IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-安全駐車システム 図1
  • 特許-安全駐車システム 図2
  • 特許-安全駐車システム 図3
  • 特許-安全駐車システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】安全駐車システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B60T17/22 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022533266
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025489
(87)【国際公開番号】W WO2022003764
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】廣田 功
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝浩
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-030836(JP,A)
【文献】特開平03-129150(JP,A)
【文献】特開2016-188691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するためのトルクを生ずるモータと、
前記モータに駆動的に連結して前記トルクを駆動輪へそれぞれ出力するサイドギアを備え、前記サイドギア間の差動がロックされたデファレンシャルギアと、前記差動のロックを解除するアクチュエータと、を備えたファイナルドライブと、
オン位置とオフ位置とを有するイグニッションキーと、
オープン位置とクローズ位置とを有するデフロックスイッチと、
前記アクチュエータの作動と停止とを切り替える切替器と、
前記イグニッションキーと、前記デフロックスイッチと、前記切替器とに電気的に接続されて前記アクチュエータを制御するコントローラであって、前記イグニッションキーが前記オフ位置にあることが検出された時には、前記デフロックスイッチが前記オープン位置にあれば前記アクチュエータを停止し、前記デフロックスイッチが前記クローズ位置にあれば前記アクチュエータを操作しないように構成され、以って何れの場合にも前記デファレンシャルギアの差動をロックして車両を駐車せしめる、コントローラと、
を備えた安全駐車システムであって、
少なくともドライブ位置とニュートラル位置とを有するシフタと、
前記モータを制動するブレーキと、をさらに備え、
前記コントローラは前記シフタと前記ブレーキとに電気的に接続され、前記イグニッションキーが前記オン位置であって前記シフタが前記ニュートラル位置にある時には前記ブレーキを作動せしめるように構成されている、安全駐車システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ブレーキを作動せしめた後、前記デフロックスイッチが前記オープン位置にあれば前記アクチュエータを作動させ、前記デフロックスイッチが前記クローズ位置にあれば前記アクチュエータを停止するように構成されている、請求項の安全駐車システム。
【請求項3】
前記コントローラは前記モータに電気的に接続され、前記イグニッションキーが前記オン位置であって前記シフタが前記ドライブ位置にある時にのみ前記モータを作動せしめるように構成されている、請求項の安全駐車システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記モータを作動せしめた後、前記デフロックスイッチが前記オープン位置にあれば前記アクチュエータを作動させ、前記デフロックスイッチが前記クローズ位置にあれば前記アクチュエータを停止するように構成されている、請求項の安全駐車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、車両を安全に駐車せしめるシステムに関し、より詳しくはデファレンシャルギアの差動ロックを利用して車両の停止を保証する安全駐車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合に車両は、持続的な停止、すなわち駐車のために、フットブレーキとは独立した系統のパーキングブレーキを備えている。パーキングブレーキの古典的な例は、左右の後車輪にそれぞれ装備されたドラムブレーキをワイヤケーブルにより作動させる機構である。かかる例では車輪が直接的に制動されるしバッテリ等によるバックアップも必要ないので、安全性に優れている。他の例は、トランスミッション内に備えられてギアの回転を停止するドッグクラッチないし爪である。かかる例では車輪を直接的に制動するわけではないことに問題が潜在している。すなわち、通常、回転速度差を許容するために左右の車輪はデファレンシャルギアを介して連結されているが、それゆえ停車中も左右の車輪は互いに反対方向に回転できるので、例えば車両の姿勢によっては静止した状態を維持できずに車両が転動しかねない。車輪をロックする補助的な手段が求められる。
