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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】培養容器支持装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019135011
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021016362
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】米田 健二
(72)【発明者】
【氏名】出口 直也
(72)【発明者】
【氏名】西村 典朗
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-099011(JP,A)
【文献】特開2003-302411(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208755(WO,A1)
【文献】特開2000-230991(JP,A)
【文献】特開2017-131932(JP,A)
【文献】特開昭61-109114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B65G
F15B
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器を支持して水平移動させる培養容器支持装置であって、
水平に配置されたX軸案内ロッドと、当該X軸案内ロッドと直交して水平に配置されたY軸案内ロッドと、上記X軸案内ロッドを直交する水平なY軸に沿って移動させるY軸移動機構と、上記Y軸案内ロッドを直交する水平なX軸に沿って移動させるX軸移動機構と、上記X軸案内ロッドとY軸案内ロッドの交差箇所に設けられ、上記Y軸移動機構による上記X軸案内ロッドの移動に伴い上記Y軸案内ロッドに案内されて移動するとともに、上記X軸移動機構による上記Y軸案内ロッドの移動に伴い上記X軸案内ロッドに案内されて移動する受動部材と、当該受動部材に設けられて上記培養容器を支持する支持部材と、当該支持部材を傾斜させる傾斜駆動機構とを備え、
上記Y軸移動機構およびX軸移動機構と上記傾斜駆動機構とが制御装置により作動を制御されることによって、上記支持部材に支持された培養容器を、傾斜させるとともに水平移動させることを特徴とする培養容器支持装置。
【請求項2】
上記X軸案内ロッドおよびY軸案内ロッドは、いずれも2本の平行な案内ロッドから構成され、
上記受動部材は、各2本の案内ロッドが交差する交差箇所で、各々の2本の案内ロッド間に介在されるとともに、いずれか一方の2本の案内ロッドに支持されることを特徴とする請求項1に記載の培養容器支持装置。
【請求項3】
上記支持部材は、上記傾斜駆動機構により上記水平なY軸もしくはX軸と平行な支軸を支点として傾斜され、
上記制御装置は、上記支持部材に支持された培養容器を傾斜させた状態で、上記支軸と直交する方向に水平移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の培養容器支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養するための培養容器を支持する培養容器支持装置に関し、より詳しくは、支持した培養容器を水平方向に移動させるとともに傾斜させることのできる、培養容器支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の再生医療における細胞培養では、効率的かつ無菌的に操作を行うために自動化装置が開発されている。そして、細胞を培養するために必要な操作においては、細胞懸濁液や培養液など様々な液体を培養容器に対して注入し吸引する操作が必要となる。特に培養容器が複数のウェルを形成したウェルプレートの場合には、順次各ウェルに対して液体を注入または吸引するために、ウェルプレートに対してノズルを移動させる装置が必要となる。
