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特許7440640電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層の分析のための方法およびそれを実行するための装置
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  • 特許-電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層の分析のための方法およびそれを実行するための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層の分析のための方法およびそれを実行するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20240220BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20240220BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 27/26 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
G01M3/20 B
B01D65/10
B01D53/22
G01N27/26 391Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022539077
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2020086474
(87)【国際公開番号】W WO2021130080
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】102019220561.5
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516186234
【氏名又は名称】グリナリティ・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Industriegebiet Sud E11, 63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーラタナファニト,サラユト
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ズッフスランド,イェンス-ペーター
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-510885(JP,A)
【文献】特開2004-033497(JP,A)
【文献】特開2006-349365(JP,A)
【文献】特開2005-098920(JP,A)
【文献】特開昭62-096838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0074954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
B01D 65/10
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層(10)の分析のための方法であって、
所定量のテストガスを前記機能層(10)の第1の表面(11)に導くことと、
前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に対向する、前記機能層(10)の第2の表面(12)に配置される検出装置(3)によって、前記機能層(10)を通過したテストガスの量を定量することと
を備え、
前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に導かれる前記テストガスが、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に配置されるテストガスチャンバ(2)において用意されるものであって、
前記テストガスチャンバ(2)が、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に向かって開放された開口部(2a)を有し、前記開口部(2a)が、前記機能層(10)の長手方向(X)における所定の長さおよび横方向(Z)における可変的に調節可能な幅を有する、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記機能層(10)が、前記検出装置(3)と前記テストガスチャンバ(2)との間に配置される移送装置(5)の上に用意され、前記移送装置(5)が前記テストガスチャンバ(2)の前記開口部(2a)と同じ寸法を有する隙間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能層(10)が、前記テストガスチャンバ(2)と前記検出装置(3)との間で前記移送装置(5)を用いて連続的に、特に0.2m/minから50m/minの速度で移送される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能層(10)が、負圧装置により生成される負圧によって前記移送装置(5)に吸着する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記機能層(10)が、可動の多孔質コーティング(9)が表面に配置された固定式ローラコア(8)に沿って案内され、前記テストガスチャンバ(2)が前記固定式ローラコア(8)に配置されており、前記機能層(10)が、特に少なくとも1つの他のガイドローラ(8a、8b)に沿って案内される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記機能層(10)が、その側面を長手方向(X)に案内され、および/又は
