(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】消化設備
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20240220BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240220BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
C02F11/04 Z
C02F11/00 Z ZAB
C02F3/28 A
(21)【出願番号】P 2022111973
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2018040967の分割
【原出願日】2018-03-07
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017065891
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142638(JP,A)
【文献】特開2003-300096(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147467(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146725(WO,A1)
【文献】特開2008-073613(JP,A)
【文献】特開2014-108419(JP,A)
【文献】特開2010-069397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
C02F3/28-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化槽と、
前記消化槽の前段で、濃縮汚泥と流動化剤を混合することにより、前記濃縮汚泥を流動化させる流動化槽と、
前記流動化剤の供給量を調整する制御部と、を備え、
前記流動化槽は、前記流動化槽内における前記濃縮汚泥の流動化状態を検知する検知部と、前記流動化された濃縮汚泥を前記流動化槽に循環させる循環経路と、を備え、
前記制御部は、前記検知部により検知された流動化状態に基づいて、前記流動化剤の供給量を調整し、
前記循環経路は、前記流動化された濃縮汚泥を破砕する破砕部を有することを特徴とする、消化設備。
【請求項2】
前記流動化剤は、前記消化槽内の消化汚泥であることを特徴とする、請求項1に記載の消化設備。
【請求項3】
前記流動化槽は、前記濃縮汚泥と前記流動化剤を混合する撹拌機を備え、
前記検知部は、前記撹拌機の電流値に基づいて、前記流動化槽内における前記濃縮汚泥の流動化状態を検知することを特徴とする、請求項1又は2に記載の消化設備。
【請求項4】
濃縮汚泥と流動化剤を混合することにより、前記濃縮汚泥を流動化させる流動化工程と、
前記流動化工程における前記濃縮汚泥の流動化状態を検知する検知工程と、
前記検知工程により検知された流動化状態に基づいて、前記流動化剤の供給量を調整する制御工程と、
前記流動化された濃縮汚泥を破砕する破砕工程と、
前記破砕工程で破砕された前記流動化された濃縮汚泥を前記流動化工程に循環させる循環工程と、
前記流動化工程で流動化された前記濃縮汚泥を消化処理する消化工程と、を備えることを特徴とする、消化設備の運転方法。
【請求項5】
前記流動化工程は、前記濃縮汚泥と前記流動化剤を撹拌機により混合し、
前記検知工程は、前記撹拌機の電流値に基づいて、前記流動化工程における前記濃縮汚泥の流動化状態を検知することを特徴とする、請求項4に記載の消化設備の運転方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮処理された濃縮汚泥を消化処理する消化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的処理を行う水処理では、有機性排水中の沈殿性有機物を固液分離して分離汚泥として回収し、この分離汚泥に対して嫌気性消化処理を行い、エネルギーとして有用なメタンを回収している。例えば、特許文献1には、生物学的処理と嫌気性消化処理を組み合わせて、有機性排水から有機物を分解回収する水処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された水処理装置では、固液分離して回収した分離汚泥を濃縮して、汚泥濃度6wt%以上の濃縮汚泥を得る濃縮機と、この濃縮汚泥に対して、水理学的滞留時間18日以下でメタン転換率50%以上に嫌気性消化処理する消化槽を備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
