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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】部品の検査のための後方散乱X線
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/203 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01N23/203
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003360
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2017171142の分割
【原出願日】2017-09-06
(65)【公開番号】P2023040235
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】15/264,845
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ サファイ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0321046(US,A1)
【文献】特開2008-256587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0108534(US,A1)
【文献】特開2013-221745(JP,A)
【文献】特開平4-152297(JP,A)
【文献】特表2018-528586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209339(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0103686(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0106714(US,A1)
【文献】米国特許第8855268(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G21K 1/00-G21K 7/00
H05G 1/00-H05G 2/00
A61B 6/00-A61B 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の非破壊検査のための後方散乱X線装置であって、
X線エミッタと、ゾーンプレートと、検査フィルタと、を含み、前記X線エミッタは、
出射開口を有するX線シールドと、
前記X線シールド内の真空管と、
前記真空管内に封入されるとともに、電子線を生成するように動作可能な陰極と、
前記真空管内に封入されるとともに、前記陰極からの前記電子線を受けて前記電子線を硬X線に変換するように、前記陰極に対して相対配置され、且つ、前記硬X線の少なくとも一部が前記出射開口を通過するように導くべく、前記出射開口に対して相対配置された陽極と、を含み、
前記ゾーンプレートは、前記X線シールドの前記出射開口から前記硬X線の前記一部を受けるとともに、前記出射開口から受けた前記硬X線の前記一部を集束して集束硬X線を生成するように、前記X線シールドの外部において前記出射開口に対して相対配置されており、
前記検査フィルタは、前記X線エミッタ及び前記ゾーンプレートを囲んでいるとともに、当該検査フィルタの外周に沿って配置された複数のフィルタ開口を有しており、かつ各フィルタ開口は前記検査フィルタの両側面の間において、両側面のそれぞれの縁から異なる距離に配置されており、
前記検査フィルタは前記X線エミッタの周りを回転可能であ
前記ゾーンプレートは、前記検査フィルタの両側面を越えて延びる寸法に設定されている、後方散乱X線装置。
【請求項2】
前記ゾーンプレートは、複数のフレネルゾーンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ゾーンプレートにおける前記複数のフレネルゾーンのうちの少なくとも1つは、前記ゾーンプレートの焦点距離(f)に対応する少なくとも1つの半径を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ゾーンプレートには、表面処理が施されている、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記硬X線は、約60KeV~約80KeVのエネルギーレベルを有する、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記X線エミッタが接続されたベースをさらに含み、
前記検査フィルタは、前記ベースに回転可能に接続されて、前記X線エミッタから前記硬X線を受けるとともに、前記検査フィルタにおけるフィルタ開口のうちの一つを介して、前記硬X線の少なくとも一部を、部品における選択位置に向けるように動作可能であり、
前記ゾーンプレートは、前記X線エミッタと前記検査フィルタとの間に介在するとともに、前記X線エミッタから前記硬X線を受けて、前記X線エミッタから受けた前記硬X線のビームを集束させる、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記検査フィルタは、複数の開口を有する回転可能リングを含み、前記複数の開口のうちの少なくとも1つは、前記複数の開口のうちの他の1つとはサイズ、形状、又はジオメトリが異なる、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、部品の非破壊検査に関し、特に、後方散乱X線装置、システム、及び方法を用いた部品の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査、異物検出、非見通し試験(non-line-of-site examination)などの検査技術は、検査対象部品の破壊が望ましくない場合に用いられる。いくつかのX線検査技術においては、部品を透過する走査や試験が行われる。このようなX線検査技術は、国土安全保障、石油及びガスの採掘及び精製、パイプライン検査、運輸、自動車、航空宇宙、船舶、採掘、運送、並びに保管などの様々な用途に利用されている。
