(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】抵抗膜方式液体ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/60 20060101AFI20240220BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20240220BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05B3/60 Z
H05B3/03
H05B3/00 310D
H05B3/00 340
(21)【出願番号】P 2022580502
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 GB2021051511
(87)【国際公開番号】W WO2022003315
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン グリーサム
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0008026(US,A1)
【文献】米国特許第04953536(US,A)
【文献】特表2020-516046(JP,A)
【文献】特開2007-124919(JP,A)
【文献】特表2011-511919(JP,A)
【文献】国際公開第2006/119440(WO,A2)
【文献】特表2005-502017(JP,A)
【文献】特開平03-007065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/60
H05B 3/03
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を受け入れるためのチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記液体に電流を流すための電極対と、
電源への接続のための入力端子と、
前記入力端子に並列に接続されている複数のブリッジアームであって、電極の各対のそれぞれのブリッジアーム及び共通のブリッジアームを含み、各ブリッジアームは、一対のスイッチ及び前記スイッチの間に配置されたノードを含む、前記複数のブリッジアームと、
前記スイッチを制御するための制御ユニットと、
を含み、
電極の各対の第1の電極は、前記それぞれのブリッジアームの前記ノードに接続されており、
電極の各対の第2の電極は、前記共通のブリッジアームの前記ノードに接続されており、
前記スイッチは、複数の電極構成のうちの1つにおける前記入力端子に電極対を選択的に接続するための複数の異なる状態を有し
、各電極構成
は、1つ又は複数の電極対に対応し、異なる総電気抵抗を有する、
液体ヒータ。
【請求項2】
前記液体ヒータは、少なくとも3つの電極対を含む、請求項1に記載の液体ヒータ。
【請求項3】
電極の各対は、異なる電気抵抗を有する、請求項1又は2に記載の液体ヒータ。
【請求項4】
前記電極対
の電気抵抗は、最大のRmaxと最小のRminとを有し、Rmax/Rminは、少なくとも10である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項5】
前記電極構成の前記総電気抵抗は、最小のRTminと最大のRTmaxとを有し、任意の2つのランク付けされた電極構成の前記総電気抵抗の差は、最大のRmaxdiffを有し、Rtmax/RTminは、少なくとも20であり、Rmaxdiff/(Rtmax-RTmin)は、35%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記電極が各構成内の交流電圧で通電されるように前記スイッチを制御する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項7】
前記スイッチは、前記電極が正の電圧で通電される第1の状態と、前記電極が負の電圧で通電される第2の状態とを有し、前記制御ユニットは、少なくとも300kHzのスイッチング周波数で前記第1の状態と前記第2の状態との間の前記スイッチを切り替える、請求項6に記載の液体ヒータ。
【請求項8】
前記電源は、交流電圧を供給し、前記制御ユニットは、少なくとも1つの設定内で、前記電極が、前記交流電圧の各N番目の半周期間のみに通電されるように前記スイッチを制御し、Nは、少なくとも2である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項9】
前記電源は、交流電圧を供給し、前記制御ユニットは、少なくとも1つの設定内で、前記電極が、前記交流電圧の各半周期の1つ又は複数の部分のみの間に通電されるように前記スイッチを制御する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項10】
前記液体ヒータは、前記液体の温度を感知するための温度センサを含み、前記制御ユニットは、前記液体の前記温度と温度セットポイントとに基づいて電極構成を選択するように前記スイッチを制御する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項11】
前記液体ヒータは、前記液体の温度を感知するための温度センサを含み、前記制御ユニットは、前記電極が、前記液体の温度
と温度セットポイントとによって規定されるデューティを有する電圧で通電されるように前記スイッチを制御する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記電極が70%以上の可変デューティを有する電圧で通電されるように前記スイッチを制御する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項13】
前記電源は、交流電圧を供給し、前記スイッチは、双方向スイッチである、請求
項1乃至12のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項14】
前記電源は、第1の周波数を有する交流電圧を供給し、前記制御ユニットは、前記電極が、より高い第2の周波数を有する交流電圧で通電されるように前記スイッチを制御する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の液体ヒータ。
