(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】単一のサンプルを用いた全有機炭素および導電率の検証および較正
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20240220BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20240220BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N31/00 D
G01N27/06 Z
G01N33/18 B
(21)【出願番号】P 2022513374
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019049023
(87)【国際公開番号】W WO2021040729
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス スワンソン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/053515(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/122655(WO,A1)
【文献】特開2007-093209(JP,A)
【文献】特開2011-080991(JP,A)
【文献】国際公開第2013/079755(WO,A1)
【文献】特開2001-281189(JP,A)
【文献】特表2004-508551(JP,A)
【文献】和光純薬時報,2004年,Vol.72, No.1,p.13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 27/06
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに通信可能に結合され、かつ、命令を格納するメモリと、
を含む全有機炭素(TOC)分析装置であって、
前記命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ以上のプロセッサに、
既知のTOCおよび導電率を有する、有機酸を含む、サンプルを受け取ることと、
前記サンプルのTOCを測定することと、
前記サンプルの導電率を測定することと、をさせ
、
前記TOCおよび前記導電率は、同時に測定される、
TOC分析装置。
【請求項2】
前記命令が、前記1つ以上のプロセッサに、
前記サンプルの測定されたTOC、測定された導電率、既知のTOC、および既知の導電率を用いて、前記TOC分析装置のTOCおよび導電率測定能力を検証させる命令をさらに含む、請求項1に記載のTOC分析装置。
【請求項3】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項1に記載のTOC分析装置。
【請求項4】
前記有機酸が乳酸を含む、請求項1に記載のTOC分析装置。
【請求項5】
前記TOCおよび前記導電率が、同じサンプルを用いて測定される、請求項1に記載のTOC分析装置。
【請求項6】
前記サンプルが、前記有機酸を含有する単一のバイアルを含む、請求項1に記載のTOC分析装置。
【請求項7】
単一のサンプルを用いて、全有機炭素(TOC)分析装置のTOCおよび導電率測定能力を検証するための方法であって、
既知のTOCおよび導電率を有するサンプルを調製することであって、第1のサンプルが有機酸を含む、調製することと、
前記サンプルをTOC分析装置に入れることと、
前記TOC分析装置に前記サンプルのTOCを測定させることと、
前記TOC分析装置に前記サンプルの導電率を測定させることと、を含
み、
前記TOCおよび前記導電率は、同時に測定される、
方法。
【請求項8】
前記サンプルの前記TOCの前記測定および前記サンプルの前記導電率の前記測定に関連する結果を含むレポートを前記TOC分析装置から受信することと、
前記結果、ならびに、前記サンプルの前記既知のTOCおよび既知の導電率を用いて、前記TOC分析装置の前記TOCおよび導電率測定能力を検証することと、
をさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、前記有機酸を含有する単一のバイアルを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記有機酸が乳酸を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
全有機炭素(TOC)および導電率に関してTOC分析装置を較正するための方法であって、
既知のTOCおよび導電率を有するサンプルのセットを受け取ることであって、各サンプルが有機酸を含む、受け取ることと、
前記サンプルのセットをTOC分析装置に入れることと
前記サンプルのセットの各サンプルについて、
前記TOC分析装置に前記サンプルのTOCを測定させることと、
前記TOC分析装置に前記サンプルの導電率を測定させることと、
ここで、前記TOCおよび前記導電率は、同時に測定され、