【0003】
いくつかの検査技術においては、部品を片側からその反対側へ透過するX線の検出が利用される。また、後方散乱X線技術などの他の検査技術においては、部品から後方反射したX線(例えば、後方散乱X線)が検出され、このX線が、部品の画像形成や分析に用いられる。後方散乱X線のパターン及び強度は、部品の材料及び構成によって決まる。したがって、後方散乱X線のパターン及び強度を用いて画像を形成し、この画像に基づいて、部品の品質、特徴、及び、欠陥を特定することができる。
【0004】
従来、後方散乱X線技術により生成される画像の質は、X線が検査対象部品に衝突する位置におけるX線のパワー密度(power density)と対応している。例えば、一般に、パ
ワー密度が高ければ、画質が良くなる。しかしながら、従来技術によれば、通常、部品に対するX線の衝突位置においてX線のパワー密度が増大すると、発熱、エネルギー消費、重量、及び、部品や運用にかかる費用などが増大して、悪影響が及ぶ可能性が高まる。
【発明の概要】
【0005】
本願の要旨は、当該技術分野の現状に鑑みて開発されたものであり、具体的には、現在の技術ではまだ完全には解決されていない、従来の後方散乱X線装置の欠点に鑑みて開発されたものである。したがって、本願の要旨は、従来技術における上記欠点のうちの少なくともいくつかを克服する、ゾーンプレートを有する後方散乱装置、並びに、これに関連する装置、システム、及び方法を提供すべく開発されたものである。
【0006】
本明細書には、部品の非破壊検査のための後方散乱X線装置が開示されている。前記装置は、X線エミッタと、ゾーンプレートと、を含む。前記X線エミッタは、X線シールドと、真空管と、陰極と、陽極と、を含む。前記X線シールドは、出射開口を有する。前記真空管は、前記X線シールド内に設けられている。前記陰極は、前記真空管内に封入されるとともに、電子線を生成するように選択的に動作可能である。前記陽極は、前記真空管内に封入されるとともに、前記陰極からの前記電子線を受けて前記電子線を硬X線ストリームに変換するように、前記陰極に対して相対配置されている。一実施形態において、X線ストリームは、当該ストリームにおけるX線のエネルギーレベルが5~10KeVよりも大きい場合に、硬X線ストリームと定義される。他の実施形態においては、X線ストリームは、エネルギーレベルが50KeVを超える場合に、硬X線ストリームと定義される。さらなる実施形態においては、X線ストリームは、当該ストリームのX線のエネルギーレベルが約60KeV~約80KeVである場合に、硬X線ストリームと定義される。他の実施形態においては、硬X線ストリームは、80KeVよりも大きいエネルギーレベルを有するX線を含む。前記陽極は、前記硬X線の少なくとも一部が前記出射開口を通過するように導くべく、前記出射開口に対して相対配置されている。前記ゾーンプレートは、前記X線シールドの外部において、前記出射開口に対して相対配置されている。前記ゾー
ンプレートは、前記X線シールドの前記出射開口から前記硬X線ストリームの前記一部を受けるとともに、前記出射開口から受けた前記硬X線ストリームの一部を集束して集束硬X線ストリームを生成する。本項における上記要旨は、本開示の例1を特徴付けるものである。
【0007】
前記ゾーンプレートは、複数のフレネルゾーンを含む。本項における上記要旨は、本開示の例2を特徴付けるものであり、例2は、上述した例1の要旨を包含する。
【0008】
前記ゾーンプレートにおける前記複数のフレネルゾーンのうちの少なくとも1つは、前記ゾーンプレートの焦点距離に対応する少なくとも1つの半径を有する。本項における上記要旨は、本開示の例3を特徴付けるものであり、例3は、上述した例1又は2のいずれかの要旨を包含する。
【0009】
前記ゾーンプレートは、少なくとも部分的に、カーボンナノチューブで作製されている。本項における上記要旨は、本開示の例4を特徴付けるものであり、例4は、上述した例1~3のいずれかの要旨を包含する。
【0010】
前記ゾーンプレートは、少なくとも部分的に、鉛で作製されている。本項における上記要旨は、本開示の例5を特徴付けるものであり、例5は、上述した例1~4のいずれかの要旨を包含する。
【0011】
前記ゾーンプレートは、表面メッキを含む。本項における上記要旨は、本開示の例6を特徴付けるものであり、例6は、上述した例1~5のいずれかの要旨を包含する。
【0012】
前記表面メッキは金である。本項における上記要旨は、本開示の例7を特徴付けるものであり、例7は、上述した例1~6のいずれかの要旨を包含する。
【0013】
前記硬X線ストリームは、約60KeV~約80KeVのエネルギーレベルを有する。本項における上記要旨は、本開示の例8を特徴付けるものであり、例8は、上述した例1~7のいずれかの要旨を包含する。また、本明細書には、部品の非破壊検査のための後方散乱X線システムが開示されている。前記システムは、ベースと、X線エミッタと、検査フィルタと、ゾーンプレートと、を含む。前記X線エミッタは、前記ベースに接続されている。前記検査フィルタは、前記ベースに移動可能に接続されており、前記X線エミッタから硬X線を受けるとともに、前記検査フィルタにおけるフィルタ開口を介して、前記硬X線の少なくとも一部を、前記部品における選択位置に向けるように選択的に動作可能である。前記ゾーンプレートは、前記X線エミッタと前記検査フィルタとの間に介在している。前記ゾーンプレートは、前記X線エミッタから前記硬X線を受けて、前記X線エミッタから受けた前記硬X線のビームパターンを変更する。本項における上記要旨は、本開示の例9を特徴付けるものである。前記システムは、検出器をさらに含み、当該検出器は、前記ベースに接続されるとともに、前記部品から後方散乱した硬X線を検出するように選択的に動作可能である。本項における上記要旨は、本開示の例10を特徴付けるものであり、例10は、上述した例9の要旨を包含する。