【請求項15】
前記第1の周波数は、60Hz以下であり、前記第2の周波数は、150kHz以上である、請求項14に記載の液体ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱を利用し、液体を加熱する液体ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
液体ヒータは、液体の瞬間又はオンデマンド加熱を提供するために、ジュール又はオーミック加熱とも呼ばれる、抵抗加熱を利用し得る。液体がヒータを通過するとき、電極は、液体に電流を流し、液体を加熱させる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、液体を受け入れるためのチャンバと、チャンバ内に配置され、液体に電流を流すための電極対と、電源への接続のための入力端子と、入力端子に並列に接続されている複数のブリッジアームであって、電極の各対のそれぞれのブリッジアーム及び共通のブリッジアームを含み、各ブリッジアームは、一対のスイッチ及びスイッチの間に配置されたノードを含む複数のブリッジアームと、スイッチを制御するための制御ユニットとを含み、電極の各対の第1の電極は、それぞれのブリッジアームのノードに接続されており、電極の各対の第2の電極は、共通のブリッジアームのノードに接続されており、スイッチは、複数の電極構成のうちの1つにおける入力端子に電極対を選択的に接続するための複数の異なる状態を有し、電極は、各電極構成において異なる総電気抵抗を有する、液体ヒータを提供する。
【0004】
このように共通のブリッジアームを設けることによって、可能な電極構成の数は、増加される。その結果、液体の加熱に対する改善された制御は、実現され得る。例えば、追加の電極構成を有することによって、その各々は、異なる総電気抵抗を有し、より高い熱忠実度は、実現され得る。さらに、2つのランク付けされた電極構成間の総電気抵抗の差が過大でないことを保証しつつ、総電気抵抗の比較的広いレンジは、実現され得る。
【0005】
2つのランク付けされた電極構成は、総電気抵抗に関してランク付けされたときの2つの連続した電極構成を意味すると理解されるべきである。
【0006】
ヒータは、広いレンジの導電率を有する液体を加熱するために使用されてもよい。より多くの異なる電極構成を有することによって、そのような液体の加熱は、より良く制御され得る。例えば、電極構成は、導電率に関係なく、同じ又は類似のレベルの加熱が実現され得るように液体の導電率にしたがって選択されてもよい。
【0007】
液体ヒータは、少なくとも3つの電極対を含んでもよい。その結果、ヒータは、少なくとも13個の可能な電極構成を有する。したがって、液体ヒータは、2つのランク付けされた電極構成間の総電気抵抗の、より小さい平均差及び/又は最大差を使用して、総電気抵抗の所定のレンジを実現することが可能である。その結果、比較的良好な熱忠実度は、ランク付けされた電極構成の各対間の総電気抵抗の、より小さい差によって、液体の温度において実現され得る。
【0008】
電極の各対は、異なる電気抵抗を有する。その結果、総電気抵抗が異なる、より多くの電極構成の数は、可能であり、したがって、より細かい熱制御は、実現され得る。
【0009】
電極対の電気抵抗は、最大のRmaxと最小のRminとを有してもよく、Rmax/Rminは、少なくとも10である。その結果、様々な電極構成の総電気抵抗の比較的広いダイナミックレンジは、実現され得る。
【0010】
電極構成の総電気抵抗は、最小のRTminと最大のRTmaxとを有してもよい。さらに、任意の2つのランク付けされた電極構成の総電気抵抗の差は、最大のRmaxdiffを有してもよい。次いで、RTmax/RTminは、少なくとも20であってもよく、Rmaxdiff/(RTmax-RTmin)は、35%以下であってもよい。次いで、これは、総電気抵抗におけるダイナミックレンジ(RTmax/RTmin)と分解能(Rmaxdiff)との間の比較的良好なバランスをもたらす。特に、ヒータは、少なくとも20のダイナミックレンジを有し、任意の2つのランク付けされた構成間の総電気抵抗の差が総レンジの35%以下であることを保証する。
【0011】
制御ユニットは、電極が各構成内の交流電圧で通電されるようにスイッチを制御してもよい。その結果、電極の電気分解は、回避され得る。
【0012】
スイッチは、電極が正の電圧で通電される第1の状態と、電極が負の電圧で通電される第2の状態とを有してもよい。制御ユニットは、少なくとも300kHzのスイッチング周波数で、第1の状態と第2の状態との間のスイッチを切り替えてもよい。その結果、電極は、少なくとも150kHzの周波数を有する交流電圧で通電される。そのような高周波で電極に通電することによって、より小さい電極は、電気分解が発生することなく、同じ電力を供給するために使用され得る。したがって、より高い電力密度は、ヒータにおいて実現され得る。
【0013】
電源は、交流電圧を供給してもよく、制御ユニットは、少なくとも1つの設定内で、電極が、交流電圧の各N番目の半周期間のみに通電されるようにスイッチを制御してもよく、Nは、少なくとも2である。その結果、より高い熱忠実度は、実現され得る。例えば、制御ユニットは、電極が、交流電圧の各半周期ではなく、各2番目の半周期(N=2)間に通電される第1の設定を含んでもよい。その結果、その電極構成の入力電力は、半減されることとなる。同様に、制御ユニットは、電極が3番目の半周期(N=3)ごとに通電される第2の設定を含んでもよい。その結果、その電極構成の入力電力は、3分の1となる。したがって、より広いレンジの入力電力、ひいては、より広いレンジの加熱速度は、可能である。
【0014】
電源は、交流電圧を供給してもよく、制御ユニットは、少なくとも1つの設定内で、電極が、交流電圧の各半周期の1つ又は複数の部分のみの間に通電されるようにスイッチを制御してもよい。その結果、より高い熱忠実度は、実現され得る。特に、各半周期の部分のみの間に電極に通電することによって、より低い入力電力は、実現され得る。さらに、入力電力への調整は、部分のサイズ又は長さを変化させることによって、行われてもよい。
【0015】
