(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ガス分析用導管
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240220BHJP
F16L 11/20 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N1/00 101R
F16L11/20
(21)【出願番号】P 2022178729
(22)【出願日】2022-11-08
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522437393
【氏名又は名称】新洋酸素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】大竹 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康行
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-034249(JP,A)
【文献】特開昭52-009672(JP,A)
【文献】実開平01-180744(JP,U)
【文献】特開2016-080669(JP,A)
【文献】特開昭58-070160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
F16L 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管であって、
樹脂製の第1導管と、樹脂製の第2導管とを備え、前記第1導管の内側に前記第2導管が位置する二重管構造を有し、
前記第1導管の基端が、前記供給口と連通し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の内側に開口し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の内部であって前記ガス分析装置側に位置し、
前記第2導管の先端が、前記ガス分析装置と連通し、
前記第1導管の先端が、前記第2導管の外側に開口
し、
前記第1導管及び前記第2導管は可撓性を有し、これらの導管のうち少なくとも一方は、前記分析対象となるガスの不純物に対してガスバリア性を有し、
前記第1導管及び前記第2導管を流通するガスが同一組成とされたことを特徴とする、ガス分析用導管。
【請求項2】
前記第1導管の基端が、前記ガス分析用導管の導入口であり、
前記第2導管の先端が、前記ガス分析用導管の導出口である、請求項1に記載のガス分析用導管。
【請求項3】
前記第1導管の内側の流路のうち、
前記第2導管の内側が分析用ガスの流路であり、
前記第1導管と前記第2導管との間の空間が、シールガスの流路である、請求項1に記載のガス分析用導管。
【請求項4】
前記分析用ガスと前記シールガスとの流れが、同一方向である、請求項3に記載のガス分析用導管。
【請求項5】
前記第1導管と前記第2導管との間の空間に、前記第1導管と前記第2導管とを離間した状態で前記第1導管内の前記第2導管を支持する、位置決め部材を有する、請求項1に記載のガス分析用導管。
【請求項6】
前記位置決め部材が、前記第2導管の基端寄りに位置する、請求項5に記載のガス分析用導管。
【請求項7】
前記第1導管及び前記第2導管の少なくとも一方は、水分(H
2O)の透過速度が50[mg/m/day]以下の樹脂製のチューブを用いる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス分析用導管。
【請求項8】
前記第1導管及び前記第2導管の少なくとも一方は、ヘリウム(He)ガス透過量が、6×10
-7[Pa・m
3/sec/100mm]以下である樹脂製のチューブを用いる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス分析用導管。
【請求項9】
分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管であって、
樹脂製の第1導管と、樹脂製の第2導管と、樹脂製の第3導管とを備え、前記第1導管の内側に前記第2導管が位置し、前記第2導管の内側に前記第3導管が位置する三重管構造を有し、
前記第1導管の基端が、前記供給口と連通し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の内側に開口し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の内部であって前記ガス分析装置側に位置し、
前記第3導管の基端が、前記第2導管の内側に開口し、
前記第3導管の先端が、前記ガス分析装置と連通し、
