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特許7440658気筒休止及び高出力密度(HPD)ブレーキのためのバルブの作動及び順序付け
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】気筒休止及び高出力密度(HPD)ブレーキのためのバルブの作動及び順序付け
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/06 20060101AFI20240220BHJP
   F02D 13/04 20060101ALI20240220BHJP
   F02D 13/06 20060101ALI20240220BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F01L13/06 Z
F02D13/04 A
F02D13/06 B
F01L13/00 303C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022559364
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2021052784
(87)【国際公開番号】W WO2021199002
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】63/004,232
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤナク、ロブ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/061069(WO,A1)
【文献】特開2016-020696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0018244(US,A1)
【文献】特表2004-527686(JP,A)
【文献】特開2018-145808(JP,A)
【文献】特開2001-280159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34- 1/356
9/00- 9/40
13/00-13/08
F02D 13/04
F02D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの気筒を有する内燃エンジンにおける気筒休止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを容易にするようにバルブ運動を制御するためのシステムであって、前記システムが、
前記少なくとも1つの気筒の各々と関連付けられたバルブセットであって、前記バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備える、バルブセットと、
前記バルブセットの各々において主事象運動を生成するように構成された主事象運動システムと、
前記排気バルブの少なくとも1つに運動を加えることによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を生成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、
少なくとも1つのバルブセットの前記吸気及び排気バルブの主事象運動を選択的に休止させるように構成された気筒休止システムと、
前記気筒休止システムが、前記エンジンブレーキ動作中に少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させることを選択的に阻止するように構成された遮断システムと、を備える、システム。
【請求項2】
前記エンジンブレーキシステムが、前記内燃エンジンのサイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放事象を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記主事象運動システムが、少なくとも1つのバルブブリッジを備え、前記気筒休止システムが、前記少なくとも1つのバルブブリッジの折り畳み特徴を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記気筒休止システムが、油圧に応答して主事象運動を休止させるように構成されており、前記遮断システムが、前記気筒休止システム内の油圧を阻止するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記気筒休止システムが、油圧に応答して主事象運動を起動させるように構成されており、前記遮断システムが、前記気筒休止システム内の油圧を可能にするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記エンジンブレーキシステムが、前記排気バルブの少なくとも1つと関連付けられた専用のブレーキロッカーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記遮断システムが、作動流体の流れを制御して、前記気筒休止システムが少なくとも1つのバルブセットの吸気バルブの主事象運動を休止させることを選択的に阻止するように配設された遮断ソレノイドバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エンジンブレーキシステムが、作動流体の流れを制御して、前記少なくとも1つの気筒の少なくとも1つのバルブのブレーキ運動を生成するように配設されたブレーキソレノイドバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記気筒休止システムが、作動流体の流れを制御して、前記少なくとも1つの気筒の少なくとも1つと関連付けられた前記吸気及び排気バルブの主事象運動を休止させるように配設された気筒休止ソレノイドバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記遮断システムが、ロッカーアーム内に配置され、かつ前記ロッカーアーム内の油圧通路内の流れを阻止するように配設されたバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記遮断システムが、そうでない場合には前記少なくとも1つの吸気バルブの前記主事象運動を休止させるために使用される前記気筒休止システムの一部分によって提供される、作動流体の流れを遮断するように配設されたバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの気筒を有する内燃エンジンにおける気筒休止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを容易にするためのバルブ運動を制御する方法であって、
前記内燃エンジンが、
前記少なくとも1つの気筒の各々と関連付けられたバルブセットであって、前記バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備える、バルブセットと、
前記バルブセットの各々において主事象運動を生成するための主事象運動システムと、
前記排気バルブの少なくとも1つに運動を加えることによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキバルブ運動を生成するためのエンジンブレーキシステムと、
少なくとも1つのバルブセットの前記吸気及び排気バルブの主事象運動を選択的に休止させるための気筒休止システムと、
前記気筒休止システムが、前記エンジンブレーキ動作と組み合わせた少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させることを選択的に阻止するための遮断システムと、を備え、
