(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電力調整回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240220BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240220BHJP
H02M 1/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M3/28 V
H02M1/12
(21)【出願番号】P 2022138216
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2020066049の分割
【原出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-08-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 健一
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆英
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和大
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517665(JP,A)
【文献】実開昭59-056986(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/28
H02M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子の両端に接続された第1ダイオードと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第2スイッチング素子の両端に接続された第2ダイオードと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に接続されたフィルタと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームの両端の並列接続点の間に接続された出力コンデンサと
、
第1端子から前記第1スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第1経路に設けられた第1インダクタと、
第2端子から前記第2スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第2経路に設けられた第2インダクタと、
第3端子から前記第3スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第3経路に設けられた第3インダクタと、を備え、
前記フィルタは、
前記第
1経路に一端が接続された第1コンデンサと、
前記第
2経路に一端が接続された第2コンデンサと、
前記第
3経路に一端が接続された第3コンデンサと、
を備え、
前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサおよび前記第3コンデンサのそれぞれの他端は共通に接続され、接地されており、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームは、
前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子に3相交流電圧が印加される3相モード、または、前記第1端子および前記第2端子と、前記第3端子との間に単相交流電圧が印加される単相モードのいずれかで動作し、
前記3相モードは、
前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電圧の時間波形に、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電流の時間波形を近似させまたは一致させる
ように、前記第1経路、前記第2経路および前記第3経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであり、
前記単相モードは、
前記第1端子および前記第2端子における電圧の時間波形に、前記第1端子および前記第2端子に流れる電流の時間波形を近似させまたは一致させる
ように、前記第1経路および前記第2経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであることを特徴とする電力調整回路。
【請求項2】
並列接続された第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子の両端に接続された第1ダイオードと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第2スイッチング素子の両端に接続された第2ダイオードと、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームの両端の並列接続点の間に接続された出力コンデンサと、
第1端子から前記第1スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る
第1経路に設けられた第1インダクタと、
第2端子から前記第2スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る
第2経路に設けられた第2インダクタと、
第3端子から前記第3スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る
第3経路に設けられた第3インダクタと、を備え、
前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームは、
前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子に3相交流電圧が印加される3相モード、または、前記第1端子および前記第2端子と、前記第3端子との間に単相交流電圧が印加される単相モードのいずれかで動作し、
前記3相モードは、
前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電圧の時間波形に、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電流の時間波形を近似させまたは一致させる
ように、前記第1経路、前記第2経路および前記第3経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであり、
前記単相モードは、
前記第1端子および前記第2端子における電圧の時間波形に、前記第1端子および前記第2端子に流れる電流の時間波形を近似させまたは一致させる