そこで、上述した操作をロボットにより自動化した装置が提案されている(例えば特許文献1)。この特許文献1の装置においては、3軸直交座標型ロボットにノズルを支持させて、ウェルプレートの各ウェルに対して液体の注入や吸引を行うようになっている。また、ウェルプレートは、受台に水平に支持された状態で、傾斜させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3413418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した3軸直交座標型ロボットのような複雑な機械構造体を備えた装置においては、装置が大型化するとともに、培養容器の上方でロボットが動作するため、摺動箇所から発生する粉塵や磨耗粉等の異物が培養容器に混入するという問題がある。また、無菌性を維持するためには定期的もしくは必要に応じて除染を行う必要があるため、3軸直交座標型ロボットが除染剤に耐性を有し除染可能であることが要求され、また、形状が複雑で除染に長時間を要するという問題がある。さらには、3軸直交座標型ロボットによる動作は、人間が行う動作を置き換えたものであり、処理能力の向上には限界があるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に係る本発明は、培養容器を支持して水平移動させる培養容器支持装置であって、
水平に配置されたX軸案内ロッドと、当該X軸案内ロッドと直交して水平に配置されたY軸案内ロッドと、上記X軸案内ロッドを直交する水平なY軸に沿って移動させるY軸移動機構と、上記Y軸案内ロッドを直交する水平なX軸に沿って移動させるX軸移動機構と、上記X軸案内ロッドとY軸案内ロッドの交差箇所に設けられ、上記Y軸移動機構による上記X軸案内ロッドの移動に伴い上記Y軸案内ロッドに案内されて移動するとともに、上記X軸移動機構による上記Y軸案内ロッドの移動に伴い上記X軸案内ロッドに案内されて移動する受動部材と、当該受動部材に設けられて上記培養容器を支持する支持部材と、当該支持部材を傾斜させる傾斜駆動機構とを備え、
上記Y軸移動機構およびX軸移動機構と上記傾斜駆動機構とが制御装置により作動を制御されることによって、上記支持部材に支持された培養容器を、傾斜させるとともに水平移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、小型であり構成が簡単で除染も容易であって無菌環境下での使用に最適な、培養容器を水平移動させる培養容器支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る培養容器支持装置を備えた細胞処理装置の断面図。
図2】本発明に係る培養容器支持装置の移動機構部を示す平面図。
図3図2のIII―III線に沿う断面図。
図4】本発明に係る培養容器支持装置の容器支持部を示す部分断面図。
図5】本発明に係る培養容器支持装置を備えた細胞処理装置による培養に要する操作を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1において細胞処理装置1は、アイソレータ2内に設けた無菌作業室2Aに、培養容器としてのウェルプレート3を支持する培養容器支持装置4と、液体処理装置としてノズル5を保持した分注装置6とを備えて構成されている。
上記アイソレータ2の内部空間は、水平なベーステーブル2Bにより上下に分割されており、ベーステーブル2Bの上方側を上記無菌作業室2Aとし、下方側を機械室2Cとしている。当該機械室2Cには、上記培養容器支持装置4や分注装置6の駆動部の他、細胞処理装置1の作動を制御する制御装置7が収納されている。また、上記無菌作業室2Aの上部には空気清浄化装置8が配置されて、無菌作業室2Aに上方から清浄な空気を供給するようになっている。
【0009】
上記培養容器支持装置4は、ウェルプレート3を支持する容器支持部4Aを上部に備えるとともに、当該容器支持部4Aを水平なX軸方向とこれと直交する水平なY軸方向およびこれらの合成方向に移動させる移動機構部4Bを下部に備えて構成されている。
また、本実施例において上記培養容器支持装置4に支持されるウェルプレート3は、図4に示すように、3個のウェル3Aを2列に整列させた合計6個のウェル3Aが形成されており、各ウェル3Aは同じ寸法の円形開口を有する容積の同じ凹部であって、底部は平坦面となっている。このようなウェルプレート3において、各ウェル3Aに細胞を収容して培養を行う。
なお、容器支持部4Aには、複数のウェルプレート3を並列させて支持するようにしても良く、さらには、培養容器としてはウェルプレート3以外のシャーレやフラスコ等を支持させても良いし、これら異なる種類の培養容器を並列させて支持させるようにしても良い。また、培養容器と培養容器以外の容器を並列させて支持させることもできる。
【0010】
上記分注装置6は、ノズル5を昇降させる昇降機構9を備えており、ノズル5は昇降機構9の昇降部材9Aに鉛直下方に向けて保持されている。また、ベーステーブル2Bの下方の機械室2Cには、昇降機構9の駆動用のサーボモータ9Bが配置されているとともに、給排気装置10が設置されており、チューブ10Aを介してノズル5に接続されている。分注装置6においてノズル5はピペットであり、給排気装置10の排気作用によりノズル5から気体を引き込んで液体を吸引させるとともに、給気作用によりノズル5に気体を供給して液体を吐出させるようになっている。
