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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】水系塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240221BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240221BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20240221BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240221BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D5/18
C09D7/61
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020106527
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001616
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】四ツ▲柳▼ 雄太
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171852(JP,A)
【文献】特開2017-205980(JP,A)
【文献】特開平7-18201(JP,A)
【文献】特開2000-169853(JP,A)
【文献】特開2017-39893(JP,A)
【文献】特表2017-503044(JP,A)
【文献】特開2019-38905(JP,A)
【文献】特表2018-538422(JP,A)
【文献】特表2019-507210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0020476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/02
C09D 5/18
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、前記水に分散されたゲル状粒子とを含み、
前記ゲル状粒子は、樹脂エマルションを含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを有し、
前記ゲル状粒子100質量%のうち20質量%以上が、膨張黒鉛を含む、水系塗料組成物。
【請求項2】
全ての前記ゲル状粒子の前記樹脂エマルションの樹脂分の合計100質量部に対する前記膨張黒鉛の割合が、10~75質量部である、請求項1に記載の水系塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや住宅等の建築物の外観等を高めるために、建築物の外壁に塗膜を設けることがある。
一方、防災上の観点等から、ビルや住宅等の建築物の外壁に難燃性が求められることある。このような外壁に塗膜を設ける場合、塗膜にも難燃性が求められる。
【0003】
特許文献1には、難燃性に優れ、外観の良好な塗膜構造として、難燃剤を含む下塗り塗膜と、その上に設けられた、遮熱性着色顔料を含む多彩模様の塗膜とを備えた塗膜構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-205980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の塗膜構造は、複数種の塗料を用いる必要があり、塗装の回数が多く工程が煩雑になるという欠点があった。
【0006】
本発明は、難燃性に優れた模様塗膜を形成できる水系塗料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]水と、前記水に分散されたゲル状粒子とを含み、
前記ゲル状粒子は、樹脂エマルションを含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを有し、
前記ゲル状粒子100質量%のうち20質量%以上が、膨張黒鉛を含む、水系塗料組成物。
[2]全ての前記ゲル状粒子の前記樹脂エマルションの樹脂分の合計100質量部に対する前記膨張黒鉛の割合が、10~75質量部である、前記[1]の水系塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性に優れた模様塗膜を形成できる水系塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔水系塗料組成物〕
本発明の水系塗料組成物は、水と、水に分散されたゲル状粒子とを含む。
ゲル状粒子は、樹脂エマルションを含む液滴と、液滴の表面を覆うゲル化膜とを有する。
水系塗料組成物中のゲル状粒子100質量%のうち20質量%以上は、膨張黒鉛を含む。以下、膨張黒鉛を含むゲル状粒子を「ゲル状粒子(A)」とも記す。
水系塗料組成物は、ゲル状粒子として、ゲル状粒子(A)のみを含んでいてもよく、膨張黒鉛を含まないゲル状粒子(以下、「ゲル状粒子(B)」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
水系塗料組成物は、必要に応じて、バインダ樹脂をさらに含んでいてもよい。なお、ゲル状粒子がバインダとして機能するので、水系塗料組成物はバインダ樹脂を含まなくてもよい。
水系塗料組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0010】
<水>
水の含有量は、水系塗料組成物100質量%中、30~85質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましい。
【0011】
<ゲル状粒子(A)>
ゲル状粒子(A)は、樹脂エマルションを含む液滴と、液滴の表面を覆うゲル化膜とを有し、かつ膨張黒鉛を含む。ゲル状粒子(A)は、典型的には、液滴に膨張黒鉛を含む。
【0012】
(液滴)
液滴は、樹脂エマルションを含む。
