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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】スチームトラップ管理システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240221BHJP
   G08C 15/06 20060101ALI20240221BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240221BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240221BHJP
   F16T 1/48 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
G08C15/06 F
G08C17/00 Z
H04L12/28 400
F16T1/48 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022168786
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0201797(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0316707(US,A1)
【文献】特開2013-140576(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112540625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G08C 15/06
G08C 17/00
H04L 12/28
F16T 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象である複数のスチームトラップに各々装着され、対応するスチームトラップの物理量を計測する、複数の計測装置と、
前記複数の計測装置の各々によって計測された前記物理量を示す計測データに基づいて、前記複数のスチームトラップの各々の状態を管理する管理装置と、
前記複数の計測装置と前記管理装置とを接続する通信ネットワークと、
を備え、
前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置の各々をノードとするBLE(Bluetooth Low Energy)対応のメッシュネットワークによって構成されており、
前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置のうち互いに隣接する2つの計測装置間の距離がしきい値以上である場合に、当該2つの計測装置間に配置され、当該2つの計測装置間の通信を中継する第1通信装置を有し、
前記2つの計測装置間の距離が前記しきい値未満であっても、遮蔽物の存在に起因して当該2つの計測装置間の通信が不能又は不調である場合には、当該2つの計測装置間の通信を中継する第2通信装置が配置され
前記複数の計測装置と、前記第1通信装置と、前記第2通信装置とをデイジーチェーン方式で接続する通信ルートが構成される、スチームトラップ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームトラップの状態を管理するためのスチームトラップ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、一般には、配管系の適所にスチームトラップを設置し、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
【0003】
経年劣化又は作動不良等によってスチームトラップのシール性能が損なわれると、蒸気配管系内の蒸気がスチームトラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招くこととなる。そのため、スチームトラップの状態を点検する作業が定期的に行われる。
【0004】
プラント内の主要な配管系に設置されているスチームトラップには、固定型の計測装置が装着される。計測装置は、当該スチームトラップの温度及び振動を1日に1回等の定期的に測定し、その測定の結果を示す計測データをサーバ等の管理装置に送信する。管理装置は、受信した計測データに基づいて当該スチームトラップの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを管理する。
【0005】
