(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】入力デバイス及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240220BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/01 560
(21)【出願番号】P 2023047033
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲ざき▼ 充弘
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-242876(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030266(WO,A1)
【文献】特開2005-309859(JP,A)
【文献】特開平06-110595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン型の入力デバイスであって、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部と前記ペン先部との間に設けられ、前記振動発生部の振動を前記ペン先部に伝達する振動伝達体と、
前記振動発生部の前記振動伝達体に対する接続面とは逆側の後面と、前記接続面と前記後面との間にある側面とを覆うように設けられると共に、該後面及び該側面と固定され、且つ前記筐体に対して固定されたブラケットと、
を備える
ことを特徴とする入力デバイス。
【請求項2】
請求項
1に記載の入力デバイスであって、
前記振動伝達体は、剛体で形成されると共に、前記軸方向で一方側の第1端部が前記振動発生部と固定され、他方側の第2端部が前記ペン先部と固定されている
ことを特徴とする入力デバイス。
【請求項3】
ペン型の入力デバイスであって、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部と前記ペン先部との間に設けられ、前記振動発生部の振動を前記ペン先部に伝達する振動伝達体と、
を備え、
前記振動伝達体は、剛体で形成されると共に、前記軸方向で一方側の第1端部が前記振動発生部と固定され、他方側の第2端部が前記ペン先部と固定されており、
さらに、前記筐体の内部で前記ペン先部を支持するホルダを備え、
前記ペン先部は、前記ホルダが前記振動伝達体の第2端部と固定されることで、前記振
動伝達体と相対的に固定されている
ことを特徴とする入力デバイス。
【請求項4】
請求項
3に記載の入力デバイスであって、
さらに、当該入力デバイスの駆動を制御する電子部品を備え、
前記電子部品は、前記振動伝達体に固定されている
ことを特徴とする入力デバイス。
【請求項5】
ペン型の入力デバイスであって、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部の前記ペン先部側を向いた前面とは逆側の後面と、前記前面と前記後面との間にある側面とを覆うように設けられると共に、該後面及び該側面と固定され、且つ前記筐体に対して固定されたブラケット
と、
を備える
ことを特徴とする入力デバイス。
【請求項6】
情報処理装置と、ペン型の入力デバイスとを備える情報処理システムであって、
前記入力デバイスは、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部と前記ペン先部との間に設けられ、前記振動発生部の振動を前記ペン先部に伝達する振動伝達体と、
前記振動発生部の前記振動伝達体に対する接続面とは逆側の後面と、前記接続面と前記後面との間にある側面とを覆うように設けられると共に、該後面及び該側面と固定され、且つ前記筐体に対して固定されたブラケットと、
を備える
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
情報処理装置と、ペン型の入力デバイスとを備える情報処理システムであって、
前記入力デバイスは、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部と前記ペン先部との間に設けられ、前記振動発生部の振動を前記ペン先部に伝達する振動伝達体と、
を備え
、
前記振動伝達体は、剛体で形成されると共に、前記軸方向で一方側の第1端部が前記振動発生部と固定され、他方側の第2端部が前記ペン先部と固定されており、
前記入力デバイスは、さらに、前記筐体の内部で前記ペン先部を支持するホルダを備え、
前記ペン先部は、前記ホルダが前記振動伝達体の第2端部と固定されることで、前記振動伝達体と相対的に固定されている
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
情報処理装置と、ペン型の入力デバイスとを備える情報処理システムであって、
前記入力デバイスは、
細長い棒状に形成された筐体と、
前記筐体の先端部から突出するペン先部と、