濃縮機で濃縮された濃縮汚泥は、流動性が低いため消化槽内での消化処理が不均一となることがある。そこで、本発明は、簡易的に濃縮汚泥の流動性を高めて、消化処理を安定化することが可能な消化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、濃縮汚泥を流動化剤で希釈することにより、簡易的に濃縮汚泥の流動性を向上し、消化処理を安定化できることを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、以下の消化設備である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の消化設備とは、消化槽、及び、前記消化槽の前段で濃縮汚泥を流動化させる流動化槽を備えることを特徴とする消化設備である。
この消化設備によれば、流動化槽により簡易的に濃縮汚泥の流動性を向上できるため、安定した消化処理を実現することができる。
更には、この消化設備によれば、流動化剤の添加量により流動性を精密に制御することができる。そのため、濃縮汚泥の水分含有量を安定した消化反応に必要最小限度まで調整することが可能となり、消化槽の容量を低減することができる。
また、小型化により、従来の土木構造物として建設されていた大型の消化槽に変えて、繊維強化プラスティック(FRP)等の軽量な高強度材料によって消化槽を形成することも可能となる。FRPのような軽量な材料を使用すると、輸送や設置がさらに容易となる。
【0008】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、消化槽内の消化汚泥を混合することにより濃縮汚泥を流動化させるという特徴を有する。
この特徴によれば、濃縮汚泥の水分量を調整して流動化するための流動化剤として消化槽内の消化汚泥を利用するため、流動化剤として上水や工水等の使用量を低減することができる。上水や工水等の消化設備外からの流動化剤の使用量を低減することにより、濃縮汚泥の処理量の実質的な増加を抑制することができる。
また、消化槽内の消化汚泥は高温であるため、流動化剤として消化汚泥を使用することにより、濃縮汚泥を加温することができる。よって、濃縮汚泥を供給することによる消化槽内の温度の急激な変化を低減することができる。
【0009】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、濃縮汚泥の流動化状態を検知する検知部と、濃縮汚泥の流動化状態を調整する制御部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、濃縮汚泥の流動化状態を一定の状態に維持することが可能となるため、消化槽における反応を正確かつ安定的に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易的に濃縮汚泥の流動性を高めて、消化処理を安定化することが可能な消化設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態である消化設備を備えた下水処理設備を示す概略説 明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第6の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の消化設備は、消化槽、及び、消化槽の前段に濃縮汚泥を流動化させる流動化槽を備えた消化設備である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一態様である消化設備の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態である消化設備を備えた下水処理設備を示す概略説明図である。下水処理設備は、下水中の汚泥を沈降させるための最初沈殿池21、最初沈殿池21で処理された下水を微生物処理するための反応槽22、反応槽で生じた汚泥を沈降させるための最終沈殿池23を備えている。下水は、最初沈殿池21、反応槽22、最終沈殿池23で処理された後、処理水として河川等に放流する。
【0014】