前記測定されたTOCを前記サンプルの前記既知のTOCと比較することと、
前記測定された導電率を前記サンプルの前記既知の導電率と比較することと、
前記比較に基づいて、TOCおよび導電率に関して前記TOC分析装置を較正することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記較正に関連する結果を含むレポートを前記TOC分析装置から受信すること、をさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルが、前記有機酸を含有する単一のバイアルを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルのセットの各サンプルが、異なる既知のTOCおよび異なる既知の導電率を有する、請求項
12に記載の方法。
【請求項17】
前記比較に基づいてTOCおよび導電率に関して前記TOC分析装置を較正することが、前記比較に基づいて1つ以上のオフセットを調整することを含む、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
全有機炭素(TOC)分析装置および導電率計は、とりわけ、製薬製造システムにおける洗浄の妥当性確認に用いられる。TOCは、サンプル中の全有機炭素の測定値である。導電率は、サンプルの導電率の測定値である。TOC分析装置は、別個の導電率計を用いてサンプルの導電率を測定しつつ、サンプルのTOC濃度を測定できる。
【0002】
TOC分析装置および導電率計の両方が正しく作動していることを確認するために、TOC分析装置および導電率計の精度は技術者によって定期的に検証され得る。通常、サンプルのTOC濃度を正確に測定するTOC分析装置の能力を検証するために、技術者は、既知のTOC値を有する溶液を含有するバイアルをTOC分析装置に挿入し得る。次いで、技術者は、TOC分析装置を使用して溶液のTOCを試験し得る。そして、技術者は、試験の結果を既知のTOC値と比較することにより、TOC分析装置がTOCを正しく測定していることを検証し得る。それから同様に、技術者は、既知の導電率を有する異なる溶液を含む異なるサンプルを用いて、導電率計が導電率を正しく測定していることを検証し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TOC分析装置および導電率計の現行の検証方法は、効果的ではあるが、時間を要する。例えば、各検証プロセスでは、関連する試験装置のフラッシングおよび/または洗浄、ならびに異なるサンプルの調製が必要になり得る。したがって、TOC分析装置のTOCおよび導電率計の導電率を様々なサンプルを用いて検証することは、技術者にとって時間を要するプロセスである。
【0004】
TOC分析装置および導電率計の較正に関連する同様の問題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、TOC分析装置が提供される。TOC分析装置は、1つ以上のプロセッサと、該1つ以上のプロセッサに通信可能に結合されたメモリと、を含む。メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに:既知のTOC値および導電率値の両方を有するサンプルを受け取ることであって、該サンプルが有機酸を含む、受け取ることと;サンプルのTOC濃度を測定することと;サンプルの導電率を測定することと、をさせる命令を格納する。TOCおよび導電率が同じサンプルを用いてほぼ同時に測定されることにより、TOCおよび導電率の測定検証のための既存のシステムを改善する結果につながる。
【0006】
実施形態は、以下の特徴のいくつかまたはすべてを含み得る。命令は、1つ以上のプロセッサに、サンプルの測定されたTOC、測定された導電率、既知のTOC、および既知の導電率を用いて、TOC分析装置のTOCおよび導電率測定能力を検証させる命令をさらに含み得る。有機酸はクエン酸を含み得る。有機酸は乳酸を含み得る。サンプルは、有機酸を含有する単一のバイアルを含み得る。
【0007】
一実施形態において、単一のサンプルを用いて、TOC分析装置のTOCおよび導電率測定能力を検証するための方法が提供される。該方法は:既知のTOCおよび導電率を有するサンプルを調製することであって、第1のサンプルが有機酸を含む、調製することと;サンプルをTOC分析装置に入れることと;TOC分析装置にサンプルのTOCを測定させることと;TOC分析装置にサンプルの導電率を測定させることと、を含む。
【0008】
実施形態は、以下の特徴のいくつかまたはすべてを含み得る。該方法は:TOC分析装置からレポートを受信することであって、該レポートが、サンプルのTOCの測定およびサンプルの導電率の測定に関連する結果を含む、受信することと;該結果および第1のサンプルの既知のTOCおよび既知の導電率を用いて、TOC分析装置のTOCおよび導電率測定能力を検証することと、をさらに含み得る。有機酸はクエン酸を含み得る。サンプルは、有機酸を含有する単一のバイアルを含み得る。TOCおよび導電率は、TOC分析装置により実質的に同時に測定され得る。有機酸は乳酸を含み得る。
【0009】