前記方法が、
前記バルブセットのうちの少なくとも1つに対してブレーキシステムのブレーキ動作を開始することと、
前記気筒休止システムの気筒休止動作を開始することであって、前記気筒休止動作が、前記少なくとも1つのバルブセットに対する吸気及び排気両方の主事象運動を休止させる傾向がある、開始することと、
前記少なくとも1つの吸気バルブの前記主事象運動の休止を阻止するための前記遮断システムの遮断動作を開始することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記内燃エンジンのサイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放事象を提供することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの吸気バルブの前記主事象運動が、前記ブレーキ動作において行われる圧縮解放ブレーキ事象を強化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記遮断動作が、ロッカーアーム上の遮断バルブによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記遮断動作が、ロッカーシャフト上の遮断バルブによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記遮断動作が、ソレノイドマニホールド上の遮断バルブによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記遮断システムが、ロッカーシャフト上に配置されたバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記遮断システムが、ソレノイドバルブマニホールド上に配置されたバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権及び関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月2日に出願された「CONTROLLING THE SEQUENCING OF INTAKE AND EXHAUST VALVES WITH LESS ACTUATORS」と題する米国特許仮出願第63/004,232号に対する優先権を主張するものであり、その主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、内燃エンジンにおけるバルブ作動システムに関し、具体的には、アクチュエータによる吸気バルブ及び排気バルブの順序付けを制御するためのシステム及び方法に関する。開示されるシステム及び方法は、気筒休止及び高出力密度(high-power density、HPD)エンジンブレーキを組み合わせるエンジン環境におけるバルブ運動の順序付けに特に好適であり得る。
【背景技術】
【0003】
既知のバルブ作動システムは、主事象バルブ運動以外の運動である補助バルブ運動を提供するために、補助ロッカーアーム及び補助作動運動源(例えば、専用の補助カム)を利用し得る、補助バルブ作動システムを含む。主事象バルブ運動は、関連する気筒内の典型的な4ストロークエンジンサイクルにおける正の出力生成(すなわち、制御された吸入、圧縮、燃焼、及び排気ストローク)を容易にする、典型的な吸気及び排気バルブ運動を指す。例えば、そのような補助バルブ作動システム及び関連するバルブ運動は、圧縮解放(compression-release、CR)エンジンブレーキ、あるいは、いくつかの補助バルブ事象のうちのいずれか、又は限定されないが、後期吸気バルブ閉鎖(late intake valve closing、LIVC)、早期排気バルブ早期開放(early exhaust valve opening、EEVO)、早期吸気バルブ閉鎖(early intake valve closing、EIVC)、及び/又は後期吸気バルブ開放(late intake valve opening、LIVO)などの、可変主事象タイミング若しくは可変バルブタイミング事象(しばしば、可変バルブ作動又はVVA(variable valve actuation)と称される)のうちのいずれかを提供し得る。
【0004】
様々なタイプのCRエンジンブレーキが、当技術分野において既知である。概して、CRエンジンブレーキは、エンジンの気筒が燃料無供給状態で動作して、本質的に空気圧縮機として作用するときに生じ、それによって、車両の駆動トレインを通して車両減速出力を提供する。いわゆる2ストローク又は高出力密度(HPD)圧縮解放エンジンブレーキは、エンジンのサイクルごとに2つのCR事象を提供し、これは、エンジンのサイクルごとに単一のCR事象のみが提供される従来のCRシステムと比較して、増加した減速出力を提供する。HPDブレーキシステムのいくつかのバージョンでは、HPDエンジンブレーキを実施する補助バルブ作動運動を優先して、主吸気及び排気バルブ作動運動が「失われる」(エンジンバルブに伝達されない)ことを可能にする必要がある。
【0005】
当技術分野において更に既知であるように、バルブ作動システムは、内燃エンジン内の気筒を休止させるように構成され得る。典型的には、気筒休止(cylinder deactivation、CDA)を実施するシステムは、吸気及び排気バルブを任意のバルブ作動運動源から結合解除することを可能にし、それによって、吸気及び排気バルブのバルブ作動を阻止する機構を含む。しばしば、そのようなCDAシステムが油圧で作動するという限りでは、CDA機構への作動流体の印加を制御するために、1つ以上のアクチュエータ(例えば、高速ソレノイド)が採用され得る。主吸気及び排気バルブ事象の結合解除を必要とする共通の特徴を考えれば、2ストロークのHPD CRエンジンブレーキ及びCDAを提供するシステムが容易に想像され得る。
【0006】
しかしながら、他のタイプのCRエンジンブレーキとのCDAの互換性は、容易に達成されるものではない。2ストロークHPDによって、気筒休止機構は、主吸気及び排気バルブ事象を除去し、吸気及び排気制動ロッカーアームが、カムの1回転(1エンジンサイクル)当たり2つの吸気事象、2つのCR事象、及び2つのブレーキガス再循環(brake gas recirculation、BGR)事象を提供することを可能にする。いわゆる1.5ストロークHPDでは、主排気事象は休止するが、主吸気バルブ事象は休止せず、第2のCR事象を支持するための追加的な吸気リフト事象は提供されない。通常の吸気は、第1のCRに提供され、第2の圧縮解放事象で使用されるガスは、吸気マニホールドから空気を引き込むことなく、排気マニホルドガスの再循環によってのみ生成される。そのような1.5ストロークHPDバルブ作動運動の一例が、図1に例示されている。示されるように、通常の主排気バルブ作動バルブ運動が失われて(そうでない場合には、典型的に、例示される実施例では、約180~300度のクランク角で生じる)、2つのCR事象120及び2つのBGR事象122、124を含む補助バルブ作動運動と置き換えられる。更に示されるように、主排気事象とは異なり、主吸気バルブ事象134は失われず、代わりに、第1のCR事象120(例示される実施例では、0度のクランク角を中心とする)のガスを提供するように動作する。
【0007】