液滴は、典型的には、親水性コロイド形成物質をさらに含む。
ゲル状粒子(A)の場合、液滴は、典型的には、膨張黒鉛をさらに含む。
液滴は、上記以外の成分(以下、「任意成分」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
【0013】
「樹脂エマルション」
樹脂エマルションは、樹脂を形成材料とする懸濁粒子又は乳化粒子と、前記懸濁粒子又は乳化粒子を分散させる分散媒とを有する。
懸濁粒子又は乳化粒子の形成材料の樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴム、及びこれらの共重合体のエマルション等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル樹脂が好ましい。
樹脂エマルションの分散媒としては、水が好ましい。
樹脂エマルションしては、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。
【0014】
「親水性コロイド形成物質」
親水性コロイド形成物質は、ゲル化剤と反応し、ゲル化膜を形成可能な物質である。ゲル化剤については後述する。
親水性コロイド形成物質としては、例えば、セルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、天然高分子(カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等)等を含有する水溶液が挙げられる。これらの中でもグアルゴムの水溶液が好ましい。水溶液の濃度は0.5~5質量%が好ましく、1.0~3質量%がより好ましい。親水性コロイド形成物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
親水性コロイド形成物質の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3.0質量部がより好ましい。親水性コロイド形成物質の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
【0016】
「膨張黒鉛」
膨張黒鉛は、黒鉛層間化合物ともいい、加熱により膨張する性質を有する。
ゲル状粒子(A)が塗膜形成後に炎に曝されると、ゲル状粒子(A)に含まれる膨張黒鉛が膨張して殻を形成し、断熱作用、可燃性ガスの遮断等の効果により塗膜の燃焼を抑え、難燃性を発揮する。
膨張黒鉛としては、一般に市販されているものが使用できる。市販の膨張黒鉛としては、例えば伊藤黒鉛工業社の955025L、NeoGra社の160-50等が挙げられる。
膨張黒鉛の膨張容積は、170mL/g以上であることが好ましい。膨張容積の上限は、例えば400mL/gである。
膨張黒鉛の膨張開始温度は、200℃以下であることが好ましい。膨張開始温度の下限は、例えば160℃である。
【0017】
ゲル状粒子(A)中の膨張黒鉛の含有量は、全てのゲル状粒子100質量%のうちのゲル状粒子(A)の割合によっても異なるが、ゲル状粒子(A)中の樹脂エマルションの樹脂分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。膨張黒鉛の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の難燃性がより優れる。
ゲル状粒子(A)中の膨張黒鉛の含有量は、ゲル状粒子(A)中の樹脂エマルションの樹脂分100質量部に対して、75質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。膨張黒鉛の含有量が前記上限値以下であれば、ゲル状粒子(A)が崩れにくい。
【0018】
「任意成分」
液滴は、本発明の効果を損なわない範囲で、着色顔料、体質顔料等の顔料を含んでいてもよい。
液滴は、上記の他、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤、例えば、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等を含んでいてもよい。
【0019】
液滴が顔料を含む場合、顔料の含有量は、膨張黒鉛との合計量が、前記した膨張黒鉛の含有量の好ましい上限を超えない量であることが好ましい。すなわち、膨張黒鉛と顔料との合計の含有量は、樹脂エマルションの樹脂分100質量部に対して、75質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0020】
(ゲル化膜)
ゲル化膜は、液滴の表面を覆い、ゲル状粒子の輪郭を形成している。液滴の表面がゲル化膜で覆われていることにより、ゲル状粒子が分散媒中で安定して分散することができる。
ゲル化膜としては、液滴に含まれる親水性コロイド物質と、ゲル化剤とが反応し架橋することで形成された三次元的網状組織を含むものが挙げられる。ゲル化膜は、液滴よりも流動性が低く、液滴を内部に包含している。
【0021】
ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム等が挙げられる。中でもホウ酸塩が好ましい。ゲル化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ゲル状粒子(A)の平均粒子径は5~50mmが好ましく、10~40mmがより好ましい。平均粒子径が5mm以上であれば、ゲル状粒子が密に存在し難燃性が良好である。一方、平均粒子径が50mm以下であれば、塗膜の平滑性が良好である。
なお、ゲル状粒子の平均粒子径は、無作為に20個のゲル状粒子を選択し、その長径をノギスで測定した平均値である。
【0023】
<ゲル状粒子(B)>
ゲル状粒子(B)は、膨張黒鉛を含まない以外は、ゲル状粒子(A)と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0024】
水系塗料組成物中の全てのゲル状粒子(ゲル状粒子(A)とゲル状粒子(B)との合計)100質量%のうち、ゲル状粒子(A)の割合は、20質量%以上であり、25質量%以上であることが好ましく、100質量%であってもよい。ゲル状粒子(A)の割合が20質量%以上であれば、塗膜に充分な難燃性を付与できる。
