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特許7440718抗インテグリンα11モノクローナル抗体、およびその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】抗インテグリンα11モノクローナル抗体、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P1/16
A61P1/18
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P43/00 105
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020503657
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019008202
(87)【国際公開番号】W WO2019168176
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018036933
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523469342
【氏名又は名称】横崎 恭之
(73)【特許権者】
【識別番号】523469353
【氏名又は名称】西道 教尚
(72)【発明者】
【氏名】横崎 恭之
(72)【発明者】
【氏名】西道 教尚
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-514413(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069627(WO,A1)
【文献】Experimental & Molecular Medicine,2017年11月17日,Vol. 49, e396,<DOI: 10.1038/emm.2017.213>
【文献】J. Cell. Physiol.,2014年06月24日,Vol. 230,pp. 327-336,<DOI: 10.1002/jcp.24708>
【文献】西道教尚 ほか,インテグリンα11β1機能阻害モノクローナル抗体の樹立と活性評価,第41回日本分子生物学会年会[online],3P-0261,2018年11月09日,[retrieved on 2018.11.27], Retrieved from the Internet: <URL: https://www2.aeplan.co.jp/mbsj2018/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグリンα11と少なくともI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンとの結合を阻害する、抗インテグリンα11モノクローナル抗体であり、
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2
(c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR3
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1
(e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2
(f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR3を含む抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【請求項2】
細胞接着阻害活性および細胞剥離活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、請求項1に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【請求項3】
インテグリンα11に特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【請求項4】
種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11に特異的に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【請求項5】
(g)配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および
(h)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項8】
有効成分として、請求項1~のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体含む、線維化疾患の処置剤。
【請求項9】
前記線維化疾患が、肺線維症、肝線維症、腎硬化症、心筋症、肝硬変、膵線維化および強皮症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患である、請求項に記載の処置剤。
【請求項10】
線維化疾患の処置剤の製造における、請求項1~のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、請求項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項に記載のベクターの使用。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体含む、線維化疾患の診断薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗インテグリンα11モノクローナル抗体、前記抗体をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドを含むベクター関する。本発明はまた、前記抗体、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンα11サブユニット(以下、単に「インテグリンα11」または「α11」と称することもある。)は、インテグリンβ1サブユニットとダイマーを形成し、コラーゲンとの結合活性を有する細胞接着分子の一つである。
【0003】
インテグリンα11は、組織の線維化に関与することが知られている(非特許文献1)。したがって、インテグリンα11は、組織の線維化に関連する疾患、例えば、線維化疾患の有力な治療標的であると考えられており、インテグリンα11を標的とした医薬の開発が試みられている(非特許文献2)。例えば、非特許文献2では、siRNAを用いてインテグリンα11の発現を抑制することにより、肝硬変への移行を防ぐことができたことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Sergio Carracedo et. al.,J Biol Chem., 285(14):10434-10445, 2010.
【文献】Ruchi Bansal et. al., Exp Mol Med., 49(11):e396, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでのところ、線維化疾患の治療に適用可能な、インテグリンα11に結合するモノクローナル抗体は見出されていない。
【0006】
本発明の一態様は、新規な抗インテグリンα11モノクローナル抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、新規な抗インテグリンα11モノクローナル抗体を取得することに成功し、そのアミノ酸配列を特定することにより、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を包含する。
<1>インテグリンα11とコラーゲンとの結合を阻害する、抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<2>細胞接着阻害活性および細胞剥離活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、<1>に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<3>インテグリンα11に特異的に結合する、<1>または<2>に記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<4>種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11に特異的に結合する、<1>~<3>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<5>(a)以下の(a1)~(a3)のいずれかである重鎖可変領域CDR1:
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(a3)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(b)以下の(b1)~(b3)のいずれかである重鎖可変領域CDR2:
(b1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(b3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(c)以下の(c1)~(c3)のいずれかである重鎖可変領域CDR3:
(c1)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(c2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(c3)配列番号3で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(d)以下の(d1)~(d3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR1:
(d1)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d2)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(d3)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(e)以下の(e1)~(e3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR2:
(e1)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(e2)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(e3)配列番号5で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;および(f)以下の(f1)~(f3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR3:
