(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】風力タービンの制御
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F03D7/04 E
(21)【出願番号】P 2022537286
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 NO2020000006
(87)【国際公開番号】W WO2021125966
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515339653
【氏名又は名称】エクイノール・エナジー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】EQUINOR ENERGY AS
【住所又は居所原語表記】Torusbeen 50,4035 Stavanger,Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スカーレ、ビョルン
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-111924(JP,A)
【文献】特開2017-053275(JP,A)
【文献】特表2012-514154(JP,A)
【文献】特表2016-500425(JP,A)
【文献】特表2019-536936(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02489872(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/065323(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103541861(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータを含む浮体式風力タービンのためコントローラであって、
第一の周波数範囲内の前記浮体式風力タービンの第一の運動と第二の周波数範囲内の前記浮体式風力タービンの第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の出力を、前記第一の運動の入力と前記第二の運動の入力に基づいて計算する能動減衰コントローラを含み、
前記能動減衰コントローラは第一の制御ループと第二の制御ループを含み、前記第一の制御ループは前記第一の運動の前記入力を受け取り、前記第二の制御ループは前記第二の運動の前記入力を受け取り、
前記能動減衰コントローラはローパスフィルタを含み、前記第一の制御ループのための第一のローパスフィルタ周波数と前記第二の制御ループのための第二のローパスフィルタ周波数は、それぞれ第一の周波数範囲及び第二の周波数範囲に応じて設定され、
前記コントローラは、前記第一の運動と前記第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び前記能動減衰コントローラからの前記1つ又は複数の出力に基づいて、前記複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は前記発電機のトルクを制御するための出力を計算するように配置されるコントローラ。
【請求項2】
前記第一の運動は、前記第一の周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動を含み、前記第二の運動は、前記第二の周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動を含み、前記第一の周波数範囲は前記第二の周波数範囲より高い、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記第一の運動の前記入力は前記第一の運動の測定又は推定速度であり、前記第二の運動の前記入力は前記第二の運動の測定又は推定速度である、請求項1又は2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記第一の運動の前記入力は、第一のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され、前記第二の運動の前記入力は、第二のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定される、請求項1、2、又は3に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記第一のセンサはモーションセンサであり、及び/又は前記第二のセンサは全地球測位センサである、請求項4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記第一の運動及び/又は第二の運動を減衰させるための前記出力は、追加的ロータ回転速度基準信号、追加的ブレードピッチ調整量、及び/又は追加的発電機トルク調整量のうちの1つ又は複数を含む、請求項
1~5の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するための前記出力は全体ブレードピッチ調整量を含み、及び/又は前記発電機の前記トルクを制御するための前記出力は全体発電機トルク調整量を含む、請求項
1~6の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項8】
発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータと、請求項
1~7の何れか1項に記載のコントローラと、を含む浮体式風力タービン。
【請求項9】
浮体式風力タービンのブレードピッチ及び/又は発電機トルクを制御する方法であって、前記浮体式風力タービンは
発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータを含み、前記方法は、
第一の制御ループにおいて、第一の周波数範囲内の前記浮体式風力タービンの第一の運動の入力を受け取り、前記第一の制御ループのための第一のローパスフィルタ周波数は、第一の周波数範囲に応じて設定されるステップと、
第二の制御ループにおいて、第二の周波数範囲内の前記浮体式風力タービンの第二の運動の入力を受け取り、前記第二の制御ループのための第二のローパスフィルタ周波数は、第二の周波数範囲に応じて設定されるステップと、
前記第一の運動の入力と前記第二の運動の入力に基づいて前記第一の運動と前記第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の減衰出力を計算するステップと、
前記第一の運動と前記第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び前記1つ又は複数の減衰出力に基づいて、前記複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は前記発電機のトルクを制御するための出力を計算するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記第一の運動は、前記第一の周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動を含み、前記第二の運動は、前記第二の周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動を含み、前記第一の周波数範囲は前記第二の周波数範囲より高い、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の運動の前記入力は前記第一の運動の測定又は推定速度であり、前記第二の運動の前記入力は前記第二の運動の測定又は推定速度である、請求項
9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の運動の前記入力は、第一のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され、前記第二の運動の前記入力は、第二のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定される、請求項
9、10、又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のセンサはモーションセンサであり、及び/又は前記第二のセンサは全地球測位センサである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の減衰出力は、追加的ロータ回転速度基準信号、追加的ブレードピッチ調整量、及び/又は追加的発電機トルク調整量のうちの1つ又は複数を含む、請求項
