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特許7440642エポキシ樹脂系防食塗料組成物、防食塗膜、積層防汚塗膜、防汚基材および防汚基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂系防食塗料組成物、防食塗膜、積層防汚塗膜、防汚基材および防汚基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240220BHJP
   C09D 167/08 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240220BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D167/08
C09D5/08
C09D5/16
C09D5/00 D
C09D7/63
B32B27/38
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022539515
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027839
(87)【国際公開番号】W WO2022025096
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020129549
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名部 玲乃
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌満
(72)【発明者】
【氏名】信家 克哉
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-239569(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221266(WO,A1)
【文献】特開2017-132960(JP,A)
【文献】特開2007-045849(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105153880(CN,A)
【文献】国際公開第2017/146193(WO,A1)
【文献】特開2005-048200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11
B41J2/01
B41M5/00
B32B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系樹脂(A)、アルキド系樹脂(B)およびアミン系硬化剤(C)を含有し、
前記アルキド系樹脂(B)が、(半)乾性油または(半)乾性油脂肪酸を用いて得られた樹脂であり、酸価が0.5~10mgKOH/gである、
有機溶剤型であり、かつ、水中で防食性および防汚性が求められる基材用のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【請求項2】
前記アルキド系樹脂(B)が、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【請求項3】
前記アルキド系樹脂(B)の含有量が、前記エポキシ系樹脂(A)の固形分100質量部に対し、1~80質量部である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【請求項4】
前記エポキシ系樹脂(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂、ならびに、これらのエポキシ樹脂を変性した変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【請求項5】
固形分の容積率が60~80容量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
【請求項7】
請求項に記載の防食塗膜、および、防汚塗膜をこの順で含む積層防汚塗膜。
【請求項8】
前記防汚塗膜が加水分解型防汚塗膜である、請求項に記載の積層防汚塗膜。
【請求項9】
前記防汚塗膜がロジン類を含有する、請求項またはに記載の積層防汚塗膜。
【請求項10】
基材表面に、請求項のいずれか一項に記載の積層防汚塗膜が、前記基材側から防食塗膜、防汚塗膜の順序となるように積層されてなる防汚基材。
【請求項11】
前記基材が、船舶、水中構造物および漁具からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項10に記載の防汚基材。
【請求項12】
基材表面に請求項のいずれか一項に記載の積層防汚塗膜を形成する工程を含む、防汚基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、エポキシ樹脂系防食塗料組成物、防食塗膜、積層防汚塗膜、防汚基材または防汚基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、水中構造物等の(大型)構造物の多くは、鋼材などの金属基材が使用されている。これらの構造物は海水等による腐食防止のために防食塗料が塗装され、その上から生物付着防止のため、防汚塗料が塗装されている。
【0003】
前記防汚塗料としては、長期防汚性能が良好である加水分解型防汚塗料を使用することが現在の主流であり、該加水分解型防汚塗料としては、防汚剤の溶出を促進させるため、また、防汚塗膜の消耗持続性を向上させるためにロジン類を含有している塗料が多く用いられている。特に、船速の遅い船舶や、運航条件が不定期で長期の停泊がある船舶には、防汚性能を向上させることを目的として、ロジン類含有量が比較的多い(例:ロジン類含有量が、ロジン類と塗膜形成用樹脂との合計100質量%に対し、30質量%以上)加水分解型防汚塗料が採用されている(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-53796号公報
【文献】特表2019-535868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ロジン類含有量が比較的多い加水分解型防汚塗料から形成される防汚塗膜(以下「ロジン高含有防汚塗膜」ともいう。)は、塗膜硬度が高くなり、下塗り塗膜である防食塗膜に付着しにくいことが分かった。特に、下塗り塗膜を形成してから、防汚塗料を塗装するまでの塗装間隔(インターバル)が長い場合、該防汚塗膜は、下塗り塗膜への付着性が不十分になる傾向があった。
また、本発明者が検討したところ、従来、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜も存在はしていたが、このようなロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜は、防食性の点で改良の余地があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成可能なエポキシ樹脂系防食塗料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、所定の組成物によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0008】
[1] エポキシ系樹脂(A)、アルキド系樹脂(B)およびアミン系硬化剤(C)を含有するエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【0009】
[2] 前記アルキド系樹脂(B)が、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[3] 前記アルキド系樹脂(B)の含有量が、前記エポキシ系樹脂(A)の固形分100質量部に対し、1~80質量部である、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【0010】
[4] 前記エポキシ系樹脂(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂、ならびに、これらのエポキシ樹脂を変性した変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【0011】
[5] 固形分の容積率(ボリュームソリッド)が50~100容量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[6] 固形分の容積率(ボリュームソリッド)が60~80容量%である、[1]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
【0012】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
【0013】
[8] [7]に記載の防食塗膜、および、防汚塗膜をこの順で含む積層防汚塗膜。
[9] 前記防汚塗膜が加水分解型防汚塗膜である、[8]に記載の積層防汚塗膜。
[10] 前記防汚塗膜がロジン類を含有する、[8]または[9]に記載の積層防汚塗膜。
【0014】
[11] 基材表面に、[8]~[10]のいずれかに記載の積層防汚塗膜が、前記基材側から防食塗膜、防汚塗膜の順序となるように積層されてなる防汚基材。
[12] 前記基材が、船舶、水中構造物および漁具からなる群より選択される少なくとも一つである、[11]に記載の防汚基材。
【0015】
[13] 基材表面に[8]~[10]のいずれかに記載の積層防汚塗膜を形成する工程を含む、防汚基材の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、下塗り塗膜を形成してから、防汚塗料を塗装するまでの塗装間隔(インターバル)が長い場合であっても、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性(以下「インターバル付着性」ともいう。)に優れる防食塗膜を形成することができる。
このため、本発明の一実施形態に係るエポキシ樹脂系防食塗料組成物は、基材、防食塗膜、および、防汚塗膜、特にロジン類を含有する防汚塗膜をこの順で含む積層防汚塗膜の形成に好適に用いることができる。
【0017】
近年、防食塗料組成物は、環境対応、揮発性有機化合物(VOC)規制、塗装回数削減等の要望によりハイソリッド化が求められているが、従来の防食塗料をハイソリッド化しようとすると、該防食塗料から形成される防食塗膜と、その上に形成される防汚塗膜との付着性が低下し、従来の防食塗料から形成される防食塗膜と、その上に形成される防汚塗膜との付着性を向上させようとすると、該防食塗料をハイソリッド化できなかった。つまり、従来の防食塗料では、ハイソリッド化と防汚塗膜との付着性とはトレードオフの関係にあり、これらの両立は困難であった。
一方、本発明の一実施形態によれば、ハイソリッド化と防汚塗膜との付着性との両立が可能であり、ハイソリッドな防食塗料であっても、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪エポキシ樹脂系防食塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係るエポキシ樹脂系防食塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ系樹脂(A)、アルキド系樹脂(B)およびアミン系硬化剤(C)を含有する。
本発明者が鋭意検討したところ、エポキシ-アミン系防食塗料組成物に、アルキド系樹脂(B)を用いることにより、ハイソリッドでありながら、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成することができることを見出した。