下記特許文献1には、スチームトラップの状態を診断するための計測装置及び診断装置が開示されている。計測装置は可搬型の計測装置であり、診断装置はタブレット端末又はノートパソコン等であり、計測装置と診断装置とは相互に無線通信が可能である。計測装置は、各スチームトラップの表面温度を計測する温度センサと、各スチームトラップの振動強度を計測する振動センサと、温度センサ及び振動センサから出力された計測データを記憶する記憶部と、当該計測データを診断装置に送信する通信部と、表示部とを備えている。診断装置は、計測装置から受信した計測データに基づいて各スチームトラップの状態(正常又は異常)を診断し、その診断の結果を示す診断データを計測装置に送信する。計測装置は、診断装置から受信した診断データに基づいて、各スチームトラップに関する診断の結果を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-84418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固定型の計測装置は、中継器及び親機を介して管理装置と無線通信を行う。複数台(例えば10台)の計測装置が1台の中継器に接続され、複数台(例えば10台)の中継器が1台の親機に接続される。従って、例えば100台の計測装置を備えるシステムでは、少なくとも10台の中継器と少なくとも1台の親機とが必要になる。中継器及び親機としては、電池駆動式のWi-Fiルータが使用される。
【0008】
このように背景技術に係るスチームトラップ管理システムでは複数の中継器及び親機を用いて通信ネットワークを構成しているため、システムの導入コスト等が上昇する。また、中継器又は親機が故障した場合には、それに接続される複数の計測装置が管理装置との間で通信不能となるため、通信障害に対する耐性が低い。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、コストの削減と通信障害耐性の向上とを実現することが可能なスチームトラップ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るスチームトラップ管理システムは、管理対象である複数のスチームトラップに各々装着され、対応するスチームトラップの物理量を計測する、複数の計測装置と、前記複数の計測装置の各々によって計測された前記物理量を示す計測データに基づいて、前記複数のスチームトラップの各々の状態を管理する管理装置と、前記複数の計測装置と前記管理装置とを接続する通信ネットワークと、を備え、前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置の各々をノードとするBLE(Bluetooth Low Energy)対応のメッシュネットワークによって構成されており、前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置のうち互いに隣接する2つの計測装置間の距離がしきい値以上である場合に、当該2つの計測装置間に配置され、当該2つの計測装置間の通信を中継する第1通信装置を有し、前記2つの計測装置間の距離が前記しきい値未満であっても、遮蔽物の存在に起因して当該2つの計測装置間の通信が不能又は不調である場合には、当該2つの計測装置間の通信を中継する第2通信装置が配置され、前記複数の計測装置と、前記第1通信装置と、前記第2通信装置とをデイジーチェーン方式で接続する通信ルートが構成される。
【0011】
本態様によれば、複数の計測装置と管理装置とを接続する通信ネットワークは、複数の計測装置の各々をノードとするBLE対応のメッシュネットワークによって構成されている。従って、計測装置とは別に中継器及び親機を用いて通信ネットワークを構成する場合と比較して、コストを削減できるとともに通信障害耐性を向上することが可能となる。また、複数の計測装置のうち互いに隣接する2つの計測装置間の距離がしきい値以上である場合には、当該2つの計測装置間に配置された通信装置によって、当該2つの計測装置間の通信が中継される。これにより、複数の計測装置と管理装置との通信を確保することが可能となる。
【0013】
また、本態様によれば、全ての計測装置及び通信装置を経由するデイジーチェーン方式の通信ルートが確立されるため、計測データの収集漏れを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストの削減と通信障害耐性の向上とを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システムの構成を簡略化して示す図である。
図2】計測装置の構成を示すブロック図である。
図3】通信装置の構成を示すブロック図である。
図4】データ処理装置の構成を示すブロック図である。
図5】管理装置の構成を示すブロック図である。
図6】管理台帳の一例を示す図である。
図7】通信ルート情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0017】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100の適用対象は、蒸気配管系を備えたプラント等の施設である。蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となるため、配管系の適所に複数のスチームトラップが設置され、このスチームトラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。図1に示した例では、説明の簡略化のため、6個のスチームトラップX(X1~X6)のみを図示している。