【0025】
水系塗料組成物中の全てのゲル状粒子の合計の含有量は、水系塗料組成物100質量%に対して、30~100質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましい。ゲル状粒子の合計の含有量が30質量%以上であれば、水系塗料組成物の被塗物への塗装作業性が良好である。
【0026】
水系塗料組成物中の全てのゲル状粒子の樹脂エマルションの樹脂分の合計100質量部に対する膨張黒鉛の割合は、10~75質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。膨張黒鉛の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の難燃性がより優れ、前記上限値以下であれば、ゲル状粒子(A)中の膨張黒鉛の含有量を少なくでき、ゲル状粒子(A)が崩れにくい。
【0027】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴム、及びこれらの共重合体のエマルション等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル樹脂が好ましい。
バインダ樹脂は、樹脂エマルションの形態で配合されてもよい。樹脂エマルションしては、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。樹脂エマルションの分散媒としては、水が好ましい。
【0028】
バインダ樹脂の含有量(樹脂エマルションの場合は樹脂分換算)は、ゲル状粒子100質量部に対して、0~50質量部が好ましく、0~33質量部がより好ましい。バインダ樹脂の含有量が前記上限値以下であれば、難燃性を確保しやすい。
【0029】
<他の成分>
水系塗料組成物は、体質顔料を含んでいてもよい。体質顔料については後述する。
水系塗料組成物は、水溶性高分子化合物を含んでいてもよい。水溶性高分子化合物については後述する。
水系塗料組成物は、上記の他、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤、例えば、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等を含んでいてもよい。
【0030】
<水系塗料組成物の製造方法>
水系塗料組成物は、例えば、ゲル状粒子(A)の水分散液を調製し、必要に応じて、ゲル状粒子(A)の水分散液に、ゲル状粒子(B)の水分散液、樹脂エマルション、任意成分、水等を配合することにより製造できる。
【0031】
ゲル状粒子(A)の水分散液は、例えば、樹脂エマルションと親水性コロイド形成物質と膨張黒鉛とを含むエマルション塗料を調製し、得られたエマルション塗料を、攪拌下で、ゲル化剤及び水を含む分散媒に添加することにより調製できる。
【0032】
エマルション塗料は、例えば、樹脂エマルションに、親水性コロイド形成物質、膨張黒鉛、必要に応じて任意成分を加え、攪拌混合することにより調製できる。
【0033】
分散媒は、ゲル化剤及び水を含む。
ゲル化剤の含有量(固形分量)は、分散媒100質量%に対し、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。ゲル化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
水の含有量は、分散媒100質量%に対し、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0034】
分散媒は、必要に応じて、体質顔料を含んでいてもよい。
体質顔料としては、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも含水ケイ酸マグネシウムが好ましい。体質顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量(固形分量)は、分散媒100質量%に対し、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0035】
分散媒は、必要に応じて、水溶性高分子化合物を含んでいてもよい。
水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でもカルボキシメチルセルロースが好ましい。水溶性高分子化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量(固形分量)は、分散媒100質量%に対し、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
【0036】
分散媒は、例えば、ゲル化剤の水溶液と、体質顔料の水分散液と、水溶性高分子化合物の水溶液とを混合し、必要に応じて水で希釈することにより調製できる。
ゲル化剤の水溶液におけるゲル化剤の濃度は0.05~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
体質顔料の水分散液における体質顔料の濃度は、0.05~20質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましい。
水溶性高分子化合物の水溶液における水溶性高分子化合物の濃度は、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0037】
分散媒中でエマルション塗料を攪拌すると、エマルション塗料の液滴が形成され、その表面で、エマルション塗料の親水性コロイド形成物質と、分散媒のゲル化剤とが反応して三次元的網状組織が形成される。また、エマルション塗料の液滴は、ゲル化剤との反応によって凝集しながら、攪拌により細分化される。細分化の過程においても継続的に親水性コロイド形成物質とゲル化剤とが反応して三次元的網状組織が形成される。
このようにして得られるゲル状粒子は水分を多く含み、柔らかい粒子である。
【0038】
