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特許7440583ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240220BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240220BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240220BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240220BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/17
C08K5/3432
B60C1/00 B
B60C13/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022134834
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045408(JP,A)
【文献】特開平03-217440(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059673(WO,A1)
【文献】特開2013-082874(JP,A)
【文献】特開2013-227385(JP,A)
【文献】特開2004-161139(JP,A)
【文献】特開2008-111100(JP,A)
【文献】特開2019-065270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、
フィラーと、
N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)、及びN-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)からなる群から選択される少なくとも1種のフェニレンジアミンと、
キノリン系老化防止剤と、を含有し、
前記フィラーとしてカーボンブラックを含み、かつ、シリカを含まず、
N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【請求項2】
請求項に記載のゴム組成物をサイドウォールに用いた、空気入りタイヤ。
【請求項3】
サイドウォールの表面にカバーゴムを貼り合わせて成る積層体を含む、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カバーゴムは、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム及び天然ゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックを含むゴム組成物からなる、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物においては、耐オゾン性の観点から老化防止剤としてN-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)やN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)が一般に使用されるが、これらの化合物は移行性が高いため、ゴム表面に移行し、タイヤの表面が変色するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-221052号公報
【文献】特開2013-95837号公報
【文献】特開2009-24134号公報
【文献】特開平10-324779号公報
【文献】特開2021-91163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、変色を抑えつつ、優れた耐オゾン性を得ることができる、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
なお、特許文献1~5には、炭素数が7以上のアルキル基を有するフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用し、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)を含まない例は記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを含有し、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【化1】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
[2] カーボンブラックを含み、シリカを含まないか、含む場合であってもジエン系ゴム100質量部に対して2質量部未満である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] [1]又は[2]に記載のゴム組成物をサイドウォールに用いた、空気入りタイヤ。
[4] サイドウォールの表面にカバーゴムを貼り合わせて成る積層体を含む、[3]に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物によれば、変色を抑制しつつ、優れた耐オゾン性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図である。
図2】同空気入りタイヤの製造工程を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを含有し、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まないものとする。
【化2】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
【0011】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、この中でも天然ゴムやブタジエンゴムであることが好ましく、天然ゴムとブタジエンゴムとの併用であることがより好ましい。また、ジエン系ゴムには、これらの変性ゴムも含まれるものとする。変性ゴムとしては、例えば、変性SBR、変性BRを挙げることができる。変性ゴムは、ヘテロ原子を含む官能基を有することができる。官能基は、ポリマー鎖の末端に導入されてもよく、ポリマー鎖中に導入されてもよいが、好ましくは末端に導入されることである。官能基としては、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン基などが挙げられる。なかでも、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましい。変性ゴムは、例示した官能基のうち少なくとも1種を有することができる。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基などが挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。例示した官能基は、シリカのシラノール基(Si-OH)と相互作用する。ここで、相互作用とは、たとえば、シリカのシラノール基との間で化学反応による化学結合または水素結合することを意味する。ジエン系ゴム100質量%中の変性ゴムの量は、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0012】