一実施形態において、TOCおよび導電率に関してTOC分析装置を較正するための方法が提供される。該方法は:既知のTOCおよび導電率を有するサンプルのセットを受け取ることであって、各サンプルが有機酸を含む、受け取ることと;サンプルのセットをTOC分析装置に入れることと;サンプルセットの各サンプルについて、TOC分析装置にサンプルのTOCを測定させることと;TOC分析装置にサンプルの導電率を測定させることと;測定されたTOCをサンプルの既知のTOCと比較することと;測定された導電率をサンプルの既知の導電率と比較することと;比較に基づいて、TOCおよび導電率に関してTOC分析装置を較正することと、を含む。
【0010】
実施形態は、以下の特徴のいくつかまたはすべてを含み得る。該方法は、TOC分析装置からレポートを受信することであって、該レポートが、較正に関連する結果を含む、受信すること、を含み得る。有機酸はクエン酸を含み得る。サンプルは、有機酸を含有する単一のバイアルを含み得る。サンプルのTOCおよびサンプルの導電率は、ほぼ同時に測定され得る。サンプルのセットの各サンプルは、異なる既知のTOCおよび異なる既知の導電率を有し得る。比較に基づいてTOCおよび導電率に関してTOC分析装置を較正することは、比較に基づいて1つ以上のオフセットを調整することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
例示的な特徴および実装は、添付の図面に開示されている。しかしながら、本開示は、示される精密な配置および手段に限定されない。
【
図1】分析装置を操作するための例示的な環境を示す図である。
【
図2】単一のサンプルを用いた、分析装置のTOCおよび導電率測定を同時に検証するための例示的な方法を示す図である。
【
図3】TOCおよび導電率に関して分析装置を同時に較正するための例示的な方法を示す図である。
【
図4】例示的なコンピューティングデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、分析装置105を検証および較正するための環境100の図である。分析装置105は、流体中に見出される全有機炭素を測定するように適合されたTOC分析装置であり得る。分析装置105は、流体の導電率を測定するようにさらに適合されてもよい。分析装置105は、使用者がサンプル103を配置するのに介し得るグラブ分析ポートを含み得る。サンプル103はバイアルを含み得、バイアルは流体または溶液を含み得る。サンプル103には、他のタイプの容器が用いられ得る。流体は、水、または使用者がTOCまたは導電率を測定することを所望する任意の他の流体または溶液を含み得る。
【0013】
サンプル103が、分析装置105のグラブ分析ポートに挿入されると、サンプルの流体は、1つ以上の針を用いて試験される。分析装置105によってサンプル103に対して実施される試験は、分析装置105に関連したディスプレイ上に提供される使用者インターフェースを介して使用者によって選択され得る。例えば、使用者は、導電率試験またはTOC試験といった規格(standard(s))を実施することを選択し得る。
【0014】
所望の試験を選択した後、分析装置105は、サンプル103の流体を用いて、選択された試験を実施し得る。流体中のTOCまたは導電率を測定するための任意の方法が使用され得る。選択された試験を完了した後、分析装置105は、選択された試験の結果(例えば、測定されたTOCおよび導電率値)を含むレポート107を生成し得る。レポート107は、分析装置105に関連したディスプレイを介して、電子メールを介して、または印刷を介して使用者に提供され得る。他の方法を使用してもよい。
【0015】
分析装置105に関連する様々な機能(例えば、TOCおよび導電率試験、UIディスプレイ、およびレポート107の生成)は、
図4に関して図示されたコンピューティングデバイス400などのコンピューティングデバイスを用いて実装され得る。実装に応じて、コンピューティングデバイスは、分析装置105の一部でもあり得、または分析装置とは別個でもあり得る。
【0016】
理解され得るように、分析装置105が確実に正しく機能するために、分析装置105は、分析装置105によって実施される様々な測定の検証および較正の両方を提供し得る。検証は、既知のTOC値または導電率値を有する流体に対して実施される単一の試験または測定であり得る。試験の結果を既知のTOC値および導電率値と比較して、分析装置105がサンプル103のTOCおよび導電率を正しく測定しているかどうかを決定することができる。
【0017】
較正は、流体の測定されたTOCまたは導電率が、流体の既知のTOCまたは導電率またはTOCと一致するように、分析装置105の1つ以上の内部値またはオフセットが調整されるプロセスである。較正プロセスは、複数のステップを使用して実施することができ、各ステップは、異なる既知のTOCおよび導電率を有する異なる各サンプル103について実施される。各サンプル103について測定されたTOCおよび導電率は、分析装置105が適切に較正されているかどうかを決定するために、各サンプルの既知のTOCおよび導電率と比較され得る。分析装置105の1つ以上のオフセットは、比較に基づいて調整され得る。
