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特許7440726新規sp2-sp3ハイブリッドクリスタル窒化ホウ素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】新規sp2-sp3ハイブリッドクリスタル窒化ホウ素
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
C01B21/064 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022147224
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2020180784の分割
【原出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022188080
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202010305181.4
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 438, Hebei Street, Haigang District, Qinhuangdao City, HeBei 066004 P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チーション
(72)【発明者】
【氏名】ルオ クン
(72)【発明者】
【氏名】ソン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ビン
(72)【発明者】
【氏名】ホー チュイロン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ トンリー
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ヨンチュン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ポー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジョンユアン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168848(JP,A)
【文献】特開2005-097098(JP,A)
【文献】特開2019-172486(JP,A)
【文献】Materials Chemistry and Physics,2018年,Vol.217,p.5-10,DOI: 10.1016/j.matchemphys.2018.06.041
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00 - 21/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本構造ユニットがspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットからなり、前記グラファイト様構造ユニットと前記ダイヤモンド様構造ユニットが、特定の共晶面を介して共有結合により互いに結合されており
その空間群が4(P2 )又は6(Pm)又は8(Cm)である単結晶であるか、或いは、4(P2 )又は6(Pm)又は8(Cm)の空間群を有する二相又は多相からなる多結晶である、
ことを特徴とするsp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素。
【請求項2】
前記sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素の結晶構造は、その内部のspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットのサイズ及び結晶方位関係によって変化する、
ことを特徴とする請求項1に記載のsp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料の分野に属し、新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素の化学式はBNであって、ホウ素と窒素元素からなる化合物であり、優れた物理的及び化学的特性を有する。炭素と同様に、BNは、様々な同素体を形成することもでき、これは、sp及びspを有するハイブリダイゼーションから由来している(spハイブリダイゼーションとは、原子中の電子層内の1つの2s軌道と2つの2p軌道とがハイブリダイゼーション結合することを指し、spハイブリダイゼーションとは、原子中の電子層内の1つの2s軌道と3つの2p軌道とがハイブリダイゼーション結合することを指す)。グラファイト様構造を有する六方晶窒化ホウ素(hBN)は、窒化ホウ素多形の中で最も安定で柔軟な相であるため、潤滑剤や化粧品の添加剤としてよく用いられる。ダイヤモンドに似ており、閃亜鉛鉱構造を有する立方晶窒化ホウ素(cBN)は、超硬材料であって、その硬度がダイヤモンドに次ぐものであるが、化学的及び熱的安定性がダイヤモンドより優れているため、鉄ベースやチタンベースの材料のような金属材料の加工によく使われている。
【0003】
現在広く使用されているhBN及びcBNに加えて、窒化ホウ素の他のいくつかの構成も発見されている。B-N結合のハイブリダイゼーション方式sp及びspに分類すると、spハイブリダイゼーション窒化ホウ素は、層状構造の特徴を有し、hBN(AaAaスタック方式)、rBN(ABCスタック方式)、乱層構造のpBNとtBN、オニオン構造のoBN、グラフェン様の単層窒化ホウ素(BN monolayer or nanomesh)及びカーボンナノチューブ様の窒化ホウ素ナノチューブ(BN nanotubes)を含む。現在知られているspハイブリダイゼーション窒化ホウ素には、閃亜鉛鉱構造のcBN及びウルツ鉱構造のwBNの2種類がある。
【0004】