ように、前記第1経路および前記第2経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであることを特徴とする電力調整回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力調整回路に関し、特に、フィルタを備える回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両が広く用いられている。電動車両には、駆動用モータに電力を供給するための電池が搭載されている。電動車両では回生制動によって発電した電力によって電池が充電され、プラグイン機能がある場合には、商用電源から供給される電力によって電池が充電される。また、ハイブリッド自動車では、エンジンによるジェネレータの駆動によって発電した電力によって電池が充電される。電池を充電するため、電動車両には電力変換装置が搭載される。電力変換装置は、入力された電圧を適切な電圧に変換して電池に印加する。
【0003】
以下の特許文献1には、2つのスイッチング回路を各回路に接続された巻線によって磁気的に結合させ、2つのスイッチング回路の間で電力を伝送させる電力変換装置が示されている。特許文献2には、第1および第2の昇圧コンバータのパルス幅変調による力率改善を行いつつ、第1および第2の昇圧コンバータの周波数を調整することにより出力電圧を制御する電力変換装置が示されている。
【0004】
特許文献3には、力率改善回路として動作する第1のハーフブリッジ回路(スイッチング回路)と、AC/DCコンバータとして動作する第2のハーフブリッジ回路(スイッチング回路)とをトランスによって結合した電力変換回路(電力変換装置)が記載されている。第1のハーフブリッジ回路は、外部交流電源から出力される交流電力の力率を調整する。第1のハーフブリッジ回路から第2のハーフブリッジ回路には、トランスを介して電力が供給され、第2のハーフブリッジ回路は電動車両の主機電池に電力を供給する。この電力変換装置には、さらに、第2のハーフブリッジ回路にトランスによって結合した第3のハーフブリッジ回路が設けられている。第2のハーフブリッジ回路から第3のハーフブリッジ回路にはトランスを介して電力が供給され、AC/DCコンバータとして動作する第3のハーフブリッジ回路は電動車両の補機電池に電力を供給する。特許文献4および非特許文献1には、3つのスイッチング回路がトランスによって相互に結合されたDC/DCコンバータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-193713号公報
【文献】特開2010-183726号公報
【文献】特開2018-14794号公報
【文献】特開2015-119598号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】C.Zhao, “ An Isolated Three-port Bidirectional DC-DC Converter With Decoupled Power Flow Management ”, IEEE Transaction on Power Electronics, Volume:23, Issue:5, Sept. 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、力率改善回路等の電力調整回路におけるノイズを抑制することである。本発明の関連技術として、電力変換装置における電力損失を抑制する技術がある。一般に、電動車両では、補機電池の出力電圧の方が、主機電池の出力電圧よりも小さい。そこで、特許文献3に記載された電力変換装置では、第3のハーフブリッジに接続されたトランスの巻線の巻き数が、第2のハーフブリッジに接続されたトランスの巻線の巻き数よりも少なくされる。しかし、このような設計には、第3のハーフブリッジに接続された巻線に流れる電流、および第3のハーフブリッジに流れる電流が大きくなり、電力損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明の関連技術の目的は、電力変換装置における電力損失を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の関連技術は、1次巻線および2次巻線を備えるトランスと、前記1次巻線に接続された第1スイッチング回路と、前記2次巻線に接続された第2スイッチング回路と、前記第2スイッチング回路に含まれる中間コンデンサと、を備え、前記第1スイッチング回路および前記第2スイッチング回路のスイッチング動作によって、前記第1スイッチング回路から前記トランスを介して前記中間コンデンサに電力が供給され、前記第2スイッチング回路のスイッチング動作によって、前記中間コンデンサから前記2次巻線の中途点を介して電力が出力されることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記第1スイッチング回路のスイッチングタイミングに応じて前記1次巻線に現れる電圧の位相と、前記第2スイッチング回路のスイッチングタイミングに応じて前記2次巻線に現れる電圧の位相との差異に応じて、前記第1スイッチング回路から前記第2スイッチング回路に電力が伝送される。
【0011】
望ましくは、前記第2スイッチング回路は、並列接続された第1スイッチングアームおよび第2スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第1スイッチングアームおよび第2スイッチングアームを備え、前記第1スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点と、前記第2スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点との間に前記2次巻線が接続されており、前記第1スイッチングアームおよび前記第2スイッチングアームの両端の並列接続点の間に前記中間コンデンサが接続されており、前記2次巻線の中途点と、前記第1スイッチングアームおよび前記第2スイッチングアームの両端の並列接続点のうち一方との間から電力が出力される。
【0012】
望ましくは、前記第1スイッチング回路は、並列接続された第3スイッチングアームおよび第4スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第3スイッチングアームおよび第4スイッチングアームを備え、前記第3スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点と、前記第4スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点との間に前記1次巻線が接続されており、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアーム、前記第3スイッチングアームおよび前記第4スイッチングアームのデューティ比が等しい。
【0013】