液体ヒータは、液体の温度を感知するための温度センサを含んでもよく、制御ユニットは、液体の温度と温度セットポイントとに基づいて電極構成を選択するようにスイッチを制御してもよい。特に、制御ユニットは、液体の温度と温度セットポイントとの間の、より大きい差に応じて、より低い総電気抵抗を有する電極構成を選択してもよい。その結果、良好な熱制御は、実現され得る。例えば、液体の温度とセットポイントとの差が大きい場合、制御ユニットは、より低い総電気抵抗を有する電極構成を選択してもよい。逆に、液体の温度とセットポイントとの差が小さい場合、制御ユニットは、より高い総電気抵抗を有する電極構成を選択してもよい。その結果、液体の、迅速なおかつ正確な加熱は、実現され得る。
【0016】
液体ヒータは、液体の温度を感知するための温度センサを含んでもよく、制御ユニットは、電極が、液体の温度と温度セットポイントとによって規定されるデューティを有する電圧で通電されるようにスイッチを制御してもよい。可変デューティを有する電圧で電極に通電することによって、液体の温度に対する、より細かい制御は、実現され得る。特に、デューティを変化させることは、2つの電極構成間に介在する入力電力を得るために使用され得る。その結果、より高い熱忠実度は、実現され得る。
【0017】
制御ユニットは、電極が70%以上の可変デューティを有する電圧で通電されるようにスイッチを制御してもよい。前のパラグラフで述べられたように、デューティは、より高い熱忠実度を実現するように変化され得る。追加的に或いは代替的に、電極構成間を切り替えるとき、より低い総電気抵抗を有する構成の電極は、より低いデューティを有する電圧で通電されてもよい。その結果、電極構成間を切り替えるとき、電源から取り出される電流に発生される高調波は、低減され、したがって、より小さいインピーダンスのフィルタは、使用され得る。100%未満のデューティを有する電圧で電極に通電することは、電圧が電極に印加されない期間をもたらし、したがって、電流は、電源から電極によって取り出されない。しかしながら、デューティが70%以上であることを保証することによって、加熱に対する比較的良好な制御は、比較的低いインピーダンスのフィルタを使用して実現され得る。
【0018】
電源は、交流電圧を供給してもよく、スイッチは、双方向スイッチであってもよい。次いで、これは、電源の極性に関係なく、電極が交流電流で通電され得るという利点を有する。さらに、電極は、ACからDCへのステージ又はPFC回路を設ける必要なく、供給電圧の周波数よりもより高い周波数を有する交流電圧で電極に通電され得る。
【0019】
電源は、第1の周波数を有する交流電圧を供給してもよく、制御ユニットは、電極が、より高い第2の周波数を有する交流電圧で通電されるようにスイッチを制御してもよい。その結果、電気分解は、供給電圧の、より低い周波数にもかかわらず回避され得る。第1の周波数は、60Hz以下であってもよく、第2の周波数は、150kHz以上であってもよい。したがって、より小さい電極を有するヒータは、(典型的に、50Hz又は60Hzの周波数を有する)主電源によって駆動され、なおかつ、電気分解は、150kHzを超える周波数で通電することによって回避され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
ここで、実施形態は、添付の図面を参照して、例として説明される。
【
図1】
図1は、液体ヒータのブロックダイアグラムである。
【
図3】
図3は、ヒータの各スイッチの可能な状態を示す。
【
図4】
図4は、ヒータの電極が異なる構成で通電される様々な通電状態を詳細に示す表である。
【
図5】
図5は、ヒータの各電極構成の総電気抵抗を詳細に示す表である。
【
図6】
図6は、
図4の通電状態1と2との間を切り替えるときのヒータのスイッチの状態遷移のシーケンスを示す。
【
図7】
図7は、
図5の電極構成の総電気抵抗の挙動を示すグラフである。
【
図8】
図8は、ヒータの様々な電力設定を詳細に示す。
【
図9】
図9は、ヒータの電極のベース抵抗の変化が、ダイナミックレンジ(上のグラフ)及び2つの電極構成間の総電気抵抗の最大差(下のグラフ)にどのように影響するかを示す。
【
図10】
図10は、異なるベース抵抗を有する電極に関する2つの電極構成間の、総電気抵抗と、ダイナミックレンジと、総電気抵抗の最大差及び平均差とを詳細に示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び
図2の液体ヒータ10は、チャンバ20と、電極30と、制御システム40とを含む。
【0022】
チャンバ20は、加熱される液体を受け入れ、液体がチャンバ20に出入りする入口21と出口22とを含む。
【0023】
電極30は、チャンバ20内に配置される3つの電極対E1-E3を含む。電極30の各対は、液体がチャンバ20の入口21から出口22に流れるときに通過するチャネルを規定する。第1の電極対E1は、第2の電極対E2の上流に配置され、第2の電極対E2は、第3の電極対E3の上流に配置される。その結果、液体は、最初に第1の対E1の電極間を通過し、続いて第2の対E2の電極間を通過し、最後に第3の対E3の電極間を通過する。
【0024】
電極30の各対は、異なる電気抵抗を有し、すなわち、チャンバ20が液体で満たされるとき、1つの電極対(例えば、E1)間の電気抵抗は、他の2つの電極対(例えば、E2及びE3)のそれと異なることとなる。異なる電気抵抗は、異なる断面積及び/又は離隔距離の電極を有することによって実現され得る。
【0025】
制御システム40は、入力端子41と、フィルタ42と、コンバータ43と、温度センサ44と、電流センサ45と、ゼロクロス検出器46と、制御ユニット47とを含む。
【0026】
入力端子41は、交流電圧を供給する主電源などの、電源50に接続可能である。
【0027】
フィルタ42は、インダクタL1と、コンデンサC1とを含み、電源50から取り出される電流の高周波の高調波を減衰させる。
【0028】
コンバータ43は、入力端子41間に並列に接続されている複数のブリッジアーム60を含む。したがって、各ブリッジアーム60は、入力端子41の一方に接続されている第1端61と、入力端子41の他方に接続されている第2端62とを含むと言え得る。各ブリッジアーム60は、一対のスイッチSn(例えば、S1及びS2)と、2つのスイッチ間に配置されるノード63とを含む。
【0029】
各ブリッジアーム60のスイッチSnは、双方向である。