sp及びspの2種類のハイブリダイゼーション方式のBNは、全く異なる物理的性質を示している。例えば、sp結合は、平面に沿って延び、一定の柔軟性を有する。一方、sp結合は、3次元空間に沿って延び、非常に強い剛性を有する。したがって、sp及びspの2種類のハイブリダイゼーション方式を同時に有する窒化ホウ素材料の取得が望まれ、これによって異なるハイブリダイゼーション方式の特性が発揮でき、優れた機能の組み合わせを有する窒化ホウ素材料を形成できることが期待されている。現在、化学気相堆積による非晶質窒化ホウ素膜において、少量のsp結合の成分が発見された(R.Zedlitz,M.Heintze,M.B.Schubert,Properties of amorphous boron nitride thin films[J].Journal of Non-crystalline Solids,1996,198:403-406)。また、文献には、いくつかの純粋理論的に予測されたsp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素が報告されている(Xiong Mei,Luo Kun,etal.Hard three-dimensional BN framework with one-dimensional metallicity[J].Journal of Alloys and Compounds,2018,731(15):364-368)。しかし、これらの予測されたsp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素は、実験的に確認されていない。即ち、これまでのところ、sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素同素体は、実験的に発見されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素及びその調製方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、上記の目的を実現するために、基本構造ユニットがspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットからなり、2つのタイプの構造ユニットが特定の共晶面を介して互いに結合されている、sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素を提供する。以下において、当該新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素は、Gradia窒化ホウ素とも呼ばれる。当該英文名は、グラファイト(graphite)の最初の3文字とダイヤモンド(diamond)の最初の3文字から取られている。
【0007】
一方、本発明はさらに、窒化ホウ素原料に対して高温高圧処理を行う工程を含む、前記sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素の調製方法を提供する。
【0008】
本発明は、上記の技術的手段によって、以下のような技術的効果を奏する。
【0009】
本発明は、一般的な市販のspハイブリダイゼーション又はspハイブリダイゼーションを含む窒化ホウ素材料を用いてGradia窒化ホウ素を合成できるため、原料のサイズ及び純度に対する要求が低い。本発明は、使用されるspハイブリダイゼーション又はspハイブリダイゼーション窒化ホウ素の純度に対して特に要求はなく、spハイブリダイゼーション又はspハイブリダイゼーション窒化ホウ素は、窒素(N)及びホウ素(B)元素以外の不純物元素を含んでもよい。窒化ホウ素材料は、ある程度の割合のspハイブリダイゼーション又はspハイブリダイゼーションの窒化ホウ素原子を含み、不純物がGradia窒化ホウ素の構造に影響しないものであればよい。不純物元素としては、ケイ素(Si)、酸素(O)、硫黄(S)、水素(H)等が挙げられる。そのため、原材料の価格が安く入手しやすい。
【0010】
本発明の調製方法により、新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素同素体-Gradia窒化ホウ素を調製した。Gradia窒化ホウ素は、他の既知の窒化ホウ素の結晶構造とは異なって、その基本構造ユニットがspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットからなるため、独特の特徴を有している。例えば、Gradia窒化ホウ素は、導電性を有し、超硬度、高靱性等の優れた機械的特性を有することができる。また、窒化ホウ素の原料、合成圧力及び温度を変更することにより、新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素の結晶構造は、その内部sp及びspの構造単位のサイズ及び結晶方位関係によって変化することができる。そのため、その光、電気及び力学等の物理性能を調節制御でき、様々な分野に応用でき、広い将来性を有する。
【0011】
本方法により調製されたsp-spハイブリダイゼーションのGradia窒化ホウ素は、立方晶窒化ホウ(cBN)よりも密度が低いため、高圧相転移過程におけるサンプルの体積収縮が小さく、成形性の良いブロック素材を得るのに有利である。
【0012】
また、本発明で用いられる高温高圧設備は、現在大量に使用されており、その操作が簡単で、高圧合成パラメータの制御が容易である。同時に、原料が豊富で、安価で入手しやすく、産業化生産を実現できる。新規構造及び新規性能を有する新規窒化ホウ素結晶が得られ、当該窒化ホウ素の結晶構造を調節することができるため、性能の調整及び制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の新規sp-spハイブリッドクリスタルGradia窒化ホウ素の4種類の典型的な構造の高解像透過型電子顕微鏡写真(図において濃色の球は窒素原子を表し、淡色の球はホウ素原子を表す)である。
図2図2は、本発明のユニットセルが12個の窒化ホウ素分子式を含むBN(Gradia-I)の構成図である。
図3図3は、本発明のユニットセルが24個の窒化ホウ素分子式を含むBN(Gradia-II)の構成図である。
図4図4は、本発明のユニットセルが48個の窒化ホウ素分子式を含むBN(Gradia-III)の構成図である。