また、本発明は、並列接続された第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子の両端に接続された第1ダイオードと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第2スイッチング素子の両端に接続された第2ダイオードと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に接続されたフィルタと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームの両端の並列接続点の間に接続された出力コンデンサと、第1端子から前記第1スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第1経路に設けられた第1インダクタと、第2端子から前記第2スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第2経路に設けられた第2インダクタと、第3端子から前記第3スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第3経路に設けられた第3インダクタと、を備え、前記フィルタは、前記第1経路に一端が接続された第1コンデンサと、前記第2経路に一端が接続された第2コンデンサと、前記第3経路に一端が接続された第3コンデンサと、を備え、前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサおよび前記第3コンデンサのそれぞれの他端は共通に接続され、接地されており、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームは、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子に3相交流電圧が印加される3相モード、または、前記第1端子および前記第2端子と、前記第3端子との間に単相交流電圧が印加される単相モードのいずれかで動作し、前記3相モードは、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電圧の時間波形に、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電流の時間波形を近似させまたは一致させるように、前記第1経路、前記第2経路および前記第3経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであり、前記単相モードは、前記第1端子および前記第2端子における電圧の時間波形に、前記第1端子および前記第2端子に流れる電流の時間波形を近似させまたは一致させるように、前記第1経路および前記第2経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであることを特徴とする。また、本発明は、並列接続された第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームであって、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第1スイッチング素子の両端に接続された第1ダイオードと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームのそれぞれにおける第2スイッチング素子の両端に接続された第2ダイオードと、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームの両端の並列接続点の間に接続された出力コンデンサと、第1端子から前記第1スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第1経路に設けられた第1インダクタと、第2端子から前記第2スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第2経路に設けられた第2インダクタと、第3端子から前記第3スイッチングアームにおける第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の接続点に至る第3経路に設けられた第3インダクタと、を備え、前記第1スイッチングアーム、前記第2スイッチングアームおよび前記第3スイッチングアームは、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子に3相交流電圧が印加される3相モード、または、前記第1端子および前記第2端子と、前記第3端子との間に単相交流電圧が印加される単相モードのいずれかで動作し、前記3相モードは、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電圧の時間波形に、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子における各電流の時間波形を近似させまたは一致させるように、前記第1経路、前記第2経路および前記第3経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであり、前記単相モードは、前記第1端子および前記第2端子における電圧の時間波形に、前記第1端子および前記第2端子に流れる電流の時間波形を近似させまたは一致させるように、前記第1経路および前記第2経路に流れる電流をスイッチングするスイッチング動作モードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力調整回路におけるノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】第1セカンダリ巻線および第2セカンダリ巻線の各端子間電圧と、スイッチング素子S9およびS10のそれぞれに流れる電流のシミュレーション結果を示す図である。
【
図3】電力調整回路の具体的な構成を示す図である。
【
図4】3相モードにおけるEMIフィルタの構成を示す図である。
【
図5】単相モードにおけるEMIフィルタの構成を示す図である。
【
図6】応用例に係る電力変換システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。また、以下の説明に示された上下左右の用語は、説明の便宜上、図面における上下左右の方向を示すものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0017】
図1には本発明の実施形態に係る車載用電力変換システムが示されている。車載用電力変換システムは、電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18、トランス22、第1セカンダリスイッチング回路30、第2セカンダリスイッチング回路36およびコントローラ100を備え、電動車両に搭載される。車載用電力変換システムは、交流電力源10から出力される電力を、主機電池34および補機電池40に供給する。また、車載用電力変換システムは、主機電池34から補機電池40に電力を供給する。交流電力源10は、電力供給事業者による電力供給システムであってもよいし、家庭用の発電装置であってもよい。
