(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】換気回数推定装置、換気量推定装置、換気回数推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240221BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20240221BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
(21)【出願番号】P 2023110663
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022108444
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 絢音
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 武彦
(72)【発明者】
【氏名】ジア シェイン
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-019484(JP,A)
【文献】特開2011-127815(JP,A)
【文献】特開2014-110857(JP,A)
【文献】特開昭61-245038(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101178412(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110361310(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0054845(KR,A)
【文献】特開2023-050088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定とみなす期間を第1期間としたときに、
前記第1期間は、前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度と、該二酸化炭素濃度が検出された時刻とを対応させた第1データから取得され、
前記第1期間中の第1区間における二酸化炭素濃度の変化量と、
該第1区間と同じ間隔を有する第2区間とにおける二酸化炭素濃度の変化量との比に基づいて、該対象空間(S)の換気回数Rを推定する第1制御部(50)を備える
換気回数推定装置。
【請求項2】
前記第1区間および前記第2区間は連続しており、
前記第1制御部(50)は、前記第1区間内の1点、前記第1区間の終点、および前記第2区間内の1点の3点の二酸化炭素濃度に基づいて、前記対象空間(S)の換気回数Rを推定する
請求項1に記載の換気回数推定装置。
【請求項3】
前記第1制御部(50)は、3点の二酸化炭素濃度をそれぞれ、第1濃度C
1、第2濃度C
2、および第3濃度C
3とし、3点の二酸化炭素濃度の測定間隔を間隔tとしたときに、式(1)に基づいて前記対象空間(S)の換気回数Rを推定する
請求項2に記載の換気回数推定装置。
【数1】
【請求項4】
前記第1制御部(50)は、前記第1期間中のn点(nは3以上の整数)の二酸化炭素濃度をそれぞれ、第1濃度C
1、第2濃度C
2、第3濃度C
3、…第n濃度C
nとし、n点の二酸化案素濃度の測定間隔を間隔tとしたときに、式(2)を満たす複数の換気回数である第1R
1、…第
(n-2)R
n-2を平均することで前記対象空間(S)の換気回数Rを推定する
請求項1に記載の換気回数推定装置。
【数2】
【請求項5】
前記第1期間は、前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間である
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項6】
前記第1期間は、前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間であり、前記第1濃度C
1を前記第1期間開始時の第1時間t
1の二酸化炭素濃度とし、前記第3濃度C
3を前記第1期間経過時の第3時間t
3の二酸化炭素濃度としたときに、前記第2濃度C
2を前記第1時間t
1と前記第3時間t
3との中間である第2時間t
2における二酸化炭素濃度とする
請求項3または4に記載の換気回数推定装置。
【請求項7】
前記第1制御部(50)は、前記第1期間における前記対象空間(S)の複数の換気回数Rを推定し、推定した複数の換気回数Rに基づいて前記対象空間(S)の換気回数Rを決定する
請求項1~3のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項8】
前記第1制御部(50)は、推定した前記対象空間(S)の複数の換気回数Rを平均することで前記対象空間(S)の換気回数Rを求める
請求項7に記載の換気回数推定装置。
【請求項9】
前記第1制御部(50)は、
前記第1期間を含み、かつ、前記換気量Qが一定とみなされる第2期間における前記対象空間(S)の換気回数Rを複数求め、
求められた前記対象空間(S)の複数の換気回数Rの値に基づいて、前記対象空間(S)における在室人数の変化を検出する
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項10】
前記第1制御部(50)は、
前記第1期間を含み、かつ、前記対象空間(S)の在室人数が一定とみなされる第2期間における前記対象空間(S)の換気回数Rを複数求め、
求められた前記対象空間(S)の複数の換気回数Rの値に基づいて、前記対象空間(S)における換気量の変化を検出する
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項11】
前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度は、該対象空間(S)の空気を排出する排出口(4)における二酸化炭素濃度である
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項12】
前記第1制御部(50)は、前記対象空間(S)の用途に関する第1情報に基づいて二酸化炭素の測定間隔tを設定する
