(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
(21)【出願番号】P 2019236917
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-018108(JP,A)
【文献】特開2005-068843(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128440(WO,A1)
【文献】特開2004-122691(JP,A)
【文献】特開2004-116959(JP,A)
【文献】特開2018-058352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と難燃剤を含む樹脂組成物が物理発泡剤で発泡成形されて構成された発泡成形体であって、
前記発泡成形体は、発泡ブロー成形体であるか、発泡樹脂シートを金型で減圧吸引して成形する発泡シート成形体であり、
前記発泡成形体の発泡倍率は、
3.0~6.0倍であり、
前記ベース樹脂は、ポリオレフィンを含み、
前記樹脂組成物中の前記難燃剤の配合量は、0.1~10質量%であ
り、
前記難燃剤は、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、又はヒンダードアミン系難燃剤である、発泡成形体。
【請求項2】
請求項
1に記載の発泡成形体であって、
前記発泡成形体は、発泡ブロー成形体である、発泡成形体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の発泡成形体であって、
前記発泡成形体は、厚さ方向の平均気泡径が100~1000μmである、発泡成形体。
【請求項4】
請求項1~
請求項3の何れか1つに記載の発泡成形体であって、
前記物理発泡剤が炭酸ガスを含む、発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のダッシュボードや天井には、空調装置からの空気を通風させるためダクトが設けられる。このようなダクトには、断熱性や静音性を考慮して発泡成形体が用いられることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡成形体には難燃性が求められる場合があり、難燃性を高めるために、発泡成形体を構成する樹脂組成物に難燃剤を配合する場合がある。しかし、難燃剤の配合量によっては、難燃性が十分に発揮されない場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、難燃性に優れた発泡成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ベース樹脂と難燃剤を含む樹脂組成物が発泡成形されて構成された発泡成形体であって、前記発泡成形体の発泡倍率は、1.1~9.0倍であり、前記ベース樹脂は、ポリオレフィンを含み、前記樹脂組成物中の前記難燃剤の配合量は、0.1~10質量%である、発泡成形体が提供される。
【0007】
本発明者は、特定の発泡倍率及び特定のベース樹脂を有する発泡成形体において、難燃剤の含有量を特定の範囲内にすることによって、難燃性に優れた発泡成形体が得られることを見出し、本発明の完成に到った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の発泡成形体であって、前記発泡倍率は、3.0~6.0倍である、発泡成形体である。
好ましくは、前記記載の発泡成形体であって、前記発泡成形体は、中空又はシート状である、発泡成形体である。
好ましくは、前記記載の発泡成形体であって、前記発泡成形体は、厚さ方向の平均気泡径が100~1000μmである、発泡成形体である。
好ましくは、前記記載の発泡成形体であって、前記発泡成形体は、発泡剤が炭酸ガスを含む、発泡成形体である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】発泡ブロー成形体の製造に利用可能な成形機10の構成を示す。
【
図3】
図2のヘッド18及び金型21,22近傍の拡大図である。
【
図4】発泡シート成形体の製造に利用可能なヘッド18及び金型21,22を示す、
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.発泡成形体1
図1に示すように、本発明の一実施形態の発泡成形体1は、ベース樹脂と難燃剤を含む樹脂組成物が発泡成形されて構成される。
【0012】
<ベース樹脂>
ベース樹脂は、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。ベース樹脂は、ポリオレフィンのみで構成されていてもよく、その他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。その他の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。ベース樹脂中のポリオレフィンの含有量は、例えば、50~100質量%であり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0013】