前記第2導管の先端が、前記第3導管の外側に開口し、
前記第1導管の先端が、前記第2導管の外側に開口
し、
前記第1導管、前記第2導管及び前記第3導管は可撓性を有し、これらの導管のうち少なくとも一つは、前記分析対象となるガスの不純物に対してガスバリア性を有し、
前記第1導管及び前記第2導管を流通するガスが同一組成とされたことを特徴とする、ガス分析用導管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析用導管に関する。
【背景技術】
【0002】
液化窒素等の液化ガスは、液化ガスの充填設備からタンクローリーに充填された後、消費先へ運搬される。具体的には、液化ガスをタンクローリーへ充填し、次いで、タンクローリー内の液化ガスをガス分析計に供給して、液化ガス中の不純物(液化窒素の場合は、水分と酸素分)の濃度を測定する。そして、液化ガス中の不純物の濃度が規定値以内であることを確認した後、製品ガスとして出荷する。従来、タンクローリーからガス分析計にガスを供給する際、高純度ガスの分析に適したステンレス鋼(SUS)等の金属製のガス導管を使用していた。
【0003】
ここで、ガス分析に用いるガス導管(ガス分析用導管)は、基端がガス分析計に接続される。そして、液化ガスをタンクローリーへ充填しない時には、ガス分析用導管の先端は、充填設備側へ接続されており、ガス分析用導管内のガス流路が気化した液化ガスによって常時パージされる。一方、タンクローリー内の液化ガス(製品液化ガス)を分析する際には、ガス分析用導管の先端は充填設備側から取り外されて、タンクローリー側へ接続される。これにより、タンクローリー内に充填された液化ガスがガス導管を介してガス分析計に導入される。
【0004】
ところで、ガス分析計に接続されるガス導管は、タンクローリー側の接続場所が車両によって異なる場合にも対応可能なように、ある程度の長さを要する。また、ガス分析をしない間、充填設備側に接続する際にガス分析用導管を移動させて収容するため、ガス分析用導管にはフレキシブル性(可撓性)が求められる。
【0005】
しかしながら、従来の金属製のガス分析用導管では、金属の特性上、収納した際の形状が残ってしまうために取り扱いが困難あり、タンクローリーへの接続場所への位置決めがしにくいといった課題があった。また、金属製のガス分析用導管は、硬いために接触した際、タンクローリー側の接続部を破損させてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、特許文献1には、樹脂製のガス分析用導管が開示されている。特許文献1に開示されたガス分析用導管は、樹脂製の内管と外管とからなる二重管構造を有しており、内管の基端がガス供給側と接続され、外管の先端がガス分析計側と接続されている。そして、内管の先端は外管の内側に開口しており、内管の先端から導出される分析対象ガスの一部が外管と内管との間の空間にシールガスとして供給され、残部がガス分析計に分析用ガスとして供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたガス分析計用導管では、ガス供給側ではなく、ガス分析計側でシールガスと分析用ガスとに別れるが、それぞれの流量の制御が困難であるという課題があった。また、内管を流れるガスの流れ方向と、外管と内管との間の空間にシールガスとして流れるガスの流れ方向とが逆向きとなるため、シールガスの供給が不十分となり、高純度ガスの成分分析に適さないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、可撓性に優れ、取り扱いが容易であり、高純度ガスの成分分析に適用可能なガス分析用導管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管であって、
樹脂製の第1導管と、樹脂製の第2導管とを備え、前記第1導管の内側に前記第2導管が位置する二重管構造を有し、
前記第1導管の基端が、前記供給口と連通し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の基端よりも前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第1導管の内側に開口し、
前記第2導管の先端が、前記ガス分析装置と連通し、
前記第1導管の先端が、前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第2導管の外側に開口する、ガス分析用導管。
[2] 前記第1導管の基端が、前記ガス分析用導管の導入口であり、
前記第2導管の先端が、前記ガス分析用導管の導出口である、[1]に記載のガス分析用導管。
[3] 前記第1導管の内側の流路のうち、
前記第2導管の内側が分析用ガスの流路であり、