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項13】
前記第1制御部(50)は、外気の二酸化炭素濃度の変化量が所定の範囲内を推移している期間を前記第1期間として選択する
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項14】
前記第1制御部(50)は、前記対象空間(S)に設けられる所定の換気装置(1)の運転を制御し、前記第1制御部(50)により推定された換気回数Rが、予め設定された換気回数よりも低いことを判定した場合、前記換気装置(1)の運転を開始または風量を増大させる
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1つに記載の換気回数推定装置が推定した換気回数Rと、前記対象空間(S)の容積とに基づいて、前記対象空間(S)の換気量を推定する第2制御部(51)を備える換気量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気回数推定装置、換気量推定装置、換気回数推定方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の閉空間における換気量を推定する換気量推定装置が記載されている。この換気量推定装置は、在室人数が既知となる時間帯のCO2濃度、予め設定された部屋の容量、一人当たりのCO2発生量、及び外部のCO2濃度とに基づいて換気量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部屋の在室人数によってCO2発生量は異なるため、在室人数の情報に基づいて換気回数や換気量を推定することが望ましい。しかし、在室人数の情報なしに換気回数や換気量を推定することはこれまで検討されてこなかった。
【0005】
本開示の目的は、在室人数が未知の対象空間の換気回数を推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、対象空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定とみなす期間を第1期間としたときに、前記第1期間中の第1区間における二酸化炭素濃度の変化量と第2区間とにおける二酸化炭素濃度の変化量との比に基づいて、該対象空間(S)の換気回数Rを推定する第1制御部(50)を備える換気回数推定装置である。
【0007】
第1の態様では、対象空間(S)の人数情報や容積情報がなくても、第1期間における二酸化炭素濃度に基づいて該対象空間(S)の換気回数を推定できる。このように換気回数を簡便に推定できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記第1区間および前記第2区間は連続しており、
前記第1制御部(50)は、前記第1区間内の1点、前記第1区間の終点、および前記第2区間内の1点の3点の二酸化炭素濃度に基づいて、前記対象空間(S)の換気回数Rを推定する。
【0009】
第2の態様では、第1期間における3点の二酸化炭素濃度を取得するだけで簡便に換気回数を推定できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、
前記第1制御部(50)は、前記第1期間中の3点の二酸化炭素濃度をそれぞれ、第1濃度C1、第2濃度C2、および第3濃度C3とし、3点の二酸化炭素濃度の測定間隔を間隔tとしたときに、式(1)に基づいて換気回数Rを推定する。
【0011】
【0012】
第3の態様では、外気の二酸化炭素量濃度、初期の対象空間(S)の二酸化炭素量濃度、及び二酸化炭素量発生量などの値が不要であるため、簡便に対象空間(S)の換気回数Rを推定できる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様において、
前記第1制御部(50)は、前記第1期間中のn点(nは3以上の整数)の二酸化炭素濃度をそれぞれ、第1濃度C1、第2濃度C2、第3濃度C3、…第n濃度Cnとし、n点の二酸化案素濃度の測定間隔を間隔tとしたときに、式(2)を満たす複数の換気回数である第1R1、…第nRn-2を平均することで換気回数Rを推定する。
【0014】
【0015】
第4の態様では、複数の推定された換気回数Rnの平均を求めることで、換気回数の推定精度が向上する。
【0016】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1期間は、前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間である。
【0017】
第5の態様では、減衰期間中の二酸化炭素発生量は一定またはゼロである。選択した少なくとも3点における二酸化炭素の発生量を同一とみなせるため、二酸化炭素発生量を考慮することなく換気回数を推定できる。
【0018】
第6の態様は、第3または第4の態様において、
前記第1期間は、前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間であり、前記第1濃度C1を前記第1期間開始時の第1時間t1の二酸化炭素濃度とし、前記第3濃度C3を前記第1期間経過時の第3時間t3の二酸化炭素濃度としたときに、前記第2濃度C2を前記第1時間t1と第3時間t3との中間である第2時間t2における二酸化炭素濃度とする。
【0019】
第6の態様では、第1時間t1と第3時間t3との間の期間を等分した期間を間隔tとすることができる。このように、第1期間の開始時刻と経過時刻とに基づいて簡便に間隔tを求めることができる。
【0020】
第7の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、前記第1期間における前記対象空間(S)の複数の換気回数Rを推定し、推定した複数の換気回数Rに基づいて前記対象空間(S)の換気回数Rを決定する。
【0021】
第7の態様では、1つの換気回数を推定するよりも、複数の換気回数を推定して、該推定された複数の換気回数に基づいて1つの換気回数を決定する方が換気回数の推定精度が向上する。
【0022】
第8の態様は、第7の態様において、
