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特許7440789異方性導電フィルム並びに接続構造体及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム並びに接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20240221BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240221BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
H01B5/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022142088
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2020131520の分割
【原出願日】2015-11-17
(65)【公開番号】P2022173254
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2014232934
(32)【優先日】2014-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-519473(JP,A)
【文献】特開2006-049783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 43/00
H01B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、
導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置され、
導電粒子群を構成する導電粒子が、所定の距離を持って一列に配列され
配列方向が規則的に変化している、異方性導電フィルム。
【請求項2】
各導電粒子群内の導電粒子数又は導電粒子間距離が、導電粒子群毎に規則的に変化している請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、
導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置され、
導電粒子群を構成する導電粒子が、所定の距離を持って一列に配列され、
各導電粒子群内の導電粒子数又は導電粒子間距離が、導電粒子群毎に規則的に変化している、異方性導電フィルム。
【請求項4】
導電粒子の一列の配列が全導電粒子群で方向が揃っている請求項記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
導電粒子の一列の配列に複数の列が交わるように配列されている請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
導電粒子群を構成する導電粒子の二つの列がX字状に交差するように配列している請求項記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
絶縁性接着ベース層に、更に絶縁性接着カバー層が積層されている請求項1~のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
前記絶縁性接着ベース層と前記絶縁性接着カバー層との界面近傍に導電粒子が配置されている請求項記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
所定の距離が、導電粒子の平均粒子径の0.5倍以上である請求項1~のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
各格子点領域の複数の導電粒子が互いに接触していない請求項1~のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
該格子点領域の形状が、格子点を中心とする円形である請求項1~10のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
該円形の半径が導電粒子の平均粒子径の2倍以上7倍以下である請求項11記載の異方性導電フィルム。
【請求項13】
格子点領域が、一辺が導電粒子の平均粒子径の100倍未満の矩形状である請求項1~10のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項14】
導電粒子近接個数が1個以上14個以下である請求項1~13のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項15】
導電粒子が金属粒子もしくは金属被覆樹脂粒子である請求項1~14のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項16】
絶縁性接着ベース層が絶縁性フィラーを含有する請求項1~15のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項17】
絶縁性接着ベース層又は絶縁性接着カバー層の少なくとも一方が絶縁性フィラーを含有する請求項16のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項18】
導電粒子群が3個の導電粒子から構成されている請求項1~17のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項19】
第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とが、請求項1~18のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより異方性導電接続されてなる接続構造体。
【請求項20】
第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とを、請求項1~18のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂バインダに導電粒子を分散させた異方性導電フィルムが、ICチップ等の電子部品を配線基板等に実装する際に広く使用されているが、このような異方性導電フィルムにおいては、導電粒子同士が連結もしくは凝集した状態で存在していることが知られている。このため、異方性導電フィルムを、電子機器の軽量小型化に伴い狭ピッチ化しているICチップの端子と配線基板の端子との接続に適用した場合、異方性導電フィルム中に連結もしくは凝集した状態で存在している導電粒子により、隣接する端子間で短絡が生ずる場合があった。
【0003】
