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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】かつら
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A41G3/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022181402
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2023-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598065311
【氏名又は名称】株式会社カトリ
(72)【発明者】
【氏名】榊 一英
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-291415(JP,A)
【文献】特開2015-155590(JP,A)
【文献】特開2009-084707(JP,A)
【文献】実開平06-061924(JP,U)
【文献】実開平02-042024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
前記三次元網状繊維構造体の厚みが、10mm~30mmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のかつら。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらに関する。より詳細には、三次元網状繊維構造体を用いたかつらや部分かつらに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の頭部に装着する全頭用や部分用のかつらがある。かつらは着用する人の頭髪にカツラ留め具などで止めて固着させて使用していた。かつらを装着したときにずれたり、外れたりしない用にしっかりと密着されて取り付けられている必要があった。かつらを装着している人はあくまでもつけていない様にみせて、つけていることがバレないようにしていることに神経を使っていた。そのためにしっかりと取り付けられていた。しかし特にかつらを長時間使用すると頭が蒸れて痒くなり、また長時間にわたった場合カビが生える、また細菌が増殖することがあった。また不快な臭いが発生し気になるなどの問題点が指摘されていた。
【0003】
三次元網状繊維に関する技術が知られているが、かつらへの応用については開示がない(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0004】
網状繊維をかつらに応用した技術として、内部支持体又はボンネットを、ユーザーの肌にくっつく柔軟な部品から少なくとも部分的に構成し、その少なくとも片面に、使用時にユーザーの肌と接するように配向されたポリシロキサンの薄層又は薄膜を塗布された柔軟な接着部材からなるかつらが知られている(特許文献5)。しかしながら、当該特許文献5には、三次元網状繊維構造体を設けたかつらは開示されていない。
【0005】
網目の粗さの異なる2層のメッシュシートを用いた通気性のよいかつらが知られている(特許文献6)。しかしながら、当該特許文献6には、三次元網状繊維構造体を設けたかつらは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-106135号公報
【文献】特開2017-014681号公報
【文献】特表2002-516368号公報
【文献】特表2000-508032号公報
【文献】特表2005-532485号公報
【文献】特開2008-274451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかつらを装着したときに、汗をかいても汗臭くならず、頭が痒くならず、またカビや細菌が繁殖しづらいかつらを提供し、快適にかつらを装着することができる通気性の良いかつらを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した課題を解決するべき鋭意検討を行った結果、
かつらの裏面(ベース部の頭皮と接する部分)に、三次元網状繊維構造体を設けることで、通気性が良く、頭部部にフィットしたかつらを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、[1]全頭用又は部分用かつらの裏面に三次元網状繊維構造体である線条体が取り付けられたことを特徴とするかつらである。
【0010】
また、本発明は、[2]前記三次元網状繊維構造体が、かつらの前頭部、頭頂部、側頭部、及び後頭部からなる部分の少なくともいずれか一つに取り付けられたことを特徴とする、[1]に記載のかつらである。