9~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するための前記出力は、全体ブレードピッチ調整量を含み、及び/又は前記発電機の前記トルクを制御するための前記出力は、全体発電機トルク調整量を含む、請求項
9~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項
1~7の何れか1項に記載のコントローラを使って実行される、請求項
9~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
浮体式風力タービンのための処理回路上で実行されたときに、前記処理回路を請求項
9~16の何れか1項に記載の方法を実行するように構成する命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記減衰は、定格風速以上で行われる、請求項
1~17の何れか1項に記載のコントローラ、コンピュータプログラム製品、又は方法。
【請求項19】
前記第一のローパスフィルタ周波数は
【数1】
であって、
前記第二のローパスフィルタ周波数は
【数2】
である請求項1~7の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項20】
前記第一のローパスフィルタ周波数は
【数3】
であって、
前記第二のローパスフィルタ周波数は
【数4】
である請求項9~16の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式風力タービンのためのコントローラと、浮体式風力タービンのブレードピッチ及び/又は発電機トルクを制御する方法に関する。これは、浮体式風力タービンの運動を制御するためのものであり得る。
【背景技術】
【0002】
風力タービン施設は通常、長尺のタワーを含む支持構造と、支持構造の上端に取り付けられたナセル及びロータで形成される。発電機及びその関連電子部品は通常、ナセル内に配置される。
【0003】
風力タービン施設は、陸地か又は海底の何れかに固定される着床型風力タービン又は浮体式風力タービンであり得る。1つの例示的な浮体式風力タービンは、プラットフォーム又は筏様構造等の浮力ベースに取り付けられた従来の風力タービン構造を含む。他の例は、「スパーブイ」型構造である。このような構造は、長尺の浮力支持構造及びその上に取り付けられたロータで形成される。支持構造は一体構造とすることも、又は長尺の下部構造とその上に取り付けられた標準的タワーとすることもできる。
【0004】
浮体式風力タービン施設は例えば、1つ又は複数のアンカ付き係留索を介して海底に係留され、又は1つ又は複数の関節式(蝶番式)脚部で海底に取り付けられることで、それらが所望の施設サイトに保持される。
【0005】
基礎固定型風力タービンは、一方の端で陸塊に剛体的に固定される。風速や風向の変化によるもののような力の作用を受けると、基礎固定型風力タービンはカンチレバーとして動作し、それが曲がるとタワーが振動する。このような運動は、振幅は小さいが周波数が高く、すなわちこれらは小さく素早い運動であり得る。それに対して、浮体式風力タービンは、陸塊に剛体的に固定されないため、基礎固定型タービンに生じるのと同じ種類のタワーの振動に加えて、長尺の構造全体が剛体的に動く可能性がある。
【0006】
浮体式風力タービンが風速若しくは風向の変化によるもの、又は波によるもののような力の作用を受けると、構造全体が水中で動き回り得る。これらの動きは、振幅は大きいが、比較的低い周波数であり得、すなわちこれらは大きくゆっくりとした動きであり得る。動きは、これらがタービン/ロータ自体の回転周波数よりはるかに低いという点で、低周波数である。これらは剛体運動である(曲げ運動ではない)。生じる動きは、線形縦(上下)(例えば、ロータ軸に垂直な縦方向への)運動である「ヒーブ」、線形横(左右)(例えば、ロータ軸に垂直な水平方向への)運動である「スウェイ」、線形長手方向(前後)(例えば、ロータ軸に平行な方向への)運動である「サージ」、本体のその水平(前後)軸の周囲での(例えば、ロータ軸の周囲での)回転である「ロール」、本体のその横(左右)軸の周囲での(例えば、ロータ軸に垂直な水平軸の周囲での)回転である「ピッチ」、及び本体のその縦軸の周囲での(例えば、ロータ軸に垂直な縦軸の周囲での)回転である「ヨー」である。
【0007】
特定の状況では、これらの動きはタービンの全体的効率又は発電出力を低減させる可能性があり、さらに風力タービン構造及び/又は関連する係留に損傷を与え、若しくはそれらを弱体化させかねない過剰な構造的応力を生じさせる可能性があり、又は浮体式風力タービンの動きを不安定にする可能性がある。したがって、これらの剛体運動を制御することが望まれている。
【0008】
従来の風力タービンでは、発電出力を調整するためにロータブレードのピッチが制御される。タービンにより生成される電力出力は、定格風速と呼ばれる特定の風速で最大となる。定格風速未満の風で動作するとき、ブレードピッチは、最大電力出力を提供する角度でほぼ一定に保たれる。それに対して、定格風速域を超えて動作する場合は、一定の電力出力を生成し、発電機及び/又はその関連電子部品に損傷を与え得る過剰な高電力出力を防止するために、ブレードピッチが調整される。この一定の電力出力は風力タービンの定格出力と呼ばれ得る。この体制では、ロータはそれが一定の回転速度で回転するように制御され得る。これは、所望及び/又は標的ロータ回転速度と呼ばれ得る。
【0009】
風力タービンにはまた、カットアウト風速もあり得、これはタービンが損傷を避けるために停止する風速である。
【0010】
定格風速未満で動作するとき、ブレードピッチはほぼ一定に保たれるため、ロータに作用するスラストは風速と共に増大する。スラストは、ロータに関する風速の二乗にほぼ比例する。その結果、相対風速を上昇させることになる軸方向運動が減衰され得る。風速が定格風速を超えて上昇すると、スラストを軽減させるために、ブレードピッチが増大され得る(これは、ブレードピッチを風向により平行になるようにすることを意味する)。
【0011】
一定の電力出力のために上述のピッチ制御を用いると、ロータトルク又は回転速度の上昇に応答して、ブレードピッチ角が調整され、ロータにかかるトルクが軽減されることでスラストが減少し、それによって一定の電力出力が保持される。しかしながら、スラストが軽減されると、風力タービンの運動に作用する減衰力もまた低下し、マイナスになることもあり得る。換言すれば、運動が過大となる可能性があり、その振幅が増大する。すると、その結果として相対風速がさらに変化し、ブレードピッチがさらに調整され、運動が一層大きくなり得る。反対のことが、風力タービンが風と反対に移動する場合に当てはまり、その結果、運動がさらに過剰となる。これは、ネガティブダンピングとして知られる。
【0012】
例えば、着床式風力タービンにおけるネガティブダンピングは、タービンがタワーの自然の曲げ振動の励起によって前後に振動し得るために生じる。風力タービンが風に向かって移動すると、風力タービンに作用する相対風速は上昇し、それによってロータトルク又は回転速度が上昇する可能性がある。すると、前述のようなピッチ制御の使用はこれらの振動のネガティブダンピングにつながり得る。
【0013】
ネガティブダンピングの問題が
図1に示されており、これは前述の標準的なブレードピッチ制御を用いた2.3MWタービンの風速に関するスラスト力を示している。12ms
-1(定格風速であり得る)を超える風速の場合のスラスト力は、ブレードピッチの調整により風速の上昇と共に減少し、その結果、この風速域内ではシステムにネガティブダンピングが誘導され得る。
【0014】
着床型風力タービンにおいて、ネガティブダンピングは、ブレードピッチコントローラのバンド幅をタワーの1次曲げモードの固有周波数未満に低減させることによって防止又は最小化できる。換言すれば、コントローラは、タワーの運動の周波数がタワーの1次曲げモードの固有周波数より高い場合、ブレードピッチを調整しない。
【0015】
しかしながら、浮体式風力タービンはまた、曲げモード以外に他の振動モードも有し、これによって浮体式風力タービンにおけるネガティブダンピングの処理の問題ははるかに複雑となる。さらに、前述の先行技術のシステムは、浮体式風力タービン施設の最も重大な振動モードに対処しない。
【0016】
図2は、各種の風力タービン施設の振動のパワースペクトルを示す。縦軸の目盛は振動の振幅に比例し、これは振動のパワーの平方根に比例する。水平軸の目盛は振動の周波数であり、単位はHzである。図からわかるように、パワースペクトルには4つの主なピークがある。4つ目のピーク(1次タワー曲げモード)のみ着床式風力タービンのパワースペクトルにも存在する。左から3つ目のピーク(波による動き)は、浮体式風力タービン及び着床式洋上風力タービンにおいて見え得るが、最初の2つのピーク(サージの固有周期とピッチの固有周期)は浮体式風力タービンにしか見られない。サージ及びピッチの固有周期は、剛体運動が原因である。