本組成物は、ロジン高含有防汚塗膜の被塗物への付着用バインダーとして適している。つまり、積層防汚塗膜を形成する際の被塗物とロジン高含有防汚塗膜との間に、該防汚塗膜に接して設けられる塗膜を形成するための組成物として好適に用いられる。該被塗物の好適例としては、ショッププライマー塗膜が形成された基材や、基材側から、ショッププライマー塗膜、下記その他プライマー塗膜がこの順で形成された基材が挙げられる。
【0019】
本組成物の固形分の容積率(ボリュームソリッド)は、好ましくは50容量%以上、より好ましくは55容量%以上、特に好ましくは60容量%以上であり、好ましくは100容量%以下、より好ましくは90容量%以下、特に好ましくは80容量%以下である。
固形分の容積率が前記範囲にあると、エアースプレー、エアレススプレー、刷毛塗りなどの塗装に好適な塗料組成物を容易に得ることができる。また、一般的に、塗料組成物の固形分の容積率が60容量%以上であれば、ハイソリッド型塗料組成物であるといえる。また、固形分の容積率が前記特に好ましい範囲にある組成物を用いることで、一回の塗装で形成できる膜厚を厚くでき、一定以上の膜厚が必要である防食性に優れる防食塗膜を形成する際の塗装回数を減らすことができる。
本明細書における「本組成物の固形分の容積率(ボリュームソリッド)」は、ISO3233:1998に準拠し、該組成物の体積、および該組成物の固形分の体積から算出した。
【0020】
本組成物の固形分は、本組成物を十分に反応硬化(加熱)した後の塗膜(加熱残分)の質量百分率、または、該塗膜(加熱残分)自体を意味する。前記固形分は、JIS K 5601-1-2に従って、本組成物(例えば、主剤成分と硬化剤成分を混合した直後の組成物)1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間乾燥させた後、加熱温度110℃で1時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分および該針金の質量を測定することで算出することができる。なお、この固形分は、本組成物に用いる原料成分の固形分(溶媒以外の成分)の総量と同等の値である。
前記本組成物中の固形分の体積は、本組成物の固形分の質量および真密度から算出することができる。前記固形分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
【0021】
本組成物は、通常、エポキシ系樹脂(A)を含有する主剤成分と、アミン系硬化剤(C)を含有する硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要により、本組成物は、3成分型以上の組成物としてもよい。
これら主剤成分および硬化剤成分等は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0022】
<エポキシ系樹脂(A)>
エポキシ系樹脂(A)としては特に制限されないが、例えば、1分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、そのエポキシ基の一部の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
エポキシ系樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
エポキシ系樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
このようなエポキシ系樹脂(A)の具体例としては、エピクロロヒドリン-ビスフェノールA樹脂等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピクロロヒドリン-ビスフェノールAD樹脂等のビスフェノールAD型エポキシ樹脂;エピクロロヒドリン-ビスフェノールF樹脂等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピクロロヒドリン-フェノールノボラック樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;3,4-エポキシフェノキシ-3',4'-エポキシフェニルカルボキシメタン等の芳香族エポキシ樹脂;エピクロロヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂中のベンゼン環に結合している水素原子の少なくとも一部が臭素原子で置換された臭素化エポキシ樹脂;エピクロロヒドリンと脂肪族2価アルコールとを反応させた脂肪族エポキシ樹脂;エピクロロヒドリンとトリ(ヒドロキシフェニル)メタンとを反応させた多官能性エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂をダイマー酸(不飽和脂肪酸の二量体)で変性したダイマー酸変性エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂中の芳香環が水素化された水添エポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
これらの中でも好ましいエポキシ系樹脂(A)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂、ならびに、これらのビスフェノール型エポキシ樹脂を変性した変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂であり、特に好ましいエポキシ系樹脂(A)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0026】
エポキシ系樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)は、本組成物の塗装硬化条件(例:常乾塗装または焼付け塗装)などにもより、一概に決定されないが、好ましくは350~20,000である。
該Mwは、下記実施例に記載の条件またはこれと同等の条件で測定できる。
【0027】
エポキシ系樹脂(A)の粘度(25℃)は、好ましくは12,000mPa・s以下であり、より好ましくは10,000mPa・s以下である。
【0028】
エポキシ系樹脂(A)のエポキシ当量(JIS K 7236に準拠)は、好ましくは150~1,000である。
エポキシ系樹脂(A)としては、エポキシ当量が150~700であるビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
なお、エポキシ系樹脂(A)として、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合の前記エポキシ系樹脂(A)の重量平均分子量およびエポキシ当量は、2種以上のエポキシ樹脂全体としての重量平均分子量およびエポキシ当量である。
【0029】
代表的なビスフェノールA型エポキシ樹脂として、常温で液状のものとしては、例えば、「jER 828」(三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:180~200、固形分:100質量%)、「E-028-90X」(大竹明新化学(株)製、828タイプエポキシ樹脂、固形分エポキシ当量:180~200、キシレンカット品、固形分:90質量%)、「AER260」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量:190、固形分:100質量%)が挙げられ、
常温で半固形状のものとしては、例えば、「jER 834-X90」(三菱ケミカル(株)製、固形分エポキシ当量:230~270、キシレンカット品、固形分:90質量%)、「E-834-85X(T)」(大竹明新化学(株)製、固形分エポキシ当量:約230~270、キシレンカット品、固形分:85質量%)が挙げられ、
常温で固形状のものとして、例えば、「jER 1001-X75」(三菱ケミカル(株)製、固形分エポキシ当量:450~500、キシレンカット品、固形分:75質量%)、「E-001-75X」(大竹明新化学(株)製、固形分エポキシ当量:約450~500、キシレンカット品、固形分:75質量%)が挙げられる。
【0030】
また、その他のエポキシ樹脂としては、例えば、「jER 807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:160~175、固形分:100質量%)、「フレップ60」(ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、東レ・ファインケミカル(株)製、エポキシ当量:約280、固形分:100質量%)、「YD-172-X75」(ダイマー酸変性エポキシ樹脂、国都化学(株)製、固形分エポキシ当量:600~700、キシレンカット品、固形分:75質量%)、「Epiclon 5300-70」(ノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製、固形分エポキシ当量:300~340、キシレン/イソブチルアルコールカット品、固形分:70質量%)が挙げられる。
【0031】
本組成物中のエポキシ系樹脂(A)の固形分の含有量は、防食性に優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0032】
<アルキド系樹脂(B)>
アルキド系樹脂(B)としては特に制限されないが、具体的には、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの中でも、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、アルキド系樹脂(B)は、アルキド変性アクリル樹脂(b2)を含むことが好ましい。
アルキド系樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0033】
本組成物中のアルキド成分の含有量は、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、エポキシ系樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。
る。
また、アルキド系樹脂(B)がアルキド変性アクリル樹脂(b2)である場合、本組成物中のアルキド成分の含有量のさらに好ましい範囲は、エポキシ系樹脂(A)100質量部に対し、4~48質量部である。
アルキド成分の含有量が前記範囲を下回ると、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性が低下する場合があり、アルキド成分の含有量が前記範囲を上回ると、防食性が低下する場合がある。
【0034】
なお、アルキド成分とは、アルキド樹脂(b1)、および、アルキド変性アクリル樹脂(b2)を構成するアルキド樹脂(樹脂(b2)中のアルキド変性分)の合計のことをいう。
例えば、本組成物が、固形分がX質量%であるアルキド樹脂(b1)αgと、固形分がY質量%であり、アルキド変性量がy質量%であるアルキド変性アクリル樹脂(b2)βgとを含む場合、前記アルキド成分量は、α×(X/100)+β×(Y/100)×(y/100)である。
【0035】
本組成物中のアルキド系樹脂(B)の含有量は、アルキド成分の含有量が前記範囲となるような量であることが好ましく、アルキド変性アクリル樹脂(b2)の変性量に応じて適宜選択すればよいが、エポキシ系樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。
アルキド系樹脂(B)の含有量が前記範囲にあると、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0036】
