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特許7440663長時間作用型GLP-1およびグルカゴン受容体デュアルアゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】長時間作用型GLP-1およびグルカゴン受容体デュアルアゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240220BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
A61K38/16
A61K47/60
A61P3/04
A61P3/10
A61K38/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565840
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2021004747
(87)【国際公開番号】W WO2021221359
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052923
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513131590
【氏名又は名称】ドン-ア エスティ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チェ-スン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ユ-ナ
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、イル-フン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、チェ-リム
(72)【発明者】
【氏名】イ、デ-ヨン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/035672(WO,A1)
【文献】RSC Advances,2020年01月29日,Vol.10,p.4725-4732
【文献】Endocrinology,2009年,Vol.150, No.4,p.1712-1721
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2015年,Vol.58,p.7370-7380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/605
A61K 38/16
A61K 47/60
A61P 3/04
A61P 3/10
A61K 38/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表されるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体。
<化学式I>
His-Aib-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-X-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Aib-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys-Glu-Tyr-Glu-X2-Glu-Tyr-Glu(配列番号14)
(前記式中、
は、官能化されたLysであって、その側鎖に[(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)アセトイル)]-[γ-グルタミル]-[オクタデカノイル]([(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl)]-[gamma glutamyl]-[octadecanoyl])が結合している形態であり;
は、官能化されたLysであって、その側鎖に親油性脂質またはスペーサ-親油性脂質またはポリマー性部分-スペーサ-親油性脂質またはスペーサ-ポリマー性部分-スペーサ-親油性脂質が結合している形態であり;
前記親油性脂質は、下記構造式(1)または(2)であり、

前記ポリマー性部分は、1~3個の2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)アセトイル(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl)であり;
前記スペーサは、r-GluまたはLysである。)
【請求項2】
前記スペーサがLysの場合、アミノ酸残基のアミン基が親油性脂質またはポリマー性部分と共有結合されることを特徴とする、請求項1に記載のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体。
【請求項3】
前記スペーサがr-Gluの場合、α-アミノ基が親油性脂質またはポリマー性部分と共有結合されることを特徴とする、請求項1に記載のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体。
【請求項4】
前記アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、下記構造の化合物1~7からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体。
化合物1
(式中、アミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列である)、

化合物2
(式中、アミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列である)、
化合物3
(式中、アミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸配列である)、
化合物4
(式中、アミノ酸配列は、配列番号5のアミノ酸配列である)、
化合物5
(式中、アミノ酸配列は、配列番号6のアミノ酸配列である)、
化合物6
(式中、アミノ酸配列は配列番号7のアミノ酸配列である)、
化合物7
(式中、アミノ酸配列は配列番号8のアミノ酸配列である)、
(式中、アミノ酸の略語は、Ala(A)、Lys(K)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、His(H)、Ile(I)、Met(M)、Ser(S)、Val(V)、Gly(G)、Leu(L)、Pro(P)、Thr(T)、Phe(F)、Arg(R)、Tyr(Y)、Trp(W)、Glu(E)、Gln(Q)、Aib(aminoisobutyric acid)である。)