【0018】
上記のように、現在、分析装置105の検証には、2つの異なるサンプル103、および、プロセスまたは規格の2つの異なるセットの使用を必要とする。例えば、使用者または技術者は、既知のTOCを有するHCLなどの無機酸を含むサンプル103を使用して、TOC検証プロセスを実施し得る。TOC検証プロセスが完了した後、使用者または技術者は、次いで、既知の導電率を有する溶液に溶解した塩を含む別のサンプル103を使用して、導電率検証プロセスを実施し得る。TOCおよび導電率の較正は、同様に、較正の各ステップに対して2つの異なるサンプル103の使用を必要とし得る。現状、分析装置105の検証または較正は、技術者の注意を必要とし、分析装置105がより生産的または価値のある目的に使用されることを妨げる、時間のかかる作業となり得る。
【0019】
したがって、分析装置105を検証および較正するための現在の方法に関連する上記課題を解決するために、単一のサンプル103を使用して分析装置105のTOC測定能力および導電率測定能力の両方とも検証することを可能にするサンプル103が提供される。サンプル103はさらに、単一のサンプル103のみを使用して、較正プロセスの各ステップの実施を可能にする。
【0020】
サンプル103は、有機酸溶液を含み得る。使用される有機酸は、有機であり導電性でもあるトリプロチン酸であり得る。酸の例としてクエン酸が挙げられる。ただし、乳酸やギ酸などの他の酸を使用してもよい。
【0021】
サンプル103のTOCおよび導電率は、使用者または技術者によって既知となり得るか、または設定され得る。いくつかの実装では、サンプル103で用いられる有機酸溶液は、TOCが500ppbおよびpHが約5であるように調製され得る。pHが5であることは、例えば、大気中のCO2のコンタミネーションから、サンプル103に対して行われた任意のTOC測定を安定させるのに役立ち得る。
【0022】
サンプル103は、単一のバイアル中に有機酸を含み得る。好適なバイアルは、Dual Use Conductivity and TOC(DUCT)バイアルである。他のタイプのバイアルを使用してもよい。いくつかの実施形態において、サンプル103は、使用者または技術者によって調製され得る。あるいは、サンプル103は、TOCおよび導電率に関して分析装置105を検証または較正する目的で、製造業者から購入され得る。
【0023】
使用者または技術者が、TOCおよび導電率に関して分析装置105を検証することを所望する場合、使用者または技術者は、既知のTOCおよび導電率を有する有機酸溶液を含むサンプル103を分析装置105のグラブ分析ポートに入れてもよい。次いで、使用者または技術者は、単一のサンプル103を使用して、TOCおよび導電率の両方を検証することに関連する規格または手順を選択し得る。該規格は、分析装置105によって提供または表示される使用者インターフェースを使用して選択され得る。
【0024】
次いで、分析装置105は、単一のサンプル103を用いて、TOCおよび導電率の両方の検証をほぼ同時に実施し得る。実施形態に応じて、分析装置105のTOCセルが、サンプル103の有機酸の一部またはすべてが分析装置105を通過して移動する際にサンプル103のTOCを測定し得る。ほぼ同時に、または直後に、分析装置105の導電率セルが、サンプル103の有機酸が分析装置105を通過して移動し続ける際に、サンプル103の導電率を測定し得る。各測定後、測定されたTOCおよび導電率は、分析装置105によって記録され得る。理解され得るように、導電率およびTOCの両方の検証は同時に実施されるため、分析装置105においてTOCおよび導電率の検証を実施するのに必要な合計時間は、TOCおよび導電率の両方を検証するための以前の方法と比較して効果的に半減する。分析装置105によってTOCおよび導電率を検証するための任意の方法を使用し得る。
【0025】
使用者または技術者が、TOCおよび導電率に関して分析装置105を較正することを所望する場合、使用者または技術者は、サンプル103のセットを受け取るか、または調製してもよい。各サンプル103は、異なる既知のTOCおよび異なる既知の導電率を有し得る。
【0026】
較正プロセスの一部として、分析装置105は、サンプル103のセットの各サンプル103について、上述した検証プロセスと同様、ほぼ同時にサンプル103のTOCおよび導電率を測定し得る。すべてのサンプル103が測定された後、分析装置105は、各サンプル103について、測定されたTOCおよび導電率を既知のTOCおよび導電率と比較し得る。サンプル103の既知のTOCおよび測定されたTOCが一致しない場合、分析装置105は、サンプル103のTOCを測定したTOCセルに関連する1つ以上のオフセットを調整し得る。同様に、サンプル103の既知の導電率と測定された導電率が一致しない場合、分析装置105は、サンプル103の導電率を測定した導電率セルに関連する1つ以上のオフセットを調整し得る。
【0027】
検証手順と同様に、導電率較正手順およびTOC較正手順の両方が同時に実施されるため、分析装置105のTOCおよび導電率較正を実施するために必要な合計時間もまた半減する。分析装置105を較正するための任意の方法を使用し得る。