前記機能層(10)を通過した前記テストガスが、能動的に前記検出装置(3)へと導かれ、および/又は
前記テストガスが、一定の圧力または制御可能な圧力で、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に導かれ、および/又は
前記テストガスが、最低10kPa、特に最低50kPaの正圧で、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に導かれ、および/又は
前記テストガスが、0.1L/minから100L/minの体積流量で前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に導かれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置(1)であって、
所定量のテストガスを機能層(10)の第1の表面(11)に導くためのテストガスチャンバ(2)と、
前記テストガスの圧力の調節と制御のための圧力制御装置、および/または前記テストガスの体積流量を調節するための分配装置と、
前記機能層(10)を通過したテストガスの量を定量するための検出装置(3)と
を備え、
前記テストガスチャンバ(2)が、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に配置されており、前記検出装置(3)が、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に対向する、前記機能層(10)の第2の表面(12)に配置されているものであって、
前記テストガスチャンバ(2)が、前記機能層(10)の前記第1の表面(11)に向かって開放された開口部(2a)を有し、前記開口部(2a)が、前記機能層(10)の長手方向(X)における所定の長さ、および横方向(Z)における可変的に調節可能な幅を有する、ことを特徴とする、装置(1)。
【請求項8】
前記開口部(2a)の長さが1mmから500mmであり、および/又は
前記テストガスが、ヘリウム、またはヘリウム濃度が1vol%以上100vol%未満のヘリウム混合ガスであり、および/又は
前記検出装置(3)が質量分析計(4)を有し、および/又は
前記機能層(10)の側面を長手方向(X)に案内するための少なくとも1つの側面ガイド(6)、特に少なくとも1つのガイドベルトをさらに有し、および/又は
前記機能層(10)を通過した前記テストガスを前記検出装置(3)へ能動的に導くための吸引装置(7)をさらに有し、および/又は
前記機能層(10)を通過した前記テストガスを前記検出装置(3)へ能動的に導くキャリアガスを取り込むための装置をさらに有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
記テストガスチャンバ(2)と前記検出装置(3)の間で、前記機能層(10)を連続的に案内するための移送装置をさらに備え、前記機能層(10)を前記移送装置(5)へと吸引するための負圧生成用の負圧装置をさらに有する、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
可動の多孔質コーティング(9)が表面に配置されている固定式ローラコア(8)をさらに有し、前記テストガスチャンバ(2)が、前記固定式ローラコア(8)に配置されており、前記機能層(10)が、前記多孔質コーティング(9)の上に案内され、特に少なくとも1つの他のガイドローラ(8a、8b)をさらに有する、請求項7又は8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層における欠陥の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルの膜、触媒層又は触媒被覆膜の品質管理においては、例えば膜又は触媒層における欠陥を発見する目的で目視管理が行われる。目視管理の欠点は、欠陥が発見され得るのがしばしば層の可視表面においてのみであり、例えば層内部の欠陥、例えばガス透過性の上昇を伴う欠陥は認識されないままであることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、機能層全体において欠陥を確実に認識し、迅速かつ簡単に使用可能であって、技術的努力をあまり必要としない、電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層の分析方法を提供することである。それに加えて、簡単な構造、したがって単純な取扱いを特徴とする、当該分析方法を実行するための装置を提供することも、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は特許請求の範囲における独立項に記載されている方法および装置によって解決される。特許請求の範囲における従属項に記載されているのは、有利および発展的な実施形態である。