【請求項5】
有効成分として請求項1に記載の化学式Iで表されるオキシントモジュリンペプチド類似体と、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む肥満及び過体重によって惹起または特徴付けられる病態の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項6】
注射剤形で用いられることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
有効成分として請求項1に記載の化学式Iで表されるオキシントモジュリンペプチド類似体と、薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む肥満及び過体重を伴う非インシュリン依存型糖尿病の治療又は予防用医薬組成物。
【請求項8】
注射剤形で用いられることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLP-1及びグルカゴン受容体デュアルアゴニストの薬物動力学的活性を改善したアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体、並びにこれを含む肥満及び過体重、またはこれを伴う非インシュリン依存型糖尿病の予防又は治療に用いることができる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝性疾患(Metabolic Disease、Metabolic Syndrome)とは、ブドウ糖、脂肪、タンパク質などの代謝異常に起因する疾病であって、主にブドウ糖および脂肪代謝の異常から誘発される、癌、糖尿病、骨代謝疾患、脂肪肝、肥満、心血管系疾患などを通称するものである。2001年に報告された米国の全国コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program;NCEP)のadult treatment panel III(ATPIII)または2012年に発表された国際糖尿病連合(International Diabetes Federation;IDF)による代謝性疾患の診断基準は、次のとおりである。(1)胴回りが男性で102または94cm(それぞれNCEPまたはIDF)、女性で88または80cm(それぞれNCEPまたはIDF)以上の腹部肥満、(2)中性脂肪(triglycerides)150mg/dL以上の高中性脂肪血症、(3)HDLコレステロールが男性で40mg/dL、女性で50mg/dL以下、(4)血圧130/85mmHg以上の高血圧、または(5)空腹時血糖(fasting glucose)110mg/dL以上などの5つの危険因子のうち三つ以上を示す場合、代謝性疾患に分類することができる。
【0003】
世界保健機関(World Health Organization;WHO)によれば、全世界の肥満有病率は、1980年から2014年の間に2倍以上増加したし、2014年には18歳以上の成人の中で39%(男性38%、女性40%)が過体重、13%(男性11%、女性15%)が肥満であった。このような肥満及び過体重の根本的な原因には、カロリー摂取と消費との間のエネルギーの不均衡が挙げられ、脂肪が多くエネルギー密度が高い食事および現代社会における仕事の性格、交通手段の変化、都市化の増加などによる身体活動の低下が肥満の危険因子とされている。
【0004】
また、肥満に伴う疾患のうち、糖尿もその有病率が速やかに増加する趨勢にあり、18歳以上の成人の中で1980年に4.7%から2015年に8.5%に上昇した。糖尿病有病率は、中産階級と低所得国で一層速やかに増えており、失明、腎不全、心臓まひ、脳卒中などの主要原因となる。
【0005】
グルカゴンは、膵膓のα細胞から生産されるホルモンであって、一般にブドウ糖新生合成及び肝臓に蓄えられているグリコーゲンを分解して血糖を上昇させる役割を果たす。蓄えられたグリコーゲンが枯渇すると、グルカゴンは肝臓及び腎臓でブドウ糖を再合成して食欲抑制に供し、かつ、蓄えられている中性脂肪(Triglyceride)を脂肪酸に分解させてエネルギー消費量を増加させることで、体重減少に影響を与えるものと知られている(Diabetes.co.uk.the global diabetes community, Anim Sci J.2016;87(9):1090-1098)。
【0006】
GLP-1(Glucagon-like peptide-1)は、グルカゴン誘導体の一つであって、血糖を減少させる役目をするペプチドホルモンである。食後に小腸のL-細胞から分泌され、半減期が2分未満と非常に短く、ブドウ糖によって分泌が増加すれば膵膓のβ細胞からインシュリン分泌を誘導することにより、究極的に血糖を調節し且つβ細胞の機能を改善させる役目をするものと報告されている。また、グルカゴン分泌阻害、 空っぽの胃の抑制、飲食物の摂取を減少させる機能を有する(Physiol Rev.2007;87(4):1409-1439)。
【0007】
Novo Nordiskのリラグルチド(Liraglutide)は、2型糖尿病及び肥満適応症向けに開発された治療剤であって、1日1回注射されるヒトGLP-1誘導体である。リラグルチドは、長時間作用型GLP-1受容体アゴニストであって、内因性GLP-1と同一の受容体に結合してインシュリン分泌を促進させることにより血糖を調節して食欲を減少させて体重増加を抑えるとともに、中性脂肪を低める作用をし、2型糖尿病向けとしてはビクトーザ(Victoza)、肥満向けとしてはサクセンダ(Saxenda)という商品名で、米国及びヨーロッパで発売された(Expert Rev Cardiovasc Ther.2015;13(7):753-767)。リラグルチドのほかにも、エキセナチド(Exenatide)、リキシセナチド(Lixisenatide)、アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、セマグルチド(Semaglutide)などが糖尿病治療剤として開発された。しかし、これらのGLP-1受容体アゴニストの副作用としては、吐き気、嘔吐及び食欲減少、頭痛、便秘、及び腹部膨満感の発生などが報告されている(Korean J Med.2014;87(1):9-13)。
【0008】