図3に示されるように、各スイッチSnは、4つの可能な状態、(1)スイッチがいずれかの方向にも導通しない、開、(2)スイッチが双方向に導通する、閉、(3)スイッチが一方向のみに導通する、ダイオードモード#1(例えば、B->A)、(4)スイッチが他方向のみに導通する、ダイオードモード#2(例えば、A->B)を有する。したがって、各スイッチSnは、両方向に制御されることができ、すなわち、各スイッチは、一方向又は両方向に導通され、非導通され得る。したがって、スイッチSnは、例えば、両方向に導通することが可能であるが、一方向のみに非導通され得る、ボディダイオードを有するMOSFET又はアンチパラレルダイオードを有するIGBTとは異なる。スイッチSnは、窒化ガリウムスイッチであり、窒化ガリウムスイッチは、比較的高い耐圧を有し、したがって、主電圧での動作に良く適している。さらに、窒化ガリウムスイッチは、比較的高いスイッチング周波数が可能であり、その利点は、以下で詳細に説明される。しかしながら、双方向に制御されることが可能である他のタイプの双方向スイッチは、代替的に使用されてもよい。
【0030】
コンバータ43は、電極の各対(例えば、E1)のそれぞれのブリッジアーム(例えば、S1及びS2)と、電極30の全ての対に共通する共通のブリッジアーム(例えば、S7及びS8)とを含む。この特定の実施形態では、ヒータ10は、3対の電極30を含み、したがって、コンバータ43は、合計で4つのブリッジアーム60を含む。
【0031】
電極の各対(例えば、E1)に関して、第1の電極(例えば、E1a)は、そのそれぞれのブリッジアーム(例えば、S1及びS2)のノード63に接続されており、第2の電極(例えば、E1b)は、共通のブリッジアーム(例えば、S7及びS8)のノード63に接続されている。その結果、コンバータ43及び電極30は、三相四線式のY結線システムに類似する。
【0032】
スイッチSnは、1つ又は複数の電極対E1-E3に選択的に通電する(すなわち、電圧を印加する)ための複数の異なる状態を有する。
【0033】
図4は、異なる電極構成に通電するためのスイッチSnの様々な状態を詳細に示す。
図4では、「//」は、並列接続を指し、「+」は、直列接続を指す。したがって、例えば、電極構成「(E1//E2)+E3」は、第1の電極対E1と第2の電極対E2とが並列に接続されており、次いで、この並列グループは、第3の電極対E3と直列に接続されていることを意味すると理解されるべきである。
【0034】
図4では、各電極構成の電極に通電するための2つの状態、正の電圧が電極に印加される1つの状態と、負の電圧が電極に印加される別の状態とが存在することが分かる。
図4の印加電圧の極性は、コンバータ43の上ラインの正の供給電圧に基づいており、もちろん、上ラインの供給電圧が負であれば、極性は、逆転することとなる。
【0035】
第1の電極(例えば、E1a)に印加される電圧が正である場合、正の電圧は、1つの電極対(例えば、E1)に印加されると言え得る。したがって、
図4では、印加電圧の極性は、リストされた電極対のうちの最初の電極対に印加されるもの、及び、最初にリストされた対に並列に接続されている任意の電極対に印加されるものを指す。しかしながら、最初にリストされた対と直列に接続されている電極対に印加される電圧は、逆の極性を有する。したがって、選択された電極対に通電することに言及されている場合、電極対は、同じ或いは反対の極性の電圧で通電され得ると理解されるべきである。
【0036】
図4の表にリストされた13個の異なる電極構成が存在する。各電極構成は、異なる総電気抵抗を有する。
図5は、各電極構成の総電気抵抗を詳細に示す。
図5の総電気抵抗は、第1の電極対E1に関して65Ω、第2の対E2に関して500Ω、第3の対E3に関して1000Ωのベース電気抵抗に基づいている。本明細書では、特定のベース電気抵抗を有する電極、又は特定の総電気抵抗を有する電極構成に言及されており、電気抵抗は、電極間の液体から生じ、電極自体は、比較的小さい(理想的にはゼロの)電気抵抗を有することが理解されるべきである。
【0037】
選択された構成の電極30が通電されるとき、熱として液体中に放散される入力電力は、電極構成の総電気抵抗に依存する。より具体的には、所定の供給電圧(例えば、RMS電圧)に関して、入力電力は、電極構成の総電気抵抗に反比例する。したがって、より低い電気抵抗の電極構成を選択することによって、より高い入力電力は、電源50から取り出され、したがって、より高いレベルの加熱は、実現され得る。
【0038】
温度センサ44は、チャンバ20の出口22で液体の温度を感知し、信号、TEMPを制御ユニット47に出力する。この特定の実施例では、温度センサ44は、サーミスタRT1を含む。
【0039】
電流センサ45は、電源50から取り出される電流を感知し、信号、I_ACを制御ユニット47に出力する。この特定の実施例では、電流センサ45は、変流器又はホール効果センサなどの、電流トランスデューサCT1を含む。
【0040】
ゼロクロス検出器46は、電源50の電圧VACにおけるゼロクロスを感知し、信号、Z_CROSSを制御ユニット47に出力する。この特定の実施例では、ゼロクロス検出器46は、一対のクランプダイオードD1、D2を含む。
【0041】
制御ユニット47は、ヒータ10の動作を制御する役割を担っている。制御ユニット47は、セットポイント温度、T_SETと、温度センサ44、電流センサ45、及びゼロクロス検出器46によって出力される信号とを受信する。これに応じて、制御ユニット47は、スイッチSnの状態を制御するための制御信号をコンバータ43に出力する。
【0042】
制御ユニット47は、液体の温度と温度セットポイント(temperature setpoint)とに基づいて、電極構成を選択する。次いで、制御ユニット47は、選択された電極構成にしたがって、電極に通電するように制御信号をコンバータ43に出力する。制御ユニット47が電極構成を選択するために採用し得る様々な制御アルゴリズムが存在する。一実施例では、制御ユニット47は、最初に、セットポイント温度、T_SETのみに基づいて電極構成を選択してもよい。その後、液体の温度、TEMPがセットポイント温度を超え、或いはセットポイント温度未満の値に落ち着く場合、制御ユニット47は、温度差に基づいて異なる電極構成を選択してもよい。別の実施例では、制御ユニット47は、液体の温度(又は温度セットポイント)、及び、液体の温度と温度セットポイントとの間の温度差に基づいて、電極構成を選択してもよい。その結果、制御ユニット47は、液体とセットポイントとの間の温度差だけでなく、液体の開始温度(又は終了温度)にも依存する総電気抵抗を有する電極構成を選択する。別の実施例では、制御ユニット47は、液体の温度と温度セットポイントとに基づいて電極構成を選択するために、PID制御の形態又は他のフィードバック機構を使用してもよい。