【0017】
1つ目のピークは約0.008Hzの周波数で発生し、支持構造の剛体振動に対応しており、これは浮体式風力タービンのサージ運動と、それに係留索の復元効果が加わることに起因し得る。これらの振動において、タワーは水平方向に前後に移動するが、基本的に縦方向の姿勢は保持する。これらのサージ運動は、風力タービンの固有サージ周波数を励起する風速の変化によって生じ得て、より平水で発生する可能性が高い。
【0018】
2つ目のピークは約0.03~0.04Hzの周波数で発生し、支持構造の剛体ピッチ振動(すなわち、タービン軸に垂直な水平軸の周囲での支持構造の前後の「うなづき」)に対応し得る。一定の電力出力を生成するためにブレードピッチが制御されると、このピークの大きさ(すなわち、これらの振動の大きさ又はエネルギ)は、前述のネガティブダンピング効果によって劇的に増大し得て、その結果、タワーに対する大きい構造的応力のほか、電力出力の振動が生じる。
【0019】
3つ目の、かなり広いピークは約0.05~0.15Hzの周波数で発生する。これは、浮体式風力タービンの波による剛体運動(サージとそれに加わるピッチ、ただし、ほとんどピッチ)に対応する。このピークの大きさは、浮体式風力タービンの形状及び重量分布を変更することにより最小化され得る。
【0020】
4つ目のピークは約0.3~0.5Hzの周波数で発生する。前述のように、これらの振動は浮体式及び着床式風力タービンの何れにおいても存在し、支持構造の構造的曲げ振動に対応する。
【0021】
前述のように、構造的曲げ振動のネガティブダンピングを防止又は最小化するために、ブレードピッチコントローラのバンド幅は、それがこれらの周波数(すなわち、0.3~0.5Hz)で発生する運動についてはブレードピッチを調整しないように低下させられ得る。
【0022】
しかしながら、浮体式風力タービンでは、この方法は依然として曲げ振動に対処するために適用できるものの、ブレードピッチコントローラのバンド幅がさらに低減されて、コントローラがピッチ中のタワーの剛体振動のそれらの周波数(例えば、0.03~0.04Hz)で発生する運動についてブレードピッチを調整しない程度になると、それによってコントローラのバンド幅が大幅に低減し、電力生成、ロータ回転速度、ロータスラスト力等、風力タービンの重要な特性に関するパフォーマンスが容認不能となり得る。したがって、浮体式風力タービン施設のネガティブダンピングを回避又は軽減させるためには、このようにしてコントローラのバンド幅を単純に低減させることは現実的ではない。
【0023】
現代の数メガワット級の風力タービンのほとんどは、タービンの定格風速を超えた動作時に一定のロータ回転速度を生成するようにブレードピッチを制御するために、比例積分(PI)コントローラを使用している。PIコントローラはフィードバックコントローラであり、これはエラー(出力/実際ロータ回転速度と所望/標的ロータ回転速度との差)の加重和とその値の積分に基づいて、ブレードピッチ及び、それによってロータ回転速度(すなわち、ロータの回転周波数)を制御する。ブレードピッチ制御システムが定格電力を超えて動作しているとき、一定のトルク又は一定の電力の何れかを生成するために典型的には発電機トルクが制御される。
【0024】
(特許文献1)には、定格風速より高い場合に発生するネガティブダンピングの問題に対抗し、特に浮体式風力タービンにおけるピッチ運動に関して、軸方向への共振低周波数運動を軽減させるように設計されたタービンコントローラが記載されている。これは、ブレードのピッチを集合的に調整して、軸方向への減衰及び/又は復元力を生じさせることによって実現される。
【0025】
(特許文献2)には、ロータディスク上の不均一な気流により生じ得るタービンのヨー運動を制御するためのコントローラが記載されている。これは、タービンブレードのダイナミックピッチングにより実現され、すなわち、ヨー運動を所望の範囲内にするために個々のタービンブレードのピッチが調整され得ることを意味する。
【0026】
既知のコントローラは典型的に、浮体式風力タービンの特定の運動に関するネガティブダンピングを回避することを目的としており、浮体式風力タービンのピッチ運動に対してある程度のポジティブダンピングを提供し得る。
【0027】
着床式風力タービンのための能動減衰機能を持つ振動コントローラを有する制御システム1の例が
図3に示されている。
図3の上のラインは制御システムの能動振動コントローラ部分2であり、これは前述のように、ネガティブダンピングを防止又は最小化するためにタワー速度v
ナセルの測定値を使用する。システムの残りの部分は、ロータ回転速度に基づいてブレードピッチ制御を提供する標準コントローラ4である。
【0028】
図3中、v
ナセルはナセルの速さであり、K
dは振動コントローラのゲインであり、ω
ref0は所望の/標的速度風力タービンのロータ回転速度であり、ω
rは実際の風力タービンロータ回転速度であり、h
c(s)はロータ回転速度エラー信号(ω
ref0-ω
r)を第一のブレードピッチ基準信号β
ref1に変換する伝達関数である。能動振動コントローラ部分2は第二のブレードピッチ基準信号β
ref2を出力する。h
p(s)は、合計ブレードピッチ基準信号β
ref(ただし、β
ref=β
ref1+β
ref2)と実際のタービンロータ回転速度ω
rとの間の伝達関数である。この場合、「ロータ回転速度エラー」という用語は、所望のロータ回転速度(なすなわち標的ロータ回転速度)と実際のロータ回転速度との差を意味する。
【0029】
一般に、伝達関数では、可変値s(ただし、sは通常、角周波数等の空間又は時間周波数に関する)に応じたシステムコンポーネントの出力及び入力のラプラス変換の比が得られる。すなわち、伝達関数により、コンポーネントを、それらをブロック図又はその他の簡略図で表せるように分析できる。この種の関数の数学的背景は周知であり、例えば(特許文献3)において論じられている。
【0030】
伝達関数hc(s)は、PIコントローラにより提供され得る。コントローラのパラメータの値は、制御システムを所望のバンド幅へと従来の方法で調整することによって特定され得る。
【0031】
図3の信号処理ブロック6は典型的に、特定の周波数成分を取り除くためのある適当なフィルタ処理機能からなる。
【0032】
前述のように、着床式風力タービンにおいて、ブレードピッチコントローラの制御パラメータは、コントローラの標準部分のバンド幅がタワーの1次曲げモードの固有周波数より低くなるように調整され、それによって構造的曲げ振動のネガティブダンピングが防止又は最小化される。それに加えて、
図3に示されているような振動制御部は、1次曲げモードの周波数での振動に対して能動ポジティブダンピングを提供するために設けられ得て、それは、これらの振動がコントローラのこの部分により抑制されない周波数を有し得るからである。
【0033】
同じく前述のように、浮体式風力タービンは、固有周波数が約0.3~1Hzの構造的曲げ振動を有し得る。しかしながら、これらは例えば約0.03~0.04Hz及び/又は約0.008Hzの周波数の剛体振動も有する。
【0034】
図3の制御信号が浮体式風力タービンで使用され、ブレードピッチコントローラのパラメータがタワーの1次構造曲げモードの周波数に応じて調整された場合、能動減衰寄与分が高周波数構造的曲げ振動のポジティブダンピングを提供する。しかしながら、能動減衰は、低周波数振動には影響を与えないであろう。さらに、これらの周波数は、標準的コントローラのバンド幅内にあるため、ピッチ中の支持構造の低周波数剛体振動にはネガティブダンピングが伴い得る。
【0035】
図3のコントローラは、浮体式風力タービンに生じる低周波数振動に作用するように簡単に調整できない。
【0036】
浮体式風力タービンのためのブレードピッチコントローラは、
図3の標準的ブレードピッチコントローラの変形型であり得、風力タービン構造上のある点の速さに基づいてブレードピッチをさらに制御するように配置された能動減衰手段を含み得る。能動減衰手段は、風力タービン構造上のある点の速さをロータ回転速度エラーに変換するように配置され得て、標準的ブレードピッチ制御手段で使用されたものと同じ伝達関数が能動減衰手段において、ロータ回転速度エラーをブレードピッチの補正に変換するために使用される。これは、(特許文献1)において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【文献】国際公開第2010/076557号