最初沈殿池21及び最終沈殿池23で発生した汚泥は、それぞれ汚泥濃縮槽24及び汚泥濃縮機25において濃縮される。汚泥濃縮槽24は、沈降分離により汚泥を濃縮する装置である。また、汚泥濃縮機25は、ドラム濃縮機等のろ過分離により汚泥を濃縮する装置である。汚泥濃縮槽24及び汚泥濃縮機25で濃縮された濃縮汚泥は、濃縮汚泥貯留槽26に貯留される。濃縮汚泥貯留槽26に貯留された濃縮汚泥の水分含有量は、85~95質量%程度である。
【0015】
さらに、本発明の第1の実施形態の下水処理設備では、汚泥脱水機27を備えている。汚泥脱水機27は、ベルトプレス脱水機やスクリュープレス脱水機などの加圧濾過装置である。濃縮汚泥貯留槽26に貯留された濃縮汚泥は、汚泥脱水機27でさらに脱水された後に、本発明の消化設備に供給される。汚泥脱水機27により脱水された濃縮汚泥(脱水汚泥)の水分含有量は、75~85質量%程度である。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
図2に示すように、第1の実施形態の消化設備は、消化槽1、流動化槽2を備えている。被消化物である濃縮汚泥は、流動化槽2に導入され、流動化剤と混合されて流動化したのちに、消化槽1に投入される。消化槽1では、メタン発酵等の嫌気性処理が行われ、メタン等のバイオガスを発生する。このバイオガスは、上部から排出し、消化槽の熱源や、焼却炉等の補助燃料として利用されるほか、発電燃料や都市ガスとして利用されることが期待される。一方、消化槽1で処理された消化汚泥は、消化槽1から排出されて、脱水機5により脱水消化汚泥と脱離液に分離する。また、消化槽1の反応条件を調整するために、破砕機7および熱交換器9を通過する循環路が形成されている。これにより、消化汚泥の温度や流動状態を維持することができる。
【0017】
(濃縮汚泥)
本発明の消化設備は、濃縮汚泥を消化処理するための設備である。濃縮汚泥とは、汚泥濃縮槽や汚泥濃縮機等の汚泥濃縮装置又は汚泥脱水機により濃縮され、水分含有量が低下した汚泥である。水分含有量は、特に制限されないが、流動状態が悪くなるという観点から95質量%以下であることが好ましい。流動状態が低下すると本発明の効果が顕著に発揮されることから、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下であり、特に好ましくは80質量%以下である。
【0018】
本発明の消化設備に使用する濃縮汚泥は、流動状態の悪い有機汚泥であれば、どのような工程から排出されたものでもよい。例えば、下水処理場、浄水場、廃水処理場、排水処理場等における分離汚泥、余剰汚泥等を使用することができる。また、本発明の消化設備から排出される脱水消化汚泥でもよい。なお、本発明の濃縮汚泥には、汚泥脱水機等で脱水された脱水汚泥や、汚泥乾燥装置により乾燥した乾燥汚泥も包含される。
【0019】
(流動化剤)
本発明の消化設備は、流動化槽2において、濃縮汚泥と流動化剤を混合することにより濃縮汚泥を流動化する。流動化剤とは、濃縮汚泥より水分含有量が多く流動状態が得られているものであればよく、例えば、上水、工業用水(工水)等の精製処理された水や、河川水、湖水、雨水等の未精製の水や、下水、排水等の汚水や、汚水を処理した処理水、脱水機から排出される脱離液、濃縮機から排出される分離液又は濃縮汚泥、消化槽内の消化汚泥等が挙げられる。消化槽設備の運転管理性から、同一の消化設備から得られる消化槽1内の消化汚泥、脱水機5から発生する脱離液を利用することが好ましく、消化汚泥が特に好ましい。消化汚泥は高温であることから、濃縮汚泥と混合することにより濃縮汚泥を加温することができる。よって、濃縮汚泥を消化槽1に供給した際に、消化槽1内の急激な温度変化を低減するという効果を奏する。なお、消化処理では、濃縮汚泥に含まれる有機物(固体分)がバイオガスとして消費されることから、消化汚泥の方が濃縮汚泥より水分含有量が高くなる。そのため、消化汚泥を流動化剤として利用することが可能となる。
【0020】
また、流動化剤は2種類以上のものを使用してもよい。例えば、消化汚泥を利用した場合、継続して使用すると、徐々に水分含有量が低下して、流動状態が得られなくなる場合がある。このような場合には、工水や、脱水機5からの脱離液や、他の水処理設備からの処理水等を更に使用することにより流動状態を得ることができる。
【0021】
(流動化槽)
流動化槽2は、濃縮汚泥と流動化剤を混合して濃縮汚泥を流動化するための構成である。流動化槽2は、濃縮汚泥と流動化剤をよく混合するという観点から、撹拌機を備えることが好ましい。撹拌機としては、どのようなものを利用してもよく、例えば、インペラ式撹拌機、混練機の機械的混合のほか、スタティックミキサー等の静止型混合器、循環ポンプ等による流体循環混合手段等を利用してもよい。