【0018】
プラント内の主要な配管系に設置されているスチームトラップXには、固定型の計測装置Yが装着される。スチームトラップ管理システム100は、各スチームトラップXに装着された固定型の計測装置Y(Y1~Y6)と、クラウドサーバ又はオンプレミスサーバ等の管理装置11と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置12と、複数の計測装置Yと管理装置11とを接続する通信ネットワーク10とを備えている。
【0019】
通信ネットワーク10は、複数の計測装置Y1~Y6の各々をノードとするBLE(Bluetooth Low Energy)対応のメッシュネットワークによって構成されている。計測装置Yは電池駆動式であるため、低消費電力であるBLEを採用することにより、計測装置Yの駆動可能時間を延ばすことができる。また、BLEでは数十~数百メートルの通信距離を確保でき、通信圏内の計測装置Y同士は相互に無線通信可能である。本実施形態では、離間距離が所定のしきい値未満である2つの計測装置Y同士は相互に無線通信可能である。当該しきい値は本実施形態の例では30mに設定されるが、これに限定されない。図1を参照して、例えば、計測装置Y2は計測装置Y1,Y3~Y5と相互通信可能であり、計測装置Y5は計測装置Y2~Y4と相互通信可能である。また、計測装置Y5と計測装置Y6とは30m以上離間しているため、相互に無線通信不能である。
【0020】
本実施形態では、複数の計測装置Yのうち互いに隣接する2つの計測装置Y間の距離がしきい値以上である場合には、当該2つの計測装置Y間に通信装置Zが配置され、当該通信装置Zが当該2つの計測装置Y間の通信を中継する。本実施形態の例では、計測装置Y5,Y6間に通信装置Z1が配置され、通信装置Z1が計測装置Y5,Y6間の通信を中継する。
【0021】
本実施形態に係るスチームトラップ管理システム100では、複数の計測装置Y1~Y6の各々についてデータ受信元の計測装置Y又は通信装置Zとデータ送信先の計測装置Y又は通信装置Zとが設定されることにより、複数の計測装置Y1~Y6及び通信装置Z1をデイジーチェーン方式で接続する通信ルートRが構成される。図1では、通信ルートRを太字の矢印で示している。管理装置11から各計測装置Yへ向けての下り方向のデータは、管理装置11→計測装置Y6→通信装置Z1→計測装置Y5→計測装置Y4→計測装置Y3→計測装置Y2→計測装置Y1の順に通信ルートRに沿って送信される。各計測装置Yから管理装置11へ向けての上り方向のデータは、計測装置Y1→計測装置Y2→計測装置Y3→計測装置Y4→計測装置Y5→通信装置Z1→計測装置Y6→管理装置11の順に通信ルートRに沿って送信される。
【0022】
また、管理装置11とデータ処理装置12とは、Wi-Fi又は公衆回線網等の任意の通信ネットワークを介して、IP等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
【0023】
計測装置Yは、スチームトラップXの物理量(温度及び振動)を1日に1回等の定期的に測定し、その測定の結果を示す計測データを、通信ルートRを介して管理装置11に送信する。管理装置11は、受信した計測データに基づいて各スチームトラップXの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを管理する。
【0024】
図2は、計測装置Yの構成を示すブロック図である。計測装置Yは、測定部41、制御部42、記憶部43、及び通信部44を有している。
【0025】
測定部41は、温度センサ51及び振動センサ52を含む。温度センサ51は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。計測装置Yの探針(図略)が測定対象であるスチームトラップXに押し当てられた状態で固定されていることにより、温度センサ51は、スチームトラップXの表面温度を測定し、その測定結果を示す温度データを出力する。振動センサ52は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。上記探針が測定対象であるスチームトラップXに押し当てられた状態で固定されていることにより、振動センサ52は、測定対象であるスチームトラップXの振動強度を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。測定部41によるスチームトラップXの温度及び振動の測定は、1日に1回等の定期的に実行される。例えば、管理装置11からの指示に従い、毎日午後1時等の所定時刻に実行される。
【0026】
記憶部43は、半導体メモリ等を用いて構成されている。記憶部43には、通信ルートRを示す通信ルート情報54が格納されている。通信ルート情報54については後述する。
【0027】
通信部44は、BLEに対応した通信モジュールを用いて構成されている。
【0028】