前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、
前記振動発生部の前記ペン先部側を向いた前面とは逆側の後面と、前記前面と前記後面との間にある側面とを覆うように設けられると共に、該後面及び該側面と固定され、且つ前記筐体に対して固定されたブラケットと、
を備える
ことを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン型の入力デバイス、及び該入力デバイスと情報処理装置とを備える情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC、タブレット端末及びスマートフォン等の情報処理装置は、タッチスクリーンに対する入力操作にペン型の入力デバイスが用いられることがある。例えば特許文献1には、タッチパネルに対する入力に使用するタッチペンにおいて、棒状の筐体の軸方向に垂直な方向に沿って振動する振動発生装置を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような振動発生装置を備えた入力デバイスは、ハプティックペン(haptic pen)とも呼ばれ、触覚フィードバック機能を有する。触覚フィードバックは、文字等を表示するタッチスクリーンへの接触に応じて振動を発生させ、使用感を向上させるためのものである。そのため、従来の振動発生装置は、特許文献1に記載されているように筐体の軸方向に垂直な方向に沿って往復振動し、これにより使用者の指にダイレクトな振動を伝達しようとしていた。
【0005】
ところで、鉛筆やボールペンのような一般的な筆記具は、振動以外にも、筆記時に発生する音(筆記音)も使用感の向上に寄与している。しかしながら従来の入力デバイスは、このような筆記音については考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、使用感を向上することができる入力デバイス及び情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る入力デバイスは、ペン型の入力デバイスであって、細長い棒状に形成された筐体と、前記筐体の先端部から突出するペン先部と、前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係る情報処理システムは、情報処理装置と、ペン型の入力デバイスとを備える情報処理システムであって、前記入力デバイスは、細長い棒状に形成された筐体と、前記筐体の先端部から突出するペン先部と、前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、使用感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る入力デバイスを備える情報処理システムの構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、入力デバイスの内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、入力デバイスを用いて情報処理装置に対する入力動作を行っている状態を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る入力デバイスの内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る入力デバイス及び情報処理システムついての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る入力デバイス10を備える情報処理システム12の構成例を模式的に示す斜視図である。入力デバイス10は、情報処理装置14の入力操作に使用するペン型の入力デバイスである。入力デバイス10は、デジタルペン、スタイラス、電子ペン、又はスマートペン等とも呼ばれる。本実施形態では、情報処理装置14としてタブレット端末を例示する。入力デバイス10の使用対象となる情報処理装置は、タブレット端末以外、例えばノート型PCやスマートフォン等でもよい。
【0013】
情報処理装置14は、薄く扁平な平板形状を有する装置筐体16と、装置筐体16の一面を覆うタッチスクリーン18とを備える。装置筐体16の内部には、CPU等の処理装置を実装したマザーボード及びバッテリ装置等の各種の電子部品が搭載されている。
【0014】
タッチスクリーン18は、表示部18aと、タッチセンサ18bとを備える。表示部18aは、液晶や有機EL等で形成され、各種情報を表示可能である。タッチセンサ18bは、表示部18aの表面に重ねて配置される。タッチセンサ18bは、タッチスクリーン18の表面18cに対する入力デバイス10の入力動作を検出可能なタッチパネルである。情報処理装置14は、入力動作の有無を監視し、入力動作を検出した位置を特定し、入力動作に基づくデータ入力又は編集を実行することができる。情報処理装置14は、例えばタッチセンサ18bに入力デバイス10が接触した接触位置の軌跡を表示部18aに表示させる。
【0015】
図2は、入力デバイス10の内部構造を模式的に示す断面図である。