前記第1導管と前記第2導管との間の空間が、シールガスの流路である、[1]又は[3]に記載のガス分析用導管。
[4] 前記分析用ガスと前記シールガスとの流れが、同一方向である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のガス分析用導管。
[5] 前記第1導管と前記第2導管との間の空間に、前記第1導管と前記第2導管とを離間した状態で前記第1導管内の前記第2導管を支持する、位置決め部材を有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載のガス分析用導管。
[6] 前記位置決め部材が、前記第2導管の基端寄りに位置する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のガス分析用導管。
[7] 前記第1導管及び前記第2導管の少なくとも一方は、水分(H2O)の透過速度が50[mg/m/day]以下の樹脂製のチューブを用いる、[1]乃至[6]のいずれかに記載のガス分析用導管。
[8] 前記第1導管及び前記第2導管の少なくとも一方は、ヘリウム(He)ガス透過量が、6×10-7[Pa・m3/sec/100mm]以下である樹脂製のチューブを用いる、[1]乃至[7]のいずれかに記載のガス分析用導管。
[9] 分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管であって、
樹脂製の第1導管と、樹脂製の第2導管と、樹脂製の第3導管とを備え、前記第1導管の内側に前記第2導管が位置し、前記第2導管の内側に前記第3導管が位置する三重管構造を有し、
前記第1導管の基端が、前記供給口と連通し、
前記第2導管の基端が、前記第1導管の基端よりも前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第1導管の内側に開口し、
前記第3導管の基端が、前記第1導管の基端よりも前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第2導管の内側に開口し、
前記第3導管の先端が、前記ガス分析装置と連通し、
前記第2導管の先端が、前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第3導管の外側に開口し、
前記第1導管の先端が、前記ガス分析装置寄りの位置で、前記第2導管の外側に開口する、ガス分析用導管。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス分析用導管は、可撓性に優れ、取り扱いが容易であり、高純度ガスの成分分析に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態であるガス分析用導管の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1中に示すA-A’線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるガス分析用導管の使用態様の一例を説明する模式図である。
【
図4】本発明の他の実施形態であるガス分析用導管の構成を示す断面図である。
【
図5】
図4中に示すB-B’線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態であるガス分析用導管の構成について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<ガス分析用導管>
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図3に示すガス分析用導管1について説明する。ここで、
図1は、ガス分析用導管1の構成の一例を示す断面図である。
図2は、
図1中に示すA-A’線に沿った断面図である。
図3は、ガス分析用導管1の使用態様の一例を説明する模式図である。
【0015】
本実施形態のガス分析用導管1は、
図1に示すように、樹脂製の第1導管2と、樹脂製の第2導管3とを備え、第1導管2の内側の空間に第2導管3が同軸となるように位置する二重管構造を有している。本実施形態のガス分析用導管1は、分析対象となるガスの供給口と、ガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管である。具体的には、ガス分析用導管1の長さとしては、1~15mとすることができ、5~10mとすることが好ましい。
【0016】
第1導管2は、
図1及び
図2に示すように、ガス分析用導管1の最表面に位置し、外層を構成する樹脂製のチューブである。
【0017】
第1導管2の長さは、分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間をつなぐことが可能であれば、特に限定されない。