【0003】
特許文献1,2は関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許出願公開2018/008160A1
【文献】日本国特許出願公開2018-200093号
【発明の概要】
【0005】
従来のパーキングブレーキは安全な駐車のために重量増が避けられず、マイクロカーやバギーのごとき特に軽量な車両に利用することは好まれない。以下に開示するシステムは、車輪をロックする手段に依存せずに安全な駐車を可能にする問題に鑑みて創出された。
【0006】
一局面によれば、安全駐車システムは、車両を駆動するためのトルクを生ずるモータと、前記モータに駆動的に連結して前記トルクを駆動輪へそれぞれ出力するサイドギアを備え、前記サイドギア間の差動がロックされたデファレンシャルギアと、前記差動のロックを解除するアクチュエータと、を備えたファイナルドライブと、オン位置とオフ位置とを有するイグニッションキーと、オープン位置とクローズ位置とを有するデフロックスイッチと、前記アクチュエータの作動と停止とを切り替える切替器と、前記イグニッションキーと、前記デフロックスイッチと、前記切替器とに電気的に接続されて前記アクチュエータを制御するコントローラであって、前記イグニッションキーが前記オフ位置にあることが検出された時には、前記デフロックスイッチが前記オープン位置にあれば前記アクチュエータを停止し、前記デフロックスイッチが前記クローズ位置にあれば前記アクチュエータを操作しないように構成され、以って何れの場合にも前記デファレンシャルギアの差動をロックして車両を駐車せしめる、コントローラと、少なくともドライブ位置とニュートラル位置とを有するシフタと、前記モータを制動するブレーキと、を備え、前記コントローラは前記シフタと前記ブレーキとに電気的に接続され、前記イグニッションキーが前記オン位置であって前記シフタが前記ニュートラル位置にある時には前記ブレーキを作動せしめるように構成されている
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、システムのブロックダイヤグラムである。
図2図2は、一例に基づくファイナルドライブの立面断面図である。
図3図3は、システムを構成するアルゴリズムのフローチャートである。
図4図4は、フローチャートの一部であって、運転中における処理に関連する部分である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照して以下に幾つかの例示的な実施形態を説明する。以下の説明を通じて、右と左を区別することがあり、また前後を区別することがあるが、これらは説明の便宜に過ぎず、いうまでもなく左右および前後を逆転した実施形態が可能である。
【0009】
本実施形態によるシステムは、三輪スクータ、ゴルフカート、マイクロカーあるいはバギーのごとき比較的に軽量な車両に、特にバッテリで駆動される電動車両に好適に適用することができる。もちろん一般的な車両に適用することができるし、また六輪以上の車両に適用することもできる。以下の説明は、後輪駆動の四輪車であってそのファイナルドライブに電動モータが直接に結合している例に基づくが、もちろんこれは説明の便宜に過ぎない。
【0010】
図1を参照するに、車両は前輪1Fと駆動輪である後輪1Rとを備える。前輪1Fはステアリングホイール9と結合しており、ステアリングホイール9を操舵することによりその向きを変え、以って車両の進行方向を変えることができる。後輪1Rはファイナルドライブ5を介してモータ3に駆動的に結合しており、そのトルクを受容して車両を前進ないし後退せしめる。ファイナルドライブ5は後述のごとくデファレンシャルギアを内包してトルクを左右の後輪1Rに差動的に分配する。
【0011】
図2を参照するに、ファイナルドライブ5は、概して、モータ3よりトルクを受けるケーシング31と、一対のサイドギア33を備えたデファレンシャルギアと、噛合によりサイドギア33間の差動をロックするクラッチ35と、クラッチ35を噛合するように付勢する付勢手段37と、を備える。ケーシング31はベルト、スプロケットあるいはギア噛合によりモータ3と駆動的に結合しており、トルクを受けて軸C周りに回転する。ケーシング31と一対のサイドギア33とはデファレンシャルギア組を介して駆動的に結合しており、受容したトルクは両サイドギア33から両駆動輪1Rへそれぞれ出力される。
【0012】