前記第1制御部(50)は、推定した前記対象空間(S)の複数の換気回数Rを平均することで前記対象空間(S)の換気回数Rを求める。
【0023】
第8の態様では、複数の推定された換気回数の平均を求めることで、換気回数の推定精度が向上する。
【0024】
第9の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、
前記第1期間を含み、かつ、前記換気量Qが一定とみなされる第2期間における前記対象空間(S)の換気回数Rを複数求め、
求められた前記対象空間(S)の複数の換気回数Rの値に基づいて、前記対象空間(S)における在室人数の変化を検出する。
【0025】
第9の態様では、例えば経時的に換気回数を複数推定した場合、換気回数の値が急激に変化した時点が、在室人数が変化した時点であることがわかる。このように換気回数の値の変化により在室人数の変化を検出できるため、例えば人数を数えるために人感センサやカメラなどの装置を不要にできる。また、推定した複数の換気回数のうち換気回数の値が急激に変化した値がある場合、その値を換気回数の候補値から除外することで、換気回数の推定精度が向上する。
【0026】
第10の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、
前記第1期間を含み、かつ、前記対象空間(S)の在室人数が一定とみなされる第2期間における前記対象空間(S)の換気回数Rを複数求め、
求められた前記対象空間(S)の複数の換気回数Rの値に基づいて、前記対象空間(S)における換気量の変化を検出する
第10の態様では、例えば経時的に換気回数を複数推定した場合、換気回数の値が急激に変化した時点が、換気量が変化した時点であることがわかる。このように換気回数の値の変化により換気量の変化を検出できるため、例えば換気量の変化を検出するための風量センサなどの装置を不要にできる。また、推定した複数の換気回数のうち換気回数の値が急激に変化した値がある場合、その値を換気回数の候補値から除外することで、換気回数の推定精度が向上する。
【0027】
第11の態様は、第1~第4の態様のいずれ1つにおいて、
前記対象空間(S)中の二酸化炭素濃度は、該対象空間(S)の空気を排出する排出口(4)における二酸化炭素濃度である。
【0028】
第11の態様では、排出口(4)の二酸化炭素濃度は、対象空間(S)中の二酸化炭素濃度のより平均に近い値を示すため、換気回数の推定値の精度が向上する。
【0029】
第12の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、前記対象空間(S)の用途に関する第1情報に基づいて二酸化炭素の測定間隔tを設定する。
【0030】
第12の態様では、対象空間(S)の用途によって設定される換気回数が異なる。これにより測定間隔tを設定することで、対象空間(S)ごとの換気回数の推定精度を向上できる。
【0031】
第13の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、外気の二酸化炭素濃度の変化量が所定の範囲内を推移している期間を前記第1期間として選択する。
【0032】
第13の態様では、例えば、外気の二酸化炭素濃度の変化量の所定の範囲が±30ppmである場合、第1期間における外気の二酸化炭素濃度は変化していないか、ほぼ変化していないとみなすことができる。このように外気の二酸化炭素濃度が一定である期間を第1期間とすることで、外気の二酸化炭素濃度が変化する期間を第1期間とするよりも、換気回数の推定の精度が向上する。
【0033】
第14の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1制御部(50)は、前記対象空間(S)に設けられる所定の換気装置(1)の運転を制御し、前記第1制御部(50)により推定された換気回数Rが、予め設定された換気回数よりも低いことを判定した場合、前記換気装置(1)の運転を開始または風量を増大させる。
【0034】
第14の態様では、不足している換気回数分を換気装置が補うことができる。
【0035】
第15の態様は、第1~12のいずれか1つの態様の換気回数推定装置が推定した換気回数と、前記対象空間(S)の容積とに基づいて、前記対象空間(S)の換気量を求める第2制御部(51)を備える換気量推定装置である。
【0036】
第15の態様では、対象空間(S)の換気量を推定できる。
【0037】
第16の態様は、対象空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定であるとした第1期間中における異なる3点以上の二酸化炭素濃度に基づいて、該対象空間(S)の換気回数Rを推定する換気回数の測定方法である。
【0038】
第17の態様は、対象空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定であるとした第1期間中における異なる3点以上の二酸化炭素濃度に基づいて、該対象空間(S)の換気回数Rを推定する推定処理を行う換気回数の推定プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、実施形態1の換気回数推定装置が適用される室内空間の概略図である。
【
図2】
図2は、換気回数推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、室内空間の二酸化炭素濃度の時間変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、換気回数の推定方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、間隔tの決定方法を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、変形例1の換気回数推定装置が行う換気回数の推定方法を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、変形例2の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例3の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例4に係る換気量推定装置と換気装置との関係を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、変形例4の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態2の換気量推定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0041】
