(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】生成物の精製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 29/80 20060101AFI20240220BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20240220BHJP
C07C 29/76 20060101ALI20240220BHJP
C07C 29/88 20060101ALI20240220BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240220BHJP
B01D 53/08 20060101ALI20240220BHJP
B01D 53/12 20060101ALI20240220BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240220BHJP
C12P 7/06 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/08
C07C29/76
C07C29/88
B01D53/04
B01D53/08
B01D53/12
C12M1/00
C12P7/06
(21)【出願番号】P 2022540828
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2021020796
(87)【国際公開番号】W WO2021183357
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ジレスピー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】コーカル,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ワイアット エリック
(72)【発明者】
【氏名】ロジン,リチャード アール
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ドノヴァン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/175481(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/061939(WO,A1)
【文献】特表2019-503701(JP,A)
【文献】米国特許第5800681(US,A)
【文献】特表2012-504404(JP,A)
【文献】米国特許第4511437(US,A)
【文献】特開2012-167087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/80
B01D 53/04
B01D 53/08
B01D 53/12
C07C 29/76
C07C 29/88
C07C 31/08
C12M 1/00
C12P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを回収するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b.前記プロセスストリームから、任意の順序で、
i.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することにより、酢酸エチルを除去することと、
ii
.吸着または
ジスルフィドへの反応により、少なくとも1つのチオールを除去することと、
iii.蒸留により、メタノールを除去することと、
iv.蒸留により、3個以上の炭素原子を有する化合物を除去することと、
c.蒸留により、エタノールを回収することであって、前記蒸留が、単一のカラムまたは2つ以上のカラム中で実施され得る、回収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、アセトアルデヒドをさらに含み、前記方法が、金属を使用して前記プロセスストリームから前記アセトアルデヒドを除去して、前記アセトアルデヒドを酢酸塩に変換し、続いて蒸留することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、少なくとも1つのアルデヒドをさらに含み、前記方法が、前記アルデヒドをアルコールに還元するか、または前記アルデヒドを反応させてアルカンを形成することにより、工程bにおいて前記アルデヒドを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールに還元することが、反応性金属、アマルガム、または反応性金属を含む化合物を使用して実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応性金属、アマルガム、または化合物が、亜鉛またはアルミニウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応させてアルカンを形成することが、ヒドラジンでの処理により実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルデヒドを除去することが、工程bのサブ工程iの一部である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
工程bのサブ工程iiiまたは工程bのサブ工程ivの前記蒸留の一部として、前記エタノールが除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程bにおいて、サブ工程iおよびiiが、サブ工程iiiおよびivの前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1回の蒸留が、不活性雰囲気中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
