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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】開弁回路及びヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 45/00 20060101AFI20240221BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
F25B45/00 A
F25B49/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020073358
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169892
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 久美子
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119153(JP,A)
【文献】特開2018-179316(JP,A)
【文献】特開2008-020133(JP,A)
【文献】特開2007-046793(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037788(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235230(WO,A1)
【文献】特開2000-074514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 45/00
F25B 49/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路上に弁を有するヒートポンプ装置に搭載される開弁回路(5)であって、
常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路(56)と、
前記直流電路(56)の直流電圧を用いて前記弁を開閉する弁駆動回路(53)と、
前記直流電路(56)の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、前記弁駆動回路(53)を制御する制御部(54)と、
前記直流電路(56)と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線(9)と接続可能であり、かつ、通常の使用状態において前記直流電源線(9)と接続されない給電ポート(7)と、を備え、
前記制御部(54)は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポート(7)に前記直流電源線(9)から直流電圧が供給されている場合に、前記弁駆動回路(53)により前記弁を開路させる、開弁回路。
【請求項2】
前記制御部(54)は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポート(7)に前記直流電源線から直流電圧が供給されている、という条件が成立した場合に、前記弁を開路させる、請求項1に記載の開弁回路。
【請求項3】
開弁スイッチ(55)を備え、
前記制御部(54)は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポート(7)に前記直流電源線(9)を接続した状態で前記開弁スイッチ(55)が開弁操作された場合に、前記弁を開路させる、請求項1に記載の開弁回路。
【請求項4】
冷媒回路上に弁を有するヒートポンプ装置であって、
常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路(56)と、
前記直流電路(56)の直流電圧を用いて前記弁を開閉する弁駆動回路(53)と、
前記直流電路(56)の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、前記弁駆動回路(53)を制御する制御部(54)と、
前記直流電路(56)と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線(9)と接続可能であり、かつ、通常の使用状態において前記直流電源線(9)と接続されない給電ポート(7)と、を備え、
前記制御部(54)は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポート(7)に前記直流電源線(9)から直流電圧が供給されている場合に、前記弁駆動回路(53)により前記弁を開路させる、ヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記ヒートポンプ装置は電源ボックス(4)を備え、