従来、このような狭ピッチ化に対応した異方性導電フィルムとして、フィルム中に導電粒子を規則配列させたものが提案されている。例えば、延伸可能なフィルムに粘着層を形成し、その粘着層表面に導電粒子を単層で密集充填した後、このフィルムを導電粒子間距離が所期の距離になるまで2軸延伸処理して導電粒子を規則配列させ、その後、導電粒子に対し異方性導電フィルムの構成要素となる絶縁性接着ベース層を押し当て、導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写させて得た異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。また、凹部を表面に有する転写型の凹部形成面に導電粒子を散布し、凹部形成面をスキージして凹部に導電粒子を保持させ、その上から転写用の粘着層が形成された粘着フィルムを押し当て、粘着層に導電粒子を一次転写させ、次に、粘着層に付着した導電粒子に対し、異方性導電フィルムの構成要素となる絶縁性接着ベース層を押し当て、導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写させて得た異方性導電フィルムも提案されている(特許文献2)。これらの異方性導電フィルムについては、一般に、導電粒子側表面に、導電粒子を覆うように絶縁性接着カバー層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2005/054388号
【文献】特開2010-33793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電粒子は静電気等により凝集して二次粒子化し易いため、導電粒子を一次粒子として常時単独で存在させることは困難である。このため、特許文献1や特許文献2の技術には以下のような問題が生ずる。即ち、特許文献1の場合には、延伸可能フィルムの全面に導電粒子を欠陥なく単層で密集充填することが難しく、導電粒子が凝集状態で延伸可能フィルムに充填され、ショートの原因となったり、充填されない領域(いわゆる「抜け」)が生じ、導通不良の原因になったりするという問題があった。また、特許文献2の場合、転写型の凹部が粒子径の大きな導電粒子で覆われると、その後のスキージにより取り除かれて、導電粒子を保持していない凹部が生じ、異方性導電フィルムに導電粒子の「抜け」が生じて導通不良の原因になったり、反対に凹部に多数の小さな導電粒子が押し込まれると、絶縁性接着ベース層に転写させた際、導電粒子の凝集が生じたり、また、凹部の底部側に位置している導電粒子が、絶縁性接着ベース層と接触していないため、絶縁性接着ベース層の表面に散らばり、規則配列が損なわれ、ショートや導通不良の原因になったりするという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、規則的パターンで配列されるべき導電粒子の「抜け」や「凝集」の問題がなく、ショートや導通不良の発生が大きく抑制された異方性導電フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、平面格子の格子点に導電粒子を配置する際に、複数の導電粒子からなる導電粒子群を平面格子パターンの格子点領域に配置することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、そのような異方性導電フィルムが、転写体の凹部に導電粒子を配置するのではなく、表面に凸部が形成された転写体の当該凸部の先端に複数の導電粒子を付着させて転写を行うことにより製造できることを見出し、本発明の製造方法を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、
導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置されている異方性導電フィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムであって、
導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、
導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置されている異方性導電フィルムを提供する。
【0010】
本発明は、また、上述の絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(イ)~(ニ):
<工程(イ)>
平面格子パターンの格子点領域に相当する凸部が表面に形成された転写体を用意する工程;
<工程(ロ)>
転写体の凸部の天面に少なくとも2個以上の微粘着部を形成する工程;
<工程(ハ)>
該転写体の凸部の微粘着部に導電粒子を付着させる工程;及び
<工程(ニ)>
該転写体の導電粒子が付着した側の表面に絶縁性接着ベース層を重ねて押圧することにより、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着させる工程
を有する製造方法を提供する。なお、この工程(ニ)において、転着した導電粒子を更に絶縁性接着ベース層11に押し込んでもよい。
【0011】
本発明は、また、上述の絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(イ)~(ホ):
<工程(イ)>
平面格子パターンの格子点領域に相当する凸部が表面に形成された転写体を用意する工程;
<工程(ロ)>
転写体の凸部の天面に少なくとも2個以上の微粘着部を形成する工程;
<工程(ハ)>
該転写体の凸部の微粘着部に導電粒子を付着させる工程;
<工程(ニ)>
該転写体の導電粒子が付着した側の表面に絶縁性接着ベース層を重ねて押圧することにより、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着させる工程;及び
<工程(ホ)>
導電粒子が転着した絶縁性接着ベース層に対し、導電粒子転着面側から絶縁性接着カバー層を積層する工程
を有する製造方法を提供する。
【0012】
更に、本発明は、第1の電子部品の端子と、第2の電子部品の端子とが、本発明の異方性導電フィルムにより異方性導電接続された接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の異方性導電フィルムにおいては、導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、多数の導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置されている。このため、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合、良好な初期導通性とエージング後の良好な導通信頼性とを実現でき、ショートの発生も抑制できる。
【0014】
また、本発明の異方性導電フィルムの製造方法においては、平面格子パターンの格子点領域に相当する凸部が表面に形成された転写体を使用し、その凸部の天面に少なくとも2個以上の微粘着部を形成し、その微粘着部に導電粒子を付着させた後に、その導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写する。このため、導電粒子が2個以上集まって構成された導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置される。よって、本発明の製造方法で得られる異方性導電フィルムを用いれば、狭ピッチ化したICチップと配線基板とを、ショートや導通不良の発生を大きく抑制しつつ、異方性導電接続が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