図5図5は、本発明のユニットセルが24個の窒化ホウ素分子式を含むBN(Gradia-IV)の構成図である。
図6図6は、本発明の実施例1の新規sp-spハイブリッドクリスタルGradia窒化ホウ素をThemis Z透過型電子顕微鏡で測定した、代表的な電子エネルギー損失スペクトル(EELS)及び制限視野電子回折スペクトルである。
図7図7は、本発明の実施例7で得られた新規sp-spハイブリッドクリスタルGradia窒化ホウ素ブロックのビッカース硬度曲線、柱状サンプル写真、及び5Kgの力荷重での圧痕の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面及び具体的な実施例に参照して、さらに詳細に説明する。
【0015】
本発明は、基本構造ユニットがspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットからなり、グラファイト様構造ユニットとダイヤモンド様構造ユニットが特定の共晶面を介して互いに結合されている、ことを特徴とする新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素-Gradia窒化ホウ素を開示している。
【0016】
本明細書において、「基本構造ユニット」という用語は、材料の総重量の70%以上(例えば、75%)、好ましくは80%以上(例えば、85%)、より好ましくは90%以上(例えば、95%又は99%)を占める材料の基本構造又は主成分単位を指すと理解されるべきである。
【0017】
本発明により開示されたGradia窒化ホウ素は、新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素同素体であり、他の既知の窒化ホウ素結晶構造とは全く異なり、spグラファイト様構造ユニットとspダイヤモンド様構造ユニットからなり、その結晶構造は、その内部のsp及びsp構造ユニットのサイズ及び結晶方位関係に応じて変化できる。特に、ダイヤモンド様構造ユニットは、例えば、立方晶ダイヤモンド様構造ユニット又は六方晶ダイヤモンド様構造ユニットであってもよい。さらに、特定の応用のニーズに応じて、spハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニットとspハイブリダイゼーションのダイヤモンドライク構造ユニットとのモル比は、温度及び圧力のような材料の合成パラメータによって、広範囲内で変化でき、例えば、1:9~9:1、2:8~8:2、3:7~7:3、4:6~6:4、又は約5:5である。
【0018】
本発明は、Gradia窒化ホウ素の調製方法をさらに開示しており、窒化ホウ素原料に対して高温高圧処理を行うことによって前記Gradia窒化ホウ素が得られる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、前記Gradia窒化ホウ素の調製方法は、
窒化ホウ素原料をプレプレス金型に入れて、プレス機によって、窒化ホウ素原料を窒化ホウ素原料本体(raw material body)にプレ成形した後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱する工程(1)と、
工程(1)でプレ加熱された窒化ホウ素原料本体をアセンブリブロックに入れた後、窒化ホウ素原料本体を含むアセンブリブロックを乾燥させる(例えば、乾燥ボックス内で乾燥させる)工程(2)と、
工程(2)で乾燥されたアセンブリブロック(任意に選択して冷却した後)をプレス機に入れて高温高圧操作を行う工程(3)と、
放圧後、プレス機から取り出したアセンブリブロックを冷却し、sp-spハイブリダイゼーションクリスタル窒化ホウ素を得る工程(4)と、を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、前記窒化ホウ素原料は、2種類に分類され、1種類は任意の1種類以上のspハイブリダイゼーション窒化ホウ素を含み、前記spハイブリダイゼーション窒化ホウ素は、グラファイト様構造の六方晶窒化ホウ素(hBN)及び菱面体窒化ホウ素、乱層構造の窒化ホウ素(pBN及びtBN)、グラフェン様の単層窒化ホウ素(BN monolayer or nanomesh)、窒化ホウ素ナノチューブ(BN nanotubes)、オニオン窒化ホウ素(oBN)、非晶質窒化ホウ素(aBN)等のspハイブリダイゼーションを含有する窒化ホウ素材料を含む。その他の1種類は任意の1種類以上のspハイブリダイゼーション窒化ホウ素を含み、前記spハイブリダイゼーション窒化ホウ素は、閃亜鉛鉱型窒化ホウ素(cBN)及びウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)を含む。前記窒化ホウ素原料は、spハイブリダイゼーション窒化ホウ素とspハイブリダイゼーション窒化ホウ素との混合物であってもよい。
【0021】
また、希塩酸溶液を用いて窒化ホウ素原料を酸洗浄して、窒化ホウ素原料中のケイ素(Si)、酸素(O)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、水素(H)等の不純物を除去することが好ましく、これにより、優れた性能を有するGradia窒化ホウ素のサンプルを得るのに有利である。酸洗浄の原料は、プレプレス金型にロードする前に、再度洗浄及び乾燥する必要がある。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、工程(1)におけるプレ加熱温度は200~1800℃であり、プレ加熱時間は5~60minである。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、工程(1)でプレ成形された本体は、直円筒形である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、工程(2)における乾燥工程の乾燥温度は100~200℃であり、乾燥時間は1~3時間である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、前記高温高圧工程の具体的なパラメータは、合成圧力を3~25GPa(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12GPaから16、17、18、19、20、21、22、23、24GPa)、温度を600~2500℃(例えば、650、700、750、800、850、900℃から1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400℃)に設定することができる。通常の高温高圧処理は、先に加圧してから昇温し、その後しばらく保温する。保温時間は、重要ではなく、選択された圧力及び温度に応じて必要に応じて決定することができるが、保温時間は5~120min、例えば10~100min、又は20~60min等が好ましい。工程(3)で用いられる高温高圧装置は、例えば、アメリカRockland社製のT25型プレス機であるが、これに限定されない。