このように構成される分注装置6においては、昇降機構9を作動させてノズル5を下降させ、下方に位置するウェルプレート3のウェル3Aに挿入するとともに、給排気装置10の作動により、ウェル3Aに収容されている液体をノズル5に吸引して保持し、また、ノズル5に保持した液体を吐出させてウェル3Aに注入することで、液体を撹拌させるピペッティングを実行できる。また、容器支持部4Aに同時に支持させた図示しない他の容器に収容された液体を、ノズル5に吸引して保持し、容器支持部4Aを移動機構部4Bにより水平移動させて、ウェルプレート3の複数のウェル3Aに順次注入する分注を行うことができる。
【0011】
図2は、培養容器支持装置4の移動機構部4Bを示す平面図であり、図3図2のIII―III線に沿う断面図である。
上記ウェルプレート3を支持する容器支持部4Aを水平移動させる移動機構部4Bは、所定間隔で平行かつ水平に配置された2本の案内ロッド11、11から構成されるX軸案内ロッド12と、当該X軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11と直交し、所定間隔で平行かつ水平に配置された2本の案内ロッド13、13から構成されるY軸案内ロッド14と、上記X軸案内ロッド12を案内ロッド11、11の長手方向と直交する水平なY軸に沿って移動させるY軸移動機構15と、上記Y軸案内ロッド14を案内ロッド13、13の長手方向と直交する水平なX軸に沿って移動させるX軸移動機構16と、上記X軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11と上記Y軸案内ロッド14の各案内ロッド13、13が交差する交差箇所に設けられた受動部材17とを備えて構成され、上記Y軸移動機構15とX軸移動機構16により上記受動部材17が水平移動されるようになっており、当該受動部材17に上記容器支持部4Aを設けることで、培養容器支持装置4が構成されている。
【0012】
上記X軸案内ロッド12は、各案内ロッド11、11の一端を板状の固定部材12Aに固定するとともに、他端を同じく板状の固定部材12Bに固定して構成し、これら固定部材12A、12Bは対向して配置され、対をなす案内ロッド11、11は長さが等しく、一定の間隔で平行かつ同じ高さで水平に維持されている。同様に上記Y軸案内ロッド14についても、各案内ロッド13、13の一端を板状の固定部材14Aに固定するとともに、他端を同じく板状の固定部材14Bに固定して構成し、これら固定部材14A、14Bは対向して配置され、対をなす案内ロッド13、13は長さが等しく、一定の間隔で平行かつ同じ高さで水平に維持されている。
なお、本実施例においては、案内ロッド11、11の間隔と案内ロッド13、13の間隔は等しく、長さは案内ロッド11、11の方が長くなっている。
【0013】
上記X軸案内ロッド12とY軸案内ロッド14は、無菌作業室2A内のベーステーブル2B上に立設させた4本の支柱18により、四隅を支持される矩形の枠として形成された枠状支持部材19に水平移動可能に支持されている。
上記枠状支持部材19は、枠の四辺のうちX軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11と直交して対向する一対の辺を、X軸案内ロッド12を支持するX軸支持辺19A、19Bとし、Y軸案内ロッド14の各案内ロッド13、13と直交して対向する一対の辺を、Y軸案内ロッド14を支持するY軸支持辺19C、19Dとしており、本実施例においては、X軸支持辺19A、19BよりもY軸支持辺19C、19Dの方が、長く形成されている。
これらX軸支持辺19A、19B、Y軸支持辺19C、19Dの上面は水平面として形成され、X軸支持辺19A、19Bの上面には、X軸案内ロッド12を案内ロッド11、11と直交する水平なY軸に沿って案内するY軸レール20A、20Bが設けられている。また、Y軸支持辺19C、19Dの上面には、Y軸案内ロッド14を案内ロッド13、13と直交する水平なX軸に沿って案内するX軸レール20C、20Dが設けられている。
【0014】
上記X軸案内ロッド12の固定部材12A、12Bおよび上記Y軸案内ロッド14の固定部材14A、14Bは、それぞれ上記枠状支持部材19の枠の外側に位置しており、固定部材12A、12Bの各対向面には、Y軸レール20A、20Bによって案内されるスライド部材21A、21Bが設けられ、固定部材14A、14Bの各対向面には、X軸レール20C、20Dによって案内されるスライド部材21C、21Dが設けられている。これにより上記X軸案内ロッド12は、水平なY軸に沿って移動自在となっており、上記Y軸案内ロッド14は、水平なX軸に沿って移動自在となっている。