制御部42は、CPU等を用いて構成されている。制御部42には、測定部41から計測データ(温度データ及び振動データ)が入力される。また、上り方向の通信において、制御部42には、下流の計測装置Yから受信した計測データが通信部44から入力される。制御部42は、通信部44から入力された計測データに測定部41から入力された計測データを追加する。そして、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から上流の計測装置Y又は管理装置11又は通信装置Zに向けて、追加後の計測データをユニキャスト送信する。
【0029】
制御部42は、現在時刻を管理する時刻管理部53を有している。下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Yから受信した時刻データが通信部44から入力される。時刻データは、管理装置11によって設定された現在時刻を示す時刻情報を含む。制御部42は、通信部44から入力された時刻データに含まれる時刻情報に基づいて、時刻管理部53が管理する現在時刻を設定する。また、制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は通信装置Zに向けて時刻データをユニキャスト送信する。さらに、下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Yから受信した測定指示データが通信部44から入力される。測定指示データは、管理装置11によって設定された測定開始時刻を示す時刻情報を含む。制御部42は、通信部44から入力された測定指示データに含まれる時刻情報に基づいて、測定部41にスチームトラップXの温度及び振動を測定させる。また、制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は通信装置Zに向けて測定指示データをユニキャスト送信する。
【0030】
図3は、計測装置Yの構成を示すブロック図である。通信装置Zは、制御部42、記憶部43、及び通信部44を有している。つまり、通信装置Zは、計測装置Yから測定部41を省略した構成を有している。
【0031】
制御部42は、CPU等を用いて構成されている。上り方向の通信において、制御部42には、下流の計測装置Y又は他の通信装置Zから受信した計測データが通信部44から入力される。制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から上流の計測装置Y又は管理装置11又は他の通信装置Zに向けて、当該計測データをユニキャスト送信する。
【0032】
制御部42は、現在時刻を管理する時刻管理部53を有している。下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Y又は管理装置11又は他の通信装置Zから受信した時刻データが通信部44から入力される。時刻データは、管理装置11によって設定された現在時刻を示す時刻情報を含む。制御部42は、通信部44から入力された時刻データに含まれる時刻情報に基づいて、時刻管理部53が管理する現在時刻を設定する。また、制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は他の通信装置Zに向けて当該時刻データをユニキャスト送信する。さらに、下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Y又は管理装置11又は他の通信装置Zから受信した測定指示データが通信部44から入力される。測定指示データは、管理装置11によって設定された測定開始時刻を示す時刻情報を含む。制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は他の通信装置Zに向けて当該測定指示データをユニキャスト送信する。
【0033】
図4は、データ処理装置12の構成を示すブロック図である。データ処理装置12は、制御部61、操作部62、表示部63、記憶部64、及び通信部65を有している。
【0034】
操作部62は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部63は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部62と表示部63とが一体として構成されても良い。
【0035】
記憶部64は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0036】
通信部65は、IP等の任意の通信方式に対応した通信モジュールを用いて構成されている。
【0037】
制御部61は、CPU等を用いて構成されている。制御部61は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、管理台帳作成部68及び通信ルート設定部69を有している。
【0038】