【0026】
本発明の好ましい態様において、前記調製方法によって合成される新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素は、その結晶構造がその内部のspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットの変化に応じて調節し制御できる。具体的に、本発明のGradia窒化ホウ素の調製方法において、Gradia窒化ホウ素の結晶構造は、窒化ホウ素原料の種類及び合成圧力と温度を変更することにより、その内部のsp及びsp構造ユニットのサイズ及び結晶方位関係を変化できる。
【0027】
本発明の特に好ましい実施形態において、前記Gradia窒化ホウ素の調製方法は、
1種類以上の窒化ホウ素原料(例えば、hBN、rBN、窒化ホウ素ナノチューブ、非晶質窒化ホウ素及びオニオン窒化ホウ素等を含むspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料)をプレプレス金型に入れ、プレス機によって窒化ホウ素原料が直円筒形の本体にプレ成形した後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱を行い、プレ加熱温度が200~1800℃であり、プレ加熱時間が5~60minであり、プレ加熱圧力が20~50MPaである工程(1)と、
工程(1)でプレ加熱された窒化ホウ素原料本体をアセンブリブロックに入れた後、窒化ホウ素原料本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥し、乾燥温度が100~200℃であり、乾燥時間が1~3hである工程(2)と、
工程(2)のアセンブリブロックを取り出して室温まで冷却し、続いてアメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧操作を行い、合成圧力が3~25GPaであり、温度が600~2500℃であり、保温時間が5~120minである工程(3)と、
プレス機を冷却し圧力開放し後、プレス機からアセンブリブロックを取り出し、サンプル周囲のアセンブリブロックを除去して、新規sp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素-Gradia窒化ホウ素を得る工程(4)と、を含む。
【0028】
本発明者は、調製方法におけるプロセスパラメータを変更することにより、多数のGradia窒化ホウ素結晶サンプルを調製した。さらに検討したところ、得られたGradia窒化ホウ素サンプルは単結晶又は多結晶であってもよく、その結晶構造は4つの基本構造を有してもよいことが分かった。Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測した結果を、図1及び図6に示す。図6のEELSスペクトルから、Gradia窒化ホウ素がspとspの2種類のハイブリダイゼーション方式を有することが分かる。図1の高解像度画像から明らかなように、本発明により調製された新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素は、spハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットを有し、その結晶方位関係によって異なる4種類の基本構造を形成することができ、各構造の内部のspハイブリダイゼーションのグラファイト様構造ユニット及びspハイブリダイゼーションのダイヤモンド様構造ユニットのサイズを変更できる。図2~5は、本発明に列挙された4種類の単斜晶構造であり、Gradia-I窒化ホウ素、Gradia-II窒化ホウ素、Gradia-III窒化ホウ素及びGradia-IV窒化ホウ素と命名されている。
【0029】
Gradia-I窒化ホウ素は、その内部のsp及びsp構造ユニットのサイズによって、6(Pm)又は8(Cm)の2種類の異なる空間群が存在し得る。図2には、空間群が6(Pm)のGradia-I窒化ホウ素が示されている。ユニットセルが12個の窒化ホウ素分子式を含む結晶構造を例にすると、その格子定数はa=3.6216Å、b=2.5161Å、c=18.5246Å、β=91.7313°である。図2からわかるように、Gradia-I窒化ホウ素は、グラファイト様構造(左側の部分)と立方晶ダイヤモンド様構造(右側の部分)によって特定の共晶面で形成された新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが分かる。その共晶面の特徴が図2に示すようなものである場合、形成されたGradia窒化ホウ素は、6(Pm)又は8(Cm)の空間群に属する。
【0030】
Gradia-II窒化ホウ素の空間群は、8(Cm)である。ユニットセルが24個の窒化ホウ素分子式を含む結晶構造を例にすると、図3に示すように、その格子定数は、a=13.0068Å、b=2.5152Å、c=20.5419Å、β=95.966°である。図からわかるように、Gradia-II窒化ホウ素は、左側のグラファイト様構造及び右側の立方晶ダイヤモンド構造によって特定の共晶面で形成された新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であり、その共晶面の特徴が図3に示されるようなものである場合、形成されたGradia窒化ホウ素は、8(Cm)の空間群に属する。