図1B図1Bは、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
図2A図2Aは、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
図2B図2Bは、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
図2C図2Cは、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
図2D図2Dは、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
図2E図2Eは、本発明の異方性導電フィルムの平面透視図である。
図3A図3Aは、本発明の製造方法の工程説明図である。
図3B図3Bは、本発明の製造方法の工程説明図である。
図3C図3Cは、本発明の製造方法の工程説明図である。
図3D図3Dは、本発明の製造方法の工程説明図である。
図3E図3Eは、本発明の製造方法の工程説明図である。
図3F図3Fは、本発明の製造方法の工程説明図であると同時に、本発明の異方性導電フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の異方性導電フィルムを図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
<異方性導電フィルム>
本発明の異方性導電フィルムを図1A(断面図)又は図1B(断面図)と図2A(平面透視図)とに示す。図1Aの場合、本発明の異方性導電フィルム10は、絶縁性接着ベース層11の表面又は表面近傍に導電粒子13が配置された単層構造を有する。ここで、「導電粒子13が絶縁性接着ベース層11の表面に配置されている」とは、導電粒子13の一部が絶縁性接着ベース層11に押し込まれて配置されていることを表し、導電粒子が絶縁性接着バース層の表面近傍に配置されているとは、絶縁性接着ベース層11に導電粒子13が完全に押し込まれて埋設配置されていることを表す。また、図1Bの場合には、本発明の異方性導電フィルム10は、絶縁性接着ベース層11と絶縁性接着カバー層12とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子13が配置された積層構造を有する。ここで、「導電粒子13が絶縁性接着ベース層11と絶縁性接着カバー層12との界面近傍に配置されている」とは、導電粒子13が両層の界面に位置しているか、又は導電粒子13が絶縁性接着ベース層11又は絶縁性接着カバー層12のいずれかに完全に押し込まれて埋設配置されていることを表す。
【0018】
また、本発明の異方性導電フィルム10においては、導電粒子13は2個以上集まって導電粒子群14を構成しており、この導電粒子群14が、平面格子パターン(図2の点線)の格子点領域15に配置された構造を有する。図1A図1B及び図2Aでは、平面格子パターンは、異方性導電フィルム10の長手方向とそれに直交する方向(短手方向)に沿って想定されているが、長手方向と短手方向とに対し全体が傾斜して想定されてもよい。傾斜している場合、バンプに対する捕捉性が向上する効果が期待できる。
【0019】
(平面格子パターン)
異方性導電フィルムに想定される平面格子パターンとしては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子が挙げられる。中でも、最密充填可能な六方格子が好ましい。
【0020】
(格子点領域)
平面格子パターンの格子点領域15の形状としては、種々の形状を取ることができ、例えば、円形、三角形、四角形、多角形、無定形を取ることができる。中でも、平面視における導電粒子との相似性を持つことで、端部にある導電粒子の脱落が防止されやすい点から、格子点領域の中心(重心)は、平面格子パターンの格子点Pと一致していることが好ましく、特に格子点Pを中心とする円形が好ましい。
【0021】
(隣接格子点領域間最短距離)
また、平面格子パターンにおける隣接格子点領域間最短距離、即ち、隣接格子点領域の中心(重心)間最短距離は、導電粒子13の平均粒子径の好ましくは2倍以上もしくは格子点領域15の等倍以上である。隣接格子点領域間最短距離の上限はバンプレイアウトによって適宜設定されるものであるが、フィルムの長手方向において、導電粒子の平均粒子径の200倍未満、より好ましくは100倍未満、さらにより好ましくは34倍未満の間隔を設けるようにしてもよい。L/S=1でバンプ幅が200μmである場合に、バンプ幅方向に沿って格子線が必ず存在できるようになるからである。また、導電粒子を十分に捕捉させるには、バンプ幅方向に沿って格子線が2本以上、もしくは3本以上存在させるようにすることができるからでもある(尚、この格子線はバンプ幅方向と平行でなくともよい)。複数本存在させる場合、例えば格子点に存在する導電粒子が1個になるような抜けが存在したとても、実用上問題なく使用できる。これは歩留まりが上げやすくなるので、製造コスト上のメリットがある。導電粒子が1個になるような格子点が、一つの格子軸方向で3個以上連続していなければ、配列設計にマージンを持って設計することで対応可能であり、実用上問題ない。なお、FOG(Film on Glass)などのようにバンプが冗長であると片当たりになるので、隣接格子点領域間最短距離は、より好ましくは導電粒子径の2倍以上20倍未満である。この範囲であれば、本発明の異方性導電フィルムを異方性導電接続に適用した場合にも、より良好な初期導通性(初期導通抵抗)とエージング後の導通信頼性とを実現でき、ショートの発生もいっそう抑制できる。
【0022】
(格子点領域径)
格子点領域が円形である場合、その半径は、導電粒子13の平均粒子径の好ましくは2倍以上7倍以下、より好ましくは2倍以上5倍以下である。この数値はバンプレイアウトで適宜設定できる。この範囲であれば、ひとつのバンプとひとつのバンプ間スペースにのみまたがり、複数のバンプをまたがらず、ショートの発生を回避させ易いという効果が得られる。また、バンプやバンプ間スペースが導電粒子径に対して十分に大きい場合は、1辺が粒子径の100倍未満、好ましくは50倍以内、更に好ましくは33倍以内の矩形状であってもよい。
【0023】
また、格子点領域のフィルムの長手方向の長さは、バンプ幅の半分以下であることが好ましい。異方性接続の安定性と捕捉の確実性の効果が得られる。
【0024】
(導電粒子群)
本発明において、2個以上の導電粒子13から「導電粒子群」14を構成させる理由は、複数のバンプにまたがらない導電粒子の集合を作成すること(換言すると、一つのバンプと一つのバンプ間スペースまでにしかまたがらない導電粒子の集合に留めて作成すること)で、ショートを防止することだからである。導電粒子群を構成する導電粒子の数は、導電粒子の平均粒子径や平面格子パターンの格子点ピッチ等により異なるが、2個以上200個以下が好ましい。尚、導電粒子は一つの平面にのみ存在しており、重畳していないことが好ましい。
【0025】
なお、導電粒子群の大きさよりも略同等か、それより大きい距離で格子点間距離を設定すれば、導電粒子群を容易に識別できるようになる。