(1)実施形態1
(1-1)換気回数推定装置
図1に示すように、本実施形態の換気回数推定装置(10)は、室内空間(S)の換気回数を推定する。室内空間(S)は、対象空間(S)の一例である。換気回数は、1時間あたり室内空間(S)の空気が何回入れ替わったということを、回/hで表す。
【0042】
室内空間(S)の壁面または天井面には、給気口(3)及び排気口(4)が設けられる。給気口(3)及び排気口(4)は、天井裏に配置された換気装置(1)に連通する。排気口(4)は、室内空間(S)の空気を排出する排出口(4)の一例である。換気装置(1)は、室外空気(OA)を取り込んで、室内空間(S)に給気すると共に、室内空間(S)の空気(RA)を取り込んで、室外へ排気する。
【0043】
具体的に、換気装置(1)は、熱交換部(5)を備える。熱交換部(5)は、換気装置(1)内に流入した室外空気(OA)と、排気口(4)から換気装置(1)に流入した室内空気(RA)との間で熱交換する。熱交換された室外空気(OA)は、供給空気(SA)として給気口(3)から室内空間(S)内に吹き出される。一方、熱交換された室内空気(RA)は、排出空気(EA)として、室外へ放出される。このように、換気装置(1)によって室内空間(S)は換気される。
【0044】
図2に示すように、本実施形態の換気回数推定装置(10)は、検出部(20)、記憶部(30)、表示部(40)、及び制御部(50)を備える。
【0045】
検出部(20)は、室内空間(S)中の二酸化炭素濃度を検出するCO2センサである。検出部(20)は、排気口(4)に配置される。検出部(20)は、排気口(4)に流入する室内空気(RA)の二酸化炭素濃度を検出する。
【0046】
記憶部(30)は、検出部(20)が検出した二酸化炭素濃度を記憶する。また、記憶部(30)には、所定の演算式が記憶される。この演算式は、室内空間(S)の換気回数Rを推定するために用いられる。本実施形態の演算式は、後述する式(1)である。
【0047】
表示部(40)は、換気回数推定装置(10)によって推定された室内空間(S)の換気回数を表示する。
【0048】
制御部(50)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイスとを備える。制御部(50)は、検出部(20)、記憶部(30)、及び表示部(40)と有線または無線により接続される。制御部(50)は、第1制御部(50)の一例である。
【0049】
制御部(50)は、検出部(20)から受信した所定の信号に基づいて、二酸化炭素濃度を算出する。制御部(50)は、二酸化炭素濃度と、該二酸化炭素濃度が検出された時刻とを対応させた第1データを取得する。第1データは、時間経過に伴う室内空間(S)の二酸化炭素濃度の変化を示す(
図3参照)。制御部(50)は、第1データを記憶部(30)に出力する。制御部(50)は、記憶部(30)に保存された第1データと演算式とに基づいて、室内空間(S)の換気回数Rを推定する。
【0050】
(2)換気回数の推定
図3および
図4を用いて、換気回数推定装置(10)が行う室内空間(S)の換気回数Rの推定方法について詳細に説明する。
【0051】
ステップS11では、制御部(50)は、第1データを取得する。取得された第1データは、記憶部(30)に格納される。
【0052】
ステップS12では、制御部(50)は、第1データから第1期間を抽出する。第1期間は、室内空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定とみなされる期間である。本実施形態では、第1期間は、二酸化炭素濃度が減衰している期間(減衰期間)である(
図3の破線部分)。例えば、減衰期間における室内空間(S)の二酸化炭素濃度の減少は、減衰期間開始直前の室内空間(S)の人数が減少することに起因する。このことにより、減衰期間の二酸化炭素の発生量Mは概ね一定とみなすことができる。例えば、室内空間(S)の人数がゼロになった後の減衰期間では、二酸化炭素の発生量はゼロとなる。また、該当の期間では、二酸化炭素の発生量Mが一定であり、かつ、二酸化炭素濃度が概ね一定の割合で低下しているため、減衰期間では換気量Qも一定とみなすことができる。
【0053】
ステップS13では、制御部(50)は、第1期間中における3点の二酸化炭素濃度を選択する。具体的に、制御部(50)は、ステップS12で第1データから抽出した減衰期間中の第1区間および第2区間を選択する。第1区間および第2区間の期間を間隔tとしたとき、第1区間および第2区間の間隔tは等しい。第1区間および第2区間は連続する。すなわち、第1区間の終点と第2区間の始点は同じ時刻である。制御部(50)は、3点の異なる第1時間t1、第2時間t2、及び第3時間t3を選択する(t1<t2<t3)。制御部(50)は、第1時間t1~第3時間t3の各時間に対応する二酸化炭素濃度を選択する。第1時間t1で測定される二酸化炭素濃度を第1濃度C1とする。第2時間t2で測定される二酸化炭素濃度を第2濃度C2とする。第3時間t3で測定される二酸化炭素濃度を第3濃度C3とする。言い換えると、第1濃度C1は、第1区間の始点である第1時間t1の二酸化炭素濃度である。第2濃度C2は、第1区間の終点であり、かつ、第2区間の始点である第2時間t2の二酸化炭素濃度である。第3濃度C3は、第2区間の終点である第3時間t3の二酸化炭素濃度である。間隔tは二酸化炭素濃度の測定間隔である。第1区間および第2区間の設定については後述する。
【0054】
ステップS14では、制御部(50)は、第1区間内の1点である第1濃度C1、第1区間の終点である第2濃度C2、および第2区間内の1点である第3濃度C3の3点の二酸化炭素濃度に基づいて、換気回数Rを推定する。具体的に、制御部(50)は、第1期間中の第1区間における二酸化炭素濃度の変化量と第2区間とにおける二酸化炭素濃度の変化量との比に基づいて、室内空間(S)の換気回数Rを推定する。より具体的に、制御部(50)は、式(1)に示す演算式を有する。制御部(50)は、第1区間における二酸化炭素の変化量(C1-C2)と、第2区間における二酸化炭素の変化量(C2-C3)と、間隔tを(式1)に代入する。