【0022】
流動化槽2で流動化した濃縮汚泥は、後段の消化槽1に送液される。消化槽1へ送液する際には、消化槽1へ直接送液してもよいし、破砕機7や熱交換器9で処理した後に、消化槽1へ送液してもよい。破砕機7や熱交換器9で処理した後に、消化槽1へ供給すると、温度や分散状態等の条件が消化処理に適した条件に調整されるため、消化槽1内の状態が安定するという効果を奏する。
【0023】
また、流動化槽2は、消化槽1と別体としてもよいし、一体としてもよい。例えば、消化槽1の内部の空間の一部を区画し、流動化槽2としてもよい。装置の簡略化や省スペース化の観点から、流動化槽2を消化槽1の内部に設けることが好ましい。さらに、この構成によれば、流動化槽2の外周から消化槽1内の消化汚泥の熱が伝わるため、流動化槽2内を加温するという効果もある。
【0024】
(消化槽)
消化槽1は、流動化した濃縮汚泥を嫌気的に消化するための構成である。処理条件は、特に制限されないが、例えば、消化槽1の内部の消化汚泥を30~50℃に加温し、消化槽1の内部で10~50日程度の滞留することにより、嫌気性微生物の働きにより有機物が分解され、メタンガス等のバイオガスが発生する。このバイオガスは、上部から排出されて、消化槽の熱源や、焼却炉等の補助燃料として利用されるほか、発電燃料や都市ガスとして利用されることが期待される。
【0025】
一方、処理された消化汚泥は、消化槽1から排出され、脱水機5で脱水処理される。脱水処理された脱水消化汚泥は、通常、焼却等により処分され、脱離液は別の生物処理等の処理が行われたり、殺菌処理後に放流されたりする。
【0026】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。第2の実施形態の消化設備は、流動化槽2で流動化された濃縮汚泥を、破砕機7、熱交換器9を介して消化槽1に投入する構成である。
【0027】
(破砕機)
破砕機7は、濃縮汚泥及び消化汚泥を破砕する作用があれば、どのようなものでもよい。放熱防止やバイオガスの漏えい等の観点から、管路内で処理できるインライン式の破砕機が好ましい。また、消化槽1内で破砕処理できるものでもよい。
【0028】
(熱交換器)
熱交換器9は、濃縮汚泥及び消化汚泥を加温して消化に好適な温度に調整するための構成であれば、どのようなものでもよい。例えば、管路を通過する消化汚泥を加温する構成のほか、消化槽1の外部から加温する構成としてもよい。
【0029】
なお、第2の実施形態の破砕機7及び熱交換器9は、消化槽1の消化汚泥を循環させる同一の管路に設置したものであるが、破砕機7と熱交換器9を別々の位置に設置しもよい。
【0030】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。第3の実施形態の消化設備は、第2の実施形態の消化設備において、流動化槽2で流動化された濃縮汚泥を破砕機7及び熱交換器9で処理した後に、流動化槽2に循環させるための循環経路を有するものである。
【0031】
この消化設備によれば、流動化槽2と、破砕機7及び熱交換器9とを循環させることができるため、破砕機7における破砕による濃縮汚泥の流動化作用も加えることができる。そのため、流動化槽2に供給する流動化剤の量を低減できるという効果を奏する。また、熱交換器9において流動化された濃縮汚泥の温度を消化に適した温度に調整することができる。
【0032】
なお、この第3の実施形態では、流動化槽2と、破砕機7及び熱交換器9とを循環させる構成としているが、目的に応じて、流動化槽2と破砕機7のみ、又は、流動化槽2と熱交換器9のみで循環させてもよい。
【0033】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。第4の実施形態の消化設備は、流動化剤として、消化槽1内の消化汚泥と、消化汚泥とは別の流動化剤(例えば、工水等)を利用するものであり、更に、流動化槽2に流動化状態を検知する検知部6、検知部6で検知された流動化状態に応じて、消化汚泥の流量及び別の流動化剤の流量を調整する制御部13を備えている。流動化剤として消化汚泥を利用することにより、工水等の流動化剤の消費を抑制することができる。
【0034】
(検知部)