【0018】
第1導管2の外径、内径及び厚さ(肉厚)は、ガス分析用導管1が十分な可撓性を発揮するために必要な機械特性(曲げ強度、伸縮性など)を奏し、分析対象となるガスにとって測定不純物となる大気(空気)中に含まれる成分(例えば、水、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン等)に対してガスバリア性を発揮するとともに、内側に第2導管3を挿通できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0019】
具体的には、第1導管2の外径としては、5~15mmとすることができ、8~12mmとすることが好ましい。ここで、第1導管2の外径を5mm以上とすることで、第1導管2の内側に第2導管3を挿通させる空間を十分に確保することができる。一方、第1導管2の外径を15mm以下とすることで、十分な可撓性を発揮するために必要な機械特性(曲げ強度、伸縮性など)を維持することができる。
【0020】
また、第1導管2の内径としては、3~12mmとすることができ、6~10mmとすることが好ましい。ここで、第1導管2の内径を3mm以上とすることで、第1導管2の内側に第2導管3を挿通させる空間を十分に確保することができる。一方、第1導管2の内径を12mm以下とすることで、流路断面積を確保しつつ、分析に使用するガス量を低減することができる。
【0021】
また、第1導管2の厚さ(肉厚)としては、0.3~3mmとすることができ、0.5~1.5mmとすることが好ましい。ここで、第1導管2の厚さを0.3mm以上とすることで、分析対象となるガスにとって測定不純物となる大気中に含まれる成分に対してガスバリア性を発揮することができる。一方、第1導管2の厚さを3mm以下とすることで、十分な可撓性を発揮するために必要な機械特性(曲げ強度、伸縮性など)を発揮することができる。
【0022】
なお、第1導管2としては、入手の容易性の観点から、外径:10mm、内径:8mm、厚さ(肉厚):1mmの樹脂チューブを用いることがより好ましい。
【0023】
第1導管2を構成する樹脂チューブの材質は、特に限定されるものではなく、分析対象となるガスの種類によって適宜選択することができる。例えば、分析対象となるガスが窒素である場合、樹脂チューブの材質として、水分(H2O)の透過速度が50[mg/m/day]以下の水分バリア性を有する樹脂を用いることが好ましい。なお、水分(H2O)の透過速度は、等圧法、差圧法といった一般的な測定方法によって、測定することができる。
【0024】
水分バリア性を有する樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ペルフルオロエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。これらの中でも、第1導管2としては、水分遮断の観点から、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)製の樹脂チューブを用いることが好ましい。
【0025】
第2導管3は、
図1及び
図2に示すように、第1導管2の内側の空間に位置し、第1導管2と同軸となるように配置された内層を構成する樹脂製のチューブである。
【0026】
第2導管3の長さは、分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間をつなぐことが可能であれば、特に限定されない。
【0027】
第2導管3の外径、内径及び厚さ(肉厚)は、ガス分析用導管1が十分な可撓性を発揮するために必要な機械特性(曲げ強度、伸縮性など)を奏し、分析対象となるガスにとって測定不純物となる大気(空気)中に含まれる成分(例えば、水、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン等)に対してガスバリア性を発揮するとともに、内側の空間に分析対象となるガスを十分な流量で流通させることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0028】
具体的には、第2導管3の外径としては、1~11mmとすることができ、4~8mmとすることが好ましい。ここで、第2導管3の外径を1mm以上とすることで、第2導管3の内側に分析対象となるガスの流路を十分に確保することができる。一方、第2導管3の外径を11mm以下とすることで、第1導管2の内側に挿通することができる。
【0029】
また、第2導管3の内径としては、0.5~8mmとすることができ、2~6mmとすることが好ましい。ここで、第2導管3の内径を0.5mm以上とすることで、第2導管3の内側に分析対象となるガスの流路を十分に確保することができる。一方、第2導管3の内径を8mm以下とすることで、流路断面積を確保しつつ、分析に使用するガス量を低減することができる。