全ての蒸留が、不活性雰囲気中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのチオールを除去することが、空気中または不活性雰囲気下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記吸着が、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記強酸性陽イオン交換樹脂が、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、不純物をさらに含み、前記方法が、前記プロセスストリームを吸着剤で処理して、不純物を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記吸着剤が、活性炭、活性化木炭、または強酸性陽イオン交換樹脂である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記強酸性陽イオン交換樹脂が、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程bのiii、工程c、または工程bのiiiおよび工程cの両方において、前記蒸留によりフーゼル油を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程bのiii、工程c、または工程bのiiiおよび工程cの両方において、前記蒸留により少なくとも1つの硫黄含有化合物を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
微生物を使用してガス化プロセスからの産業廃棄物ガスまたは合成ガスを発酵させて、前記発酵ブロスを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、前記プロセスストリームから酢酸エチルを除去することと、
c
.吸着または
ジスルフィドへの反応により、前記酢酸エチル枯渇ストリームから少なくとも1つのチオールを除去して、チオール枯渇ストリームを生成することと、
d.メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、蒸留により前記チオール枯渇
ストリームから分離することであって、前記蒸留が、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る、分離することと、を含む、方法。
【請求項22】
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物、を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b
.吸着または
ジスルフィドへの反応により、前記プロセスストリームから少なくとも1つのチオールを除去して、チオール枯渇ストリームを生成することと、
c.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、前記チオール枯渇ストリームから酢酸エチルを除去することと、
d.メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、蒸留により前記酢酸エチル枯渇ストリームから分離することであって、前記蒸留が、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る、分離することと、を含む、方法。
【請求項23】
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための装置であって、
a.バイオリアクターと流体連通し、前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成するように構成された、第1の分離ユニットと、
b.前記第1の分離ユニットと流体連通し、塩基性化合物導管と流体連通し、かつ酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することにより、前記プロセスストリームから前記酢酸エチルを除去するように構成された、第2の分離ユニットと、
c.前記第2の分離ユニットと流体連通し、硫黄含有化合物導管と流体連通し、か
つ吸着または
ジスルフィドへの反応により少なくとも1つのチオールを除去するように構成された、第3の分離ユニットと、
d.前記第3の分離ユニットと流体連通し、かつメタノール、3個以上の炭素原子を有する化合物、およびエタノールを分離するように構成された、蒸留システムであって、単一のカラムまたは2つ以上のカラムを備え、かつメタノール導管、C3+導管、およびエタノール導管と流体連通している、蒸留システムと、を備える、装置。
【請求項24】
前記エタノール導管と流体連通している脱水ユニットをさらに備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記蒸留システムと流体連通している少なくとも1つのサイドドローをさらに備える、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記バイオリアクターが基質導管と流体連通し、前記基質導管が産業プロセスまたはガス化プロセスと流体連通している、請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月11日に出願された米国特許仮出願第62/988,176号および2021年2月23日に出願された米国特許出願第17/183,204号の利益を主張する。両方の出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、発酵ブロスから1つ以上の生成物を回収および精製するための方法に関する。具体的には、本発明は、微生物バイオマス、エタノール、およびイソプロパノールを含む発酵ブロスから、エタノールなどの生成物を回収および精製するための2以上の分離の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO2)は、人間の活動による世界全体の温室効果ガス排出量の約76%を占め、メタン(16%)、亜酸化窒素(6%)、およびフッ素化ガス(2%)が残りを占めている(米国環境保護庁(the United States Environmental Protection Agency))。工業および林業の施業も大気中にCO2を放出するが、CO2の大部分は化石燃料を燃焼させてエネルギーを生成することに由来する。温室効果ガス排出、特にCO2の削減は、地球温暖化の進行ならびにそれに伴う気候および天候の変動を食い止めるのに重要である。
【0004】
フィッシャー-トロプシュ法などの触媒プロセスを使用して、産業廃ガスまたは合成ガスなどの二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、および/または水素(H2)を含有するガスを様々な燃料および化学物質に変換することができることが長い間認識されている。しかしながら、最近、ガス発酵がそのようなガスの生物学的固定のための代替プラットフォームとして浮上している。特に、C1固定微生物は、CO2、CO、および/またはH2を含有するガスをエタノールおよびイソプロパノールなどの生成物に変換することが示されている。
【0005】