1.5ストロークHPDエンジンブレーキ中に主吸気事象を続ける必要があることを考えると、そうでない場合には吸気及び排気両方の主事象を休止させるCDA機構に依存することは不可能である。この制限を克服するために、セットごとに別々のアクチュエータを提供して、吸気及び排気バルブの各セットの独立した制御を提供することが可能である。例えば、6気筒のエンジンでは、これは、12個の別々のアクチュエータ、すなわち、吸気バルブに6個のアクチュエータ及び排気バルブに6個のアクチュエータを必要とする。したがって、CDA動作中に、12個全てのアクチュエータが動作して、吸気及び排気バルブの全てのセットの休止を生じさせる。更に、1.5ストロークHPD中に、排気バルブの6個のアクチュエータが動作して排気バルブを休止させるが、吸気バルブの6個のアクチュエータは、依然としてメインバルブ事象に従う吸気バルブの作動を可能にするように動作する。この構成は可能ではあるが、別々のアクチュエータ、並びに例えば、各休止機構のための追加的な必要とされる別々の油圧通路を加えることを含む、システムの増加した複雑さを提供することによって負担となるコスト及びスペースの要件は、かなり高くなる。
【0008】
したがって、上述した欠点を伴わない協働的なバルブ作動運動源を実装しているシステム及び関連する方法は、当技術分野の進歩を表す。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様は、気筒休止並びに高出力密度(HPD)エンジンブレーキを採用しているエンジン環境に特に適している、バルブ運動を制御するためのシステムを提供する。遮断システムは、エンジンブレーキが気筒休止と組み合わせて行われたときに、1つ以上の気筒の吸気バルブの主事象運動の休止を阻止するために提供され得る。本システムは、各々がエンジンシリンダと関連付けられた、ロッカーアームなどバルブトレイン構成要素内に位置するスプールバルブなどの、1つ以上の遮断要素を制御するように配設及び適合されている遮断ソレノイドバルブが実装され得る。制御は、バルブトレイン構成要素内の通路又は油圧リンクの油圧ネットワークによって容易になり得る。
【0010】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つの気筒を有する内燃エンジンにおける気筒休止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを容易にするようにバルブ運動を制御するためのシステムは、少なくとも1つの気筒の各々と関連付けられたバルブセットであって、バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備える、バルブセットと、バルブセットの各々において主事象運動を生成するように構成された主事象運動システムと、排気バルブの少なくとも1つに運動を加えることによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を生成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つのバルブセットの吸気及び排気バルブの主事象運動を選択的に休止させるように構成された気筒休止システムと、気筒休止システムが、エンジンブレーキ動作中に少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させることを選択的に阻止するように構成された遮断システムと、を備え得る。
【0011】
更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、内燃エンジンのサイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放事象を生成するように構成されている、エンジンブレーキシステムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、少なくとも1つのバルブブリッジを備え得、気筒休止システムは、少なくとも1つのバルブブリッジ上に折り畳み特徴を含み得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、油圧に応答して主事象運動を休止させるように構成されている休止システムと、気筒休止システムの吸気部分内の油圧を阻止するように構成されている遮断システムと、を備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、油圧に応答して主事象運動を休止させるように構成されている休止システムを備え得、遮断システムは、気筒休止システム内の油圧を可能にするように構成され得る。
【0012】
更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、排気バルブの少なくとも1つと関連付けられた専用のブレーキロッカーを伴うエンジンブレーキシステムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、作動流体の流れを制御して、気筒休止システムが1つのバルブセットの吸気バルブの主事象運動を休止することを選択的に阻止するように配設された遮断ソレノイドバルブを備える、遮断システムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、作動流体の流れを制御して、ブレーキ運動が少なくとも1つの気筒と関連付けられた少なくとも1つのバルブに印加され得る少なくとも1つのバルブセットのブレーキ運動を生成するように配設されたブレーキソレノイドバルブを有する、エンジンブレーキシステムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、作動流体の流れを制御して、少なくとも1つのバルブセットの吸気及び排気バルブの主事象運動を休止させるように配設された気筒休止ソレノイドバルブを有する、気筒休止システムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、ロッカーアーム内に、又はロッカーシャフト若しくはソレノイドマニホールドなどのバルブトレイン内の別の構成要素内に(又は上に)配置され、かつバルブトレイン構成要素の油圧通路の流れを阻止するように配設されたバルブを有する、遮断システムを備え得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御するためのシステムは、そうでない場合には少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させるために使用される気筒休止システムの一部分によって提供される作動流体の流れを遮断するように配設されたバルブを有する、遮断システムを備え得る。
【0013】
本開示の更なる一態様によれば、少なくとも1つの気筒を有する内燃エンジンにおける気筒休止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを容易にするためのバルブ運動を制御する方法であって、システムが、少なくとも1つの気筒の各々と関連付けられたバルブセットであって、バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備える、バルブセットと、バルブセットの各々において主事象運動を生成するための主事象運動システムと、排気バルブの少なくとも1つに運動を加えることによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキバルブ運動を生成するためのエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つのバルブセットの吸気及び排気バルブの主事象運動を選択的に休止させるための気筒休止システムと、気筒休止システムが、エンジンブレーキ動作と組み合わせた少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させることを選択的に阻止するための遮断システムと、を備え、本方法は、バルブセットのうちの少なくとも1つに対してブレーキシステムのブレーキ動作を開始することと、気筒休止システムの気筒休止動作を開始することであって、気筒休止動作は、少なくとも1つのバルブセットの少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を休止させる傾向がある、開始することと、少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動の休止を阻止するための遮断システムの遮断動作を開始することと、を含む。