【0055】
【0056】
これにより換気回数Rが推定される。
【0057】
ステップS15では、制御部(50)は、ステップS14で決定された室内空間(S)の換気回数を表示部(40)に表示させる。
【0058】
次に、(式1)について説明する。室内空間(S)において、二酸化炭素濃度と新鮮空気とが十分に混合・拡散して一様な濃度になるものと仮定すると、二酸化炭素濃度Cは式(1-1)で表される。
【0059】
【0060】
ここで、C0:外気の二酸化炭素濃度、CS:室内空間の二酸化炭素の初期濃度、Q:換気量(m3/h)、M:室内空間中の二酸化炭素発生量(m3/h)である。上述したように、第1期間である減衰期間中の換気量Qおよび二酸化炭素の発生量Mは一定とみなす。そのため、第2濃度C2及び第3濃度C3は、(式1-2)及び(式1-3)によりそれぞれ表される。
【0061】
【0062】
【0063】
(式1-2)及び(式1-3)に基づいて、次の通り(式1)が導かれる。
【0064】
【0065】
次に、
図5を参照しながら、ステップS13における第1区間、第2区間、および間隔tの求め方について説明する。本実施形態の第1期間は、二酸化炭素濃度が減衰し始めた時間から1回換気時間が経過するまでの間の期間である。1回換気時間は、室内空間(S)の空気が全部入れ替わるのに要する時間である。1回換気時間が不明であるため、想定される換気回数から1回換気時間を求める。例えば、60分のうちの想定される換気回数が3回である部屋では、1回換気時間は60÷3=20分間である。
【0066】
ステップS21では、制御部(50)は、設計基準に基づいて想定される換気回数を設定する。具体的に、制御部(50)は、室内空間(S)の用途に関する第1情報に基づいて、換気回数が設定される。第1情報は、例えば室内空間(S)が学校の教室であるか、ビル内のオフィスであるか、ホテルの客室であるか、などの情報である。例えば、ASHRE(アメリカ暖房冷凍空調学会:American Society Of Heating, Refrigerating And A-C Engineers)のSTANDARDS 62.1では、学校の教室の換気回数を3回と定められており、オフィスの換気回数を0.6回と定められている。このように、第1情報は、室内空間(S)に応じて設定される換気回数を示す。本実施形態の室内空間(S)を学校の教室として、換気回数は3回に設定される。
【0067】
ステップS22では、制御部(50)は、ステップS21の第1情報から1回換気時間を求める。1回換気時間=60分/換気回数とすると、本実施形態の室内空間(S)では、60分/3回=20分となる。
【0068】
ステップS23では、制御部(50)は、第1区間、第2区間、および間隔tを求める。ここで第1時間t1を、1回換気時間の開始時とし、第3時間t3を、1回換気時間の経過時とする。制御部(50)は、第1時間t1と第3時間t3との中間の時間を第2時間t2に設定する。すなわち、第1区間は、第1時間t1から第2時間t2までの期間であり、第2区間は、第2時間t2から第3時間t3までの期間であり、第1区間および第2区間の期間は間隔tとなる。本実施形態では、1回換気時間は20分である。すなわち、第1時間t1から第3時間t3までの時間は20分であるため、間隔tは、t=1/2×1回換気時間により求めることができ、本実施形態の間隔tは10分である。このように、本実施形態では、制御部(50)は、第1期間の開始時(第1時間t1)から経過時(第3時間t3)までの期間を2等分した期間を間隔tとする。また、本実施形態では、制御部(50)は、室内空間(S)の用途に関する第1情報に基づいて二酸化炭素の測定間隔tを設定する。
【0069】
(3)換気回数推定方法
換気回数の推定方法は、室内空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定であるとした第1期間中における異なる3点以上の二酸化炭素濃度に基づいて、該室内空間(S)の換気回数を推定する。具体的には、上記(2)で説明した通りである。
【0070】
(4)換気回数を推定するプログラム
制御部(50)は、換気回数を推定する推定プログラムを備える。推定プログラムは、室内空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定であるとした第1期間中における異なる3点以上の二酸化炭素濃度に基づいて、該室内空間(S)の換気回数を推定する推定処理を行う。具体的な処理は、上記(2)で説明した通りである。
【0071】
(5)特徴
(5-1)特徴1
本実施形態の換気回数推定装置(10)は、室内空間(S)中の二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qが一定とみなす期間を第1期間としたときに、第1期間中の第1区間における二酸化炭素濃度の変化量と第2区間とにおける二酸化炭素濃度の変化量との比に基づいて室内空間(S)の換気回数Rを推定する制御部(50)(第1制御部)を備える。
【0072】
本実施形態によると、室内空間(S)の人数情報や容積情報などがなくても、該室内空間(S)の換気回数を推定できる。このように換気回数を簡便に推定できる。
【0073】
(5-2)特徴2
本実施形態では、第1区間および第2区間は連続しており、制御部(50)は、第1区間内の1点、第1区間の終点、および第2区間内の1点の3点の二酸化炭素濃度に基づいて、換気回数Rを推定する。これにより、第1期間における3点の二酸化炭素濃度を取得するだけでよいため、簡便に室内空間(S)の換気回数Rを推定できる。
【0074】
(5-3)特徴3
本実施形態の換気回数推定装置(10)では、制御部(50)は、第1期間の3点の二酸化炭素濃度をそれぞれ、第1濃度C1、第2濃度C2、および第3濃度C3とし、3点の二酸化炭素濃度の測定間隔を間隔tとしたときに、式(1)に基づいて換気回数Rを推定する。
【0075】