【0005】
上記課題は、以下の段階、すなわち、
i)所定量のテストガスを機能層の第1の表面に導くことと、
ii)機能層の第1の表面に対向する、機能層の第2の表面に配置される検出装置によって、機能層を通過したテストガスの量を定量することと
を含む、電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層の分析方法によって解決される。
【0006】
本発明にかかる方法は特に、電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層において生じ得る、例えば、穴、密度差、穿孔又は裂け目といった欠陥の分析を取り扱う。機能層の対象となり得るのは、例えば触媒層、膜、触媒被覆膜、あるいはポリマーフィルム及びガス拡散層と組み合わせた触媒被覆膜であり、その際、機能層は特に燃料電池用途、電解槽用途、又は電気化学的センサ用途に使用される。その際、電気化学的センサ用途は、例えば電気化学反応を用いた一酸化炭素検知器又は水素検知器である理解される。
【0007】
機能層は、下面とも呼ばれ得る第1の表面と、上面とも呼ばれ得る第2の表面とを有する。第1の表面と第2の表面は平面的に形成されていて、層厚方向において互いに対向している。したがって、第1及び第2の表面は機能層の外面を形成する。
【0008】
当該方法の第1段階において、所定量のテストガスが機能層の第1の表面に導かれる。テストガスは拡散によって機能層を通過し、機能層の第2の表面において機能層から排出される。
【0009】
その後、機能層を通過したテストガスの量が、詳しくは、機能層の第1の表面に対向する機能層の第2の表面に配置されている検出装置によって、定量される。検出装置は明確に限定されるものではなく、テストガスの定量を可能にするあらゆる検出装置を含んでよい。その際好適には、検出装置は、第2の表面において、第1の表面に導かれるテストガス流に対向する位置に取り付けられる。したがって、拡散によって生じるテストガスの損失が最小化され得る。しかし検出装置は主として第2の表面と永久的に結合された状態ではなく、第2の表面と単に接触しているのみである。
【0010】
電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層を通る、つまり機能層の横断面を通るテストガスの拡散によって、機能層の均質性の特徴が示される。例えば、テストガスは、機能層における穴もしくは密度が低減し、または厚みが低減している箇所を通る方が、欠陥の無い機能層を通るより、より迅速かつより完全に流出する。したがって、機能層の第1の表面に導かれる所定量のテストガスの基準値を超える定量済みのテストガスの量は、機能層に欠陥が存在し得ることの確実な証拠である。必要に応じて、所定量のテストガスが機能層を通って流出するのに要する時間も一緒に分析に含めてよい。
【0011】
好適には、所定量のテストガスは、まず機能層の欠陥の無い領域を通って導かれ、その後、機能層を通過して機能層の第2の表面において機能層から流出したテストガスの量と、それに要した時間とが、検出装置によって定量されてよい。この値が較正値又は比較値として参照され得る。ある場合に、機能層を通過する(必要に応じて単位時間当たりの)テストガスの量が比較値である設定値より小さければ、これは機能層のテストされた領域において密度がより高くなっていること、又はガス不透過性の異物が存在していることを示している。別の場合に機能層を通過する(必要に応じて単位時間当たりの)テストガスの量が比較値である設定値より大きければ、これは欠陥、例えば密度が低減している、横断面積が低減している、穴又は裂け目がある箇所が存在していることを示している。
【0012】
機能層を通過した所定量のテストガスの定量によって、機能層において起こり得る欠陥を確実に検出することができる、迅速、簡単で、高度な技術的努力を必要とせずに使用可能な、機能層の分析方法が提供される。検出装置によって算出された、機能層を通過したテストガスの量は、例えば表示装置を介して表示されてよい。
【0013】
有利な発展形態に従い、機能層の第1の表面に導かれるテストガスは、機能層の第1の表面に配置されたテストガスチャンバにおいて用意される。テストガスチャンバは閉塞領域であるが、当該方法の実行中は、必要に応じてテストガスチャンバへのテストガス供給部を例外として、機能層の第1の表面に向かってのみ開放されている。テストガスチャンバは、テストガスが機能層の第1の表面に直接導かれ、機能層を通って流出する前に拡散消滅しないことを保証する。したがって、テストガス以外のガスの流入もまた防止される。
【0014】