オキシントモジュリンは、グルカゴンの前駆体であるプログルカゴン(proglucagon)に由来するペプチドであって、グルカゴンの完全な29個のアミノ酸配列を含む37個のアミノ酸ペプチドで構成されており、GLP-1及びグルカゴン受容体にいずれも結合する二重作用を有する。オキシントモジュリンは、非臨床実験で餌料摂取量、体重減少及びエネルギー消費増加、並びに糖代謝を向上させるものと報告されたことがあり(Diabetes.2009;58(10):2258-2266)、臨床試験においても、過体重及び肥満患者に1日3回ずつ、4週間皮下投与をしたとき、平均2.3kgの体重減少を示し(Diabetes.2005;54:2390-2395)、プラシボ群との対比較における有意なインシュリン分泌及び血糖減少の効果も確認されたし(Diabetes.2013;62(Suppl.1):A48)、また他の臨床試験では、オキシントモジュリンの持続的な注入による嘔吐や食欲促進などの副作用なしにエネルギー摂取を減少させることが確認されることにより(J Clin Endocrinol Metab。2003;88:4696-4701)、オキシントモジュリンは、血糖調節、飲食物摂取の減少、満腹感増進などの機能を示すことができるから、肥満治療及び血糖調節を目的とする新しい治療法として脚光を浴びている(Molecular metabolism.2014;3:241-251)。
【0009】
しかし、オキシントモジュリンは、GLP-1と同様に、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(Dipeptidyl peptidase-IV;DPP-IV)によって切断されて生体内で不安定に極めて短い半減期を有する(J Biol Chem.2003;278:22418-22423)。
【0010】
したがって、GLP-1及びグルカゴン受容体にバランスよく選択的に結合して薬理学的・治療学的側面からオキシントモジュリンの作用を長期間持続させるとともに各ホルモンペプチドの副作用を克服することができるDPP-IV耐性オキシントモジュリン誘導体に対する研究が報告されており(Diabetes.2009;58(10):2258-2266)、メルク社(Merck)、ジーランド社(Zealand)、メディミューン社(Medimmune)、韓美薬品など多くの会社で先導物質に対する開発が進行中にある。
【0011】
大韓民国特許出願第2017-0103798号及び大韓民国特許出願第2018-0095717号には、GLP-1及びグルカゴン受容体に対して二重作用を有するアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体が開示されている。前記従来の技術に記載されているアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の中で、化合物3は内因性ホルモンオキシントモジュリンよりもGLP-1及びグルカゴン受容体に対する優れた効能(potency)(EC50<10pM)を有し、GLP-1及びグルカゴン受容体への活性に優れており、マウスのin vivo1週間体重減少の評価において、対照物質であるリラグルチドよりも優れた体重減少効果を示す物質である。
【0012】
本発明者らは、前記化合物3を商業化するために開発する過程で、マウス薬動力学評価を行ったところ、半減期は3.3時間であって、メディミューン社(Medimmune)のMEDI0382の半減期4.0時間と類似した半減期を有することを確認した(表6、図1)。MEDI0382は、現在1日1回注射剤として臨床研究を遂行中の物質であって、前記化合物3は、MEDI0382の半減期と比較時、1日1回注射剤形に開発可能であろう。しかし、GLP-1及びグルカゴン受容体デュアルアゴニストの1日1回剤形は、毎日注射を通じて投与しなければならないので、煩わしさと負担が存在する。
【0013】
したがって、本発明者らは、薬効を維持しつつ生体内半減期を増加させて便宜性を増大させることができるように、週1回注射剤形で投与することができる長時間作用型アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の開発が必要であることを認識した。
【0014】
本発明者らは、前記必要性に整合する長時間作用型GLP-1及びグルカゴン受容体デュアルアゴニストの開発を研究した結果、大韓民国特許出願第2018-0095717号に開示されているアシル化されたオキシントモジュリンペプチド類似体である化合物3を改良して、GLP-1及びグルカゴン受容体への二重活性化能(dual GLP-1R/GlucagonR agonism)を有し、代謝安定性を増大させて生体内半減期が長い長時間作用型アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を開発することにより、週1回注射剤形で投与することができる本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、生体内半減期が増大したGLP-1及びグルカゴン受容体への二重活性化能を有するアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を提供することであり、本発明の他の目的は、前記アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む肥満及び過体重、もしくは肥満または過体重を伴う非インシュリン依存型糖尿病によって惹起または特徴付けられる病態の予防又は治療用医薬組成物を提供することであり、本発明の別の目的は、前記アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を有効成分として含む週1回投与可能な注射剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は下記化学式Iで表される新規のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を提供する。
<化学式I>
His-Aib-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-X-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Aib-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys-Glu-Tyr-Glu-X2-Glu-Tyr-Glu(配列番号14)
前記式中、