【文献】国際公開第2014/096419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
浮体式風力タービンの動きを有効に減衰できるコントローラが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0039】
第一の態様から見て、本発明は、発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータを含む浮体式風力タービンのためコントローラ(すなわち、ブレードピッチコントローラ及び/又は発電機トルクコントローラ)を提供し、このコントローラは、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第一の運動と第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の出力を第一の運動の入力と第二の運動の入力に基づいて計算する能動減衰コントローラを含み、コントローラは、第一の運動と第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び能動減衰コントローラからの1つ又は複数の出力に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は発電機のトルクを制御するための出力を計算するように配置される。
【0040】
第二の態様から見て、本発明は発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータと、コントローラと、を含む浮体式風力タービンを提供し、コントローラは、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第一の運動と第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の出力を、第一の運動の入力と第二の運動の入力に基づいて計算するための能動減衰コントローラを含み、コントローラは、第一の運動と第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び能動減衰コントローラからの1つ又は複数の出力に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は発電機のトルクを制御するための出力を計算するように配置される。
【0041】
第二の態様の浮体式風力タービンは、第一の態様によるコントローラを含み得る。
【0042】
第三の態様から見て、本発明は、浮体式風力タービンのブレードピッチ及び/又は発電機トルクを制御する方法を提供し、浮体式風力タービンは発電機に接続された、複数のロータブレードを備えるロータを含み、方法は、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第一の運動の入力を受け取るステップと、第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第二の運動の入力を受け取るステップと、第一の運動の入力と第二の運動の入力に基づいて第一の運動と第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の減衰出力を計算するステップと、第一の運動と第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び1つ又は複数の減衰出力に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は発電機トルクを制御するための出力を計算するステップと、を含む。
【0043】
第三の態様の方法は、第一の態様のコントローラ及び/又は第二の態様の浮体式風力タービンを使って行われ得る。
【0044】
第一の態様のコントローラ及び第二の態様の浮体式風力タービンは、第三の態様の方法を実行するように構成され得る。
【0045】
第四の態様から見て、本発明は、浮体式風力タービンのための処理回路上で実行されたときに、処理回路を、処理浮体式風力タービンの1つ又は複数のロータのためのブレードピッチを制御するように、及び/又は浮体式風力タービンの発電機トルクを制御するように構成する命令を含むコンピュータプログラム製品を提供し、命令は、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第一の運動の入力を受け取ること、第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの第二の運動の入力を受け取ること、第一の運動の入力と第二の運動の入力に基づいて第一の運動と第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の減衰出力を計算すること、第一の運動と第二の運動の両方が減衰されるように、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度、及び1つ又は複数の減衰出力に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するための出力を計算することを含む。
【0046】
第四の態様のコンピュータプログラム製品は、第一の態様のコントローラ及び/又は第二の態様の浮体式風力タービンにおいて提供され得る。第四の態様のコンピュータプログラム製品は、第三の態様の方法を実行するために使用され得る。換言すれば、コンピュータプログラム製品は、浮体式風力タービンのための処理回路上で実行されると、処理回路を第三の態様の方法を実行するように構成する命令を含み得る。
【0047】
以下に任意選択的な特徴を説明するが、これらは本発明の態様の1つ、複数、又は全部と組み合わせ得る。
【0048】
本発明により、異なる周波数の運動の有効な減衰を可能にする。これは、第一の周波数範囲内の第一の運動の入力と第二の周波数範囲内の第二の運動の入力の両方を受け取って、より高い、及びより低い周波数の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の出力を計算できるようにすることによって実現される。運動は剛体運動であり得る。
【0049】
風力タービン用の既存の能動減衰コントローラは典型的に、約50秒未満の周期(約0.02Hz)を有する浮体式風力タービンの動きを減衰させることに関する。ピッチ運動の固有周期は典型的に約25~50秒の範囲であり、これは浮体式風力タービンに生じる、サージ運動等のその他の運動の周期よりかなり速いか又は遅い。例えばサージ運動の周期は約60秒、又はさらに長く、約2又は3分であり得る。これらのサージ運動は、風速の変化が原因であり得、これは風力タービンの固有サージ周波数を励起させ、より平水においてより発生しやすい。
【0050】
本発明は、浮体式風力タービンのピッチ運動(これは、典型的なブレードピッチコントローラにより減衰される運動である)やそれより低周波数のサージ運動等の様々な周波数の運動を有効に減衰させることができ得る。それゆえ、このコントローラは例えば、異なる周波数範囲で発生する浮体式風力タービンのピッチ運動及びサージ運動等の運動を有効に減衰させることができ得る。
【0051】
このコントローラは、浮体式風力タービンの運動を制御する(すなわち、減衰させる)ためのものである。それゆえ、このコントローラは、運動コントローラ及び/又は浮体式風力タービン運動コントローラとも呼ばれ得る。
【0052】
このコントローラは、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するため、及び/又は発電機のトルクを制御するための出力を計算するためのものであり、それゆえ、このコントローラは、ブレードピッチコントローラ及び/又は発電機トルクコントローラとも呼ばれ得る。
【0053】
第一の運動は剛体運動であり得、及び/又は第二の運動は剛体運動であり得る。運動は軸方向運動、例えばピッチ及びサージ運動であり得る。第一の運動は、第一の周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動であり得、第二の運動は第二の(例えば、より低い)周波数範囲内のピッチ及び/又はサージ運動であり得る。
【0054】
このコントローラは、波の穏やかな気候の地域における浮体式風力タービンにとって有益であり得る。それは、これらの地域では、風による負荷が係留負荷全体の大半を占め得て、係留負荷は、減衰させることが望まれる他の重大な運動とは異なる周波数の運動により生じ得るからである。それゆえ、本発明によれば、例えば浮体式風力タービンの係留システムへの過剰な負荷の軽減が可能となり、それによって風力タービン構造自体に対する負荷が軽減することに加えて、係留システムの寿命も延びる。
【0055】