【0018】
電動車両が停車しており交流電力源10を用いて主機電池34を充電するときに、電力調整回路14の交流端子12-1および12-2に交流電力源10が接続される。電力調整回路14の正極端子16Pおよび負極端子16Nには、プライマリスイッチング回路18が接続されている。
【0019】
トランス22は、磁気的に相互に結合するプライマリ巻線24、第1セカンダリ巻線26および第2セカンダリ巻線28を備えている。プライマリ巻線24の両端はプライマリスイッチング回路18に接続されている。第1セカンダリ巻線26の両端は第1セカンダリスイッチング回路30に接続され、第2セカンダリ巻線28の両端は第2セカンダリスイッチング回路36に接続されている。
【0020】
第1セカンダリスイッチング回路30には主機電池34が接続されている。主機電池34は、電動車両を駆動するモータジェネレータに力行用の電力を供給すると共に、モータジェネレータの回生制動に基づく発電電力によって充電される。第2セカンダリスイッチング回路36には補機電池40が接続されている。補機電池40は、電動車両に搭載されたオーディオ機器、室内灯、空調装置等の補機に電力を供給する。
【0021】
車載用電力変換システムの動作の概要について説明する。コントローラ100による制御によって、電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18、第1セカンダリスイッチング回路30および第2セカンダリスイッチング回路36は次のように動作する。電力調整回路14は、交流端子12-1および12-2に流れる電流の時間波形を、交流電力源10が出力する交流電圧の時間波形に近似させ、または一致させるように、交流端子12-1および12-2に流れる電流をスイッチングする。これによって、交流電力源10から電力調整回路14に入力される電力の力率が向上する。
【0022】
電力調整回路14は力率を向上させる動作を実行しつつ、交流電力源10から出力される交流電力を直流電力に変換し、直流電圧をプライマリスイッチング回路18に出力する。プライマリスイッチング回路18は、この直流電圧に対するスイッチングによってプライマリ巻線24に交流電圧を出力する。第1セカンダリスイッチング回路30は、主機電池34が出力する電圧に対するスイッチングによって、第1セカンダリ巻線26に交流電圧を出力する。第2セカンダリスイッチング回路36は、中間コンデンサ38を備えている。第2セカンダリスイッチング回路36は、後述するように、プライマリスイッチング回路18または第1セカンダリスイッチング回路30からトランス22を介して供給される電力によって中間コンデンサ38を充電する。第2セカンダリスイッチング回路36は、中間コンデンサ38に対する電圧のスイッチングによって第2セカンダリ巻線28に交流電圧を出力する。
【0023】
プライマリスイッチング回路18のスイッチングタイミングと、第1セカンダリスイッチング回路30のスイッチングタイミングの相違に応じて、交流電力源10から電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18、プライマリ巻線24および第1セカンダリ巻線26を介して第1セカンダリスイッチング回路30に電力が伝送される。第1セカンダリスイッチング回路30は、第1セカンダリ巻線26を介して伝送された電力によって主機電池34に電力を供給する。第1セカンダリスイッチング回路30は、主機電池34に電力を供給すると共に、主機電池34に接続された負荷回路(図示せず)に電力を出力してもよい。
【0024】
プライマリスイッチング回路18のスイッチングタイミングと、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチングタイミングの相違に応じて、交流電力源10から電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18、プライマリ巻線24および第2セカンダリ巻線28を介して第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される。第2セカンダリスイッチング回路36は、第2セカンダリ巻線28を介して伝送された電力によって補機電池40に電力を供給する。第2セカンダリスイッチング回路36は、補機電池40に電力を出力すると共に、補機電池40に接続された補機(図示せず)に電力を出力してもよい。
【0025】
電動車両の走行時には、電力調整回路14が交流電力源10から切り離され、電力調整回路14はスイッチング動作を停止する。電動車両の走行時には、次のような動作によって主機電池34から補機電池40に電力が供給される。第1セカンダリスイッチング回路30のスイッチングタイミングと、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチングタイミングの相違に応じて、第1セカンダリスイッチング回路30から、第1セカンダリ巻線26および第2セカンダリ巻線28を介して第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される。第2セカンダリスイッチング回路36は、第2セカンダリ巻線28を介して伝送された電力によって補機電池40に電力を供給する。第2セカンダリスイッチング回路36は、補機電池40に電力を出力すると共に、補機電池40に接続された補機に電力を出力してもよい。
【0026】
次に、プライマリスイッチング回路18、第1セカンダリスイッチング回路30および第2セカンダリスイッチング回路36の詳細な構成および動作について説明する。プライマリスイッチング回路18は、スイッチングアームu、スイッチングアームvおよびバッファコンデンサ20を備えている。スイッチングアームuは、直列接続されたスイッチング素子S1およびS2を備え、スイッチングアームvは、直列接続されたスイッチング素子S3およびS4を備えている。スイッチングアームuおよびvは並列に接続されている。スイッチングアームuおよびvには、さらに、バッファコンデンサ20が並列に接続されている。スイッチングアームu、vおよびバッファコンデンサ20の上側の並列接続点は、電力調整回路14の正極端子16Pに接続され、下側の並列接続点は、電力調整回路14の負極端子16Nに接続されている。スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、プライマリ巻線24が接続されている。
【0027】