前記給電ポート(7)は、前記電源ボックス(4)の内部に設けられる、請求項4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記電源ボックス(4)は、前記ヒートポンプ装置における筐体の外面の一部にあるカバーを外した状態で露出する位置に設けられている請求項5に記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記電源ボックス(4)内に前記交流電圧を供給する外線端子が設けられており、当該外線端子の近傍に前記給電ポート(7)が設けられている請求項5又は請求項6に記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記弁は、熱交換器から液管に向かう管路に設けられている請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を用いて冷凍サイクルを実行するヒートポンプ装置及びその開弁回路に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を用いて冷凍サイクルを実行するヒートポンプ装置の代表的なものの一つは、空調機である。空調機では、停電等により商用交流電源が失われた場合には、万一の冷媒漏洩を予防するため、内部の弁を閉じるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、空調機を撤去する場合には、内部の冷媒を適切に回収することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-20113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設の空調機を撤去する場合、一般的に、商用交流電源から物理的に切り離し、その後、内部の冷媒を、回収作業者が、冷媒回収機を用いて回収する。ところが、内部の弁が閉じていると、冷媒回路上で閉鎖された区間があり、冷媒回収機で吸っても回収しきれないのが実情である。
【0005】
本開示は、撤去される空調機等のヒートポンプ装置から、より確実に冷媒を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の開弁回路は、冷媒回路上に弁を有するヒートポンプ装置に搭載される開弁回路であって、常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路と、前記直流電路の直流電圧を用いて前記弁を開閉する弁駆動回路と、前記直流電路の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、前記弁駆動回路を制御する制御部と、前記直流電路と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線と接続可能な給電ポートと、を備えている。そして、前記制御部は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポートに前記直流電源線から直流電圧が供給されている場合に、前記弁駆動回路により前記弁を開路させる。
【0007】
このような開弁回路を設けることにより、ヒートポンプ装置の内部に残っている冷媒を確実に回収することができる。
【0008】
(2)前記制御部は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポートに前記直流電源線から直流電圧が供給されている、という条件が成立した場合に、前記弁を開路させるようにしてもよい。
この場合、給電ポートに直流電圧を供給すれば、自動的に、弁を開き、冷媒回収可能な状態とすることができる。
【0009】
(3)開弁回路は、開弁スイッチを備え、前記制御部は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポートに前記直流電源線を接続した状態で前記開弁スイッチを開弁操作した場合に、前記弁を開路させるようにしてもよい。
この場合、ヒートポンプ装置に確実に冷媒回収機を接続してから開弁スイッチを操作することができる。
【0010】
(4)本開示のヒートポンプ装置は、冷媒回路上に弁を有するヒートポンプ装置であって、常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路と、前記直流電路の直流電圧を用いて前記弁を開閉する弁駆動回路と、前記直流電路の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、前記弁駆動回路を制御する制御部と、前記直流電路と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線と接続可能な給電ポートと、を備えている。そして、前記制御部は、前記交流電圧が失われ、かつ、前記給電ポートに前記直流電源線から直流電圧が供給されている場合に、前記弁駆動回路により前記弁を開路させる。