[アルキド樹脂(b1)]
アルキド樹脂(b1)は、従来公知の樹脂が挙げられ、従来公知の方法で得ることができるが、(半)乾性油または(半)乾性油脂肪酸と、酸成分と、多価アルコール成分とを重縮合させて得られる樹脂であることが好ましい。
アルキド樹脂(b1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
前記(半)乾性油としては、魚油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、アマニ油、大豆油、ゴマ油、ケシ油、エノ油、麻実油、ブドウ核油、トウモロコシ油、トール油、ヒマワリ油、綿実油、クルミ油、ゴム種油などが挙げられ、(半)乾性油脂肪酸としては、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0038】
前記(半)乾性油または(半)乾性油脂肪酸の使用量は、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0039】
前記酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、アジピン酸、安息香酸、ロジン、コハク酸が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0040】
前記酸成分の使用量は特に制限されないが、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0041】
前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0042】
前記多価アルコール成分の使用量は特に制限されないが、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0043】
アルキド樹脂(b1)のGPC法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは120,000以下、より好ましくは100,000以下である。
該Mwは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0044】
アルキド樹脂(b1)の酸価は、樹脂に含まれるカルボキシ基の数に依存して変動することから、樹脂(b1)のカルボキシ基がどの程度存在するかを示す指標となる。
アルキド樹脂(b1)の酸価は、耐水性とロジン高含有防汚塗膜に対する付着性とにバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上であり、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは9mgKOH/g以下である。
該酸価は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0045】
[アルキド変性アクリル樹脂(b2)]
アルキド変性アクリル樹脂(b2)は、アクリル樹脂の一部がアルキド変性(アルキド樹脂で変性)された樹脂であり、好ましくは、アルキド樹脂(b2-1)と(メタ)アクリル化合物(b2-2)を含む不飽和モノマーとを用いて合成することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルのことを意味する。同様の表現(例:(メタ)アクリレート)は同様の意味を有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂を、単に「アクリル樹脂」ともいう。つまり、アルキド変性アクリル樹脂(b2)は、アルキド変性アクリル樹脂および/またはアルキド変性メタクリル樹脂のことである。
アルキド変性アクリル樹脂(b2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
アルキド変性アクリル樹脂(b2)は、具体的には、アルキド樹脂(b2-1)に溶剤を加え、そこに、(メタ)アクリル化合物(b2-2)を含む不飽和モノマーおよび重合開始剤を所定量加えて、80~150℃で3~10時間程度反応させることにより合成することが好ましい。
【0047】
アルキド樹脂(b2-1)としては、前記アルキド樹脂(b1)と同様の樹脂等が挙げられる。
【0048】
アルキド樹脂(b2-1)の使用量は、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、アルキド変性アクリル樹脂(b2)100質量%中のアルキド樹脂(b2-1)由来の構造単位の含有量(アルキド変性量)が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となる量であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下となる量である。
【0049】
前記不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル化合物を用いれば特に制限されず、(メタ)アクリル化合物と共に、他の不飽和モノマーを用いてもよい。
【0050】
前記(メタ)アクリル化合物(b2-2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-またはiso-プロピル(メタ)アクリレート、n-、iso-またはtert-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の脂環,芳香環,複素環またはビニル基含有(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ-ブチロラクトンまたはε-カプロラクトン等との付加物、グリセロール(メタ)アクリレート等の複数の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、m-またはp-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o-、m-またはp-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基および(メタ)アクリロイル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の第一級または第二級アミノ基および(メタ)アクリロイル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n-、iso-またはtert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記(メタ)アクリル化合物(b2-2)は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0051】
前記他の不飽和モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等の複素環族系塩基性モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の一塩基酸または二塩基酸モノマー、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等の二塩基酸モノマーのモノエステルが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0052】
前記(メタ)アクリル化合物(b2-2)の使用量としては、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、前記不飽和モノマー100質量%に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0053】
前記不飽和モノマーとしては、顔料分散性に優れ、また、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる傾向にあることから、メタクリル酸を含むことが好ましい。
【0054】
前記不飽和モノマーとして、メタクリル酸を用いる場合には、アルキド変性アクリル樹脂(b2)100質量%に対する、メタクリル酸由来の構造単位の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、またその上限値は10質量%であることが、得られる防食塗膜の防食性(耐水性など)等の点から望ましい。
【0055】
前記不飽和モノマーとしては、硬度とロジン高含有防汚塗膜に対する付着性とにバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、スチレンを含むことが好ましい。前記不飽和モノマーとして、スチレンを用いる場合には、アルキド変性アクリル樹脂(b2)100質量%に対する、スチレン由来の構造単位の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0056】
アルキド変性アクリル樹脂(b2)のGPC法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下である。
該Mwは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0057】
アルキド変性アクリル樹脂(b2)の酸価は、耐水性とロジン高含有防汚塗膜に対する付着性とにバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上であり、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは9mgKOH/g以下である。
該酸価は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0058】
<アミン系硬化剤(C)>
前記アミン系硬化剤(C)としては、特に制限されず、脂肪族アミン系硬化剤、脂環族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、芳香脂肪族アミン系硬化剤、複素環アミン系硬化剤等が挙げられる。
また、前記アミン系硬化剤(C)としては、これら以外のその他のアミン系硬化剤であってもよく、該その他のアミン系硬化剤としては、例えば、特公昭49-48480号公報に記載のアミン類(アミン化合物)、ポリエーテルジアミンが挙げられる。
前記アミン系硬化剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
前記脂肪族アミン系硬化剤としては、アルキルモノアミン、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミン等が挙げられる。
【0060】
前記アルキレンポリアミンは、例えば、式:「H2NR1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0061】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(Cm2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
【0062】
これらアルキレンポリアミンやポリアルキレンポリアミン以外の脂肪族アミン系硬化剤としては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、2,2'-[エチレンビス(イミノトリメチレンイミノ)]ビス(エタンアミン)、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテルが挙げられる。
【0063】