【0026】
(隣接導電粒子間最短距離)
また、格子点領域内15の導電粒子群14を構成する複数の導電粒子13は、ランダムに配置されてもよく、規則的に配置されてもよいが、互いに過度に接触しないことが好ましい。ショート抑制のためである。導電粒子が互いに接触していない場合の隣接導電粒子間最短距離は、導電粒子の平均粒子径の25%以上である。
【0027】
なお、導電粒子群14内で導電粒子13を規則配列させる場合、導電粒子数は好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上である。この場合、導電粒子群14を包含している格子点領域を導電粒子が内接する円形とすることもできるが、3個以上の導電粒子からなる多角形状を格子点領域とすることもできる。また、図示しないが、導電粒子群を構成する導電粒子が、所定の距離(好ましくは導電粒子径の0.5倍以上)を持って一列に配列していてもよく、二つの列がX字状に交差するように配列していてもよい(一つの列に複数の列が交わるように配列してもよい)。一列の配列が全導電粒子群で方向が揃っている場合は、格子点にある導電粒子からなる線と、格子点がない領域では導電粒子が存在しなくなり、平面視でマクロに見ると導電粒子からなる線は点線状に存在するように見える。配列方向は、異方性導電フィルムの長手方向でもよく、短手方向でもよい。それらに交わる方向でもよい。更に、その「一列の配列」の配列方向が規則的に変化してもよい。
【0028】
3個の導電粒子からなる導電粒子群の格子点領域が三角形状である場合、3辺中少なくとも2辺がいずれも異方性導電フィルムの長手方向にもそれと直交する短手方向にも平行ではないことが好ましく、3辺すべてが上記条件を満たすことがより好ましい。長手方向に非平行であれば、ショートの発生を抑制することが期待でき、短手方向に非平行であれば、バンプの端部において導電粒子が直線上に配置されないため、導電粒子捕捉数がバンプ毎にバラツクことを抑制することが期待できる。
【0029】
また、3個の導電粒子からなる導電粒子群が構成する格子点領域の三角形状は、正三角形であってもよいが、正三角形でなくてもよい。異方性導電フィルムの長手方向側又は短手方向に突き出す形の三角形であることが以下の理由から好ましい(配列形状を把握しやすいことから、二等辺三角形でもよい)。長手方向側に突き出すような三角形であれば、相対的にバンプ間スペースでの距離が大きくなることになるため、ショート発生リスクを回避できる。また、短手方向に突き出すような三角形であれば、バンプ端部に対して三角形の辺が鋭角に交わるため、特にファインピッチの場合に捕捉しやすくなる効果が期待できる。この場合、この辺を構成する導電粒子のフィルム長手方向側の外接線は、それぞれの導電粒子を貫くように存在することが好ましい。
【0030】
4個の導電粒子からなる導電粒子群の格子点領域が四角形状である場合、二つの三角形の組み合わせになるので三角形状の場合と同様に考えることができる。なお、四角形状は、同一形状の二つの三角形から構成される正方形、長方形、平行四辺形であってもよいが、四角形状が、異なる形状の三角形の組み合わせからなる台形等の四角形状であってもよく、全ての辺と長さ、角度が異なっていてもよい。なお、4個の導電粒子からなる導電粒子群の格子点領域が平行四辺形状の場合、二つの正三角形を組み合わせた形状であってもよいが、正三角形でなくてもよい。この場合も、三角形の場合と同様の理由から少なくとも2辺がいずれも異方性導電フィルムの長手方向にもそれと直交する短手方向にも平行ではないことが好ましい。
【0031】
5個の導電粒子からなる導電粒子群の格子点領域が五角形状である場合、三つの三角形の組み合わせ、もしくは三角形と四角形との組み合わせになるので三角形状の場合と同様に考えることができる。6個以上の導電粒子からなる導電粒子群の格子点領域が対応する多角形状である場合も、三角形同士、三角形と四角形あるいは五角形との組み合わせになるので、これらの多角形と同様に考えることができる。また、格子点領域を円形(楕円を含む)とみなすことも可能になる。円形の中心に導電粒子が存在してもよい。これは、三角形を組み合わせた多角形状が円形とみなせるからである。
【0032】
なお、導電粒子群を構成する導電粒子の規則配列は、図2B(正方格子状の四角形状の態様)に示すように、導電粒子群で全て同一でもよく、図2C(導電粒子数が一定範囲内で一個づつ減少あるいは増加を繰り返す態様)に示すように、規則的に変化させていてもよい。また、図2D(二等辺三角形の底辺の長さが一定の長さで長くなる態様)に示すように、同一個数で形状を規則的に変化させたものであってもよい。図2E(正方格子状の四角形状を回転させた態様)に示すように、同一個数、同一形状でフィルムの長手方向に対する角度を規則的に変化させたものであってもよい。なお、導電粒子群を構成する導電粒子の規則配列は、これらの図面の態様に限定されるものではなく、導電粒子の個数や導電粒子群の形状等の観点から、様々な規則的な変化の態様を組み合わせてもよい。これは、バンプレイアウトのみならず、異方性導電フィルムの絶縁性バインダの配合や異方性接続の圧着条件などが種々変更されることに対応するためである。
【0033】
規則配列が規則的変化である場合には、その変化している一部の格子点にある導電粒子群を構成する導電粒子の規則配列からなる辺が、異方性導電フィルムの長手方向およびこれに直交する短手方向に平行となる辺が存在してもよい。導電粒子群は格子配列されているため、例えばバンプの長手方向が十分に導電粒子群より大きければ、バンプの長手に格子点を複数存在させることができる。このような場合、バンプの端部に存在する導電粒子は格子点の何れかの導電粒子で捕捉されるため、導電粒子の補足数が少なくなり導通抵抗が安定しなくなる、といった懸念は生じにくくなる。そのため異方性導電フィルムの製造時や接続後の状態を容易に把握できるような導電粒子の配置状態を得ることが、要因を解析する精度が向上するなどしてトータルコストの削減に寄与しやすくなる。例えば図2D図2Eを一つの方向(フィルムの巻き取りおよび巻き出し方向である長手方向、異方性接続を連続的に行う場合の製造ラインの方向)に連続的に移動する場合、変化の仕方が規則的なため、不良の発見が容易になる。例えば、図2Eをディスプレイに表示させて上下にスクロールすることにより、実際の製造ラインでの異方性導電フィルムの移動を模してみると、導電粒子の規則配列が連続的に変化する状態において、変化が非連続的な異常な状態もしくは変化が無い状態の判別が容易になることが理解される。以上説明したように、本発明においては、導電粒子群を構成する導電粒子の規則配列は様々な態様を取ることができる。このことは、異方性導電フィルムにおける導電粒子の配列を設計する方法に寄与するものであり、本発明の一部となる。
【0034】
(導電粒子近接個数)