【0028】
検証または較正のいずれかを実施した後、分析装置105は、レポート107を生成し得る。レポート107は、検証および較正の一方または両方の結果を含み得る。検証に関して、結果は、TOCおよび導電率の測定値がサンプル103中のクエン酸溶液の既知のTOCおよび導電率と一致したかどうかを示し得る。較正に関して、レポート107は、較正中に調整されたオフセットの表示(indications)を含む較正の結果を含み得る。レポート107は、分析装置105によって表示されてもよく、分析装置105によって印刷されてもよく、または分析装置105によって電子的に提供されてもよい(例えば、電子メールで送られてもよい)。
【0029】
本明細書に記載の有機酸の単一のバイアルを用いた分析装置105の同時検証が可能なサンプル103は、従来技術のシステムに勝る多くの利点を提供する。第1に、分析装置105は、単一の規格または手順を使用して導電率およびTOCに関して検証(または較正)できるため、以下のことに関して、すなわち:サンプル103を製造すること(例えば、サンプル103が1つのみ作製される);分析装置105が該規格または手順を実施するようにプログラミングすること(例えば、2つの規格が必要だったのに対して1つの規格のみ必要となる);および検証または較正を実際に実施すること;に関して時間および費用が節約される(例えば、技術者は以前に費やした時間の半分を費やすだけでよい)。第2に、化学物質(例えば、クエン酸)のバイアル1つのみを備えるサンプル103を製造することは、それぞれが異なる化学物質または化学物質の組み合わせを備えた複数のサンプル103を製造するよりも安価かつ簡単である。第3に、クエン酸は、パッシベーション層を除去するために通常使用されるHCLとは対照的に、分析装置105の器具またはセル内のパッシベーション層を促進するという追加の利点を有し得る。パッシベーション層は、分析装置105の器具およびセルを腐食から保護し得る。
【0030】
図2は、単一のサンプル103を用いて分析装置105のTOCおよび導電率測定を検証するための例示的な方法200を示す図である。方法200は、使用者および分析装置105の1以上によって実施され得る。
【0031】
210では、サンプルが調製される。サンプル103は、使用者または技術者によって調製され得る。サンプル103は、バイアルを含み得る。バイアルは、クエン酸などの有機酸溶液を含み得る。他の有機酸を使用してもよい。有機酸溶液は、既知のTOCおよび導電率を有し得る。
【0032】
あるいは、使用者または技術者は、調製済みのサンプル103を受け取ってもよい。サンプル103は、TOCおよび導電率に関して分析装置105を検証または較正する目的で販売されたものであり得る。
【0033】
215では、サンプルが分析装置に入れられる。サンプル103は、使用者または技術者によって分析装置105に入れられ得る。サンプル103は、分析装置105のグラブ分析ポートに入れられ得る。
【0034】
220では、分析装置にサンプルのTOCを測定させる。例えば、使用者または技術者は、分析装置105のインターフェースを使用して、分析装置105を、分析装置105がサンプル103のTOCおよび導電率を測定する検証モードにし得る。あるいは、分析装置105は、グラブ分析ポートでサンプル103が検出されると、検証モードに入り得る。例えば、サンプル103は、分析装置105がTOCおよび導電率検証に関連していると認識し得るチップまたは他のインジケータを含み得る。
【0035】
225では、分析装置にサンプルの導電率を測定させる。分析装置105は、サンプル103のTOCを測定したのとほぼ同時に、サンプル103の導電率を測定し得る。前述のように、検証プロセスの一部として、導電率測定およびTOC測定は、同じサンプル103を用いてほぼ同時に実施される。これは、導電率を検証するために1つのサンプル103を必要とし、TOCを検証するために別のサンプル103を必要としていた以前の検証方法に対する改善である。
【0036】
230では、レポートが受信される。レポート107は、サンプル103を提供した、および/または検証プロセスを開始した使用者または技術者によって受信され得る。レポート107は、分析装置105に関連付けられたディスプレイにおいて使用者または技術者に印刷または表示され得る。レポート107は、サンプル103の測定されたTOCおよびサンプル103の測定された導電率を含み得る。
【0037】
235では、分析装置のTOCおよび導電率の測定能力が検証される。分析装置105のTOCおよび導電率測定能力は、サンプル103の既知のTOCおよび導電率値ならびにレポート107中の該値を使用して、使用者または技術者によって検証され得る。あるいは、またはさらには、分析装置105は、サンプル103のTOCおよび導電率の予想値を把握し得、予想値と測定値との差(もしあれば)がレポート107に示され得る。レポート107の値に応じて、使用者または技術者は、分析装置105の較正の実施を推奨してもよい。
【0038】
図3は、TOCおよび導電率に関して分析装置105を較正するための例示的な方法300を示す図である。方法300は、使用者および分析装置105の1以上によって実施され得る。