第一の運動及び/又は第二の運動は軸方向運動、すなわちピッチ及び/又はサージであり得る。
【0056】
第一の運動は、ピッチ運動及び/又はサージ運動であるか、これを含み得る。第一の周波数範囲は約0.02~0.05Hz、又は任意選択的に約0.03~0.04Hzの範囲であり得る。この周波数範囲は、この範囲内の固有又は従動(driven)周波数を有する浮体式風力タービンの何れの運動(又は軸方向運動)にも関係し得る。
【0057】
これらの範囲内で発生する浮体式風力タービンの運動のほとんどはピッチ運動であり得るが、その他の種類の運動も含み得る。
【0058】
第一の運動の周期は約50秒未満であり得る。
【0059】
第二の運動はサージ運動、例えば低周波数サージ運動であるか、又はこれを含み得る。
【0060】
第一の運動と第二の運動はどちらもサージ運動を含み得るが、周波数は異なる。
【0061】
第二の周波数範囲は約0.006~0.010Hz又は、任意選択的に約0.007~0.009Hzの範囲内であり得る。この周波数範囲は、この範囲内の固有又は従動周波数を有する浮体式風力タービンの何れの運動(又は軸方向運動)にも関係し得る。これらの範囲内で発生する浮体式風力タービンの運動のほとんどはサージ運動であり得るが、その他の種類の運動も含み得る。
【0062】
第二の運動の周期は約60秒より長く、例えば約2~3分であり得る。
【0063】
第一の周波数範囲は、第二の周波数範囲の周波数の範囲より高い周波数の範囲であり得る。第一の周波数範囲と第二の周波数範囲は異なる範囲及び/又は重複しない範囲内であり得る。
【0064】
第一の運動の入力及び/又は第二の運動の入力は、速度であり得る。それゆえ、第一の運動と第二の運動の両方を減衰させるための1つ又は複数の出力は、第一の運動の速度と第二の運動の速度に基づき得る。速度は、測定又は推定速度であり得る。
【0065】
第一の運動の入力及び/又は第二の運動の入力は各々、剛体速度測定値又は推定値であり得る。これらは、異なる周波数範囲からの剛体速度測定値又は推定値であり得る。
【0066】
第一の運動及び/又は第二の運動の速度測定値又は推定値は、運動、速度、及び/又は加速度測定に基づく推定値とし得る。
【0067】
第一の運動の入力は、測定又は推定風力タービンピッチ速度であり得る(又はそれを含み得る)。
【0068】
第二の運動の入力は、測定又は推定風力タービンサージ速度であり得る(又はそれを含み得る)。
【0069】
能動減衰コントローラは、第一の運動の入力及び/又は第二の運動の入力を受け取るように配置され得る。
【0070】
第一の運動の入力及び/又は第二の運動の入力は、1つ又は複数のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され得る。
【0071】
第一の運動の入力は、第一のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され得る。第一のセンサは、第一の周波数範囲内の運動を示す出力を提供するように構成され得る。
【0072】
第二の運動の入力は、第二のセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され得る。第二のセンサは、第二の周波数範囲内の運動を示す出力を提供するように構成され得る。
【0073】
第一の運動の入力と第二の運動の入力は、異なるセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され得る。
【0074】
これは、異なるセンサが異なるフィルタリング及び/又は制御パラメータを有し得て、それによってセンサは異なる周波数範囲内の運動の測定値を得るのにより適した、及び/又は必要なものとなるからである。追加的又は代替的に、第一及び第二のセンサは異なる種類のセンサであり得る。
【0075】
第一の運動の入力は、モーションセンサ(例えば、速度センサ及び/又は加速度計等)からの出力から得ることができ、すなわち第一のセンサはモーションセンサであり得る。第一のセンサは、モーションリファレンスユニット(MRU)であり得る。第一のセンサは、第一の周波数範囲内の剛体運動(例えば、ピッチ及び/又はサージ等の軸方向の剛体運動)を測定するためのものであり得る。
【0076】
第一のセンサからの出力は、それが第一の周波数範囲内の周波数の運動だけを測定するようにフィルタ処理され得る。
【0077】
第二のセンサからの出力は、それが第二の周波数範囲内の周波数の運動だけを測定するようにフィルタ処理され得る。
【0078】
風力タービンの運動を検出するためのモーションセンサは、風力タービン上の何れの点にも位置付けられ得る。例えば、センサは、風力タービンタワーのベース、風力タービンのナセル内、又は風力タービンタワーに沿った何れの点にも設置され得る。モーションセンサは、風力タービンのピッチ運動、例えば第一の周波数範囲内のピッチ運動を測定するように構成され得る。
【0079】
第二の運動の入力は、差分全地球測位システム(DGPS)等の全地球測位システム(GPS)の出力から得ることができ、すなわち第二のセンサはGPS(又はDGPS)であり得る。全地球測位システムは、風力タービンのサージ運動、例えば第二の周波数範囲内のサージ運動を測定するために使用され得る。
【0080】
ピッチ及びサージ運動を個々に、別々に、又は同時に測定するために、他の何れの適当な検知手段も使用され得る。
【0081】
このコントローラは、信号処理ユニットを含み得る。信号処理ユニットは、センサからの生の測定値を受け取り、1つ又は複数の推定手法を適用して、風力タービンの第一の運動及び/又は第二の運動の速度を推定するように構成され得る。推定手法は、カルマンフィルタリングを含み得る。例えば、差分全地球測位システムからの測定値は、カルマンフィルタリング等の推定手法と組み合わせて、第二の運動、例えばサージ速度を推定し得る。
【0082】
このコントローラは、ローパスフィルタを含み得る。ローパスフィルタは、ピッチによる剛体振動の固有周波数より高い周波数の、構造上のある点の速さの変化を排除するように構成され得る。フィルタは、2次又は3次バタワースローパスフィルタであり得る。このようなフィルタは、所望の周波数の振動だけが能動的に減衰させられ、ロータ回転速度にあまり変動を生じさせすぎないことを確実にするように構成され得る。
【0083】
能動減衰コントローラ/方法は、第一の運動(例えば、浮体式風力タービンのピッチ運動)の能動減衰制御を提供するため、及び第二の運動(例えば、浮体式風力タービンのサージ運動)の能動減衰制御を提供するためのものであり得る。
【0084】
第二の運動(例えば、浮体式風力タービンのサージ運動)の能動減衰制御は、係留システムへの負荷を軽減させるためのものであり得る。
【0085】
能動減衰コントローラは2つの制御ループ、すなわち第一の制御ループと第二の制御ループを含み得る。2つの制御ループは、独立し得る。
【0086】
第一の制御ループは、第一の運動(例えば、浮体式風力タービンのピッチ運動)の能動減衰制御を提供するためのものであり得る。
【0087】
第二の制御ループは、第二の運動(例えば、浮体式風力タービンのサージ運動)の能動減衰制御を提供するためのものであり得る。
【0088】
第一の制御ループと第二の制御ループは、異なるフィルタリング及び/又は異なるパラメータ設定を含み得る。これは、各制御ループがそれぞれの運動に合わせられ、及び/又は最適化されることを意味し得る。
【0089】
第一の制御ループは第一の運動の入力、例えば浮体式風力タービン構造上に提供されるモーションセンサからの入力を受け取り得る。
【0090】
第二の制御ループは第二の運動の入力、例えば差分全地球測位システムからの、又はそこからのデータに基づく入力を受け取り得る。
【0091】
第一の制御ループは、第一の運動を減衰させるための出力を計算するためのものであり得、第二の制御ループは、第二の運動を減衰させるための出力を計算するためのものであり得る。
【0092】
第一の運動及び/又は第二の運動を減衰させるための出力は、ロータ回転速度基準信号、ブレードピッチ調整量、及び/又は発電機トルク調整量のうちの1つ又は複数であり得る。
【0093】
能動減衰コントローラは、ロータ回転速度基準信号、ブレードピッチ調整量、及び/又は発電機トルク調整量を、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの運動に基づいて、及び/又は第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの運動に基づいて計算するように構成され得る。
【0094】