<難燃剤>
難燃剤は、上記ベース樹脂の難燃性を高める任意の化合物で構成される。難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、ヒンダードアミン系難燃剤などが挙げられる。ポリオレフィンの難燃性を向上させるという観点からヒンダードアミン系難燃剤が特に好ましい。
【0014】
樹脂組成物中の難燃剤の配合量は、0.1~10質量%である。配合量が少なすぎると難燃性の向上効果が不十分になる場合があり、配合量が多すぎると成形性が低下する場合があるからである。この配合量は、具体的には例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
<発泡成形体1>
発泡成形体1としては、発泡ブロー成形によって形成される発泡ブロー成形体や、発泡シート成形によって形成される発泡シート成形体が上げられる。発泡ブロー成形体としては、自動車等で使用される発泡ダクトが例示される。発泡シート成形体としては、自動車内装部材(例:ドアトリム)が例示される。
【0016】
発泡成形体1の発泡倍率は、1.1~9.0倍であり、3.0~6.0倍であることが好ましい。発泡倍率が小さすぎると、断熱性や軽量性が不十分になる場合があり、発泡倍率が大きすぎると、剛性が不十分になる場合がある。発泡倍率は、具体的には例えば、1.1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。発泡倍率は、[発泡前の樹脂組成物の密度/発泡後の樹脂組成物の密度(嵩密度)]によって得られる値である。
【0017】
発泡成形体1は、中空又はシート状であることが好ましい。この場合に、発泡成形体1が燃焼しやすいので、難燃性を付与する技術的意義が特に大きい。
【0018】
発泡成形体1を構成する壁の肉厚は、例えば1.0~6.0mmである。肉厚が薄すぎると発泡成形体1の剛性が不十分になる場合があり、肉厚が大きすぎると発泡成形体1の重量が過剰になる場合がある。この肉厚は、2.0mm以上が好ましく、3.0mm以上がさらに好ましい。肉厚が大きい方が発泡成形体1の難燃性が優れるからである。この肉厚は、具体的には例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
発泡成形体1は、厚さ方向の平均気泡径が100~1000μmであることが好ましい。平均気泡径が小さすぎると断熱性や軽量性が不十分になる場合があり、平均気泡径が大きすぎると、剛性が不十分になる場合がある。この平均気泡径は、200μm以上が好ましく、400μm以上であることがさらに好ましい。平均気泡径が大きいほど、難燃剤添加による難燃性の向上効果が顕著になるからである。この平均気泡径は、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
平均気泡径は、以下の方法で測定する。
・まず、
図1に示すように拡大倍率50倍で断面写真を撮影する。
・次に、断面写真中で厚さ方向に延びる5本の基準線R1~R5を引く。基準線の間の間隔は500μmとする。
・各基準線について、基準線が通過する気泡の数をカウントする。
・各気泡について厚さ方向の最大長さ(厚さ方向の長さが最長となる部位での長さ)を測定する。
・式1に従って、各基準線について仮平均気泡径を算出する。さらに、各基準線について算出した仮平均気泡径を算術平均することによって、平均気泡径を算出する。
(式1)仮平均気泡径=カウントした全ての気泡についての最大長さの合計/カウントした気泡数
【0021】
発泡成形体1を構成する樹脂組成物を発泡される発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。発泡剤としては、炭酸ガスを含むものが好ましい。この場合に、平均気泡径が大きくなって、難燃剤による難燃性向上効果が高くなりやすいからである。
【0022】
2.発泡成形体1の製造方法
ここで、発泡成形体1の製造方法について、発泡ブロー成形体と発泡シート成形体を例にあげて説明を進める。
【0023】
2-1.発泡ブロー成形体
2-1-1.成形機10の構成
図2~