【0030】
また、第2導管3の厚さ(肉厚)としては、0.3~3mmとすることができ、0.5~1.5mmとすることが好ましい。ここで、第2導管3の厚さを0.3mm以上とすることで、分析対象となるガスにとって測定不純物となる大気中に含まれる成分に対してガスバリア性を発揮することができる。一方、第2導管3の厚さを3mm以下とすることで、十分な可撓性を発揮するために必要な機械特性(曲げ強度、伸縮性など)を発揮することができる。
【0031】
なお、第2導管3としては、入手の容易性の観点から、外径:6mm、内径:4mm、厚さ(肉厚):1mmの樹脂チューブを用いることがより好ましい。
【0032】
第2導管3を構成する樹脂チューブの材質は、特に限定されるものではなく、分析対象となるガスの種類によって適宜選択することができる。例えば、分析対象となるガスが窒素である場合、樹脂チューブの材質として、ヘリウム(He)のガス透過量が、6×10-7[Pa・m3/sec/100mm]以下の酸素バリア性を有する樹脂を用いることが好ましい。なお、ヘリウム(He)の透過量は、等圧法、差圧法といった一般的な測定方法によって、測定することができる。
【0033】
ところで、第2導管3の内側を流れる分析対象となるガスに含まれる不純物としては、酸素等の大気の主成分、大気中に微量に存在する成分(例えば、二酸化炭素等)及びタンクローリー等が設置されている場所に起因して大気に存在する成分が主なものである。また、ガス分析の際、それらの不純物の種類とその濃度は変化する可能性がある。
【0034】
そこで、本願発明者らは、本発明にかかる構成の分析用導管への不純物の透過率については、分子径が比較的小さく、漏洩試験にも用いられるヘリウムの透過率で特定すれば、不純物の種類に依らず、本発明の課題を達成することを見出した。
【0035】
したがって、上述したように、第2導管3の酸素バリア性の特定には、第2導管3のヘリウム(He)ガス透過量を用いることができる。
【0036】
酸素バリア性を有する樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(EPFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ペルフルオロエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。これらの中でも、第2導管3としては、ガス遮断の観点から、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(EPFE)製の樹脂チューブを用いることが好ましい。
【0037】
本実施形態のガス分析用導管1は、
図1及び
図3に示すように、ガスの流れ方向における基端1Aにおいて、分析対象となるガスの供給口(具体的には、例えば、
図3中に示すタンクローリーTの接続口T
0)と接続される。ガス分析用導管1の基端1Aには、図示略のガス継手が設けられていてもよい。
【0038】
これにより、第1導管2の基端2aが、ガス分析用導管1の基端1Aに位置するガス継手を介してガスの供給口と連通され、分析対象となるガスが第1導管2の内側に導入される。すなわち、本実施形態のガス分析用導管1は、第1導管2の基端2aが、分析対象となるガスの導入口である。
【0039】
また、
図1に示すように、ガス分析用導管1は、基端1A寄りの位置において、第2導管3の基端3aが、第1導管2の基端2aよりも第1導管2の内側に入った位置(すなわち、ガス分析装置寄りの位置)で、第1導管2の内側に開口する。
【0040】
本実施形態のガス分析用導管1によれば、
図2に示すように、第2導管3は、第1導管2の内側の空間に、第1導管2と同軸となるように配置される。これにより、ガス分析用導管1の基端1Aにおいて、第2導管3の内側に導入された分析対象となるガスの流路は、第2導管3の内側の空間3Aと、第1導管2と第2導管3との間の空間2Aとに分岐する。
【0041】
ここで、ガス分析用導管1において、第1導管2と第2導管3とが同軸である場合、第1導管2の内周面と第2導管3の外周面との間の距離Lは、以下の式Aのように算出される。
(距離L)=(第1導管2の内径-第2導管3の外径)÷2 ・・・式A
【0042】
距離Lは、特に限定されるものではなく、第1導管2と第2導管3との間の空間2Aに流通させるガス流量に応じて適宜選択することができる。距離Lとしては、0.1~2mmとすることができ、0.5~1.5mmとすることが好ましい。ここで、距離Lを0.1mm以上とすることで、空間3Aの流路断面積を十分に確保することができる。一方、距離Lを2mm以下とすることで、流路に流れるガス量を低減することができる。
【0043】