は、官能化されたLysであって、その側鎖に[(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)アセトイル)]-[γ-グルタミル]-[オクタデカノイル]([(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl)]-[gamma glutamyl]-[octadecanoyl])が結合している形態であり;
は、官能化されたLysであって、その側鎖に親油性脂質またはスペーサ-親油性脂質またはポリマー性部分-スペーサ-親油性脂質またはスペーサ-ポリマー性部分-スペーサ-親油性脂質が結合している形態であり;
親油性脂質は、下記構造式(1)または(2)であり、

ポリマー性部分は、1~3個の2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)アセトイル(2-(2-(2-aminoethoxy)ethoxy)acetoyl)であり;
スペーサは、r-GluまたはLysである。
【0017】
本発明において、アミノ酸は、下記略語を併記した;
Ala(A)、Lys(K)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、His(H)、Ile(I)、Met(M)、Ser(S)、Val(V)、Gly(G)、Leu(L)、Pro(P)、Thr(T)、Phe(F)、Arg(R)、Tyr(Y)、Trp(W)、Glu(E)、Gln(Q)、Aib(aminoisobutyric acid)。
【0018】
本発明における用語「オキシントモジュリン(oxyntomodulin)」とは、グルカゴンの前駆体であるプレグルカゴンから作られるペプチドを意味し、野生型のオキシントモジュリンは、HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIA(配列番号1)のアミノ酸配列を有する。
【0019】
本発明におけるXの構成要素のうちの一つである親油性脂質は、脂質末端のアシル基がLys側鎖またはスペーサのアミン基とアミドとの結合の形態で付着することができ、炭化水素鎖の末端炭素がカルボン酸の形態である場合、C14~C18飽和炭化水素鎖を含み、炭化水素鎖の末端炭素がアミノカルボン酸の形態である場合、C18飽和炭化水素鎖を含む。
【0020】
スペーサはr-GluまたはLysであり、スペーサがLysである場合にはアミノ酸残基のアミン基が、スペーサがr-Gluである場合にはα-アミノ基が親油性脂質またはポリマー性部分と共有結合され得る。
【0021】
特定の理論によってその解釈を制限するわけではないが、前記化学式IのXのアシル化は、ペプチドのα螺旋構造を安定化させてGLP-1受容体または/及びグルカゴン受容体においてその選択性や薬理上の効能を増加させるものとみなされ(ACS Chem Biol.2016;11:324-328)、Xを含む7個のアミノ酸末端は、(EYEXEYE)血流内でアルブミンと結合することで、本発明の化合物が血流内の多様な分解酵素の基質として反応することを防止し、生体内半減期を向上させるものとみなされる(Nat.Commun.2017;8:16092)。
【0022】
前記化学式Iのペプチドの具現例には、化合物1(配列番号2)、化合物2(配列番号3)、化合物3(配列番号4)、化合物4(配列番号5)、化合物5(配列番号6)、化合物6(配列番号7)、化合物7(配列番号8)である。
【0023】
本発明の前記アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、その構造に存在する任意のアミン基の酸付加塩や任意のカルボキシ基のカルボン酸塩またはそのアルカリ付加塩として提供されることができる。
【0024】
また、本発明は、前記アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を有効成分とし、薬学的に許容可能な賦形剤を含む肥満及び過体重、または肥満または過体重を伴う非インシュリン依存型糖尿病の予防及び治療用医薬組成物に関するものである。
【0025】
本発明の用語「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制又は遅延させるすべての行為を意味する。また、本発明の用語「治療」とは、発生した疾病の症状を軽減、改善または緩和させるすべての行為を意味する。
【0026】
本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対するデュアルアゴニストであって、飲食物摂取におけるGLP-1の効果と、脂肪代謝及びエネルギー消費におけるグルカゴンの効果の両方を示すので、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む肥満及び過体重の予防及び治療用医薬組成物は、過度に蓄積された脂肪の除去と飲食物摂取抑制との組み合わせられた効果を通じて、体重の調節において医学的に有利な効果を誘導することができる。
【0027】
また、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、血糖を減少させて肥満または過体重を伴う糖尿病の予防又は治療に用いられることができる。特に、肥満を伴う非インシュリン依存型糖尿病である2型糖尿病の治療に用いられることができる。特定の理論によってその解釈を制限するわけではないが、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、グルカゴン誘導体の一つであって血糖を減少させる役目をするGLP-1受容体への活性が高いため、究極的に血糖調節に有用である。
【0028】
したがって、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、肥満、病的肥満、術前病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸症候群、肥満を伴う糖尿病の治療及び予防などのような、過体重によって惹起または特徴付けられる任意の病態の直接または間接治療法の一環として単独で投与されるか、もしくは他の関連薬剤と併用投与されることができる。また、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、体重による効果の結果であるか、これに関連している可能性がある病態、例えば代謝症侯群、高血圧、動脈硬化誘発性脂質異常症、粥上動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈心臓疾患、または脳卒中の予防のために単独で投与されるか、または他の関連薬剤と併用投与されることができる。