図3を用いて、発泡ブロー成形体の製造に利用可能な成形機10について説明する。成形機10は、樹脂供給装置20と、ヘッド18と、第1及び第2金型21,22を備える。樹脂供給装置20は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とヘッド18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0024】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂11は、上述した樹脂組成物で構成される。一例では、原料樹脂11は、ベース樹脂のペレットと、ベース樹脂中に難燃剤を含むマスターバッチのペレットを含む。ベース樹脂のペレットとマスターバッチのペレットの配合比率を変更することによって、難燃剤の配合量を調整することができる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。
【0025】
<インジェクタ16>
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。発泡剤としては上述したものが利用可能である。物理発泡剤は、通常、インジェクタ16から投入される。化学発泡剤は、通常、ホッパー12から投入される。
【0026】
<アキュームレータ17、ヘッド18>
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる溶融樹脂11aは、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂11aをヘッド18内に設けられたダイスリットから押し出して垂下させて筒状の発泡パリソン23を形成する。
【0027】
<第1及び第2金型21,22>
発泡パリソン23は、金型21,22間に導かれる。
図3に示すように、金型21,22は、キャビティ21a,22aを有し、キャビティ21a,22aを取り囲むようにピンチオフ部21b,22bが設けられている。キャビティ21a,22aは、金型21,22が閉じたときに発泡成形体1の形状となるように構成されている。
【0028】
2-1-2.発泡ブロー成形体の製造方法
発泡ブロー成形体の製造方法は、成形工程を備える。
【0029】
成形工程は、例えば、押出工程と、型閉じ工程と、ブロー工程を備える。
【0030】
押出工程では、金型21,22の間に発泡パリソン23を押し出す。型閉じ工程では、押出工程の後に金型21,22を閉じることによって、金型21,22の間のキャビティ21a,22a内に発泡パリソン23の一部を閉じ込める。発泡パリソン23のうち、キャビティ21a,22a内に閉じ込められた部位が袋状になる。ブロー工程では、袋状の発泡パリソン23内にエアーを吹き込む。この際に、発泡パリソン23がキャビティ21a,22aの表面形状に沿って賦形されて、発泡ブロー成形体が形成される。この後、金型21,22を開いて発泡ブロー成形体を取り出し、バリ除去等の後処理を行うことによって、所望の成形品が得られる。
【0031】
2-2.発泡シート成形体
2-2-1.成形機10の構成
図4を用いて、発泡シート成形体の製造に利用可能な成形機10について説明する。成形機10の構成は、ヘッド18と金型21,22の構成が異なる以外は、「2-1-1.成形機10の構成」で説明した通りであるので、説明を繰り返さない。
【0032】
発泡シート成形では、
図4に示すように、ヘッド18からはシート状の発泡パリソン23(以下、「発泡樹脂シート23a」と称する。)が押し出される。このため、ヘッド18としては、通常、Tダイが用いられる。
【0033】
金型21は、凸部21cを有し、金型22は、凹部22cを有する。
図5に示すように、金型21,22が閉じた状態で、凸部21cが凹部22c内に収容され、且つ凸部21cと凹部22cの間にキャビティCが設けられるようになっている。
【0034】
2-2-2.発泡シート成形体の製造方法
発泡シート成形体の製造方法は、成形工程を備える。
【0035】
成形工程は、例えば、押出工程と、型閉じ工程と、ブロー工程を備える。
【0036】
押出工程では、金型21,22の間に発泡樹脂シート23aを押し出す。型閉じ工程では、押出工程の後に金型21,22を閉じることによって、凸部21cと凹部22cの間のキャビティC内に発泡樹脂シート23aの一部を閉じ込める。
【0037】
好ましくは、発泡樹脂シート23aの厚さは、キャビティCの厚さよりも小さい。この場合、発泡樹脂シート23aがキャビティC内に閉じ込められた状態でも、キャビティC内には隙間が存在する。この状態で、金型21,22で減圧吸引を行う。これによって、キャビティC内で発泡樹脂シート23aが膨張し、キャビティCの形状の発泡シート成形体が得られる。このような方法によれば、金型21,22を閉じた後の減圧吸引によって発泡樹脂シート23aの気泡が膨張するので、発泡倍率及び気泡径が大きい発泡成形体が得られる。この後、金型21,22を開いて発泡シート成形体を取り出し、バリ除去等の後処理を行うことによって、所望の成形品が得られる。
【0038】
なお、発泡シート成形体は、別の方法で発泡樹脂シート23aを成形することによって製造してもよい。例えば、1つの金型を用いた成形(例:真空成形)によって製造してもよい。また、2枚の発泡樹脂シート23aをそれぞれ別々の金型で真空成形したものの周縁を互いに溶着して中空状の発泡成形体を形成してもよい。