第1セカンダリスイッチング回路30は、スイッチングアームw、スイッチングアームxおよび主機コンデンサ32を備えている。スイッチングアームwは、直列接続されたスイッチング素子S5およびS6を備え、スイッチングアームxは、直列接続されたスイッチング素子S7およびS8を備えている。スイッチングアームwおよびxは並列に接続されている。スイッチングアームwおよびxには、さらに、主機コンデンサ32が並列に接続されている。スイッチングアームw、xおよび主機コンデンサ32の上側の並列接続点は、主機電池34の正極端子に接続され、下側の並列接続点は、主機電池34の負極端子に接続されている。スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間には、第1セカンダリ巻線26が接続されている。
【0028】
第2セカンダリスイッチング回路36は、スイッチングアームy、スイッチングアームz、中間コンデンサ38および補機コンデンサ42を備えている。スイッチングアームyは、直列接続されたスイッチング素子S9およびS10を備え、スイッチングアームzは、直列接続されたスイッチング素子S11およびS12を備えている。スイッチングアームyおよびzは並列に接続されている。スイッチングアームyおよびzには、さらに、中間コンデンサ38が並列に接続されている。スイッチング素子S9およびS10の接続点と、スイッチング素子S11およびS12の接続点との間には、第2セカンダリ巻線28が接続されている。第2セカンダリ巻線28の中途点と、スイッチングアームy、zおよび中間コンデンサ38の下側の並列接続点との間には、補機コンデンサ42が接続されている。また、第2セカンダリ巻線28の中途点は、補機電池40の正極端子に接続され、スイッチングアームy、zおよび中間コンデンサ38の下側の並列接続点は、補機電池40の負極端子に接続されている。第2セカンダリ巻線28の中途点は、第2セカンダリ巻線28を形成する導線の中途の点をいう。中途点は、第2セカンダリ巻線28を形成する導線の中点に設けられるセンタータップであってもよい。
【0029】
各スイッチング素子S1~S12には、各スイッチング素子S1~S12の下端側にアノード端子を向けてダイオードが接続されている。各スイッチング素子S1~S12には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてよい。
【0030】
コントローラ100は、スイッチング素子S1~S12に対し、それぞれ、制御信号g1~g12を出力する。各スイッチング素子S1~S12は、制御信号がハイのときにオンとなり、ローのときにオフとなる。
【0031】
電動車両が停車しており交流電力源10を用いて主機電池34を充電するときは、電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18、第1セカンダリスイッチング回路30および第2セカンダリスイッチング回路36がスイッチング動作をする。電力調整回路14は、交流電力源10が出力する交流電力を直流電力に変換し、直流電圧をプライマリスイッチング回路18に出力する。
【0032】
スイッチングアームuが備えるスイッチング素子S1およびS2を制御する制御信号g1およびg2は、交互にハイおよびローを繰り返す。すなわち、制御信号g1がローからハイに切り換わると共に、制御信号g2はハイからローに切り換わり、制御信号g1がハイからローに切り換わると共に、制御信号g2はローからハイに切り換わる。これによって、スイッチング素子S1がオフからオンに切り換わると共に、スイッチング素子S2がオンからオフに切り換わる。そして、スイッチング素子S1がオンからオフに切り換わると共に、スイッチング素子S2がオフからオンに切り換わる。
【0033】
スイッチング素子S1およびS2と同様、制御信号g3およびg4によって、スイッチングアームvが備えるスイッチング素子S3およびS4も交互にオンオフする。制御信号g3およびg4は、それぞれ、制御信号g1およびg2に対し、位相が180°異なる。すなわち、スイッチングアームv(スイッチング素子S3およびS4)のスイッチングの位相は、スイッチングアームu(スイッチング素子S1およびS2)のスイッチングの位相に対し180°遅れている。これによって、プライマリ巻線24の両端には、電力調整回路14から出力された直流電圧に応じた波高値を有する交流電圧が現れる。
【0034】
第1セカンダリスイッチング回路30の動作について説明する。制御信号g5およびg6に従ってスイッチングアームwが備えるスイッチング素子S5およびS6は交互にオンオフする。制御信号g7およびg8に従ってスイッチングアームxが備えるスイッチング素子S7およびS8は交互にオンオフする。スイッチングアームwおよびxのスイッチングの位相差は180°である。これによって、第1セカンダリ巻線26の両端には、中間コンデンサ38の端子間電圧、すなわち主機電池34の出力電圧に応じた波高値を有する交流電圧が現れる。
【0035】
第2セカンダリスイッチング回路36の動作について説明する。制御信号g9およびg10に従ってスイッチングアームyが備えるスイッチング素子S9およびS10は交互にオンオフする。制御信号g11およびg12に従ってスイッチングアームzが備えるスイッチング素子S11およびS12は交互にオンオフする。スイッチングアームyおよびzのスイッチングの位相差は180°である。
【0036】
スイッチング素子S9およびS10がオンオフを繰り返す1周期を切り換わり周期として、切り換わり周期に対するスイッチング素子S10がオンになる時間の比率を、スイッチングアームyのデューティ比という。車載用電力変換システムでは、スイッチングアームu,v,w,x,yおよびzは、同一のデューティ比Dでスイッチングをする。
【0037】
第2セカンダリスイッチング回路36の動作によって、補機電池40および補機コンデンサ42の両端には、中間コンデンサ38の端子間電圧の(1-D)倍の電圧が現れる。すなわち、中間コンデンサ38の端子間電圧をVdc,buf、補機電池40および補機コンデンサ42の両端の電圧をVdc3として、Vdc3=(1-D)・Vdc,bufで表される電圧が補機電池40および補機コンデンサ42に印加される。
【0038】
交流電力源10から、電力調整回路14、プライマリスイッチング回路18および第1セカンダリスイッチング回路30を介して主機電池34に供給される主機電池供給電力Pdc2は、スイッチングアームuおよびvのスイッチングの位相に対する、スイッチングアームwおよびxのスイッチングの位相の遅れである位相差φ21を調整することで調整される。コントローラ100は、主機電力目標値Pdc2
*から、主機電池供給電力の測定値Pdc2を減算した主機電力誤差e1を比例積分した値に基づいて位相差φ21を求めてよい。主機電力目標値Pdc2
*は、主機電池供給電力Pdc2に対する目標値である。コントローラ100は、位相差φ21に基づいて制御信号g1~g8を生成し、スイッチング素子S1~S8をオンオフ制御する。
【0039】
なお、コントローラ100は、主機電池供給電力Pdc2を負にし、位相差φ21を負にすることで、主機電池34または負荷回路から第1セカンダリスイッチング回路30、プライマリスイッチング回路18および電力調整回路14を介して交流電力源10側に電力を伝送してもよい。
【0040】