【0011】
また、本発明は、[3]前記三次元網状繊維構造体の形状が、円柱形、楕円柱形、立方体形、直方体、又は勾玉型から選択されることを特徴とする[1]又は[2]に記載のかつらである。
【0012】
また、本発明は、[4]前記三次元網状繊維構造体が、中実タイプであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のかつらである。
【0013】
また、本発明は、[5] 前記三次元網状繊維構造体の密度が、M20~50Kg/mであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のかつらである。
【0014】
また、本発明は、[6] 前記三次元網状繊維構造体の厚みが、10mm~30mmであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のかつらである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のかつらは、かつらの裏面(ベース部の頭皮と接する部分)に、三次元網状繊維構造体を設けているので、通気性が良く、頭部部にフィットさせることが可能である。当該三次元網状繊維構造体は、繊維状が繋がった構造の中に空間が生まれていることから通気性が良く、また、クション性、圧縮回復性があり、瞬時にもとの形へ復元することからフィット感が良好となる。
【0016】
本発明のかつらは、全かつら又は部分かつらの裏面に三次元網状繊維構造体を設けることにより、通気性、速乾性を有することから、快適にかつらを装着することができる。また、装着時にかつらの裏面と頭部との間に一定の空間が設けられており、その通気性により、汗で痒くなったり、細菌が繁殖して臭くなったりすることを抑制し、抗菌防臭性につながることも期待できる。その結果、長時間快適に使用できることに繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】かつらの平面を示す図である。
図2】かつらの断面を示す図である。
図3】三次元網状繊維構造体をネットで包んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、かつらの裏面(ベース部の頭皮と接する部分)に、三次元網状繊維構造体を設けることで、繊維状が繋がった構造の中に空間が生まれていることから通気性が良く、また、クッション性、圧縮回復性があり、瞬時にもとの形へ復元することからフィット感が良好なかつらに関する。また、通気性、速乾性を有することから、快適にかつらを装着することができ、その通気性により、汗で痒くなったり、細菌が繁殖して臭くなったりすることを抑制し、抗菌防臭性につながることが期待でき、長時間快適に使用できるかつらに関する。以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
【0019】
〔1〕本発明の第1の態様は、全頭用又は部分用かつらの裏面に三次元網状繊維構造体である線条体が取り付けられたことを特徴とするかつらである。
【0020】
〔2〕本発明の第2の態様は、前記三次元網状繊維構造体が、かつらの前頭部、頭頂部、側頭部、及び後頭部からなる部分の少なくともいずれか一つに取り付けられたことを特徴とする、前記態様〔1〕に記載のかつらである。
【0021】
〔3〕本発明の第3の態様は、前記三次元網状繊維構造体の形状が、円柱形、楕円形、立方体形、直方体、又は勾玉型から選択されることを特徴とする、前記態様〔1〕又は前記態様〔2〕に記載のかつらである。
【0022】
〔4〕本発明の第4の態様は、前記三次元網状繊維構造体が、中実タイプであることを特徴とする、前記態様〔1〕又は前記態様〔2〕に記載のかつらである。
【0023】
〔5〕本発明の第5の態様は、前記三次元網状繊維構造体の密度が、M20~50Kg/m3であることを特徴とする、前記態様〔1〕又は前記態様〔2〕に記載のかつらである。
【0024】
〔6〕本発明の第6の態様は、前記三次元網状繊維構造体の厚みが、10mm~30mmであることを特徴とする、前記態様〔1〕又は前記態様〔2〕に記載のかつらである。
【0025】
〔7〕本発明の第7態様は、前記態様〔1〕~〔6〕のいずれか1態様に記載の特徴を少なくともいずれか一つ任意に組み合わせた、かつらである。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