【0039】
310では、サンプルのセットが受け取られる。サンプルのセット103は、流体サンプルのTOCおよび導電率の測定に関して分析装置105を較正する目的で、使用者または技術者によって受け取られ得る。各サンプル103は、クエン酸溶液などの有機酸溶液のバイアルを含み得る。各サンプルは、異なる既知のTOCおよび異なる導電率を有し得る。
【0040】
あるいは、使用者または技術者が、サンプル103を調製してもよい。
【0041】
315では、サンプルは分析装置に入れられる。各サンプル103は、分析装置105のグラブ分析ポートに入れられ得る。いくつかの実施形態において、サンプルのセットのサンプル103は、同時に分析装置105に入れられ得る。あるいは、サンプル103は、較正の各ステップが実施された後に分析装置105に入れられ得る。例えば、分析装置105は、較正の各ステップが実施された後に、使用者または技術者に異なるサンプル103を提供するように促し得る。
【0042】
320では、サンプルのセットの各サンプルについて、分析装置はサンプルのTOCおよびサンプルの導電率を測定する。各サンプル103のTOCおよび導電率は、分析装置105によってほぼ同時に測定され得る。
【0043】
325では、サンプルのセットの各サンプルについて、測定されたTOCおよび測定された導電率は、サンプル103の既知のTOCおよび既知の導電率と比較される。例えば、分析装置105は、測定されたTOCと既知のTOCとの差(もしあれば)、および測定された導電率と既知の導電率との差(もしあれば)を決定し得る。他の方法を使用してもよい。
【0044】
330では、分析装置は、比較に基づいて較正される。実施形態に応じて、分析装置105は、分析装置105の1つ以上の設定、構成またはオフセットを調整することによって較正され得る。
【0045】
図4は、例示的な実施形態および態様が実装され得る例示的なコンピューティング環境を示している。コンピューティングデバイス環境は、適切なコンピューティング環境の一例に過ぎず、使用範囲または機能に関する制限を示唆することを意図したものではない。
【0046】
他の多くの汎用目的または特殊目的のコンピューティングデバイス環境または構成を用いてもよい。使用に適し得るよく知られたコンピューティングデバイス、環境および/または構成の例として、これらに限定されないが、パーソナルコンピュータ、サーバーコンピュータ、ハンドヘルドもしくはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークパーソナルコンピュータ(PC)、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、組み込みシステム、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境などが挙げられる。
【0047】
プログラムモジュールなどの、コンピュータによって実行されるコンピュータが実行可能な命令を使用してもよい。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施したり、もしくは特定の抽象データ型を実装したりするルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。分散コンピューティング環境は、通信ネットワークまたは他のデータ伝送媒体を介してリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実施される状況において、使用され得る。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールおよびその他のデータは、メモリ記憶デバイスを含むローカルおよびリモートの両方のコンピュータ記憶媒体に配置され得る。
【0048】
図4を参照すると、本明細書に記載される態様を実装するための例示的なシステムは、コンピューティングデバイス400のようなコンピューティングデバイスを含む。その最も基本的な構成では、コンピューティングデバイス400は、通常、少なくとも1つの処理ユニット402およびメモリ404を含む。コンピューティングデバイスの正確な構成およびタイプに応じて、メモリ404は、揮発性(ランダムアクセスメモリ(RAM)など)、不揮発性(読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなど)、または上記2つのいくつかの組み合わせであり得る。この最も基本的な構成は、
図4に破線406によって図示されている。
【0049】
コンピューティングデバイス400は、追加の特徴/機能を有し得る。例えば、コンピューティングデバイス400は、磁気ディスクもしくは光ディスクまたは磁気テープもしくは光テープを含むがこれらに限定されない追加の記憶装置(リムーバブルおよび/またはノンリムーバブル)を含み得る。そのような追加の記憶装置は、リムーバブル記憶装置408およびノンリムーバブル記憶装置410として
図4に図示されている。
【0050】