脂環族アミン系硬化剤としては、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4'-メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、4,4'-イソプロピリデンビス(シクロヘキサンアミン)、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)等が挙げられる。
【0064】
芳香族アミン系硬化剤としては、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。この芳香族アミン系硬化剤として、より具体的には、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0065】
芳香脂肪族アミン系硬化剤としては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン等が挙げられる。この芳香脂肪族アミン系硬化剤としては、より具体的には、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等が挙げられる。
【0066】
前記アミン系硬化剤(C)として、さらに、前述したアミン系硬化剤の変性物、例えば、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミン、ウレタン変性物が挙げられる。
【0067】
このようなアミン系硬化剤(C)としては、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくはポリアミドアミン、ポリアミドアミンのエポキシ化合物とのアミンアダクト、およびマンニッヒ変性物から選択される1種以上であり、より好ましくはポリアミドアミンである。
また、特にインターバル付着性が良好な防食塗膜を容易に形成することができる等の点からは、ポリオキシアルキレンポリアミンを含むことが望ましい。
【0068】
前記アミン系硬化剤(C)の活性水素当量は、防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは50以上、より好ましくは80以上であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下である。
【0069】
前記アミン系硬化剤(C)としては、従来公知の方法で合成して得た化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。該市販品としては、脂肪族ポリアミンである「AD-71」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量290、固形分:50質量%);ポリアミドアミンである「PA-66S」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量377、固形分:60質量%)および「Ancamide 910」(エアープロダクツ社製、活性水素当量230、固形分:100質量%);ポリアミドアミンのエポキシアダクトである「PA-23」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量375、固形分:60質量%)および「PA-290(A)」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量277、固形分:60質量%);マンニッヒ変性芳香脂肪族ポリアミンである「MAD-204(A)」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量202、固形分:65質量%);マンニッヒ変性ポリアミドアミンである「アデカハードナーEH-342W3」((株)ADEKA製、活性水素当量110、固形分:80質量%);マンニッヒ変性脂肪族ポリアミンである「サンマイドCX-1154」(三和化学(株)製、活性水素当量255、固形分:66質量%);フェナルカミンアダクトである「カードライトNX-5459」(カードライト社製、活性水素当量164、固形分:70質量%);ポリオキシアルキレンポリアミンである「ジェファーミン D-230」(ハンツマン社製、活性水素当量60、固形分:100質量%)および「ジェファーミン T-403」(ハンツマン社製、活性水素当量80、固形分:100質量%)などが挙げられる。
【0070】
本組成物中のアミン系硬化剤(C)の含有量は、防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、下記式(2)から算出される反応比が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上となる量であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下となる量であることが望ましい。
【0071】
反応比={(アミン系硬化剤(C)の固形分の配合量/アミン系硬化剤(C)の固形分の活性水素当量)+(エポキシ系樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/エポキシ系樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)}/{(エポキシ系樹脂(A)の固形分の配合量/エポキシ系樹脂(A)の固形分のエポキシ当量)+(アミン系硬化剤(C)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/アミン系硬化剤(C)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)}・・・(2)
【0072】
ここで、前記式(2)における「アミン系硬化剤(C)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するエポキシ基を有する反応性希釈剤、シランカップリング剤および(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、また、「エポキシ系樹脂(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤が挙げられる。また、前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molにおける1官能基あたりの質量(g)を意味する。シランカップリング剤としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、反応性基の種類によって、シランカップリング剤がエポキシ系樹脂(A)に対して反応性を有するのか、アミン系硬化剤(C)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
【0073】
<その他の成分>
本組成物は、前記(A)~(C)の他に、必要に応じて、反応性希釈剤、顔料、硬化促進剤、付着強化剤、可塑剤、溶剤、タレ止めまたは沈降防止剤、脱水剤(安定剤)、その他の塗膜形成成分(例:分散剤、消泡剤、レべリング剤)等のその他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
加水分解型防汚塗料に多く含まれるロジン類は、カルボキシ基を有する酸である。酸成分同士はなじみやすく、また水素結合等の相互作用が働くことも推測されるため、酸成分を含有する防食塗料組成物は、ロジン類を多く含む防汚塗料との付着性が向上することが推測される。従って、防食塗料組成物にも、ロジン類を配合することが考えられる。しかしながら、ロジン類を塗料組成物に用いる場合には、該ロジン類を分散させる必要があるが、この分散のためには、比較的多くの溶剤を使用する必要があり、ハイソリッド化が求められる防食塗料組成物には用い難いことが分かった。
【0075】
このため、本組成物は、ロジン類を含んでいてもよいが、ハイソリッドな組成物を容易に得ることができ、ハイソリッドでありながら、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物がロジン類を含有する場合、その含有量の固形分は、エポキシ系樹脂(A)およびアルキド系樹脂(B)の固形分の合計100質量部に対し、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、特に好ましくは2.5質量部以下である。
なお、ロジン類としては、下記防汚塗料組成物の欄に記載のロジン類と同様の化合物等が挙げられる。
【0076】
[反応性希釈剤]
本組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。
反応性希釈剤としては、エポキシ基を含有する応性希釈剤であることが好ましい。該エポキシ基含有反応性希釈剤としては、25℃における粘度が500mPa・s以下のエポキシ化合物であれば特に制限されず、単官能型であっても、多官能型であってもよい。
【0077】
単官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~13)、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~20、好ましくは1~5、例:メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル)、フェノールグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、フェノール(EO)nグリシジルエーテル(繰り返し数n=3~20、EO:-C24O-)が挙げられる。
【0078】
多官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、モノまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基の炭素数1~5、例:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0079】
本組成物が反応性希釈剤を含有する場合、本組成物中の反応性希釈剤の固形分の含有量は、防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0080】
[顔料]
前記顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられる。
体質顔料としては、具体的には、硫酸バリウム、カリ長石、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ステアリン酸アルミ等が挙げられる。
着色顔料としては、具体的には、チタン白(酸化チタン)、弁柄、黄色弁柄、カーボンブラック等が挙げられる。
防錆顔料としては、アルミペースト、ジンククロメート、リン酸亜鉛等が挙げられる。
前記顔料としては、塗膜物性や防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、鱗片状であるマイカやアルミペースト等を添加してもよい。
【0081】
本組成物が体質顔料を含む場合、本組成物中の体質顔料の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~80質量%である。
本組成物が着色顔料を含む場合、本組成物中の着色顔料の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~50質量%である。
本組成物が防錆顔料を含む場合、本組成物中の防錆顔料の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~50質量%である。
【0082】
[硬化促進剤]
前記硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類、重合性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