【0011】
上記のようなヒートポンプ装置では、ヒートポンプ装置の内部に残っている冷媒を確実に回収することができる。
【0012】
(5)前記ヒートポンプ装置は電源ボックスを備え、前記給電ポートは、前記電源ボックスの内部に設けられていてもよい。
この場合、給電ポートを、電源ボックス内に収めておくことができる。
【0013】
(6)前記電源ボックス(4)は、前記ヒートポンプ装置における筐体の外面の一部にあるカバーを外した状態で露出する位置に設けられていてもよい。
この場合、カバーを外せば電源ボックスが露出し、給電ポートに直流電源線を接続することができる。
【0014】
(7)前記電源ボックス内には前記交流電圧を供給する外線端子が設けられており、当該外線端子の近傍に前記給電ポートが設けられていてもよい。
この場合、電源ボックスを露出させ、商用交流電源を外線端子に供給するケーブルを外した後、そのままの状態で、給電ポートに直流電源線を接続することができるので、作業上の無駄がない。
【0015】
(8)前記弁は、例えば、熱交換器から液管に向かう管路に設けられている。
この場合、冷媒が比較的多く残り易い熱交換器の前後から、冷媒を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空調機の冷媒回路に関する概略構成図である。
図2図1に示す空調機から室外ユニットを取り外して冷媒回収を行う状態を示す図である。
図3】電源ボックス内に設けられる開弁回路の一例を示す回路図である。
図4】室外ユニットを撤去するために商用交流電源との接続を切り離した状態での、電源ボックス内の開弁回路に関する回路図である。
図5】室外ユニットの外観の一例を示す斜視図である。
図6】カバーを取り外した状態での、室外ユニットの正面図である。
図7】電源ボックス内に設けられる開弁回路の他の例を示す回路図である。
図8】室外ユニットを撤去するために商用交流電源との接続を切り離した状態での、電源ボックス内の開弁回路に関する回路図である。
図9】空調機が冷暖同時機である場合の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ヒートポンプ装置及びその開弁回路の実施形態について説明する。
ヒートポンプ装置の代表的なものの一つは、空調機である。以下、空調機を例示して説明する。
【0018】
図1は、空調機10の冷媒回路に関する概略構成図である。空調機10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、建物内の冷房や暖房を行う装置である。空調機10は、室外ユニット1と、室内ユニット2とを、冷媒回路3によって接続して構成されている。室内ユニット2は1台のみ図示しているが、実際は、設備規模に応じて複数台が並列に接続される。冷媒は、例えば、R32が使用される。
【0019】
《室外ユニット》
室外ユニット1は、屋外又は、建物内の室外に設置されている。室外ユニット1は、液冷媒連絡管11及びガス冷媒連絡管11を介して室内ユニット2に接続されている。室外ユニット1は、圧縮機100、逆止弁101、4路切換弁102、アキュムレータ103、室外熱交換器104、室外膨張弁106、冷媒冷却器107、冷媒戻し膨張弁108、液圧調整膨張弁109、液側閉鎖弁110、及び、ガス側閉鎖弁111を備えている。
【0020】
4路切換弁102は、室外熱交換器104を冷媒の放熱器として機能させる放熱運転状態と、室外熱交換器104を冷媒の蒸発器として機能させる蒸発運転状態と、を互いに切り換えることができる。4路切換弁102と圧縮機100の吸入側とは、吸入冷媒管112によって接続されている。吸入冷媒管112には、圧縮機100に吸入される冷媒を一時的に溜めるアキュムレータ103が設けられている。圧縮機100は、冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、ロータリ式やスクロール式等の密閉式構造のものが用いられる。
【0021】
圧縮機100の吐出側と4路切換弁102とを繋ぐ吐出冷媒管113の途中には、逆流防止のための逆止弁101が設けられている。4路切換弁102と室外熱交換器104のガス側端とは、第1室外ガス冷媒管114によって接続されている。室外熱交換器104の液側端と液冷媒連絡管11とは、室外液冷媒管115を介して接続されている。
【0022】
室外液冷媒管115と液冷媒連絡管11との接続部には、液側閉鎖弁110が設けられている。4路切換弁102とガス冷媒連絡管11とは、第2室外ガス冷媒管116によって接続されている。第2室外ガス冷媒管116とガス冷媒連絡管11との接続部には、ガス側閉鎖弁111が設けられている。液側閉鎖弁110及びガス側閉鎖弁111は、例えば、手動で開閉される弁である。