【0043】
上述されたように、各電極構成の2つの通電状態、正の電圧+VACが電極30に印加される1つの通電状態と、負の電圧-VACが電極30に印加される別の通電状態とが存在する。各電極構成の電極30に通電するとき、制御ユニット47は、電極30が交流電圧で通電されるようにこれらの2つの通電状態間を切り換える。さらに、制御ユニット47は、少なくとも300kHzのスイッチング周波数で状態間を切り替える。その結果、電極30は、少なくとも150kHzの交流電圧で通電される。これは、電源50の周波数よりもはるかに高く、典型的に、主電源は、50Hz又は60Hzである。そのような高周波の交流電圧で電極30に通電することによって、これから説明されるように、液体は、電気分解が発生することなく、より小さい電極を使用して加熱され得る。
【0044】
各電極(例えば、E1a)に関して、二重層の静電容量は、電極と液体との間の界面に発生される。この二重層の静電容量は、電極の材料と表面積との関数を変化させる。所定の電極材料に関して、表面積が減少すると、液体との、より小さい接触面積のために、静電容量は、減少する。二重層の静電容量間の電圧は、二重層の静電容量と印加電圧の周波数との両方の関数である。したがって、電極のサイズが減少するので、静電容量が減少すると、電極間の電圧は、増加する。電極間の電圧が液体の分解電位を超えるとき、電気分解は発生する。概して、電極が50Hz又は60Hzの周波数、すなわち、主電源の周波数で通電されるとき、電気分解は発生しないと考えられている。実際のところ、これは、電極の適切なサイズを通して確かである。しかしながら、はるかに高い周波数(例えば、少なくとも300kHz)で電極に通電することによって、はるかに小さい電極は、同じ加熱電源を液体に供給するために使用され得る。したがって、より高い電力密度のヒータ10は、実現され得る。
【0045】
スイッチSnは、双方向スイッチである。その結果、交流電圧は、供給電圧VACの極性に関係なく、電極30に印加され得る。スイッチは、窒化ガリウムスイッチであり、窒化ガリウムスイッチは、これらの比較的高いスイッチング周波数(すなわち、少なくとも300kHz)で動作することが可能であるだけでなく、これらの周波数で比較的低いスイッチングロスを有する。
【0046】
各電極構成内の通電状態間を切り替えるとき、或いは2つの電極構成間を切り替えるとき、制御ユニット47は、任意の誘導電流の経路をも提供しつつ、シュートスルーを回避するようにスイッチSnの状態を制御する。
図6は、
図4の通電状態1と2との間を切り替えるときの状態遷移のシーケンスを示す。
図6(a)では、シーケンスは、正の電圧が第1の電極対E1に印加されるように、スイッチS1とS8とが閉じた状態で開始する。シーケンスは、
図6(b)に移行し、スイッチS1とS8とは、正の電圧が電極対E1に印加され続けるように閉じられ続ける。しかしながら、ここで、スイッチS2とS7とは、ダイオードモードにされる。より具体的には、スイッチS2とS7との両方が
図6(b)に示される方向に導通するように、G1は、ONにされ、G2は、OFFにされる。シーケンスは、
図6(c)に移行し、スイッチS1とS8とは、開放される。この時点では、電圧は、電極対E1に印加されない(すなわち、電極は、もはや通電されていない)。S2とS7とは、
図6(c)の矢印によって示されるように、ダイオードモードであり続け、誘導電流が流れるための経路を提供する。シーケンスは、
図6(d)で終了し、スイッチS2とS7とは、負の電圧が電極対E1に印加されるように閉じられる。
【0047】
図6に示される実施例では、しばしばデッドタイムと呼ばれる、電流が電源50から取り出されない期間が存在する。
図6の実施例では、これは、スイッチSnが
図6(c)に示される状態にあるときに発生する。このデッドタイムは、比較的短い期間であり、電源50から取り出される電流に比較的高周波のリップルを発生する。次いで、フィルタ42は、この高周波のリップルを減衰させる。デッドタイムの比較的短い期間のために、フィルタ42は、比較的低いインピーダンスのコンポーネント(例えば、L1及びC1)を使用して高周波のリップルを減衰させることが可能であり、したがって、制御システム40のサイズ及びコストを低減させることが可能である。
【0048】
2つの電極構成間を切り替えるとき、総電気抵抗の著しい変化が存在し得る。これは、総電気抵抗でランク付けされた2つの隣接する電極構成間を切り替えるときであっても同様である。例えば、
図5の表では、任意の2つの隣接する電極構成間の総電気抵抗の最大差は、435Ωである(構成9と10との間、及び、構成12と13との間を切り替えるときに発生する)。したがって、2つの電極構成間を切り替えることは、電源50から取り出される電流に、著しい高調波を発生し得る。したがって、制御ユニット47は、ゼロクロス検出器46によって感知されるように、供給電圧V
ACにおけるゼロクロスで2つの電極構成間を切り替える。電源50の電圧がゼロ又はゼロに近いときに電極構成を変更することによって、電極30の総電気抵抗の急激な変化から生じる高調波成分は、著しく低減され得る。その結果、電極構成の変更は、フィルタ42のインピーダンスの著しい増加なしに、実現され得る。考えられるのは、制御ユニット47は、電極構成を随時変更してもよく、結果として生じる高調波は、フィルタ42によって減衰されてもよい。しかしながら、これは、フィルタ42のインピーダンスの著しい増加を必要とすることとなる。さらなる代替として、2つの電極構成間を変更するとき、制御ユニット47は、100%未満のデューティを有する電圧で電極30に通電してもよい。これは、以下でより詳細に説明される。
【0049】
ヒータ10は、13個の異なる電極構成を有し、各々は、異なる総電気抵抗を有する。比較的多数の電極構成を有することによって、その各々は、異なる入力電力を提供し、比較的高い熱忠実度は、実現され得る。さらに、多数の電極構成を有することによって、2つのランク付けされた電極構成間の総電気抵抗の平均差及び/又は最大差が過大でないことを保証しつつ、総電気抵抗(したがって、入力電力)の比較的広いダイナミックレンジは、実現され得る。例えば、