また、導電粒子群を評価する指標として、任意の導電粒子の周囲に近接配置されている導電粒子の個数を採用することができる。ここで、導電粒子の周囲とは、導電粒子を球と擬制しその平均粒子径をrとしたとき、フィルムの平面に描ける半径2.5rの同心円である。また、近接とは、その同心円に接触もしくは少なくとも一部が重なっている状態を意味する。導電粒子近接個数は、平面視の観察結果により測定することができる。その個数は、好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上10個以下である。このような個数が好ましい理由は、ファインピッチとする場合のバンプ間の最短距離が、一例として、導電粒子径の4倍未満となるからでもある。換言すれば、過度な導電粒子の密集によるショート発生の抑止と、導電粒子が疎になりすぎることによる異方性接続の不良発生の回避の、これらの両立を図るためである。
【0035】
(導電粒子)
導電粒子13としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケルなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。また、その平均粒子径は、1μm以上30μm以下でもよく、製造時の取り扱い性の観点から、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上6μm以下である。平均粒子径は、前述したように、画像型ないしはレーザー式の粒度分布計により測定することができる。
【0036】
異方性導電フィルム中の導電粒子の存在量は、平面格子パターンの格子点ピッチ並びに導電粒子の平均粒子径等に依存しており、通常は、300個/mm以上40000個/mm以下である。
【0037】
(絶縁性接着ベース層)
絶縁性接着ベース層11としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性接着ベース層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合性樹脂層等、又はそれらの硬化樹脂層を使用することができる。また、これらの樹脂層には、必要に応じてシランカップリング剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜選択して含有させることができる。
【0038】
なお、絶縁性接着ベース層11は、上述したような樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。
【0039】
このような絶縁性接着ベース層11の厚みは、1μm以上60μm以下でもよく、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下である。
【0040】
(絶縁性接着カバー層)
絶縁性接着カバー層12としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性接着カバー層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。また、先に説明した絶縁性接着ベース層11と同じ材料から形成したものも使用することができる。
【0041】
なお、絶縁性接着カバー層12は、上述したような樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。
【0042】
このような絶縁性接着カバー層12の厚みは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下である。
【0043】
更に、絶縁性接着ベース層11や絶縁性接着カバー層12には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミニウム等の絶縁性フィラーを加えてもよい。絶縁性フィラーの配合量は、それらの層を構成する樹脂100質量部に対して3質量部以上40質量部以下とすることが好ましい。これにより、異方性導電接続の際に異方性導電フィルム10が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子13が不要に移動することを抑制することができる。
【0044】
(絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層との積層)
なお、導電粒子13を挟んで絶縁性接着ベース層11と絶縁性カバー層12とを積層する場合、公知の手法により行うことができる。この場合、導電粒子13は、これらの層の界面近傍に存在する。ここで、「界面近傍に存在」とは、導電粒子の一部が一方の層に食い込み、残部が他方の層に食い込んでいることを示している。
【0045】
<異方性導電フィルムの製造>
次に、本発明の異方性導電フィルム、即ち、絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルム(図1A)、又は絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムであって、導電粒子が2個以上集まって導電粒子群を構成し、その導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置されている異方性導電フィルム(図1B)の製造方法を説明する。絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムの製造方法は、以下の工程(イ)~(ニ)を有し、絶縁性接着ベース層と絶縁性接着カバー層とが積層され、それらの界面近傍に導電粒子が配置された構造の異方性導電フィルムの製造方法は、以下の工程(イ)~(ホ)を有する。図面を参照しながら、工程毎に詳細に説明する。なお、本発明は特にこの製造方法に限定されるものではない。
【0046】
(工程(イ))
まず、図3Aに示すように、平面格子パターンの格子点領域に相当する凸部101が表面に形成されている転写体100を用意する。凸部101の形状は略柱状、略半球状、ロッド状等の種々の形状を取ることができる。「略」としたのは、凸部が高さ方向に常に同じ巾である場合だけでなく、上方に向かって巾が狭まる場合等も有り得るからである。ここで、略柱状とは、略円柱状もしくは略角柱状(三角柱、四角柱、六角柱等)である。好ましくは略円柱状である。
【0047】
凸部101の高さは、異方性導電接続すべき端子ピッチ、端子巾、スペース巾、導電粒子の平均粒子径等に応じて決定することができるが、使用する導電粒子の平均粒子径の好ましくは1.2倍以上4倍未満である。また、凸部101の半値巾(半分の高さでの巾)は、導電粒子の平均粒子径の好ましくは2倍以上7倍以下、より好ましくは2倍以上5倍以下である。この高さと巾がこれらの範囲であれば、脱落と抜けが連続的に発生することが避けられるという効果が得られる。
【0048】
更に、凸部101は、導電粒子が安定的に付着していられるようなレベルの平坦な天面を有することが好ましい。
【0049】
*転写体の具体例
この工程(イ)で用意すべき転写体は、公知の手法を利用して作成することができ、例えば、金属プレートを加工して原盤を作成し、それに硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて作成することができる。具体的には、平坦な金属板を切削加工して、凸部に対応した凹部を形成した転写体原盤も作成し、この原盤の凹部形成面に転写体を構成する樹脂組成物を塗布し、硬化させた後、原盤から引き離すことにより転写体が得られる。この凸部を平面視した際に認識できる輪郭で囲まれた領域が平面格子パターンの格子点領域に相当する。