なお、本実施形態のガス分析用導管1によれば、第1導管2の内周面と第2導管3の外周面との間の距離Lは、周方向において均一であることが好ましい。このため、第1導管2と第2導管3との間の空間2Aには、複数の位置決め部材5が、第2導管3の外周面の周方向に沿って互いに間隔を空けて配置されていることが好ましい。これにより、第1導管2と第2導管3とを距離Lだけ離間した状態で、第1導管2内に第2導管3を支持することができる。すなわち、ガス分析用導管1では、第1導管2の内側の空間に、第1導管2と同軸となるように第2導管3を配置することができる。
【0044】
位置決め部材5は、ガス分析用導管1の長さ方向(軸方向)において、第1導管2と第2導管3との間の空間2Aの入り口側、すなわち、第2導管3の基端3a寄りに位置することが好ましい。これにより、
図2に示すように、第1導管2内において、空間2Aの開口(ガス導入口)と、空間3Aの開口(ガス導入口)とを十分に確保することができる。なお、位置決め部材5は、第2導管3の外周面において、第2導管3の長さ方向の全体にわたって、連続的又は間欠的に設けられていてもよい。
【0045】
位置決め部材5は、第1導管2と第2導管3とを離間した状態で第1導管2内に第2導管3を支持できるものであって、分析対象となるガスによって腐食しない材質であれば、特に限定されない。位置決め部材5としては、例えば、距離Lを外径寸法とする金属柱を適用することができる。また、位置決め部材5の数は、3本以上6本以下が好ましく、3本又は4本がより好ましい。
【0046】
本実施形態のガス分析用導管1は、
図1及び
図3に示すように、ガスの流れ方向における先端1Bにおいて、ガス分析装置(例えば、
図3中に示す充填設備Sを介してガス分析計S1)と接続される。
具体的には、ガス分析用導管1の先端1Bには、第2導管3の先端3bと、第1導管2の先端2bとが位置する。第2導管3の先端3b及び第1導管2の先端2bには、図示略のガス継手がそれぞれ設けられていてもよい。これにより、空間2Aを流通するガスと、空間3Aを流通するガスとを別々に導出することができる。
【0047】
第2導管3の先端3bは、図示略のガス継手を介してガス分析装置のガス分析計S1と連通され、第2導管3の内側の空間3Aから導出されるガスを分析用ガスとしてガス分析計S1に供給する。すなわち、本実施形態のガス分析用導管1は、第2導管3の内側の空間3Aが分析用ガスの流路であり、第2導管3の先端3bが分析用ガスの導出口である。
【0048】
また、
図1に示すように、ガス分析用導管1は、先端1Bにおいて、第1導管2の先端2bが、ガス分析装置寄りの位置で、第2導管3の外側に開口しており、空間2Aから導出されるガスをシールガスとして導出する。すなわち、本実施形態のガス分析用導管1は、第1導管2と第2導管3との間の空間2Aがシールガスの流路であり、第1導管2の先端2bがバージガスの導出口である。なお、本実施形態のガス分析用導管1では、第1導管2の先端2bが流量計S2と接続される。
【0049】
本実施形態のガス分析用導管1によれば、
図1に示すように、分析対象となるガスの一部を分析用ガス、残部をシールガスとし、分析用ガスの流路となる第2導管3の外側の空間2Aにシールガスを流通することができる。このため、第1導管2及び第2導管3として用いる樹脂製のチューブが、分析対象となるガスにとって測定不純物となる全ての成分に対してガスバリア性が十分でなくとも、本実施形態のガス分析用導管1を高純度ガスの成分分析に適用することができる。
【0050】
また、本実施形態のガス分析用導管1によれば、基端1A側において、第1導管2内の流路が分析用ガスの流路(空間3A)とシールガスの流路(空間2A)に分岐するため、分析用ガスと前記シールガスとの流れが同一方向となる。したがって、第1導管2内に分析対象となるガスを供給するだけで、付加的な設備を設けることなく、シールガスの流路(空間2A)にシールガスを流通させることができる。
【0051】
ここで、分析用ガスとシールガスとの流量比は、それぞれの流路断面積の比で調整することができる。分析用ガスの流路断面積SA、シールガスの流路断面積SBは、それぞれ以下の式B、式Cで算出される。
(流路断面積SA)=3.14×(第2導管3の内径/2)2 ・・・式B
(流路断面積SB)=3.14×[(第1流路2の内径/2)2-(第2流路3の外径/2)2] ・・・式C
【0052】
分析用ガスとシールガスとの流量比は、特に限定されるものではなく、樹脂製のチューブのガスバリア性や不純物の除去し易さに応じて適宜選択することができる。流量比(分析用ガス:シールガス)としては、2:1~2:5とすることができ、2:1~2:2とすることが好ましい。ここで、分析用ガスに対するシールガスの流量比を大きくすると、より高純度の製品ガスの分析が可能となる。一方、比較的純度の低い製品ガスの分析においては、分析用ガスに対するシールガスの流量比を小さくしても分析が可能であり、分析に必要なシールガスを節約することができる。