図5の抵抗では、電極30の総電気抵抗は、54Ωから1500Ωまでの範囲であり、28:1のダイナミックレンジに対応する。しかしながら、総電気抵抗の平均差及び最大差は、それぞれ121Ω及び435Ωであり、総レンジの8%及び30%に対応する。
【0050】
多数の電極構成は、共通のブリッジアーム(例えば、S7及びS8)の設置を通して可能となる。共通のブリッジアームなしに、ヒータ10は、わずか6個の異なる構成を有する。
図5では、これらは、*で示されている。より少ない電極構成の数に加えて、ダイナミックレンジは、共通のブリッジアームなしに、著しく縮小することとなる。特に、
図5の抵抗では、ダイナミックレンジは、28:1(すなわち、54Ωから1500Ω)からわずか4:1(398Ωから1500Ω)までに縮小することとなる。さらに、任意の2つの隣接するランク付けされた電極構成間の総電気抵抗の平均差及び最大差は、それぞれ121Ωから220Ωまで、及び435Ωから493Ωまで増加することとなる。わずか2つの追加のスイッチを設けることによって、電極構成の総数は、2倍以上となり、ダイナミックレンジは、著しく拡大し、任意の2つの隣接するランク付けされた構成間の総電気抵抗の平均差及び最大差は、減少され得る。
【0051】
図7は、
図5の値を使用して、様々な電極構成の総電気抵抗の挙動を示す。構成4と5との間(268Ω)、9と10との間(435Ω)、及び、12と13との間(435Ω)の総電気抵抗の著しい変化が存在することが分かる。構成4と5とだけを考慮すると、総電気抵抗は、65Ωから333Ωに跳ね上がっている。これは、入力電力の著しい変化を表す。例えば、供給電圧が230VのRMS値を有する場合、入力電力は、構成4の814Wから構成5の159Wに変化することとなる。これらの2つの値の間の入力電力で液体を加熱することが望ましいことがある。次いで、これは、液体の温度に対する、より良い制御(すなわち、より細かい分解能/より高い忠実度)を提供することとなる。
【0052】
代替的な入力電力を実現するための1つの方法は、供給電圧VACのN番目の半周期ごとに電極30に通電することである。例えば、供給電圧の半周期ごとではなく、2番目の半周期ごとに電極30に通電することによって、その特定の電極構成の入力電力は、半減されることとなる。したがって、電極構成4(814W)と5(159W)との間の値で入力電力を取得するために、制御ユニット47は、(i)490Wの入力電力を取得するために2番目の半周期(N=2)ごとに、(ii)327Wの入力電力を取得するために3番目の半周期(N=3)ごとに、(iii)245Wの入力電力を取得するために4番目の半周期(N=4)ごとに、及び(iv)196Wの入力電力を取得するために5番目の半周期(N=5)ごとに、構成番号1の電極に通電し得る。
【0053】
図8は、ヒータ10の様々な電力設定を詳細に示す。各電力設定に関して、制御ユニット47は、特定の電極構成を採用し、供給電圧V
ACのN番目の半周期ごとに電極30に通電する。リストされた入力電力の値は、供給電圧の230VのRMS値に基づいている。異なる電極構成を選択し、通電の長さを変化させることによって(すなわち、Nの値を変化させることによって)、広いレンジの異なる入力電力が可能であることが分かる。特に、従来のケースのように、入力電力が814W(電力設定4)から159W(電力設定9)に跳ね上がるのではなく、ヒータ10は、490W、327W、245W、及び196W(電力設定5から8)の入力電力が可能である。
【0054】
代替的な入力電力を実現するための別の方法は、供給電圧VACの各半周期の1つ又は複数の部分のみの間に電極30に通電することである。例えば、供給電圧におけるゼロクロスに続いて、制御ユニット47は、電極30に通電する前に一定期間待機してもよい。制御ユニット47は、次のゼロクロスまで電極30に通電し続け、その後、制御ユニット47は、電極30に通電する前に一定期間再び待機する。ゼロクロスと通電開始との間の期間を調整することによって、制御ユニット47は、入力電力を調整することが可能である。このように通電を制御することは、電流波形の高調波成分を増加させる可能性がある。しかしながら、電流波形のクリップされた形状のために、最大の増加は、典型的に調整がより緩やかである、低次高調波にある可能性がある。したがって、高調波は、フィルタ42のインピーダンスのわずかな増加の調整をパスするレベルに減衰され得る。通電開始を遅らせることに加えて、制御ユニット47は、次のゼロクロスの前に通電を停止してもよい。特に、制御ユニット47は、通電開始を遅延させるために使用される同じ期間だけ、次のゼロクロスの前に通電を停止してもよい。その結果、電流波形の形状は、より対称的であり、したがって、高調波の大きさは、低減され得る。さらなる一実施例では、制御ユニット47は、各半周期の開始時と終了時に電極に通電し、供給電圧の大きさが最大である半周期の中間部の間、通電を停止してもよい。そうすることで、入力電力の、より大きい低減は、通電の、より短い停止期間において実現され得る。より短い期間、通電を停止することによって、電流波形の高調波成分は、低減され得る。制御ユニット47は、電流高調波の大きさをも最小限に抑えつつ、入力電力の所定の低減を実現するために、異なる通電パターンを採用してもよい。
【0055】
代替的な入力電力を実現するためのさらなる方法は、可変デューティを有する電圧で電極30に通電することである。すなわち、電極が通電される期間は、周期期間の100%未満であり得る。例えば、例えば70%のデューティを有する電圧で電極30に通電することによって、その特定の電極構成の入力電力は、おおよそ半減される。100%未満のデューティを有する電圧で電極30に通電することは、必然的に電圧が電極30に印加されない期間をもたらし、したがって、電流は、電源50から取り出されない。その結果、高調波は、電流波形に発生され、フィルタ42によってフィルタリングされなければならない。印加電圧のデューティが減少すると、高調波成分の大きさは、増加し、したがって、フィルタ42の必要とされるインピーダンスは、増加する。したがって、制御システム40は、70%以上のデューティを有する電圧で電極30に通電し得る。その結果、比較的良好な熱制御は、比較的低いインピーダンスのフィルタ42で実現され得る。