【0016】
入力デバイス10は、使用者が把持し、タッチスクリーン18の表面18cに接触しながら移動させることで、文字、記号及び図形等のデータ入力や編集に用いることができる。
図2に示すように、入力デバイス10は、筐体20と、ペン先部22と、振動発生部24と、振動伝達体26と、回路基板28と、無線通信部30とを備える。入力デバイス10の筐体20内には、さらにバッテリ装置等も搭載される。
図2において、振動発生部24と回路基板28と無線通信部30とを繋ぐ太線は、配線等によって相互に電気的に接続されていることを示すものであり、
図4及び
図5も同様である。
【0017】
筐体20は、樹脂、木材又は金属等で形成された細長い棒状の筒体である。筐体20は、真円若しくは楕円の円筒状、又は角筒状等の各種断面形状を採用できる。筐体20は、鉛筆やボールペン等の筆記具と同様、人手で把持するのに適した長さ及び太さを有する。
【0018】
ペン先部22は、タッチスクリーン18に対する入力部である。ペン先部22は、筐体20の先端部20aから突出するように設けられる。先端部20aは、先細りのテーパ形状を有し、例えば円錐台形状である。ペン先部22は、先端部20aの中心から筐体20の軸方向Aに沿って突出している。軸方向Aは、細長い棒状の筐体20の長手方向に延びる方向である。ペン先部22は、細い棒状の基端部22aが筐体20内でホルダ32に支持され、円錐状のペン先22bが筐体20外に露出している。ホルダ32は、筐体20の内部における先端付近で支持され、ペン先部22を着脱可能に又は着脱不能に支持する部品である。
【0019】
振動発生部24は、情報処理装置14から回路基板28を経た駆動信号に従って振動する。振動発生部24は、筐体20の内周面に対してブラケット34を介して支持されている。振動発生部24は、例えばリニア共振アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)で構成され、往復振動するアクチュエータ24aを備える(
図3も参照)。振動発生部24は、アクチュエータ24aの振動方向が軸方向Aに沿うように配置される。これにより振動発生部24は筐体20内で軸方向Aに沿った振動を発生する。
【0020】
振動伝達体26は、振動発生部24が発生した振動をペン先部22に対して効率よく伝達するための部材である。振動伝達体26は、例えばブロック状に形成された硬質の樹脂や金属等の剛体で形成され、高い振動伝達効率を有する。振動伝達体26は、軸方向Aで一方側の第1端部26aが振動発生部24(アクチュエータ24a)の前面24Aと固定される。振動伝達体26は、軸方向Aで他方側の第2端部26bがホルダ32と固定され、これによりペン先部22と相対的に固定される。振動伝達体26と振動発生部24及びホルダ32との固定は、例えば接着剤36を用いてがたつきなく強固に固定される。なお、例えばペン先部22がホルダ32を用いずに直接的に筐体20に支持された構成である場合には、第2端部26bはペン先部22と直接的に固定されるとよい。
【0021】
ブラケット34は、例えば樹脂や金属で形成された塊状の部材であり、例えば前端面に振動発生部24が収容される穴が設けたれた柱状部材である。ブラケット34は、振動発生部24の後面24B及び側面24Cを振動が逃げないように強固に覆う。後面24Bは振動発生部24の振動伝達体26に対する接続面である前面24Aとは逆側の面である。側面24Cは前面24Aと後面24Bとの間にある外周面である。さらにブラケット34は、筐体20に対し強固に固定され、振動を筐体20及び筐体20を保持する指に同時に伝達する。ブラケット34と振動発生部24及び筐体20とは、例えば接着剤36を用いてがたつきなく強固に固定される。
図2中の参照符号20bは、筐体20の内部空間を軸方向Aに直交する方向に埋める節状の部材であり、ブラケット34の後面と固定される筐体20の一部である。
【0022】
回路基板28は、筐体20内で支持されている。回路基板28は、入力デバイス10の制御基板であり、例えばMCU(Micro Controller Unit)38を実装している。MCU38は、入力デバイス10の機能を統括的に制御する処理装置である。MCU38は、プロセッサと、ROMやRAM等のメモリと、各種の入出力インタフェースを備える。MCU38は、情報処理装置14とは独立に稼働する。
【0023】
無線通信部30は、情報処理装置14の無線通信部46(
図3参照)と無線データを送受信するための無線通信モジュールである。
【0024】
次に、情報処理システム12の機能構成の一例について説明する。
【0025】
図3は、一実施形態に係る情報処理システム12の機能構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、情報処理システム12は、情報処理装置14と、入力デバイス10とを備える。
【0026】
情報処理装置14は、タッチスクリーン18と、制御部40と、タッチ・ペンモジュール42と、描画アプリ44と、無線通信部46とを備える。タッチスクリーン18は、上記したように表示部18a及びタッチセンサ18bを有する。