【0031】
Gradia-III窒化ホウ素の空間群は、4(P2)である。ユニットセルが48個の窒化ホウ素分子式を含む結晶構造を例にすると、図4に示すように、その格子定数は、a=6.735799Å、b=4.23985Å、c=24.038511Å、β=93.6611°である。図からわかるように、Gradia-III窒化ホウ素は、左側のグラファイト様構造及び右側の六方晶ダイヤモンド様構造によって特定の共晶面で形成された新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であり、その共晶面が図4に示されるようなものである場合、形成されたGradia窒化ホウ素は、4(P2)の空間群に属する。
【0032】
Gradia-IV窒化ホウ素の空間群は、6(Pm)である。ユニットセルが24個の窒化ホウ素分子式を含む結晶構造を例にすると、図5に示すように、その格子定数は、a=6.0502Å、b=2.5089Å、c=21.1643Å、β=91.8807°である。図からわかるように、Gradia-IV窒化ホウ素は、左側のグラファイト様構造及び右側の六方晶ダイヤモンド様構造によって特定の共晶面で形成された新規sp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であり、その共晶面が図5に示されるようなものである場合、形成されたGradia窒化ホウ素は、6(Pm)の空間群に属する。
【0033】
したがって、本発明のsp-spハイブリッドクリスタル窒化ホウ素は、空間群が4(P2)又は6(Pm)又は8(Cm)である単結晶であってもよく、或いは、空間群が4(P2)又は6(Pm)又は8(Cm)である二相又は多相からなる多結晶であってもよい。
【実施例
【0034】
各実施例で使用される原料は、一般的な市販のspハイブリダイゼーション又はspハイブリダイゼーション窒化ホウ素材料であり、グラファイト様構造の六方晶窒化ホウ素(hBN)及び菱面体窒化ホウ素(rBN)、乱層構造のpBN及びtBN、グラフェン様の単層窒化ホウ素(BN monolayer or nanomesh)、窒化ホウ素ナノチューブ(BN nanotubes)、オニオン窒化ホウ素(oBN)、非晶質窒化ホウ素(aBN)等のspハイブリダイゼーションを含有する窒化ホウ素材料と、閃亜鉛鉱型窒化ホウ素(cBN)及びウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN)等のspハイブリダイゼーションを含有する窒化ホウ素材料とを含む。
【0035】
実施例において、高温高圧操作を行う場合、アメリカRockland Research社製T25型プレス機を使用し、その作動圧力範囲を3~25GPa、作動温度範囲を25~2500℃とすることができるが、本発明に係る高温高圧装置はT25型プレス機に限られず、当該圧力及び温度条件に達することができる高圧機器であればよい。
【0036】
実施例1:六方晶窒化ホウ素(hBN)をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):hBN原料をプレプレス金型に入れ、プレス機を用いて40MPaの圧力で約5minプレプレスして、円筒形の本体を得た後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱を行い、プレ加熱温度を1500℃前後に制御し、プレ加熱時間を約40minに制御する。
【0037】
工程(2):工程(1)でプレ加熱されたhBN材料本体をアセンブリブロックに入れた後、hBN材料本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させる。乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0038】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。その合成圧力が15GPa、温度が900℃、保温時間が120minであり、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0039】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0040】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測した結果を、図6に示す。制限視野電子回折(selected area electron diffraction)の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され(図6に示す)、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された(図6に示す)。高解像度画像は、その構造はグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-III窒化ホウ素及びGradia-IV窒化ホウ素が含まれていることを示している。
【0041】
実施例2:窒化ホウ素ナノチューブをspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):窒化ホウ素ナノチューブをプレプレス金型に入れ、プレス機を用いて30MPaの圧力で約10minプレプレスして、円筒形の本体を得た後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱を行う。プレ加熱温度は1400℃前後に制御し、プレ加熱する焼き時間は15~20minに制御する。
【0042】