【0014】
前記ゾーンプレートは、前記X線エミッタから受ける前記硬X線の前記ビームパターンをさらに変更するために、前記X線エミッタに対して移動可能である。本項における上記要旨は、本開示の例11を特徴付けるものであり、例11は、上述した例9又は10のいずれかの要旨を包含する。
【0015】
前記X線エミッタ及び前記ゾーンプレートは、前記ベースに対して出射方向を変更するために、前記ベースに対して調節可能である。本項における上記要旨は、本開示の例12
を特徴付けるものであり、例12は、上述した例9~11のいずれかの要旨を包含する。
【0016】
前記ベースは、前記部品に対して前記ベースを移動させるように動作する移動システムを含む。本項における上記要旨は、本開示の例13を特徴付けるものであり、例13は、上述した例9~12のいずれかの要旨を包含する。
【0017】
前記移動システムは、ホイール、トレッド、スキッド、軌道、ローラー、ケーブル、プーリー、モーター、スライド、及びベアリングからなるグループのうちの少なくとも1つを含む。本項における上記要旨は、本開示の例14を特徴付けるものであり、例14は、上述した例9~13のいずれかの要旨を包含する。
【0018】
前記システムは、前記X線エミッタ又は前記検査フィルタに対する前記ゾーンプレートの位置を制御する制御ユニットをさらに含む。本項における上記要旨は、本開示の例15を特徴付けるものであり、例15は、上述した例9~14のいずれかの要旨を包含する。
【0019】
前記検査フィルタは、複数の開口を有する回転可能リングを含む。前記複数の開口のうちの少なくとも1つは、前記複数の開口のうちの他の1つとは異なる。本項における上記要旨は、本開示の例16を特徴付けるものであり、例16は、上述した例9~15のいずれかの要旨を包含する。
【0020】
また、本明細書には、後方散乱X線により部品の非破壊検査を行う方法が開示されている。前記方法は、ゾーンプレートにおいて、X線エミッタからの硬X線を受けることを含む。前記方法は、前記ゾーンプレートを用いて、前記硬X線を集束して集束硬X線を生成することを、さらに含む。前記方法は、前記ゾーンプレートを用いて、前記集束硬X線の少なくとも一部が、検査フィルタの第1フィルタ開口を通過して前記部品の第1部分に当たるように導くことを、さらに含む。本項における上記要旨は、本開示の例17を特徴付けるものである。
【0021】
前記方法は、前記ゾーンプレートに対して前記検査フィルタの配向を調節して、前記集束硬X線が、前記検査フィルタの第2フィルタ開口を通過して、前記部品の第2部分に当たるように導くことを、さらに含む。前記第2フィルタ開口は前記第1フィルタ開口とは異なる。本項における上記要旨は、本開示の例18を特徴付けるものであり、例18は、上述した例17の要旨を包含する。
【0022】
前記硬X線を集束するに際しては、前記硬X線を約30%~約40%集束する。本項における上記要旨は、本開示の例19を特徴付けるものであり、例19は、上述した例17又は18のいずれかの要旨を包含する。
【0023】
前記第1フィルタ開口を通過するように導かれる前記集束硬X線の前記一部は、前記X線エミッタからの前記硬X線の約60%~約70%を構成している。本項における上記要旨は、本開示の例20を特徴付けるものであり、例20は、上述した例17~19のいずれかの要旨を包含する。
【0024】
本開示の要旨について記載した特徴、構造、利点、及び/又は特徴は、1つ又は複数の実施形態及び/又は実施態様において、任意の適切な形で組み合わせることができる。下記の説明では、本開示の要旨の実施形態が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示している。当業者であればわかるように、本開示の要旨は、特定の実施形態又は実施態様の具体的な特徴、細部、部材、材料、及び/又は方法のうちの1つ又は複数が無くても、実施されうる。場合によっては、特定の実施形態及び/又は実施態様において追加の特徴及び効果が認識されることがあるが、そのような特徴や効果は、全ての実施形
態又は実施態様に存在するとは限らない。また、場合によっては、本開示の要旨の側面を不明瞭にするのを避けるため、周知の構造、材料、又は動作については、詳細に図示又は説明していない。本開示の要旨の特徴及び効果は、下記の説明及び添付の特許請求の範囲から、より明らかになるであろう。或いは、以下に記載の要旨を実施することによって分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
要旨の利点が容易に理解されるように、添付図面に図示した特定の実施形態に言及して、簡潔に上述した要旨をより詳細に説明する。なお、これらの図面は、要旨の典型的な実施形態のみを図示したものであり、要旨の範囲を限定するものではない。これを前提とした上で、図面を使用して要旨をさらに具体的かつ詳細に説明する。
【0026】
図1A】本開示の1つ又は複数の実施形態による、後方散乱X線装置を示す概略図である。
図1B】本開示の1つ又は複数の実施形態による、図1Aの後方散乱X線装置のX線エミッタを示す概略図である。
図2A】本開示の1つ又は複数の実施形態による、後方散乱X線装置を示す概略的な側方断面図である。
図2B】本開示の1つ又は複数の実施形態による、図2Aの後方散乱X線装置のX線エミッタを示す概略的な側方断面図である。
図2C】本開示の1つ又は複数の実施形態による、図2Aの後方散乱X線装置を示す概略側面図である。
図3】本開示の1つ又は複数の実施形態による、後方散乱X線システムを示す概略側面図である。
図4】本開示の1つ又は複数の実施形態による、斜視及び断面視におけるゾーンプレートを示す図である。
図5】本開示の1つ又は複数の実施形態による、ゾーンプレートの走査型電子顕微鏡写真を示す。