本実施形態においては、クラッチ35は一方のサイドギア33をケーシング31に固定することによりサイドギア33間の差動をロックするが、差動のロックは他の適宜の構造によることができる。容易に理解される通り、かかる装置はロックアップデフに類似した構造を有するが、付勢手段37によりクラッチ35が常時連結しており、定常時において左右のサイドギア33間の差動はロックされている。アクチュエータ39に電力が投入されて作動したときにのみクラッチ35が脱連結して、ロックが解除され、デファレンシャルギアが機能して左右のサイドギア33間の差動が許容される。すなわちノーマリクローズ(定常時ロック式)ロックアップデフである。言うまでもなく、ファイナルドライブ5は、電力が失われたときには付勢手段37の作用によりクラッチ35が連結して、差動をロックした状態を維持する。
【0013】
付勢手段37に加え、これと反対方向にクラッチ部材を付勢する他の付勢手段41を、必須ではないが、ファイナルドライブ5は備えてもよい。これはアクチュエータ39の負担を軽減し、以ってエネルギ消費を小さくするのに役立つ。
【0014】
あるいはシステムには、上述のノーマリクローズロックアップデフに代えて、ラッチ機構等によりロックアップした状態を維持するデファレンシャルを利用することができるし、あるいは時限的にのみ脱連結する例えばシフト装置を利用することができる。
【0015】
図1に戻って参照するに、車両は制動のためにブレーキ7を備え、これはモータ3に内蔵されてそのロータ軸に結合したブレーキであってもよい。あるいはこれに代えて又は加えて、各ホイールに装着されたドラムないしディスクブレーキを、車両は備えてもよい。さらにまた、かかるブレーキ7は電磁ブレーキであってもよく、これは車両の制動だけでなく、電力の回生に利用することができる。給電のあるときにはもちろん、給電のないときであっても、モータ3および電磁ブレーキはロータ軸に負荷を与えて車両を制動しうる。またブレーキ7には、電磁ブレーキに加えて、電力の供給が失われたときにバネ仕掛け等により作動する機械式ブレーキが含まれていてもよく、かかる機械式ブレーキはロータ軸を制動またはロックすることができる。
【0016】
本実施形態によるシステムは、上述の構成に加えて、概して、コントローラ11と、アクセルペダル13と、ブレーキペダル15と、イグニッションキー17と、デフロックスイッチ19と、バッテリ21と、切替器29と、を備える。これらのうちアクセルペダル13と、ブレーキペダル15と、イグニッションキー17と、デフロックスイッチ19とは、何れもコントローラ11に電気的に接続された入力装置であり、運転者はこれらを介してコントローラ11に指令を与え、起動、発進、加速、制動、停止、駐車といった車両の操作を実行する。バッテリ21は、モータ3に電力を供給して車両の動力源となるのみならず、切替器29を介してファイナルドライブ5中のアクチュエータ39に電気的に接続されてこれを動作せしめ、さらにコントローラ11に電力を供給してこれを動作せしめる。
【0017】
イグニッションキー17は、システムのオンオフを切り替えるための例えばロータリースイッチであって、少なくともオン位置とオフ位置を有する。これは鍵を差し込んで捻る形式のスイッチであってもよく、あるいは鍵穴のないダイヤルであってもよい。イグニッションキー17は、また、シフタ、シフトレバーないしセレクタの役割を兼ねてもよい。その場合にオン位置は少なくともニュートラル位置Nとドライブ位置とを含み、ドライブ位置はさらに前進位置Fと後退位置Rとを含むことができる。さらに前進位置Fはさらに複数の段階に分かれていてもよく、あるいはさらに他の位置を含んでいてもよい。もちろんシフタ、シフトレバーないしセレクタはイグニッションキー17から独立していてもよい。
【0018】
デフロックスイッチ19はクラッチ35の操作に利用される、例えばトグルスイッチ、押しボタン、スライドスイッチのごときスイッチであって、少なくともオープン位置OPとクローズ位置CLとを有する。詳しくは後述するが、デフロックスイッチ19がオープン位置OPのときファイナルドライブ5における差動が許容され、クローズ位置CLのとき差動はロックされる。デフロックスイッチ19は図示のごとくイグニッションキー17や他のスイッチから独立していてもよく、あるいはこれらと統合されていてもよい。
【0019】
システムは、また、差動がロックされているか否かを表示するインジケータを備えてもよい。インジケータはデフロックスイッチ19に内蔵されたイルミネーションであってもよく、あるいはスイッチ19から独立した表示装置であってもよい。もちろんインジケータに代えて、または加えて、液晶、有機発光ダイオードまたはレーザ投影を利用した表示装置であってもよく、かかる表示装置上に表示されるシンボルないしアイコンを利用して差動のロック/アンロックを表示してもよい。さらにこれらに代えて、または加えて、スピーカのごとき音響装置から発される注意喚起音を利用してもよい。
【0020】
バッテリ21は車両の主たる動力源であって、イグニッションキー17のオンオフに応じて車両各部に電力を供給また停止する。バッテリ21は例えばリチウムイオン電池のごとき二次電池であるが、もちろん一次電池であってもよく、あるいは燃料電池のごとき自ら発電する機能を有するものであってもよい。二次電池の場合に、通常は外部の電源による充電を受けるが、あるいは車両が自ら発電機を備えて走行しながら充電を受ける、いわゆるハイブリッド車の構成であってもよい。