(f1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f2)配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(f3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド、を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<6>(g)以下の(g1)~(g3)のいずれかである重鎖可変領域:
(g1)配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(g2)配列番号7で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;
(g3)配列番号7で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;および
(h)以下の(h1)~(h3)のいずれかである軽鎖可変領域:
(h1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(h2)配列番号8で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;
(h3)配列番号8で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド、を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<7>(a)以下の(a1)~(a3)のいずれかである重鎖可変領域CDR1:
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(a3)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(b)以下の(b1)~(b3)のいずれかである重鎖可変領域CDR2:
(b1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(b3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(c’)以下の式(1)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域CDR3;
G(X)C(X)GDAACIDA ・・・(1)
(式中、
は、S、HまたはEであり、
は、A、T、F、S、MまたはEであり、
は、G、D、VまたはAであり、
は、WまたはDであり、
は、Wであり、
は、Mである。);
(d)以下の(d1)~(d3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR1:
(d1)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d2)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(d3)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(e)以下の(e1)~(e3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR2:
(e1)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(e2)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(e3)配列番号5で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;および
(f)以下の(f1)~(f3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR3:
(f1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f2)配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(f3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド、を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
<8><5>~<7>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
<9><8>に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
<10>有効成分として、<1>~<7>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、<8>に記載のポリヌクレオチドまたは<9>に記載のベクターを含む、線維化疾患の処置剤。
<11>前記線維化疾患が、肺線維症、肝線維症、腎硬化症、心筋症、肝硬変、膵線維化および強皮症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患である、<10>に記載の処置剤。
<12>線維化疾患の処置剤の製造における、<1>~<7>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、<8>に記載のポリヌクレオチドまたは<9>に記載のベクターの使用。
<13><1>~<7>のいずれかに記載の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、<8>に記載のポリヌクレオチドまたは<9>に記載のベクターを含む、線維化疾患の診断薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、線維化疾患を処置するための新規な手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様における抗体の可変領域のアミノ酸配列を示す図である。
図2】本発明の一態様における抗体のインテグリンα11に対する反応性を、FACSにより解析した結果を示す図である。(a)は、CHO細胞(コントロール)を、(b)は、ヒトインテグリンα11導入CHO細胞をそれぞれ用いた。
図3】(a)は、SW480細胞がインテグリンα1、2を発現していることを、FACSにより確認した結果を示す図である。(b)は、本発明の一態様における抗体のインテグリンα1、2に対する非反応性を、SW480細胞を用いて、FACSにより解析した結果を示す図である。
図4】(a)は、ヒトインテグリンα10導入CHO細胞がインテグリンα10を発現していることを、ウエスタンブロッティングにより確認した結果を示す図である。(b)は、本発明の一態様における抗体のインテグリンα10に対する非反応性を、ヒトインテグリンα10導入CHO細胞を用いて、FACSにより解析した結果を示す図である。
図5】本発明の一態様における抗体のラット肝星細胞への反応性を、FACSにより解析した結果を示す図である。(a)は、培養5日目、(b)は、培養10日目の結果をそれぞれ示す。
図6】本発明の一態様における抗体のラットインテグリンα11導入CHO細胞への反応性を、FACSにより解析した結果を示す図である。(a)は、CHO細胞(コントロール)に対する抗体の反応性、(b)は、ラットインテグリンα11導入CHO細胞に対する抗体の反応性をそれぞれ示す。
図7】本発明の一態様における抗体の細胞接着阻害活性を解析した結果を示す図である。
図8】本発明の一態様における抗体の細胞剥離活性を解析した結果を示す図である。
図9】本発明の一態様における抗体の細胞伸展阻害活性を解析した結果を示す図である。
図10】本発明の一態様における抗体の筋線維芽細胞化阻害試験の結果を示す図である(後述する実施例の6.(実験1))。
図11】本発明の一態様における抗体の筋線維芽細胞化阻害試験の結果を示す図である(後述する実施例の6.(実験2))。
図12】本発明の一態様における抗体の筋線維芽細胞化阻害試験の結果を示す図である(後述する実施例の6.(実験3))。
図13】本発明の一態様における抗体および改変抗体の重鎖可変領域CDR3内の一部のアミノ酸配列を示す図である。図中、下線部は、ホットスポットを示す。
図14】本発明の一態様における抗体について、特定のコラーゲン濃度における細胞接着阻害試験の結果を示す図である(後述する実施例の4.)。
図15】本発明の一態様における抗体について、特定のコラーゲン濃度における細胞接着阻害試験の結果を示す図である(後述する実施例の4.)。
図16】ヒト、マウスおよびニワトリにおける、インテグリンα11のI-ドメインタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0011】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
本明細書において、「遺伝子」とはヌクレオチドの重合体を意図し、「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」と同義で使用される。遺伝子は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)でも存在しうるし、RNA(例えば、mRNA)の形態でも存在しうる。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。遺伝子は化学的に合成してもよい。また、本明細書において「ポリヌクレオチド」と記載した場合、DNAであってもよいし、RNAであってもよい。
【0013】
本明細書において、「タンパク質」は、「ペプチド」または「ポリペプチド」と同義で使用される。
【0014】
本明細書中、塩基およびアミノ酸の表記は、IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を適宜使用する。
【0015】
〔1.抗体〕
本発明の一実施形態に係る抗体は、インテグリンα11とコラーゲンとの結合を阻害する、抗インテグリンα11モノクローナル抗体(以下、「本発明の抗体」と称する。)である。
【0016】
インテグリンは、一般的にα鎖とβ鎖とからなるヘテロダイマーとして細胞膜表面に存在する受容体であり、おもに細胞外マトリックスの受容体として機能することが報告されている。サブユニットには18のα鎖と8つのβ鎖があり、計24種類のインテグリンが存在することが知られている。
【0017】
その中で、本発明の抗体の標的分子であるインテグリンα11は、β1とヘテロダイマーを形成するインテグリンであり、コラーゲンとの結合活性を有する。インテグリンα11の過剰な発現は、組織の線維化を促進するため、インテグリンα11は、線維化疾患(例えば、組織の線維化、腫瘍等)に関与すると考えられていた。そこで、これまで多くの研究者により、線維化疾患に対する抗体医薬の開発を目的として、インテグリンα11に対するモノクローナル抗体の取得が試みられてきた。しかし、そのような多くの研究にもかかわらず、これまでのところ、インテグリンα11に対するモノクローナル抗体の取得には至っていない。その理由としては、動物を宿主とした抗体産生は、異種タンパク質を抗原として用い、宿主タンパク質との違いから生じる抗原性に基づいている。ところが、α11は、哺乳動物間で良く保存されており(すなわち、それらのアミノ酸配列の相同性が高く)、汎用宿主であるマウスをヒトのα11で免疫しても、異物としての反応の程度が弱いと考えられる。ラット、ウサギを用いた場合も同様と考えられる。ところが、本発明におけるように、ニワトリを宿主とした場合、鳥類と哺乳類の間ではタンパク質の違いが大きく、ヒトもしくはマウスα11は、高い抗原性を有していたと考えられる。