図6】本開示の1つ又は複数の実施形態による、後方散乱X線による部品の非破壊検査の方法を示す概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書全体において、「一実施形態」、「実施形態」、又はこれに類する用語を用いた場合、その実施形態に関連付けて説明したある特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書全体において、「一実施形態において」、「実施形態において」、又はこれに類する用語を用いた場合、必ずしもそうとは限らないが、全て同じ実施形態について言及していることもありうる。同様に、「実施態様(implementation)」という用語を用いた場合、この用語は、本開示の1つ又は複数の実施形態に関連付けて説明した特定の特徴、構造、又は特性を有する実施態様を意味する。ただし、他の相互関係が明示されていない限り、実施態様は、1つ又は複数の実施形態に関連付けることができる。
【0028】
図1Aを参照すると、後方散乱X線装置10が示されている。後方散乱X線装置10は、入射X線14を生成するX線エミッタ12と、透過X線20を生成するための複数のフィルタ開口18を有する検査フィルタ16と、ベース22とを含む。
【0029】
X線エミッタ12は、ベース22に接続されている。X線エミッタ12は、入射X線14を生成し、当該入射X線14を、検査フィルタ16におけるフィルタ開口18の近傍に投射する。入射X線14の一部(すなわち、透過X線20)のみが、フィルタ開口18を通過する。その後、透過X線20は、部品又は他の対象物を検査するのに用いられる。図
示された実施形態に示すように、透過X線20は、X線エミッタ12により生成される入射X線14のごく一部である。したがって、部品に衝突して当該部品の検査に利用されるX線のパワー密度である、透過X線20のパワー密度は、入射X線14のパワー密度よりも小さい。したがって、場合によっては、X線エミッタ12によって生成された入射X線14の大部分は、検査フィルタ16において消失する。場合によっては、X線エミッタ12は、パワー密度の損失を補うために、当該部品に必要なパワー密度よりもはるかに高いパワー密度を有する入射X線14を生成するが、結果として、効率を低減させる一因となる。
【0030】
図1Bは、図1Aの後方散乱X線装置10のX線エミッタ12を示す。X線エミッタ12は、X線シールド24を含む。さらに、X線シールド24は、出射開口26を含む。X線シールド24は、出射開口26を除いた部分で、真空管28を囲んでいる。真空管28は、陰極30及び陽極32を密封している。陰極30及び陽極32は、リード40を介して電圧供給源に接続されている。陰極30は、フィラメントフィード線42にさらに接続され、陽極32で受けられる電子線を生成するように選択的に動作可能である。陽極32は、陰極30から電子線を受けて、硬X線ストリームを生成する。硬X線ストリームは、X線シールド24の出射開口26へ導かれる。陽極32からの硬X線ストリームの一部は、出射開口26を通過するが、硬X線ストリームの他の部分は、X線シールド24によって遮断される。硬X線ストリームのうち出射開口26を通過する部分は、入射X線14である。
【0031】
図示例においては、X線エミッタ12の陽極32は、回転陽極である。しかしながら、他の例においては、X線エミッタ12の陽極32は、回転しない。陽極32は、回転子34に接続されたタングステン陽極であってもよい。回転子34は、回転子サポート36により支持されている。回転子34は、当該回転子と回転子サポート36との間の相対回転を容易にするベアリング又は他の構造体を用いて、回転子サポート36に接続可能である。回転子34は、モーター38により駆動される。モーター38に電気信号を印加することにより生成される磁界が、回転子34に力を加えて、回転子34及び陽極32を回転させる。
【0032】
例示的な実施形態においては、その後、関連する図1Aに示すように、入射X線14が、検査フィルタ16に到達する。入射X線14は、比較的発散性を有しており、フィルタ開口18は、比較的小さい寸法を有しているため、検査フィルタ16に到達する入射X線14の一部のみがフィルタ開口18を通過する。すなわち、フィルタ開口18を通過する入射X線14の一部(すなわち、透過X線20)は、入射X線14と比較すると小さく、出射開口26から出射する前に陽極32により生成されるX線と比較すると、さらに小さい。
【0033】
図2Aは、後方散乱X線装置100の概略的な断面図である。後方散乱X線装置100は、図1Aに示す後方散乱X線装置10と類似した要素を有しており、類似した要素については同様の参照符号を用いて示している。しかしながら、図2Aに示す後方散乱X線装置100は、図1Aに示す後方散乱X線装置10と比較していくつかの有利な点を有する。例えば、後方散乱X線装置100は、X線エミッタ12と検査フィルタ16のフィルタ開口18との間に介在するゾーンプレート102を含む。概して、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12から入射X線14を受けて、入射X線14を集束させることにより、集束X線104を形成する。集束X線104は、ゾーンプレート102により、検査フィルタ16のフィルタ開口18へ導かれる。集束X線104の一部は、フィルタ開口18を通過して、透過X線20を形成する。入射X線14が検査フィルタ16のフィルタ開口18を通過する前に、まず、当該放射を集束させて集束X線104を形成することにより、より多い量又は高密度のX線、つまり、より高いパワー密度を有するX線がフィルタ開
口18を通過して、検査対象の部品に衝突する。入射X線14のうち透過X線20に変換される部分は、後方散乱X線装置10と比較して、ゾーンプレート102を有する後方散乱X線装置100を用いた場合のほうが大きい。
【0034】