【0014】
更なる態様によれば、バルブ運動を制御する方法は、内燃エンジンのサイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放事象を提供することを更に含み得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御する方法は、少なくとも1つの吸気バルブの主事象運動を含み得、主吸気事象運動は、吸気バルブを気筒圧力に抗して開かせて、ブレーキ動作において行われる圧縮解放ブレーキ事象を強化するように機能し得る。
【0015】
本開示に記載される特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。これらの特徴及び付随する利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することから明らかになるであろう。ここで、単なる例として、同様の参照番号が同様の要素を表す添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1.5ストロークHPDエンジンブレーキを提供するための先行技術のバルブ作動シーケンスにおけるクランクシャフト角度の関数としてのバルブリフトを例示するグラフである。
図2】本開示に従う第1の実施形態による、例示的なシステム及びアクチュエータ順序付け方法及び技術の概略図である。
図3】本開示に従う第1の実施形態による、例示的なシステム及びアクチュエータ順序付け方法及び技術の概略図である。
図4】本開示に従う第1の実施形態による、例示的なシステム及びアクチュエータ順序付け方法及び技術の概略図である。
図5】本開示に従う第1の実施形態による、例示的なシステム及びアクチュエータ順序付け方法及び技術の概略図である。
図6】本開示に従う第2の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図7】本開示に従う第2の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図8】本開示に従う第2の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図9】本開示に従う第3の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図10】本開示に従う第3の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図11】本開示に従う第3の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図12】本開示に従う第3の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図13】本開示に従う第4の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図14】本開示に従う第4の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図15】本開示に従う第4の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図16】本開示に従う第5の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図17】本開示に従う第5の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図18】本開示に従う第5の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図19】本開示に従う第5の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図20】本開示に従う第6の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図21】本開示に従う第6の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図22】本開示に従う第6の実施形態による、システム及びアクチュエータ順序付け技術並びに方法を例示する。
図23】第1~第6の実施形態を実装するために使用され得る、ロッカーアームにおけるスプール気筒の実装形態の一例の動作を例示する。
図24】第1~第6の実施形態を実装するために使用され得る、ロッカーアームにおけるスプール気筒の実装形態の一例の動作を例示する。
図25】本開示の態様を実装するのに好適な例示的な休止機構又は休止装置を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概して、本開示は、上述した欠点に対処する。具体的には、本開示に従う内燃エンジンは、2ストロークHPDエンジンブレーキを実装しているバルブ作動運動を提供することができる圧縮解放ブレーキシステム、並びに吸気及び排気バルブ作動を休止させることができる気筒休止システムを備える。本開示は、CRブレーキシステム及びCDAシステムの動作時に、例えば1.5ストロークHPDエンジンブレーキを提供することが所望される場合、(CDAシステムの動作にもかかわらず)吸気バルブ作動の休止を阻止することを更に提供する。この目的のために、本明細書では、異なる数のアクチュエータを備える様々なシステム構成、及びそのようなアクチュエータの動作を同期させるための支援方法が説明される。
【0018】
より具体的には、本明細書で説明される様々な実施形態は、1つのアクチュエータが対の吸気及び排気主事象運動の起動/休止することができるようにアクチュエータの数を低減させるが、吸気又は排気バルブのみが別々に制御されるように経路の1つを選択的に遮断することができる方式に対処する。好ましい実施形態では、吸気及び排気バルブ両方の制御は、CDAに必要とされる迅速な反応時間に関して構成される。次いで、1.5ストロークHPDエンジンブレーキが要求された場合は、残りのブレーキシステムが起動されるときに、遮断スプールが最初に作動されて、吸気バルブの休止を阻止する。遮断スプールは、ブレーキが作動していないときには吸気及び排気の休止を可能にし、ブレーキが作動しているときには吸気の休止を可能にしないように構成することができる。したがって、主事象吸気バルブ運動は、CRブレーキを強化するために主事象吸気バルブ運動が使用され得るHPDブレーキなどの、ブレーキ動作に利用可能であり得る。典型的には、遮断スプールは、CDA油を吸気に供給するために、CDA油供給流路を開いたままにし得る。しかしながら、本開示によって、他の構成が想到される。
【0019】
本開示に従う第1の実施形態は、図2図5に関して例示される。加えて、図25は、図2図22に概略的に描写されるシステムを更に理解するために有用になる、米国特許第9,790,824号に記載されているようなバルブ作動システム構成要素の例示的な主要な特徴の関連する詳細を示し、明確にするためいくつかの構成要素が省略された又は取り除かれている。
【0020】
図2及び図25を参照すると、具体的には、主事象ロッカー218は、枢動又はロッキング運動のためのロッカーシャフト290に装着され得、また、一対の吸気バルブ210、212を作動させる主事象運動をカム330などの主事象運動源からバルブブリッジ216に伝達し得る。同じくロッカーシャフトに装着され得る補助ロッカーアーム220は、補助運動源340から、バルブブリッジ216のブリッジピン222に、及び吸気バルブ212の1つに補助運動を伝達し得る。バルブブリッジ216は、休止機構204(同様に、図25では、概して、217で参照される)を装備し得、休止機構204は、一対の楔形要素312の後退を、したがって、ブリッジ216内の外側プランジャ314の下方への運動を可能にするために油圧下で下方に変位され得る、内側プランジャ310を含み得る。