【0018】
本発明者らは、抗インテグリンα11モノクローナル抗体を取得するべく、鋭意検討を重ねた結果、マウスインテグリンα11のI-ドメインタンパク質(図16)を用いてニワトリを免疫し、免疫後のニワトリの脾臓から得られたリンパ球由来のRNAを基にscFvファージ抗体ライブラリーを作製してスクリーニングを行うことにより、初めてその取得に成功した。
【0019】
本発明の抗体は、以下の特徴を有する。
・インテグリンα11とコラーゲンとの結合を阻害する活性を有する(実施例の4.を参照)。
・細胞接着阻害活性を有する(実施例の4.を参照)。
・細胞剥離活性を有する(実施例の5.を参照)。
・細胞伸展阻害活性を有する(実施例の5.を参照)。
・組織線維化阻害活性を有する(実施例の6.を参照)。
・インテグリンα11に特異的に結合する(実施例の2.を参照)。
・種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11に結合する(実施例の3.を参照)。
【0020】
上記特徴の中でも、特に、細胞剥離活性については、それらの活性を有する抗体についての報告がほとんどなかった。また、細胞剥離活性のメカニズムについても、ほとんど解明されていなかった。このような状況下、本発明者らは抗インテグリンα11モノクローナル抗体の取得に成功し、その抗体が上記のような活性を有していることは、驚くべきことであった。したがって、本発明の抗体は、上記の効果を有することにより、線維化疾患の処置等において極めて有効であることが期待される。
さらに、本発明者らは、上記で得られた本発明の抗体につき、親和性の観点から詳細な検討を行った。具体的には、抗体の親和性決定には、重鎖可変領域CDR3が最も重要であると考えられている。抗体には、親和性成熟の過程で高頻度に変異が生じる部位であるホットスポットが存在することが知られている。このホットスポット部位に、試験管内で変異を導入することにより、高親和性の改変抗体が作出された例が報告されている(Chowdhury PS et alo, Nat. Biotechnol.,1999 Jun; 17(6):568-72)。
そこで、上記で得られた本発明の抗体につき、重鎖可変領域CDR3を種々改変して検討を行ったところ、上記抗体よりもさらに細胞接着阻害活性が高い抗体を得ることに成功した。したがって、このような重鎖可変領域CDR3が改変された細胞接着阻害活性が高い抗体もまた、本発明の抗体に含まれる。
【0021】
本明細書において、「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子を意味する。
【0022】
本明細書において、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量のみ存在し得る、自然に生じることが可能な突然変異を除いて、同一であるものを含む。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに対応する。モノクローナル抗体の製造方法は、特に限定されることなく、当技術分野における任意の方法を用いることができる。例えば、本発明の抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497.)、組換え法(米国特許第4816567号)、ファージ抗体ライブラリーからの単離(Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352 (6336):624-628.またはMarks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597.)、モノクローナル抗体の一般的生産方法(タンパク質実験ハンドブック、羊土社(2003):92-96.)等により製造され得る。本発明の抗体は、好ましくは、後述する実施例に記載された方法により、製造される。
【0023】
本発明の抗体は、種々の形態を包含し、例えば、完全長の抗体だけでなく、抗体の断片を用いた低分子抗体であり得る。低分子抗体としては、例えば、Fv、Fab、F(ab')、Fab'、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv、dsFv)、CDRを含むペプチド、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)等が挙げられる。本発明の抗体はまた、マウス-キメラ抗体、ニワトリ-キメラ抗体、ヒト化抗体等であってもよい。本発明の抗体はさらに、既存の化学合成医薬品原体もしくは医薬品製剤に結合した低分子抗体、または糖鎖改変抗体の形態であってもよい。上記種々の形態の抗体については、例えば、Antibodies - A laboratory Manual -, Edward A. Greenfield Ed, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY等に記載されている。
【0024】
なお、本発明の抗体は、治療薬として使用する際に免疫原性を低減させるために、または安定性を高めるために、適宜、上記種々の形態が選択され得る。例えば、免疫原性を低減させるために、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体等が好ましく用いられる。
【0025】
上記のような低分子抗体を得るには、公知のクローン化技術や化学合成法によって製造することが可能である。例えば、クローン化技術を利用すれば、上記の抗体断片(低分子抗体)をコードするDNAを調製し、これを自律複製可能なベクターに挿入して組換えDNAとし、これを大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母、糸状菌、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞などの適宜宿主に導入して形質転換体とし、その培養物から本アミノ酸配列を含むペプチドを採取することができる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E.,
Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9,
132-137参照)。
【0026】
また、上記の低分子抗体をコードするDNAを調製し、小麦胚芽や大腸菌細胞抽出液などを用いて無細胞タンパク質合成系により合成することもできる。また、「固相法」又は「液相法」等の慣用のペプチド化学合成法を利用して、アミノ酸を逐次、脱水縮合させて伸長させても上記低分子抗体を得ることができる。
【0027】
本発明の抗体は、細胞接着阻害活性および細胞剥離活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する。
【0028】
本明細書において、「細胞接着阻害活性」は、インテグリンα11を有する細胞と、コラーゲンとの結合を阻害する活性を意味する。すなわち、本発明の抗体は、未結合状態のインテグリンα11を有する細胞と、コラーゲンとが結合することを阻害する活性を有する。接着阻害は、α11の形成するインテグリンα11β1とリガンドとが結合できないために生じる現象であり、リガンド結合により生じるα11β1由来の細胞内シグナル伝達が消失することを反映する。本発明の抗体は、細胞接着阻害活性を有することにより、組織の線維化を予防したり、線維化の進行を抑制したりすることができる。細胞接着阻害活性の測定は、特に限定されることなく、当分野における任意の方法を用いて行うことができる。細胞接着阻害活性は、例えば、後述する実施例に記載した方法により測定することができる。また、細胞接着阻害活性は、細胞接着阻害の結果として生じる細胞伸展阻害活性または組織線維化阻害活性によっても評価することができる。
【0029】
本明細書において、「細胞剥離活性」は、コラーゲン上からインテグリンα11を有する細胞を解離させる活性を意味する。すなわち、本発明の抗体は、結合状態のインテグリンα11β1とコラーゲンとを解離させる活性を有する。本発明の抗体は、細胞剥離活性を有することにより、線維化した組織を治療することができる。細胞剥離活性の測定は、特に限定されることなく、当分野における任意の方法を用いて行うことができる。細胞剥離活性は、例えば、後述する実施例に記載した方法により測定することができる。
【0030】
なお、これまでのところ、細胞剥離活性のメカニズムについて、結晶解析などによる直接的な証明はなされてない。しかし、阻害抗体のエピトープとリガンド結合部位が、インテグリンαサブユニット上で、少なくとも一部重複するか(競合型)、あるいはやや離れた位置にあるか(アロステリック型)、が関与すると考えられている(Mould AP, Biochem J., 464(3):301-13, 2014, Mould AP, J Biol Chem., 291:20993-1007, 2016参照)。
【0031】
本発明の抗体は、インテグリンα11に特異的に結合する。
【0032】
本明細書において、「特異的に結合する」は、標的物にのみ結合し、その他の物には結合しないことを意味する。「特異的に結合する」はまた、標的物にのみ優先的に結合することを含む。後述する実施例で示すように、本発明の抗体は、インテグリンα11に結合するが、インテグリンα11と構造が類似するインテグリンα1、インテグリンα2およびインテグリンα10への結合活性を示さない。したがい、本発明の抗体は、インテグリンα11に対して特異性を有すると考えられる。
【0033】
本発明の抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11に特異的に結合する。
【0034】
本発明の抗体は、後述する実施例において、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11(実施例では、ヒトおよびラットインテグリンα11)に結合することが実証されている。そのため、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα11に交差反応性を有する抗インテグリンα11モノクローナル抗体を得ることができる。
【0035】
本明細書において、「交差反応性」は、ある抗体が、類似構造を有している2種以上の抗原に対して、いずれにも有意な結合親和性を持つ性質を総称する。ここで、類似構造を有する抗原とは、相同性が高いタンパク質を含む。
【0036】
本発明の抗体は、例えば、ヒト、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、チンパンジー等のα11に交差反応性を示し、好ましくは、ヒト、マウス、ラット、サルに、より好ましくは、ヒト、マウスのα11に交差反応性を示す。
【0037】
本発明の抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物に結合できるため、複数種類の哺乳動物に対して効果を検証することが要求される、前臨床試験における処置剤等として、好適に使用できる。
【0038】
本発明の抗体は、以下で示す抗体である。
(a)以下の(a1)~(a3)のいずれかである重鎖可変領域CDR1:
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(a3)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(b)以下の(b1)~(b3)のいずれかである重鎖可変領域CDR2:
(b1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(b3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(c)以下の(c1)~(c3)のいずれかである重鎖可変領域CDR3:
(c1)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(c2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(c3)配列番号3で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(d)以下の(d1)~(d3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR1:
(d1)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d2)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(d3)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(e)以下の(e1)~(e3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR2:
(e1)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(e2)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(e3)配列番号5で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;および(f)以下の(f1)~(f3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR3:
(f1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f2)配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(f3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド、を含む、抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【0039】
前記(a)のポリペプチドについて具体的に説明する。(a)のポリペプチドは、本発明の抗体において、重鎖可変領域CDR1を構成する。
【0040】
前記(a1)の配列番号1は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長5アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0041】
前記(a2)のポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、重鎖可変領域CDR1としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。ここで欠失、置換または付加されてもよいアミノ酸の数は、前記機能を失わせない限り、限定されてないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の導入法によって欠失、置換または付加できる程度の数をいい、好ましくは3アミノ酸以内(例えば、3、2または1アミノ酸)である。また、明細書中において「変異」とは、部位特異的突然変異誘発法等によって人為的に導入された変異を主に意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
【0042】
変異するアミノ酸残基は、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されていることが好ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)が挙げられる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。さらに、標的アミノ酸残基は、共通した性質をできるだけ多く有するアミノ酸残基に変異させることがより好ましい。
【0043】
本明細書において「機能的に同等」とは、対象となるポリペプチドが、目的とするポリペプチドと同等(同一および/または類似)の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。生物学的な性質には発現する部位の特異性や、発現量等も含まれ得る。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが重鎖可変領域CDR1としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0044】
ポリペプチドが、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチドおよび上記(b)~(f)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。具体的な判定方法は特に限定されず、当分野で既知の任意の方法を用いることができる。
【0045】
前記(a3)のポリペプチドも、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、重鎖可変領域CDR1としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。アミノ酸配列の相同性とは、アミノ酸配列全体(または機能発現に必要な領域)で、少なくとも80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の相同性を有することを意味する。アミノ酸配列の相同性は、BLASTN(核酸レベル)やBLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215: 403-410, 1990) を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993) に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore =100、wordlength =12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore =50、wordlength =3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。
【0046】
本明細書において「相同性」とは、性質が類似のアミノ酸残基数の割合(homology、positive等)を意図しているが、より好ましくは、同一のアミノ酸残基数の割合、すなわち同一性(identity)である。なお、アミノ酸の性質については上述したとおりである。
【0047】
本発明におけるポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているものであればよいが、これに限定されるものではなく、糖鎖やイソプレノイド基などのペプチド以外の構造を含む複合ペプチドであってもよい。アミノ酸の官能基は修飾されていてもよい。アミノ酸はL型であることが好ましいが、これに限定されない。
【0048】
上記ポリペプチドを得る方法としては、通常行われるポリヌクレオチド改変方法を用いてもよい。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドの特定の塩基を置換、欠失、挿入および/または付加することで、所望の組換えタンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドを作製することができる。ポリヌクレオチドの塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(KOD-Plus Site-Directed Mutagenesis Kit;東洋紡製、Transformer Site-Directed Mutagenesis Kit; Clontech製、QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit; Stratagene製等)の使用、またはポリメラーゼ連鎖反応法(polymerase chain reaction:PCR)の利用が挙げられる。これらの方法は当業者に公知である。
【0049】
また、本発明のポリペプチドは、当該分野において公知の任意の手法に従って容易に作製され得、例えば、ポリペプチドの発現ベクターが導入された形質転換体によって発現されてもよいし、化学合成されてもよい。化学合成法としては、固相法または液相法を挙げることができる。固相法において、例えば、市販の各種ペプチド合成装置(Model MultiPep RS(Intavis AG)など)を利用することができる。
【0050】
続いて、(b)~(f)のポリペプチドについて、上記(a)と異なる部分のみ説明する。
【0051】
前記(b)のポリペプチドは、本発明の抗体において、重鎖可変領域CDR2を構成する。
【0052】
前記(b1)の配列番号2は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長17アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0053】
前記(b2)のポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、重鎖可変領域CDR2としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが重鎖可変領域CDR2としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0054】
ポリペプチドが、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチド、ならびに上記(a)および(c)~(f)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0055】
前記(b3)のポリペプチドも、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、重鎖可変領域CDR2としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0056】
前記(c)のポリペプチドは、本発明の抗体において、重鎖可変領域CDR3を構成する。
【0057】
前記(c1)の配列番号3は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長16アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0058】