該3級アミンの具体例としては、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが挙げられ、市販品としては「Ancamine K-54」(Evonik社製、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール)などが挙げられる。
【0083】
前記重合性(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、「M-CURE 100」(単官能の芳香族アクリレート、官能基当量257~267)、「M-CURE 200」(二官能の芳香族アクリレート、官能基当量130~140)、「M-CURE 201」(二官能の脂肪族アクリレート、官能基当量95~105)、「M-CURE300」(三官能の脂肪族アクリレート、官能基当量112~122)、「M-CURE 400」(四官能の脂肪族アクリレート、官能基当量80~90)(いずれも、SARTOMER COMPANY,INC製)などが挙げられる。
【0084】
本組成物が硬化促進剤を含む場合、本組成物中の硬化促進剤の固形分の含有量は、硬化性、柔軟性、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~5質量%である。
【0085】
[付着強化剤]
前記付着強化剤としては、例えば、有機酸類、キレート化剤、シランカップリング剤が挙げられ、中でも貯蔵安定性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0086】
前記シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、基材に対する密着性の向上、本組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:式:「X-SiMen3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
【0087】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、反応性基としてエポキシ基またはアミノ基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物がより好ましく、市販品であれば、「KBM-403」(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)等が挙げられる。
【0088】
本組成物が付着強化剤を含む場合、本組成物中の付着強化剤の固形分の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
付着強化剤の含有量が前記範囲にあると、基材に対する密着性などの防食塗膜の性能が向上し、本組成物の粘度を下げることができるため、塗装作業性が向上する。
【0089】
[タレ止めまたは沈降防止剤]
前記タレ止めまたは沈降防止剤(揺変剤)としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリアマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等の有機系ワックス、合成微粉シリカ等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
【0090】
このようなタレ止めまたは沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「A630-20X」、「ディスパロン6900-20X」、「ディスパロン4200-20」、「ディスパロン6650」、伊藤製油(株)製の「A-S-A D-120」、「A-S-A T-250F」、「A-S-A T-55-20BX」等が挙げられる。
【0091】
本組成物がタレ止めまたは沈降防止剤を含む場合、本組成物中のタレ止めまたは沈降防止剤の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~30質量%である。
【0092】
[消泡剤]
本組成物は、気泡の発生を抑制し、得られる防食塗膜の外観を良好にすることができる等の点から、消泡剤を含むことが好ましい。
前記消泡剤としては、例えば、ポリマー系、アクリル系、シリコーン系、ミネラルオイル系、オレフィン系などの従来公知の各種消泡剤を使用することができるが、中でも、ポリマー系やオレフィン系の消泡剤が好ましい。
【0093】
このような消泡剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製の「BYK-1788」、「BYK-1790」、「BYK-1794」;AFCONA ADDITIVE社製の「AFCONA-2290」;ExxonMobil Chemical Company製の「SpectraSyn 40」、「SpectraSyn Elite150」、「SpectraSyn Elite65」等の商品が挙げられる。
【0094】
本組成物が消泡剤を含む場合、本組成物中の消泡剤の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0095】
[溶剤]
前記溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、n-ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコールが挙げられる。
本組成物が溶剤を含む場合、本組成物中の溶剤の含有量は、本組成物の固形分の容積率が前記範囲となるような量であることが好ましい。
【0096】
≪防食塗膜≫
本発明の一実施形態に係る防食塗膜(以下「本防食塗膜」ともいう。)は、本組成物より形成される塗膜であれば特に制限されない。
本防食塗膜は、基材に本組成物を塗装した後、該塗装された本組成物を乾燥させること、好ましくは該塗装された本組成物を乾燥、硬化させる方法で形成することが好ましい。この方法は、基材の防食方法ともいえる。
【0097】
前記基材としては、水中で防食性および防汚性が求められる基材が好ましく、例えば、火力、原子力発電所の給排水口等の水中構造物;湾岸道路;海底トンネル;港湾設備;運河;水路などの各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜;船舶(例:船底部);漁具(例:浮き子、ブイ)などの海水または真水と接触する各種基材が挙げられる。
前記基材の材質としては、鉄鋼(例:鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、合金鋼)、非鉄金属(例:亜鉛、アルミニウム、ステンレス)、FRP、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0098】
前記基材としては、錆、油脂、水分、塵埃、スライム、塩分などを除去するため、また、得られる防食塗膜の密着性を向上させるために、必要により前記基材表面を処理(例えば、ブラスト処理(ISO8501-1 Sa2 1/2)、パワーツール処理、摩擦法、脱脂による油分・粉塵を除去する処理)したものでもよく、基材の防食性、溶接性、またはせん断性等の点から、必要により、前記基材表面に、従来公知の一次防錆塗料(ショッププライマー)、または、その他プライマー(エポキシ樹脂系防食塗料)等を塗布し乾燥させたものでもよい。また、補修塗装を目的として、基材として、劣化防汚塗膜付き基材を用いてもよい。
これらの中でも、ショッププライマー塗膜が形成された基材や、基材側から、ショッププライマー塗膜およびその他プライマー塗膜がこの順で形成された基材に本組成物を塗装することが好ましい。
【0099】
本組成物を基材に塗装する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用可能であるが、作業性および生産性等に優れ、大面積の基材に対しても容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
【0100】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい防食塗膜の厚みに応じて適宜調整すればよいが、エアレススプレー時には、例えば、1次(空気)圧:0.4~0.8MPa程度、2次(塗料)圧:10~26MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度に塗装条件を設定すればよい。
【0101】
前記防食塗膜の膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、防食性に優れる防食塗膜となる等の点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。
このような膜厚の防食塗膜を形成する際は、1回の塗装(1回塗り)で所望膜厚の塗膜を形成してもよいし、2回以上の塗装(2回以上塗り)で所望の膜厚の塗膜を形成してもよい。防食性に優れる防食塗膜を作業性よく形成することができる等の点から、2回塗りで前記範囲の厚みの防食塗膜を形成することが好ましい。
なお、2回の塗装(2回塗り)とは、本組成物を塗装し、乾燥・硬化させた後、得られた塗膜上に、本組成物を塗装し、乾燥・硬化させる工程を含む方法のことをいう。
【0102】
前記本組成物を乾燥、硬化させる方法としては特に制限されず、乾燥、硬化時間を短縮させるために5~60℃程度の加熱により本組成物を乾燥、硬化させてもよいが、通常は、常温、大気下で1~14日程度放置することで、本組成物を乾燥、硬化させる。
【0103】
≪積層防汚塗膜および防汚基材≫
本発明の一実施形態に係る積層防汚塗膜および防汚基材は、本防食塗膜および防汚塗膜をこの順で含めば特に制限されないが、本発明の効果がより発揮される等の点から、本防食塗膜と防汚塗膜とは接していることが好ましい。
前記積層防汚塗膜は、基材上に形成された本防食塗膜上に防汚塗料組成物を塗装した後、該塗装された防汚塗料組成物を乾燥させること、好ましくは該塗装された防汚塗料組成物を乾燥、硬化させる方法で形成することが好ましい。この方法は、防汚基材の製造方法や、基材の防汚方法ともいえる。
前記積層防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の基材への付着を長期間に亘って防止する特性(防汚性、特に静置防汚性)に優れる。
【0104】
前記積層防汚塗膜における本防食塗膜としては、前述した防食塗膜の欄の本防食塗膜と同様の塗膜が挙げられ、本防食塗膜を形成する方法も前記と同様である。
また、防汚塗料組成物を塗装する方法や該組成物を乾燥、硬化させる方法も、前述した本組成物を塗装する方法や該組成物を乾燥、硬化させる方法と同様の方法が挙げられる。
【0105】
前記防汚塗膜の膜厚(乾燥膜厚)は特に限定されないが、基材が船舶や水中構造物である場合、例えば、50~2,000μm程度である。
【0106】
<防汚塗料組成物>
前記防汚塗料組成物としては、従来公知の防汚塗料組成物を用いることができるが、本発明の効果がより発揮される等の点から、加水分解型防汚塗料組成物が好ましい。
該加水分解型防汚塗料組成物としては、加水分解型樹脂を含めば特に制限されず、必要に応じて、その他のバインダー樹脂、ロジン類、モノカルボン酸化合物、銅または銅化合物、有機防汚剤、顔料、脱水剤、可塑剤、顔料分散剤、タレ止めまたは沈降防止剤、および、溶剤等の添加剤をさらに含有していてもよい。
該加水分解型防汚塗料組成物は、通常、銅または銅化合物、および/または有機防汚剤を含んでおり、これら防汚剤の溶出を促進させることができ、防汚塗膜の消耗持続性を向上させることができる等の点から、また、本発明の効果がより発揮される等の点から、ロジン類を含有することが好ましい。