管理台帳作成部68は、複数のスチームトラップXを管理するための管理台帳91を作成する。管理台帳作成部68は、過去に管理台帳91が作成されていない新規のプラントに関しては、後述するエリアマップ情報に基づいて新規に管理台帳91を作成する。また、管理台帳作成部68は、過去に管理台帳91が作成されている既存のプラントに関しては、管理装置11によって管理されている既存の管理台帳91を管理装置11から取得し、最新のエリアマップ情報に基づいて当該管理台帳91を更新することによって、最新の管理台帳91を作成する。また、制御部61は、管理台帳作成部68が作成した管理台帳91を通信部65に入力する。通信部65は、入力された管理台帳91を管理装置11に送信する。
【0039】
通信ルート設定部69は、通信ルートRを設定する。制御部61は、通信ルート設定部69が設定した通信ルートRを示す通信ルート情報54を通信部65に入力する。通信部65は、入力された通信ルート情報54を管理装置11に送信する。
【0040】
図5は、管理装置11の構成を示すブロック図である。管理装置11は、通信部71、制御部72、及び記憶部73を有している。
【0041】
通信部71は、通信ネットワーク10及びデータ処理装置12と相互に無線通信可能な通信モジュールを備えて構成されている。
【0042】
記憶部73は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部73は、通信部71がデータ処理装置12から受信した管理台帳91及び通信ルート情報54を記憶している。
【0043】
制御部72は、CPU等を用いて構成されている。制御部72は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部81、診断部82、指示部83、時刻管理部84、及び管理台帳更新部85を有している。
【0044】
取得部81は、通信部71が計測装置Y6から受信した計測データ(温度データ及び振動データ)を、通信部71から取得する。この計測データには、全ての計測装置Y1~Y6によって測定された計測データが含まれる。
【0045】
診断部82は、取得部81が取得した計測データに基づいて各スチームトラップXの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する。診断部82は、取得部81が取得した計測データに基づき、温度値及び/又は振動強度値から劣化値を求める既知の計算式を用いて、各スチームトラップXの劣化値を算出する。劣化値は、例えばシール性能劣化値である。シール性能劣化値Vcは、振動強度値Vi、スチームトラップXの種類に応じたタイプ係数η、補正係数a、基準蒸気圧力Ps、及び使用蒸気圧力Pを用いて、例えば、
Vc=Vi・η・{1+a・(Ps-P)/P}
なる計算式を用いて算出することができる。
【0046】
また、診断部82は、算出した劣化値に基づき、劣化値から蒸気漏洩量を求める既知の計算式を用いて、各スチームトラップXの蒸気漏洩量を算出する。蒸気漏洩量Qは、スチームトラップ開弁時の流出蒸気量を求める関数式q、等価漏洩ノズル経(スチームトラップ開弁時における蒸気の最小通過断面積を円面積に換算したときの直径)d、使用蒸気圧力P、型式係数z、及びシール性能劣化値Vcを用いて、例えば、
Q=q(d,P,z)・Vc/100
なる計算式を用いて算出することができる。
【0047】
管理台帳更新部85は、診断部82が求めた各スチームトラップXの劣化値及び蒸気漏洩量を含む診断結果情報I5を追記するように、記憶部73に記憶されている管理台帳91を更新する。
【0048】
<管理台帳91の作成>
スチームトラップ管理システム100の管理者又は作業者は、データ処理装置12を用いて管理台帳91を作成する。管理台帳91の作成処理は、管理台帳作成部68によって実行される。
【0049】
データ処理装置12は、対象のプラント内に設置されている全てのスチームトラップXの情報を示すエリアマップ情報を、プラントの管理端末等から取得する。当該管理端末が通信ネットワーク10に接続されている場合には、データ処理装置12は、当該管理端末から通信ネットワーク10を介してエリアマップ情報を取得する。エリアマップ情報には、各スチームトラップXが配置されている位置を示す位置情報が含まれる。位置情報は、例えば位置座標である。
【0050】
管理台帳作成部68は、エリアマップ情報に含まれている全てのスチームトラップXに関する情報を並べて、管理台帳91を作成する。
【0051】
図6は、管理台帳91の一例を示す図である。管理台帳91には、全てのスチームトラップXの各々に関し、タイプ情報I1、識別情報I2、属性情報I3、動作情報I4、及び診断結果情報I5が記述されている。
【0052】
タイプ情報I1は、そのスチームトラップXに計測装置Yが装着されている場合(つまり固定型の計測装置Yによる測定対象のスチームトラップXである場合)には、「固定」と表記される。また、タイプ情報I1は、そのスチームトラップXに計測装置Yが装着されていない場合(つまり可搬型の診断装置による診断対象のスチームトラップである場合)には、「可搬」と表記される。識別情報I2は、トラップナンバーであり、この例では図1に示した参照符号を用いている。トラップナンバーは、各スチームトラップXに割り当てられた固有の識別番号(ID)である。属性情報I3は、各スチームトラップXの製造メーカ名及び型式名を含む。但し、型式名よりも詳細な品番情報が属性情報I3にさらに含まれても良い。動作情報I4は、使用圧力及び設定温度を含む。