【0050】
(工程(ロ))
次に、図3Bに示すように、表面に複数の凸部101が平面格子パターンで形成された転写体100の凸部101の天面に少なくとも2個の微粘着部102を形成する。微粘着部102同士の最短距離は、適用する導電粒子の平均粒子径の好ましくは0.25倍以上、より好ましくは0.5倍以上となるように設定する。
【0051】
*転写体の微粘着部
微粘着部102は、異方性導電フィルムを構成する絶縁性接着ベース層に導電粒子が転着されるまで、導電粒子を一時的に保持できる粘着力を示す部分であり、凸部101の少なくとも天面に形成される。従って、凸部101全体が微粘着性であってもよいが、導電粒子の意図しない凝集が生じてしまうことを避けるために、本発明では、互いに離間した2個以上の微粘着部102を設ける。また、微粘着部102の厚みは、微粘着部102の材質、導電粒子の粒子径等に応じて適宜決定することができる。また、“微粘着”とは、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着する際に、絶縁性接着ベース層よりも粘着力が弱いという意味である。
【0052】
このような微粘着部102は、公知の異方性導電フィルムに使用されている微粘着部を適用することができる。例えば、シリコーン系の粘着剤組成物を、凸部101の天面に塗布することにより形成することができる。
【0053】
なお、図2B図2Eに示すような導電粒子が規則配列している異方性導電フィルムを製造する場合、導電粒子の規則配列パターンに対応した微粘着層が転写体の凸部に形成されるように転写体原盤の凹部に段差を形成してもよく、あるいは転写体の凸部の天面にスクリーン印刷法やフォトリソグラフ法等の公知の手法により微粘着層を形成してもよい。
【0054】
(工程(ハ))
次に、図3Cに示すように、転写体100の凸部101の微粘着部102に導電粒子103を付着させる。具体的には、転写体100の凸部101の上方から導電粒子103を散布し、微粘着部102に付着しなかった導電粒子103をブロアを用いて吹き飛ばせばよい。ここで、一つの突部101に複数の導電粒子103が付着し、それらから導電粒子群114が構成される。
【0055】
なお、図3Cから面の方向を逆転させ、導電粒子を一面に敷き詰めた面に突起の天面を付着させてもよい。導電粒子に不要な応力を加えないためである。このように配置に必要な導電粒子のみを突起天面に付着させることで導電粒子を回収し再利用しやすくなり、開口部に導電粒子を充填し取り出す方法に比べ、経済性にも優れることになる。なお、開口部に導電粒子を充填し取り出す方法の場合、充填されなかった導電粒子には不要な応力がかかりやすくなることが懸念される。
【0056】
(工程(ニ))
次に、図3Dに示すように、転写体100の導電粒子群114が付着した側の表面に、異方性導電フィルムを構成すべき絶縁性接着ベース層104を重ねて押圧することにより、絶縁性接着ベース層104の片面に導電粒子群114を転着させる(図3E)。この場合、転写体100を、その凸部101が下向きになるように絶縁性接着ベース層104に重ねて押圧することが好ましい。下向きにしてブロアすることで、凸部の天面に貼着されていない導電粒子を除去し易くさせるためである。なお、この工程において、転着した導電粒子を更に絶縁性接着ベース層11に押し込んでよい。例えば、転写体で更に押圧してもよく、あるいは絶縁性接着ベース層の導電粒子転着面を一般的に加熱押圧平板で押圧してもよい。これにより、絶縁性接着ベース層の表面又は表面近傍に導電粒子が配置された構造の図1Aの異方性導電フィルムが得られる。
【0057】
(工程(ホ))
更に、図3Fに示すように、導電粒子103が転着した絶縁性接着ベース層104に対し、導電粒子転着面側から絶縁性接着カバー層105を積層する。これにより本発明の異方性導電フィルム200(図1B)が得られる。
【0058】
<接続構造体>
本発明の異方性導電フィルムは、第1の電子部品(例えば、ICチップ)の端子(例えばバンプ)と、第2の電子部品(例えば配線基板)の端子(例えばバンプ、パッド)との間に配置し、第1又は第2の電子部品側から熱圧着により本硬化させて異方性導電接続することにより、ショートや導通不良が抑制された、いわゆるCOG(chip on glass)やFOG(film on glass)等の接続構造体を得ることができる。
【実施例
【0059】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0060】
実施例1
厚さ2mmのニッケルプレートを用意し、四方格子パターンで円柱状の凹部(内径8μm、最大深さ8μm)を形成し、更に底部に深さ1μm、幅1μmの直線な溝をランダムに形成し(溝の全面積は底部全面積の70%以内)、転写体原盤とした。隣接凹部間距離は12μmであった。従って、凹部の密度は2500個/mmであった。この凹部の内径と隣接凹部間距離が転写体の凸部径と隣接凸部間最短距離に対応する。
【0061】
得られた転写体原盤に、フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート樹脂(M208、東亞合成(株))29質量部、光重合開始剤(IRGCUR184、BASFジャパン(株))2質量部を含有する光重合性樹脂組成物を、乾燥厚みが30μmとなるようにPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布し80℃で5分間乾燥後、高圧水銀ランプにて1000mJ光照射することにより転写体を作成した。
【0062】
転写体を原盤から引き剥がし、凸部が外側になるように直径20cmのステンレス製のロールに巻き付け、このロールを、回転させながらエポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))70質量部とフェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))30質量部とを含有する微粘着剤組成物を、不織布に含浸させた粘着シートに接触させ、凸部の天面に微粘着剤組成物を付着させ、厚さ1μmの微粘着層を形成して転写体を得た。
微粘着層は、転写体原盤の底部に設けられた溝によって、ドット状に形成されている。
【0063】
この転写体の表面に、平均粒子径4μmの導電粒子(ニッケルメッキ樹脂粒子(AUL704、積水化学工業(株)))を散布した後、ブロアすることにより微粘着層に付着していない導電粒子を除去した。
【0064】
導電粒子が付着した転写体を、その導電粒子付着面から、絶縁性接着ベース層である厚さ5μmのシート状の熱硬化型の絶縁性接着フィルム(フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))40質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株))2質量部、シリカ微粒子フィラー(アエロジルRY200、日本アエロジル(株))20質量部からなる絶縁性樹脂組成物から形成したフィルム)に対し、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転写させた。