【0021】
バルブセットは、各気筒と関連付けられ得、一対の吸気バルブ210、212と、一対の排気バルブ250、252と、を含み得る。吸気バルブは、吸気バルブ作動システム214(図3)によって作動され、作動システム214は、主吸気ロッカー218がカム330(図25)などの運動源から運動を受け取ることによって駆動される吸気バルブブリッジ216を備え得る。吸気バルブブリッジ216は、吸気バルブブリッジ216を休止させるための、その中に一体化された折り畳み又は休止機構204を含み得る。カム340(図25)によって駆動され得る補助吸気ロッカー220は、吸気バルブブリッジ216から独立して移動し得る吸気バルブブリッジピン222を通して、補助運動を吸気バルブ212の1つに提供し得る。当業者によって本開示から認識されるように、例えば、吸気ロッカー218などのバルブトレイン構成要素、及び排気バルブに関して下で説明される他のバルブトレイン構成要素は、図2の最左端のバルブセットのみに例示されており、他の例示されたバルブセットで繰り返されない(すなわち、ブリッジ216.1及び256.1、並びにブリッジ216.2及び256.2と関連付けられない)。図の全体的な明瞭化のために、これらの特徴は、図2では1つのバルブセットのみに例示されており、他の図では示されていない。
【0022】
排気バルブは、排気バルブ作動システム254によって作動され得、作動システム254は、主排気ロッカー258が運動源(図25のカム330に類似する)から運動を受け取ることによって駆動される排気バルブブリッジ256を備え得る。排気バルブブリッジ256は、排気バルブブリッジ256を休止させるための、その中に一体化された折り畳み又は休止機構202を含み得る。カム(図25のカム340に類似する)によって駆動され得る補助排気ロッカー206は、吸気バルブブリッジ256から独立して移動し得る排気バルブブリッジピン262を通して、補助(ブレーキ)運動を排気バルブ252のうちの1つに提供し得る。エンジンブレーキロッカーアーム206は、ブレーキロッカーアーム206が(例示される実施例ではブリッジピン262を介して)圧縮解放バルブ作動運動を排気バルブに提供することができるように排気バルブ252と併せて気筒ごとに提供された、専用のロッカーアームであり得る。本開示全体を通して、各ブレーキロッカーアーム206は、2ストロークHPDエンジンブレーキバルブ作動運動、すなわち、2つのCR事象及び1つ以上の追加的な給気事象を提供することができる補助作動運動源(図2には示されず、図25に表されている)と関連付けられ得ることが想定される。
【0023】
認識されるように、吸気バルブブリッジ216及び排気バルブブリッジ256が休止していないとき(すなわち、作動流体がそれぞれ、休止機構204及び202に提供されていないとき)、吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254は、少なくとも部分的に、主事象運動システムとして機能し得、主事象運動システムは、主事象運動を吸気バルブ210、212及び排気バルブ250、252に提供して、関連するエンジンシリンダの主事象動作(すなわち、正の電力モード)を容易にする。
【0024】
本開示から容易に認識されるように、吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254の動作の制御は、制御バルブが吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254を制御し得る油圧ネットワーク又は回路を提供するために、様々なバルブトレイン構成要素内の1つ以上の高速制御ソレノイドバルブ及び油圧リンク又は通路のネットワークを通して実装され得る。
【0025】
エンジンブレーキシステムは、バルブトレイン構成要素、典型的には、ロッカーシャフト(図2で、破線ボックス290によって表される)に提供され得る油圧供給経路292から作動流体を受け取るように配設及び適合され得る、エンジンブレーキソレノイドバルブ270を含み得る。下で説明されるように、ロッカーシャフト290は、バルブ作動システムの様々な構成要素を動作させるための油圧リンク又は回路を提供するために、いくつかの油圧通路を収容し得る。ブレーキソレノイドバルブ270は、高速ソレノイドバルブであり得、また、ブレーキソレノイドバルブマニホールド271を介して(すなわち、エンジン制御ユニットからの電気信号に基づいて)ブレーキ油圧リンク又は通路294内の作動流体の流れを制御し得、ブレーキ油圧リンク又は通路294は、ブレーキロッカーアーム206、206.1、及び206.2などのバルブトレイン構成要素、及びその選択的に動作可能な油圧構成要素と連通して、ブリッジピン262を介して、ブレーキ運動をブレーキ排気バルブ252に提供する。ブレーキ運動を容易にする油圧通路及び制御構成要素の詳細は、米国特許第9,790,824号に記載されているものに類似し得る。本開示から認識されるように、エンジンブレーキシステムは、いくつかの気筒にエンジンブレーキの制御を含み得、各気筒は、ブレーキロッカー206、206.1及び206.2などのブレーキバルブトレイン構成要素を有し、ブレーキバルブトレイン構成要素の各々は、ロッカーシャフト290のブレーキ油圧通路294と連通し、各々が、ブレーキ油圧通路294内の油圧の流れ及び/又は圧力の形態で、ブレーキ制御信号を受け取り、流れ及び/又は圧力は、ブレーキソレノイドバルブ270によって制御され得る。
【0026】
1つ以上の気筒の気筒休止は、ロッカーシャフト290の油圧供給通路292から作動流体を受け取るように配設及び適合されているCDAソレノイドバルブ280を含み得る気筒休止システムによって制御され得る。CDAソレノイドバルブ280は、高速ソレノイドバルブであり得、また、CDAソレノイドバルブマニホールド281を介して(すなわち、エンジン制御ユニットからの電気信号に基づいて)CDA油圧リンク又は通路296内の作動流体の流れを制御し得、CDA油圧リンク又は通路296は、吸気バルブブリッジ216及び排気バルブブリッジ256などのバルブトレイン構成要素と、並びにそれぞれの折り畳み又は休止機構204及び202と連通している。したがって、CDAソレノイドバルブ280は、休止機構204及び202の起動及び休止を制御し得る。同様に、吸気バルブブリッジ216.1及び216.2並びに排気バルブブリッジ256.1及び256.2、並びにそのそれぞれの折り畳み又は休止機構204.1、204.2並びに202.1及び202.2(図3)も同様に制御され得る。
【0027】