【0023】
4路切換弁102は、室外熱交換器104を冷媒の放熱器として機能させる場合(以下、「室外放熱状態」とする。)には圧縮機100の吐出側と室外熱交換器104のガス側とを接続する(図1の4路切換弁102の実線の状態)。室外熱交換器104を冷媒の蒸発器として機能させる場合(以下、「室外蒸発状態」とする。)には圧縮機100の吸入側と室外熱交換器104のガス側とを接続する(図1の4路切換弁102の破線で示す状態。)。冷房運転時には、4路切換弁102は室外放熱状態に切り換えられる。暖房運転時には、4路切換弁102は室外蒸発状態に切り換えられる。
【0024】
室外熱交換器104は、冷媒の放熱器として機能するか、又は、冷媒の蒸発器として機能する。室外ファン105は、室外熱交換器104を流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を室外熱交換器104に供給する。
【0025】
室外膨張弁106及び液圧調整膨張弁109は、室外液冷媒管115上に設けられている。室外膨張弁106は、暖房運転時に冷媒を減圧する電動弁であり、室外液冷媒管115のうち室外熱交換器104の液側端寄りの部分に設けられている。液圧調整膨張弁109は、冷房運転時に液冷媒連絡管11を流れる冷媒が気液二相状態になるように冷媒を減圧する電動弁であり、室外液冷媒管115のうち液冷媒連絡管11寄りの部分に設けられている。液圧調整膨張弁109は、室外液冷媒管115上で、室外膨張弁106よりも液冷媒連絡管11寄りの部分に設けられている。
【0026】
冷房運転時において、空調機10は、液圧調整膨張弁109によって気液二相状態の冷媒を液冷媒連絡管11に流し、室外ユニット1側から室内ユニット2に送る冷媒の二相搬送を行う。
【0027】
冷媒冷却器107には、途中に冷媒戻し膨張弁108を介在させた冷媒戻し管117が接続されている。また、冷媒冷却器107には、冷媒戻し出口管118が接続されている。冷媒戻し出口管118は、吸入冷媒管112と接続されている。
【0028】
室外液冷媒管115を流れる冷媒の一部は、室外膨張弁106と冷媒冷却器107との間の部分から分流して、冷媒冷却器107の冷媒戻し管117側の入口(図1の左側)に送られる。冷媒戻し管117の冷媒戻し膨張弁108は、冷媒戻し管117を流れる冷媒を減圧しながら冷媒冷却器107を流れる冷媒の流量を調整する。冷媒戻し膨張弁108は、電動弁である。
【0029】
冷媒戻し出口管118は、冷媒を、冷媒冷却器107の冷媒戻し管117側の出口から吸入冷媒管112に送る。冷媒戻し管117の冷媒戻し出口管118は、吸入冷媒管112を介してアキュムレータ103に接続されている。
【0030】
冷媒冷却器107は、冷媒戻し管117を流れる冷媒によって、室外液冷媒管115のうち液圧調整膨張弁109よりも室外熱交換器104側の部分を流れる冷媒を冷却する熱交換器である。冷媒冷却器107では、冷房運転時に、冷媒戻し管117を流れる冷媒と室外液冷媒管115を流れる冷媒とが対向流になる。
【0031】
《室内ユニット》
室内ユニット2は、建物の室内に設置されている。室内ユニット2は、前述のように、液冷媒連絡管11及びガス冷媒連絡管11を介して室外ユニット1に接続されており、冷媒回路3の一部を構成している。
【0032】
室内ユニット2は、主として、室内膨張弁21と、室内熱交換器22とを有している。室内膨張弁21のある方が、液冷媒連絡官Pと接続され、反対側が、ガス冷媒連絡官Pと接続されている。室内膨張弁21は、冷媒を減圧しながら室内熱交換器22を流れる冷媒の流量を調整する電動弁である。室内熱交換器22は、冷媒の蒸発器として機能し、室内空気を冷却するか、又は、冷媒の放熱器として機能し、室内空気を加熱する。室内ファン23は、室内ユニット2内に室内空気を吸入して、室内熱交換器22において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給する。
【0033】
《冷媒回収》
図2は、図1に示す空調機10から室外ユニット1を取り外して冷媒回収を行う状態を示す図である。室外ユニット1の液側閉鎖弁110及びガス側閉鎖弁111を開き、マニホールド31を介して冷媒回収機32と接続する。冷媒回収機32にはボンベ33が接続される。冷媒回収機32を動作させることにより、室外ユニット1の内部に残っている冷媒を吸引し、ボンベ33に回収することができる。
【0034】
ここで、電動弁である、室外膨張弁106、冷媒戻し膨張弁108及び液圧調整膨張弁109が閉じていると、室外ユニット1の内部に残っている冷媒が回収しきれない。特に、室外膨張弁106と、逆止弁101との間の区間119に閉じ込められた、比較的多くの冷媒が回収できない。本開示によれば、このような場合にも電動弁を開くことができる。