なお、上記X軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11は、固定部材12A、12Bにより同じ高さで平行に配置させている。また、上記Y軸案内ロッド14の各案内ロッド13、13についても、同様に固定部材14A、14Bにより同じ高さで平行に配置しているが、図3に示すように本実施例では、上記Y軸案内ロッド14の各案内ロッド13、13は、上記X軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11よりも高い位置において、各案内ロッド11、11に直交させており、上記Y軸案内ロッド14におけるスライド部材21C、21Dに対する各案内ロッド13、13の高さが、上記X軸案内ロッド12におけるスライド部材21A、21Bに対する各案内ロッド11、11の高さよりも高くなるよう、固定部材12A、12Bおよび固定部材14A、14Bに対する取り付け位置が設定されている。
【0015】
上記X軸案内ロッド12と上記Y軸案内ロッド14の交差箇所となる、各案内ロッド11、11間と各案内ロッド13、13間に介在させて受動部材17を設けている。
受動部材17は、角に丸みを付けた正四角柱として形成された胴体部17Aと、胴体部17Aの上部において胴体部17Aの断面に対して四辺を均等に張り出して形成した、上面が胴体部17Aの断面よりも大きな正方形のステージ部17Bから構成されている。胴体部17Aは各案内ロッド11、11の間と各案内ロッド13、13の間に、ほぼ隙間なく収まるように形成されており、ステージ部17Bは上面に容器支持部4Aを取り付け可能で、張り出した下面は、各案内ロッド11、11の上方に位置している各案内ロッド13、13に係合し、各案内ロッド13、13上に載置されて受動部材17が支持されるようになっている。
このような受動部材17によれば、上記X軸案内ロッド12がY軸に沿って移動すると、受動部材17は胴体部17Aがいずれかの案内ロッド11に押され、Y軸案内ロッド14の各案内ロッド13、13に案内されて、Y軸の前後方向に移動され、また、上記Y軸案内ロッド14がX軸に沿って移動すると、胴体部17Aがいずれかの案内ロッド13に押され、X軸案内ロッド12の各案内ロッド11、11に案内されて、X軸の前後方向に移動されるようになっている。そして、X軸案内ロッド12とY軸案内ロッド14が同時に移動することで、それらの移動が合成した方向へ受動部材17を移動させることができ、直線的のみならず曲線的な軌跡で受動部材17を移動させることが可能である。
なお、本実施例においては、案内ロッド11、13をステンレスで構成しており、受動部材17は摺動性や耐摩耗性、耐薬品性を備えた、エンジニアリングプラスチックとしての樹脂材料により構成して、滑らかでスムーズに移動するとともに、粉塵や磨耗粉等の異物を発生させず、除染も可能となっている。
【0016】
上記Y軸移動機構15として、上記X軸案内ロッド12の一方の固定部材12Aの下端部には、Y軸レール20Aと平行にY軸ラック22が設けられており、当該Y軸ラック22には、ベーステーブル2Bの下方の機械室2Cに設けたサーボモータ23で回転されるピニオンギア23Aが噛み合っている。また、上記X軸移動機構16として、上記Y軸案内ロッド14の一方の固定部材14Aの下端部には、X軸レール20Cと平行にX軸ラック24が設けられており、当該X軸ラック24には、ベーステーブル2Bの下方の機械室2Cに設けたサーボモータ25で回転されるピニオンギア25Aが噛み合っている。
これにより、サーボモータ23を正逆に回転させることにより、X軸案内ロッド12を水平なY軸に沿ったY軸方向前後に進退させることができ、サーボモータ25を正逆に回転させることにより、Y軸案内ロッド14を水平なX軸に沿ったX軸方向前後に進退させることができ、受動部材17および容器支持部4Aを水平方向に移動させることが可能である。
なお、Y軸ラック22、X軸ラック24は、図3に示すように、互いに干渉することがないよう、取り付け高さを異ならせており、本実施例では、Y軸ラック22はX軸ラック24よりも低い位置に配置している。そのため、上記X軸案内ロッド12におけるスライド部材21Aに対するY軸ラック22の位置は、上記Y軸案内ロッド14におけるスライド部材21Cに対するX軸ラック24の位置よりも低くなるよう、固定部材12Aおよび固定部材14Aに対する取り付け位置を設定している。
【0017】
図4は、培養容器支持装置4の容器支持部4Aを示し、(a)は水平状態を、(b)は傾斜状態を示している。