したがって、同じパワー密度の透過X線20を実現するために、後方散乱X線装置100は、後方散乱X線装置10よりも低いエネルギー密度で入射X線14を生成することができるので、いくつかの利点を得ることができる。例えば、後方散乱X線装置100は、後方散乱X線装置10と比較して、X線撮像領域の拡大、視野の拡大、検査角度の拡大、画像解像度の向上、画像鮮鋭度の向上、横断走査の必要な回数の低減、動的及び瞬間的視野、画像歪みの低減、画像の隅におけるピンクッション歪み(pin-cushion effect)の低減、必要な電源供給の低減、冷却要件の緩和、システム重量の低減、システム寸法の低減、携帯性の向上、試験場所を広範囲化する可能性の向上、及び、部品の長寿命化、のうちの1つ又は複数を実現することができる。
【0035】
本明細書において、集束X線104は、ゾーンプレート102により、集束X線104のX線における少なくとも一部が、X線エミッタ12からの入射X線14のX線よりも低い発散性を有するように変更されている、任意のX線又はストリームを含みうる。集束X線104は、ゾーンプレート102により、集束X線104のX線の一部が、発散モードから集束モードに変更されている、任意のX線ストリームをさらに含みうる。ゾーンプレート102は、さらに、受けたX線を発散モードから平行モードに変更することができる。いくつかの例において、ゾーンプレート102は、少なくとも部分的に集束しているモードの入射X線14を受けて、このX線をさらに集束させてもよい。これに代えて、ゾーンプレート102は、発散モードの入射X線14を受けて、入射X線14を集束させることにより、発散性を低減してもよい。
【0036】
いくつかの例においては、ゾーンプレート102は、受けたX線を約20%と約40%との間で集束させる。より具体的には、ゾーンプレート102は、約30%の集束を行うことができる。ゾーンプレート102の他の実施形態においては、集束度が、上記例よりも高くてもよいし、低くてもよい。いくつかの実施形態において、ゾーンプレート102は、約60%から約70%の入射X線14が、集束X線104としてフィルタ開口18を通過するのに十分な集束率で、当該入射X線14を集束させる。
【0037】
いくつかの実施態様においては、ゾーンプレート102は、全体的又は部分的に鉛で作製されてもよい。いくつかの実施形態においては、鉛の密度により、入射X線14に対するゾーンプレート102の効果を高めることができる。いくつかの実施形態においては、ゾーンプレート102は、カーボンナノチューブを含みうる。カーボンナノチューブは、軽量化、熱伝導及び熱冷却、並びに強度において利点を有する。さらに、ゾーンプレート102には、表面処理が施されていてもよい。表面処理は、めっき処理、ドーピング処理、硬化処理、コーティング処理、又は、他の化学的、機械的、若しくは熱的な処理を含みうる。
【0038】
ゾーンプレート102は、X線エミッタ12から一部又は全ての入射X線14を受けるように配置されてもよい。例示的な実施形態においては、ゾーンプレート102は、水平配向で示されている。しかしながら、ゾーンプレート102は、水平位置からゼロ又は非ゼロの配向(a zero or non-zero orientation)で配向されてもよい。いくつかの実施形態において、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12に対して、フィルタ開口18に対して、ベース22に対して、又は、後方散乱X線装置100上若しくは当該装置の外部における他の物理的若しくは構造上の基準点に対して、ゼロ又は非ゼロの角度で配向されてもよい。いくつかの実施形態においては、ゾーンプレート102の位置及び配向は、調節可能である。ゾーンプレート102の調節は、当該ゾーンプレート102に接続される
フレーム又は他の取り付け構造体(図示略)により容易に行うことができる。他の実施形態においては、伝導、対流、又は放射によってゾーンプレート102を冷却するために、ゾーンプレート102が冷却システムに接続される。
【0039】
例示的な実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12の外側に設けられるが、他の実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12の一部として、当該X線エミッタ12に組み込まれる。代替の実施形態においては、複数のゾーンプレート102が検査フィルタ16に接続されており、当該ゾーンプレート102が個々に各フィルタ開口18に対応しているか、或いは、これらのゾーンプレートの各々が、検査フィルタ16の複数のフィルタ開口18に対応している。
【0040】
図2Bを参照すると、図2Aのゾーンプレート102が、図1BのX線エミッタ12と比較して示されている。例示的な実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12の出射開口26に対して相対的に配置される。この配置において、ゾーンプレート102は、出射開口26を通過する入射X線14の少なくとも一部を受ける。いくつかの実施形態においては、ゾーンプレート102は、出射開口26と同軸上、或いは、これ以外の角度に配向されている。代替の実施形態においては、ゾーンプレート102は、フィルタ開口18と同軸である。例示的な実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12と検査フィルタ16との間に設けられている。いくつかの実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12に近接して、或いは検査フィルタ16に近接して設けられている。他の実施形態においては、ゾーンプレート102は、X線エミッタ12及び検査フィルタ16から等距離に設けられている。いくつかの実施態様においては、ゾーンプレート102の位置は、X線エミッタ12及び検査フィルタ16のうちの少なくとも一方に対して調節可能である。いくつかの実施形態においては、検査フィルタ16が、X線エミッタ12に対して並進又は回転する際、ゾーンプレート102は、集束X線104をフィルタ開口18に向けるために回転する。
【0041】