【0035】
《開弁回路の第1実施形態》
図3は、電源ボックス4内に設けられる開弁回路5の一例を示す回路図である。電源ボックス4は、室外ユニット1の内部に設けられる。図3において、開弁回路5は、AC/DCスイッチング電源51と、レギュレータ52と、弁駆動回路53と、制御部54と、開弁スイッチ55とを備えている。
【0036】
空調機10の通常の使用状態では、AC/DCスイッチング電源51に商用交流電源6から常用の交流電圧が供給される。AC/DCスイッチング電源51は、交流電圧を所定の直流電圧V1に変換し、直流電路56に出力する。直流電路56には、弁駆動回路53と、レギュレータ52とが接続されている。また、給電ポート7は、直流電路56と繋がっている。給電ポート7の実際の形態は、端子台又はコネクタである。
【0037】
弁駆動回路53は、直流電圧V1に基づいて、各電動弁(室外膨張弁106,冷媒戻し膨張弁108,液圧調整膨張弁109)を開閉することができる。レギュレータ52は、直流電圧V1を、制御部54の電源電圧V2(=Vcc,V2<V1)に降圧し、直流電路57に出力する。制御部54はマイクロコンピュータを含み、コンピュータプログラムに基づいて動作する。制御部54には外部から弁開閉の信号を与えることができる。弁開閉の信号に基づいて制御部54は弁駆動回路53に駆動信号を与え、各電動弁の開閉を行わせる。また、制御部54には、開弁スイッチ55から開弁の指令信号を与えることができる。開弁スイッチ55は手動スイッチであり、サービスマンによって操作される。上記の給電ポート7は、空調機10が通常の使用状態にある場合には、使用されない。
【0038】
図4は、室外ユニット1を撤去するために商用交流電源6との接続を切り離した状態での、電源ボックス4内の開弁回路5に関する回路図である。図において、AC/DCスイッチング電源51には交流電圧が供給されない状態となっている。ここで、直流電圧V1を出力可能な外部電源(直流電源)8から、直流電源線9を、給電ポート7に接続する。これにより、AC/DCスイッチング電源51は機能しない状態となっていても、直流電路56に直流電圧V1を生じさせることができる。レギュレータ52は、直流電圧V1を、制御部54の電源電圧V2に降圧し、直流電路57に出力する。
【0039】
この状態から、サービスマンが開弁スイッチ55を操作することにより、制御部54は、弁駆動回路53に開弁信号を送る。開弁信号を受けた弁駆動回路53は、各電動弁(室外膨張弁106,冷媒戻し膨張弁108,液圧調整膨張弁109)を開く。こうして、室外ユニット1が商用交流電源6から切り離された後でも、電動弁を開くことができる。
【0040】
その後、図2に示したように冷媒回収機32を接続すれば、室外ユニット1の内部に残っている冷媒を、回収することができる。
【0041】
《給電ポートの場所について》
図5は、室外ユニット1の外観の一例を示す斜視図である。この図で見えているのは、室外ユニット1の筐体1A、及び、室外熱交換器104である。筐体1Aの外面の一部には、取り外しが容易なカバー1Cが取り付けられている。
【0042】
図6は、上記カバー1Cを取り外した状態での、室外ユニット1の正面図である。カバー1Cが取り外されると、電源ボックス4及びその内部が露出する。電源ボックス4内には室外ユニット1に商用交流電源を繋ぎ込むための大元の外線端子120がある。給電ポート7は、例えばこの外線端子120の近傍に配置されている。
【0043】
《開弁回路の第2実施形態》
図7は、電源ボックス4内に設けられる開弁回路5の他の例を示す回路図である。図3との違いは、図3に設けられていた開弁スイッチ55が無く、代わりに、AC/DCスイッチング電源51から制御部54に信号を送ることができる点である。この信号とは、交流電圧が失われていることを知らせる信号である。具体的には、例えばリレーのB接点を用いて、交流電圧があるときは接点が開き、交流電圧が失われているときは接点が閉じるようにすればよい。接点が閉じているということは、交流電圧が失われていることの信号となる。第2実施形態の開弁回路5の動作に関して、空調機10の通常の使用状態では、第1実施形態と差は無いので、説明を省略する。
【0044】
図8は、室外ユニット1を撤去するために商用交流電源6との接続を切り離した状態での、電源ボックス4内の開弁回路5に関する回路図である。図において、AC/DCスイッチング電源51には交流電圧が供給されない状態となっている。このことは、制御部54に報知される。ここで、直流電圧V1を出力可能な外部電源(直流電源)8から、直流電源線9を、給電ポート7に接続する。これにより、AC/DCスイッチング電源51は機能しない状態となっていても、直流電路56に直流電圧V1を生じさせることができる。レギュレータ52は、直流電圧V1を、制御部54の電源電圧V2に降圧し、直流電路57に出力する。