典型的に、フィッシャー-トロプシュ発酵および/またはガス発酵のいずれかによって生成された生成物は、従来の蒸留によって分離される。蒸留プロセスは、分離される成分の揮発性の違い、すなわち沸点の違いに基づいている。生産されたために存在する副生成物もまた、生成物から分離する必要がある。しかしながら、いくつかの最終用途では、他に何もない単純な従来の蒸留は、十分に高い純度レベルで溶液から所望の生成物を効果的に分離することができないことが示されている。
【0006】
例えば、C1固定微生物を使用するガス発酵では、エタノールが所望の生成物である場合、副生成物は、メタノール、アセタール、アセトアルデヒド、酢酸エチル、および場合によってはいくつかの硫黄含有化合物であり得る。エタノールの最終用途によっては、これらの副生成物の1つ以上を、指定されたレベルを下回るように除去する必要があり得る。高純度の生成物エタノールを実現するには、複数の分離工程が必要になり得る。
【0007】
したがって、高純度エタノール生成物を実現するために、エタノールなどのガス発酵生成物から副生成物化合物を分離するのに効果的なシステムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む発酵ブロスからエタノールを回収するための方法であって、少なくとも微生物バイオマスを発酵ブロスから分離して、プロセスストリームを生成することと、プロセスストリームから、任意の順序で、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することにより、酢酸エチルを除去することと、吸着またはジスルフィドへの反応により、少なくとも1つのチオールを除去することと、蒸留により、メタノールを除去することと、蒸留により、3個以上の炭素原子を有する化合物を除去すること、と、蒸留により、エタノールを回収することであって、蒸留が、単一のカラムまたは2つ以上のカラム中で実施され得る、回収すること、と、を含む、方法を含む。
【0009】
発酵ブロスは、アセトアルデヒドをさらに含み得、方法は、微生物バイオマスを除去してプロセスストリームを生成した後、金属を使用してアセトアルデヒドを酢酸塩に還元し、続いて蒸留することにより、アセトアルデヒドを除去することをさらに含み得る。
【0010】
発酵ブロスは、少なくとも1つのアルデヒドをさらに含み得、方法は、微生物バイオマスを除去してプロセスストリームを生成した後、アルコールに還元することによって、アルデヒドを除去することをさらに含み得る。還元は、反応性金属、アマルガム、または反応性金属を含む化合物を使用して実施され得る。反応性金属、アマルガム、または化合物は、亜鉛またはアルミニウムを含み得る。還元は、ヒドラジンでの処理により実施され得る。酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することによって、酢酸エチルを除去する工程の一部として、アルデヒドをアルコールに還元し得る。以下を参照のこと。
【0011】
生成物エタノールは、メタノールが除去される、または3個以上の炭素原子を有する化合物が除去される蒸留工程の一部として回収され得る。
【0012】
方法であって、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させることによって酢酸エチルを除去し、続いて蒸留し、吸着またはジスルフィドへの反応によって少なくとも1つのチオールを除去する工程が、蒸留によってメタノールを除去し、蒸留により3個以上の炭素原子を有する化合物を除去する工程の前に行われる、方法が実施され得る。
【0013】
方法であって、少なくとも1回の蒸留が不活性雰囲気で実施されるか、または全ての蒸留が不活性雰囲気で実施される、方法が実施され得る。方法であって、少なくとも1つのチオールを除去することが、空気中または不活性雰囲気下にある、方法が実施され得る。
【0014】
方法であって、吸着が、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる、方法が実施され得る。強酸性陽イオン交換樹脂は、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgであり得る。
【0015】
発酵ブロスは、追加の不純物をさらに含み得、この方法は、プロセスストリームを吸着剤で処理して追加の不純物を除去することをさらに含み得る。吸着剤は、活性炭、活性化木炭、または強酸性陽イオン交換樹脂であり得る。強酸性陽イオン交換樹脂は、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgであり得る。
【0016】
本開示の別の実施形態は、微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む発酵ブロスからエタノールを分離する方法であって、発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームを生成することと、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、プロセスストリームから酢酸エチルを除去することと、吸着またはジスルフィドへの反応によって酢酸エチル枯渇ストリームから少なくとも1つのチオールを除去することにより、チオール枯渇ストリームを生成することと、メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る蒸留によってチオール枯渇ストリームから分離することと、を含む、方法に関する。
【0017】
本開示のさらに別の実施形態は、微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む発酵ブロスからエタノールを分離するための方法であって、発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームを生成することと、吸着またはジスルフィドへの反応によってプロセスストリームから少なくとも1つのチオールを除去することにより、チオール枯渇ストリームを生成することと、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、チオール枯渇ストリームから酢酸エチルを除去することと、メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、酢酸エチル枯渇ストリームから、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る蒸留によって分離することと、を含む、方法に関する。
【0018】