前記(c2)のポリペプチドは、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、重鎖可変領域CDR3としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが重鎖可変領域CDR3としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0059】
ポリペプチドが、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチド、ならびに上記(a)、(b)および(d)~(f)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、重鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0060】
前記(c3)のポリペプチドも、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、重鎖可変領域CDR3としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0061】
前記(d)のポリペプチドは、本発明の抗体において、軽鎖可変領域CDR1を構成する。
【0062】
前記(d1)の配列番号4は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長9アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0063】
前記(d2)のポリペプチドは、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0064】
ポリペプチドが、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチド、ならびに上記(a)~(c)および(e)~(f)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0065】
前記(d3)のポリペプチドも、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0066】
前記(e)のポリペプチドは、本発明の抗体において、軽鎖可変領域CDR2を構成する。
【0067】
前記(e1)の配列番号5は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長7アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0068】
前記(e2)のポリペプチドは、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0069】
ポリペプチドが、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチド、ならびに上記(a)~(d)および(f)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0070】
前記(e3)のポリペプチドも、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0071】
前記(f)のポリペプチドは、本発明の抗体において、軽鎖可変領域CDR3を構成する。
【0072】
前記(f1)の配列番号6は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長10アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0073】
前記(f2)のポリペプチドは、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0074】
ポリペプチドが、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチド、ならびに上記(a)~(e)のポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0075】
前記(f3)のポリペプチドも、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0076】
また、本発明の抗体は、以下で示す抗体である。
【0077】
(g)以下の(g1)~(g3)のいずれかである重鎖可変領域:
(g1)配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(g2)配列番号7で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;
(g3)配列番号7で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;および
(h)以下の(h1)~(h3)のいずれかである軽鎖可変領域:
(h1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(h2)配列番号8で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド;
(h3)配列番号8で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチド、を含む、抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【0078】
以下、(g)~(h)のポリペプチドについて、上記(a)と異なる部分のみ説明する。
【0079】
前記(g)のポリペプチドは、本発明の抗体において、重鎖可変領域を構成する。
【0080】
前記(g1)の配列番号7は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長125アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0081】
前記(g2)のポリペプチドは、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、重鎖可変領域としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが重鎖可変領域としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0082】
ポリペプチドが、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、重鎖可変領域としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0083】
前記(g3)のポリペプチドも、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、重鎖可変領域としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0084】
前記(h)のポリペプチドは、本発明の抗体において、軽鎖可変領域を構成する。
【0085】
前記(h1)の配列番号8は、ニワトリ由来のポリペプチドであり、全長105アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。
【0086】
前記(h2)のポリペプチドは、配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ポリペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、軽鎖可変領域としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。変異を導入したポリペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ポリペプチドが軽鎖可変領域としての機能を有するかどうか調べることにより判断できる。
【0087】
ポリペプチドが、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチドであるか否かを判定するためには、当該ポリペプチドを含む抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)と接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合しているか否かを試験すればよい。すなわち、当該抗体と、インテグリンα11(または、インテグリンα11を含む試料)とを接触させたときに、当該抗体がインテグリンα11に結合していれば、当該ポリペプチドを、軽鎖可変領域としての機能を有するポリペプチドであると判定することができる。
【0088】
前記(h3)のポリペプチドも、配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、軽鎖可変領域としての機能を有する限り、その具体的な配列については限定されない。
【0089】
また、本発明の抗体は、以下で示す抗体である。
【0090】
(a)以下の(a1)~(a3)のいずれかである重鎖可変領域CDR1:
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(a3)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(b)以下の(b1)~(b3)のいずれかである重鎖可変領域CDR2:
(b1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(b3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(c’)以下の式(1)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域CDR3:
G(X)C(X)GDAACIDA ・・・(1)
(式中、
は、S、HまたはEであり、
は、A、T、F、S、MまたはEであり、
は、G、D、VまたはAであり、
は、WまたはDであり、
は、Wであり、
は、Mである。);
(d)以下の(d1)~(d3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR1:
(d1)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d2)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(d3)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(e)以下の(e1)~(e3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR2:
(e1)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(e2)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(e3)配列番号5で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;および