能動減衰コントローラは、第一のロータ回転速度基準信号、第一のブレードピッチ調整量、及び/又は第一の発電機トルク調整量を、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの運動に基づいて、第二のロータ回転速度基準信号、第二のブレードピッチ調整量、及び/又は第二の発電機トルク調整量を、第二の周波数範囲内の浮体式風力タービンの運動に基づいて、及び/又は合成ロータ回転速度基準信号、合成ブレードピッチ調整量、及び/又は合成発電機トルク調整量を、第一の周波数範囲内の浮体式風力タービンの運動及び第二の周波数範囲内の運動に基づいて計算するように構成され得る。
【0095】
このコントローラは、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度及び、第一の追加的ロータ回転速度基準信号、第一のブレードピッチ調整量、第二の追加的ロータ回転速度基準信号、第二のブレードピッチ調整量、合成追加的ロータ回転速度基準信号、及び/又は合成ブレードピッチ調整量のうちの1つ又は複数を含み得る、能動減衰コントローラからの出力に基づいて制御するように配置され得る。
【0096】
このコントローラは、発電機のトルクを、実際のロータ回転速度、標的ロータ回転速度及び、第一の追加的ロータ回転速度基準信号、第一の発電機トルク調整量、第二の追加的ロータ回転速度基準信号、第二の発電機トルク調整量、合成追加的ロータ回転速度基準信号、及び/又は合成発電機トルク調整量のうちの1つ又は複数を含み得る、能動減衰コントローラからの出力に基づいて制御するように配置され得る。
【0097】
このコントローラは、1つ又は複数の変換回路を含み得る。変換回路は、PIコントローラ、PIDコントローラ、伝達関数、非線形方程式、ロータ回転速度エラーをブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量に変換するための他の何れかの関数又は他の何れかの変換手段であるか、又はこれを含み得る。変換回路は、風力タービン制御システムであるか、又はその一部であり得る。
【0098】
このコントローラは、能動減衰コントローラのほかに標準コントローラを含み得る。標準コントローラは、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードのブレードピッチを制御するための、及び/又は発電機のトルクを制御するための出力を計算するためのものであり得る。標準コントローラは、能動減衰コントローラからの1つ又は複数の出力を受け取るためのものであり得る。標準コントローラは、実際のロータ回転速度及び標的ロータ回転速度を受け取り得る。
【0099】
出力は、ロータブレードのピッチを集合的に制御するためものであり得る。それゆえ、このコントローラは集合的なブレードピッチ制御を提供するためのものであり得る。
【0100】
実際のロータ回転速度は、浮体式風力タービンのロータが回転する速度であり得る。
【0101】
標的ロータ回転速度は、電力出力のための最適なロータ回転速度であり得る。標的ロータ回転速度は、所望のロータ回転速度及び/又は最適ロータ回転速度と呼ばれ得る。
【0102】
定格風速未満で、標的ロータ回転速度は、ある風速について実現可能な最適ロータ回転速度であり得る。定格風速を超えると、標的ロータ回転速度は、風力タービンが動いていない状況での電力出力のための最大回転速度であり得る。
【0103】
第一の運動及び第二の運動を減衰させるための、標的ロータ回転速度と第一及び第二の、又は合成ロータ回転速度調整量を組み合わせてロータ回転速度基準とし得る。実際のロータ回転速度はロータ回転速度基準から差し引かれて、ロータ回転速度エラーが提供され得る。ロータ回転速度エラー(すなわち、実際のロータ回転速度と、運動を減衰させるために調整された標的ロータ回転速度との差)は、ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量に変換され得る。
【0104】
ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量は、実際のロータ回転速度を変化させ得る。これは、実際のロータ回転速度と基準ロータ速度との差を縮小して、ロータ回転速度エラーを縮小するために行われ得る。ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量は、ロータ回転速度エラーをゼロに近付けるように風力タービンを制御するために使用され得る。
【0105】
ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量は、最適なロータ回転速度を実現しながら、第一及び第二の運動を減衰させるための、及び/又は第一及び/又は第二の運動のネガティブダンピングを防止するための力を提供し得る。
【0106】
能動減衰コントローラは、第一の追加的ロータ回転速度基準信号ω
ref1(これは、第一の運動を減衰させるための出力であり得る)を計算する第一の制御ループ(すなわち、制御則)を含み得る。追加的ロータ回転速度基準信号は、第一の運動の測定又は推定速度
【数1】
、コントローラのゲインK
1、及びフィルタ、例えばh
1(s)に基づいて計算され得る。
【0107】
制御則は
【数2】
の形式で書かれ得る。
h
1(s)は2次ローパスフィルタであり得る。フィルタは、ラプラス形式を有し得る。h
1(s)は以下のとおりであり得る:
【数3】
ω
cはローパスフィルタ周波数であり得る。ω
cは例えば:
【数4】
であり得る。
sはラプラス可変数であり得る。
【0108】
能動減衰コントローラは、第二の追加的ロータ回転速度基準信号ω
ref2(これは、第二の運動を減衰させるための出力であり得る)を計算する第二の制御ループ(すなわち、制御則)を含み得る。第二の追加的ロータ回転速度基準信号は、第二の運動の測定又は推定速度
【数5】
、コントローラのゲインK
2、及びフィルタ、例えばh
2(s)に基づいて計算され得る。
【0109】
制御則は
【数6】
の形式で書かれ得る。
h
2(s)は2次ローパスフィルタであり得る。フィルタは、ラプラス形式を有し得る。h
2(s)は以下のとおりであり得る:
【数7】
ω
cはローパスフィルタ周波数であり得る。ω
cは例えば:
【数8】
であり得る。
sはラプラス可変数であり得る。
【0110】
コントローラのゲイン及び/又はローパスフィルタ周波数は、第一及び第二の制御ループ間で異なり得る。これによって、第一の制御ループは第一の運動に適したものとなり、第二の制御ループは第二の運動に適したものとなり得る。
【0111】
第一の制御ループと第二の制御ループのためのローパスフィルタ周波数は、それぞれ第一の周波数範囲及び第二の周波数範囲に応じて設定され得る。
【0112】
【数9】
及び
【数10】
は、異なるセンサからの出力を使って測定及び/又は推定され得る(前述のとおり)。
【0113】
ωref1及びωref2は、第一の運動及び第二の運動の両方を(すなわち、それぞれを)減衰させるための出力であり得る。ωref1及びωref2は、組み合わされて合成追加的ロータ回転速度基準信号を提供し得て、それが第一の運動と第二の運動の両方を減衰させるための出力として提供される。
【0114】
ωref1及びωref2は、能動減衰コントローラ内又は標準コントローラ内で、ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量に変換され得る(別々又は一緒に)。
【0115】
ωref1及びωref2は、標的ロータ回転速度ωref0と組み合わされて全体ロータ回転速度基準信号ωrefを提供し得る。換言すれば、
ωref=ωref0+ωref1+ωref2
である。
【0116】
実際のロータ回転速度ωrは全体標的ロータ回転速度基準信号ωrefから得られて、ロータ回転速度エラーωerrorが求められ得る。ロータ回転速度エラーωerrorは、ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量を計算するために使用され得る。これはωref1及びωref2を含むため、ブレードピッチ調整量及び/発電機トルク調整量だけ第一の運動と第二の運動が減衰され得る。
【0117】
コントローラは、ロータ回転速度信号の全部(例えば、合成して)をブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量に変換するための1つの変換回路を(例えば、標準コントローラ内に)含み得る。代替的に、コントローラは、ロータ回転速度信号をブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量に別々に変換するための複数の変換回路を含み得る。ブレードピッチ調整量及び/又は発電機トルク調整量は合算されて全体ブレードピッチ調整量及び/又は全体発電機トルク調整量が提供され得て、それが浮体式風力タービンを制御するために使用される。
【0118】