本開示のさらに別の実施形態は、微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む発酵ブロスからエタノールを分離するための装置であって、発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含むプロセスストリームを生成する、第1の分離ユニットと、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することによってプロセスストリームから酢酸エチルを除去する、第2の分離ユニットと、吸着またはジスルフィドへの反応によって少なくとも1つのチオールを除去する、第3の分離ユニットと、メタノール、3個以上の炭素原子を有する化合物およびエタノールを分離するように構成された、蒸留システムであって、単一のカラムまたは2つ以上のカラムを備える、蒸留システムと、を備える、装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態による簡略化された一連の分離工程を示し、特に、分離工程の有用な順序を示す。
【
図2】本開示の一実施形態を示す概略プロセスフロー図である。
【
図3】発酵ブロスの生成ならびに微生物バイオマスの分離および除去による微生物バイオマス枯渇プロセスストリームの生成に関する実施形態の一部を示す概略プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、微生物バイオマス、生成物、副生成物、および不純物を含む発酵ブロスから生成物を回収するための方法を提供する。この方法は、高純度生成物を必要とする用途のための生成物の精製を可能にする。理解を容易にするために、生成物は本明細書中でエタノールとして記載する。エタノールは、生物学的触媒を使用してガス発酵システム中で生成され、発酵ブロスの一部としての1つ以上のバイオリアクターから排出される。発酵ブロスは、微生物バイオマス、エタノール、およびメタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物、ならびに場合によって不純物などの副生成物を含む。発酵ブロスは、アセトアルデヒドをさらに含み得る。発酵ブロスは、少なくとも1つのアルデヒドをさらに含み得る。発酵ブロスは、不純物をさらに含み得る。
【0021】
ガス発酵プロセスの基質および/またはC1炭素源は、産業プロセスの副生成物として、または自動車の排気ガス、バイオガス、もしくは埋立地ガスなどの別の源から、または電気分解から得られる廃ガスであり得る。基質および/またはC1炭素源は、熱分解、焙焼、またはガス化によって生成された合成ガスであり得る。言い換えれば、廃棄物は、熱分解、焙焼、またはガス化によってリサイクルされて、基質および/またはC1炭素源として使用される合成ガスを生成することができる。
【0022】
ある特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄金属製品の製造、例えば、製鉄、非鉄金属製品の製造、石油精製、発電、カーボンブラックの生成、紙およびパルプの製造、アンモニアの生成、メタノールの生成、コークスの製造、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。これらの実施形態では、基質および/またはC1炭素源は、任意の公知の方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉され得る。
【0023】
基質および/またはC1炭素源は、石炭のガス化、製油所残留物のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース材料のガス化、黒液ガス化、都市固形廃棄物のガス化、工業用固体のガス化、下水道のガス化、廃水処理からのスラッジのガス化、天然ガスの改質、バイオマスの改質、埋め立てガスの改質、またはそれらの任意の組み合わせによって得られる合成ガスなどの合成ガスであり得る。
【0024】
都市固形廃棄物の例には、タイヤ、プラスチック、およびショールズ、アパレル、テキスタイル中の繊維が挙げられる。都市固形廃棄物は、分別され得るかまたは未分別であり得る。バイオマスの例には、リグノセルロース材料が挙げられ得、微生物バイオマスもまた挙げられ得る。リグノセルロース材料には、農業廃棄物および森林廃棄物が挙げられ得る。
【0025】
生体触媒を使用する基質および/またはC1炭素源のガス発酵プロセスは、生成物および微生物バイオマスを含む発酵ブロスを提供する。微生物バイオマスを発酵ブロスから分離して、微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームを生成する。一般に、プロセスストリームは、生成物、およびある濃度の副生成物、ならびに場合によっては不純物を含むであろう。例えば、プロセスストリームは、生成物であるエタノール、ならびにメタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物などの副生成物を含み得る。プロセスストリームはまた、アセトアルデヒド、および/もしくは少なくとも1つのアルデヒド、ならびに/または他の不純物を含み得る。発酵ブロスの残りの部分は、バイオリアクターにリサイクルされ得る微生物バイオマスを含む。発酵ブロスは、典型的には、水溶液である。微生物バイオマスは、発酵プロセスの生体触媒として使用される少なくとも1つの適切な微生物を含む。例えば、微生物は、Escherichia coli、Saccharomyces cerevisiae、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Clostridium saccharbutyricum、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、Clostridium butyricum、Clostridium diolis、Clostridium kluyveri、Clostridium pasterianium、Clostridium novyi、Clostridium difficile、Clostridium thermocellum、Clostridium cellulolyticum、Clostridium cellulovorans、Clostridium phytofermentans、Lactococcus lactis、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Zymomonas mobilis、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumonia、Corynebacterium glutamicum、Trichoderma reesei、Cupriavidus necator、Pseudomonas putida、Lactobacillus plantarum、およびMethylobacterium extorquensから選択され得る。ある特定の例では、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、およびThermoanaerobacter kiuviから選択されるC1固定細菌であり得る。特定の実施形態では、微生物は、Clostridium属の一員である。ある特定の例では、微生物は、Clostridium autoethanogenumである。