【実施例】
【0039】
1.サンプルの作製
以下に示す方法及び表1~表2に示す条件に従って、発泡ブロー成形体、発泡シート成形体、及び非発泡ブロー成形体のサンプルを作製した。
【0040】
【0041】
表1中の配合の数値は、質量比であり、表1中の各種成分の詳細は、以下の通りである。
WB140:メタロセン系高溶融張力ポリプロピレン、ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」
BC4BSW:ポリプロピレン、日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP・BC4BSW」
AH561:ポリプロピレン、住友化学株式会社製、商品名「住友ノーブレン AH561」
NF325N:気相法メタロセン系ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ハーモレックス NF325N」
PEX999017:カーボンブラックマスターバッチ、東京インキ株式会社製
CF40EJ:化学発泡剤、東京インキ株式会社製
【0042】
【0043】
1-1.発泡ブロー成形体(No.1~8)
図2~
図3に示す成形機10を用いて、以下の方法で発泡ブロー成形体を作製した。
【0044】
原料樹脂には、表1~表2に示す原料配合のものに、表2に示す配合量の難燃剤(東京インキ株式会社製、ヒンダードアミン系難燃剤、PEX-FRJ-91)を添加したものを用いた。
【0045】
発泡パリソン23の温度が190~200℃になるように各部位の温度制御を行った。物理発泡剤は、インジェクタ16を介して注入した。発泡剤の注入量及びヘッド18のダイスリットの隙間は、冷却後の成形体の発泡倍率及び肉厚が表2に示す値となるように設定した。
【0046】
以上の条件で得られた溶融樹脂11aを表2に示す目付となる速度で押し出すことによって発泡パリソン23を形成し、金型21,22を用いて発泡パリソン23をブロー成形してNo.1~8の発泡ブロー成形体を得た。
【0047】
1-2.発泡シート成形体(No.9~12)
図5に示す形状のヘッド(Tダイ)18及び金型21,22を有する以外は、
図2と同じ構成を有する成形機10を用い、「1-1.発泡ブロー成形体」と同じ条件で原料樹脂を溶融したものをヘッド18から押し出して、発泡樹脂シートを作製し、この発泡樹脂シートを成形することによって、No.9~12の発泡シート成形体を得た。
【0048】
1-3.非発泡ブロー成形体(No.13~14)
発泡剤を用いないこと以外は、「1-1.発泡ブロー成形体」と同様の条件で、No.13~14の非発泡ブロー成形体を得た。
【0049】
2.厚さ方向の平均気泡径の測定
各サンプルについて、厚さ方向の平均気泡径を測定した。その結果を表2に示す。
【0050】
表2に示すように、難燃剤0%のサンプルと、難燃剤1%のサンプルでは、厚さ方向の平均気泡径は同程度であった。
【0051】
3.燃焼速度の評価
No.1~14のサンプルについて、FMVSS No.302燃焼性試験に従って、燃焼速度を測定した。その結果を表2に示す。
【0052】
また、次式に基づいて算出した遅延効果も表2に示す。
遅延効果(%)=100×{1-(難燃剤1%での燃焼速度)/(難燃剤0%での燃焼速度)}
【0053】
表2から次のことが分かる。
No.13~14の非発泡ブロー成形体よりも、No.1~12の発泡ブロー成形体又は発泡シート成形体の方が、遅延効果が大きかった。この結果は、発泡成形体では、非発泡成形体に比べて、難燃剤添加による難燃性向上効果が大きいことを示している。
【0054】
No.1~4とNo.5~8を比較すると、物理発泡剤が窒素ガスである場合よりも、物理発泡剤が炭酸ガスである場合の方が、厚さ方向の平均気泡径が大きく、遅延効果が大きかった。この結果は、物理発泡剤として炭酸ガスを用いたり、厚さ方向の平均気泡径を大きくしたりすることによって、難燃剤の効果を顕著に発揮させることができることを示している。
【0055】
No.9~12を見ると、発泡シート成形体においては、難燃剤の添加前の燃焼速度が低く、且つ難燃剤添加によって難燃性が顕著に向上することが分かる。
【符号の説明】
【0056】
1 :発泡成形体
10 :成形機
11 :原料樹脂
11a:溶融樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a:シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a:シリンダ
17b:ピストン
18 :ヘッド
20 :樹脂供給装置
21 :第1金型
21a:キャビティ
21b:ピンチオフ部
21c:凸部
22 :第2金型
22a:キャビティ
22b:ピンチオフ部
22c:凹部
23 :発泡パリソン
23a:発泡樹脂シート
25 :連結管
27 :連結管
C :キャビティ