第2セカンダリスイッチング回路36における中間コンデンサ38の電圧Vdc,bufは、スイッチングアームwおよびxのスイッチングの位相に対する、スイッチングアームyおよびzのスイッチングの位相の遅れである位相差φ32を調整することで調整される。コントローラ100は、中間電圧目標値Vdc,buf
*から、中間電圧の測定値Vdc,bufを減算した中間電圧誤差e2を比例積分した値に基づいて位相差φ32を求めてよい。中間電圧目標値Vdc,buf
*は、例えば、Vdc,buf
*=Vdc2/nとして決定してよい。ここでVdc2は、主機コンデンサ32の端子間電圧、すなわち、主機電池34の出力電圧である。nは、第2セカンダリ巻線28の巻き数に対する、第1セカンダリ巻線26の巻き数の比率(巻線比n)である。コントローラ100は、位相差φ32に基づいて制御信号g5~g12を生成し、スイッチング素子S5~S12をオンオフ制御する。
【0041】
中間コンデンサ38の電圧Vdc,bufは、スイッチングアームuおよびvのスイッチングの位相に対する、スイッチングアームyおよびzのスイッチングの位相の遅れである位相差φ31を調整することで調整されてもよい。この場合、コントローラ100は、中間電圧誤差e2を比例積分した値に基づいて位相差φ31を求めてよい。コントローラ100は、位相差φ31に基づいて制御信号g1~g4およびg9~g12を生成し、スイッチング素子S1~S4およびS9~12をオンオフ制御する。
【0042】
各スイッチングアームのデューティ比Dは、補機電池40の出力電圧の測定値Vdc3から補機電池電圧目標値Vdc3
*を減算した補機電池電圧誤差e3を比例積分した値、補機電池40の出力電圧の測定値Vdc3、および中間電圧の測定値Vdc,bufに基づいて求められる。すなわち、コントローラ100は、補機電池電圧誤差e3を比例積分した値に、1-Vdc3/Vdc,bufを加算した値に基づいて各スイッチングアームのデューティ比Dを求める。コントローラ100は、上記の各位相差に加えてデューティ比Dに基づいて制御信号g1~g12を生成し、スイッチング素子S1~S12をオンオフ制御する。
【0043】
電動車両の走行時には、電力調整回路14が交流電力源10から切り離され、電力調整回路14はスイッチング動作を停止する。交流電力源10を用いて主機電池34を充電するときと同様に、第1セカンダリスイッチング回路30および第2セカンダリスイッチング回路36がスイッチング動作し、主機電池34から補機電池40に電力が供給され、補機電池40が充電される。
【0044】
図2(a)には、スイッチング素子S6~S12のオンオフのタイミングが示されている。上段には第1セカンダリスイッチング回路30のスイッチングタイミングが示されている。すなわち、スイッチング素子S6およびS7の組と、スイッチング素子S5およびS8の組が交互にオンオフすることが上段に示されている。下段には第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチングタイミングが示されている。すなわち、スイッチング素子S10およびS11の組と、スイッチング素子S9およびS12の組が交互にオンオフすることが上段に示されている。
【0045】
図2(b)には、第1セカンダリ巻線26の端子間電圧V
wxおよび第2セカンダリ巻線28の端子間電圧V
yzのシミュレーション結果が示されている。横軸は時間を示し縦軸は電圧値を示す。端子間電圧V
wxは、スイッチング素子S7およびS8の接続点の電位を基準としたスイッチング素子S5およびS6の接続点の電圧である。端子間電圧V
wxは、スイッチング素子S11およびS12の接続点の電位を基準としたスイッチング素子S9およびS10の接続点の電圧である。
【0046】
図2(c)には、スイッチング素子S9およびスイッチング素子S9に並列接続されたダイオードに流れる電流i
SW9と、スイッチング素子S10およびスイッチング素子S10に並列接続されたダイオードに流れる電流i
SW10が示されている。横軸は時間を示し縦軸は電流値を示す。
【0047】
車載用電力変換システムにおいて、第1スイッチング回路としての第1セカンダリスイッチング回路30から、第2スイッチング回路としての第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される場合、車載用電力変換システム内には次のような電力変換装置が構成される。
【0048】
すなわち、1次巻線としての第1セカンダリ巻線26および2次巻線としての第2セカンダリ巻線28を備えるトランス22と、第1セカンダリ巻線26に接続された第1セカンダリスイッチング回路30と、第2セカンダリ巻線28に接続された第2セカンダリスイッチング回路36と、第2セカンダリスイッチング回路36に含まれる中間コンデンサ38とを備える電力変換装置が構成される。
【0049】
第2セカンダリスイッチング回路36は、第1スイッチングアームおよび第2スイッチングアームとして、スイッチングアームyおよびzを備えている。第1セカンダリスイッチング回路30は、第3スイッチングアームおよび第4スイッチングアームとして、スイッチングアームwおよびzを備えている。
【0050】
この電力変換装置では、第1セカンダリスイッチング回路30および第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチング動作によって、第1セカンダリスイッチング回路30からトランス22を介して第2セカンダリスイッチング回路36における中間コンデンサ38に電力が供給される。さらに、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチング動作によって、中間コンデンサ38から第2セカンダリ巻線28の中途点を介して補機電池40に電力が出力される。
【0051】
第1セカンダリスイッチング回路30のスイッチングタイミングに応じて第1セカンダリ巻線26に現れる電圧の位相と、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチングタイミングに応じて第2セカンダリ巻線28に現れる電圧の位相との差異に応じて、第1セカンダリスイッチング回路30から第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される
【0052】
このような構成によれば、主機コンデンサ32の端子間電圧Vdc2を巻線比nで除した電圧で、中間コンデンサ38が充電される。さらに、中間コンデンサ38の端子間電圧である中間電圧Vdc,bufをデューティ比Dで規定される昇圧比1/(1-D)で除した電圧が補機電池40および補機コンデンサ42に印加される。したがって、主機コンデンサ32の端子間電圧Vdc2が中間電圧Vdc,bufに降圧され、さらに、中間電圧Vdc,bufが補機電池40および補機コンデンサ42の両端の電圧Vdc3に降圧される。このような段階的な降圧によって、第2セカンダリ巻線28、スイッチング素子S9~S12に流れる電流が小さくなり、第2セカンダリ巻線28および第2セカンダリスイッチング回路36で消費される電力が抑制される。