【0065】
得られた絶縁性接着ベース層の導電粒子転着面に、透明な絶縁性接着カバー層として厚さ15μmのシート状の別の絶縁性接着フィルム(フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株))2質量部を含有する熱硬化性樹脂組成物から形成されたフィルム)を重ね、温度60℃、圧力2MPaで積層した。これにより異方性導電フィルムが得られた。
【0066】
実施例2
転写体原盤を作成する際に、隣接凹部間距離を8μmに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。なお、転写体原盤の凹部の密度は3900個/mmであった。
【0067】
実施例3
転写体原盤を作成する際に、凹部内径を12μmとし且つ隣接凹部間距離を8μmに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。なお、転写体原盤の凹部の密度は2500個/mmであった。
【0068】
実施例4
転写体原盤を作成する際に、凹部内径を20μmとし且つ隣接凹部間距離を20μmに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。なお、転写体原盤の凹部の密度は625個/mmであった。
【0069】
比較例1
転写体原盤を作成する際に、凹部内径を12μmとし且つ隣接凹部間距離を4μmに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。なお、転写体原盤の凹部の密度は3900個/mmであった。
【0070】
比較例2
実施例2において、導電粒子の散布・ブロア処理を2回行うこと以外、実施例2を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。
【0071】
比較例3
転写体原盤を作成する際に、凹部内径を8μmとし且つ隣接凹部間距離を80μmに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより異方性導電フィルムを得た。凹部の密度は130個/mmであった。
【0072】
<評価>
(格子点領域に関連する評価)
実施例及び比較例の異方性導電フィルムの格子点領域(円形)における隣接導電粒子間最短距離、隣接格子点領域最短距離、格子点領域径を、光学顕微鏡(MX50、オリンパス(株))を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
(導電粒子近接個数)
実施例及び比較例の異方性導電フィルムの任意の導電粒子を100個選び、それぞれの導電粒子を球と擬制しその平均粒子径をrとしたときの水平方向における半径2.5rの同心円に一部でも重なっている導電粒子の個数を、光学顕微鏡(MX50、オリンパス(株))を用いて測定した。得られた結果(最小個数(MIN)と最大個数(MAX))を表1に示す。実用上10個以下であることが好ましい。
【0074】
なお、この測定における観察で、比較例2では、散布・ブロア処理を2回繰り返したため、導電粒子が密な状態であることがわかった。これは導電粒子近接個数が多くなっていることからも理解される。
【0075】
(初期導通性(初期導通抵抗))
実施例及び比較例の異方性導電フィルムを用いて、バンプ間スペースが12μmで、高さ15μm、直径30×50μmの金バンプを有するICチップと、12μmスペースの配線が設けられたガラス基板とを、180℃、60MPa、5秒という条件で異方性導電接続し、接続構造体を得た。得られた接続構造体について、抵抗測定器(デジタルマルチメーター、横河電機(株))を用いて初期導通抵抗値を測定した。得られた結果を表1に示す。1Ω以下であることが望まれる。
【0076】
(導通信頼性)
初期導通抵抗値の測定に使用した接続構造体を、温度85℃、湿度85%に設定されたエージング試験器中に投入し、500時間放置した後の導通抵抗値を、初期導通抵抗と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。5Ω以下であることが望まれる。
【0077】
(ショート発生率)
初期導通抵抗で使用したものと同じ接続構造体を作成し、隣接する配線間のショートの発生の有無を調べた。得られた結果を表1に示す。ショート発生率が50ppm以下であることが望まれる。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から、実施例1~4の異方性導電フィルムを使用した接続構造体は、初期導通性(初期導通抵抗)、導通信頼性、ショート発生率の各評価項目について、良好な結果を示したことがわかる。
【0080】
他方、比較例1、2の異方性導電フィルムの場合、平面視における導電粒子近接個数が多くなりすぎたために、ショートの発生率が実施例に比べ非常に高く、好ましくないものであった。比較例3の異方性導電フィルムの場合、導電粒子個数が疎になりすぎたため、導通信頼性が不十分であり、初期導通性も実施例に比べ劣っていた。
【0081】
実施例5
絶縁性接着カバー層を使用することなく、実施例1からフェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))を40質量部から50質量部に、シリカ微粒子フィラー(アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を20質量部から10質量部に、厚みを5μmから20μmにする以外は実施例1と同様にして絶縁性接着ベース層を作製し、導電粒子を転写および押圧させることにより、図1Aに示すような、絶縁性接着ベース層に導電粒子が配置された異方性導電フィルムを得た。この異方性導電フィルムを使用した接続構造体は、実施例1の場合と同様に、初期導通性(初期導通抵抗)、導通信頼性、ショート発生率の各評価項目について、良好な結果を示した。
【0082】
実施例6
導電粒子が図2Bに示した規則配列している異方性導電フィルムを製造するために、凹部(寸法14μm×14μm(凹部の各角には、転写体の対応各角にのみ微粘着層が設けられるように段差が設けられている)、凹部密度125個/mm、隣接凹部間距離75μmの転写体原盤を使用し、導電粒子群の導電粒子数が4個、導電粒子群における導電粒子間距離が4μmとなるように、転写体の凸部の天面の角に微粘着層を設け、実施例1の絶縁性接着ベース層のフェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株))を40質量部から50質量部に、シリカ微粒子フィラー(アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を20質量部から10質量部にしたこと以外、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを得た。導電粒子の個数密度は500個/mmとなった。
【0083】