【0053】
各スチームトラップXに関するタイプ情報I1、識別情報I2、属性情報I3、及び動作情報I4が上記エリアマップ情報に含まれている場合には、管理台帳作成部68は、これらの情報を当該エリアマップ情報から抽出することが可能である。あるいは、これらの情報が上記エリアマップ情報に含まれていない場合には、管理者又は作業者によるキーボード入力等に応じて、操作部62から制御部61にこれらの情報が入力されても良い。
【0054】
診断結果情報I5は、診断日、劣化値、及び蒸気漏洩量を含む。診断が実施される前の事前準備の段階では、診断日、劣化値、及び蒸気漏洩量の項目は空欄となっている。
【0055】
通信部65は、管理台帳作成部68が作成した管理台帳91を管理装置11に送信する。管理装置11において、通信部71は、通信部65から送信された管理台帳91を受信する。制御部72は、通信部71が受信した管理台帳91を記憶部73に記憶する。
【0056】
<通信ルート情報54の作成>
スチームトラップ管理システム100の管理者又は作業者は、データ処理装置12を用いて通信ルート情報54を作成する。通信ルート情報54の作成処理は、通信ルート設定部69によって実行される。
【0057】
管理者又は作業者は、上述のエリアマップ情報を参照することにより、全てのスチームトラップXに対応する全ての計測装置Yを通る一筆書きの通信ルートRを、操作部62を用いたマニュアル操作によって設定する。また、管理者又は作業者は、上述のエリアマップ情報を参照することにより、複数の計測装置Yのうち互いに隣接する2つの計測装置Y間の距離がしきい値(例えば30m)以上である場合には、当該2つの計測装置Y間に通信装置Zを配置し、当該通信装置Zを含めて通信ルートRを設定する。本実施形態の例では、計測装置Y5,Y6間に通信装置Z1が配置される。但し、離間距離がしきい値未満であっても、現場での通信チェックの際に遮蔽物の存在等に起因して2つの計測装置Y間の通信が不能又は不調である場合には、当該2つの計測装置Y間に通信装置Zを配置しても良い。通信ルート設定部69は、設定された通信ルートRに含まれている全ての計測装置Y及び通信装置Zの識別番号を順番に並べることによって、通信ルート情報54を作成する。
【0058】
図7は、通信ルート情報54の一例を示す図である。通信ルート情報54には、全ての計測装置Y及び通信装置Zの各々に関し、識別情報I6、上り受信元情報I7、上り送信先情報I8、下り受信元情報I9、及び下り送信先情報I10が記述されている。
【0059】
識別情報I6は、計測装置ナンバー又は通信装置ナンバーであり、この例では図1に示した参照符号を用いている。計測装置ナンバーは、各計測装置Yに割り当てられた固有の識別番号(ID)である。通信装置ナンバーは、各通信装置Zに割り当てられた固有の識別番号(ID)である。上り受信元情報I7は、計測装置Yから管理装置11へ向けての上り方向の通信において、各計測装置Yの一つ上流に位置するデータ受信元の計測装置Y又は通信装置Zの識別番号を示す。上り送信先情報I8は、上記上り方向の通信において、各計測装置Yの一つ下流に位置するデータ送信先の計測装置Y又は管理装置11又は通信装置Zの識別番号を示す。下り受信元情報I9は、管理装置11から計測装置Yへ向けての下り方向の通信において、各計測装置Yの一つ上流に位置するデータ受信元の計測装置Y又は管理装置11又は通信装置Zの識別番号を示す。下り送信先情報I10は、上記下り方向の通信において、各計測装置Yの一つ下流に位置するデータ送信先の計測装置Y又は通信装置Zの識別番号を示す。このように、通信ルート情報54において、複数の計測装置Yの各々についてデータ受信元の計測装置Y又は通信装置Zとデータ送信先の計測装置Y又は通信装置Zとが設定されることにより、複数の計測装置Yをデイジーチェーン方式で接続する通信ルートRが構成される。
【0060】
<固定型の計測装置による測定>
管理装置11の時刻管理部84は、後述する測定指示データの送信に先立ち、正確な現在時刻を示す時刻情報を含む時刻データを生成する。通信部71は、時刻管理部84が生成した時刻データを、通信ルートRを介して複数の計測装置Yに送信する。
【0061】
各計測装置Yの制御部42は、現在時刻を管理する時刻管理部53を有している。下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Yから受信した時刻データが通信部44から入力される。時刻データは、管理装置11によって設定された現在時刻を示す時刻情報を含む。制御部42は、通信部44から入力された時刻データに含まれる時刻情報に基づいて、時刻管理部53が管理する現在時刻を設定する。また、制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は通信装置Zに向けて時刻データをユニキャスト送信する。これにより、全ての計測装置Y及び通信装置Zの制御部42において、時刻管理部53が管理する現在時刻が正確に設定される。