本開示の態様によれば、気筒休止システムは、遮断システムによって選択的に制御され得る。例示的な遮断システムは、油圧供給通路292から作動流体を受け取るように配設及び適合され得る、遮断ソレノイドバルブ240を含み得る。遮断ソレノイドバルブ240は、高速ソレノイドバルブであり得、また、遮断システム油圧リンク又は通路298内の作動流体の流れを制御し得、遮断システム油圧リンク又は通路298は、吸気バルブブリッジ216、216.1、及び216.2に至る油圧通路内の油圧流れを遮断するように選択的に作動され得るスプールバルブ208、208.1、及び208.2などの、他のバルブ構成要素と連通する。本開示の一態様によれば、スプール又はブロッキングバルブ208は、主事象吸気ロッカー218に一体化され得、また、そうでない場合にはバルブブリッジ216の主事象運動を休止させる吸気ロッカー218内の作動流体の流れを選択的に閉塞するように適合及び配設され得る。本開示から認識されるように、遮断バルブ208は、ロッカーシャフト290の上若しくは中などの他のバルブトレイン構成要素に実装され得るか、又はソレノイドバルブ若しくはマニホールドなどの他の構成要素と関連付けられ得る。遮断システムの目的を達成するための使用に好適な一体化バルブを有する例示的なロッカーアーム構成を、図23及び図24を参照しながら下で説明する。遮断バルブ208の選択的な動作を通して、吸気バルブと関連付けられた休止機構204、204.1、及び204.2の動作にわたる二次レベルの制御が提供される。すなわち、遮断バルブ208が、休止機構204を制御する油圧通路を通した作動流体の流れを可能にするように遮断ソレノイドバルブ240によって制御される場合、休止機構204の制御は、全体的に、CDAソレノイドバルブ280によって決定付けられる。一方で、遮断バルブ208が、休止機構204を制御する油圧通路を通した作動流体の流れを阻止するように遮断ソレノイドバルブ240によって制御される場合、休止機構204の制御は、CDAソレノイドバルブ280の影響を受けない。認識されるように、遮断システムは、それぞれ、吸気ブリッジ216、216.1、及び216.2の休止を制御するスプールバルブ208、208.1、及び208.2を有する単一の遮断ソレノイドバルブ206を使用して、複数の気筒の遮断を制御し得る。このように、吸気バルブの主事象吸気運動は、気筒休止及びブレーキアクションがシステム内で実施されたときに高出力密度ブレーキを達成するように保存され得る。
【0028】
当業者は、吸気及び/又は排気バルブ作動運動を休止させることができる他の機構が当技術分野において既知であり、本開示がこれに関して限定されないことを理解するであろう。本開示に記載されている実施例の文脈では、休止機構202、204は、バルブ作動運動が休止機構を通して対応するエンジンバルブに伝達されるように、作動流体が供給されていないときに「ロック」状態を有するように構成され得る。一方で、休止機構202、204は、バルブ作動運動が休止機構を通して対応するエンジンバルブに伝達されないように、すなわち、作動運動が失われて、対応するエンジンバルブ及び関連する運動が休止されるように、作動流体が休止機構に提供されたときに「ロック解除」構成を有し得る。しかしながら、当業者は、例示的な構成が、休止機構202、204のロック状態及びロック解除状態の制御を逆にすることができるように修正され得ることを理解するであろう。この後者の場合、作動流体(又は油圧/流れ)を休止機構202、204に提供することで、休止機構202、204をロック状態に、及びその逆にし得る。
【0029】
例示を容易にするために、図2図5の各々は、3つの気筒のみに関連する構成要素を例示していることに留意されたい。しかしながら、実際には、例示される構成要素は、より多い又はより少ない数の気筒に適用することができること、又は本明細書に記載された構成要素を複製して、図面に示されていないより多くの気筒を制御することができることを理解されたい。したがって、例えば、図2図5には3つの気筒が例示されているが、いわゆるインライン6気筒エンジンとともに使用するためのシステムは、単に3つの気筒の第2のセットのために例示されるシステムを複製することによって達成することができる。
【0030】
本開示の図の全体を通して、慣例が採用されており、それによって、油圧構成要素の間に太い実線で描写された油圧通路は、そのような線で描写された油圧通路が作動流体の圧力及び/又は流れによって充填されている状態を表し得(すなわち、この線は、油圧通路又はリンクを介して「オン」の信号通信とみなされ得る、作動中の油圧リンクを表す)、一方で、油圧構成要素の間に輪郭形態(すなわち、平行細線)で描写された油圧通路は、そのような線で描写された油圧通路が作動流体の圧力及び/又は流れによって充填されていない状態を表し得る(すなわち、この線は、油圧通路又はリンクを介して「オフ」の信号通信とみなされ得る、休止中のリンクを表す)。
【0031】
したがって、図2に示されるように、CDAソレノイド280が通電されて、HPDブレーキソレノイド270及び遮断ソレノイド240が通電されないCDA動作が例示されている。この状態では、ブレーキロッカーアーム206は、印加された任意のブレーキ作動運動を失う(すなわち、圧縮解放エンジンブレーキがない)ように制御され、各遮断バルブ208は、(例えば、ばね付勢下で)各対応する油圧通路が油圧の流れを可能にするように維持されるデフォルト位置になるように制御される。その結果、通電されたCDAソレノイドバルブ280は、作動流体が、休止機構202、204の各々に流れることを可能にし、それによって、吸気及び排気バルブの全てが休止されるようにロック解除する。
【0032】
しかしながら、CDA動作が可能になっておらず(すなわち、CDAソレノイドバルブ280が通電されておらず、それによって、休止機構202、204をそれらのロックされた運動伝達状態に維持する)、かつHPD動作(例えば、1.5ストロークHPD)が所望されると判定された場合、アクチュエータは、図3図5に例示されるように順序付けされる。したがって、図3に示されるように、遮断ソレノイド240が最初に通電され、それにより、遮断バルブ208の全てが遮断状態になるように、すなわち、吸気休止機構に対応する油圧通路を遮断するように制御される。その後で、図4に示されるように、HPDブレーキソレノイド270も通電され、それにより、ブレーキロッカーアーム206が、印加された補助(HPDエンジンブレーキ)バルブ作動運動を伝達するように起動される。次いで、図5に示されるように、CDAソレノイド280が通電され、それによって、(主排気バルブ作動運動源によって提供される、図示せず)主排気バルブ作動運動を休止させる。しかしながら、遮断ピストン208は、遮断状態に維持されるので、CDAソレノイド280の動作は、吸気休止機構204にいかなる影響も及ぼさず、それによって、(主吸気バルブ作動運動源によって提供される、図示せず)主吸気バルブ事象を、1.5ストロークHPDエンジンブレーキ動作に必要なときに、依然として吸気バルブに伝達することを可能にする。気筒内の潜在的に極端に高い圧力に対する(例えば、吸気ロッカーアームを介した)吸気バルブの作動を回避するために、排気バルブの休止前に、ブレーキロッカーアーム206を起動させることが好ましいことに留意されたい。図2図5に例示されたシステムは、3気筒のCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、3つのアクチュエータ(6気筒の場合は6つのアクチュエータ)のみを必要とするであろうことに留意されたい。
【0033】
本開示に従う第2の実施形態は、図6図8に関して例示される。図6図8に例示されたシステムは、図2図5に例示されたシステムに類似することに留意されたい。しかしながら、この実施形態では、単一のHPDブレーキソレノイド1270が、ブレーキロッカーアーム1206及び遮断バルブ1208の両方を制御するように配設及び適合されている。図から分かるように、ロッカーシャフト1290(図7)は、ブレーキロッカーアーム1206及び遮断バルブ1208に共通である、又は共有される、油圧通路又はリンク1298(図7)を備え得る。図6に示されるように、上述のようにCDAソレノイド1280のみが起動されるときに、CDA動作が提供される。HPDエンジンブレーキを提供することが所望される場合は、図7に示されるように、HPDブレーキソレノイド1270が最初に通電され、それによって、ブレーキロッカーアーム1206及び遮断バルブ1208の両方と関連付けられた油圧通路1298に実質的に同時に充填する。そのような同時の動作は、ブレーキロッカーアーム1206の起動が比較的速いシステムで許容可能であり得る。その後で、図8に示されるように、CDAソレノイドバルブ1280が通電され、それにより、主排気バルブ運動が再度休止され、一方で、遮断バルブ1208の動作が主吸気バルブ事象の休止を阻止する。認識されるように、遮断バルブ及びHPDブレーキソレノイド1270の実際の順序付けはまた、ブレーキアクションを、遮断アクションの前に、又は所与の用途に適切であり得る他のシーケンスで生じさせ得る。