【0045】
この状態において、制御部54は、電圧V2が与えられているにもかかわらず、AC/DCスイッチング電源51からは交流電圧が失われていることを示す信号を受ける。これにより、制御部54は、交流電圧が失われていて、外部電源8から給電ポート7に直流電圧V1が供給されている状態であると判断する。
【0046】
このように判断した制御部54は、弁駆動回路53に開弁信号を送る。開弁信号を受けた弁駆動回路53は、各電動弁(室外膨張弁106,冷媒戻し膨張弁108,液圧調整膨張弁109)を開く。こうして、室外ユニット1が商用交流電源6から切り離された後でも、電動弁を開くことができる。
【0047】
その後、図2に示したように冷媒回収機32を接続すれば、室外ユニット1の内部に残っている冷媒を、回収することができる。
【0048】
《開弁回路の適用例について補足》
図9は、空調機10が冷暖同時機である場合の構成の一例を示す図である。
図において、冷暖同時機の室外ユニット1からは、高圧ガス冷媒が流れる高圧ガス管13HG、低圧ガス冷媒が流れる低圧ガス管13LG、及び、高圧の液冷媒が流れる高圧液管13HLを介して、複数(ここでは4個)の流路切換ユニット14が接続されている。また、これらの流路切換ユニット14にはそれぞれ、室内ユニット2が接続されている。流路切換ユニット14及び室内ユニット2は、室外ユニット1を共有する冷媒回路を構成している。なお、ここでは4台の流路切換ユニット14及び室内ユニット2を示しているが、台数は図示の便宜上の一例を示しているに過ぎない。流路切換ユニット14は、室外置き、室内置きのいずれもあり得る。
【0049】
流路切換ユニット14の各々は、高圧ガス管13HGに接続される電動弁14H、低圧ガス管13LGに接続される電動弁14L、及び、高圧液管13HLに接続される電動弁14eを備えている。
【0050】
上記の冷暖同時機の空調機10では、熱源側ユニットとして共通の室外ユニット1の下で、利用側ユニットとして任意の室内ユニット2を空調(冷房又は暖房)運転させることができる。流路切換ユニット14により、一部の室内ユニット2は冷房、他の室内ユニット2は暖房、を行うこともできる。具体的には、電動弁14H,14Lの開閉を制御することで冷媒流路を切り換えることができる。また、必要に応じ、電動弁14eの開度を制御することで、室内ユニット2内の熱交換器に流れる冷媒流量を調整することもできる。流路切換ユニット14内の電動弁14H,14L,14eを遮断弁として使うことも可能である。
【0051】
上記のような流路切換ユニット14も電動弁を用いているため、冷媒を閉じ込める原因になる場合がある。そこで、前述のような開弁回路5を流路切換ユニット14に適用し、冷媒の閉じ込めを解除することも考えられる。
【0052】
また、例えばチラーシステムのような、二元冷媒回路を有するシステムの中間ユニットにおいても、内部に電動弁があれば同様に、冷媒を閉じ込める原因になる場合がある。そこで、開弁回路5を中間ユニットに適用し、冷媒の閉じ込めを解除することも考えられる。
【0053】
《開示のまとめ》
なお、ここまでは、弁駆動回路53により動作させる対象の弁を、電動弁として説明したが、本開示の開弁回路5は、電磁弁の開閉にも適用可能である。
以上の開示のまとめとして、以下のように一般化して表現することができる。
【0054】
(開弁回路)
本開示の開弁回路とは、冷媒回路3上に弁(室外膨張弁106等)を有するヒートポンプ装置(空調機10)に搭載される開弁回路5であって、常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路56と、直流電路56の直流電圧を用いて弁を開閉する弁駆動回路53と、直流電路56の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、弁駆動回路53を制御する制御部54と、直流電路56と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線9と接続可能な給電ポート7と、を備えている。そして、制御部54は、交流電圧が失われ、かつ、給電ポート7に直流電源線9から直流電圧が供給されている場合に、弁駆動回路53により弁を開路させる。
【0055】
上記のような開弁回路5を備えるヒートポンプ装置を撤去する際に、商用交流電源6の交流電圧が失われた状態となっても、給電ポート7に直流電源線9を接続して直流電路56に直流電圧を供給することができる。この状態で弁を開くことにより、冷媒回収機32によってヒートポンプ装置の内部に残っている冷媒を確実に回収することができる。
【0056】