流動化状態を検知する検知部6とは、脱水汚泥の流動化状態を表す指標となるものを検知すればよく、どのような指標を利用してもよい。例えば、流動化槽2における脱水汚泥の水分含有量や粘度、流動化槽2から消化槽1へ送液するためのポンプの電流値、流動化槽2に設置された撹拌機の電流値等が挙げられる。その他、濃縮汚泥と流動化剤の水分含有量から流動化される濃縮汚泥の水分含有量を算出する計算機などでもよい。なお、流動化状態の検知は、センサ等により計測してもよいし、流動化槽2内の脱水汚泥をサンプリングして測定してもよい。
【0035】
(制御部)
制御部13は、検知部6により検知された流動化状態に基づいて、流動化剤の供給量を調整するものである。消化汚泥を流動化剤として利用する場合、水分含有量が低下して、流動化状態が低下することがある。そのような場合には、工水等の別の流動化剤の供給量を増加して、流動化状態を回復するように調整する。
【0036】
なお、第4の実施形態では、流動化剤を2種類用いた場合について制御しているが、流動化剤を1種類のみ使用する場合でも、制御部13により流動化剤の供給量を管理してもよい。制御部13を設けることにより、濃縮汚泥の水分含有量等が変動しても、検知部6からの情報に基づいて、流動化剤の供給量を調整し、一定の流動化状態を維持することができる。
【0037】
[第5の実施形態]
図6は、本発明の第5の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
図6の消化設備は、消化槽1に内部の一部に区画された流動化槽2を備えている。濃縮汚泥は、管路P1を介し、汚泥移送ポンプ4によって流動化槽2に移送される。さらに流動化槽2には、管路P3を介して消化汚泥が供給される。撹拌機3により濃縮汚泥と消化汚泥が混合されて、濃縮汚泥を流動化することができる。また、管路P2を介して流動化剤として工水が供給されるように構成されている。
【0038】
流動化槽2には、濃縮汚泥の流動化状態を検知する検知部6として、水分計が備えられており、さらに水分計から得られた情報に基づいて、消化汚泥及び工水の供給量を調整する制御部13を備えている。制御部13では、水分計からの情報に基づいて、電動弁V2や電動弁V3の各モーターに指令を出し、電動弁V2及び電動弁V3の開閉の度合いを制御する。
図6の消化設備は、濃縮汚泥について、必要最小限度の水分を配合した上で消化槽に投入することになるため、消化槽自体の容量を低減することができる。また、汚泥の流動化状態を検知する検知部と流動化状態を調整する制御部を備えるため、濃縮汚泥の流動化を正確かつ安定的に行うことができる。
なお、濃縮汚泥の流動化槽への移送は、汚泥移送ポンプによって行うことに限られず、スクリューコンベア等の公知の汚泥移送・搬送方法を利用したものであってもよい。
【0039】
消化槽1では、汚泥の嫌気性消化を促進するために、汚泥の温度(消化温度)管理や撹拌が行われる。消化日数を経過した消化汚泥は、脱水機5に移送されて脱水が行われる。消化汚泥の脱水によって生じた脱離液は、消化設備の外に排出する。
【0040】
図6の消化設備は、熱交換器9によって汚泥の温度を消化温度等に調節しており、管路P4を介して破砕機7に移送されて固形物等が細断された後、循環ポンプ8を経由し、熱交換器9に移送されて温度調節された汚泥が消化槽1に戻されることになる。
【0041】
図6の消化設備は、消化過程で発生した消化ガスを熱交換器9の熱源に利用できるようになっている。消化槽1で発生した消化ガスは、管路P5を介して脱硫装置10に移送されて脱硫処理がなされた後、ガスホルダ11に貯蔵され、適宜ガス発電設備12の燃料に使用される。また、ガス発電設備12のガスエンジンの排気やエンジン冷却水を熱交換器9に循環させて、汚泥を加温するための熱源として利用することができる。
【0042】
[第6の実施形態]
図7は、本発明の第6の実施形態である消化設備を示す説明概略図である。
図7の消化設備は、消化槽1と流動化槽2が分離された設備であり、流動性が確保された濃縮汚泥は、管路P7を介して卵形の消化槽1に移送される。
第6の実施形態の消化設備では、消化汚泥を脱水機5で脱水し、得られた脱離液を流動化剤として利用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の消化設備は、下水処理場等の汚泥消化設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 消化槽、2 流動化槽、3 撹拌機、4 汚泥移送ポンプ、5 脱水機、6 検知部、7 破砕機、8 ポンプ、9 熱交換器、10 脱硫装置、11 ガスホルダ、12 ガス発電設備、P1~P7 管路、V1~V9 開閉弁、21 最初沈殿池、22 反応槽、23 最終沈殿池、24 汚泥濃縮槽、25 汚泥濃縮機、26 濃縮汚泥貯留槽、27 汚泥脱水機