(f)以下の(f1)~(f3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR3:
(f1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f2)配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(f3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド、を含む、抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【0091】
すなわち、本態様における抗体は、前記(c)の重鎖可変領域CDR3につき、本発明の抗体が有する種々の活性を指標としてその配列が最適化された抗体である。
前記(c’)のポリペプチドは、前記(c1)のポリペプチド内のホットスポット部位に変異を導入し、適宜スクリーニングすることにより得られる。例えば、前記(c’)のポリペプチドは、後述する実施例に記載の方法により得られる。
本態様における抗体は、特に、細胞接着阻害活性および/または細胞剥離活性において優れた効果を有するため、後述する線維化疾患の処置剤等として、極めて有用である。
【0092】
上記式(1)において、X、X、X、X、X5、は、本発明の抗体の効果を高めるために重要な配列である。上記式(1)において、Xは、S、HまたはEであればよく、Xは、A、T、F、S、MまたはEであればよく、Xは、G、D、VまたはAであればよく、Xは、WまたはDであればよく、Xは、Wであればよく、Xは、Mであればよい。また、上記式(1)において、Xは、好ましくは、Wである。
【0093】
本発明の一実施形態において、上記式(1)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域CDR3は、好ましくは、配列番号57~62のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。すなわち、本発明の一実施形態において、本発明の抗体は、以下で示す抗体であり得る。
【0094】
(a)以下の(a1)~(a3)のいずれかである重鎖可変領域CDR1:
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(a2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(a3)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(b)以下の(b1)~(b3)のいずれかである重鎖可変領域CDR2:
(b1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(b3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、重鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(c’’)配列番号57~62のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域CDR3;
(d)以下の(d1)~(d3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR1:
(d1)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d2)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(d3)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR1としての機能を有するポリペプチド;
(e)以下の(e1)~(e3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR2:
(e1)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(e2)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;
(e3)配列番号5で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR2としての機能を有するポリペプチド;および
(f)以下の(f1)~(f3)のいずれかである軽鎖可変領域CDR3:
(f1)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f2)配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド;
(f3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域CDR3としての機能を有するポリペプチド、を含む、抗インテグリンα11モノクローナル抗体。
【0095】
また、本発明の別の実施形態において、上記(c’’)は、配列番号57、58、59、61および62のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域CDR3であり得る。
【0096】
なお、(c’)または(c’’)を含む上記の態様において、(c’)および(c’’)以外のポリペプチド(すなわち、(a)、(b)、(d)~(f)のポリペプチド)については、上記した通りである。
【0097】
〔2.ポリヌクレオチド〕
本発明の一実施形態に係るポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」と称する。)は、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体をコードする塩基配列を含む。
【0098】
本発明のポリヌクレオチドは、上記1.の抗体をコードするポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他の塩基配列が付加されていてもよい。付加される塩基配列としては、特に限定されないが、標識(例えば、ヒスチジンタグ、Mycタグ、FLAGタグ等)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、GFP、MBP等)、シグナル配列(例えば、小胞体移行シグナル配列、分泌配列等)をコードする塩基配列等が挙げられる。これらの塩基配列が付加される部位は、特に限定されるものではなく、例えば、翻訳されるタンパク質のN末端であってもよいし、C末端でもあってもよい。
【0099】
〔3.ベクター〕
本発明の一実施形態に係るベクター(以下、「本発明のベクター」と称する。)は、上記2.のポリヌクレオチドを含む。
【0100】
本発明のベクターは、特に限定されることなく、発現ベクターであってもよいし、クローニングベクターであってもよい。以下、本発明のベクターが発現ベクターである場合について詳述する。
【0101】
本発明のベクターは、基材ベクターとして、一般的に使用される種々のベクターを用いることができ、導入される細胞または導入方法に応じて適宜選択され得る。具体的には、プラスミド、ファージ、コスミド等を、基材ベクターとして用いることができる。ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。
【0102】
上述した発現ベクターの例としては、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、染色体ベクター、エピソームベクターおよびウイルス由来ベクター(細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム等)、酵母染色体エレメントおよびウイルス(バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス等)、および、それらの組み合わせに由来するベクター(コスミド、ファージミド等)が挙げられる。
【0103】
本発明のベクターは、さらに、転写開始および転写終結のための部位を含んでおり、かつ、転写領域中にリボソーム結合部位を含んでいることが好ましい。ベクター中の成熟転写物のコード部分は、翻訳されるべきポリペプチドの始めに転写開始コドンAUGを含み、そして終わりに適切に位置される終止コドンを含むことになる。
【0104】
本発明のベクターは、宿主内で本発明の抗体を発現させるために、プロモーター配列を含んでいてもよい。上記プロモーター配列は、宿主細胞の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0105】
本発明のベクターは、DNAからの転写を亢進させるための配列を含んでいてよい。一実施形態において、上記DNAからの転写を亢進させるための配列は、エンハンサー配列である。上記エンハンサーとしては、例えば、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー等が挙げられる。
【0106】
本発明のベクターは、転写されたRNAを安定化させるための配列を含んでいてよい。一実施形態において、上記転写されたRNAを安定化させるための配列は、ポリA付加配列(ポリアデニル化配列、polyA)であり得る。ポリA付加配列の例としては、成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列、ウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列、ヒト成長ホルモン遺伝子由来ポリA付加配列、SV40ウイルス由来ポリA付加配列、ヒトもしくはウサギのβグロビン遺伝子由来のポリA付加配列等が挙げられる。
【0107】
本発明のポリヌクレオチドを処置剤として用いる場合、ポリヌクレオチドが所定の発現ベクターに挿入されていることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドが所定の発現ベクターに挿入されていることにより、例えば、標的部位へのポリヌクレオチドの送達をより効率的に行うことができたり、標的部位における細胞内へのポリヌクレオチドの取り込み効率を上げたりすることができる。その結果として、本発明の対象となる疾患を、効果的に処置することが可能となる。
【0108】
このようなベクターは、薬剤送達系(Drug Delivery System(DDS))の分野において開発が進んでおり、所望の送達および発現効果を有するベクターを適宜選択することが可能である。そのようなベクターの一例として、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等)、DNAベクター(例えば、pUMVC4a等)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0109】
上述した、本発明のベクターは、公知の方法によって作製することができる。このような方法としては、例えば、ベクター作製用のキットに付属する実施マニュアルに記載の方法、種々の手引書に記載の方法等が挙げられる。
【0110】
〔4.線維化疾患の処置剤〕
本発明の一実施形態に係る線維化疾患の処置剤(以下、「本発明の処置剤」と称する。)は、有効成分として、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、上記2.のポリヌクレオチドまたは上記3.のベクター(以下、「本発明の抗体等」と称することもある。)を含む。