【0029】
また、本発明は、アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を有効成分として含む週1回投与可能な注射剤形を提供する。
【0030】
本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む注射剤形は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態で製造することができる。
【0031】
本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、大韓民国特許出願第2018-0095717号に記載されたアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体よりも、改善された薬動力学(生体内半減期)を示す。そのため、本発明で改善された生体内半減期は、1日1回注射剤の短所を克服した週1回注射剤のような長時間作用型ペプチド類似体であって、使い勝手を向上させることができる。
【0032】
さらに、本発明における「投与」とは、適切な方法で患者に治療用途の物質を導入することを含み、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、薬物が目的の組職に到逹して目的とする効能を奏することができる限り、多様な剤形の形態で多様な経路を介して投与されることができる。すなわち、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与のほかにも、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などが可能であり、その剤形および投与方法が限定されない。
【0033】
本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与時には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使うことができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、滑剤、保存剤などを多様に使うことができ、担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが挙げられる。
【0034】
本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含む医薬組成物は、注射剤形の以外にも、前述した担体と混合して多様に製造されることができる。例えば、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリクサー、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で製造することができ、それ以外にも溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤などに剤形化してもよい。
【0035】
本発明による投与量または服用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、排泄率及び疾患の重症度によってその範囲が様々であり、成人を基準とする投与量は、1日当たり0.001mg/kg~500mg/kgであることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、GLP-1及びグルカゴン受容体の両者ともに対して活性を有し、生体内半減期が増大した長時間作用型アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を提供する。特に、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、野生型オキシントモジュリンだけでなく、従来のアシル化されたオキシントモジュリンペプチド類似体(大韓民国特許出願第10-2018-0095717号、アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体)に比べて、生体内半減期が非常に優れるという特徴を有している。
【0037】
したがって、本発明は、生体内半減期が増大した長時間作用型アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を含めて週1回注射可能なので、1日1回注射剤の短所である毎日注射を打たなければならないという煩わしさと負担を克服し、使い勝手を向上させることができるのみならず、一次的に、肥満または過体重によって惹起または特徴付けられる病態の予防又は治療に有用に適用でき、ひいては、肥満または過体重を伴う非ンシュリン依存性糖尿の予防又は治療に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物1、化合物2または化合物7のマウスにおける1週間繰り返し体重減少の薬効評価の結果を示すグラフであって、図1aは体重減少の結果、図1bは累積飼料摂取量の結果を示すグラフである。
図2】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物3のマウスにおける1週間繰り返し体重減少の薬効評価の結果を示すグラフであって、図2aは体重減少の結果、図2bは累積飼料摂取量の結果を示すグラフである。
図3】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物4、化合物5または化合物6のマウスにおける1週間繰り返し体重減少の薬効評価の結果を示すグラフであって、図3aは体重減少の結果、図3bは累積飼料摂取量の結果を示すグラフである。
図4】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスにおける単回投与後の薬動力学の結果を示すグラフである。
図5】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のサルにおける単回投与後の薬動力学の結果を示すグラフである。
図6】本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のマウスにおける耐糖能改善効果の検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に対するより具体的な内容を下記実施例及び実験例によって説明する。これらの実施例は、本発明に対する理解を助けるためのものに過ぎず、如何なる意味であれ、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の合成