【0107】
[加水分解型樹脂]
前記加水分解型樹脂としては特に制限されず、従来公知の加水分解型樹脂を用いることができるが、長期防汚性、長期塗膜物性に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点から、好適例としては、
アクリル樹脂またはポリエステル樹脂であって、下記式(I)で表される側鎖末端基を有する金属塩含有共重合体、
下記式(II)で表される単量体から誘導される構成単位と、該単量体と共重合し得る他の不飽和単量体から誘導される構成単位とを含む金属塩含有共重合体、
下記式(III)で表される少なくとも1種の単量体から誘導される構成単位と、前記単量体と共重合し得る他の不飽和単量体から誘導される構成単位とを含むシリルエステル含有共重合体
が挙げられる。
前記防汚塗料組成物に含まれる加水分解型樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0108】
COO-M-O-COR1・・・(I)
[式(I)中のMは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示す。]
【0109】
CH2=C(R2)-COO-M-O-CO-C(R2)=CH2・・・(II)
[式(II)中のMは亜鉛または銅を示し、R2は独立に、水素原子またはメチル基を示す。]
【0110】
3-CH=C(R4)-COO-SiR567・・・(III)
[式(III)中のR4は水素原子またはメチル基を示し、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基を示し、R3は水素原子またはR8-O-CO-(但し、R8はヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基またはSiR91011で表されるシリル基を示し、R9、R10およびR11はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基を示す。)を示す。]
【0111】
前記式(II)または式(III)で表される単量体と共重合し得る他の不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、モノカルボン酸類、ジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)やジエステル、ビニルエステル類、スチレン類が挙げられる。
【0112】
前記不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、コハク酸などのジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)やジエステル;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;などが挙げられ、これらは1種をまたは2種類以上を用いてもよい。
【0113】
前記防汚塗料組成物中の加水分解型樹脂の固形分の含有量は、塗膜物性に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0114】
[その他のバインダー樹脂]
前記防汚塗料組成物には、塗膜形成用樹脂として、加水分解型樹脂以外のその他のバインダー樹脂を含有してもよい。
防汚塗料組成物に含まれ得るその他のバインダー樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0115】
このような樹脂類としては、例えば、金属エステル基を含有しないアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、金属エステル基を含有しないポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル系共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等)、塩化ゴム、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、クマロン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等の非水溶性または難水溶性の樹脂、パインタール等の水溶性樹脂を用いることができる。
【0116】
前記防汚塗料組成物がその他のバインダー樹脂を含有する場合、該その他のバインダー樹脂の固形分の含有量は、防汚塗料組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0117】
[ロジン類]
前記ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン等のロジン、および水添ロジン、不均化ロジン等のロジン誘導体、ならびにそれらのエステル類および金属塩などが挙げられる。ロジンは松科の植物の樹液である松脂を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂である。
防汚塗料組成物に含まれ得るロジン類は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0118】
前記防汚塗料組成物がロジン類を含有する場合、該組成物中のロジン類の含有量は、塗膜形成用樹脂の含有質量(WA)とロジン類の含有質量(WB)との含有質量比(WA/WB)は、好ましくは99.9/0.1~30/70、より好ましくは95/5~35/65、さらに好ましくは90/10~40/60である。
含有質量比がこのような範囲にあると、防汚塗膜における研掃性(塗膜消耗性)をより高める効果があり、防汚性(特に静置防汚性)をより向上できる。
本発明の一実施形態によれば、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を形成することができるため、本発明の効果がより発揮される等の点から、ロジン類の含有量が多い防汚塗料組成物を用いることが好ましいが、当然に、ロジン類の含有量が少ない防汚塗料組成物も用いることができる。つまり、本発明の一実施形態によれば、ロジン類の含有量が前記範囲にある(ロジン類の含有量が比較的低含有量~高含有量である)、幅広いロジン類含有量の防汚塗料組成物を用いることができる。
なお、塗膜形成用樹脂としては、前記加水分解型樹脂およびその他のバインダー樹脂が挙げられる。
【0119】
長期停泊の多い船舶、汚損条件の厳しい航路を運航する船舶においては、静置防汚性、長期防汚性を向上させるため、特にロジン類の含有量の多い塗料(一般的にはWA/WBが75/25よりも多くのロジン類を含む塗料、好ましくはWA/WBが70/30~30/70である塗料)を好ましく使用するが、このような防汚塗料を従来の防食塗膜に塗装した場合、形成される防汚塗膜は、該従来の防食塗料に対して付着性が悪い傾向にある。しかしながら、本発明の一実施形態に係る積層防汚塗膜は、このような防汚塗料との付着性が良好な本防食塗膜を含むため、ロジン含有量が前記範囲にある(ロジン含有量が多い)防汚塗料組成物を用いても、付着性に優れる積層防汚塗膜を容易に形成することができる。
【0120】
[モノカルボン酸化合物]
前記モノカルボン酸化合物としては、例えば、脂肪族または脂環式のモノカルボン酸、これらのモノカルボン酸誘導体またはこれらの金属塩が挙げられる。モノカルボン酸化合物の具体例としては、ナフテン酸、シクロアルケニルカルボン酸、ビシクロアルケニルカルボン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、サリチル酸、およびこれらの金属塩が挙げられる。
防汚塗料組成物に含まれ得るモノカルボン酸化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0121】
[銅または銅化合物]
前記銅または銅化合物(ただし、銅ピリチオンを除く)としては、有機系または無機系の何れの銅化合物であってもよく、例えば、粉末状の銅(銅粉)、亜酸化銅、チオシアン酸銅、キュプロニッケルが挙げられる。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る銅または銅化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0122】
前記防汚塗料組成物が銅または銅化合物を含有する場合、該組成物中の銅および銅化合物の含有量は、長期防汚性に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0123】
[有機防汚剤]
前記有機防汚剤としては、例えば、銅ピリチオン、ジンクピリチオン等の金属ピリチオン類、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(別名:トラロピリル)、ピリジントリフェニルボラン、4-イソプロピルピリジンジフェニルメチルボラン、N,N-ジメチル-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、2-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、(+/-)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(別名:メデトミジン)、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、クロロメチル-n-オクチルジスルフィド、N',N'-ジメチル-N-フェニル-(N-フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジンクジメチルジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、2,3-ジクロロ-N-(2',6'-ジエチルフェニル)マレイミド、2,3-ジクロロ-N-(2'-エチル-6'-メチルフェニル)マレイミドが挙げられる。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る有機防汚剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0124】
前記防汚塗料組成物が有機防汚剤を含有する場合、該組成物中の有機防汚剤の含有量は、長期防汚性、耐水性維持(機械的特性維持)に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0125】
[顔料]
前記防汚塗料組成物は、防汚塗膜への着色や下地の隠ぺいを目的として、また防汚塗膜を適度な強度に調整することを目的として、顔料を含有してもよい。
該顔料としては、例えば、タルク、マイカ、クレー、カリ長石、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫化亜鉛等の体質顔料や、弁柄、チタン白(酸化チタン)、黄色弁柄、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の着色顔料が挙げられ、中でもタルクおよび酸化亜鉛が好ましい。なお、炭酸カルシウムおよびホワイトカーボンは、それぞれ後述する沈降防止剤としても使用される。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る顔料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0126】
前記防汚塗料組成物が顔料を含有する場合、該組成物中の顔料の含有量は、該組成物の塗装形態等に応じた所望の粘度によって好ましい量が決定されるが、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0127】