工程(2):工程(1)でプレ加熱された窒化ホウ素ナノチューブ本体をアセンブリブロックに入れた後、窒化ホウ素ナノチューブ本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させる。乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0043】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。合成圧力が20GPa、温度が1200℃、保温時間が30minであり、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0044】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0045】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測したところ、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。制限視野電子回折の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素は新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-I窒化ホウ素、Gradia-II窒化ホウ素が含まれていることを示している。
【0046】
実施例3:オニオン窒化ホウ素をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):オニオン窒化ホウ素をプレプレス金型に入れ、プレス機を用いて50MPaの圧力で15minプレプレスして、円筒形の本体を得る。
【0047】
工程(2):工程(1)でプレ加熱されたオニオン窒化ホウ素本体をアセンブリブロックに入れた後、オニオン窒化ホウ素本体のアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させ、乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0048】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。合成圧力が18GPa、温度が1800℃、保温時間が60minであり、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0049】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0050】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測したところ、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。制限視野電子回折の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-I窒化ホウ素、Gradia-II窒化ホウ素、Gradia-III窒化ホウ素、及びGradia-IV窒化ホウ素が含まれていることを示している。
【0051】
実施例4:オニオン窒化ホウ素をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
実施例3の工程(1)~(4)を繰り返すが、工程(3)における合成圧力及び温度を20GPa及び800℃とする。
【0052】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測したところ、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。制限視野電子回折の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-I(空間群は6(Pm)又は8(Cm))、Gradia-II(空間群は8(Cm))、Gradia-III(空間群は4(P2))、Gradia-IV(空間群は6(Pm))が含まれていることを示している。
【0053】
実施例5:六方晶窒化ホウ素(hBN)をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):hBN原料を希塩酸溶液に入れて不純物を除去し、酸洗浄後、hBN原料を分離し、メタノールで複数回洗浄する。洗浄後の窒化ホウ素原料を乾燥処理して、精製されたhBN原料を得る。原料をプレプレス金型に入れ、プレス機を用いて20MPaの圧力で5minプレ成形して、円筒形の本体を得た後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱を行う。プレ加熱圧力が30MPa、プレ加熱温度が1200℃、プレ加熱時間が20分である。
【0054】
工程(2):工程(1)でプレ加熱されたhBN本体をアセンブリブロックに入れた後、窒化ホウ素原料本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させる。乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0055】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。合成圧力が15GPa、温度が1000℃、保温時間が60minであり、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0056】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0057】
Themis Z透過型電子顕微鏡を用いて生成物を試験分析し、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造分析は、得られたサンプルにGradia-I(空間群は6(Pm)又は8(Cm))、Gradia-II(空間群は8(Cm))が含まれていることを示している。
【0058】
実施例6:立方晶窒化ホウ素(cBN)をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):cBN原料粉末に対して精製、真空加熱等の前処理を行い、原料粉末に吸着された酸素、吸着水及び結合水等の不純物を除去する。具体的には、酸溶解による不純物の除去によって精製し、精製後の原料粉末は真空ホットプレス炉の金型内に充填される。真空ホットプレス炉の真空度が5*10-2以下で、温度が1600℃、圧力が30MPaであり、15min保持する。