テストガスチャンバは、既定の体積と、機能層の長手方向における所定の長さを有する開口部とを有する。その際、機能層の長手方向は、デカルト座標系に従って機能層のX方向に延びる方向と理解され、これは層厚方向に対して垂直に伸長する。それに加えて、テストガスチャンバの開口部は、機能層の横方向に伸長する、可変的に調節可能な幅を有する。その際、機能層の横方向は、デカルト座標系に従って機能層のZ方向に延びる方向と理解され、これは層厚方向に対して垂直かつ長手方向に対しても垂直に伸長する。したがって、所定量のテストガスが、テストガスチャンバからテストガスチャンバの開口部を介して機能層の第1の表面へと、特に適切かつ調節可能に導かれてよい。
【0015】
更に有利に、機能層は移送装置の上に用意される。移送装置として好適に考慮の対象となるのは、特に、機能層を水平に移動させるコンベヤベルトである。移送装置は、検出装置とテストガスチャンバとの間、つまりより詳細には、機能層とテストガスチャンバとの間、又は機能層と検出装置との間に配置されており、それによって、機能層は、テストガスチャンバと検出装置との間で移動可能すなわち移送可能である。テストガスが予定通りに機能層を通過できるように、移送装置は、テストガスチャンバの長手方向の長さおよび横方向の幅によって規定された、第1の表面に向けられたテストガスチャンバの開口部と同じ寸法の隙間を有する。
【0016】
更なる有利な実施形態に従い、機能層は、移送装置を用いて連続的にテストガスチャンバと検出装置との間を、特に0.2m/minから50m/minの速度で通過する。機能層をテストガスチャンバと検出装置との間で連続的に移送することによって、特に機能層が細長い帯形状で存在する場合にも機能層の連続的分析が可能になる。0.2m/minと50m/minの搬送速度によって、機能層の全長に渡って、迅速かつ確実な分析がさらに可能になる。
【0017】
機能層を通過したテストガスの量の算出時の誤差を防止するために、機能層は主として負圧によって移送装置に吸引される。それによって、テストガスが機能層を通って流出する前のテストガスの拡散消失を助長しかねない、機能層と移送装置との間の隙間の存在が防止され得る。この目的で、移送装置は、負圧装置を接続可能又は配置可能である、特に多孔質の複数の開口部を備えている。
【0018】
更なる実施形態に従い、機能層は、負圧を用いて機能層を吸引可能な可動の多孔質コーティングが表面に配置された固定式ローラコアに沿って案内される。その際、テストガスチャンバは、固定式ローラコアに、詳しくは特にテストガスチャンバの開口部がローラコア表面に向けられた状態であるように配置されており、機能層は多孔質コーティング上でローラコア表面に沿って伸長する。したがって、この実施形態においても、テストガスチャンバの開口部は所定量のテストガスが導かれる機能層の第1の表面と直接接触している。
【0019】
機能層の確実な予備けん引を可能にするために、機能層は有利に少なくとも1つの更なるガイドローラに沿って案内され、それによって不確実な測定が防止されてよい。
【0020】
更に有利に、機能層は、分析実行前に第1の供給ローラから展開され、分析実行後に第2の供給ローラに巻き取られることができ、これによって当該方法の連続的な実行が可能になる。
【0021】
主として、機能層は、側面を長手方向に、例えば制限ベルトによって案内され、それによって所定量のテストガスが機能層における予定の箇所を通過することができ、その結果、測定値のばらつきが低減される。
【0022】
当該方法の実行を促進させるために、機能層を通過したテストガスは、主として能動的に検出装置へと導かれる。これは例えば、機能層の第2の表面を通過して検出装置へと導かれる不活性ガス流を用いて行われてよい。また、検出装置の側に、機能層を通過した機能層の第2の表面に存在するテストガスを吸引し、検出装置へと導く負圧装置を装備しておくこともできる。
【0023】
機能層の第1の表面へと導くべき所定量のテストガスをより容易に調節することができるように、テストガスは主として一定の圧力又は制御可能な圧力で機能層の第1の表面に導かれる。
【0024】
当該方法を更に促進しテストガスが機能層を通過することを保証するために、テストガスは、最低10kPa、特に最低50kPaの正圧で機能層の第1の表面に導かれることが有利に予定されている。
【0025】
測定の不確実性を最小化するために、テストガスは、0.1L/minから100L/minの体積流量で機能層の第1の表面に導かれることを、更に有利に予定される。これによって、非常に適切に定量可能な十分な量のテストガスが用意され得る。
【0026】
同様に本発明に従い、上記で開示した方法を実行するための装置も与えられる。当該装置は、所定量のテストガスを機能層の第1の表面に導くためのテストガスチャンバと、機能層を通過したテストガスの量を定量するための検出装置とを有する。
【0027】
上記で開示した本発明に従う方法を実行するための本発明に従う装置が与えられるので、装置に関する特徴と技術的詳細の明確化に関連して、本発明に従う方法に関する当該装置の仕様への補足的言及がなされる。
【0028】