定格風速を超えると、コントローラは、第一の運動及び/又は第二の運動のネガティブダンピングを防止するために使用され得る。
【0119】
コントローラ/方法は、風が定格風速を超えるときに浮体式風力タービンを制御するために使用され得る。
【0120】
コントローラ/方法は、浮体式風力タービンの第一の運動の能動減衰制御を提供することに加えて、浮体式風力タービンの第二の運動の追加の能動減衰制御を提供し得る(2つの運動が異なる周波数範囲内にある場合)。
【0121】
コントローラ/方法は、浮体式風力タービン構造への負荷を生じさせ得る第一の周波数範囲内の運動を減衰させ、浮体式風力タービン構造の係留システムへの負荷を生じさせ得る第二の周波数範囲の運動を減衰させることができ得る。これは、風による負荷(ブレードピッチ及び/又は発電機トルクの制御で軽減させ得る)が係留への負荷全体のほとんどを占めるような、波の穏やかな気候の地域において特に有効であり得る。
【0122】
浮体式風力タービンは、スパーブイ型浮体式風力タービンであり得る。浮体式風力タービンは、係留索及び/又は1つ若しくは複数の関節式脚部等の係留システムの使用を通じて海底に固定され得る。代替的に、浮体式風力タービンは、セミサブ形式の浮体式風力タービン又は他の何れの種類の浮体式風力タービンでもあり得る。
【0123】
浮体式風力タービンは、第一のセンサ及び/又は第二のセンサを含み得る。
【0124】
本発明は、追加のコントローラ又は追加のソフトウェアであり得る。これは、方法又は方法の少なくとも一部を実行するように配置され得る。ソフトウェアは、物理的媒体上、又はクラウドベースのストレージソリューション上、又は他の何れの適当な媒体にも記憶され得る。
【0125】
コントローラは、既存の浮体式風力タービンにレトロフィットされ得る。これは、既存の浮体式風力タービンに追加の入力、追加のセンサ、及び/又は追加の、若しくは更新されたコード/ソフトウェアを提供することによって実現され得る。
【0126】
能動減衰コントローラは、第一の運動及び/又は第二の運動の減衰に使用可能な1つ又は複数の出力(ロータ回転速度基準、ブレードピッチ調整量、及び/又は発電機トルク調整量)を提供するために使用されるコードであり得る。
【0127】
コントローラ/方法を第一の周波数範囲の第一の運動と第二の周波数範囲の第二の運動を減衰させることに関して説明したが、コントローラ/方法は、他の周波数範囲内の他の運動も減衰させ得る。それゆえ、本発明は、複数の周波数範囲のそれぞれの複数の運動を減衰させるためのものであり得る。これは、各周波数範囲のための別々の制御ループを提供することにより実現され得る。各制御ループは、その運動を減衰させることが望まれる特定の周波数範囲のためのフィルタリング又はその他のパラメータを含み得る。別の入力(任意選択的に、別のセンサからの各々)が、異なる周波数範囲内の各運動のために提供され得る。
【0128】
ここで、特定の実施形態をあくまでも例として、下記のような添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】従来のブレードピッチ制御システムを用いた、2.3MW浮体式風力タービンの風速に関するロータのスラスト力のグラフである。
【
図2】浮体式風力タービン施設内の振動の典型的なパワースペクトルである。
【
図3】着床型風力タービンのための振動制御を有するブレードピッチ制御システムの略図である。
【
図4】浮体式風力タービンのためのコントローラのブロック図である。
【
図5A】浮体式風力タービンの代替的なコントローラである。
【
図5B】浮体式風力タービンの代替的なコントローラである。
【
図5C】浮体式風力タービンの代替的なコントローラである。
【
図6】第一の周波数範囲内の運動のみを考慮するコントローラを備える浮体式風力タービンと第一の周波数範囲内の運動と第二の周波数範囲内の運動を考慮するコントローラを備える浮体式風力タービンを比較したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図7】第一の周波数範囲内の運動のみを考慮するコントローラを備える浮体式風力タービンと第一の周波数範囲内の運動と第二の周波数範囲内の運動を考慮するコントローラを備える浮体式風力タービンを比較したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0130】
図4は、浮体式風力タービンに生じ得る異なる周波数範囲内の運動を考慮できるブレードピッチコントローラ10を示す。
図4は、それぞれ第一の周波数範囲内の第一の運動(例えば、ピッチ及び/又はサージ)と第二の周波数範囲内の第二の運動(例えば、サージ)を減衰させるためのブレードピッチ調整量β
2及びβ
3を計算する能動減衰コントローラ12を含むブレードピッチコントローラを示している。能動減衰コントローラ12は、標準ブレードピッチコントローラ14に連結される。ブレードピッチコントローラ10は、定格風速以上で前述のように動作可能である。
【0131】
標準コントローラ14は、実際の風力タービンロータ回転速度ωrを基準風力タービンロータ回転速度ωref0から差し引く。基準ロータ回転速度ωref0は、浮体式風力タービンが動いていないときに風力タービンがその最も効率的な動作状態であり得る標的ロータ回転速度である。したがって、標準ピッチ制御手段14は、タービンロータブレードのピッチを連続的に補正して、実際のロータ回転速度ωrを標的ロータ回転速度ωref0にできるだけ近付けようとする。しかしながら、標準ピッチ制御手段14は、風力タービン構造そのものの動きを一切考慮しない。
【0132】
図4の能動減衰コントローラ12は、第一の周波数範囲内の風力タービンの剛体運動(例えば、ピッチ運動であるか、それを含み得る)を減衰させるための出力を計算する第一の減衰制御ループ16と、第二の周波数範囲内の風力タービンの剛体運動(例えば、サージ運動であるか、それを含み得る)を減衰させるための第二の出力を計算する第二の能動減衰制御ループ18を含む。
【0133】
第一の能動減衰制御ループ16において、風力タービンの第一の測定又は推定速度v
p(
【数11】
と呼ばれ得る)は第一の信号処理手段20により処理され、その後第一の能動コントローラのゲインK
pと第一の能動減衰コントローラの伝達関数h
p(s)で演算され、それによって第一の追加的ブレードピッチ調整信号β
2が得られる。同様に、第二の能動減衰制御ループ18においては、風力タービンの第二の測定又は推定速度v
s(
【数12】
と呼ばれ得る)は第二の信号処理手段22により処理され、その後第二の能動コントローラのゲインK
sと第二の能動減衰コントローラの伝達関数h
s(s)で演算され、それによって第二の追加的ブレードピッチ調整信号β
3が得られる。
【0134】
図4に示される浮体式タービンのための第一の減衰制御ループ16における第一の信号処理ブロック20は、波の周波数範囲(0.05~0.2Hz)より十分に低いフィルタ周波数のシャープローパスフィルタを使用することにより、波による運動の減衰が回避され、それが重要な風力タービンパラメータに関しての低いパフォーマンスにつながり得る。フィルタ周波数は、浮体式風力タービンのピッチにおける固有周波数に依存し得る。これは約0.04~0.05Hzであり得る。
【0135】
第二の減衰制御ループ18における第二の信号処理ブロック22は、第一の周波数範囲より十分に低いフィルタ周波数の同様のシャープローパスフィルタを使用することにより、第一の周波数範囲内の運動の減衰が最小化される。フィルタ周波数は、約0.01~0.02Hzであり得る。
【0136】
能動減衰ゲインの値は、減衰対象の運動に合わせられる。このパラメータに関して使用される正確な値は、従来のコントローラ調整により見出され得る。実際に、
図4に示される第一及び第二の能動減衰ゲインK
p及びK
sも通常、第一及び第二の周波数範囲内の運動に必要であり得る異なる減衰レベルを考慮して異なる値を有し得る。
【0137】
図5Aは、比例積分(PI)コントローラ31、33、及び35の形態の変換回路使用する、浮体式風力タービンのためのブレードピッチコントローラ30の例を示す。ブレードピッチコントローラ30はまた、標準コントローラ34と、
図4のコントローラ10と同様の能動減衰コントローラ32も含む。
【0138】
この特定のコントローラ30は、第一及び第二の減衰制御ループ36、38の各々のためのPIコントローラと、標準ブレードピッチ制御手段34のためのPIコントローラ35を使用する。
図4のコントローラと同様に、第一の減衰制御ループ36は、第一の能動減衰ゲインブロック37として表される第一の能動減衰ゲインK
pを使用し、これは第一のPIコントローラ31により演算される前に、風力タービンの第一の測定又は推定速度v