【0021】
バッテリ21への充電のために、システムはバッテリチャージャ23を備えることができ、コントローラ11はその制御の機能も有してもよい。バッテリチャージャ23はさらに外部の充電器PSに接続することができ、その給電を受けてバッテリ21を充電する。またバッテリチャージャ23は、外部の充電器PSに代えて、または加えて、車載の発電機から給電を受けてもよい。
【0022】
高出力を発揮するべく、バッテリ21は比較的に高い、例えば48Vの定格電圧を有するが、より低い定格電圧を有するサブバッテリ25をシステムは備えてもよい。サブバッテリ25は例えば12Vの定格電圧を有し、専ら比較的小電力の電装品を駆動する用途に使用できる。例えばコントローラ11は、通常、サブバッテリ25の給電により動作する。
【0023】
サブバッテリ25は例えばバッテリ21から電力の供給を受けて充電されるが、48Vから12Vへの降圧のためにDC-DCコンバータ27を利用することができ、コントローラ11はその制御の機能も有してもよい。
【0024】
切替器29は、コントローラ11に電気的に接続され、その制御の下に断続してアクチュエータ39への電力の投入を制御する。切替器29には所謂リレーを利用することができ、リレーは、もちろん、電磁リレー、リードリレー、ソリッドステートリレー、あるいはこれらと均等なものの何れであってもよい。あるいはリレーに代えて、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、MOS-FETのごとき、電力を制御するパワー半導体が利用できる。
【0025】
切替器29は、バッテリ21ないしサブバッテリ25とアクチュエータ39との間に介在してアクチュエータ39への電力の投入を制御する。切替器29は、図1の実線で示すごとく、コントローラ11の外部にあってもよいが、破線で示すごとくコントローラ11に内蔵されていてもよい。内蔵されている場合には、実質的に、または少なくとも外見的に、コントローラ11が直接にアクチュエータ39へ電力を供給また切断する。
【0026】
切替器29がオープン(切断)のときにはアクチュエータ39へ電力が投入されないので、クラッチ35はクローズ(連結)となってファイナルドライブ5における差動はロックされる。切替器29がクローズ(接続)のときにはアクチュエータ39が作動してクラッチ35はオープン(脱連結)となって差動が許容される。
【0027】
コントローラ11には、後述の一連の処理を実行するように構成された、ソフトウェアと協働して動作するコンピュータチップを利用することができる。コンピュータチップの例としては、車両がその各部を制御するために備える電子制御装置(ECU)あるいはそれと均等なものを挙げることができ、また複数のECUがコントローラエリアネットワーク(CAN)通信バスを介して相互に接続されていてもよい。あるいは、後述の一連の処理の一部または全部は、ソフトウェアによらずにAND,OR,NOT等のロジック回路の組み合わせによっても実行可能である。すなわち、コントローラ11の一部または全部は、キー17やスイッチ19の操作に応じて、モータ3、ブレーキ7、およびアクチュエータ39への電力の投入および切断を制御するように構成された回路であってもよい。かかる回路は固定的なものでもよく、あるいはプログラマブルなものでもよい。
【0028】
コントローラ11は、例えば図3に示すアルゴリズムに従って動作し、以って車両の起動、発進、加速、制動、停止、駐車について運転者を補助する。かかるアルゴリズムは単一のコントローラ11が実行することができるが、あるいは他のECUと協働して実行するように構成されていてもよい。またこれらの制御を実行するために、コントローラ11は直接に又は他のECUを介して、各種のセンサ、例えば車速センサ、軸速センサ、あるいはクラッチの位置センサに電気的に接続されていてもよい。
【0029】
図3を参照するに、車両を起動する時は、運転者はまずイグニッションキー17を操作してこれをONにする。イグニッションキー17がONの時にはコントローラ11がブートし、所定のセットアップがなされる。ONにならない場合には、処理はなされず、運転者は再びイグニッションキー17を操作するか、あるいは車両を点検すべきだろう。
【0030】
コントローラ11は次いで、自己診断を実行することができる。その結果、正常でないと判断されたときには、故障情報を記憶して自身を停止することができる。故障情報は運転者に報知されてもよく、そのために、インジケータ、画像表示装置、あるいは音響装置を利用することができる。この場合にも運転者は車両を点検すべきだろう。
【0031】
これらを経て正常にコントローラ11がブートした時には、運転者は車両の運転を開始することができる。アクセルペダル13、ブレーキペダル15、イグニッションキー17、およびデフロックスイッチ19の操作に応じて、コントローラ11はモータ3、ブレーキ7、および切替器29(以ってクラッチ35)を制御し、車両を適切に進行し、制動し、また停止させる。