【0034】
図6図8に例示されたシステムは、3気筒のCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、2つのアクチュエータ(6気筒の場合は4つのアクチュエータ)のみを必要とするであろうことに留意されたい。このようにして、ブレーキ起動が比較的速いシステムでは、少ないアクチュエータの形態で、更なるコスト削減が実現され得る。本開示から認識されるように、独立したCDA制御が所望される用途の場合、CDAの数は、指定されたCDA回路を制御される気筒ごとに提供することができるように増加され得る。
【0035】
本開示に従う第3の実施形態は、図9図12に関して例示される。図9図12に例示されたシステムは、図6図8に例示されたシステムに類似することに留意されたい。しかしながら、別々の油圧供給通路2298及び2294が、遮断バルブ2208及びブレーキロッカーアーム2206に(例えば、当技術分野において既知であるように、ロッカーシャフト2290内に)提供され、これらの通路は、HPDブレーキソレノイド2270の位置から離れているロッカーシャフト2290の端部(図9の左端部)に近接して、作動流体をそれらの通路に供給する接続通路又はリンク2295によってともに流体的に結合される。このように、油圧遅延、並びに起動の論理シーケンスは、遮断バルブ2208の供給通路とブレーキロッカーアーム2206の供給通路の充填との間に誘発又は促進され得る。例えば、例示される構成では、HPDブレーキソレノイドは、遮断バルブ2208の供給通路2298にその一方の端部で充填するように構成されている。遮断バルブ2208の供給通路2298の他方の端部では、接続部又はリンク2295が、ブレーキロッカーアーム2206の供給通路2294に提供される。その結果、ブレーキロッカーアーム2206の供給通路は、ブレーキ遮断バルブ2208の供給通路が充填された後にのみ、作動流体が充填される。
【0036】
したがって、図9に示されるように、上述のようにCDAソレノイド2280のみが起動されるときに、CDA動作が提供される。HPDエンジンブレーキを提供することが所望される場合は、図10に示されるように、HPDブレーキソレノイド2270のみが通電され、それにより、遮断バルブ2208と関連付けられた油圧通路2298が最初に通電される。その後で、図11に示されるように、油圧供給通路間の接続部2295は、油圧通路2298の更なる充填を可能にし、ブレーキロッカーアーム2206と関連付けられ、それによって、遮断バルブ2208(図10)が起動されるときの時間と、ブレーキロッカーアーム2206が起動されるときの時間との間の遅延を実装する。最後に、図12に示されるように、CDAソレノイド2280が通電され、それにより、主排気バルブ運動が再度休止され、一方で、遮断バルブ2208の動作が主吸気バルブ事象の休止を阻止する。本開示から認識されるように、図9図12に例示されるシステムは、ブレーキロッカーアーム2206の起動を遅延させることを犠牲にするが、3気筒のCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、2つのアクチュエータ(6気筒の場合は4つのアクチュエータ)のみを必要とするであろう。
【0037】
本開示に従う第4の実施態様は、図13図15に関して例示される。この実施形態では、先の実施形態の単一のCDAソレノイドバルブが、排気休止機構3202及び吸気休止機構3204の別々の制御のために各々1つずつ、2つのアクチュエータ又は制御バルブと置き換えられ得る。より具体的には、排気休止ソレノイド3284は、排気休止機構3202の起動/休止を制御し得、吸気休止ソレノイド3282は、吸気休止機構3204の起動/休止を制御し得る。更に示されるように、上述のように、単一のHPDブレーキソレノイド3270が、ブレーキロッカーアーム3206の制御に提供され得る。排気休止機構3202及び吸気休止機構3204の別々の制御を提供することによって、当技術分野において既知であるように、休止させた気筒内の捕捉ガス又は逆に真空を促進することが望ましい場合に、より大きい制御を提供することが可能である。更に、吸気及び排気機構のために提供される別々の制御のため、この実施形態では、遮断バルブは不要である。
【0038】
したがって、図13に示されるように、排気休止ソレノイド3284及び吸気休止ソレノイド3282が通電されたときにCDA動作が提供され、それによって、吸気及び排気両方の主バルブ事象を休止させる。述べたように、排気休止ソレノイド3284及び吸気休止ソレノイド3282の特定の順序付けは、当技術分野において既知であるように、気筒内の捕捉ガス又は真空の存在を促進するために制御され得る。HPDエンジンブレーキを提供することが所望される場合は、図14に示されるように、HPDブレーキソレノイド3270が最初に通電され、それにより、ブレーキロッカーアーム3206と関連付けられた油圧通路3294が最初に充填される。その後で、図15に示されるように、排気休止ソレノイド3284も通電され、それにより、主排気バルブ運動が再度休止され、一方で、吸気休止ソレノイド3282は非通電のままであり、それにより主吸気バルブ事象の休止を阻止する。本開示から認識されるように、図13図15に例示されているシステムは、3気筒のCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、3つのアクチュエータ(6気筒の場合は6つのアクチュエータ)のみを必要とし、これは、CDA動作中の気筒のガス/真空状態を制御するための柔軟性を提供する。
【0039】
本開示に従う第5の実施形態は、図16図19に関して例示される。この実施形態では、単一のCDAソレノイドバルブが、各気筒の吸気及び排気バルブに一意的に対応する別々のCDAアクチュエータと置き換えられ得る。したがって、示されるように、第1のCDAソレノイドバルブ4282が第1の気筒に提供され、第2のCDAソレノイドバルブ4284が第2の気筒に提供され、第3のCDAソレノイドバルブ4286が第3の気筒に提供される。示されるように、これらのCDAソレノイドバルブの各々は、ロッカーシャフト4290の油圧通路と組み合わせて、対応する気筒のそれぞれの吸気休止機構4202及び排気休止機構4204両方の動作を制御するように配設及び適合される。更に示されるように、単一のHPDブレーキソレノイド4240が、ブレーキロッカーアーム206の制御のために提供され、単一の遮断ソレノイドバルブ4240が、遮断バルブ4208の制御のために提供されている。
【0040】
したがって、図16に示されるように、CDA動作は、CDAソレノイドバルブ4282、4284、及び4286が通電され、かつHPDブレーキソレノイド4270及び遮断ソレノイドバルブ4240が通電されないときに提供される。この状態では、ブレーキロッカーアーム4206は、印加された任意のブレーキ作動運動を失う(すなわち、圧縮解放エンジンブレーキがない)ように制御され、各遮断バルブ4208は、(例えば、ばね付勢下で)各対応する油圧通路が油圧の流れを可能にするように維持されるデフォルト位置になるように制御される。その結果、通電されたCDAソレノイド4282、4284、及び4286は、作動流体が、休止機構4202、4204の各々に流れることを可能にし、それによって、吸気及び排気バルブの全てが休止されるようにロック解除する。図16は、3つの全ての描写されたCDAソレノイドが同時に起動していることを例示しているが、これは要件でないことに留意されたい。すなわち、その全てよりも少ないいくつかの数のCDAソレノイドが通電されて、より小さいレベルの気筒休止を提供し得る。このように、気筒休止のレベルは、(すなわち、電子制御ユニットからの信号を介して)動的に制御され得る。
【0041】