容器支持部4Aは、ウェルプレート3を支持する支持部材26と、当該支持部材26を傾斜動可能に設けたベース部材27と、上記支持部材26を傾斜させる傾斜駆動機構28とを備えて構成されており、上記支持部材26の上面に、ウェルプレート3を嵌め込んで位置決めさせる位置決め部26Aが形成されている。
上記支持部材26には、下面の一端に回動軸部26Bが設けられ、当該回動軸部26Bから両側方に向けて水平な支軸26Baを突出させており、上記ベース部材27の上面の一端には、当該支軸26Baの両端部を回転自在に支持する軸支部27Aが設けられ、ベース部材27の上面に支軸26Baを軸支することで、上記支軸26Baを支点として上記支持部材26が上下に回動可能に設けられている。
なお、上記支軸26Baは、上記水平なY軸もしくはX軸と平行に配置しており、本実施例においては、図1に示すように、Y軸案内ロッド14と直交する水平なX軸と平行に配置している。
【0018】
上記傾斜駆動機構28としては、上記支持部材26の下面における、上記回動軸部26Bを設けた基端とは反対側となる先端寄りに、反対カムを構成する溝カム部材28Aが設けられ、当該溝カム部材28Aに、上記支軸26Baと直交する方向に伸びる溝28Aaが、上記支持部材26の先端側に向けて下降するよう形成されている。また、上記ベース部材27の上面には、反対カムを駆動させるエアシリンダや電動アクチュエータ等の直動式の進退駆動装置28Bを、その進退ロッド28Baが上記支持部材26の先端側に向けて水平に前進するよう配置されている。そして、上記進退ロッド28Baの先端にカムフォロア28Cを設け、当該カムフォロア28Cを上記溝カム部材28Aの溝28Aaに係合させた状態で往復動させるよう構成している。
このような構成により、図4(a)に示す支持部材26およびウェルプレート3の水平状態から、進退駆動装置28Bにより進退ロッド28Baを伸長させることで、図4(b)に示すように、カムフォロア28Cが支持部材26の先端側に向けて前進し、溝カム部材28Aは溝28Aaの形状に従って上方へ押し上げられる。これに伴い、支持部材26は上記回動軸部26Bの支軸26Baを支点として上方へ回動されることで傾斜され、支持しているウェルプレート3が傾斜状態となる。
【0019】
以上のように構成された培養容器支持装置4を備える細胞処理装置1によって、培養容器としてウェルプレート3を使用した細胞の培養に要する操作の一例について、図5を用いて説明する。
図5は、培養された細胞を回収する操作について示しており、図5(a)は、ウェルプレート3のウェル3Aの底に接着している細胞Cを剥がす操作を示している。
すなわち、図5(a)において、ウェル3Aには培養液Fが収容されて底に細胞Cが張り付いている。支持部材26の位置決め部26Aによってウェルプレート3を位置決めした状態で、制御装置7の制御によって、分注装置6において昇降機構9の作動によりピペットからなるノズル5を下降させてウェル3A内の培養液Fに先端5Aを水没させるとともに、給排気装置10の作動によりノズル5で所定量の培養液Fの吸引と吐出を繰り返して撹拌する。この際、ノズル5がウェル3Aの中心を外して位置するように、制御装置7の制御において、駆動機構部4BのY軸移動機構15とX軸移動機構16の作動によりウェルプレート3を位置させ、この位置からウェル3A内でノズル5が相対的に旋回運動するように、Y軸移動機構15とX軸移動機構16を作動させてウェルプレート3を水平移動させて周回運動させる。これにより、ウェル3Aの底に接着している細胞Cの全領域に対して、培養液Fの吸引と吐出が繰り返されて細胞Cの剥離が促進される。
【0020】
図5(b)、(c)は、ウェル3A内で剥離された細胞Cを回収する操作を示している。
すなわち、上記図5(a)に示した剥離操作により、大部分の細胞Cは剥離されて培養液Fとともに吸引されて回収されるが、吸引しきれない培養液Fおよび細胞Cが底に残っている。そこで、図5(b)に示すように、制御装置7の制御において容器支持部4Aにおける傾斜駆動機構28を作動させて、支持部材26を傾斜させてウェルプレート3を傾斜状態とするとともに、この状態で分注装置6において昇降機構9の作動によりノズル5を下降させてウェル3Aに挿入し、給排気装置10の作動によりノズル5に培養液Fおよび細胞Cを吸引する。この際、制御装置7は、移動機構部4BのY軸移動機構15とX軸移動機構16の作動により、容器支持部4Aを構成する支持部材26の回動軸部26Bを設けた基端側となるウェル3Aの端が、ノズル5の下方に位置するようにウェルプレート3を移動させるとともに、ノズル5の先端5Aが傾斜したウェル3Aの底の最も低い箇所に近づくように、ノズル5を底近くまで下降させ、この状態でノズル5に培養液Fおよび細胞Cを吸引させる。