したがって、テストガスチャンバは、機能層の第1の表面に配置されていて、検出装置は機能層の第1の表面に対向する機能層の第2の表面に配置されている。つまり機能層は、テストガスチャンバと検出装置との間に位置する。更に、テストガスチャンバは、機能層の第1の表面に向かって開放された開口部を有し、該開口部は機能層の長手方向における所定の長さと横方向における可変的に調節可能な幅とを有する。したがって、テストガスは、予め決定可能な大きさの開口部を通過して機能層の第1の表面に導かれてよい。
【0029】
本発明に従う装置は、単純かつ場所を取らない構造を特徴とし、電気化学セルと電気化学的センサ用途の機能層の確実かつ迅速な分析が可能となる。
【0030】
有利な実施形態に従い、開口部の長さは1mmから500mmである。該長さは、本明細書においてはデカルト座標系を前提としてX方向において決定される。
【0031】
ヘリウムおよびヘリウム含有混合ガスが非常に優れた拡散特性を特徴とするので、テストガスとして考慮の対象となるのは、特に、ヘリウム、又はヘリウム濃度が1vol%以上100vol%未満のヘリウム混合ガスである。
【0032】
好適に検出装置には質量分析計が含まれてよく、これによって定量分析だけではなく定性分析も行われる。これは、場合によっては外部気体が分析に及ぼし得る影響を排除可能すなわち算出できるからである。
【0033】
主として、当該装置には、機能層の側面を長手方向にテストガスチャンバと検出装置の間で案内するための少なくとも1つの側面ガイド、特に少なくとも1つのガイドベルトが含まれる。これによって、分析するべき機能層のずれが防止され、機能層上のテスト領域の位置が容易に限定され得る。更に、ガイドベルトによって、テストガスが側方にバイパスして漏出不能であることが保証される。
【0034】
第1の表面に導くべき所定量のテストガスの調節を容易にするために、当該装置は更に有利に、テストガスの圧力の調節と制御を目的とした圧力制御装置及び/又はテストガスの体積流量を調節するための分配装置を有してよい。
【0035】
機能層を通過したテストガスの検出時の誤差を最小化する観点から、更に有利に、当該装置は、機能層を通過したテストガスを検出装置へと能動的に導くための吸引装置を有してよい。
【0036】
更に有利に、本装置は、機能層を通過したテストガスを検出装置へと能動的に導くためのキャリアガスを取り込むための装置を含んでよい。この実施形態は、検出装置が質量分析計を有する実施形態において特に有利である。これによってキャリアガスの影響が別に算定され得るからである。
【0037】
更に有利に、当該装置は、テストガスチャンバと検出装置の間で機能層を連続的に案内する目的で、移送装置を含んでよい。これによって、当該方法は当該装置を用いて連続的かつ迅速に実行され得る。その上、機能層は任意の箇所で容易かつ確実に分析され得る。
【0038】
上述の実施形態において、更に、機能層を移送装置へと吸引するための負圧生成用の負圧装置が設けられていれば特に有利である。これにより外部気体が分析結果に及ぼす影響が最小化され、それによって当該装置によって実施された方法の信頼性と精度が向上するからである。
【0039】
当該装置は更に有利に、可動の多孔質コーティングが表面に配置された固定式ローラコアを含むことができ、テストガスチャンバは固定式ローラコアに配置されており、機能層は多孔質コーティング上に案内される。多孔質コーティングは、例えば、ローラコアの周囲を移動可能である独立した層であってよい。
【0040】
当該装置はさらにまた、機能層の移送および用意を改善し、機能層の不均一な配置による測定誤差を防止するために、機能層のけん引を可能にする少なくとも1つの更なるガイドローラを有してもよい。
【0041】
本発明の更なる詳細、利点及び特徴は、図面に基づき以下の実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1の実施形態に従う装置の概略側面図である。
図2】第2の実施形態に従う装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面には本発明の基本的特徴のみが示されている。その他の全ての特徴は、明瞭化のために省略されている。更に、同一の要素すなわち部材には同一の符号が付される。
【0044】
図1は、電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層10の分析方法を実行するための装置1を図式的に詳細に示す側面図である。本装置は所定量のテストガスを機能層10の第1の表面11に導くためのテストガスチャンバ2と、機能層10を通過したテストガスの量を定量するための検出装置3とを有する。
【0045】
本明細書において、テストガスチャンバ2は機能層の第1の表面11に配置されていて、該表面は、図1に示した実施形態においては機能層10の下面であって、XZ方向に延在する。
【0046】
検出装置3は機能層10の第2の表面12に配置されている。第2の表面12は、機能層10の第1の表面11に対向し、図1に示す実施形態においては機能層10の上面であり、これも同様にXZ方向に延在する。
【0047】
テストガスチャンバ2は機能層10の第1の表面11に向かって開放されている。該チャンバは、機能層10の長手方向X、つまり本明細書に示す実施形態においては装置の進行方向、における所定の長さと、Z方向に延びる可変的に調節可能な幅とを持つ開口部2aを有する。したがって、テストガスチャンバ2は開口部2aを用いて機能層10の第1の表面11と接触している。該開口部は例えば1mmから500mmの長さを有してよい。