図2Cは、図2Aに示す後方散乱X線装置100を示す概略側面図である。例示的な実施形態は、ベース22に接続された検出器106を含む。検出器106は、検査中、部品から、後方散乱X線を受けるように配置されている。同図には、2つの検出器106が示されている。いくつかの代替の実施形態においては、後方散乱X線装置100は、2つよりも少ない数又は多い数の検出器106を含む。例えば、後方散乱X線装置100は、1つの検出器106を含んでもよく、当該検出器は、部品に対するX線の衝突位置に近接するように、検査フィルタ16の外縁部の前方に配置されていてもよい。これに代えて、後方散乱X線装置100は、3つ以上の検出器106を含んでもよく、これらの検出器が、付加的な後方散乱X線を収集し、より詳細で鮮明な部品の画像を生成するようにしてもよい。例示的な実施形態においては、検出器106は、X線エミッタ12、ゾーンプレート102、検査フィルタ16、及び/又は、フィルタ開口18から反射又は屈折するX線から遮蔽されている。一実施形態においては、検出器106は、固定配置されているが、他の実施形態においては、後方散乱X線の検出性能を向上させること、非後方散乱X線からの画像ノイズを低減させること、或いは、検査条件に対応することを目的として、検出器106をベース22に対して調節することが可能である。追加の実施形態においては、検出器106の最適位置を決定した後、検出器106をベース22に対して固定してもよい。
【0042】
図示の実施態様においては、X線エミッタ12と検査フィルタ16の内面との間にゾーンプレート102が配置されている。検査フィルタ16が、X線エミッタ12の周りを回転している間、ゾーンプレート102は同じ位置に維持される。検査フィルタ16の位置は、当該検査フィルタ16に接続されたモーター108により制御される。上述したように、いくつかの実施形態は、検査フィルタ16の内面に沿った複数の異なる位置において
、検査フィルタ16に接続された複数のゾーンプレート102を含む。複数のゾーンプレート102の各々の配置は、フィルタ開口18のうちの1つ又は複数の位置に対応している。
【0043】
図示の実施形態においては、フィルタ開口18は、検査フィルタ16の外周に沿って一定間隔で設けられており、各フィルタ開口18は、検査フィルタ16の縁から異なる距離に配置されている。いくつかの実施形態においては、フィルタ開口18は均一であるが、他の実施形態においては、フィルタ開口18は、位置、空間周波数、サイズ、形状、ジオメトリ(geometry)、材料(或いは、その欠如)、又は、他の特性によって変化する。いくつかの実施態様においては、ゾーンプレート102は、当該ゾーンプレート102からの集束X線を受容するように配置されたフィルタ開口18の特徴に基づいて、配置される。他の実施態様においては、ゾーンプレート102は固定されており、それでもフィルタ開口18の各々に対して十分な集束X線を生成可能に構成されている。
【0044】
図3は、後方散乱X線システム109を示す概略図である。図示の実施態様においては、後方散乱X線システム109は、部品110を検査するために配置されている。具体的には、X線エミッタ12が、ゾーンプレート102によって受けられる入射X線14を生成する。ゾーンプレート102は、入射X線14のビームパターンを変更して、集束X線104を生成する。集束X線104は、フィルタ開口18の位置付近で検査フィルタ16に入射する。フィルタ開口18は、集束X線104をフィルタリングして、集束X線104の一部を通過させる。いくつかの実施形態においては、透過X線20は、検査を容易にするために、部品110において、フィルタ開口18により付与された特定のパターン又は特徴を有する。フィルタ開口18を通過した透過X線20は、部品110に到達し、X線の一部が、検出器106に向かって後方散乱する。後方散乱X線112の一部は、検出器106により検出される。検出された後方散乱X線112に対応する信号が、検出器106から制御システム114に対して送信される。いくつかの実施態様においては、検査フィルタ16を回転させることにより、部品110の異なる部分がX線を受けて当該X線を後方散乱させるようにしてもよい。検出器106においてさらなる信号が生成され、制御システム114に送信される。
【0045】
いくつかの実施形態においては、制御システム114は、信号を解釈して、画像又は他の検査結果を生成する。いくつかの実施形態においては、制御システム114は、さらに、X線エミッタ12によるX線の生成、検査フィルタ16の移動、部品110に対するベース22の移動、又は、ゾーンプレート102の移動を制御したり、冷却システム又は電源を制御したり、センサや他の装置を介してシステム又は個々のコンポーネントの状態を監視したりするために、信号を供給する。制御システム114は、後方散乱X線システム109に対する接続116を含む。接続116は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。図示の実施態様においては、制御システム114は、後方散乱X線システム109とは別に設けられている。これに代えて、制御システム114は、ベース22に接続されてもよいし、後方散乱X線システム109に組み込まれてもよい。
【0046】
図4は、斜視及び断面視におけるゾーンプレート102を示す図である。例示的な実施形態においては、ゾーンプレート102は、焦点距離fを有する。システムに対して特定の焦点距離f(ゾーンプレート102から図3に示すフィルタ開口18又は部品110までの距離)が与えられると、ゾーンプレート102の半径特性を特定することができる。いくつかの実施形態においては、ゾーンプレート102には、表面処理119が施されている。表面処理119は、めっき処理、ドーピング処理、硬化処理、コーティング処理、又は、他の化学的、機械的、若しくは熱的な処理を含みうる。一例においては、表面処理119は、金メッキ処理を含む。
【0047】