【0056】
制御ユニット47は、異なる入力電力を実現するために、上述された方法のうちの2つ以上の方法を採用してもよい。例えば、
図8では、入力電力は、電力設定4に関して814Wであり、電力設定5に関して490Wである。再び、これらの2つの値の間の入力電力で液体を加熱することが望ましいことがある。したがって、制御ユニット47は、電力設定4を選択し、これらの2つの値の間の入力電力を実現するために、100%未満のデューティで電極30に通電し得る。例えば、90%又は80%のデューティで電極30に通電することによって、659W及び521Wの入力電力は、実現されてもよい。さらなる一実施例では、制御ユニット47は、特定の電極構成内の入力電力を低減するために、最初にデューティを増加させてもよい。しかしながら、デューティが70%に達すると、制御ユニット47は、入力電力のさらなる低減を実現するために、異なる通電パターン(例えば、N番目の半周期ごとに通電する、或いは各半周期の1つ又は複数の部分のみの間に通電する)を採用し得る。異なる方法の組み合わせを採用することによって、より高い熱忠実度は、実現され得る。
【0057】
考えられるのは、ヒータ10は、最も低い総電気抵抗(例えば、54Ω)を有する単一の電極構成を採用することができ、制御ユニット47は、入力電力に関する全ての他の値を実現するために、印加電圧のデューティを制御することができる。しかしながら、同じレンジの入力電力に関して、制御ユニット47は、デューティに比較的大きいレンジを採用する必要がある。例えば、
図8に詳細に説明されたものと同じレンジの入力電力を実現するために、デューティは、100%(980W)から19%(35W)まで変化する必要があり得る。しかしながら、19%のデューティは、かなりのインピーダンスのフィルタが必要となる。その代わりに、多数の異なる電極構成間を切り替え、通電のパターンを変更し(例えば、N番目の半周期ごとに通電し、或いは各半周期の1つ又は複数の部分のみの間に通電し)、70%以上である可変デューティを有する電圧で電極に通電することによって、同様のレベルの熱忠実度は、より低いインピーダンスのフィルタ42で実現され得る。
【0058】
上述されたように、2つの電極構成間を変更するとき、総電気抵抗に著しい変化が存在し得る。したがって、制御ユニット47は、供給電圧VACにおけるゼロクロスのみに応じて、電極構成間を切り替える。その結果、電極構成間を切り替えることは、フィルタ42のインピーダンスの著しい増加を必要とすることなく、実現され得る。追加的に或いは代替的に、制御ユニット47は、異なる電極構成間を切り替えるとき、入力電力の差を低減するように印加電圧のデューティを変化させてもよい。より具体的には、より高い総電気抵抗を有する第1の電極構成と、より低い総電気抵抗を有する第2の電極構成との間を切り替えるとき、制御ユニット47は、より低いデューティを有する電圧で第2の構成の電極30に通電してもよい。その結果、2つの電極構成間の入力電力の差は、低減される。したがって、構成間を切り替えるとき、電流に発生される高調波は、低減され、したがって、より小さいインピーダンスのフィルタ42は、使用されてもよい。とは言え、制御ユニット47が、供給電圧VACにおけるゼロクロスに応じて異なる構成間を切り換えるだけである方式と比較して、より高いインピーダンスのフィルタは、必要とされることとなる。しかしながら、インピーダンスの増加は、比較的わずかであってもよく、ゼロクロス検出器46は、省略されてもよく、制御ユニット47は、随時電極構成間を切り替えてもよい。
【0059】
図9は、
図5の電極対のベース抵抗への調整が、ダイナミックレンジ(上のグラフ)及び2つの隣接するランク付けされた電極構成間の総電気抵抗の最大差(下のグラフ)にどのように影響するかを示す。これらの値では、第1の電極対E1及び第3の電極対E3の抵抗は、ダイナミックレンジに最も大きい影響を与えることが分かる。また、第1の電極対E1の抵抗は、最大差にほとんど影響を与えないことが分かる。さらに、第2の電極対E2の抵抗の任意の変化の増減は、ピーク差を増加させる役割を果たすのみであろう。ダイナミックレンジとピーク差との間の良好なバランスは、第2の電極対E2の抵抗が第3の電極対E3の抵抗の半分程度、すなわち、0.45≦R2/R3≦0.55であることを保証することによって実現され得ることが分かっている。
【0060】
図10は、異なるベース抵抗を有する電極30に関する総電気抵抗を示す。比較的広いダイナミックレンジ(すなわち、約20:1又はそれ以上)は、第3の電極対E3の電気抵抗が第1の電極対E1の電気抵抗の少なくとも10倍、すなわち、R3/R1が少なくとも10であることを保証することによって実現され得ることが分かる。
【0061】
上記されたヒータを用いて、任意の2つのランク付けされた構成間の総電気抵抗の差が過大ではないことをも保証しつつ、比較的広いダイナミックレンジを実現することが可能である。特に、電極構成の総電気抵抗が最小のRTminと最大のRTmaxとを有し、任意の2つのランク付けされた構成間の総電気抵抗の差が最大のRmaxdiffを有する場合、RTmax/RTminは、少なくとも20である(すなわち、ダイナミックレンジが少なくとも20:1である)配置を実現することが可能であり、Rmaxdiff/(RTmax-RTmin)は、35%以下である(すなわち、2つのランク付けされた構成間の最大差は、ダイナミックレンジの35%以下である)。
【0062】
電極構成の全ての可能な配列が、上述された制御システムで可能であるわけではない。特に、以下の構成、(E1+E2)//E3、(E1+E3)//E2、(E2+E3)//E1、及びE1+E2+E3を実現するためにスイッチを構成することは可能ではない。追加の構成は、望ましく、これらの欠如した構成のいくつかは、既存の構成と同様である総電気抵抗を有する可能性がある。例えば、(E1+E2)//E3は、E1//E3と同様の総抵抗を有する可能性があり、(E1+E3)//E2は、E1//E2と同様の総抵抗を有する可能性がある。考えられるのは、1つ又は複数の欠如した構成は、コンバータに2つ以上の追加のスイッチを追加することによって取得され得る。しかしながら、同じ数のスイッチに関して、はるかに多くの数の電極構成は、4つの電極対と5つのブリッジアームとを有することによって実現され得る。この特定の配置では、スイッチは、36個の可能な電極構成のうちの1つにおける電極に選択的に通電されるように構成され得る。