本実施形態に係るゴム組成物は、フィラーを含有するものである。フィラーとしては、カーボンブラックやシリカなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、公知の種々の品種を用いることができる。シリカとしては、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0013】
フィラーの含有量は特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、10~80質量部であることが好ましく、10~70質量部であることがより好ましい。
【0014】
シリカは、含有しないか、含有する場合であってもジエン系ゴム100質量部に対して2質量部未満であることが好ましい。
【0015】
本実施形態で使用するフェニレンジアミンは、式(1)で表されるものであり、式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基であり、炭素数が7~20のアルキル基又はフェニル基であって、少なくとも一方が炭素数7~20のアルキル基であることが好ましい。
【化3】
【0016】
このようなフェニレンジアミンとしては、例えば、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)などが挙げられる。
【0017】
上記フェニレンジアミンの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0018】
キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(ETMQ)などが挙げられる。
【0019】
キノリン系老化防止剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましく、1~6質量部であることが特に好ましい。
【0020】
老化防止剤の合計の含有量(上記フェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤との合計)は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。
【0021】
上記フェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤との含有割合は、質量比で、0.1~10であることが好ましく、0.2~5であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、樹脂、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0023】
オイルとしては、菜種油、綿実油などの植物油系オイル、パラフィン系プロセス油、ナフテン系プロセス油、アロマ系プロセス油などの鉱物油系オイル、DOP,DBPなどの可塑剤を例示することができる。オイルは使用する原料ゴムとの混和性を考慮して適宜選択する。オイルは2種以上を使用してもよい。
【0024】
樹脂としては、粘着性を有するもの、即ち粘着性樹脂が好ましく用いられ、固形状でも液状でもよい。樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、石油樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0025】
ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを用いた各種のロジン変性樹脂(例えば、ロジン変性マレイン酸樹脂)が挙げられる。
【0026】
石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。
【0027】
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロン-インデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂などが挙げられる。
【0028】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペン-フェノール樹脂などが挙げられる。
【0029】
樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して1~30質量部でもよく、5~20質量部でもよく、10~20質量部でもよい。
【0030】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてタイヤを加硫成形することで得られるものである。かかるタイヤの加硫条件としては、特に限定されるものではないが、通常、140~180℃で10~30分間で行われる。
【0033】
本発明においては、タイヤのゴム部分の全体を上記ゴム組成物で形成してもよいが、通常、上記ゴム組成物は部分的に用いられる。すなわち、トレッド、サイドウォールおよびビードのうちの少なくとも一部に該ゴム組成物からなるゴム部が設けられる。その場合、トレッドやサイドウォール、ビードの各部の全体を上記ゴム部で形成してもよく、あるいはまた、各部の一部を上記ゴム部で形成してもよい。いずれにしても、外部から視認できるように該ゴム部をタイヤ表面側に設けることが好ましい。好ましくは、サイドウォールの全体又は一部が上記ゴム部により形成されていることである。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10の半断面図である。このタイヤ10は、左右一対のビード12及びサイドウォール14と、両サイドウォール14間にまたがるトレッド16とを備えて構成されている。ビード12には、環状のビードコア18と、その半径方向外側のゴム製ビードフィラー20とが配設されている。左右一対のビードコア18間には、タイヤ周方向に対し直角に配列した多数のコードが延在してなるカーカス層22が設けられており、該カーカス層22の両端部がビードコア18にて係止されている。トレッド16におけるカーカス層22の半径方向外側には非伸張性コードからなるベルト層24が設けられ、このベルト層24のタイヤ半径方向外側にトレッドゴム26が設けられている。また、サイドウォール14におけるカーカス層22の外側にサイドウォールゴム28が設けられている。
【0035】
かかる構成からなるタイヤ10において、本実施形態では、サイドウォールゴム28の一部がカラーゴム30として形成されており、詳細には、サイドウォールゴム28の半径方向中央部がカラーゴム30とされ、その上下両側が上記ゴム組成物からなる黒色のサイドウォールゴム28a,28bとされている。
【0036】
図2(c)に拡大して示すように、サイドウォール14表面のカラーゴム30周りにはカバーゴム層32が覆設されている。カバーゴム層32は、通常のサイドウォールゴム28a,28bと同色の黒色ゴム層であり、カラーゴム30の一部を覆うことで、その非覆設部により所定の絵柄、文字、記号、模様などの表示情報40が外部に表される。
【0037】
図2(c)に示す構造は次のようにして形成することができる。すなわち、図2(a)に示すように、カーカス層22の外側にサイドウォールゴム28a,28bとその間にカラーゴム30を張り付け、更にその外側にカバーゴム層32を張り付けて、グリーンタイヤを作成する。そして、カラーゴム30の表面に周方向に延びる凸部34を成形するように凹部36を持つ成形型38を用いて、該グリーンタイヤを加硫成形する。そして、加硫成形後、図2(b)に示すように、凸部34の先端面のカバーゴム層32を一点鎖線Xで示すように削って、図2(c)に示すようにカラーゴム30の所定の一を露出させればよい。このように形成することで、上記所定の表示情報40を精度よく、しかも簡単に形成することができる。