上記開弁回路5において、制御部54は、交流電圧が失われ、かつ、給電ポート7に直流電源線9から直流電圧が供給されている、という条件が成立した場合に、弁を開くようにしてもよい。
この場合、ヒートポンプ装置から商用交流電源6との接続を外し、給電ポート7に直流電圧を供給すれば、自動的に、弁を開き、冷媒回収可能な状態とすることができる。
【0057】
上記開弁回路5は、開弁スイッチ55を備えることもできる。制御部54は、交流電圧が失われ、かつ、給電ポート7に直流電源線9を接続した状態で開弁スイッチ55が開弁操作された場合に、弁を開路させるようにすればよい。
この場合、ヒートポンプ装置を商用交流電源6から断路し、かつ、給電ポート7に直流電圧を供給しただけでは、弁は開かず、開弁スイッチ55を操作して初めて弁が開く。従って、ヒートポンプ装置に確実に冷媒回収機32を接続してから開弁スイッチ55を操作することができる。これにより、冷媒を大気中に漏らすことを可能な限り回避しながら、冷媒を回収することができる。
【0058】
(ヒートポンプ装置)
開示したのは、冷媒回路3上に弁(室外膨張弁106等)を有するヒートポンプ装置(空調機10)であって、常用の交流電圧から生成される直流電圧が印加される直流電路56と、直流電路56の直流電圧を用いて弁を開閉する弁駆動回路53と、直流電路56の直流電圧に基づいて制御電源電圧を取得し、弁駆動回路53を制御する制御部54と、直流電路56と接続され、非常用に外部から提供される直流電源線9と接続可能な給電ポート7と、を備えている。そして、制御部54は、交流電圧が失われ、かつ、給電ポート7に直流電源線9から直流電圧が供給されている場合に、弁駆動回路53により弁を開路させる。
【0059】
上記のようなヒートポンプ装置では、当該ヒートポンプ装置を撤去する際に、商用交流電源6の交流電圧が失われた状態となっても、給電ポート7に直流電源線9を接続して直流電路56に直流電圧を供給することができる。この状態で弁を開くことにより、冷媒回収機32によってヒートポンプ装置の内部に残っている冷媒を確実に回収することができる。
【0060】
上記ヒートポンプ装置は電源ボックス4を備え、給電ポート7は、電源ボックス4の内部に設けられることが好ましい。
この場合、ヒートポンプ装置を撤去する際以外では使用しない給電ポート7をむやみに露出させず、電源ボックス4内に収めておくことができる。
【0061】
電源ボックス4は、ヒートポンプ装置における筐体1Aの外面の一部にあるカバー1Cを外した状態で露出する位置に設けられていることが好ましい。
この場合、カバー1Cを外せば電源ボックス4が露出し、給電ポート7に直流電源線9を接続することができる。
【0062】
電源ボックス4内には交流電圧を供給する外線端子120が設けられており、当該外線端子の近傍に給電ポート7が設けられていることが好ましい。
この場合、電源ボックス4を露出させ、商用交流電源6を外線端子120に供給するケーブルを外した後、そのままの状態で、給電ポート7に直流電源線9を接続することができるので、作業上の無駄がない。
【0063】
弁は、熱交換器(室外熱交換器104)から液管(液冷媒連絡管11)に向かう管路に設けられていることが好ましい。
この場合、冷媒が比較的多く残り易い熱交換器の前後から、冷媒を回収することができる。
【0064】
《その他》
なお、上述の各実施形態については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。
【0065】
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0066】
1:室外ユニット、1A:筐体、1C:カバー、2:室内ユニット、3:冷媒回路、4:電源ボックス、5:開弁回路、6:商用交流電源、7:給電ポート、8:外部電源、9:直流電源線、10:空調機、11:液冷媒連絡管、11:ガス冷媒連絡管、13HG:高圧ガス管、13LG:低圧ガス管、13HL:高圧液管、14:流路切換ユニット、14e,14H,14L:電動弁、21:室内膨張弁、22:室内熱交換器、23:室内ファン、31:マニホールド、32:冷媒回収機、33:ボンベ、51:AC/DCスイッチング電源、52:レギュレータ、53:弁駆動回路、54:制御部、55:開弁スイッチ、56,57:直流電路、100:圧縮機、101:逆止弁、102:4路切換弁、103:アキュムレータ、104:室外熱交換器、105:室外ファン、106:室外膨張弁、107:冷媒冷却器、108:冷媒戻し膨張弁、109:液圧調整膨張弁、110:液側閉鎖弁、111:ガス側閉鎖弁、112:吸入冷媒管、113:吐出冷媒管、114:第1室外ガス冷媒管、115:室外液冷媒管、116:第2室外ガス冷媒管、117:冷媒戻し管、118:冷媒戻し出口管、119:区間、120:外線端子
図1
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