そして、本実施例ではさらに図5(c)に示すように、制御装置7の制御においてノズル5を傾斜したウェル3Aから出ない程度に、昇降機構9の作動により上昇させるとともに、ウェルプレート3をノズル5が現在位置しているウェル3Aの底の最も低い箇所から、反対側のウェル3Aの底の最も高い箇所に位置するように、傾斜状態のまま駆動機構部4BのY軸移動機構15もしくはX軸移動機構16を作動させて水平移動させ、この位置関係において、既に吸引して保持している培養液Fおよび細胞Cを吐出させる。その後、このような最も低い箇所と最も高い箇所をノズル5が相対的に往復移動するように、Y軸移動機構15もしくはX軸移動機構16を作動させてウェルプレート3を往復動させて、最も低い箇所での吸引と、最も高い箇所での吐出を数回繰り返し、この操作により、なおもウェル3の底に付着している細胞Cを洗い流して回収するようにしている。
複数回の吸引と吐出を繰り返した後、再度ノズル5を傾斜したウェル3Aの最も低い箇所に先端5Aが位置するように、ウェルプレート3を水平移動させるとともにノズル5を下降させて、ノズル5に培養液Fおよび細胞Cを吸引して、培養液Fとともに細胞Cを回収する。
なお、このようなノズル5の位置に対してウェル3Aにおける最も低い箇所と最も高い箇所を位置させる、傾斜させたウェルプレート3の水平移動については、支持部材26の回動軸部26Bの支軸26Baと直交する方向に水平移動させるものであり、本実施例においては、支軸26BaはY軸案内ロッド14と直交して水平なX軸と平行に配置しているため、上記制御装置7は、ウェルプレート3を傾斜させた状態で支持している支持部材26を、上記支軸26Baと直交する水平なY軸方向に移動させるようになっている。
【0021】
なお、上述した実施例は、無菌操作室2Aに液体処理装置として、分注装置6を設けた細胞処理装置1について説明しており、ノズル5としてピペットを用いて、操作例として、吸引と吐出を繰り返すピペッティングにより、細胞Cの剥離と回収を行う場合について説明したが、培養液Fをボトルなどの容器に収容させて準備し、この容器から培養液Fを吸引してノズル5に保持し、制御装置7の制御により移動機構部4Bを作動させて、ノズル5の下方に位置させたウェルプレート3やその他の培養容器に吐出して注入する分注操作を行うことも可能であり、さらには、分注装置6に代えて、培養液Fや洗浄液などその他の液体を、容器から直接培養容器に送り出すノズル5を備えた送液装置や、ウェルプレート3のウェル3Aから培養液Fや洗浄液などを吸引して回収するノズル5を備えたアスピレータ等の装置を設けた細胞処理装置1にも、本発明の培養容器支持装置4を適用することができる。
本発明における培養容器支持装置4を備えた細胞処理装置1においては、これら液体処理装置におけるノズル5は昇降機構9により昇降動作を行い、水平方向についてはウェルプレート3等の培養容器を水平移動させることにより行っているため、粉塵や磨耗粉等の異物が生じて培養容器に混入することが防止されている。また、培養容器に対するノズル5の移動を、ノズル5の昇降動作と培養容器の水平移動とに分けているため、同時並行的に動作させることが可能で、効率的な動作により細胞を処理することができる。
【0022】
さらには、X軸案内ロッド12、Y軸案内ロッド14については、本実施例においては、2本の案内ロッド11、11および案内ロッド13、13により構成しているが、案内ロッドの本数は2本に限るものではなく、1本や3本であっても良く、例えば、1本のX軸案内ロッド12とY軸案内ロッド14を、高さを異ならせて直交させるようにして受動部材17に貫通させることで、本実施例と同様に、これらX軸案内ロッド12およびY軸案内ロッド14を移動させて、一方の案内ロッドの移動に伴い他方の案内ロッドに案内されて、受動部材17を水平移動させることができる。
いずれにおいても、X軸案内ロッド12、Y軸案内ロッド14および枠状支持部材19からなる、容器支持部4AをXY移動させるための構成部分は、大部分が棒状の部材から構成されており、小型で構成が簡単で除染も容易であり、無菌環境下である無菌作業室2Aでの使用に最適である。
【符号の説明】
【0023】
1‥細胞処理装置 2A‥無菌作業室
3‥ウェルプレート(培養容器) 4‥培養容器支持装置
5‥ノズル 6‥分注装置
7‥制御装置 12‥X軸案内ロッド
14‥Y軸案内ロッド 15‥Y軸移動機構
16‥X軸移動機構 17‥受動部材
26‥支持部材 28‥傾斜駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5