【0038】
なお、カバーゴム層32は、ゴム成分としてエチレンプロピレンゴム(EPDM)やハロゲン化ブチルゴム、天然ゴムを含有し、フィラーとしてカーボンブラックを含有するゴム組成物からなるものであることが好ましい。上記ゴム組成物は、フェノール系老化防止剤などの老化防止剤を含有するものであってもよいが、サイドウォールゴム28やカラーゴム30を汚染しないように、老化防止剤等の汚染性薬品を含まない非汚染性ゴム組成物であることが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
10…空気入りタイヤ
14…サイドウォール
28…サイドウォールゴム
30…カラーゴム
32…カバーゴム層
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
ラボミキサーを使用し、下記表1,2に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1,2中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0042】
・BR1:宇部興産(株)製「BR150B」、シス含有量97%、ガラス転移温度-100℃
・BR2:旭化成(株)製「ジエンNF35R」、シス含有量32%、ガラス転移温度-90℃
・NR:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・プロセスオイル:ENEOS(株)製「プロセスオイルNC140」
・アミン系老化防止剤1:大内新興化学(株)製「ノクラック810-NA」、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)
・アミン系老化防止剤2:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)
・アミン系老化防止剤3:LANXESS社製「Vulkanox4030」、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)
・アミン系老化防止剤4:精工化学(株)製「オゾノン35」、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)
・アミン系老化防止剤5:Eastman社製「Santoflex7PPD」、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)
・キノリン系老化防止剤1:大内新興化学(株)製「ノクラック224」、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)
・キノリン系老化防止剤2:大内新興化学(株)製「ノクラックAW」、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(ETMQ)
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
【0043】
得られた各ゴム組成物について、160℃で20分間加硫して所定形状の試験片を作製し、耐オゾン性及び変色の評価を行った。評価方法は次の通りである。
【0044】
・耐オゾン性:試験片を25%伸長した条件下でオゾンウェザーメーター装置中に設置し、オゾン濃度100pphm、温度50℃の環境下で24時間放置し、その後、クラックの発生状態を目視および10倍の拡大鏡により観察した。次の4段階の基準で耐オゾン性を評価した。
点数4:クラック発生なし
点数3:肉眼では確認できないが10倍の拡大鏡では確認できるクラックが発生
点数2:1mm以下のクラックが発生している
点数1:1mmを超えるクラックが発生
【0045】
・変色:コニカミノルタ製分光測色計「CR-200」を用いて、6か月屋外暴露試験したサンプルの色彩を測定した。色見変化はΔEに基づいて計算し、ΔEの値が小さいほど屋外暴露前後での色目変化が小さく、外観は良好である。
A:ΔEが3.0以下
B:ΔEが3.0以上6.0以下
C:ΔEが6.0以上9.0以下
D:ΔEが9.0以上
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
結果は、表1,2に示す通りであり、アルキル基の炭素数が6以下のフェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤を併用した例である比較例1-1~比較例1~4では変色した。
【0049】
所定のフェニレンジアミンを単独で使用した例である比較例1-5~比較例1-7では変色した。
【0050】
アルキル基の炭素数が6以下のフェニレンジアミンと、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用した例である比較例1-8~比較例1-10では変色した。
【0051】
一方、所定のフェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤とを併用した実施例では、変色を抑えつつ、優れた耐オゾン性が得られた。
【0052】
また、比較例1-5、実施例1-2、実施例1-10、及び実施例1-19のゴム組成物をサイドウォールに用い、表4に示す配合(質量部)に従って作製したゴム組成物をカバーゴムとして用いてタイヤサイズ235/70R16 106Qのタイヤを作成し、タイヤの耐オゾン性及び変色を評価した。タイヤの耐オゾン性の評価方法は次の通りである。タイヤの変色の評価方法は、上記と同様に行った。
【0053】
表4中の各成分の詳細は、以下の通りである。
・EPDM:住友化学(株)製「ESPRENE532」
・クロロブチル:JSR(株)製「CHLOROBUTYL1066」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストSO」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤:精工化学(株)製「ノクラックSP」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学(株)製「ノクセラーDM」
【0054】
・タイヤの耐オゾン性:乗用車にタイヤを装着し、5万km走行後のサイドウォールゴムの表面の状態を、JIS K6259の基準に照合して評価を行った。その後、クラックの発生状態を目視および10倍の拡大鏡により観察し、次の4段階の基準で耐オゾン性を評価した。
点数4:クラック発生なし
点数3:肉眼では確認できないが10倍の拡大鏡では確認できるクラックが発生
点数2:1mm以下のクラックが発生している
点数1:1mmを超えるクラックが発生
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
結果は表3に示す通りであり、実施例1-2、実施例1-10、及び実施例1-19は、比較例1-5と比較して、タイヤの変色を抑えつつ、優れたタイヤの耐オゾン性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤ用ゴム組成物に用いることができる。
【要約】
【課題】変色を抑制しつつ、優れた耐オゾン性が得られる、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミン(式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である)と、キノリン系老化防止剤とを含有し、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物とする。
【化1】
【選択図】図1
図1
図2