コンピューティングデバイス400は、通常、様々なコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、デバイス400によってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体であり得、揮発性および不揮発性媒体、リムーバブルおよびノンリムーバブル媒体の両方を含む。
【0051】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実装された揮発性および不揮発性の媒体、ならびにリムーバブルおよびノンリムーバブルな媒体を含む。メモリ404、リムーバブル記憶装置408、およびノンリムーバブル記憶装置410はすべて、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体は、これらに限定されないが、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)またはその他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置デバイス、または所望の情報を格納するために使用でき、コンピューティング装置400によってアクセスできる他の任意の媒体を含む。そのような任意のコンピュータ記憶媒体は、コンピューティングデバイス400の一部であり得る。
【0052】
コンピューティングデバイス400は、デバイスが他のデバイスと通信することを可能にする通信接続部412を含み得る。コンピューティングデバイス400は、キーボード、マウス、ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイスなどの入力デバイス414も有し得る。ディスプレイ、スピーカー、プリンターなどの出力デバイス416も含まれ得る。これらのデバイスはすべて当技術分野でよく知られており、ここで詳細に説明する必要はない。
【0053】
本明細書で説明される様々な技術は、ハードウェアコンポーネントまたはソフトウェアコンポーネントに連結し、または必要に応じて、両方の組み合わせに連結して実装され得ることが理解されるべきである。使用できるハードウェアコンポーネントの実例となるタイプは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)などを含む。現在開示されている主題の方法および装置、またはその特定の態様または部分は、プログラムコードがコンピュータなどの機械にロードされて実行された場合に、該機械が現在開示されている主題を実践するための装置となる、フロッピーディスク、CD-ROM、ハードドライブ、または他の機械可読記憶媒体といった有形媒体に具体化された該プログラムコード(すなわち、命令)の形態をとり得る。
【0054】
いくつかの実装例が、本明細書に提供されている。しかしながら、本明細書の開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される「含む、備える(comprising)」という用語およびその変形は、「含む(including)」という用語およびその変形と同義的に使用され、開放的で非限定的な用語である。本明細書では、「含む、備える(comprising)」および「含む(including)」という用語を使用してさまざまな実装を説明しているが、「含む、備える(comprising)」および「含む(including)」の代わりに「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語を使用して、より具体的な実装を提供することができ、また開示もされる。
【0055】
開示された方法、システムおよびデバイス(以下、「それら」)に使用できる、それらに組み合わせて使用できる、それらの準備に使用できる、またはそれらの製品である、材料、システム、デバイス、方法、組成物、および構成要素が開示されている。これらおよび他の構成要素は本明細書に開示され、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの構成要素のそれぞれの様々な個々および集合的な組み合わせおよび順列の特定の参照は明示的に開示され得ないが、それぞれが本明細書において具体的に企図および説明されることが理解される。例えば、あるデバイスが開示され、そのデバイスのそれぞれの、およびすべての組み合わせおよび順列が議論される場合、特に反対に示されない限り、可能性のある修正が具体的に企図される。同様に、これらのサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に企図および開示される。この概念は、開示されたシステムまたはデバイスを使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本開示のすべての態様に準用する。したがって、実施できる様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組み合わせで実施され得、つまり、そのような各組み合わせまたは組み合わせのサブセットは、具体的に企図されており、開示されていると見なされるべきである。