【0059】
工程(2):工程(1)でプレ加熱されたcBN本体をアセンブリブロックに入れた後、cBN原料本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させる。乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0060】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。圧力が8GPaで、温度が2000℃である条件で保温時間を30minとし、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0061】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0062】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測した。制限視野電子回折の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している。
【0063】
実施例7:立方晶窒化ホウ素(cBN)をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
立方晶窒化ホウ素(cBN)を原料として、実施例5の工程(1)~(4)を繰り返すが、工程(3)における合成圧力及び温度は6GPa及び1700℃とする。
【0064】
Themis Z透過型電子顕微鏡によって、得られた新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を観測したところ、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。制限視野電子回折の結果により、合成されたGradia窒化ホウ素が新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-I(空間群は6(Pm)又は8(Cm))、及びGradia-II(空間群は8(Cm))が含まれていることを示している。
【0065】
KB-5BVZマイクロ硬度計で測定したビッカース硬度の結果は、図7に示すように、漸近線硬度が45GPaであり、最大硬度が50GPaに達した。本実施例で得られたGradia窒化ホウ素のサンプル写真、及び5kgの力荷重でのビッカース硬度の圧痕を図7の模式図に示す。ピットの亀裂長さを測定することにより、算出された破壊靭性は8~10MPa・m1/2であった。
【0066】
実施例8:六方晶窒化ホウ素(hBN)をspハイブリダイゼーション窒化ホウ素原料とするGradia窒化ホウ素の調製
工程(1):hBN原料を希塩酸溶液に入れて不純物を除去し、酸洗浄後、hBN原料を分離して、メタノールで複数回洗浄する。洗浄後の窒化ホウ素原料を乾燥処理して、精製されたhBN原料を得る。原料をプレプレス金型に入れ、プレス機を用いて20MPaの圧力で55minプレ成形して、円筒形の本体を得た後、真空熱圧焼結炉内に入れてプレ加熱を行う。プレ加熱圧力が30MPa、プレ加熱温度が1200℃、プレ加熱時間が20分である。
【0067】
工程(2):工程(1)でプレ加熱されたhBN本体をアセンブリブロックに入れた後、窒化ホウ素原料本体を含むアセンブリブロックを乾燥ボックス内に入れて乾燥させる。乾燥温度が180℃、乾燥時間が2hである。
【0068】
工程(3):工程(2)のアセンブリブロックを取り出して冷却した後、アメリカRockland Research社製T25型プレス機に入れて高温高圧実験を行う。合成圧力が10GPa、温度が1000℃、保温時間が60minであり、冷却後に圧力開放操作を行う。
【0069】
工程(4):プレス機からアセンブリブロックを取り出して、新規sp-spハイブリダイゼーションGradia窒化ホウ素を得た。
【0070】
Themis Z透過型電子顕微鏡を用いて生成物を試験分析し、得られた制限視野電子回折の結果及びEELSスペクトルは図6と類似していた。結果により、合成されたGradia窒化ホウ素は新規構造の窒化ホウ素であることが証明され、EELSスペクトルにより、それがsp-spハイブリダイゼーション窒化ホウ素であることが証明された。高解像度画像は、その構造がグラファイト様構造ユニット及びダイヤモンド様構造ユニットからなることを示している(図1に示す)。結晶構造解析は、得られたサンプルにGradia-I(空間群は6(Pm)又は8(Cm))、Gradia-II(空間群は8(Cm))、Gradia-IV(空間群は6(Pm))が含まれていることを示している。
【0071】
本具体的な実施形態の実施例は、いずれも本発明の好ましい実施例であり、これによって本発明の保護範囲が限定されることはない。よって、本発明の構造、形状、原理等に従ってなされた等価的な変更は本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0072】
本発明の明細書には、様々な成分の任意の材料が挙げられているが、当業者であれば、上記成分の材料の列挙は限定的なものではなく、網羅的なものでもないことを理解すべきである。様々な成分は、本明細書に記載されていない同等の材料で置き換えても本発明の目的を実現することが可能である。本明細書で言及された具体的な実施例は、説明の目的のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
また、本発明の各成分の使用量の範囲には、本明細書に記載されている任意の下限と上限の任意の組み合わせが含まれ、各具体的な実施例における当該成分の具体的な含有量を上限又は下限として組み合わせた任意の範囲が含まれ、これらの全ての範囲は、本発明の範囲に含まれる。しかし、スペースを節約するために、これらの組み合わせによる範囲は、明細書に一々列挙されていない。明細書に列挙された本発明の各特徴は、本発明の他の特徴と任意に組み合わせることができ、これらの組み合わせも本発明の開示範囲内に属す。スペースを節約するために、これらの組み合わせの範囲は本明細書に一々列挙されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7