【0026】
微生物は、様々な異なる生成物を生成することが可能であり得る。微生物によって生成される1つ以上の生成物は、低沸点発酵生成物である。ある特定の例では、生成物は、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、ケトン、メチルエチルケトン、アセトン、2-ブタノール、1-プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ブタノン、1,3-ブタジエン、イソプレン、イソブテン、またはそれらの任意の組み合わせである。ある特定の実施形態では、方法は、生成される生成物に基づいて最適化される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターで生成される生成物は、エタノールおよびイソプロパノールである。方法は、エタノールおよびイソプロパノールが発酵ブロスから効果的に除去され得るように最適化され得る。いくつかの実施形態では、微生物は少なくとも1つの副生成物を生成する。一実施形態では、少なくとも1つの副生成物は、酢酸、乳酸、アセトン、3-ヒドロキシブチレート、イソブタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、および/または2,3-ブタンジオールである。
【0027】
微生物バイオマスを分離して、少なくとも生成物を含むプロセスストリームを生成するための既知の技術。例えば、発酵ブロスは、バイオリアクターから真空蒸留槽に送られ得、そこで発酵ブロスは部分的に気化されて、エタノールを含む生成物富化ストリーム、および微生物バイオマスを含む生成物枯渇ストリームを生成する。真空蒸留は、例えば、米国特許出願公開第2018/0264375号に詳細に記載されている。
【0028】
抽出蒸留は、単独で、または真空蒸留と組み合わせて、発酵ブロスから微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームを分離するために使用され得る別の既知の技術である。抽出蒸留剤は、生成物と相互作用して、所望の生成物と他の成分との間の相対的な揮発性を高めることによって機能する。例えば、抽出蒸留剤は、所望の生成物に対して高い親和性を有し、副生成物に対して低い親和性を有する。適切な抽出蒸留剤は、成分と共沸混合物を形成してはならず、蒸留などの後続の分離技術によって生成物から分離することが可能でなければならない。適切な潜在的な抽出蒸留剤は、例えば、米国特許出願公開第2020/0255362号に列挙されている。
【0029】
別の技術は、バイオリアクターから発酵ブロスを受け取り、ブロスをフィルターに通して保持液および透過液を生成するように適合された分離器モジュールの使用を含む。しばしば、透過液は少なくとも生成物を含み、保持液は少なくとも発酵ブロスの微生物バイオマスを含み、これはバイオリアクターにリサイクルされ得る。フィルターは、クロスフロー膜または中空糸膜などの膜であり得る。
【0030】
発酵ブロスから分離され、微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームは、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む。発酵ブロスの残りは、バイオリアクターにリサイクルされ得るか、またはさらに処理されてからバイオリアクターにリサイクルされ得る。燃料用途で使用するエタノールは、高純度を必要としない場合があるが、エタノールの他の用途は、不快な臭いもしくは風味、または人の健康への懸念を回避するために高純度を必要とし得る。最高値のエタノールを製造するには、プロセスストリーム内のエタノールで一般的に生成および検出される副生成物を除去する必要がある。蒸留は、所望のエタノールを分離するための主要な技術であるが、所望のエタノールおよび望ましくない副生成物の同様の温度-蒸気圧プロファイルのために、蒸留単独では必要な純度レベルを達成するのに十分ではない。さらに、いくつかの状況では、共沸混合物が形成されて蒸留が困難になり得る。生成物エタノールの所望のレベルの純度を達成するために、複数の分離工程における複数の分離技術を組み合わせる必要がある。所望の結果を達成するために、特定の分離工程を特定の順序で実施することが有利である。
【0031】
酢酸エチルはプロセスストリームに副生成物として存在し得、プロセスストリームから酢酸エチルを除去して高純度エタノール生成物を生成することが望ましい。酢酸エチルは、エタノールから分離するのが困難である。例えば、酢酸は蒸留または精留によってエタノールから分離することができないが、これはそれらの沸点が近いからである。しかしながら、本開示は、エステルのアルカリ加水分解、またはより具体的には、酢酸エチルを水酸化ナトリウムなどの塩基で加水分解して、エタノールおよび酢酸ナトリウムなどの酢酸塩に中和される酢酸を形成する技術を用いる。塩基は、分離工程へのプロセスストリームの供給に近い場所に追加される。塩基は、プロセスストリームの供給位置の上に、例えば、カラムの上部または上部近くなどで、カラムに追加され得る。塩基は、特にバッチ操作で、リボイラーフィードに追加され得る。得られた酢酸塩は、エタノールと非反応性であり、次に酢酸塩は蒸留によってエタノールから容易に分離される。他の塩基は、この分離工程での使用に適しており、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの組み合わせなどの塩基が挙げられる。この分離工程では、酢酸エチルがプロセスストリームから除去され、したがって生成物エタノールから除去される。
【0032】