同様に、フレネルゾーンプレート102の場合、当該フレネルゾーンプレート102における複数のフレネルゾーン120の半径及び対応する間隔を特定することができる。いくつかの実施態様においては、焦点距離fは、複数のフレネルゾーン120の各々の焦点Fに対応している。他の実施態様においては、フレネルゾーン120は、部品内の様々な深さでの検査を容易にするために、異なる焦点距離f又は焦点Fを有するように構成されてもよい。
【0048】
図5は、ゾーンプレート102の走査型電子顕微鏡写真200を示す。顕微鏡写真200は、複数のフレネルゾーン120を示す。顕微鏡写真200は、ゾーンプレート102の最も外側における25nmの部分を示している。この例においては、ゾーンプレート102は、63mmの直径を有し、フレネルゾーン120の数は628であり、鉛に金メッキ処理が施されてなる。他の例においては、ゾーンプレート102は、より少ない数又はより多い数のフレネルゾーンを有していてもよいし、より大きい直径又はより小さい直径を有していてもよい。また、当該ゾーンプレートに対して、他のメッキ材料又は表面処理を適用してもよいし、いずれのメッキ材料も表面処理も適用しなくてもよい。
【0049】
図6を参照すると、後方散乱X線による部品の非破壊検査の方法300が示されている。方法300は、302において、ゾーンプレートにおいてX線エミッタからの硬X線を受けることを含む。これに加えて、方法300は、304において、ゾーンプレートを用いて硬X線を集束することにより、集束硬X線を生成することを含む。方法300は、さらに、306において、ゾーンプレートを用いて、集束硬X線の少なくとも一部が、検査フィルタの第1フィルタ開口を通って部品の第1部分に当たるように導くことを含む。
【0050】
上記説明において、「上」、「下」、「上側」、「下側」、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上方」「下方」などの用語が用いられている場合がある。これらの用語は、相対的な関係を示すに際して、説明をある程度明確にするために、適所において用いられている。ただし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、及び/又は配向を示すものではない。例えば、ある物体に関して「上側」の面は、その物体を反転させることにより「下側」の面になりうる。その場合も、物体自体は同じである。さらに、「含む」、「備える」、「有する」及びこれらの変形の用語は、別段の明確な記載が無い限り、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。列挙した要素は、別段の明確な記載が無い限り、要素のいずれか又は全てが、相互に排他的及び/又は相互に包括的であることを意味するものではない。「a」、「an」、及び「the」という用語も、別段の明確な記載が無い限り「1つ又は複数」を意味する。さらに、「複数の」という用語は、「少なくとも2つ」と定義することができる。
【0051】
加えて、本明細書において、1つの要素が別の要素に「接続されている(coupled)」
と記載した場合、直接的な接続も、間接的な接続も含みうる。直接的な接続は、1つの要素が別の要素に接続されて、なんらかの接触状態にあると定義することができる。間接的な接続は、2つの要素間の接続であって、互いに直接には接触しておらず、接続された要素間に1つ又は複数の追加の要素を有する接続であると定義することができる。また、本明細書において、1つの要素を別の要素に固定すると記載した場合、直接的な固定と間接的な固定とを含みうる。また、本明細書において、「隣接する」と記載した場合、必ずしも接触を意味するものではない。例えば、ある要素は、別の要素に接触することなく、その要素に隣接している場合がある。
【0052】
本明細書において、「少なくとも1つの」という語句が列挙した要素について用いられるときは、列挙された要素の1つ又は複数を様々な組み合わせで使用する場合もあれば、列挙された要素の1つだけを必要とする場合もあることを意味する。要素とは、ある特定の対象、物、又はカテゴリーであってもよい。すなわち、「少なくとも1つの」は、列挙
された要素のうちの任意の数の要素を任意の組み合わせで使用してもよいが、列挙された全ての要素を必要とするとは限らないことを意味する。例えば、「要素Aと、要素Bと、要素Cと、のうちの少なくとも1つ」は、要素A;要素Aと要素B;要素B;要素Aと要素Bと要素C;又は、要素Bと要素C、を意味する場合がある。場合によっては、「要素Aと、要素Bと、要素Cと、のうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個の要素Aと、1個の要素Bと、10個の要素C;4個の要素Bと7個の要素C;又は、他の適切な組み合わせであってもよい。
【0053】
特に明記しない限り、本明細書に用いた「第1」、「第2」等の語句は、単に標識として用いられており、これらの用語が言及する要素に対し、順序、位置、又は階層に関する要件を課すものではない。さらに、例えば「第2の」要素について言及することによって、例えば、「第1の」要素やより小さい序数の要素、及び/又は「第3の」要素やより大きい序数の要素の存在を要件とするものでも、排除するものでもない。
【0054】
本明細書において、特定の機能を実行するように「構成された(configured to)」シ
ステム、装置、構造、物品(article)、要素、部材、又はハードウェアは、一切の変更
を要することなくその特定の機能を実行できるものを指し、何らかの変更を施せばその特定の機能を実行する可能性のあるものを指すのではない。言い換えれば、特定の機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、部材、又はハードウェアは、その特定の機能を実行することを目的として、具体的に、選択、作製、実施、利用、プログラム化、及び/又は設計されたものを指す。本明細書において用いる、「構成された」との記載は、システム、装置、構造、物品、要素、部材、又はハードウェアが既に備えている特性に言及するものであり、この特性により、当該システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行することができる。本開示において、特定の機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、部材、又はハードウェアは、この記載に加えて、あるいは、この記載に代えて、当該機能を行うように「適合化された(adapted to)」、及び/又は「動作可能な(operative to)」ものとして記載される場合もある。