【0053】
また、上述のようにnが予め定められているのではなく、デューティ比をD=0.4以上0.6以下、好ましくはD=0.5と定め、補機電池40および補機コンデンサ42の両端の電圧Vdc3が所望の値となるように巻線比nを設定することで、スイッチング素子S1~S12で発生するスイッチング損失が抑制される。
【0054】
なお、車載用電力変換システムにおいて、第1スイッチング回路としてのプライマリスイッチング回路18から、第2スイッチング回路としての第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される場合、車載用電力変換システム内には次のような電力変換装置が構成される。
【0055】
すなわち、1次巻線としてのプライマリ巻線24および2次巻線としての第2セカンダリ巻線28を備えるトランス22と、プライマリ巻線24に接続されたプライマリスイッチング回路18と、第2セカンダリ巻線28に接続された第2セカンダリスイッチング回路36と、第2セカンダリスイッチング回路36に含まれる中間コンデンサ38とを備える電力変換装置が構成される。
【0056】
第2セカンダリスイッチング回路36は、第1スイッチングアームおよび第2スイッチングアームとして、スイッチングアームyおよびzを備えている。プライマリスイッチング回路18は、第3スイッチングアームおよび第4スイッチングアームとして、スイッチングアームuおよびvを備えている。
【0057】
この電力変換装置では、プライマリスイッチング回路18および第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチング動作によって、プライマリスイッチング回路18からトランス22を介して第2セカンダリスイッチング回路36の中間コンデンサ38に電力が供給される。さらに、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチング動作によって、中間コンデンサ38から第2セカンダリ巻線28の中途点を介して補機電池40に電力が出力される。
【0058】
プライマリスイッチング回路18のスイッチングタイミングに応じてプライマリ巻線24に現れる電圧の位相と、第2セカンダリスイッチング回路36のスイッチングタイミングに応じて第2セカンダリ巻線28に現れる電圧の位相との差異に応じて、プライマリスイッチング回路18から第2セカンダリスイッチング回路36に電力が伝送される。
【0059】
この構成では、プライマリスイッチング回路18および第2セカンダリスイッチング回路36において、バッファコンデンサ20の端子間電圧Vdc1が中間電圧Vdc,bufに降圧され、中間電圧Vdc,bufが補機電池40および補機コンデンサ42の両端の電圧Vdc3に降圧される。このような段階的な降圧によって、第2セカンダリ巻線28、スイッチング素子S9~S12に流れる電流が小さくなり、第2セカンダリ巻線28および第2セカンダリスイッチング回路36で消費される電力が抑制される。
【0060】
図3には、本発明の実施形態に係る電力調整回路14の具体的な構成が示されている。電力調整回路14は、交流端子a、b、c、EMIフィルタ52、インダクタLα、Lβ、Lγ、スイッチングアームα、β、γ、出力コンデンサ56、正極端子16Pおよび負極端子16Nを備えている。スイッチングアームαは、直列に接続されたスイッチング素子Q1およびQ2を備えている。スイッチングアームβは、直列に接続されたスイッチング素子Q3およびQ4を備えている。スイッチングアームγは、直列に接続されたスイッチング素子Q5およびQ6を備えている。
【0061】
スイッチングアームα、β、γおよび出力コンデンサ56は並列に接続されている。スイッチングアームα、β、γおよび出力コンデンサ56の並列接続点の上端には正極端子16Pが接続され、下端には負極端子16Nが接続されている。
【0062】
交流端子aからインダクタLαの一端に至る経路、交流端子bからインダクタLβの一端に至る経路、および交流端子cからインダクタLγの一端に至る経路には、EMI(Electro Magnetic Interference)フィルタ52が挿入されている。インダクタLαの他端は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続点に接続されている。インダクタLβの他端はスイッチング素子Q3およびQ4の接続点に接続され、インダクタLγの他端はスイッチング素子Q5およびQ6の接続点に接続されている。
【0063】
電力調整回路14は、3相モードと単相モードのいずれかの動作モードで動作する。3相モードでは、3相交流電力源50のU相出力端子、V相出力端子およびW相出力端子が、それぞれ、交流端子a、bおよびcに接続される。
【0064】
スイッチングアームα、βおよびγはコントローラ100によって制御される。スイッチングアームα、βおよびγは、交流端子a、bおよびcに流れる電流の時間波形を、3相交流電力源50が出力する3相交流電圧の時間波形に近似させ、または一致させるように、交流端子a、bおよびcに流れる電流をスイッチングする。これによって、3相交流電力源50から電力調整回路14に入力される電力の力率が向上する。
【0065】
電力調整回路14は、力率を向上させる動作を実行しつつ、3相交流電力源50から出力される3相交流電力を直流電力に変換して出力コンデンサ56を充電し、直流電圧を正極端子16Pおよび負極端子16Nから出力する。
【0066】
単相モードでは、交流電力源10(単相交流電力源)の正相端子Lが交流端子aおよびbに接続され、逆相端子Nが交流端子cに接続される。スイッチングアームα、βおよびγは、交流端子aおよびbと、交流端子cに流れる電流の時間波形を、交流電力源10が出力する交流電圧の時間波形に近似させ、または一致させるように、交流端子aおよびbと交流端子cに流れる電流をスイッチングする。これによって、交流電力源10から電力調整回路14に入力される電力の力率が向上する。
【0067】
電力調整回路14は、力率を向上させる動作を実行しつつ、交流電力源10から出力される交流電力を直流電力に変換して出力コンデンサ56を充電し、直流電圧を正極端子16Pおよび負極端子16Nから出力する。
【0068】
図4には、3相モードにおけるEMIフィルタ52の構成が示されている。交流端子a,bおよびcから、インダクタLα、LβおよびLγに至るまでの3相の導線(U相線、V相線およびW相線から構成される3相線)には、2つのコモンモードチョークコイル60および62が挿入されている。3相交流電力源50と
図4の左側に示されたコモンモードチョークコイル60との間の3相線には、3つのY接続コンデンサC1~C3が接続されている。Y接続コンデンサC1、C2およびC3のそれぞれの一端は、U相線、V相線およびW相線に接続されている。Y接続コンデンサC1、C2およびC3のそれぞれの他端は、共通に接続されている。3つのY接続コンデンサC1~C3の容量は同一であってよい。