【0053】
本実施形態のガス分析用導管1は、
図3に示すように、先端1Bにおいて第2導管3の基端3bがガス分析計S1に接続される。そして、分析対象となるガスをタンクローリーTへ充填しない時には、ガス分析用導管1の基端1Aは、分析設備S側へ接続されており、ガス分析用導管1内のガス流路が分析対象となるガスによって常時パージされる。一方、タンクローリーT内の液化ガス(製品ガス)を分析する際には、ガス分析用導管1の基端1Aを充填設備S側から取り外して、タンクローリーT側へ接続する。これにより、タンクローリーT内に充填された液化ガスをガス分析用導管1の第2導管3を介してガス分析計S1に導入して、液化ガス(製品ガス)の成分分析をすることができる。
【0054】
ところで、ガス分析用導管には、分析対象となるガスとして、液化ガスの一部を気化させた低温のガスが導入される。したがって、ガス分析用導管の外周(最表面)では、ガス分析の度に着氷と解氷とが繰り返される。また、ガス分析用導管は、屋外で使用されることが多いため、ガス分析用導管自体が雨や雪に曝される場合が多い。このように、ガス分析用導管は、広範囲の濃度の水分(水)に曝される環境(水中、濃度100%、乾燥した大気等)で用いられることが一般的である。
【0055】
そこで、本実施形態のガス分析用導管1によれば、外層となる第1導管2として、水分バリア性を有する樹脂導管を用いるため、シールガスの流路(空間2A)内のガス組成が安定し、より安定したガス分析が可能となる。
【0056】
また、本実施形態のガス分析用導管1によれば、水分バリア性を有する外層(第1導管2)により、シールガスの流路(空間2A)への水分の混入が最小限に抑えることができる。これにより、本実施形態のガス分析用導管1では、内層(第2導管3)として、主に大気中に一定量存在する不純物ガスのバリア性に着目した樹脂導管を用いることができる。
【0057】
すなわち、使用される環境を考慮して、外層には水分バリア性を有する樹脂導管(第1導管2)、内層には大気中に存在する不純物ガスのバリア性を有する樹脂導管(第2導管3)といった、性質の異なる樹脂配管を用いることで、本発明の課題をより満足するガス分析用導管1が得られる。
【0058】
一方、本実施形態のガス分析用導管1を用いて分析対象となるガスの成分を分析する際、分析条件を一定とするためには、シールガスの流路(空間2A)におけるシールガスの流量を一定とする必要がある。
【0059】
このため、上述した特許文献1に開示された、分析ガスとシールガスとが向流(カウンターフロー)となる従来のガス分析用導管では、特許文献1の
図1中に示される排気孔17aの部分にシールガスの流量計を設置する必要があった。その場合、分析対象となるガスの分析設備での操作と、シールガス流量の確認とが別の場所となり、分析業務の効率に改善の余地があった。
【0060】
これに対して、本実施形態のガス分析用導管1によれば、第1導管2の先端2bに流量計を設置できるため、分析設備Sでの操作と同時に、その場でシールガスの流量を確認できる。すなわち、シールガス流量の確認のための移動が不要となり、分析業務の効率を改善できる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のガス分析用導管1によれば、樹脂製の第1導管2及び第2導管3からなる二重管構造であるため、可撓性に優れており、比較的長い場合であっても丸めて容易に収納することができ、折り曲げあとも残らないため、取り扱いが容易である。また、本実施形態のガス分析用導管1によれば、樹脂製であるため、充填設備SやタンクローリーTと接触した場合であってもこれらを傷つけることがない。
【0062】
また、本実施形態のガス分析用導管1によれば、分析対象となるガスの一部を分析用ガス、残部をシールガスとし、分析用ガスの流路となる第2導管3の外側の空間3Aにシールガスを流通することができるため、高純度ガスの成分分析に適用することができる。
【0063】
例えば、分析対象となるガスが高純度液化窒素である場合、外層となる第1導管2として水分バリア性が高い樹脂チューブを用い、内層となる第2導管3として酸素バリア性が高い樹脂チューブを用いることで、大気中からの不純物の影響を受けずにより高精度の成分分析をすることができる。
【0064】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態のガス分析用導管1では、分析対象となるガスが高純度液化窒素である場合を一例して説明したが、これに限定されない。本発明のガス分析用導管によれば、設置される環境の雰囲気から樹脂製の第1導管2及び第2導管を透過して分析用ガス中に不純物が侵入し、測定結果に影響を及ぼす可能性がある全てのガス分析に適用できる。具体的には、分析対象となるガスにおける複数の不純物濃度に応じ、不純物ごとの透過特性(ガスバリア性)の異なる樹脂製の外管と内管の種類を選択することにより、不純物の透過の影響を効果的に減ずることができる。さらには、主に空気中に存在する不純物の微量な侵入を防ぐ必要のある、高純度が要求される産業用、医療用、半導体用の製品ガスの分析に有用である。