【0063】
ヒータ10は、異なる導電率の液体を加熱するために必要とされ得る。例えば、水道水の導電率は、国によって、さらには同じ国でも地域によって著しく変化し得る。各電極対E1-E3のベース抵抗、ひいては各電極構成の総電気抵抗は、液体の導電率に依存することとなる。特に、より低い導電率の液体の場合、各電極構成の総電気抵抗は、より高くなり、したがって、入力電力は、より低くなる。逆に、より高い導電率の液体の場合、各電極構成の総電気抵抗は、より低くなり、したがって、入力電力は、より高くなる。したがって、ヒータ10が異なる導電率の液体を加熱するために必要とされる場合、導電率の著しい変化は、液体の迅速かつ正確な加熱の両方を実現することを困難にし得る。したがって、制御ユニット47は、より良い熱制御を実現するために、液体の導電率にさらに基づいている電力設定又は電極構成を選択し得る。これが実現され得る様々な方法が存在する。例えば、ヒータ10の設置に続いて、制御ユニット47は、セットポイント温度、T_SETに基づいて電力設定(すなわち、電極構成、通電パターン、及び/又は電圧デューティ)を選択してもよい。公称導電率の液体の場合、選択された電力設定は、液体をセットポイント温度まで加熱させるべきである。しかしながら、液体の温度、TEMPがセットポイント温度を超え、或いはセットポイント温度未満の値に落ち着く場合、制御ユニット47は、セットポイント温度に達するまで電力設定(例えば、異なる電極構成、通電パターン及び/又は電圧デューティ)を調整し得る。次いで、この電力設定への調整は、制御ユニット47によって格納されてもよい。その後、異なるセットポイント温度が受信されるとき、制御ユニット47は、(公称導電率の液体に基づいて)電力設定を再び選択し、次いで、格納された調整を選択された電力設定に適用してもよい。この特定のタイプの制御は、比較的単純であり、液体の導電率が一定であるが未知である用途(例えば、水道水供給)に良く適合している。別の実施例では、制御ユニット47は、電流センサ45を利用してもよく、電流センサ45は、主に過大な電流を監視し、回避するために制御ユニット47によって使用される。所定の供給電圧に関して、ヒータ10によって取り出される電流は、電極構成の総電気抵抗に直接比例する。したがって、制御ユニット47は、液体の導電性の間接的な測定を行うために、電流測定を使用し得る。例えば、制御ユニット47は、セットポイント温度に基づいている電力設定を選択し、次いで、電源50から取り出される電流の大きさに基づいて電力設定を調整してもよい。
【0064】
上述された実施例では、ヒータ10は、3つの電極対E1-E3を含む。しかしながら、ヒータ10は、任意の数の電極対を含んでもよい。次いで、コンバータ43は、電極の各対のそれぞれのブリッジアームと、電極の全ての対に共通する共通のブリッジアームとを含む。
【0065】
既に述べられたように、共通のブリッジの提供は、電極構成の数を著しく増加させ、総電気抵抗のダイナミックレンジを拡大させるという利点を有する。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、それほど多くの電極構成及び/又は広いダイナミックレンジが必要でない用途があり得る。このケースでは、考えられるのは、共通のブリッジは、省略され得る。
【0066】
各電極構成内で、制御ユニット47は、電極30が、少なくとも150kHzの周波数を有する交流電圧で通電されるようにコンバータ43のスイッチSnを制御する。既に述べられたように、そのような高周波の交流電圧で電極30に通電することによって、液体は、電気分解が発生することなく、より小さい電極を使用して加熱され得る。電極の材質及びサイズと、印加電圧の大きさとに依存して、電気分解は、より低い周波数で回避され得る。しかしながら、少なくとも150kHzの周波数を有する交流電圧で電極に通電することによって、電極のサイズの著しい減少は、主電圧で実現され得る。
【0067】
コンバータ43は、双方向スイッチを含む。さらに、制御ユニットは、電極30が非連続的或いは無調整の電力で通電されるようにスイッチSnを制御する。より具体的には、電源50から取り出される入力電力は、正弦二乗波形を有する。その結果、制御システム40は、直接AC/ACコンバータとして動作し、制御システム40は、供給電圧を整流し、或いはACからDCへのステージ、アクティブ力率改善回路、又はエネルギー貯蔵を提供する必要なく、高周波の交流電圧で電極30に通電されることが可能である。
【0068】
上述されたヒータ10は、交流電圧を供給する電源50と共に使用されることを意図している。しかしながら、ヒータ10は、直流電圧を供給する電源50と共に同様に使用されてもよい。制御ユニット47は、各構成の電極30が交流電圧で通電されるようにコンバータ43のスイッチSnを制御し続ける。したがって、コンバータ43は、電極の各対のそれぞれのブリッジアームを含み続ける。しかしながら、供給電圧は、もはや交流ではなく、一定の極性の代わりであるので、スイッチSnが双方向である必要はない。したがって、コンバータ43のスイッチは、従来のMOSFET又はIGBTであってもよい。
【0069】
上述された実施例では、制御システム40は、液体の出力温度を感知するために使用される温度センサ44を含む。次いで、制御ユニット47は、この温度測定値を使用し、出力設定又は電極構成を選択し、或いは調整する。上述されたように、制御ユニット47はまた、電流センサ45の出力を使用し、電力設定又は電極構成を選択し、或いは調整し得る。制御システム40は、制御ユニット47が電力設定又は電極構成を選択し、或いは調整するために使用し得る、追加のセンサを含んでもよい。例えば、制御システム40は、チャンバ内の様々なポイントで液体の温度を測定するための追加の温度センサ、又は、チャンバ20内を移動する液体の流量を測定するための流量センサを含んでもよい。さらに、制御システム40は、チャンバ20内を移動する液体の流量を制御するための流量弁又は他の手段を含んでもよい。
【0070】
特定の実施形態がこれまで説明されてきたが、様々な変更は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、行われ得ることが理解されよう。