また、得られた異方性導電フィルムを、ガラス基板(ITOベタ電極)とフレキシブル配線基板(バンプ幅:200μm、L(ライン)/S(スペース)=1、配線高さ10μm)との間に挟み、接続バンプ長さが1mmとなるように、180℃、5MPa、5秒という条件で異方性導電接続し、評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、その「初期導通抵抗値」と、温度85℃で湿度85%RHの恒温槽に500時間投入した後の「導通信頼性」とを、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を使用して電流1Aで4端子法にて導通抵抗を測定し、「初期導通性」の場合には、測定値が2Ω以下の場合を良好、2Ωを超えるものを不良と評価し、「導通信頼性」の場合には、測定値が5Ω以下の場合を良好、5Ω以上の場合を不良と評価した。その結果、本実施例の接続構造体は、いずれも「良好」と評価された。また、実施例1と同様に「ショート発生率」を測定したところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0084】
実施例7
導電粒子の個数密度が2000個/mmとなるように、凹部密度500個/mm、隣接凹部間距離31μmの転写体原盤を使用した以外は、実施例6と同様にして異方性導電フィルムを得た。
【0085】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例6と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0086】
実施例8
導電粒子が図2Cに示した規則配列している異方性導電フィルムを製造するために、凹部寸法20μm×20μm(凹部には、転写体の所定箇所にのみ微粘着層が設けられるように段差が設けられている)、凹部密度125個/mm、隣接中心間距離69μmの転写体原盤を使用し、導電粒子群の導電粒子数が6個、5個、4個、3個と連続的に変化するようにし、且つ導電粒子群内における導電粒子間最短距離が、いずれの形状でも3μm以上になるように設定した。なお、いずれの形状もその外形が略等しくなるように設定している。また形状は正六角形、正五角形、正方形、正三角形のいずれかの辺の長さを適宜調節し、これらに近似した形状となっている。転写体の凸部の天面の微粘着層を設けたこと以外、実施例6と同様にして異方性導電フィルムを得た。導電粒子の個数密度は500個/mmとなった。
【0087】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例6と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0088】
実施例9
導電粒子の個数密度が2000個/mmとなるように、凹部密度500個/mm、隣接凹部間距離25μmの転写体原盤を使用した以外は、実施例8と同様にして異方性導電フィルムを得た。
【0089】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例5と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0090】
実施例10
導電粒子が図2Dに示した規則配列している異方性導電フィルムを製造するために、凹部寸法20μm×20μm(凹部には、転写体の所定箇所にのみ微粘着層が設けられるように段差が設けられている)、凹部密度167個/mm、隣接凹部間距離57μmの転写体原盤を使用し、導電粒子群の導電粒子数が3個、導電粒子群の形状が2等辺3角形形状であって導電粒子間距離が(4μm、12μmおよび12μm)、又は(8μm、13μmおよび13μm)となるように、転写体の凸部の天面の微粘着層を設けたこと以外、実施例6と同様にして異方性導電フィルムを得た。導電粒子の個数密度は500個/mmとなった。
【0091】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例6と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0092】
実施例11
導電粒子の個数密度が2000個/mmとなるように、凹部密度667個/mm、隣接凹部間距離19μmの転写体原盤を使用した以外は、実施例10と同様にして異方性導電フィルムを得た。
【0093】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例6と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0094】
実施例12
導電粒子が図2Eに示した規則配列している異方性導電フィルムを製造するために、フィルムの長手方向および短手方向に向かってそれぞれ矩形の導電粒子群の傾斜が15度づつ増加している転写体原盤を使用する以外、実施例6と同様にして異方性導電フィルムを得た。導電粒子の個数密度は500個/mmとなった。
【0095】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例6と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0096】
実施例13
導電粒子の個数密度が2000個/mmとなるように、凹部密度500個/mm、隣接凹部間距離31μmの転写体原盤を使用した以外、実施例12と同様にして異方性導電フィルムを得た。
【0097】
また、得られた異方性導電フィルムを、実施例6と同様にガラス基板とフレキシブル配線基板との間に挟み異方性導電接続することにより評価用の接続構造体を得た。得られた接続構造体について、実施例5と同様に、「初期導通性」、「導通信頼性」、「ショート発生率」とを評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0098】
なお、実施例6~13において、凹みのある転写型に直接導電粒子を充填し、絶縁性接着ベース層に導電粒子を転着させる方法を採用すること以外、当該実施例をそれぞれ繰り返すことにより異方性導電フィルムを作成し、評価した。その結果、実施例6~13とほぼ同一の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の異方性導電フィルムにおいては、平面格子パターンの格子点領域に相当する凸部が表面に形成された転写体を使用し、その凸部の天面に少なくとも2個以上の微粘着部を形成し、その微粘着部に導電粒子を付着させた後に、その導電粒子を絶縁性接着ベース層に転写する。このため、導電粒子が2個以上集まって構成した導電粒子群が平面格子パターンの格子点領域に配置される。よって、本発明の製造方法で得られる異方性導電フィルムを用いれば、狭ピッチ化したICチップと配線基板とを、ショートや導通不良の発生を大きく抑制しつつ、異方性導電接続が可能となる。
【符号の説明】
【0100】
10、200 異方性導電フィルム
11、104 絶縁性接着ベース層
12、105 絶縁性接着カバー層
13、103 導電粒子
14、114 導電粒子群
15 平面格子パターンの格子点領域
100 転写体
101 凸部
102 微粘着部
P 格子点
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F