エマルション塗料の配合量は、分散媒100質量部に対して100~500質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。エマルション塗料の配合量を上記範囲内とすることにより、形状が均一なゲル状粒子が得られやすい。
【0039】
攪拌方法は、公知の方法であってよく、例えばディソルバ等の分散機で攪拌する方法が挙げられる。
エマルション塗料や分散媒の粘度、分散機の回転数、攪拌時間、親水性コロイド形成物質及びゲル化剤の組み合わせや配合量によって、得られるゲル状粒子の平均粒子径を自由にコントロールできる。通常、エマルション塗料や分散媒の粘度を高くすれば平均粒子径は大きくなり、分散機の回転数を早くすれば平均粒子径は小さくなる。
【0040】
各々のエマルション塗料が互いに異なる色調の着色顔料を含む2種以上のゲル状粒子(A)の水分散液を調製し、それらを混合してもよい。これにより、水系塗料組成物を多彩模様塗料組成物とすることができる。
【0041】
ゲル状粒子(B)の水分散液は、エマルション塗料が膨張黒鉛を含まない以外は、ゲル状粒子(A)の水分散液と同様にして調製できる。
ゲル状粒子(B)のエマルション塗料を、ゲル状粒子(A)のエマルション塗料とは異なる色調の着色顔料を含むものとしてもよい。これにより、水系塗料組成物を多彩模様塗料組成物とすることができる。
【0042】
<用途>
本発明の水系塗料組成物を被塗物の表面に塗布し、乾燥することで、難燃性を有する模様塗膜を形成できる。
被塗物に特に制限はなく、モルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材等、種々の材質の被塗物に塗装することが可能である。
塗布方法にも特に制限はなく、刷毛、こて、ローラー、スプレー等の公知の塗布方法で塗布することができる。
水系塗料組成物の塗布量に特に制限はないが、通常、150~800g/mが好ましい。塗布量は、乾燥前の値である。
乾燥は常温乾燥又は加熱乾燥でもよい。乾燥温度は、例えば5~80℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば5分間~8時間である。
【実施例
【0043】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において「部」は「質量部」を示す。
【0044】
<エマルション塗料の調製>
(製造例A-1)
アクリル樹脂エマルション(DIC株式会社製、「ボンコートCF-6140」、分散媒:水、樹脂分:48質量%)31.7部と、非イオン性グアルゴム誘導体の1.5質量%水溶液28.5部(固形分0.43部)と、膨張黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、「955025L」、膨張容積:250mL/g、膨張開始温度:160℃)10部とをディゾルバにて混合し、混合液(a)を調製した。
アニオン性高分子分散剤(日本アクリル化学社製、「オロタン731」)1部と、水28.8部とを混合し、混合液(b)を調製した。
混合液(a)に混合液(b)を加え撹拌し、エマルション塗料A-1を得た。
【0045】
(製造例A-2~A-4)
表1に示す配合(部)に従って、膨張黒鉛の一部又は全部を白顔料(酸化チタン、石原産業社製、「チタンR930」)に変更したこと以外は製造例A-1と同様にして、エマルション塗料A-2、A-3、A-4を製造した。
【0046】
【表1】
【0047】
<ゲル状粒子水分散液の製造>
(製造例B-1)
含水ケイ酸マグネシウムの4質量%水分散液25部(固形分1部)に、重ホウ酸アンモニウムの5質量%水溶液5部(固形分0.25部)と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液25部(固形分0.25部)を加え撹拌混合した後、水45部を加えて希釈し、分散媒を得た。
【0048】
得られた分散媒の40部に、エマルション塗料A-1の60部を加え、ディソルバで平均粒子径が30mmになるまで撹拌して、ゲル状粒子水分散液B-1を得た。
ゲル状粒子水分散液B-1から無作為に20個のゲル状粒子を選択し、その長径をノギスで測定した平均値は約30mmであった。
【0049】
(製造例B-2~B-4)
エマルション塗料A-1を、A-2、A-3、又はA-4に変更した以外は製造例B-1と同様にして、ゲル状粒子水分散液B-2、B-3、B-4を製造した。
【0050】
【表2】
【0051】
<水系塗料組成物の製造及び評価>
(実施例1~8、比較例1~2)
表3に示すゲル状粒子水分散液と、水又はアクリル樹脂エマルション(DIC株式会社製、「ボンコートCF-6140」、分散媒:水、樹脂分:48質量%)とを、表3に示す割合(部)で混合して、水系塗料組成物を得た。
表3に、水系塗料組成物中のゲル状粒子全体における膨張黒鉛の量(部)、樹脂エマルションの樹脂分の量(部)、及び該樹脂分100質量部に対する膨張黒鉛の割合(部)を示す。
得られた水系塗料組成物について、以下の手順で難燃試験を行った。結果を表3に示す。
【0052】
「難燃試験」
スレート板上に水系塗料組成物を、塗布量(乾燥前)が300g/mになるようにローラーにて塗工し、23℃2週間の条件で乾燥して塗膜を形成した。
ついで、塗膜から5cm離れた位置から、バーナーの炎を塗膜に向けて30秒間放射して燃焼させた。燃焼中の炎と煙の状態(炎の有無、煙の有無)を目視で確認した。煙については、背景として黒い板を置いた状態で目視可能である場合を「少」とした。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例1~8の水系塗料組成物の塗膜は、難燃性に優れていた。
一方、ゲル状粒子が膨張黒鉛を含まない比較例1の水系塗料組成物の塗膜は、難燃性に劣っていた。
ゲル状粒子100質量%のうち膨張黒鉛を含むゲル状粒子の割合が10質量%の比較例2の水系塗料組成物の塗膜も、難燃性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水系塗料組成物によれば、難燃性に優れた模様塗膜を形成できる。
本発明の水系塗料組成物のみで難燃性に優れた模様塗膜を形成できるので、かかる塗膜を形成するための塗装工程も簡便である。