【0055】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0056】
付記1.部品の非破壊検査のための後方散乱X線装置であって、
X線エミッタと、ゾーンプレートと、を含み、前記X線エミッタは、
出射開口を有するX線シールドと、
前記X線シールド内の真空管と、
前記真空管内に封入されるとともに、電子線を生成するように選択的に動作可能な陰極と、
前記真空管内に封入されるとともに、前記陰極からの前記電子線を受けて前記電子線を硬X線に変換するように、前記陰極に対して相対配置され、且つ、前記硬X線の少なくとも一部が前記出射開口を通過するように導くべく、前記出射開口に対して相対配置された陽極と、を含み、
前記ゾーンプレートは、前記X線シールドの前記出射開口から前記硬X線の前記一部を受けるとともに、前記出射開口から受けた前記硬X線の前記一部を集束して集束硬X線を生成するように、前記X線シールドの外部において、前記出射開口に対して相対配置されている、後方散乱X線装置。
【0057】
付記2.前記ゾーンプレートは、複数のフレネルゾーンを含む、付記1に記載の装置。
【0058】
付記3.前記ゾーンプレートにおける前記複数のフレネルゾーンのうちの少なくとも1つは、前記ゾーンプレートの焦点距離に対応する少なくとも1つの半径を有する、付記2
に記載の装置。
【0059】
付記4.前記ゾーンプレートは、少なくとも部分的に、カーボンナノチューブで作製されている、付記1に記載の装置。
【0060】
付記5.前記ゾーンプレートは、少なくとも部分的に、鉛で作製されている、付記1に記載の装置。
【0061】
付記6.前記ゾーンプレートには、表面処理が施されている、付記1に記載の装置。
【0062】
付記7.前記表面処理は、金メッキである、付記6に記載の装置。
【0063】
付記8.前記硬X線ストリームは、約60KeV~約80KeVのエネルギーレベルを有する、付記1に記載の装置。
【0064】
付記9.部品の非破壊検査のための後方散乱X線システムであって、
ベースと、
前記ベースに接続されたX線エミッタと、
前記ベースに移動可能に接続された検査フィルタであって、前記X線エミッタから硬X線を受けるとともに、前記検査フィルタにおけるフィルタ開口を介して、前記硬X線の少なくとも一部を前記部品における選択位置に向けるように選択的に動作可能な検査フィルタと、
前記X線エミッタと前記検査フィルタとの間に介在するとともに、前記X線エミッタから前記硬X線を受けて、前記X線エミッタから受けた前記硬X線のビームパターンを変更するゾーンプレートと、を含む後方散乱X線システム。
【0065】
付記10.前記ベースに接続されるとともに、前記部品から後方散乱した硬X線を検出するように選択的に動作可能な検出器をさらに含む、付記9に記載のシステム。
【0066】
付記11.前記ゾーンプレートは、前記X線エミッタから受ける前記硬X線の前記ビームパターンをさらに変更するために、前記X線エミッタに対して移動可能である、付記9に記載のシステム。
【0067】
付記12.前記X線エミッタ及び前記ゾーンプレートは、前記ベースに対して出射方向を変更するために、前記ベースに対して調節可能である、付記9に記載のシステム。
【0068】
付記13.前記ベースは、前記部品に対して前記ベースを移動させるように動作する移動システムを含む、付記9に記載のシステム。
【0069】
付記14.前記移動システムは、ホイール、トレッド、スキッド、軌道、ローラー、ケーブル、プーリー、マグネット、モーター、スライド、及びベアリングからなるグループのうちの少なくとも1つを含む、付記13に記載のシステム。
【0070】
付記15.前記X線エミッタ又は前記検査フィルタに対する前記ゾーンプレートの位置を制御する制御ユニットをさらに含む、付記9に記載のシステム。
【0071】
付記16.前記検査フィルタは、複数の開口を有する回転可能リングを含み、前記複数の開口のうちの少なくとも1つは、前記複数の開口のうちの他の1つとは異なる、付記9に記載のシステム。
【0072】
付記17.後方散乱X線により部品の非破壊検査を行う方法であって、
ゾーンプレートにおいて、X線エミッタからの硬X線を受けることと、
前記ゾーンプレートを用いて、前記硬X線を集束して、集束硬X線を生成することと、
前記ゾーンプレートを用いて、前記集束硬X線の少なくとも一部が、検査フィルタの第1フィルタ開口を通過して前記部品の第1部分に当たるように導くことと、を含む、方法。
【0073】
付記18.前記ゾーンプレートに対して前記検査フィルタの配向を調節して、前記集束硬X線が、前記検査フィルタの第2フィルタ開口を通過して、前記部品の第2部分に当たるように導くことをさらに含み、前記第2フィルタ開口は前記第1フィルタ開口とは異なる、付記17に記載の方法。
【0074】
付記19.前記硬X線を集束するに際して、前記硬X線を約30%~約40%集束する、付記17に記載の方法。
【0075】
付記20.前記第1フィルタ開口を通過するように導かれる前記集束硬X線の前記一部は、前記X線エミッタからの前記硬X線の約60%~約70%を構成する、付記17に記載の方法。
【0076】
本主題は、その思想又は本質的な特徴から逸脱することなく、別の具体的な形態で実施可能である。説明した実施形態は、あらゆる点において単なる例示であり、限定的なものではないと考えるべきである。特許請求の範囲の意味及び均等物の範囲内に入るすべての変形は、その範囲内に包含されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6