【0048】
テストガスチャンバ2にはテストガスが含まれ、これは例えば外部からテストガスチャンバ2に供給可能である。テストガスは主としてヘリウム又はヘリウム濃度が1vol%以上100vol%未満のヘリウム混合ガスである。
【0049】
本方法を実施するために、所定量のテストガスが機能層10の第1の表面11に導かれる。この目的で、テストガスには例えば最低10kPaの圧力を加えることができ、本装置1にはこの目的で、テストガスの圧力の調節と制御を目的とした圧力制御装置及び/又はテストガスの体積流量を調節するための分配装置が有利に含まれる。
【0050】
テストガスはテストガスチャンバ2から出て、機能層10を通って層厚方向Yに拡散する。機能層10を通過したテストガスの検出装置3への移送を加速させるために、装置1は、機能層10を通過したテストガスを検出装置3へと能動的に導くための吸引装置7を有してよい。テストガスは機能層10の第2の表面12に到達する。そこで、機能層10を通過したテストガスの定量が、検出装置3によって行われる。この目的で検出装置3は、テストガスの成分を算出する質量分析計4を含むことができ、それによって、テストガスの組成および外部気体が算出されてよい。また、検出装置3によって算出された結果は表示装置に表示されてよい。
【0051】
機能層10の分析するべき箇所に、例えば穴、穿孔又は裂け目といった、欠陥が存在すれば、テストガスは機能層10の第1の表面11から第2の表面12へとより迅速に移動する。換言すれば、機能層10の欠陥の無い箇所におけるより、単位時間当たりより多くのテストガスが機能層10を通って拡散する。これは定量可能であり、機能層における欠陥の存在と関連付けられ得る。
【0052】
装置1はコンパクトな仕様を特徴とし、電気化学セル又は電気化学的センサ用途の機能層10の確実かつ迅速な分析を可能にする。機能層10として考慮の対象となるのは、特に膜、触媒層、触媒被覆膜、並びにポリマーフィルム及びガス拡散層と組み合わせた触媒被覆膜である。
【0053】
図1に示されるように、機能層10は移送装置5上で案内されてよい。移送装置5はテストガスチャンバ2と検出装置3との間における機能層10の連続的案内に用いられる。移送装置5には、特にガイドベルトの形態の側面ガイド6を装備しておくことができ、それによって、機能層10の側面が長手方向Xに案内され、ずれが防止される。移送装置5における機能層10の固定を改善する目的で、機能層10を移送装置5へと吸引するための負圧生成用の負圧装置を装備しておいてもよい。
【0054】
テストガスチャンバ2の領域において移送装置5は対応する隙間を有し、それによって、テストガスが妨害されずにテストガスチャンバ2から機能層10の第1の表面11へと拡散してよい。
【0055】
装置1は高度に機能的かつコンパクトに形成されており、欠陥に関して機能層10の確実かつ迅速な分析を可能にする。
【0056】
図2は装置1の第2の実施形態を示す。第2の実施形態において、装置1には移送装置5の代わりに、可動の多孔質コーティング9が表面に配置されている固定式ローラコア8が含まれる。テストガスチャンバ2は固定式ローラコア8に配置されている。
【0057】
上記の実施形態において、機能層10は固定式ローラコア8の多孔質コーティング9の表面によって案内される。加えて、機能層は2つの更なるガイドローラ8aおよび8bの表面によって案内され、それによって機能層10のけん引が可能になる。
【0058】
欠陥の分析に関する機能層10の本方法は、図1の装置1において示したものと同様に実施されてよい。ガイドローラ8aおよび8b並びに多孔質コーティング9に沿って、機能層10はテストガスチャンバ2と検出装置3との間に導かれる。この領域において、テストガスは、テストガスチャンバ2から機能層10の第1の表面11に導かれ、機能層を層厚方向Yに通り抜け、検出装置3が配置されている第2の表面12へと移動する。機能層10を通過したテストガスは検出装置3によって定量され、それによってこの実施形態においても、機能層10を通過したテストガス算出量に基づいて、機能層における欠陥の存在が推論されてよい。
【0059】
キャリブレーションのために、両実施形態において、装置1はまず、検査すべき機能層10の欠陥の無い領域を、本方法を用いて分析し、テストガスの流出量の比較値、及び必要に応じてそれに必要な時間が測定されてよい。
【0060】
また、第2の実施形態に従う装置も、コンパクトかつ高度に機能的な仕様を特徴とする。
【0061】
本発明の上述の明細書の他に、本発明を補足的に開示する目的で、図1図2における本発明の図解がここで明示的に参照される。
【符号の説明】
【0062】
1 装置
2 テストガスチャンバ
2a 開口部
3 検出装置
4 質量分析計
5 移送装置
6 側面ガイド
7 吸引装置
8 固定式ローラコア
8a ガイドローラ
8b ガイドローラ
9 多孔質コーティング
10 機能層
11 機能層の第1の表面
12 機能層の第2の表面
X 長手方向
Y 層厚方向
Z 横方向
図1
図2