【0062】
管理装置11の指示部83は、測定開始時刻を示す時刻情報を含む測定指示データを生成する。通信部71は、指示部83が生成した時刻データを、通信ルートRを介して複数の計測装置Yに送信する。
【0063】
下り方向の通信において、制御部42には、上流の計測装置Yから受信した測定指示データが通信部44から入力される。計測装置Yの制御部42は、通信部44から入力された測定指示データに含まれる時刻情報で示される測定開始時刻になると、測定部41を起動し、測定部41にスチームトラップXの温度及び振動を測定させる。また、制御部42は、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から下流の計測装置Y又は通信装置Zに向けて測定指示データをユニキャスト送信する。これにより、全ての計測装置Yにおいて、測定開始時刻になると測定部41が起動し、スチームトラップXの温度及び振動を測定する。
【0064】
各計測装置Yは、測定部41による測定の結果を示す計測データを、通信ルートRを介して管理装置11に送信する。上り方向の通信において、制御部42には、下流の計測装置Yから受信した計測データが通信部44から入力される。制御部42は、通信部44から入力された計測データに測定部41から入力された計測データを追加する。そして、通信ルート情報54を参照することにより、通信部44から上流の計測装置Y又は管理装置11又は通信装置Zに向けて、追加後の計測データをユニキャスト送信する。これにより、全ての計測装置Yの計測データが管理装置11に送信される。
【0065】
管理装置11の通信部71は、計測装置Yから送信された計測データを受信する。取得部81は、通信部71が計測装置Yから受信した計測データを、通信部71から取得する。この計測データには、全ての計測装置Y1~Y6によって測定された計測データが含まれる。診断部82は、取得部81が取得した計測データに基づいて各スチームトラップXの状態を診断し、その診断の結果を示す診断データを生成する。管理台帳更新部85は、診断部82が生成した診断データに基づいて、記憶部73に記憶されている管理台帳91を更新する。
【0066】
<まとめ>
本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、複数の計測装置Yと管理装置11とを接続する通信ネットワーク10は、複数の計測装置Yの各々をノードとするBLE対応のメッシュネットワークによって構成されている。従って、計測装置Yとは別に中継器及び親機を用いて通信ネットワークを構成する場合と比較して、コストを削減できるとともに通信障害耐性を向上することが可能となる。また、複数の計測装置Yのうち互いに隣接する2つの計測装置Y間の距離がしきい値以上である場合には、当該2つの計測装置Y間に配置された通信装置Zによって、当該2つの計測装置Y間の通信が中継される。これにより、複数の計測装置Yと管理装置11との通信を確保することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、全ての計測装置Y及び通信装置Zを経由するデイジーチェーン方式の通信ルートRが確立されるため、計測データの収集漏れを防止することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態に係るスチームトラップ管理システム100によれば、各計測装置Yは正確な現在時刻を設定するため、正確な所定時刻に物理量の計測及び計測データの送信を実行でき、その結果、計測データの収集漏れの発生を効果的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
10 通信ネットワーク
11 管理装置
100 スチームトラップ管理システム
X(X1~X6) スチームトラップ
Y(Y1~Y6) 計測装置
Z 通信装置
【要約】
【課題】コストの削減と通信障害耐性の向上とを実現することが可能なスチームトラップ管理システムを得る。
【解決手段】スチームトラップ管理システムは、複数のスチームトラップに各々装着され、物理量を計測する、複数の計測装置と、前記複数の計測装置の各々によって計測された前記物理量を示す計測データに基づいて、前記複数のスチームトラップの各々の状態を管理する管理装置と、前記複数の計測装置と前記管理装置とを接続する通信ネットワークと、を備える。前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置の各々をノードとするBLE対応のメッシュネットワークによって構成されている。前記通信ネットワークは、前記複数の計測装置のうち互いに隣接する2つの計測装置間の距離がしきい値以上である場合に、当該2つの計測装置間に配置され、当該2つの計測装置間の通信を中継する通信装置を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7