「三次元網状繊維構造体」とは、様々な樹脂を押出成形等でばね状にし、三次元構造に仕上げた樹脂網状構造体をいう。樹脂の例としては熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、ゴム弾性をもつポリエーテルエステルエラストマー繊維で、たくさんのループを描きながら三次元方向につながった構造体を形成したものが一例である。熱可塑性の樹脂を主原料とした複数本の線条を、螺旋状に無秩序に絡ませ、部分的に熱接着させてなる網状構造体等が形成され、当該網状構造体には、線条と線条の間に無数の空隙を有する構造となる。
【0027】
当該三次元網状繊維構造体には、ループとループの間にたくさんの貫通した空間を含んでいることから、優れた通気性を発揮することになる。また、この通気性により、発汗時の人と製品の間にある空間の温湿度上昇を抑制でき、暑熱感や蒸れ感を低減させ、かつらを長時間使用した際、頭の中が蒸れて痒くなったり、不快な臭いを発生するのを抑えることが可能となる。
【0028】
また、当該構造体は、水に濡れてもすぐに水が切れ、乾燥性にも優れているため水洗いが可能であり、汚れたときは流水やシャワーなどで洗い流すことによって、いつも清潔に保つことができる。更に、当該構造体には、繊維上の細菌の増殖を抑制する制菌性能を持たせることも可能である。
【0029】
当該構造体の線条については、中空繊維タイプ(穴が空いている繊維)や、中実繊維タイプ(穴が空いていない繊維)とすることが可能である。繊維を中空化することで、硬さを維持しつつ軽量化が可能となる。
【0030】
本発明に用いられる樹脂の一例として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられるが、分子構造にハードセグメントとソフトセグメントを同時に持つことで硬度と柔軟性を両立させた、プラスチックとゴムの間の存在の材料である。より詳細には、ポリマー分子中のハードセグメントとしてポリエステル構造を、ソフトセグメントとしてポリエーテルあるいはポリエステルを用いた、ブロック共重合ポリマーである。
【0031】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、上記のソフトセグメントの構造によって、ポリエステル‐ポリエステル型、ポリエステル‐ポリエーテル型の2種類に主に分類されるが、ソフトセグメントの具体構造・種類とハードセグメントの具体構造・種類、とそれらの割合によって様々な特徴を持つポリマーが合成可能である。
【0032】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーについては、以下のような特徴が一般的に知られている。
(1)機械的な強度が大きく、機械性能のバランスが良い、
(2)優れた曲げ疲労特性、耐屈曲性、
(3)熱可塑性エラストマーの中でも使用温度領域が広い、
(4)耐油、耐薬品性、耐オゾン性、(常温での)耐水性、
(5)低温での柔軟性・耐屈曲性が優れる、
(6)優良な耐衝撃性、反発弾性、
(7)ソフトセグメントをチューニングすることで柔軟性を調整できるので可塑剤が基本的に不使用、かつリサイクル性が優れる。
【0033】
規格が知られている。
「密度」:M15Kg/m、M20Kg/m、M30Kg/m、M40Kg/m、M50Kg/m、M55Kg/m、M60Kg/m
「厚み」:5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm。
【0034】
【表1】
【0035】
<かつらに取り付ける三次元網状繊維構造体>
・形状:円柱状、楕円柱状、立方体、直方体など適宣設定できる。
・大きさ:かつらの裏面全体であっても良い。また、前頭部、頭頂部、側頭部、後頭部などの一部に単体で配置されても良い。
・厚さ:10mm~30mm、が好適であるが、好ましくは10mm~25mmが良い。更に好ましくは15mm~20mmであるのが良い。
・配置位置:かつらの裏面全体でも良い。また一部でも良い。
・配置個数:一個でも良いし、複数個でも良い。
・適宣組み合わせることが可能であり、かつらのデザイン、形状にあわせて適宣設計できる。
【0036】
<本発明のかつらの製造方法>
全頭用かつら及び部分かつらの裏面に三次元網状繊維構造体を設けるにあたり、糸と針で縫い付けてもよく、また、接着剤や両面テープで接着してもよく、またマジックテープやホックなどで取り付けてもよい。
<かつらへの取付け方法>
三次元網状繊維構造体を保護する為、ネットで包み込んで形を整えても良く、かつら、部分かつらの裏面にネットがらみで取り付けても良い。
全頭用かつら及び部分かつらの裏面に三次元網状繊維構造を収納するネット(袋)が設けられ、一部に切り込み又は開口部にはファスナーやマジックテープが設けられ、三次元網状繊維構造体を出し入れ可能とすることもできる。また、ネット等の中に三次元網状繊維構造体を収納したものを全頭かつらや部分かつらの裏面に直接と取り付けても良い。
【実施例
【0037】