【0032】
運転が継続している間、コントローラ11はイグニッションキー17がOFFになっていないかを、常に、あるいは周期的に監視している。OFFでなければ運転者が運転を継続することを意図していると推定できる。
【0033】
イグニッションキー17がOFFでない時の処理を、図4を参照して説明する。コントローラ11は、さらにイグニッションキー17(あるいは、シフタ、シフトレバーないしセレクタ)がニュートラル位置Nにあるか否かを判断する。
【0034】
ニュートラル位置Nにある時には運転者は一時的な停車を意図していると推定されるから、コントローラ11はブレーキ7を作動せしめて車両を停止させる。次いでコントローラ11はデフロックスイッチ19がオープン位置OPにあるか否かを判断する。コントローラ11は、デフロックスイッチ19による指示に従い、オープン位置OPにあると判断されたときには、アクチュエータ39をONにして(切替器29を接続して)差動を許容し、オープン位置OPにない(すなわちクローズ位置CLにある)と判断されたときには、アクチュエータ39をOFFにして(切替器29を切断して)差動をロックする。
【0035】
ニュートラル位置Nにない(すなわち前進または後退位置)時には運転者はなお車両を進行させることを意図していると推定されるから、コントローラ11はモータ3を作動させる。このときもコントローラ11は、デフロックスイッチ19による指示に従い、オープン位置OPにあると判断されたときには、アクチュエータ39をONにして(切替器29を接続して)差動を許容し、オープン位置OPにない(すなわちクローズ位置CLにある)と判断されたときには、アクチュエータ39をOFFにして(切替器29を切断して)差動をロックする。
【0036】
何れの場合でも、コントローラ11は、差動のロック/アンロックを運転者に通知してもよく、かかる通知には、既に述べた通り、インジケータ、画像表示装置あるいは音響装置を利用することができる。制御は図3のbに戻り、運転者は車両の運転を継続することができる。運転者は路面の状況に応じて自らの判断により、デフロックスイッチ19の操作により差動の可否を選択し、車両を走行させることができる。
【0037】
再び図3を参照するに、運転者が車両を停車させようとするときには、まずブレーキペダル15を踏み下げてブレーキ7を作動させ、車両を停止するはずである。このときコントローラ11は例えば車速センサを利用して車両の停止を確認してもよい。
【0038】
既に述べた通り、コントローラ11はイグニッションキー17がOFFになっていないかを、常に、あるいは周期的に監視している。コントローラ11は、イグニッションキー17がOFFになっていることを検出した時には、次いでデフロックスイッチ19がオープン位置OPにあるか否かを判断する。オープン位置OPにあると判断されたときには、デフロックスイッチ19による指示に反してコントローラ11はアクチュエータ39をOFFにする(切替器29を切断する)。あるいはコントローラ11はデフロックスイッチ19を強制的にクローズ位置CLにしてもよい。さらにあるいはコントローラ11は直接にバッテリ21(あるいはサブバッテリ25)を制御してアクチュエータ39への給電をカットしてもよい。何れの場合においてもクラッチ35はクローズ(連結)となって差動がロックされる。
【0039】
一方、オープン位置OPにない(すなわちクローズ位置CLにある)と判断されたときには、クラッチ35は既にクローズ(連結)となっているはずだから、コントローラ11はアクチュエータ39を(切替器29を)操作しない。もちろんコントローラ11は明示的にアクチュエータ39をOFFにして(切替器29を切断して)もよく、あるいはバッテリ21(あるいはサブバッテリ25)による給電をカットしてもよい。
【0040】
何れの場合においても、ファイナルドライブ5における差動はロックされており、車両が転動を起こすことはないから、安全に駐車することができる。次いでコントローラ11は自身をシャットダウンする。
【0041】
上述のシステムによれば、車両を停車させようとするときには差動をロックするクラッチ35が常にクローズとなっているから、車両が転動を起こすことはなく、専らロータ軸を制動するだけで安全に車両を駐車させることができる。すなわち駐車のために、駆動輪をロックするパーキングブレーキのごとき手段を必要としない。またノーマリクローズデフを利用しているので、差動のロックに電力を必要とするわけではなく、駐車中にバッテリが消耗することもない。本実施形態は重量の抑制と消費電力の低減の点で優位であり、比較的に軽量であってバッテリで駆動される車両に適用されれば特に大きな効用をもたらす。もちろんノーマリクローズデフに代えて、給電のないときに差動をロックする何れかの装置が利用できる。
【0042】
幾つかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正ないし変形をすることが可能である。
図1
図2
図3
図4