本発明の一部のアミノ酸が含まれたペプチドと定型的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成会社、例えば米国のAmerican peptide company社やBachem社、または韓国のAnygen社を通じて合成及び購買可能である。
【0040】
本発明でアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を合成するために、全自動合成装置であるprotein technologies,Inc.社製のSymphomy X(合成スケール:0.1mmol)モデルを利用して合成し、本発明によって合成されたアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物1(配列番号2)~化合物7(配列番号8)の構造は、表1及び表2に示した。具体的な合成過程は、次の通りである。
【0041】
Fmoc-AA-OH(1mmol)、HBTU(1mmol)、NMM(n-methylmorpholine)(2mmol)及びDMF(7ml)の混合液をFmoc脱保護レジン(resin)に入れて、室温で1時間撹拌させる。反応液を排出させ、DMF(N,N-Dimethylmethanamide)7mlで2回洗浄する。20%ピぺリジン(Piperidine)DMF溶液(5ml)でFmoc脱保護(cleavage)反応を室温で5分2回行った後、DMF(7ml)で6回洗浄する。この過程を、全自動合成装置を用いて繰り返しながらアミノ酸をカップリング(coupling)させる。
【0042】
Lys側鎖の合成は、Fmoc-K(dde)-OHまたはFmoc-K(Alloc)-OHを用いてカップリングし、最後のHisは、Boc-His(trt)-OHを用いてカップリングする。官能化されたLys側鎖の合成は、2%ヒドララジン(hydralazine)またはテトラキス(tetrakis)(トリフェニルホスフィン)パラジウム)(triphenylphosphine)palladium(0)を用いて保護化されたddeまたはAllocを脱保護後、目的とする側鎖部分(PEG2、rE、K、C14~18の2価酸など)をカップリングさせる。
【0043】
前記で得られたペプチドレジン(peptide-resin)0.1mmolに試薬(Reagent)K(トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)、水、チオアニソール(thioanisole)、1,2-エタンジチオール(87.5、5.0、5.0、2.5))溶液8mlを5~10℃に冷却した後に入れて室温で2~3時間撹拌させる。ドレン(drain)後、少量のTFAでレジンを洗浄し、余液を合わせてジエチルエーテル100mlに入れて結晶化させた後、生成された固体を濾過して粗(crude)ペプチドを得る。得られた粗ペプチドを分取(preparative)HPLCで精製して目的化合物を得る。
【0044】
分子量分析は島津製作所製のAXIMA Assurance MALDI-TOFを利用し、マトリックスはCHCA(α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid)を用いた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
<比較例1>アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の合成
本発明との比較のために、構造的に類似性を有するアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を実施例1の方法で合成した。下記比較例の化合物8は、大韓民国特許出願第2018-0095717号に記載されている化合物3であって、C-末端の7個アミノ酸(EYEX2EYE)を有さないペプチド類似体であり、比較例の化合物9は、比較例の化合物8に文献(ACS Chem Biol.2016;11:324-328)で言及したリガンド(ligand)を導入したペプチド類似体であり、比較例の化合物10と比較例の化合物11は、X2の親油性脂質であって、それぞれC14とC16の炭素鎖の末端にアミノカルボキシル基を有するペプチド類似体であり、比較例の化合物12は、X2の親油性脂質であって、C16がポリマー性部分として連結されたペプチド類似体である。前記比較例の化合物8~比較例の化合物12の構造は、表3及び表4に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
<実験例1>GLP-1及びグルカゴン受容体の活性化能の検証
細胞にヒトGLP-1またはグルカゴン受容体を一時的に過発現させて、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体が受容体を活性化させることで増加する環状アデノシン一リン酸(cAMP)が、順次に環状アデノシン一リン酸反応性プローモーター(CRE)を活性化させると、その以後に増加するルシフェラーゼの活性度を各受容体活性化に対する効能の意味で評価した。
【0051】
陽性対照薬物としては、内因性リガンドGLP-1またはグルカゴンをそれぞれの評価に用い、比較例としては、前記化合物の比較例8~12のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体を合成してこれを比較例とした。
【0052】
細胞は、中国ハムスターの卵巣細胞(CHO-K1)にヒトGLP-1またはグルカゴン発現ベクター(OriGene社製)をホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)またはレニラルシフェラーゼ(renilla luciferase)の発現を誘導し得るそれぞれのプラスミドDNAとともにリポフェクタミンプラス試薬(Lipofectiamine Plus reagent、Invitrogen社製)を用いて前記細胞に一時的にトランスフェクションさせた。3時間のトレンスフェクション後、10%小胎児血清(FBS)を含む栄養培地(α-MEM)に交換した。翌日に、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むα-MEM培地に交換し、6時間後、細胞が浸漬されている培地と同量の二重ルシフェラーゼアッセイ試薬(Dual luciferase assay reagent、Promega社製)を加えて連続的にホタルルシフェラーゼ及びレニルラルシフェラーゼの活性を測定した。ホタルルシフェラーゼ活性をレニルラルシフェラーゼ活性に補正してトレンスフェクションに対する効率を算出した。