本実施形態によると、外気の二酸化炭素濃度、初期の室内空間の二酸化炭素濃度、二酸化炭素発生量などの値が不要であるため、簡便に室内空間の換気回数を推定できる。特に、減衰期間中は、二酸化炭素の発生量が一定またはゼロであるため、室内空間(S)の二酸化炭素発生量に基づくことなく換気回数を推定できる。
【0076】
(5-4)特徴4
本実施形態では、第1期間は室内空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間である。減衰期間中の二酸化炭素発生量は一定またはゼロである。選択した少なくとも3点における二酸化炭素の発生量Mを同一とみなすことができる。また、第1期間である減衰期間では、二酸化炭素の発生量Mが一定であり、かつ、二酸化炭素濃度が概ね一定の割合で低下しているため、減衰期間では換気量Qも一定とみなすことができる。これにより、二酸化炭素発生量Mおよび換気量Qを考慮することなく換気回数を推定できる。特に、式(1-2)および式(1-3)に基づいて式(1)が導き出せるが、これは第1期間において二酸化炭素発生量Mと換気量Qが一定であることを前提とする。言い換えると、第1期間では二酸化炭素発生量Mと換気量Qが一定とみなすことができるため、式(1)から求められる換気回数Rの値の信頼性が向上する。
【0077】
(5-5)特徴5
本実施形態では、第1期間は、室内空間(S)中の二酸化炭素濃度が減衰する期間であり、第1濃度C1を第1期間開始時の第1時間t1の二酸化炭素濃度とし、第3濃度C3を第1期間経過時の第3時間t3の二酸化炭素濃度としたときに、第2濃度C2を第1時間t1と第3時間t3との中間である第2時間t2における二酸化炭素濃度とする。これにより、第1時間t1と第3時間t3との間の期間を等分した期間を間隔tとすることができる。このように、第1期間の開始時刻と経過時刻とに基づいて簡便に間隔tを求めることができる。
【0078】
(5-6)特徴6
本実施形態の換気回数推定装置(10)では、室内空間(S)中の二酸化炭素濃度は、該室内空間(S)の空気を排出する排気口(4)における二酸化炭素濃度である。
【0079】
本実施形態によると、排気口(4)の二酸化炭素濃度は、室内空間(S)中の二酸化炭素濃度のより平均に近い値を示すため、換気回数の推定値の精度が向上する。
【0080】
(5-7)特徴7
本実施形態では、第1制御部(50)は、前記対象空間(S)の用途に関する第1情報に基づいて二酸化炭素の測定間隔tを設定する。室内空間(S)の用途によって設定される換気回数が異なるため、室内空間(S)の用途に応じた換気回数に基づいて測定間隔tを設定することで、室内空間(S)ごとの換気回数の推定精度を向上できる。
【0081】
(4)実施形態1の変形例1
本例の換気回数推定装置(10)では、制御部(50)は、減衰期間中の4点の異なる時間、及びそれらの各時間に対応する二酸化炭素濃度に基づいて換気回数を推定する。本例の換気回数推定装置(10)の記憶部(30)には、換気回数を推定する演算式である式(2)が保存されている。nは3以上の整数である。本実施形態ではn=3および4となる。
【0082】
【0083】
本例の換気回数の推定方法について
図6を参照しながら説明する。なお、特に断りのない限り、本例と上記実施形態の換気回数推定装置(10)の構成は、同一である。
【0084】
ステップS31では、制御部(50)は、第1データを取得する。取得された第1データは、記憶部(30)に格納される。
【0085】
ステップS32では、制御部(50)は、第1データから二酸化炭素濃度が減衰している減衰期間を抽出する(
図3参照)。
【0086】
ステップS33では、制御部(50)は、ステップS31で第1データから抽出した減衰期間における4点の異なる第1時間t1、第2時間t2、第3時間t3、及び第4時間t4を選択する(t1<t2<t3<t4)。制御部(50)は、第1時間t1~第4時間t4の各時間に対応する二酸化炭素濃度を選択する。第4時間t4に対応する二酸化炭素濃度を第4濃度C4とする。
【0087】
ステップS34では、制御部(50)は、ステップS32で検出した第1濃度C1、第2濃度C2、第3濃度C3、及び間隔tを(式2)に代入する。すなわち、n=3として、以下の式から第1換気回数R1が求まる。間隔tの求め方については後述する。なお、第1区間は、第1時間t1から第2時間t2までの期間であり、第2区間は、第2時間t2から第3時間t3までの期間である。
【0088】
【0089】
ステップS35では、制御部(50)は、ステップS32で検出した第2濃度C2、第3濃度C3、第4濃度C4、及び時間tを(式2)に代入する。すなわち、n=4として、以下の式から第2換気回数R2が求まる。なお、第1区間は、第2時間t2から第3時間t3までの期間であり、第2区間は、第3時間t3から第4時間t4までの期間である。
【0090】
【0091】
ステップS36では、制御部(50)は、ステップS34で求めた第1換気回数R1、及びステップS35で求めた第2換気回数R2の平均値を求める。この平均値により、室内空間(S)の換気の推定回数が決定される。
【0092】
ステップS37では、制御部(50)は、ステップS35で求めた室内空間(S)の換気回数を表示部(40)に表示させる。
【0093】
次にステップS33における間隔tの求め方について説明する。間隔tを求めるフローは、上記実施形態と同一であるため図示を省略する。本例においても、室内空間(S)は、学校の教室とする。
【0094】
時間t1を、1回換気時間の開始時とし、時間t4を、1回換気時間の経過時とする。間隔tは、時間t1から時間t4までを3等分した時間である。すなわち、間隔tは、t=1/3×1回換気時間により求めることができる。1回換気時間は20分であるため、本例の間隔tは約6.7分である。このように、複数の換気回数Rnの平均を求めることで、換気の推定回数の精度が向上する。
【0095】
(6)実施形態1の変形例2
変形例2の換気回数推定装置(10)は、推定した換気回数Rに基づいて室内空間(S)の在室人数の変化を検出する。具体的に、
図7を参照しながら説明する。
【0096】
ステップS41では、第1制御部(50)は、第2期間を選択する。第2期間は、第1期間を含み、かつ、換気量Qが一定とみなされる期間である。換気量Qが一定とみなされる期間は、例えば換気装置(1)の運転負荷が一定であり、かつ、室内空間(S)への給気風量が一定とみなせる期間である。室内空間(S)へ供給される風量は一定であると、室外に排出される風量も一定であるとみなせる。すなわち、このような期間の換気量Qは一定とみなすことができる。