次に、ここで酢酸エチルが枯渇したプロセスストリームを吸着剤で処理して、チオールなどの硫黄を含む化合物を除去し得る。硫黄含有化合物は、不快な臭いを与えることが知られており、このことがエタノールを一部の高純度用途に適さないものにしている。不快な臭いは、10億分の1の範囲の濃度などの低レベルの硫黄化合物から生じ得る。少なくとも1つのチオールを含むプロセスストリームを、吸着することによってチオールをプロセスストリームから除去し得る吸着剤と接触させることにより、ストリームからも不快な臭いを除去する。適切な吸着剤には、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。一例は、銀処理または含浸された、中和された強酸性イオン交換樹脂触媒吸着剤である。樹脂は、スルホン化スチレン-ジビニルベンゼン樹脂であり得る。このような合成樹脂は、Rohm&HaasからAmberlyst 15の名称で、BayerAGからLEWATITSPC118の名称で販売されている。適切な吸着剤は、Rohm&HaasからAg/Amberlyst-15という名称で販売されている。適切な吸着剤は、米国特許第4,760,204号に詳細に記載されている。プロセスストリームの処理は、連続的な方法で、バッチ方式で、スイングベッド方式で、または任意の他の適切な操作モードで操作され得る。吸着剤は、固定床、移動床、流動床、模擬移動床または他の任意の適切な配置に配置され得る。
【0033】
別の実施形態において、存在するいずれかのメルカプタンは、臭気のあるメルカプタンを非臭気のジスルフィドに化学的に変換するために、炭素を使用して酸化されてジスルフィドを形成し得るであろう。
【0034】
硫黄化合物を除去するための処理は、空気中で実施され得るか、または不活性雰囲気で実施され得る。不活性雰囲気の非限定的な例には、窒素雰囲気およびヘリウム雰囲気が挙げられる。不活性雰囲気を使用する利点は、望ましくないアセトアルデヒドの生成を回避できることである。吸着剤容器は、窒素などの不活性ガスでパージされ得、窒素で連続的にパージされ得る。
【0035】
ここで酢酸エチルおよびチオールの両方が枯渇したプロセスストリームを蒸留して、エタノール、メタノール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を分離する。蒸留は、1つ、2つ、またはそれ以上の蒸留塔で達成され得る。例えば、単一の蒸留塔を使用して、ボトムストリームとして少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を、メタノールオーバーヘッドストリームおよび高純度エタノールサイドカットストリームから分離し得る。別の実施形態では、第1のカラムは、エタノールおよび少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を用いて、オーバーヘッドカラムおよびボトムカラムとしてメタノールを分離し得る。第2のカラムでは、高純度エタノールが、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物から分離される。
【0036】
1つ以上の蒸留は、不活性雰囲気で実施され得る。1つ以上の蒸留塔は、抽出蒸留塔であり得、抽出蒸留剤を用いる。
【0037】
発酵プロセスは、副生成物としてフーゼル油を生成し得る。したがって、発酵ブロスおよび微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームは、フーゼル油をさらに含み得る。フーゼル油は、蒸留工程でプロセスストリームから除去し得る。一実施形態では、フーゼル油は、蒸留塔の少なくとも1つからサイドドローとして除去される。フーゼル油とともに、蒸留塔の少なくとも1つからの同じサイドドローの一部として、硫黄種もまた除去され得る。プロセスの初期に除去されなかった硫黄含有化合物は、ここで除去され得るであろう。
【0038】
発酵ブロスおよびプロセスストリームは、アセトアルデヒドをさらに含み得る。アセトアルデヒドはプロセスストリームの望ましくない成分であり、生成物エタノールを汚染せず、生成物エタノールの純度を低下させないように除去され得る。この分離工程は任意であり、プロセスストリームに存在するアセトアルデヒドの量に依存し得る。金属を使用してアセトアルデヒドをプロセスストリームから除去してアセトアルデヒドを酢酸塩に還元し、続いて蒸留して酢酸塩を除去する。形成される酢酸塩は、酢酸エチルであり得る。したがって、アセトアルデヒドは、酢酸エチルの除去と同じ工程で除去され得る。
【0039】
発酵ブロスおよびプロセスストリームは、アルデヒドをさらに含み得る。アルデヒドはプロセスストリームの望ましくない成分であり、生成物エタノールを汚染せず、かつ生成物エタノールの純度を低下させないように除去しなければならない。アルデヒドはアルコールに還元され、次いでプロセスストリームから除去され得る。アルデヒドの還元は、反応性金属、アマルガム、または反応性金属を含む化合物を使用して達成され得る。適切な金属、アマルガムおよび化合物は、亜鉛またはアルミニウムを含み得る。異なる金属、アマルガムおよび化合物の混合物が使用され得る。別の実施形態では、プロセスストリームをヒドラジンで処理して、アルデヒドと反応させ、アルカンを形成し得る。生成されたアルコールまたは生成されたアルカンは、エタノールが高純度で回収されるように、蒸留工程で除去され得る。
【0040】
発酵ブロスおよびプロセスストリームは、望ましくない不純物をさらに含み得る。プロセスストリームは、不純物を除去するために吸着剤を使用して処理され得る。適切な吸着剤には、Ag/Amberlyst-15の名称で販売されているような、活性炭、活性化木炭、および銀処理または含浸された中和された強酸性イオン交換樹脂触媒吸着剤が挙げられる。プロセスストリームは、プロセスの任意の時点で不純物を除去するために処理され得る。一実施形態では、プロセスストリームは、他の分離工程の前に不純物を除去するように処理される。別の実施形態では、プロセスストリームは、少なくとも1つのチオールを除去するのと同じ工程で不純物を除去するように処理される。
【0041】
分離工程は任意の順序で行われ得るが、特定の順序で工程を行うことには利点がある。メタノールおよび3個以上の炭素原子を有する化合物の前に、プロセスストリームから酢酸エチルおよびチオールを除去することが有利である。一実施形態では、酢酸エチルが最初にプロセスストリームから除去される。
【0042】
必要に応じて、精製エタノール流は乾燥または脱水され得る。エタノールは水と共沸混合物を形成するので、単純な蒸留でエタノールを約90wt%まで脱水し得るが、残りの水を除去するには別の手法が必要である。そのような技術は公知であり、適切な技術には、膜脱水および吸着剤脱水の使用が挙げられる。膜技術の例には、膜蒸気透過またはパーベーパレーションモードが挙げられる。エタノールの脱水用に、複数の異なる膜が市販されている。吸着、および圧力スイング吸収(PSA)は、無水エタノールを生成することが知られている技術である。多くのゼオライト吸着剤が、PSAシステムで使用するために市販されている。
