図である。
ドローン10は、制御ユニット11と、モータ制御部12と、モータ13と、ロータ14と、障害用モータ制御部15と、障害用モータ16と、障害用ロータ17と、無線通信機18と、センサ19、カメラ20と、GPS受信機21と、バッテリ22と、を有している。
【0016】
制御ユニット11は、本体30に設けられて、外部の制御コントローラ(図示省略)等から送信された制御指令を受け付けて、センサ19等から受信される情報等の飛行にかかる情報を処理してドローン10を制御するものである。制御ユニット11は、記憶素子を有しており、例えばROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成され、記憶素子には制御プログラムや飛行の航路データ等、種々のデータが記憶されている。なお、異常発生時に障害用ロータ17を回転制御するための制御ユニットを別に独立して設けてもよい。
【0017】
モータ制御部12は、本体30に設けられて、制御ユニット11からの指令に基づいてモータ13の回転数を制御してロータ14を回転させる。モータ制御部12は、4つ設けられており、4つのロータ14を個別に回転駆動させるために、4つのモータ13を個別に駆動制御する。
【0018】
障害用モータ制御部15は、本体30に設けられて、制御ユニット11からの指令に基づいて障害用モータ16の回転数を制御して障害用ロータ17を回転させる。障害用モータ制御部15は、モータ制御部12とは独立して4つ設けられており、4つの障害用ロータ17を個別に回転駆動させるために、4つの障害用モータ16を個別に駆動制御する。
【0019】
無線通信機18は、本体30に設けられて、外部の制御コントローラ等と無線通信するためのものである。無線通信機18は、外部の制御コントローラからの制御指令を受信して、ドローン10の位置情報、高度等、飛行制御にかかる各種の情報を制御コントローラに送信する。
【0020】
センサ19は、本体30に設けられて、ドローン10の飛行制御にかかる情報を取得するものであり、加速度計、ジャイロセンサ、高度計、回転数計が例示される。センサ19は、本体30に接続されているロータ14または障害用ロータ17に設けられてもよい。
【0021】
カメラ20は、本体30の外面に設けられて、ドローン10の周囲を静止画あるいは動画により撮像するものである。カメラ20は、ロータ14または障害用ロータ17に外面に配置されてもよい。カメラ20により撮影された画像は、制御ユニット11や外部の制御コントローラ等に送信される。
【0022】
GPS受信機21は、ドローン10の現在の位置情報を受信するものである。GPS受信機21により取得された位置情報は、制御ユニット11や外部の制御コントローラ等に送信される。
【0023】
バッテリ22は、本体30に設けられて、制御ユニット、モータ制御部12、モータ13、障害用モータ制御部15、障害用モータ16等に電力を供給するものである。なお、障害用モータ制御部15や障害用モータ16に電力を供給するためのバッテリを別に独立して設けてもよい。
【0024】
図3は、ドローン10の制御ユニット11の構成を示す構成図である。
制御ユニット11は、データ処理部23と、飛行制御部24と、異常検知部25と、ロータ切替部26と、異常発生時制御部27と、を備えている。
【0025】
データ処理部23は、外部の制御コントローラから送信された制御指令、センサ19、GPS受信機21等で取得された情報などを飛行制御用のデータに計算して飛行制御部24に送る。
【0026】
飛行制御部24は、データ処理部23により計算された飛行制御用のデータに基づきモータ制御部12に制御指令を送信して、モータ13を介してロータ14のそれぞれの回転数を変化させてドローン10の飛行を制御する。
【0027】
異常検知部25は、データ処理部23により計算された飛行制御用のデータに基づきドローン10の飛行時の異常を検知する。異常を検知する方法として、具体的には、センサ19により取得された加速度や角速度が、所定の制御範囲を超える場合や所定の制御範囲を超える状態が一定時間継続する等の場合に、制御ユニット11によるロータ14の回転制御が不調になったものとして飛行の異常を検知する。また。ロータ14に設けた回転数計から取得した回転数が、制御ユニット11からの指令値に基づく回転数と比較して、許容される範囲を超えて異なる場合に、飛行の異常を検知する。また、外部の制御コントローラから指令された高度、飛行ルートに対して、センサ19、GPS受信機21により取得された現在の高度、位置情報が、許容される範囲を超えて異なる場合に、飛行の異常を検知する。
【0028】