[脱水剤]
前記脱水剤としては、従来公知の、合成ゼオライト、無水石膏、半水石膏、オルト蟻酸アルキルエステル類、テトラエトキシシランなどを用いることができる。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る脱水剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0128】
前記防汚塗料組成物が脱水剤を含有する場合、該組成物中の脱水剤の含有量は、防汚塗料組成物を貯蔵中の粘度の上昇を抑制できる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0129】
[可塑剤]
前記可塑剤としては、塩化パラフィン(塩素化パラフィン)、TCP(トリクレジルホスフェート)、ポリビニルエチルエーテル、ジアルキルフタレート等が挙げられ、塗膜耐水性(機械的特性)、塗膜加水分解性(消耗性)に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点からは、これらの中でも、塩化パラフィン(塩素化パラフィン)、ポリビニルエチルエーテルが好ましい。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る可塑剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0130】
前記防汚塗料組成物が可塑剤を含有する場合、該組成物中の可塑剤の含有量は、防汚性、塗膜耐水性(機械的特性)、塗膜加水分解性(消耗性)に優れる防汚塗膜を容易に形成することができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0131】
[顔料分散剤]
前記顔料分散剤としては、公知の有機系または無機系の各種顔料分散剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミンまたは有機酸類(例:「レオミックスTDO」(ライオン・スペシャリティ・ケミカル(株)製)、「Disperbyk-101」(ビックケミー・ジャパン(株)製))が挙げられる。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る顔料分散剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0132】
前記防汚塗料組成物が顔料分散剤を含有する場合、該組成物中の顔料分散剤の含有量は、塗料粘度低減効果、色分かれ防止効果等に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0133】
[タレ止めまたは沈降防止剤]
前記防汚塗料組成物は、該組成物の粘度を調整することを目的として、タレ止めまたは沈降防止剤(揺変剤)を含有してもよい。
前記防汚塗料組成物に含まれ得るタレ止めまたは沈降防止剤は、1種でもよく、2種以上でもよく、前述の防食塗料の欄で例示したタレ止めまたは沈降防止剤と同様のタレ止めまたは沈降防止剤を使用することができる。
【0134】
前記防汚塗料組成物がタレ止めまたは沈降防止剤を含有する場合、該組成物中のタレ止めまたは沈降防止剤の含有量は、貯蔵安定性、同種/異種塗料の塗り重ね性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、該組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0135】
[溶剤]
前記防汚塗料組成物は、分散性を向上させたり、該組成物の粘度を調整したりするために、必要に応じて、水または有機溶剤等の溶剤を含んでいてもよい。本防食塗膜への付着性をより高める等の点からは、溶剤としては有機溶剤、具体的には本防食塗膜をその表面付近において軟化させることのできる有機溶剤が好ましい。
前記防汚塗料組成物に含まれ得る溶剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0136】
前記有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等の脂肪族(例:炭素数1~10、好ましくは2~5程度)の1価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;が挙げられる。
【0137】
前記防汚塗料組成物が溶剤を含有する場合、該組成物中の溶剤の含有量は、該組成物100質量%に対し、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。
【実施例
【0138】
以下、本発明の一実施形態を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0139】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、装置(東ソー(株)製、HLC-8220GPC)、カラム(SuperH2000+SuperH4000(東ソー(株)製、内径6mm/長さ各15cm))、カラム温度(40℃)、溶離液(テトラヒドロフラン)、流速(0.50mL/min.)、検出器(RI)、標準物質(ポリスチレン)の条件にて測定した。
【0140】
<不揮発分の測定>
下記製造例で調製した樹脂溶液を108℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後の加熱残分を計測し、以下の式から樹脂溶液中の不揮発分を算出した。
不揮発分(質量%)=(前記加熱残分の質量/加熱前の樹脂溶液の質量)×100(%)
【0141】
<酸価の測定>
コニカルビーカーに樹脂1~5gを正確に秤量し、トルエン/エタノール=7/3(体積比)混合溶液を30~50ml加えて該樹脂を溶かし、指示薬としてフェノールフタレイン-エタノール溶液を2滴加え、N/10水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定した。液の赤みが30秒間消えなくなったときを滴定の終点とし、酸価を次式によって計算した。
酸価=(B×f×5.61)/S
[B:水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(ml)、f:水酸化カリウム-エタノール溶液のファクター、S:樹脂の質量(g)]
【0142】
[製造例1]アルキド樹脂溶液1の調製
反応器内に、大豆油脂肪酸41.50質量部と、無水フタル酸30.80質量部と、グリセリン10.90質量部と、ペンタエリスリトール13.20質量部と、安息香酸3.60質量部と、還流溶剤としてキシレン5.00質量部とを仕込んだ。窒素気流下で、得られた混合液を220℃まで昇温し、3時間保温した後冷却し、その後キシレン71.10質量部を加えてアルキド樹脂溶液1を調製した。アルキド樹脂溶液1中のアルキド樹脂のMwは16,000であった。また、アルキド樹脂溶液1の不揮発分は55.0質量%であり、該溶液1中のアルキド樹脂の酸価は7.3mgKOH/gであった。
【0143】
[製造例2]アルキド樹脂溶液2の調製
反応器内に、二号大豆油57.50質量部と、ナフテン酸リチウム0.03質量部と、グリセリン4.80質量部とを仕込み、窒素気流下で得られた混合液を150℃まで昇温して、そこにペンタエリスリトール9.80質量部を投入した。260℃まで昇温して4時間保持した後に200℃まで降温した。その後、無水フタル酸27.50質量部と、無水マレイン酸0.40質量部と、還流溶剤としてキシレン4.83質量部とを投入した。次いで、220℃まで昇温し、5時間保温した後冷却し、その後ターペン59.55質量部を加えてアルキド樹脂溶液2を調製した。アルキド樹脂溶液2中のアルキド樹脂のMwは64,000であった。また、アルキド樹脂溶液2の不揮発分は60.0質量%であり、該溶液2中のアルキド樹脂の酸価は7.0mgKOH/gであった。
【0144】
[製造例3]アルキド変性アクリル樹脂溶液1の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を18.18質量部(溶液中のアルキド樹脂10質量部)と、溶剤としてキシレン41.82質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:36.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):17.5質量部、n-ブチルアクリレート(BA):35.5質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)90質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.50質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.13質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液1を調製した。
調製した溶液1中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は4.4mgKOH/gであった。
【0145】
[製造例4]アルキド変性アクリル樹脂溶液2の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を36.36質量部(溶液中のアルキド樹脂20質量部)と、溶剤としてキシレン33.64質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:36.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):11.5質量部、n-ブチルアクリレート(BA):31.5質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)80質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.50質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.13質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液2を調製した。
調製した溶液2中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は5.1mgKOH/gであった。
【0146】
[製造例5]アルキド変性アクリル樹脂溶液3の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を54.54質量部(溶液中のアルキド樹脂30質量部)と、溶剤としてキシレン25.46質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:31.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):10.5質量部、n-ブチルアクリレート(BA):27.5質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)70質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.40質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.04質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液3を調製した。
調製した溶液3中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は6.1mgKOH/gであった。