【0111】
本発明の処置剤は、本発明の抗体、本発明のポリヌクレオチド、または本発明のベクターを含むため、その作用により線維化疾患を処置できるという効果を奏する。
【0112】
本明細書において「線維化疾患」は、組織線維化自体による疾患および他疾患や病態に合併した組織線維化病態を意味する。線維化疾患としては、例えば、肺線維症、肝線維症、腎硬化症、心筋症、肝硬変、膵線維化、強皮症等が挙げられるが、あらゆる疾患や病態に伴い組織に生じる線維化(例えば、腫瘍における組織の線維化)も対象とする。
【0113】
本明細書において「処置」は、処置を必要とする対象に対して処置効果をもたらす行為を施すことを意味する。処置効果は、予防効果および治療効果を包含し、例えば、以下で示す効果であり得る。
(1)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、またはリスクを低減する。
(2)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、またはリスクを低減する。
(3)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の兆候が生じることを防止する、またはリスクを低減する。
(4)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減する。
(5)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加もしくは進行を防止する。
(6)薬剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加速度もしくは進行速度を低減する。
【0114】
したがって、本発明の処置剤は、予防剤および治療剤の両方を包含する。
【0115】
本発明の処置剤は、有効成分として、本発明の抗体等以外の他の有効成分を含んでいてもよい。そのような他の有効成分としては、本発明の抗体等と組み合わせることで、本発明の抗体等単独で用いる場合よりも有効な処置効果が望めるものが好ましい。本発明の処置剤に含まれる他の有効成分は、一種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0116】
また、本発明の処置剤は、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤等を含み得る。薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤等は、薬学分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack
Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤の選択は、薬剤の投与経路および標準的薬学的慣行にしたがって、当業者により容易に選択され得る。また、本発明の処置剤は、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、被覆剤、可溶化剤等を、さらに含んでいてもよい。
【0117】
本発明の処置剤は、処置に際して効果的な任意の投与経路により投与される。本発明の処置剤は、例えば、処置対象に対して、経口、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内または経皮的に投与され得る。投与形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等であってもよい。
【0118】
本発明の処置剤による処置の対象は、処置を必要とする対象であれば特に限定されない。本処置剤による処置の対象としては、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、チンパンジー等が挙げられる。
【0119】
本発明の処置剤の投与方法は、特に限定されることなく、当該分野で使用される任意の方法を用いて行うことができる。本発明の処置剤の処方は、疾患の重症度、有効成分、投与経路等に応じて、当業者により適宜設定され得る。
【0120】
〔5.線維化疾患の処置剤の製造における使用〕
本発明の一実施形態において、線維化疾患の処置剤の製造における、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、上記2.のポリヌクレオチドまたは上記3.のベクターの使用を提供する。
【0121】
本発明の抗体等は、上述の通り、インテグリンα11とコラーゲンとの結合の阻害に関連する一連の活性を有するため、線維化疾患の処置剤の製造において適用可能である。
【0122】
〔6.診断薬〕
本発明の一実施形態に係る線維化疾患の診断薬(以下、「本発明の診断薬」と称する。)は、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、上記2.のポリヌクレオチドまたは上記3.のベクターを含む。
【0123】
本発明の診断薬は、インテグリンα11と結合する本発明の抗体等を含むことから、インテグリンα11に関連する疾患(特に、線維化疾患)の診断に適用できる。
【0124】
「線維化疾患」は、上記4.に記載の通りである。
【0125】
本発明の診断薬の使用方法は、特に限定されない。例えば、試験対象における細胞、血液、血清、体液、病理切片等と、本発明の抗体との結合態様、および標準的な対象における細胞、血液、血清、体液、病理切片等と、本発明の抗体との結合態様を、検査および比較することにより、上記疾患の診断が行われ得る。
【0126】
本発明の診断薬の検出方法は、特に限定されることなく、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法等が使用される。これらの方法は、当分野における任意の方法により行うことができる。
【0127】
本発明の診断薬は、本発明の抗体等に標識物質を付加することも可能である。標識物質としては、特に限定されないが、例えば、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質等が使用される。具体的には、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、H、131I等)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチン等が使用され得る。これらの標識物質は、診断の目的等に応じて、適宜選択可能である。
【0128】
なお、本発明の診断薬は、PETのための試薬、実験に使用する試薬もしくは材料も含む。
【0129】
〔7.その他〕
本発明の他の実施形態において、処置を必要とする対象に、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、上記2.のポリヌクレオチドまたは上記3.のベクターを投与することを含む、線維化疾患の処置方法を提供する。
【0130】
「処置を必要とする対象」は特に限定されることなく、線維化疾患に罹患している患者であってもよいし、線維化疾患に罹患するリスクを有する患者予備軍であってもよい。
【0131】
上記2.のポリヌクレオチド、または上記3.のベクターを投与した場合は、投与した対象の体内で抗インテグリンα11モノクローナル抗体が発現し、その結果、線維化疾患が処置され得る。
【0132】
「線維化疾患」は、上記4.に記載の通りである。
【0133】
また、本発明の他の実施形態において、線維化疾患の処置における使用のための、上記1.の抗インテグリンα11モノクローナル抗体、上記2.のポリヌクレオチドまたは上記3.のベクターを提供する。
【0134】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0135】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0136】
(1.抗インテグリンα11モノクローナル抗体)
[ニワトリへの免疫]
マウスインテグリンα11 I-ドメイン(コラーゲン結合ドメイン、以下「マウスI-ドメイン」と称する。)をコードする遺伝子と、ニワトリ抗体L鎖leader配列をコードする遺伝子とをオーバーラップPCRにより連結後、哺乳動物細胞用発現ベクターpcDNA3.1 myc-His Aベクターにクローニングした。続いて、前記ベクターをヒト胎生腎臓細胞株293F細胞に導入し、組換えマウスI-ドメインタンパク質(C末端にHisタグ付加)を発現および分泌させた。分泌された組換えマウスI-ドメインタンパク質を、293F細胞培養上清中から、Ni-NTAアガロースを用いて精製した。その後、GELBEアジュバントおよび塩化マンガン(最終濃度1mM)を混和して、ニワトリに合計4回免疫を行った。
【0137】
なお、本実施例で使用した各種のプライマー配列を、以下の表1にまとめて示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
[抗体ライブラリーの作製]
最終免疫後のニワトリから脾臓を摘出してリンパ球を分離した。その後、RNAを抽出してcDNAを合成し、scFvファージ抗体ライブラリーを作製した。ファージ抗体ライブラリーの作製は、Nakamura N et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-14.に記載の手法にしたがい行った。
【0141】
[抗体スクリーニング]
細胞膜上に発現しているインテグリンα11に反応する抗体を得るために、セルパニング法により抗体をスクリーニングした。具体的には、ファージ抗体ライブラリーと、ハムスター卵巣細胞株(CHO細胞:内在的にインテグリンα11を有していない細胞株)とを混和して、CHO細胞に吸着するファージ抗体を除去した。続いて、残ったファージ抗体と、変異型ヒトインテグリンα11導入CHO細胞とを反応させた。前記細胞を有機溶媒で洗浄後、結合していたファージを回収して、大腸菌に感染させた。4回のパニングの後、ライブラリーの反応性を、CHO細胞およびヒトインテグリンα11導入CHO細胞に対するFACSで確認した。ファージ抗体ライブラリー(および後述のファージ抗体クローン)を用いたFACSの反応条件は、以下の通りである。すなわち、一次抗体としてファージ抗体液50μlを細胞に添加して、氷上で25分間反応させた。洗浄後、二次抗体としてFITC標識抗マウスIgκ抗体を5μg/mlの濃度で細胞に添加して、氷上で15分間反応させた。セルパニングは、Giordano RJ et al., Nat Med. 2001 Nov;7(11):1249-53.に記載の手法にしたがい行った。
【0142】
なお、上記変異型ヒトインテグリンα11は、変異導入PCRにより、ヒトα11の144番目のバリンをイソロイシンに、205番目のグルタミン酸をアラニンに、222番目のフェニルアラニンをチロシンに、264番目のグルタミンをアスパラギン酸に、325番目のアスパラギン酸をグルタミン酸に、338番目のスレオニンをイソロイシンに置換した変異体である。変異導入前は、該当するマウスα11のアミノ酸配列と一致し、変異導入後は、該当するニワトリα11のアミノ酸配列に置き換わっている。
【0143】
[モノクローン化および抗体の配列決定]