ロータ切替部26は、異常検知部25により飛行の異常が検知されたときに、ロータ14から停止していた障害用ロータ17に切り替える。ロータ切替部26は、異常が検知されたときに、障害用モータ制御部15に制御指令を送信して、障害用モータ16を介して障害用ロータ17を回転させる。異常が検知されたときに、ロータ14の回転制御が可能な場合には、ロータ14が回転している状態で障害用ロータ17の回転制御を開始して一時的に2つのロータを併用し、その後にロータ14を停止させてもよい。また、異常が検知されたときに、障害用ロータ17を回転させるための制御指令は、所定の高度(例えば地上100m)でホバリングするための回転数が初期値として指令されてもよい。
【0029】
異常発生時制御部27は、ロータ14から切り替えられた障害用ロータ17を用いて飛行を制御するものである。異常発生時制御部27は、異常が検知されたドローン10が安全な領域に着陸するまで障害用ロータ17の回転数を制御して飛行を制御する。
【0030】
異常発生時制御部27は、異常が検知されてロータ14から障害用ロータ17に切り替えた場合に、カメラ20を用いて地上を撮像して、取得した画像に基づいて人や移動体(例えば車や電車)等の障害物を検知する。そして、人や車等の障害物が検知されない領域を安全領域に設定して、この安全領域内を着陸地点として障害用ロータ17によりドローン10を着陸させる。なお、この場合、異常発生時制御部27は、安全な領域が検知できるまで飛行位置を一定の距離ずつ移動して探索してもよく、人や車等の障害物が、一定時間検知されない領域を安全領域に設定してもよい。
【0031】
また、異常発生時制御部27は、ドローン10の飛行ルート上において、人や移動体の存在が想定されない位置範囲を予め緊急避難用の安全領域として設定しておき、現在の位置情報に基づきこの安全領域に着陸させてもよい。異常発生時制御部27は、異常検知後に、外部の制御コントローラ等を介して緊急避難用の安全領域を受信して、現在の位置情報に基づき受信した安全領域に着陸させてもよい。
【0032】
なお、ドローン10は、着陸時に、警告音を発報する、あるいは本体30に設けた回転灯等を発光させることにより、着陸状態であることを報知する構成を備えてもよい。
【0033】
図4は、ドローン10の飛行時に異常が発生した際の障害用ロータ17への切替えを示す説明図である。
【0034】
図4に示すように、異常検知部25が、データ処理部23により計算された飛行制御用のデータに基づきドローン10の飛行時の異常を検知した場合に、ロータ14による飛行制御を、障害用ロータ17による回転制御に切り替えて飛行を制御する。
【0035】
図5は、ドローン10の飛行時に異常が発生した際に、障害用ロータ17での着陸を説明する説明図である。
【0036】
異常が検知されてロータ14から障害用ロータ17に切り替えた場合に、カメラ20を用いて地上を撮像して、取得した画像に基づいて人や移動体(例えば車や電車)等の障害物を検知する。そして、人や車等の障害物が検知されない領域を安全領域として設定する。そして、この安全領域を着陸地点として障害用ロータ17によりドローン10を着陸させる。
【0037】
続いて、本実施形態にかかるドローン10の制御方法について説明する。
図6は、本実施形態にかかるドローン10の制御方法のフローチャートである(適宜、
図2、
図3参照)。
【0038】
異常検知部25は、データ処理部23により計算された飛行制御用のデータに基づきドローン10の飛行時の異常を検知する(S10)。
【0039】
ロータ切替部26は、異常検知部25により飛行の異常が検知されたときに、ロータ14から停止していた障害用ロータ17に切り替える(S11)。
【0040】
異常発生時制御部27は、カメラ20を用いて地上を撮像して、取得した画像に基づいて人や移動体等の障害物を検知して、人や車等の障害物が検知されない安全な領域を探索する(S12)。
【0041】
異常発生時制御部27は、人や車等の障害物が検知されない安全な領域を着陸地点として障害用ロータ17によりドローン10を着陸させる(S13)。
【0042】
以上述べた各実施形態のドローンによれば、ロータとは別に障害用ロータを本体に設けて、ロータを用いた飛行時に異常を検知したときに、ロータから障害用ロータに切り替えて飛行を制御することで、異常時に飛行制御を維持することができ、安全に着陸できる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…ドローン、11…制御ユニット、12…モータ制御部、13…モータ、14…ロータ、15…障害用モータ制御部、16…障害用モータ、17…障害用ロータ、18…無線通信機、19…センサ、20…カメラ、21…GPS受信機、22…バッテリ、23…データ処理部、24…飛行制御部、25…異常検知部、26…ロータ切替部、27…異常発生時制御部、30…本体。