【0043】
図1は、微生物バイオマスが工程104で発酵ブロス102から除去されて、微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリームを形成するプロセスフローを示す。プロセスストリームは、分離工程112のシーケンス108またはシーケンス110のいずれかに送られる。分離工程112のシーケンス108において、最初に、酢酸エチルは、酢酸エチルを塩基性化合物と反応させることによって除去され、続いて109で蒸留され、次いで、少なくとも1つのチオールが、吸着または反応によって111でジスルフィドに分離される。分離工程112のシーケンス110において、最初に、少なくとも1つのチオールが、113におい
て吸着または
ジスルフィドへの反応によって分離され、次いで、酢酸エチルが塩基性化合物と反応させられ、続いて114において蒸留することによって、酢酸エチルが除去される。分離工程112の後、プロセスストリームは酢酸エチルおよびチオールが枯渇し、分離工程120のシーケンス116またはシーケンス118に送られる。分離工程120のシーケンス116において、最初に、メタノールが117での蒸留によって分離され、次いで、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物が、119での蒸留によって分離される。分離工程120のシーケンス118において、最初に、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物が、121での蒸留によって分離され、次いで、メタノールが、122での蒸留によって分離される。次に、エタノールを、工程122で回収する。
【0044】
図2は、分離工程が特定の順序で配置されている本開示の一実施形態を示している。発酵ブロスからすでに分離されており、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、メタノール、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物、およびエタノールを含むプロセスストリームがライン204で実施され、容器206に導入され、そこで酢酸エチルが除去される。水酸化ナトリウムなどの塩基が、ライン208中で容器206に導入される。塩基は酢酸エチルと反応して酢酸ナトリウムを形成し、ライン210中で除去される。酢酸エチル枯渇プロセスストリームは、ライン212を介して容器206から容器214に送られる。容器214は、少なくとも1つのチオールを吸着し得る吸着剤を収容している。酢酸エチルおよびチオールが枯渇したプロセスストリームは、ライン218中で容器214から容器220に送られる。プロセスのある時点で、吸着剤によって吸着されたチオールは、脱着工程で脱着され、ライン216を介して除去される。容器220は、蒸留塔であり、ここで、メタノールがライン224中のオーバーヘッドとして除去され、エタノールおよび少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含むライン222中のボトムが容器226に送られる。任意のサイドドロー232もまた示され、ここで、フーゼル油および/または硫黄含有化合物を回収し得る。容器226は、蒸留塔であり、ここで、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物がボトムストリーム228において除去される。オプションのサイドドロー234も示され、ここで、フーゼル油および/または硫黄含有化合物が回収され得る。精製エタノールは、オーバーヘッドライン230中で除去される。必要に応じて、ライン230中の精製エタノールをエタノール脱水ユニット238で乾燥させて、ライン236中で精製脱水エタノールを提供し得る。エタノール脱水ユニット238は、膜システムまたはPSAであり得る。
【0045】
図3は、発酵ブロスの生成、ならびに微生物バイオマス枯渇プロセスストリームを生成するための微生物バイオマスの分離および除去の実施形態の一部を示している。産業プロセスまたはガス化ユニット310は、導管304内に基質を提供し、これは、バイオリアクター300に送られ、そこで基質が微生物を使用して発酵されて、エタノールなどの標的生成物を生成する。微生物バイオマス、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、メタノール、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物およびエタノールを含む発酵ブロス312は、バイオリアクター300から取り出されて、分離器314に送られ、そこで微生物バイオマスがライン316中に分離され、バイオリアクター300にリサイクルされる。微生物バイオマスが枯渇したプロセスストリーム204は、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、メタノール、少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物、およびエタノールを含み、
図2に記載されるように、精製のために準備されている。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを回収するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b.前記プロセスストリームから、任意の順序で、
i.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することにより、酢酸エチルを除去することと、
ii.ジスルフィドへの吸着または反応により、少なくとも1つのチオールを除去することと、
iii.蒸留により、メタノールを除去することと、
iv.蒸留により、3個以上の炭素原子を有する化合物を除去することと、
c.蒸留により、エタノールを回収することであって、前記蒸留が、単一のカラムまたは2つ以上のカラム中で実施され得る、回収することと、を含む、方法。
[発明2]
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、アセトアルデヒドをさらに含み、前記方法が、金属を使用して前記プロセスストリームから前記アセトアルデヒドを除去して、前記アセトアルデヒドを酢酸塩に還元し、続いて蒸留することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、少なくとも1つのアルデヒドをさらに含み、前記方法が、前記アルデヒドをアルコールに還元するか、または前記アルデヒドを反応させてアルカンを形成することにより、工程bにおいて前記アルデヒドを除去することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明4]