【0097】
ステップS42では、第1制御部(50)は、第2期間における室内空間(S)の換気回数Rを複数求める。複数の換気回数をRnとする。Rnの求め方は例えば上記変形例1と同一であってもよい。二酸化炭素濃度の測定誤差を考慮すると間隔tは所定値以上の長さが必要であるが、間隔tの値が該所定値以上であれば、間隔tが短いほど(すなわち、二酸化炭素濃度の測定間隔が短いほど)、第2期間における二酸化炭素濃度の測定回数が多くなる。これにより、求められる換気回数Rnの数も多くなり、換気回数Rの推定値の信頼性が向上する。
【0098】
ステップS43では、第1制御部(50)は、ステップS41で求めた複数の換気回数Rnの値に基づいて、室内空間(S)における在室人数の変化を検出する。例えば、第1制御部(50)が複数の換気回数Rnを第2期間の始めから順に第1換気回数R1、第2換気回数R2、…と順に求めていく過程で、換気回数Rnの値が急激に変化した場合、その換気回数Rnに対応する時刻が、室内空間(S)の在室人数が変化した時刻であると判定する。また、第1制御部(50)は、その換気回数Rnの変化した値に基づいて、室内空間(S)の在室人数が何人変化したかを推定してもよい。
【0099】
このように変形例2では、換気回数Rの値の変化により在室人数の変化を検出できるため、例えば人数を数えるために人感センサやカメラなどの装置を不要にできる。また、第1制御部(50)は、推定した複数の換気回数Rnに基づいて換気回数Rを求める場合、複数の換気回数Rnのうち換気回数の値が急激に変化した値を換気回数Rの候補値から除外することで、換気回数Rの推定精度が向上する。
【0100】
(7)実施形態1の変形例3
変形例3の換気回数推定装置(10)は、推定した換気回数Rに基づいて室内空間(S)の換気量の変化を検出する。具体的に、
図8を参照しながら説明する。
【0101】
ステップS51では、第1制御部(50)は、第2期間を選択する。第2期間は、第1期間を含み、かつ、室内空間(S)における在室人数が一定とみなされる期間である。在室人数が一定とみなされる期間は、例えば室内空間(S)が会議室である場合、会議室が使用されている期間である。具体的に、予約システムにより会議室が15分単位で予約可能である場合、会議室の人数が変化しない最大時間を15分間とすることができる。このように、在室人数が一定とみなせる期間を、会議室の利用時間の最小単位の時間とみなすことができる。
【0102】
ステップS52では、第1制御部(50)は、第2期間における室内空間(S)の換気回数Rnを複数求める。複数の換気回数Rnの求め方は例えば上記変形例1と同一であってもよい。間隔tの値は測定誤差を考慮すると所定値以上の長さが必要であるが、間隔tの値が該所定値以上であれば、間隔tが短いほど(すなわち、二酸化炭素濃度の測定間隔が短いほど)、第2期間における二酸化炭素濃度の測定回数が多くなる。これにより、求められる換気回数Rnの数も多くなり、換気回数Rの推定値の信頼性が向上する。
【0103】
ステップS53では、第1制御部(50)は、ステップS41で求めた複数の換気回数Rnの値に基づいて、室内空間(S)における換気量Qの変化を検出する。例えば、第1制御部(50)が複数の換気回数Rnを第2期間の始めから順に第1換気回数R1、第2換気回数R2、…と順に求めていく過程で、換気回数Rnの値が急激に変化した場合、その換気回数Rnに対応する時刻が、室内空間(S)の換気量Qが変化した時刻であると判定する。また、第1制御部(50)は、その換気回数Rnの変化した値に基づいて、室内空間(S)の換気量Qがどれくらい変化したかを推定してもよい。
【0104】
このように、変形例3では換気回数Rの値の変化により換気量の変化を検出できるため、例えば換気量の変化を検出するための風量センサなどの装置を不要にできる。また、第1制御部(50)は、推定した複数の換気回数Rnに基づいて換気回数Rを求める場合、複数の換気回数Rnのうち換気回数の値が急激に変化した値を換気回数Rの候補値から除外することで、換気回数Rの推定精度が向上する。
【0105】
(8)実施形態1の変形例4
変形例4では、制御部(50)は、室内空間(S)に設けられる換気装置(1)の運転を制御する。制御部(50)は、該制御部(50)により推定された換気回数が、予め設定された換気回数よりも低いことを判定した場合、換気装置(1)の運転を開始または風量を増大させる。
【0106】
具体的に、
図9に示すように換気装置(1)は、室内空間(S)へ空気を供給する給気ファン(80)と、室内空間(S)から排気する排気ファン(90)とを備える。また、換気装置(1)は、給気ファン(80)及び排気ファン(90)の運転を制御する換気制御部(60)を有する。換気制御部(60)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイスとを備える。
【0107】
変形例4の換気回数推定装置(10)は、制御部(50)が換気制御部(60)と通信可能に接続される。これにより、制御部(50)は換気制御部(60)に指示を送信することで、給気ファン(80)および排気ファン(90)の運転が制御される。すなわち、制御部(50)は、換気装置(1)の運転を制御する。次に、変形例4の制御部(50)の動作について
図10を用いて説明する。
【0108】
ステップS61では、制御部(50)は、換気回数Rを推定する。換気回数Rの推定の方法は、上記実施形態1に記載の同一方法であってもよいし、上記変形例1に記載の同一方法であってもよい。
【0109】
ステップS62では、制御部(50)は、ステップS61で求めた換気回数Rが予め設定される換気回数よりも高いか否かを判定する。換気回数Rが予め設定される換気回数以上と判定された場合(ステップS62のYES)、制御部(50)の動作は終了する。換気回数Rが予め設定される換気回数よりも低いと判定された場合(ステップS62のNO)、ステップS63が実行される。
【0110】