【0147】
[製造例6]アルキド変性アクリル樹脂溶液4の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を72.73(溶液中のアルキド樹脂40質量部)質量部と、溶剤としてキシレン17.27質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:27.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):8.2質量部、n-ブチルアクリレート(BA):23.8質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)60質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.20質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン34.83質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液4を調製した。
調製した溶液4中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は6.7mgKOH/gであった。
【0148】
[製造例7]アルキド変性アクリル樹脂溶液5の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を90.91質量部(溶液中のアルキド樹脂50質量部)と、溶剤としてキシレン9.10質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:22.2質量部、メタクリル酸メチル(MMA):7.0質量部、n-ブチルアクリレート(BA):19.8質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)50質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.00質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン34.62質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液5を調製した。
調製した溶液5中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は7.6mgKOH/gであった。
【0149】
[製造例8]アルキド変性アクリル樹脂溶液6の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を36.36質量部(溶液中のアルキド樹脂20質量部)と、溶剤としてキシレン33.64質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:36.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):11.4質量部、n-ブチルアクリレート(BA):31.5質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA):0.1部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)80質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.50質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.13質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液6を調製した。
調製した溶液6中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は5.1mgKOH/gであった。
【0150】
[製造例9]アクリル樹脂溶液の調製
反応器内に、溶剤としてキシレン50.00質量部を仕込み、窒素気流下で125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:36.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):23.5質量部、n-ブチルアクリレート(BA):39.5質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)100質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.50質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.13質量部を加えてアクリル樹脂溶液を調製した。
調製した溶液中のアクリル樹脂の酸価は3.7mgKOH/gであった。
【0151】
製造例3~9で得られた樹脂の変性量、Mwおよび酸価を表1に示す。なお、用いたアルキド樹脂の全てがアルキド変性アクリル樹脂を構成していると考えられるため、該変性量は、用いたアルキド樹脂量とした。
【0152】
【表1】
【0153】
[製造例10]シリルエステル含有樹脂溶液(A1)の調製
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン67質量部を仕込み、窒素雰囲気下で、キシレンを攪拌機で攪拌しながら、常圧下で、反応容器内のキシレンの温度が85℃になるまで加熱した。反応容器内のキシレンの温度を85℃に維持しながら、TIPSMA(トリイソプロピルシリルメタクリレート)50質量部、MEMA(2-メトキシエチルメタクリレート)30質量部、MMA(メチルメタクリレート)10質量部、BA(ブチルアクリレート)10質量部、および、AMBN(2,2'-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル))1質量部からなるモノマー混合物を、滴下ロートを用いて2時間かけて反応容器内に添加した。
次いで、反応容器内に、さらにt-ブチルパーオキシオクトエート0.5質量部を加え、常圧下にて、反応容器内の液温を85℃に保持しながら、2時間攪拌機で攪拌を続けた。そして、反応容器内の液温を85℃から110℃に上げて1時間加熱した後、反応容器内にキシレン14質量部を加えて、反応容器内の液温を低下させ、液温が40℃になった時点で攪拌を止めることで、シリルエステル含有樹脂溶液(A1)[不揮発分:60.1質量%]を調製した。
【0154】
[製造例11]防汚塗料の調製
ポリ容器に、キシレンを13.5質量部、シリルエステル含有樹脂溶液(A1)を16質量部、ガムロジン(酸価:168、軟化点:75℃、Mw:287)を6.5質量部、エチルシリケート28(コルコート(株)製)を0.5質量部、酸化亜鉛(九州白水(株)製)を4.0質量部、TTKタルク((株)福岡タルク工業所製)を4.0質量部、チタン白R-930(石原産業(株)製)を2.0質量部、弁柄404(森下弁柄工業(株)製)を2.0質量部、カッパーオマジン(アーチ・ケミカルズ社製)を2.0質量部、亜酸化銅NC-301(日進ケムコ(株)製)を48質量部、および、A-S-A D-120(伊藤製油(株)製)を0.5質量部配合し、ガラスビーズを添加し、常法により1時間分散操作を行った。その後、ディスパロンA630-20X(楠本化成(株)製)を1.0質量部添加し、さらに15分間分散操作を行った。得られた分散液を60メッシュの濾過網で濾過することで、シリルエステル含有加水分解型防汚塗料を調製した。
【0155】
[実施例1~34および比較例1~5]
ポリ容器に、表2~4の主剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、そこにガラスビーズを添加し、常法により1時間分散させた。得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで、防食塗料組成物の主剤成分を調製した。
ポリ容器に、表2~4の硬化剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、常法により10分間分散させた。得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで、防食塗料組成物の硬化剤成分を調製した。
得られた主剤成分と硬化剤成分とを塗装直前に常法により混合して、防食塗料組成物を調製した。
なお、各成分の詳細は表5に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
[積層防汚塗膜の作製]
サンドブラスト板(150×70×1.6mm)上に、実施例および比較例で得られた各防食塗料組成物を乾燥膜厚が約200μmとなるように塗布し、その後、直ちに屋外にて、サンドブラスト板を塗膜側を上にして、南向きに地面に対して45°の角度で傾けて、それぞれ1日、4日または7日間屋外曝露させた。
屋外曝露させたサンドブラスト板の防食塗膜表面に、製造例11で得られた防汚塗料を、アプリケーターを用いて乾燥膜厚が100μmになるよう塗布して、23℃で7日間乾燥させて防汚塗膜を形成することで、塗装間隔が1日、4日または7日である積層防汚塗膜付サンドブラスト板を作製した。
【0161】
<付着性>
得られた各積層防汚塗膜付サンドブラスト板を、50℃の人工海水に浸漬し、浸漬開始から30日後および90日後の防食塗膜と防汚塗膜との間の付着性を以下のようにして評価した。
NTカッター(エヌティー(株)製)を使用し、積層防汚塗膜付サンドブラスト板の防汚塗膜面に、4mm間隔で、縦横各4本の防食塗膜に届く深さの切れ目を入れ、9個の升目を作製し、その升目が作製された塗膜表面に、セロテープ(登録商標)を圧着させた後、素早く剥離して剥離状態を観察した。作製した9個の升目の面積を100%とした場合における、剥離操作後の防食塗膜と防汚塗膜との層間で剥離している塗膜の面積(剥離面積)の割合を算出し、下記評価基準に基づいて付着性を評価した。結果を表6に示す。
(評価基準)
0:塗膜の層間剥離面積が5%未満である。
1:塗膜の層間剥離面積が5%以上25%未満である。
2:塗膜の層間剥離面積が25%以上50%未満である。
3:塗膜の層間剥離面積が50%以上である。
【0162】
<防食性>
・電気防食試験
寸法が150mm×70mm×1.6mm(厚)のブラスト処理された鋼板(以下「試験板」ともいう。)上に、実施例および比較例で得られた各防食塗料組成物を、それぞれ乾燥膜厚が約250μmとなるようにスプレー塗装し、スプレー塗装された試験板を、23℃、50%RHの雰囲気で7日間乾燥することで防食塗膜付試験板を作製した。
この防食塗膜付試験板に、電気電流密度が5mA/m2以下になるよう亜鉛陽極を接続し、40℃の3%塩水中に30日間または60日間浸漬した後の防食塗膜の外観を以下の評価基準に従って目視評価した。
(評価基準)
A:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相のいずれも変化なし。
B:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相のいずれかに若干の欠陥(変化)が認められる。
C:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相の変化のいずれかが明らかに認められる。
【0163】
・塩水噴霧試験
JIS K 5600-7-1:1999に準拠して、電気防食試験と同様にして作製した防食塗膜付試験板に、35℃の条件下で、塩分濃度5%の塩水を30日間または60日間連続的に噴霧した後の防食塗膜の外観を電気防食試験と同じ評価基準に従って目視評価した。
【0164】
【表6】