(試験例1)三次元網状繊維構造体の通気量試験
(試験方法)通気量試験 <東京都立産業技術研究センターで実施>
JIS L 1096:2010 織物及び編物の生地試験方法(フラジール形法)
測定回数 各サンプル1回(*印は5回)
(通気量試験サンプル)
東洋紡社製の以下の規格を本試験のサンプルとして使用した。
・中実タイプ:M3030N、M4530N、M5530N、M4520N*、H4530N
・中空タイプ:M3530B、M4530B、M6530B、H4530B、M4530A、M5015A*
(試験結果)
上記の試験方法での測定結果を<表2>に示す。
【表2】
上記の結果、どのタイプも本試験における通気量は良好であった。
【0038】
<製造例1>
部分かつらの裏面に三次元網状繊維構造体を、その中心部の位置に1個接取り付けた。その寸法は縦の長さは30mmで横の長さは50mmであり、厚みは20mmのものを作成し取り付けた。その取り付け方法は部分かつらの裏面に直接糸と針で縫い付けた。
【0039】
<製造例2>
(製造例1)と同様の方法で、三次元網状繊維構造体をネット等で包んで、 包んだものを直接部分かつらの裏面の中心部の位置に取り付けた。サイズは製造例1と同様の縦の長さ30mm×横の長さ50mm×厚み20mmのもので行った。
【0040】
(試験例2)モニター試験(かつらの裏面と三次元網状繊維構造体との形状の維持の調査)
(試験方法)
既存のかつらや部分かつらを装着していると、
1 痒くなる
2 蒸れる
3 臭くなる
等の苦情を訴えたモニター(3名)に本発明「製造例1」のかつらを終日装着してもらい、試用試験を行った。そうして各モニターより使用後の使用感を入手した。
(試験結果)
3人のモニターとも、痒くなったり、蒸れたり、臭くなったりすることがなかったとの感触を得た。また、三次元網状繊維構造体の形状が良好に維持されていた。
【0041】
繊維のタイプは空間をできるだけ生じさせるようにする為には、中空タイプより中実タイプの方が空間が生まれ、またフット感や脱着後の復元などを考慮したところ、中実タイプの方が、より適していることがわかった。
密度においては、M10Kg/m以下では粗い目になってその形状を維持することができず、カツラに内臓してもペチャンコにつぶれて形状を維持しずらいこと、また、M60~70Kg/mではやや密度がありすぎた状態であった。従って、密度の点を考慮すると、M20~50Kg/mがより好適であると思われた。
厚みについては、5mm厚は薄すぎて弱くその形状を維持しづらいことがわかった。また、30mm厚を超えると厚みがありすぎて、高さ(かつら裏面と頭皮との間)が高くなりすぎて、デザイン的に適切ではないように思われた。従って、厚みを考慮すると、10mm~30mmの厚さがあるものがより好適であると思われた。デザイン性を考慮すると、10mm~25mmであることが更に好ましいと思われた。
中実タイプと中空タイプと比較したところ、繊維が細い中実タイプはすべてのタイプで通気性の点で良好であった。その中でのM4530N、H4530N、M4520Nについては、密度がややあり過ぎるので、通気性の点では、その他の番手を選択することが更に好ましいと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のかつらは、かつらの裏面(ベース部の頭皮と接する部分)に、三次元網状繊維構造体を設けているので、通気性が良く、頭部部にフィットさせることが可能となり有用である。当該三次元網状繊維構造体は、繊維状が繋がった構造の中に空間が生まれていることから通気性が良く、また、クッション性、圧縮回復性があり、瞬時にもとの形へ復元することからフィット感が良好である。
【0043】
本発明のかつらは、全かつら又は部分かつらの裏面に三次元網状繊維構造体を設けることにより、通気性、速乾性を有することから、快適にかつらを装着することができ、有用である。また、装着時にかつらの裏面と頭部との間に一定の空間が設けられており、その通気性により、汗で痒くなったり、細菌が繁殖して臭くなったりすることを抑制し、抗菌防臭性につながることも期待できる。その結果、長時間快適に使用できることに繋がり有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 かつら
2 毛髪
3 三次元網状繊維構造体
4 毛髪を植毛する為のベース(ネット)
5 三次元網状繊維構造体を包むネット
【要約】
【課題】かつらを装着したときに、汗をかいても汗臭くならず、頭が痒くならず、又カビや細菌が繁殖しづらいかつらを提供し、快適にかつらを装着することが出来る通気性の良いかつらの提供。
【解決手段】全頭用又は部分用かつらの裏面に三次元網状繊維構造体である線条体が取り付けられたことを特徴とするかつら。
【選択図】図1
図1
図2
図3