ステップS63では、制御部(50)は、換気装置(1)の運転を開始する。換気装置(1)がすでに運転中であれば、制御部(50)は、換気装置(1)の風量を増大する。言い換えると、制御部(50)は、換気装置(1)の給気ファン(80)および排気ファン(90)の風量を増大する。これにより、室内空間(S)の換気量が増大する。
【0111】
ステップS64では、制御部(50)は、ステップS63の実行後の第1期間を選択する。その後、ステップS61が実行される。
【0112】
このように、変形例4では不足している換気回数分を換気装置(1)の運転により補うことができる。これにより、予め設定された換気回数Rにすることができる。
【0113】
(5)実施形態2
実施形態2は、室内空間(S)の換気量を推定する換気量推定装置(70)である。以下では、上記実施形態及び変形例の換気回数推定装置(10)と異なる構成について説明する。
【0114】
図11に示すように、換気量推定装置(70)は、検出部(20)、記憶部(30)、表示部(40)、及び制御部(51)を備える。
【0115】
制御部(51)は、第2制御部(51)の一例である。制御部(51)は、室内空間(S)の換気量を推定する。制御部(51)は、上記実施形態または上記変形例において推定された室内空間(S)の換気回数と、室内空間(S)の容積とに基づいて、室内空間(S)の換気量を推定する。
【0116】
記憶部(30)には、室内空間(S)の容積情報が保存される。室内空間(S)の容積情報は、換気量推定装置(70)の出荷時に予め記憶部(30)に保存されていてもよいし、出荷後に所定の入力装置(タッチパネルなど)から入力されて記憶部(30)に保存されてもよい。
【0117】
制御部(51)は、上記実施形態1またはその変形例の制御部(50)と同じ方向で室内空間(S)の換気回数を推定する。制御部(51)は、推定された換気回数と、室内空間(S)の容積との積により室内空間(S)の換気量を求める。例えば、室内空間(S)が1,200m3とし、換気回数が3回と推定されたとき、換気量は、3,600m3として推定される。このように換気量推定装置(70)により、室内空間(S)の換気量が推定される。
【0118】
(6)その他の実施形態
上記実施形態1、その変形例、および実施形態2については、以下のような構成としてもよい。
【0119】
第1期間および第2期間は連続していなくてもよい。この場合、例えば第1期間中に4点の二酸化炭素濃度(C1、C2、C3、C4)が選択される。第1濃度C1は、第1時間t1時の二酸化炭素濃度である。第2濃度C2は、第2時間t2時の二酸化炭素濃度である。第3濃度C3は、第3時間t3時の二酸化炭素濃度である。第4濃度C4は、第4時間t4時の二酸化炭素濃度である。t1~t4は、t1<t2<t3<t4である。第1区間は、第1時間t1から第2時間t2までの期間であり、第2区間は、第3時間t3から第4時間t4までの期間である。制御部は、第1期間の二酸化炭素の変化量であるC1-C2と、第2期間の二酸化炭素の変化量であるC3-C4との比に基づいて換気回数Rを推定する。なお、第1区間および第2区間の期間は、間隔tである。
【0120】
上記実施形態1およびその変形例について、外気の二酸化炭素濃度を測定するセンサの値に基づいて、第1期間が設定されてもよい。具体的に、制御部(50)は、図示しない外気の二酸化炭素濃度センサと通信可能に接続されており、制御部(50)は、外気の二酸化炭素濃度の変化量が所定の範囲内を推移している期間を第1期間として選択する。所定の範囲は、±30ppmの範囲であってもよいし、±25ppmの範囲であってもよいし、±10ppmの範囲であってもよいし、±5ppmの範囲であってもよい。外気の二酸化炭素濃度がこのような範囲内を推移している間は、外気の二酸化炭素濃度は一定であるとみなすことができる。これにより、例えば、式(1-2)および式(1-3)に基づいて式(1)が導き出せるが、これは第1期間において外気の二酸化炭素濃度C0が一定であることを前提とする。言い換えると、第1期間では外気の二酸化炭素濃度C0が一定とみなすことができるため、式(1)から求められる換気回数Rの値の信頼性が向上する。
【0121】
上記実施形態1およびその変形例について、制御部(50)は、第1期間から複数の換気回数Rnを推定してもよい。複数の換気回数Rnに基づいて換気回数Rが求められてもよい。具体的に、制御部(50)は、複数の換気回数Rnの平均値を換気回数Rとして推定してもよい。
【0122】
推定プログラムは、換気回数推定装置(10)に設けられていなくてもよい。例えば、推定プログラムは、換気装置(1)と通信可能なサーバに設けられてもよいし、クラウド等に保存されていてもよい。
【0123】
上記実施形態1およびその変形例において、第1期間の開始時を二酸化炭素濃度が減衰し始めた時点とし、第1期間の経過時を二酸化炭素濃度が収束する時点としてもよい。言い換えると、第1時間t1を二酸化炭素濃度が減衰し始めた時点とし、第2時間t3を二酸化炭素濃度が収束する時点としてもよい。二酸化炭素濃度が減衰し始めた時点は、二酸化炭素濃度が減少を開始した時点またはその直後であってもよい。また、二酸化炭素濃度が収束するとは、二酸化炭素濃度が概ね一定、または二酸化炭素濃度の変化が減衰期間に比べて緩やかになることをいう。二酸化炭素濃度が収束する時点は、二酸化炭素濃度の変化量がよりも減衰期間における変化量よりも緩やかになる点としてもよい。
【0124】
第1期間は、室内空間(S)内の二酸化炭素濃度が上昇する上昇期間であってもよい。上昇期間においても、二酸化炭素濃度の発生量は概ね一定であるため、二酸化炭素の発生量の情報がなくても、(式1)または(式2)に基づいて換気回数を推定できる。
【0125】
上記変形例において、二酸化炭素濃度の減衰期間において選択される二酸化炭素濃度は5点以上であってもよい。
【0126】
上記変形例において、換気回数Rは、複数の換気回数Rnに基づいて求められればよく、複数の換気回数Rnの平均値でなくてもよい。
【0127】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本開示は、換気回数推定装置、及び換気量推定装置について有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 換気装置
10 換気回数推定装置
50 制御部(第1制御部)
70 換気量推定装置
51 制御部(第2制御部)