【0053】
受容体の活性化能は、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体に対する多重濃度評価を実施して本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のGLP-1またはグルカゴンの最大効能に対する相対的活性化度(%)を求めて50%活性化を示す濃度(EC50)を、非線形回帰分析を利用して算出した値を表5に示した。
【0054】
【表5】
【0055】
同実験を通じて、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の化合物は、野生型オキシントモジュリンと同様に、GLP-1及びグルカゴン受容体に対する二重活性を示していることが分かり、最大効能(efficacy)の側面から内因性ホルモンであるGLP-1及びグルカゴンが有する十分な活性を示した。
【0056】
<実験例2>本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の1週間繰り返し体重減少の薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少の薬効を確認するために、雄の実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪を含有している食餌を供給し、高脂肪食餌によって肥満が誘導されたマウスを利用して、実験前の体重によって群分離後に評価した。本発明の実施例のうち、化合物1、化合物2及び化合物7は、それぞれ0.1%Cremophor ELが含有された滅菌注射用蒸溜水に30nmol/kg用量となるように調製し、表6に記載のように1日1回総7日間皮下注射した。毎日1回一定した時間に体重及び飼料摂取量を測定して、初期体重対比ペプチド類似体の経時的な体重減少の薬効を確認し、その結果を図1a及び図1bに示した。
【0057】
【表6】
【0058】
同実験の結果、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物1、化合物2及び化合物7は、初期体重対比それぞれ-44.9%、-26.9%、及び-6.8%の有意な体重変化が観察されたし、累積飼料消費量は、vehicle対照群対比それぞれ75%、46%、及び10%減少した。
【0059】
<実験例3>本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の1週間繰り返し体重減少の薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少の効果を確認するために、雄の実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪を含有している食餌を供給し、高脂肪食餌によって肥満が誘導されたマウスを利用して実験前の体重によって群分離後に評価した。本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のうち、化合物3は、0.1%Cremophor ELが含有された滅菌注射用蒸溜水に30nmol/kg用量となるように調製した後、表9に記載のように、1日1回総7日間皮下注射した。毎日1回一定した時間に体重及び飼料摂取量を測定して初期体重対比経時的な体重減少の薬効を確認し、その結果を図2a及び図2bに示した。
【0060】
【表7】
【0061】
同実験の結果、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物3を注射した群の体重は、初期数値対比-16.1%の有意な変化が観察され、累積飼料消費量は、ビヒクル(vehicle)対照群対比40%水準に減少した。
【0062】
<実験例4>本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の1週間繰り返し体重減少の薬効評価
本実験は、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の体重減少の薬効を確認するために、雄の実験用マウス(C57BL/6mouse)に高脂肪を含有している食餌を供給し、高脂肪食餌によって肥満が誘導されたマウスを利用して実験前の体重によって群を分離した後に評価した。本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のうち、化合物4、化合物5または化合物6は、それぞれ0.1%Cremophor ELが含有された滅菌注射用蒸溜水に30nmol/kg用量となるように調製し、表8に記載のように、1日1回総7日間皮下注射した。毎日1回一定した時間に体重及び飼料摂取量を測定して初期体重対比アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の経時的な体重減少の薬効を確認し、その結果を図3a及び図3bに示した。
【0063】
【表8】
【0064】
同実験の結果、本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物4、化合物5及び化合物6は、初期体重対比それぞれ-24.3%、-30.3%、及び-26.9%の有意な体重変化が観察されたし、累積飼料消費量は、ビヒクル(vehicle)対照群対比それぞれ67%、83%及び75%減少した。
【0065】
<実験例5>単回のマウスにおける薬動力学の評価
本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体に対するマウス薬動力学の評価のためにICRマウスを用いた。本発明によって製造されたアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物1、化合物2、化合物3、または化合物7を、0.1%Cremophore ELが含有された滅菌注射用蒸溜水に30nmmol/kg用量となるように調製した後、ICRマウスに皮下注射し、投与後に指定された時間に採血して血漿薬物濃度の分析を通じて薬動力学指標を算出し、その結果を表9及び図4に示した。
【0066】
【表9】
【0067】