【0027】
制御部40は、情報処理装置14の機能を統括的に制御する。制御部40は、例えばCPU等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。本実施形態の制御部40は、OS(Operating System)等のソフトウェアとCPU等の処理装置とを含む。
【0028】
タッチ・ペンモジュール42は、制御部40と連係し、タッチスクリーン18及び入力デバイス10を制御する。タッチ・ペンモジュール42は、例えばCPU等を実装したマザーボードに接続されたサブカードとして構成されてもよい。描画アプリ44は、タッチ・ペンモジュール42を介してタッチスクリーン18や入力デバイス10を制御するアプリケーションソフトウェアである。無線通信部46は、入力デバイス10の無線通信部30と無線データを送受信するための無線通信モジュールである。
【0029】
入力デバイス10は、MCU38と、無線通信部30と、振動発生部24とを備える。
【0030】
MCU38は、情報処理装置14から無線通信部30を用いて振動制御情報及び音制御情報入力される。音制御情報及び振動制御情報は、例えばタッチ・ペンモジュール42が制御部40とも連係し、入力デバイス10のタッチスクリーン18に対する入力動作時の振動周波数等を制御し、同時にこの振動によって発生する音(筆記音)の大きさや周波数等を制御するための情報である。MCU38は、これら制御情報を用いて駆動信号を合成する。MCU38は、合成した駆動信号を振動発生部24に出力する。
【0031】
振動発生部24は、アクチュエータ24aと、DAC24bと、アンプ24cとを備える。DAC(Digital-to-Analog Converter)24bは、MCU38から入力されるデジタルの駆動信号をアナログの駆動信号に変換する。DAC24bは、変換されたアナログの駆動信号をアンプ24cに出力する。アンプ(amplifier)24cは、DAC24bから入力される駆動信号の振幅を調整し、振幅を調整した駆動信号をアクチュエータ24aに出力する。アクチュエータ24aは、アンプ24cから入力される駆動信号に従って振動を発生する振動発生源であり、発生させた振動に基づく音を発生する音発生源でもある。
【0032】
次に、入力デバイス10による入力動作及びその作用効果について説明する。
【0033】
図4は、入力デバイス10を用いて情報処理装置14に対する入力動作を行っている状態を模式的に示す図である。
図4に示すように、入力デバイス10の入力動作は、ペン先22bをタッチスクリーン18の表面18cに接触させて移動させる。そうすると、入力デバイス10は、タッチ・ペンモジュール42から描画アプリ44及び制御部40を経た制御情報を受信する。入力デバイス10は、この制御信号に基づきMCU48の制御下に振動発生部24に所定の駆動信号を入力し、アクチュエータ24aを駆動して振動を発生させる。
【0034】
ここで、本実施形態のアクチュエータ24aは、棒状の筐体20の軸方向(長手方向)Aに沿った振動を発生し、同時に振動によって音も発生する。アクチュエータ24aからの音声信号を含む振動は、振動伝達体26を経てペン先22bからタッチスクリーン18の表面18cに伝達され、表面18c上を拡散する。
図4中の表面18c上に示す波線は、ペン先22bから表面18cに伝達された振動及び音の広がりを模式的に示したものである。
【0035】
これによりアクチュエータ24aが生じた音は、表面18cで拡散及び増幅され、使用者が聴覚で十分に認識可能な音Sとして生成される。その結果、使用者は、音Sを入力デバイス10による筆記音として聞きながら入力動作を行うことができ、鉛筆やボールペン等の筆記具と類似した高い使用感が得られる。なお、ペン先22bからの振動が表面18cで増幅される効果は、例えば振動している音叉を壁等の平面に当てると振動が伝達されて音が大きく聞こえる効果と同様と言うこともできる。
【0036】
すなわち、従来の一般的なハプティックペンは、振動を使用者に与えて触覚による使用感の向上を目的としたものであるため、アクチュエータの振動方向を筐体の軸方向に直交する方向に設定していた。そして、このようなアクチュエータの振動は、人間が感じやすい周波数である150~300Hz程度で共振するように設定されていた。そのため、従来のハプティックペンでは、振動によって十分な音を発生させることは難しかった。
【0037】
この点、本実施形態の入力デバイス10は、筐体20の内部で支持され、筐体20の軸方向Aに沿った振動を発生する振動発生部24を備える。このため、当該入力デバイス10は、振動発生部24からの軸方向Aの振動及びこれに同期して生じた音が効率よくペン先部22に伝達される。そして、ペン先部22に伝達された振動及び音は、タッチスクリーン18の表面18cに効率よく伝達される。その結果、入力デバイス10は、表面18cで増幅された音Sがペン先22b付近から発生するため、使用者は一般的な筆記具と同等の筆記音を良好に聞くことができ、使用感が向上する。
【0038】