しかしながら、CDA動作が可能になっておらず(すなわち、CDAソレノイドが通電されず、それによって、休止機構4202、4204をそれらのロックされた運動伝達状態に維持する)、かつHPD動作が所望されると判定された場合、アクチュエータは、図17図19に例示されるように順序付けされる。したがって、図17に示されるように、遮断ソレノイドバルブ4240が最初に通電され、それにより、遮断バルブ4208の全てが、遮断状態になるように制御される。その後で、図18に示されるように、HPDブレーキソレノイドも通電され、それにより、ブレーキロッカーアーム4206が、印加された補助(HPDエンジンブレーキ)バルブ作動運動を伝達するように起動される。次いで、図19に示されるように、CDAソレノイド4282、4284、及び4286が通電され、それによって、主排気バルブ作動運動を休止させる。しかしながら、遮断ピストン4208(図17)は、遮断状態に維持されるので、CDAソレノイドの動作は、吸気休止機構4204にいかなる影響も及ぼさず、それによって、主吸気バルブ事象を、1.5ストロークHPDエンジンブレーキ動作に必要なときに、依然として吸気バルブに伝達することを可能にする。ブレーキ及び遮断アクションは、休止機構を休止させる機会が存在する場合に両方のアクションが時間に先行する限り、実質的に同時であり得る。本開示から認識されるように、図16図19に例示されるシステムは、3気筒のCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、5つのアクチュエータ(6気筒の場合は10個のアクチュエータ)のみを必要とするであろう。そのような別々のCDAアクチュエータは、様々な利点を提供することができる。例えば、個々のCDA制御は、異なる添加パターンでの動作を可能にすることができ、これは、ノイズ/振動/ハーシュネス(noise/vibration/harshness、NVH)の理由に有益であり得、また、100又は50%のCDAバージョンよりも高いトルクレベルに至る動作を潜在的に可能にし得る。
【0042】
本開示に従う第6の実施形態は、図20図22に関して例示される。この第6の実施形態は、図6図9に示される第2の実施形態の態様を、図16図19に示される第5の実施形態の態様と組み合わせている。具体的には、第2の実施形態にあるように、ブレーキロッカーアーム5206及び遮断バルブ5208の両方を制御するために単一のHPDブレーキソレノイド5270が提供され、一方で、第5の実施形態に合わせて、気筒ごとにCDAを制御するために別々のアクチュエータ、CDAソレノイドバルブ5282、5284、及び5286が提供される。
【0043】
したがって、図20に示されるように、CDA動作は、CDAソレノイド5282、5284、及び5286が通電され、かつHPDブレーキソレノイド5270が通電されないときに提供される。この状態では、同じように、ブレーキロッカーアーム5206は、印加された任意のブレーキ作動運動を失うように制御され、各遮断バルブ5208は、各対応する油圧通路が油圧の流れを可能にするようにするように維持されるデフォルト位置になるように制御される。その結果、通電されたソレノイド5282、5284、及び5286は、作動流体が、休止機構5202、5204の各々に流れることを可能にし、それによって、吸気及び排気バルブの全てが休止されるようにロック解除する。同じように、上で説明したように、動的なレベルのCDAを提供するために、CDAの動作中に全てのCDAソレノイドを同時に通電する必要がないことに留意されたい。
【0044】
HPDエンジンブレーキを提供することが所望される場合は、図21に示されるように、HPDブレーキソレノイド5270のみが通電され、それによって、ブレーキロッカーアーム5206及び遮断バルブ5208の両方と関連付けられた油圧通路に実質的に同時に充填する。次いで、図22に示されるように、CDAソレノイド5282、5284、及び5286が通電され、それによって、主排気バルブ作動運動を休止させる。しかしながら、遮断ピストン5208は、遮断状態に維持されるので、CDAソレノイド5282、5284、及び5286の動作は、吸気休止機構5204にいかなる影響も及ぼさず、それによって、主吸気バルブ事象を、1.5ストロークHPDエンジンブレーキ動作に必要なときに、依然として吸気バルブに伝達することを可能にする。
【0045】
上記の第1~第3の実施形態、第5の実施形態、及び第6の実施形態の全てでは、遮断バルブ(すなわち、図2図5の208)は、吸気休止機構(すなわち、図2図5の204)を供給する油圧通路が例示されている。述べたように、そのような遮断バルブは、作動流体を吸気休止機構に供給する油圧通路に沿った任意の様々な位置に配置され得る。遮断バルブ構成の例示的な実装形態が図23及び図24に例示され、図中、ばね付勢スプールバルブの形態の遮断バルブが、ロッカーアーム6218に展開されて、その中の油圧通路6220を選択的に遮断するように配設されている。本開示から認識されるように、通路6220は、ロッカーシャフト(図23及び図24には示されていないが、ロッカーアームジャーナル6222に位置する)から作動流体を搬送するように配設され得る。図25を参照しながら上で説明したように、通路6220は、ロッカーアーム突出部6224を通して、及びバルブブリッジ(図示せず)に作用し、その結果、休止機構への油圧通路を有し得るeフット6226の内部通路を通して、作動流体を搬送する。
【0046】
示されるように、ロッカーアーム6218は、2つの油圧通路、すなわち、休止機構の制御に使用される作動流体を供給するためのCDA通路6220、及び遮断バルブ6208の動作を制御するために使用される遮断バルブ制御通路6230を含み得、これらはどちらも、ロッカーに形成されたボア6240と連通し、スプールバルブ(ピストン)6250が展開されている。示されるように、ボア6240は、CDA通路6220と交差し、一方で、遮断バルブ制御通路6230は、ボア6240の一方の端部(閉鎖端)と連通している。図23に示されるように、遮断バルブ制御通路6230に加圧作動流体が充填されていないときに、スプールバルブ6250は、スプールバルブばね6260によってボア6240内を(描写されるように)下方へ付勢され、それにより、スプールバルブの環状チャネル6270が、CDA通路6220と整列する。この場合、CDA通路6270によって供給されるいかなる作動流体も、ロッカーアーム通路6220を通って、また、休止機構が折り畳みバルブブリッジとして実装されている場合は折り畳みバルブブリッジへのロッカーアーム(図示されていない更なる油圧通路を介して)のノーズ又は端部6224を通って、スプールバルブ6250を越えて流れることが可能になる。
【0047】
対照的に、図24に示されるように、遮断バルブ制御通路6230に加圧作動流体が充填されたときに、スプールバルブ6250の端部に及ぼされる圧力は、スプールバルブばね6260によって印加される付勢に打ち勝ち、それによって、スプールバルブにCDA通路6270を遮断させて、作動流体がCDA通路6220を通って流れることを阻止するのに十分である。このように、スプールバルブ6250の作動は、CDA制御の動作に対する所望の遮断効果を提供する。
【0048】
本実装形態を、特定の例示的な実施形態を参照して説明してきたが、特許請求の範囲に記載されているような本発明のより広範な趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更がこれらの実施形態に行われ得ることが明らかになるであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的ではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。
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