前記表9及び図4から分かるように、実験の結果、本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の4種(化合物1、化合物2、化合物3、化合物7)は、比較例の化合物8(大韓民国特許出願第2018-0095717号の化合物3)及び比較例MEDI0382対比6時間以上の長い半減期を示しており、新規のアルブミンリガンドの導入による化学的安定性の改善を通じて単一アシル化されたオキシントモジュリンペプチド類似体の比較例の化合物8よりも遥かに半減期が改善されたことを確認した。
【0068】
その上、比較例の化合物8の半減期は、1日1回注射剤として開発中の比較例MEDI0382の半減期と類似し、このことから、比較例の化合物8は1日1回注射剤としてのみ開発が可能であるということを確認することができる。これに対し、本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の4種は、比較例の化合物8よりも改善されたPK半減期を示し、週1回注射剤として開発されたSemaglutideと類似した半減期を示した。よって、前記本発明のアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、週1回剤形の長時間作用型薬物として開発が可能な物質であることを確認した。
【0069】
<実験例6>単回のサルにおける薬動力学評価
本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体のサルにおける薬動力学の評価のために、カニクイザル(Cynomolgus monkey)を用いた。本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6または化合物7を、0.1%Cremophor ELが含有された滅菌注射用蒸溜水に100nmol/kg用量となるように調製した後、カニクイザルに単回皮下注射し、投与後に指定された時間に採血して血漿薬物濃度の分析を通じて薬動力学指標を算出し、その結果を表10及び図5に示した。
【0070】
【表10】
【0071】
前記表10及び図5から分かるように、同実験の結果、本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の7種(化合物1~7)は、比較例の化合物の4種及び1日1回注射剤として開発中の比較例のMEDI0382対比12時間以上の長い半減期を示し、新規のアルブミンリガンドの導入による化学的安定性の改善を通じて、遥かに半減期が改善されたことを確認した。特に、化合物3及び化合物7は、サルPK半減期が24時間以上で週1回注射剤として開発されたSemaglutideと類似した半減期を示し、週1回剤形の長時間作用型薬物への開発が可能な物質である。
【0072】
比較例の化合物9は、比較例の化合物8(大韓民国特許出願第2018-0095717号の化合物3)に、文献(Nat.Commun.2017;8:16092)で言及したアルブミンリガンドを導入したペプチド類似体であって、半減期が12時間未満であったし、このことから、文献のアルブミンリガンドの導入だけでは長時間作用型(long-acting)ペプチド類似体を開発することができないことが分かる。
【0073】
ペプチド類似体の骨格番号34のLys側鎖に、末端がアミノカルボキシル基の形態の親油性脂質を有する比較例の化合物10、比較例の化合物11、化合物7は、それぞれ、C14、C16、C18の炭素鎖長を有している。化合物7は、半減期の時間が24時間以上であるのに対し、比較例の化合物10及び比較例の化合物11は、12時間未満を示し、親油性脂質の末端がアミノカルボキシ基である場合、炭素鎖長がC18である場合にのみ長い半減期を有することが分かる。
【0074】
ペプチド類似体の骨格番号34のLys側鎖に、末端がカルボキシル基の形態の親油性脂質を有する化合物1、化合物2、化合物3は、それぞれ、C14、C16、C18の炭素鎖長を有している。これらの物質は、いずれも12時間以上の半減期を示し、特に、化合物3は24時間以上の半減期を示した。長い半減期を有するために、親油性脂質の末端は、カルボキシ基置換体を有することが好ましく、炭素鎖長が長いほどより良い効果を奏する。
【0075】
ペプチド類似体の骨格番号34のLys側鎖に、親油性脂質がスペーサとポリマー性部分との組み合わせにより結合した化合物4、化合物5、化合物6は、比較例の物質と比較して、半減期時間が12時間~24時間未満で長い半減期を示したのに対し、比較例の物質12は、親油性脂質がポリマー性部分として連結されるにもかかわらず、12時間未満のより短い半減期を示した。ポリマー性部分が半減期に与える影響よりも、親油性脂質の末端の影響の方が大きいことが分かる。
【0076】
<実験例7>マウスにおける耐糖能改善効果の検証
本実験は、雄の実験用マウス(ICR mouse)に、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の耐糖能改善効果を、食後血糖調節能改善効果の意味で評価した。実験用マウスを実験前日に絶食させた後、本発明の実施例によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物2、化合物3または化合物7を、0.1%Cremophor ELを含有する滅菌注射用蒸溜水に調製して、ブドウ糖投与6時間前に皮下注射した。アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の注射6時間後にブドウ糖溶液を経口投与し、ブドウ糖溶液投与直前及びブドウ糖溶液投与後2時間の間指定された時間に尾静脈を介して全血の血糖を測定した。その結果は、経時的な血糖曲線の曲線下面積(Area under the curve;AUC)を算出してビヒクル(vehicle)対照群の血糖AUC対比アシル化オキシントモジュリンペプチド類似体の血糖AUCを百分率で算出し、その結果を図6に示した。
【0077】
図6から分かるように、同実験の結果、本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体である化合物2、化合物3または化合物7は、30nmol/kg用量でグルコース対照群対比、それぞれ42.1%、26.7%または33.9%の有意な血糖AUC減少を示した。本発明によるアシル化オキシントモジュリンペプチド類似体は、化学的安定性による半減期の改善とともに、GLP-1及びグルカゴン受容体への活性を通じて血糖改善及び体重減少に有効であることが分かる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
【配列表】
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