しかも当該入力デバイス10は、音Sの発生を筐体20内に搭載した振動発生部24で発生させる構成としている。このため、入力デバイス10は、ペン先22b付近から発せられる音Sに加えて、さらに振動発生部24から直接的に指先に伝達される振動による使用感の向上も得られるという利点もある。
【0039】
ところで、入力デバイス10の筆記音は、例えば情報処理装置14のスピーカーから発生させる構成も考え得る。ところが、この場合は、スピーカーによって十分な音量は出せるが、音の発生位置及び振動との同期を得ることは難しく、使用者に違和感を与えることになる。この点、本実施形態の入力デバイス10は、音Sがペン先22b付近から発生するため音の発生位置は筆記位置と同期する。さらに入力デバイス10は、音Sと振動も同期するため、違和感のない高い使用感が得られるという利点がある。
【0040】
なお、入力デバイス10は、振動発生部24での振動の共振周波数を人間が感じることができない周波数(例えば500Hz以上)とし、音Sのみで使用感を与える制御を実行可能としてもよい。このような制御は、例えば情報処理装置14の制御部40の制御下に回路基板28に搭載した500Hz未満の周波数をカットするローパスフィルタを必要に応じて切り替えて使用することで実現してもよい。そうすると、入力デバイス10は、振動が苦手な使用者に対しては筆記音のみを与えるといった使用が可能となり、汎用性が向上する。
【0041】
当該入力デバイス10は、振動発生部24とペン先部22との間に設けられ、振動発生部24の振動をペン先部22に伝達する振動伝達体26を備えてもよい。そうすると、振動発生部24で発生した振動が一層効率よくペン先部22に伝達されるため、音Sの音量を一層増大することができる。特に、振動伝達体26は剛体であると、振動発生部24の振動をより一層効率よくペン先部22に伝達可能となるため好ましい。さらに入力デバイス10は、ペン先部22を支持するホルダ32と振動伝達体26とを固定したことで、振動の伝達を一層効率的なものとすることができる。
【0042】
当該入力デバイス10は、振動発生部24の後面24B及び側面24Cを強固に覆い、且つ筐体20に対して固定されたブラケット34を備えてもよい。そうすると、振動発生部24が発生した振動は、後面24B及び側面24Cを介して減衰してしまうことが抑制される。さらに、ペン先部22や振動伝達体26に対する振動伝達効率が向上し、同時に筐体20及び筐体20を保持する指に対する振動伝達効率も向上する。振動伝達体26を省略し、振動発生部24とホルダ32を直接的に接続してもよい。この場合にも入力デバイス10はブラケット34を備えることで、振動発生部24の振動がペン先部22に効率よく伝達される。
【0043】
図5は、変形例に係る入力デバイス10Aの内部構造を模式的に示す断面図である。
図5において、
図1~
図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0044】
図5に示す入力デバイス10Aは、
図2に示す入力デバイス10の振動伝達体26とは構成の異なる振動伝達体50を備える。上記した振動伝達体26はブロック状の剛体で構成されていた。これに対して、振動伝達体50は内側に中空部50aを有する中空形状の剛体で構成されている。振動伝達体50の材質等は振動伝達体26と同一又は同様でよい。振動伝達体50の中空部50aには、例えば回路基板28が収容され、接着剤等で固定されている。
【0045】
入力デバイス10Aは、さらに、振動伝達体50の第2端部26bとホルダ32との間には、それぞれに接着剤36で固定されたセンサ52が設けられている。センサ52は、例えばペン先部22の表面18cへの接触を検知するセンサである。
【0046】
当該入力デバイス10Aにおいても上記した入力デバイス10と同様な違和感のない音Sを出力できるため、使用感を向上させることができる。さらに入力デバイス10Aは、振動伝達体50を筐体20内に収容しつつ、その収容スペースの確保が容易となる。言い換えれば入力デバイス10Aは、回路基板28やセンサ52等の電子部品を振動伝達体50に固定することで、これら電子部品の設置スペースの確保と安定した支持が可能となる。なお、センサ52は、
図2に示す入力デバイス10においてもホルダ32と振動伝達体26との間に介在させてもよいし、他の位置に設けてもよい。
【0047】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A 入力デバイス
12 情報処理システム
14 情報処理装置
18 タッチスクリーン
20 筐体
20a 先端部
22 ペン先部
22b ペン先
24 振動発生部
24a アクチュエータ
26,50 振動伝達体
【要約】
【課題】使用感を向上することができる入力デバイス及び情報処理システムを提供する。
【解決手段】入力デバイスは、ペン型の入力デバイスであって、細長い棒状に形成された筐体と、前記筐体の先端部から突出するペン先部と、前記筐体の内部で支持され、前記筐体の長手方向に延びる軸方向に沿う振動を発生する振動発生部と、を備える。
【選択図】
図4