前記アルコールに還元することが、反応性金属、アマルガム、または反応性金属を含む化合物を使用して実施される、発明3に記載の方法。
[発明5]
前記反応性金属、アマルガム、または化合物が、亜鉛またはアルミニウムを含む、発明4に記載の方法。
[発明6]
前記反応させてアルカンを形成することが、ヒドラジンでの処理により実施される、発明3に記載の方法。
[発明7]
前記少なくとも1つのアルデヒドを除去することが、工程bのサブ工程iの一部である、発明3に記載の方法。
[発明8]
工程bのサブ工程iiiまたは工程bのサブ工程ivの前記蒸留の一部として、前記エタノールが除去される、発明1に記載の方法。
[発明9]
工程bにおいて、サブ工程iおよびiiが、サブ工程iiiおよびivの前に実施される、発明1に記載の方法。
[発明10]
前記少なくとも1回の蒸留が、不活性雰囲気中で実施される、発明1に記載の方法。
[発明11]
全ての蒸留が、不活性雰囲気中で実施される、発明1に記載の方法。
[発明12]
前記少なくとも1つのチオールを除去することが、空気中または不活性雰囲気下で実施される、発明1に記載の方法。
[発明13]
前記吸着が、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる、発明1に記載の方法。
[発明14]
前記強酸性陽イオン交換樹脂が、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgである、発明13に記載の方法。
[発明15]
前記発酵ブロスおよび前記プロセスストリームが、不純物をさらに含み、前記方法が、前記プロセスストリームを吸着剤で処理して、不純物を除去することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明16]
前記吸着剤が、活性炭、活性化木炭、または強酸性陽イオン交換樹脂である、発明15に記載の方法。
[発明17]
前記強酸性陽イオン交換樹脂が、強酸性スルホン酸基を有するマクロ網状ポリスチレン系のイオン交換樹脂上のAgである、発明16に記載の方法。
[発明18]
工程bのiii、工程c、または工程bのiiiおよび工程cの両方において、前記蒸留によりフーゼル油を除去することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明19]
工程bのiii、工程c、または工程bのiiiおよび工程cの両方において、前記蒸留により少なくとも1つの硫黄含有化合物を除去することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明20]
微生物を使用してガス化プロセスからの産業廃棄物ガスまたは合成ガスを発酵させて、前記発酵ブロスを生成することをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明21]
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、前記プロセスストリームから酢酸エチルを除去することと、
c.ジスルフィドへの吸着または反応により、前記酢酸エチル枯渇ストリームから少なくとも1つのチオールを除去して、チオール枯渇ストリームを生成することと、
d.メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、蒸留により前記チオール枯渇流から分離することであって、前記蒸留が、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る、分離することと、を含む、方法。
[発明22]
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物、を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための方法であって、
a.前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成することと、
b.ジスルフィドへの吸着または反応により、前記プロセスストリームから少なくとも1つのチオールを除去して、チオール枯渇ストリームを生成することと、
c.酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留して酢酸エチル枯渇ストリームを生成することにより、前記チオール枯渇ストリームから酢酸エチルを除去することと、
d.メタノール、エタノール、および3個以上の炭素原子を有する化合物を、蒸留により前記酢酸エチル枯渇ストリームから分離することであって、前記蒸留が、単一のカラム中または2つ以上のカラム中で実施され得る、分離することと、を含む、方法。
[発明23]
微生物バイオマス、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、発酵ブロスから、エタノールを分離するための装置であって、
a.バイオリアクターと流体連通し、前記発酵ブロスから少なくとも微生物バイオマスを分離して、エタノール、メタノール、酢酸エチル、少なくとも1つのチオール、および少なくとも1つの3個以上の炭素原子を有する化合物を含む、プロセスストリームを生成するように構成された、第1の分離ユニットと、
b.前記第1の分離ユニットと流体連通し、塩基性化合物導管と流体連通し、かつ酢酸エチルを塩基性化合物と反応させ、続いて蒸留することにより、前記プロセスストリームから前記酢酸エチルを除去するように構成された、第2の分離ユニットと、
c.前記第2の分離ユニットと流体連通し、硫黄含有化合物導管と流体連通し、かつジスルフィドへの吸着または反応により少なくとも1つのチオールを除去するように構成された、第3の分離ユニットと、
d.前記第3の分離ユニットと流体連通し、かつメタノール、3個以上の炭素原子を有する化合物、およびエタノールを分離するように構成された、蒸留システムであって、単一のカラムまたは2つ以上のカラムを備え、かつメタノール導管、C3+導管、およびエタノール導管と流体連通している、蒸留システムと、を備える、装置。
[発明24]
前記エタノール導管と流体連通している脱水ユニットをさらに備える、発明23に記載の装置。
[発明25]
前記蒸留システムと流体連通している少なくとも1つのサイドドローをさらに備える、発明23に記載の装置。
[発明26]
前記バイオリアクターが基質導管と流体連通し、前記基質導管が産業プロセスまたはガス化プロセスと流体連通している、発明23に記載の装置。