【0065】
また、上述した実施形態のガス分析用導管1では、分析対象となるガスが高純度液化窒素である場合、外層となる第1導管2が水分バリア性を有し、内層となる第2導管3が酸素バリア性を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、外層となる第1導管2が酸素バリア性を有し、内層となる第2導管3が水分バリア性を有する構成であってもよい。また、第1導管2及び第2導管3の両方が水分バリア性又は酸素バリア性を有する構成としてもよい。また、第1導管2及び第2導管3の一方がガスバリア性を有する構成であってもよい。さらに、第1導管2及び第2導管3の一方が、ガスバリア性以外の他の機能(機械特性、対候性、耐摩耗性等)を奏する構成であってもよい。
【0066】
また、上述した実施形態のガス分析用導管1によれば、第1導管2及び第2導管を備えた二重管構造を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、
図4及び
図5に示すように、外層となる樹脂製の第1導管22と、中間層となる樹脂製の第2導管23と、内層となる樹脂製の第3導管24とを備え、第1導管22の内側に第2導管23が位置し、第2導管23の内側に第3導管24が位置する三重管構造を有する、ガス分析用導管21としてもよい。このガス分析用導管21は、上述した実施形態のガス分析用導管1と同様に、分析対象となるガスの供給口とガス分析装置との間に位置するガス分析用のガス導管として用いることができる。
【0067】
ガス分析用導管21は、
図4及び
図5に示すように、基端側において、外層となる第1導管22の基端が分析対象となるガスの供給口と連通し、中間層となる第2導管23の基端が、第1導管22の基端よりも内側に入った位置で第1導管22の内側に開口し、第3導管24の基端が、第1導管22の基端よりも内側に入った位置で第2導管23の内側に開口する。
【0068】
そして、ガス分析用導管21は、先端側において、内層となる第3導管24の先端がガス分析装置と連通し、内層となる第2導管23の先端が第3導管24の外側に開口し、外層となる第1導管22の先端が第2導管23の外側に開口する。
【0069】
これにより、ガス分析用導管21によれば、内層となる第3導管24の内側の空間24Aが分析用ガスの流路であり、この分析用ガスの流路の外側に位置する、第2導管23と第3導管24との間の空間23A、及び第1導管22と第2導管23との間の空間22Aがシールガス流路となる。
【0070】
ガス分析用導管21によれば、超高純度ガス中の不純物分析において、市場に存在する分析計の測定限界に近い場合、すなわち、外部からのわずかな不純物の透過も許容できない場合であっても、分析用ガスの流路の外側にシールガスの流路を2重に備える三重管構造であるため、ガス分析用導管のガス透過の影響を限りなく減らすことができる。
【0071】
さらに、ガス分析用導管21によれば、上述した実施形態のガス分析用導管1と同様に、外層、中間層、内層を構成する樹脂チューブのガスバリア性を選択することで、各種の超高純度ガス中の不純物分析に適用することができる。
【0072】
三重管構造のガス分析用導管21としては、入手の容易性の観点から、外層となる第1導管22として、外径:14mm、内径:12mm、厚さ(肉厚):1mmの樹脂チューブ、中間層となる第2導管23として、外径:10mm、内径:8mm、厚さ(肉厚):1mmの樹脂チューブ、内層となる第3導管24として、外径:6mm、内径:4mm、厚さ(肉厚):1mmの樹脂チューブをそれぞれ用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0073】
1,21 ガス分析用導管
1A 基端
1B 先端
2 第1導管
2A 空間
2a 基端
2b 先端
3…第2導管
3A 空間
3a 基端
3b 先端
5…位置決め部材
【要約】
【課題】可撓性に優れ、取り扱いが容易であり、高純度ガスの成分分析に適用可能なガス分析用導管を提供する。
【解決手段】樹脂製の第1導管2と樹脂製の第2導管3とを備え、第1導管2の内側に第2導管3が位置する二重管構造を有し、第1導管2の基端2aが供給口と連通し、第2導管3の基端3aが第1導管2の内側に開口し、第2導管3の先端3bがガス分析装置と連通し、第1導管2の先端2bが第2導管3の外側に開口するガス分析用導管1を選択する。
【選択図】
図1