3回目のパニングライブラリーから、48クローンのファージ抗体クローンを発現させて、CHO細胞およびヒトインテグリンα11導入CHO細胞に対する反応性をFACSで検討した。ヒトインテグリンα11導入CHO細胞のみに反応した47クローンの内18クローンの塩基配列を決定した。その結果、抗体は、1つのクローンに収束していることが判明した。
【0144】
また、上記で単離した抗体断片(scFv)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(各CDRの配列を含む)を決定した(図1、表2)。
【0145】
【表3】
【0146】
(2.インテグリンα11との結合および特異性)
[抗体のIgG化]
上記1.のscFv抗体遺伝子を鋳型として、ニワトリ抗体VHおよびVL遺伝子を別々にPCR増幅した。続いて、VHは、ニワトリ抗体H鎖leader配列およびマウスIgG1定常領域と、VLは、ニワトリ抗体L鎖leader配列およびマウスIgκ領域と、それぞれオーバーラップPCRにより連結して、ニワトリ-マウスキメラIgG1発現ベクターを作製した。作製したH鎖およびL鎖発現ベクターを293F細胞に導入して、キメラIgG1(C末端にHisタグ付加、以下「IgG」と称する。)を発現および分泌させた。分泌されたIgGを、293F細胞培養上清中から、Ni-NTAアガロースを用いて精製した。キメラIgG抗体への組換えは、Tateishi Y et al., J Vet Med Sci 2008 Apr;70(4): 397-400.に記載の手法にしたがい行った。
【0147】
[α11に対する反応性(特異性)の検討]
IgG化した抗体のα11に対する反応性(特異性)の検討は、他のコラーゲン結合性インテグリンα1、α2、α10への反応性の有無により行った。まず、本抗体について、CHO細胞およびヒトインテグリンα11導入CHO細胞への反応性をFACSにより検討した。続いて、本抗体について、ヒト大腸癌細胞株(SW480細胞:内在的にα1およびα2を発現している細胞株)およびヒトインテグリンα10導入CHO細胞への反応性をFACSにより検討した。前記IgG抗体を用いたFACSの反応条件は、以下の通りである。すなわち、一次抗体として本抗体を5μg/mlの濃度で細胞に添加して、氷上で25分間反応させた。洗浄後、二次抗体としてPE標識抗マウスIgG抗体を2μg/mlの濃度で細胞に添加して、氷上で15分間反応させた。なお、以降のFACSについても、これと同条件で行った。結果を図2~4に示す。
【0148】
その結果、本抗体は、インテグリンα11に反応を示したが、インテグリンα1、α2、α10へは反応を示さなかった。したがって、本抗体は、インテグリンα11に特異的に結合することが明らかとなった。
【0149】
(3.異種動物に対する交差反応性)
[ラットインテグリンα11への反応性]
ラットインテグリンα11導入CHO細胞に対する本抗体の反応性をFACSで解析した。結果を図6に示す。
【0150】
[ラット肝星細胞への反応性]
ラット肝星細胞は、培養日数を経る毎に活性化(筋線維芽細胞化)され、その際、α11の発現が増加することが知られている。そこで、12週齢のWisterラット(オス)の肝臓より肝星細胞を分離し、培養した。培養5日目および10日目に、本抗体の肝星細胞への反応性(α11の発現)を、FACSで解析した。ラット肝星細胞は、Kristensen DB et al., Hepatology. 2000 Aug;32(2): 268-77.に記載の方法にしたがい分離した。結果を図5に示す。
【0151】
以上より、本抗体は、ラット由来のインテグリンα11に反応を示した。上記2.の結果と併せて、本抗体は、複数の異種動物に対して交差反応性を示すことが明らかとなった。
【0152】
(4.阻害(中和)活性)
[細胞接着阻害試験-1]
ラット尾部由来I型コラーゲンまたはウシ皮膚由来III型コラーゲンを、それぞれ0.4μg/mlの濃度で、96ウェルプレートに一晩固相化させた。各種濃度(最終濃度0.078~20μg/ml)の本抗体と室温で15分間反応させたヒトインテグリンα11導入マウス筋芽細胞株(C2C12細胞:内在的に全てのコラーゲン結合性インテグリンを発現していない細胞株)5×10個を、同ウェルに添加して1時間培養し、各コラーゲンに接着させた。接着細胞を、0.5%クリスタルバイオレットを含む20%メタノール液で固定および染色した後、可溶化した。その後、570nmで吸光度を測定し、数値化した。結果を図7に示す。
【0153】
本抗体の添加により、コラーゲンに結合する細胞の数が減少することから、本抗体は、細胞接着阻害活性を有することが明らかとなった。
【0154】
[細胞接着阻害試験-2]
<改変抗体の作製>
改変抗体の作製のため、上記2.で得られた抗体(「野生型#33」とも称する。)において、重鎖可変領域CDR3内のホットスポットを検索した。なお、ホットスポットは、抗原への親和性成熟の過程で高頻度に変異が生じる部位である。その結果、6箇所のアミノ酸がホットスポットであることが分かった。そこで、同箇所にランダムに変異が導入されるようにプライマーを設計した。設計したプライマー配列を表3に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
なお、表3中、NはA、T、G、Cのいずれかであり、SはCまたはGである。
【0157】
上記設計したプライマーを用いて、野生型#33 scFvファージミドベクターを鋳型にしたinverse PCR(iPCR)により、変異(改変)#33 DNAを増幅した。
【0158】
次いで、Dpn I処理により鋳型を消化し、セルフライゲーションにより、変異#33 DNAを環状化した。環状化した変異#33 DNAを用いて、重鎖可変領域CDR3変異#33 scFvファージ抗体ライブラリーを作製し、上記セルパニング法により、特異抗体を濃縮した。4回目パニングライブラリーから143クローンのファージ抗体クローンを発現させ、ヒトインテグリンα11導入CHO細胞に反応性を示した142クローンの塩基配列およびアミノ酸配列を決定した。その結果、野生型#33とは異なる6つのクローンを確認した。6つのクローンの変異箇所のアミノ酸配列を図13に示す。また、6つのクローンの重鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列を表4に示す。
【表5】
【0159】
<改変抗体の細胞接着阻害試験>
まず、野生型#33 IgGについて、高濃度コラーゲン固相条件下における細胞接着阻害効果を検討した。
具体的には、ラット尾部由来I型コラーゲンを、10μg/mlの高濃度で、96ウェルプレートに一晩固相化させた。20μg/mlの野生型#33 IgGと室温で15分間反応させたヒトインテグリンα11導入C2C12細胞5×10個を、同ウェルに添加して1時間培養し、コラーゲンに接着させた。接着細胞を、0.5%クリスタルバイオレットを含む20%メタノール液で固定および染色した後、可溶化した。その後、570nmで吸光度を測定し、数値化した。結果を図14に示す。図14に示すように、高濃度のコラーゲン条件下では、野生型#33 IgGは、コラーゲンに対する細胞接着をほとんど阻害しなかった。
【0160】
続いて、上記で得られた6つのクローンを、上記2.に記載の方法でIgG化して、ヒトインテグリンα11導入C2C12細胞での細胞接着阻害試験に用いた。
具体的には、20μg/mlの各改変#33 IgG(#33-45、#33-46、#33-52、#33-72、#33-92、#33-104)と室温で15分間反応させたヒトインテグリンα11導入C2C12細胞5×10個を、同ウェルに添加して1時間培養し、コラーゲンに接着させた。接着細胞を、0.5%クリスタルバイオレットを含む20%メタノール液で固定および染色した後、可溶化した。その後、570nmで吸光度を測定し、数値化した。結果を図15に示す。図15に示すように、5つのクローン(#33-45、#33-46、#33-52、#33-92、および#33-104)では、高濃度コラーゲン条件下でも、コラーゲンに対する細胞接着を阻害し、野生型#33 IgGに比べて細胞阻害活性が向上していることがわかった。
【0161】
上記のように、本改変抗体の添加により、コラーゲンに結合する細胞の数が減少することから、本改変抗体は、細胞接着阻害活性を有することが明らかとなった。
【0162】
(5.細胞剥離活性および細胞伸展阻害活性)
[細胞剥離試験]
ラット尾部由来I型コラーゲンまたはウシ皮膚由来III型コラーゲンを、それぞれ0.4μg/mlの濃度で、96ウェルプレートに一晩固相化させた。ヒトインテグリンα11導入C2C12細胞5×10個を、同ウェルに添加して45分間培養し、細胞を接着させた。続いて、各種濃度(最終濃度0.078~20μg/ml)の本抗体を添加して、さらに1.5時間培養した。上記4.と同様に、細胞を固定および染色し、可溶化した。その後、570nmで吸光度を測定し、細胞の剥離および細胞の伸展を評価した。結果を図8、9に示す。
【0163】
本抗体の添加により、コラーゲンに結合した細胞の数が減少することから、本抗体は、細胞剥離活性を有することが明らかとなった。また、本抗体の添加により、細胞の伸展が抑制されることから、本抗体は、細胞接着阻害に伴う細胞伸展阻害活性も有することが明らかとなった。
【0164】
(6.組織線維化阻害活性(インビトロ))
[筋線維芽細胞化阻害試験]
筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMA遺伝子の発現を指標として、本抗体の筋線維芽細胞化阻害活性を評価した。
【0165】
(実験1)上記3.と同様に、ラット肝臓より肝星細胞を分離し、培養した。培養3日目に、本抗体を最終濃度20μg/mlで添加した。培養5、7、11および14日目に細胞を回収し、RNAを抽出した。抽出したRNAからcDNAを合成し、α-SMA遺伝子(Acta2)の発現を定量PCRにより解析した。結果を図10に示す。
【0166】
(実験2)ヒト乳癌細胞株Hs578T(細胞表面にα11が発現していることを確認)を無血清培地で一晩培養した後、本抗体を最終濃度20μg/mlで添加し、2時間培養した。その後、組換えヒトTGF-β1を最終濃度5ng/mlで添加し、無血清条件下でさらに2日間培養した。培養後の細胞からRNAを抽出した。抽出したRNAからcDNAを合成し、α-SMA遺伝子(Acta2)の発現を定量PCRにより解析した。結果を図11に示す。
【0167】
(実験3)無血清培地で一晩培養したヒトインテグリンα11導入C2C12細胞を、ディッシュより剥離した。その後、本抗体を最終濃度25μg/mlで添加して、室温で15分間反応させた。反応後の細胞2×10個を、ラット尾部由来I型コラーゲンを2μg/mlの濃度で一晩固相化させたウェルに添加し、無血清条件下で24時間培養した。培養後の細胞を回収し、RNAを抽出した。抽出したRNAからcDNAを合成し、α-SMA遺伝子(Acta2)の発現を定量PCRにより解析した。結果を図12に示す。
【0168】
上記実験1~3より、本抗体は、組織線維化阻害活性を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明は、インテグリンα11とコラーゲンとの結合を阻害することができるため、医薬、農林水産、生命科学、生命工学、遺伝子治療などの分野に広く利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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