pから処理される信号に対する演算を行う。第一のPIコントローラ31は、第一の能動減衰ゲインブロック37からの出力を変換して、第一の追加的ブレードピッチ調整量β
2を提供することのできる処理回路を含む。
【0139】
同様に、第二の減衰制御ループ38は、第二の能動減衰ゲインブロック39として表される第二の能動減衰ゲインKsを使用し、これは第二のPIコントローラ33により演算される前に、風力タービンの第二の測定又は推定速度vsから処理される信号に対する演算を行う。第二のPIコントローラ38は、第二の能動減衰ゲインブロック39からの出力を変換して、第二の追加的ブレードピッチ調整量β3を提供することのできる処理回路を含む。
【0140】
追加的ブレードピッチ調整量β2及びβ3は、標準コントローラ34からのブレードピッチ調整量β1と組み合わせられて、全体ピッチ調整量βrefが提供され、これが第一及び第二の運動を減衰させ、ロータ回転速度ωrが標的ロータ回転速度ωref0に近付くように風力タービンを制御するために使用される。これは、風力タービン構造及び係留システムに加わる力を軽減させながら、ある風速での電力出力を最大にするために行われる。コントローラ30は、定格風速以上で上述のように動作可能である。
【0141】
代替的なコントローラ40が
図5Bに示されている。これは
図5Aに示されるコントローラ30と同様であるが、例外として、能動減衰コントローラ42の第一及び第二の制御ループのために、
図5Aに示されるように2つではなく、1つのPIコントローラ41を使用している。
図5Bは、標準コントローラ44と能動減衰コントローラ42を示しており、能動減衰コントローラ42は1つのPIコントローラ41と、第一及び第二の信号処理ブロック46、48と、第一及び第二の能動減衰ゲインブロック47、49と、を含む。標準コントローラ44は、標準ブレードピッチ調整量β
1を合成追加的ブレードピッチ調整量β
4と組み合わせるように構成され、合成追加的ブレードピッチ調整量β
4は、第一の追加的ブレードピッチ調整量β
2と第二の追加的ブレードピッチ調整量β
3の和である。標準ブレードピッチ調整量β
1と合成追加的ブレードピッチ調整量β
4との組合せにより、全体ブレードピッチ調整量β
refが提供される。代替的なコントローラ40は、定格風速以上で前述のように動作可能である。
【0142】
図4、5A、及び5Bのコントローラ10、30、及び40はブレードピッチコントローラとして示されているが、これらは追加的又は代替的に、発電機トルク調整量を計算し得て、これを、風力タービンを制御して、実際のロータ回転速度ω
rが標的ロータ回転速度ω
ref0に近付くようにする一方で第一及び第二の運動を減衰させるために使用できる。これはまた、風力タービン構造及び係留システムに加わる力を軽減させ、ある風速での電力出力を最大にする効果も有することができる。
【0143】
異なる周波数の第一の運動及び第二の運動を減衰させるための他の浮体式風力タービンコントローラ50が
図5Cに示されている。これは、標準コントローラ54と能動減衰コントローラ52も含む。
【0144】
このコントローラ50は、第一の運動の入力vp(これは、第一の周波数範囲内の風力タービンの測定又は推定速度であり得る)を受け取って、これを信号処理部56及び能動減衰ゲインKp 57を使って処理し、それを第一の追加的ロータ回転速度信号ωref1に変換する。コントローラ50はまた、第二の運動の入力vs(これは、第二の周波数範囲内の風力タービンの測定又は推定速度であり得る)を受け取って、これを信号処理部58及び能動減衰ゲインKs 59を使って処理し、それを第二の追加的ロータ回転速度信号ωref2に変換する。ωref1及びωref2は、それぞれ第一の運動及び第二の運動を減衰させるための出力である。信号処理部56及び58は各々、その制御ループのための関心対象の周波数範囲に合わせられ得る。コントローラ50は、定格風速以上で前述のように動作可能である。
【0145】
第一及び第二の運動を減衰させるための追加的ロータ回転速度信号ωref1及びωref2は、標的ロータ回転速度信号ωref0と組み合わせられ、実際のロータ回転速度ωrが差し引かれ、ロータ回転速度エラーωerrorが得られる。ロータ回転速度エラーωerrorは、変換回路51を使って浮体式風力タービンを制御するためのブレードピッチ調整信号βref及び/又は発電機トルク調整信号τgrefに変換される。変換回路51は、ロータ回転速度信号をブレードピッチ調整信号及び/又は発電機トルク信号を変換するための何れの既知の手段でもあり得、これは例えばPIコントローラ、PIDコントローラ、伝達関数、非線形方程式、及び/又は他の何れかの風力タービン制御システムである。
【0146】
図4、5A、及び5Bの他のコントローラ10、30、及び40と同様に、ブレードピッチ調整信号β
ref及び/又は発電機トルク調整信号τ
refは、実際のロータ回転速度ω
rが標的ロータ回転速度ω
ref0に近付き、それと同時に第一及び第二の運動を減衰させるように風力タービンを制御するために使用できる。これは、風力タービン構造及び係留システムに加わる力を軽減させる一方で、ある風速での電力出力を最大化することにつながることができる。
【0147】
図5Cのコントローラ50は、能動減衰コントローラ52及び標準コントローラ54からの入力を有する変換回路51を使用する。
【0148】
能動減衰コントローラと標準コントローラの各々からの寄与が相互に追加される順番又は、これらがPIコントローラ(又は他の何れかの変換回路)によりすでに処理されるか否かは、コントローラの実装の違いによって異なり得る。
【0149】
浮体式風力タービンのための各種の例示的なコントローラ間の共通の特徴は、コントローラが能動減衰コントローラと標準コントローラを含むことである。能動減衰コントローラは、周波数の異なる第一の運動の入力と第二の運動の別の入力を受け取る。これらの運動は、剛体運動、特にピッチ及び/又はサージ等の軸方向の運動であり得る。入力は、運動の速度の測定値及び/又は推定値であり得る。入力は、異なるセンサからの出力に基づき得る。例えば、第一の、より高い周波数の運動の速度は、浮体式風力タービンに設けられたモーションセンサからの出力に基づき得る。第二の、より低い周波数の運動の速度は、差分全地球測位システムからの出力に基づき得る。
【0150】
能動減衰コントローラは、第一及び第二の運動を減衰させるための1つ又は複数の出力(例えば、2つの別々の出力か合成出力)を計算する。出力は、1つ又は複数の追加的ロータ回転速度信号、ブレードピッチ調整信号、及び/又は発電機トルク調整信号であり得る。
【0151】
能動減衰コントローラからのこれらの出力は、実際のロータ回転速度及び標的ロータ回転速度と組み合わされて、浮体式風力タービンの実際のブレードピッチ及び/又は発電機トルクを制御するための出力が提供される。この出力は、第一の運動と第二の運動を有効に減衰するためのものである。これは、異なる周波数の異なる種類の運動により引き起こされ得る風力タービン構造と軽量構造の両方のへの負荷を軽減することができる。
【0152】
異なる周波数の第一の運動及び第二の運動に関して別々の制御ループ及び/又は入力が提供されるため、これらは異なる周波数に合わせることができ、それによって両方の種類の運動の有効な減衰を実現できる。
【0153】
図6及び7は、異なる周波数の運動を考慮する浮力タービン制御の利点を実証するのを助けるシミュレーション結果を示す。
図6は、既知のコントローラを備える、及び2種類の周波数の運動(この場合、より高周波数のピッチ運動とより低周波数のサージ運動)を考慮するコントローラを備える浮体式風力タービンのサージ運動を示す。
図7は、同じシミュレーションから得られた、最大負荷のかかる係留索における係留索張力を示す。シミュレーションでは、浮体式風力タービンがピッチ運動のみの能動減衰を行うブレードピッチコントローラを用いる場合と、より高周波数のピッチ運動とより低周波数のサージ運動の能動減衰を行うコントローラを有する浮体式風力タービンを比較している。
【0154】
このシミュレーションでは3本の係留索を有する8MWスパーブイ型浮体式風力タービンをモデル化した。
図6及び7は700~1700秒のシミュレーションのスナップショットを示しており、シミュレーション全体の長さは2700秒であった。シミュレーションのパラメータとして、平均風速は14ms
-1であり、8.9%の乱流強さがあり、有義波高は1.8mに設定され、特性ピーク周期は13.8sであった。
【0155】
この特定のパラメータ値群での2700秒間のシミュレーション全体を通じて、係留索の疲労寿命は、ピッチ運動及びサージ運動の複合的な能動減衰の場合(すなわち、2種類の周波数範囲の運動を考慮)、ピッチ運動のみの能動減衰(すなわち、1つの周波数範囲の運動を考慮)のそれと比較して、3.68倍長くなることがわかった。