【0069】
左側に示されたコモンモードチョークコイル60と、右側に示されたコモンモードチョークコイル62との間の3相線の相間には、3つのY接続コンデンサCU、CVおよびCWが接続されている。Y接続コンデンサCU、CVおよびCWのそれぞれの一端は、U相線、V相線およびW相線に接続されている。Y接続コンデンサCU、CVおよびCWのそれぞれの他端は共通に接続された上で接地されている。
図4の右側に示されたコモンモードチョークコイル62と、インダクタLα、LβおよびLγとの間の3相線には、3つのY接続コンデンサC4~C6が接続されている。Y接続コンデンサC4、C5およびC6のそれぞれの一端は、U相線、V相線およびW相線に接続されている。Y接続コンデンサC4、C5およびC6のそれぞれの他端は、共通に接続されている。3つのY接続コンデンサC4~C6の容量は同一であってもよい。EMIフィルタ52によって3相線に発生するコモンモードノイズ、3相線の相間に発生するディファレンシャルモードノイズが抑制される。
【0070】
図5には、単相モードにおけるEMIフィルタ52の構成が示されている。交流端子aおよびbから、インダクタLαおよびLβに至るまでの2本の導線が、交流電力源10に対する一方の送電線となり、インダクタLγから交流端子cに至るまでの1本の導線が交流電力源10に対する他方の送電線となる。
【0071】
Y接続コンデンサCU、CVおよびCWの容量を適切に設定することで、各導線に現れるコモンモードノイズおよびディファレンシャルノイズが抑制される。Y接続コンデンサCU、CVおよびCWのうち少なくとも1つは、可変容量コンデンサであってもよい。
【0072】
このように電力調整回路14は、並列接続された第1スイッチングアーム、第2スイッチングアームおよび第3スイッチングアームとして、スイッチングアームα、βおよびγを備えている。各スイッチングアームは、直列接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子をそれぞれが含む。スイッチング素子Q1、Q3およびQ5が第1スイッチング素子に相当し、スイッチング素子Q2、Q4およびQ6が第2スイッチング素子に相当する。
【0073】
電力調整回路14は、スイッチングアームα、βおよびγのそれぞれにおける第1スイッチング素子(Q1,Q3,Q5)および第2スイッチング素子(Q2,Q4,Q6)の接続点に、インダクタLα、LβおよびLγを介して接続されたEMIフィルタ52と、各スイッチングアームの両端の並列接続点の間に接続された出力コンデンサ56とを備えている。
【0074】
EMIフィルタ52は、交流端子a(第1端子)からスイッチングアームαにおけるスイッチング素子Q1およびQ2の接続点に至る経路に一端が接続された第1コンデンサ(C1、CU、C4)と、交流端子b(第2端子)からスイッチングアームβにおけるスイッチング素子Q3およびQ4の接続点に至る経路に一端が接続された第2コンデンサ(C2、CV、C5)と、交流端子c(第3端子)からスイッチングアームγにおけるスイッチング素子Q5およびQ6の接続点に至る経路に一端が接続された第3コンデンサ(C3、CW、C6)とを備えている。第1コンデンサ、第2コンデンサおよび第3コンデンサのそれぞれの他端は共通に接続されている。さらに、コンデンサCU、CVおよびCWの他端は接地されている。
【0075】
スイッチングアームα、βおよびγは、交流端子a、bおよびcに3相交流電圧が印加される3相モード、または、交流端子aおよび交流端子bと、交流端子cとの間に単相交流電圧が印加される単相モードのいずれかで動作する。
【0076】
図6(a)には、応用例に係る電力変換システムが示されている。電力変換システムは、電池70-1~70-N、スイッチング回路72-1~72-N、着脱自在巻線74-1~74-Nおよびコア66を備えている。電池70-1~70-Nの各正極端子および各負極端子は、それぞれ、スイッチング回路72-1~72-Nに接続されている。電池70-1~70-Nのうちいずれかには負荷回路が接続されてもよい。着脱自在巻線74-1~74-Nの各両端は、それぞれ、スイッチング回路72-1~72-Nに接続されている。各着脱自在巻線74-1~74-Nはコア66に対して着脱自在であり、コア66に固定されているときは、他の着脱自在巻線に磁気的に結合する。
【0077】
スイッチング回路72-1~72-Nは、
図1に示された第1セカンダリスイッチング回路30、または、第2セカンダリスイッチング回路36のいずれかと同様の構成を有してよい。
図6(a)に示されているスイッチング回路72-3を除くスイッチング回路は、
図6(b)に示されているように、第1セカンダリスイッチング回路30と同一の構成を有している。また、スイッチング回路72-3は、
図6(c)に示されているように、第2セカンダリスイッチング回路36と同一の構成を有している。
【0078】
第1セカンダリスイッチング回路30と同一の構成を有するスイッチング回路については、第1セカンダリスイッチング回路30において主機電池34が接続されていた箇所に相当する箇所に電池が接続される。第2セカンダリスイッチング回路36と同一の構成を有するスイッチング回路については、第2セカンダリスイッチング回路36において補機電池40が接続されていた箇所に相当する箇所に電池が接続される。
【0079】
電力変換システムでは、ある1つのスイッチング回路のスイッチングの位相と、他のスイッチング回路のスイッチングの位相との差異に応じて、その1つのスイッチング回路と他のスイッチング回路との間で、それぞれに接続された着脱自在巻線を介して電力が授受される。すなわち、スイッチング回路72-1~72-Nの相互のスイッチング位相差に応じて、スイッチング回路72-1~72-Nの相互間で電力が授受される。
【0080】
このような構成では、着脱自在巻線がコア66から着脱自在である。そのため、用いられるスイッチング回路の数を容易に増減することができる。また、第2セカンダリスイッチング回路36と同一の回路構成を採用することで、巻線およびスイッチング回路における電力損失が抑制される。
【符号の説明】
【0081】
10 交流電力源、12-1,12-2,a,b,c 交流端子、14 電力調整回路、16P 正極端子、16N 負極端子、18 プライマリスイッチング回路、20 バッファコンデンサ、22 トランス、24 プライマリ巻線、26 第1セカンダリ巻線、28 第2セカンダリ巻線、30 第1セカンダリスイッチング回路、32 主機コンデンサ、34 主機電池、36 第2セカンダリスイッチング回路、38 中間コンデンサ、40 補機電池、42 補機コンデンサ、50 3相交流電力源、52 EMIフィルタ、56 出力コンデンサ、60,62 コモンモードチョークコイル、70-1~70-N 電池、72-1~72-N スイッチング回路、74-1~74-N 着脱自在巻線、100 コントローラ、S1~S12,Q1~Q6 スイッチング素子、u,v,w,x,y,z,α,β,γ スイッチングアーム。